経済学
第12回
注意事項
復習用に,講義で使ったスライドをホームページにアップし
ている.
http://tomoinoue.web.fc2.com/index.html
前回の復習
限界費用(MC)とは,追加的に1単位生産量を増やすとき の総費用の増加分のこと. 平均費用(AC)とは,生産物1単位当たりの総費用のこと. » 限界費用は,さらにもう1単位生産するのに生産費用がいくらかか るのかを表す. » 平均費用は,これまで生産した生産物1単位につき生産費用が いくらかかっているかを表す. Q TC 生産量 総費用 AC = =限界費用
2010/6/30 経済学 第12回 4 自動車の生産量 Q 固定費用 FC 可変費用 VC 総費用 TC 限界費用 MC 0 108 0 108 12 36 60 84 108 132 156 180 204 228 1 108 12 120 2 108 48 156 3 108 108 216 4 108 192 300 5 108 300 408 6 108 432 540 7 108 588 696 8 108 768 876 9 108 972 1,080 10 108 1,200 1,308前回の復習
108 100 200 1000 500 TC MC前回の復習
可変投入物の限界生産物が生産量の拡大とともに減少 » 生産量が増大すると総生産曲線の傾きが緩やかになる. 生産の限界費用が生産量の拡大とともに増加 » 限界費用曲線は右上がりになる. 生産量が増大すると総費用曲線の傾きが急になる. 2010/6/30 経済学 第12回 6前回の復習
自動車の生産量 Q 総費用 TC 平均費用 AC=TC/Q 1 120 120.0 2 156 78.0 3 216 72.0 4 300 75.0 5 408 81.6 6 540 90.0 7 696 99.4 8 876 109.5 9 1,080 120.0 10 1,308 130.8 150 AC 100 50 最小費用生産量前回の復習
平均費用を平均固定費用(AFC)と平均可変費用(AVC) に分割する. 2010/6/30 経済学 第12回 8 平均可変費用 平均固定費用 平均費用 AVC AFC Q VC Q FC Q VC FC Q TC AC + = → + = + = + = =前回の復習
生産量 Q 総費用 TC 固定費用 FC 可変費用 VC 平均費用 AC=TC/Q 平均固定費用 AFC=FC/Q 平均可変費用 AVC=VC/Q 1 120 108 12 120.0 108.0 12.0 2 156 108 48 78.0 54.0 24.0 3 216 108 108 72.0 36.0 36.0 4 300 108 192 75.0 27.0 48.0 5 408 108 300 81.6 21.6 60.0 6 540 108 432 90.0 18.0 72.0 7 696 108 588 99.4 15.4 84.0 8 876 108 768 109.5 13.5 96.0 9 1,080 108 972 120.0 12.0 108.0 10 1,308 108 1,200 130.8 10.8 120.0前回の復習
2010/6/30 1 10 50 100 2 3 4 5 6 7 8 9 10 0 AFC AVC 平均固定費用は生産量が増えると減少していく. → 拡散効果 平均可変費用は生産量が増えると増加していく. → 収穫逓減効果 生産量が少ないときには,拡散効果>収穫逓減効果 → 平均費用曲線は右下がり 生産量が多いときには,拡散効果<収穫逓減効果 → 平均費用曲線は右上がり 平均費用曲線はU字型になる(底は最小費用生産量の点).
12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 0 100 150 200 250 50 2010/6/30 経済学 第12回 自動車の費用 自動車の生産量 MC AC AVC AFC 最小費用生産量 M
前回の復習
AC MC M AC>MC のとき,AC は生産拡大とともに減 少する. AC<MC のとき,AC は 生産拡大とともに増加 する. ACが最も小さくなる点 では,AC=MCとなる.前回の復習
2010/6/30 経済学 第12回 14 MC AC AVC 生産量 ACが一番小さくなる点 で,AC=MCとなる. AVCが一番小さくなる 点で,AVC=MCとなる. より現実的な費用曲線本日の内容
短期の費用と長期の費用
短期の費用と長期の費用
これまでは,短期的状況について考えてきた. » 企業は固定費用を調整できない. 短期と長期で企業の費用はどの変化するのか? 固定費用を調整できる場合について考える. 2010/6/30 経済学 第12回 16短期の費用と長期の費用
自動車製造業者は,さらに機械を導入するかどうかを検 討しているとする. 機械の増設が総費用に及ぼす影響: ① 短期的な固定費用の上昇 ② 可変投入物の生産性の上昇による可変費用の低下 » ある一定量を生産するのに必要な可変投入物の数量が減るの で,どの生産量の水準でも可変費用は低下する.低い固定費用(FC = 108) 高い固定費用(FC = 216) 自動車の 生産量 高い 可変費用 総費用 平均費用 低い 可変費用 総費用 平均費用 1 12 120 120.0 6 222 222.0 2 48 156 78.0 24 240 120.0 3 108 216 72.0 54 270 90.0 4 192 300 75.0 96 312 78.0 5 300 408 81.6 150 366 73.2 6 432 540 90.0 216 432 72.0 7 588 696 99.4 294 510 72.9 8 768 876 109.5 384 600 75.0 9 972 1,080 120.0 486 702 78.0 10 1,200 1,308 130.8 600 816 81.6 2010/6/30 経済学 第12回 18
短期の費用と長期の費用
生産量が少ないときは,機械の追加導入による固定費用 増大の効果が労働の生産性上昇による可変費用低下の 効果より大きい(生産量が多いときは反対になる). それぞれの生産水準に対して平均費用を最小化する固 定費用の水準を選ぶことができる. 固定費用の水準を決めたときに導くことができる平均費用 曲線のことを,「短期の平均費用曲線」と呼ぶ.短期の費用と長期の費用
どのような固定費用を選択するかによって,短期の平均費 用曲線が変わる. 企業は,長期的な生産量の予想に応じて,平均費用が最 小となるように固定費用を選択する. » たとえば,自動車を3台生産していたときに,当面,8台への生産 拡大を見込めるようになった場合,長期的にはその生産水準に 応じて固定費用を増やす. 2010/6/30 経済学 第12回 20短期の費用と長期の費用
長期には,それぞれの生産量について,平均費用を最小 化するように固定費用が選択される. この結果として求められる平均費用曲線のことを「長期の 平均費用曲線(LAC)」と呼ぶ. » 長期の平均費用曲線は,各生産量に対して平均費用を最小化 するように固定費用が選ばれた場合の生産量と平均費用の関 係を表す. » 選択可能な固定費用がたくさんあるとすれば,長期の平均費用 曲線はスムーズなU字型になる.短期の費用と長期の費用
長期では,生産者は望ましい生産量に応じた適切な固定 費用を選択するだけの時間があるため,生産は長期の平 均費用曲線上のどこかで行われる. ただし,急にその生産量が変化すると,長期の平均費用 曲線上ではなく,現在選択している短期の平均費用曲線 に沿って費用が決まる. 固定費用の再調整を行って,平均費用を新しい生産水準 に対応したものに変更するまでは,長期の平均費用曲線 上から外れる. 2010/6/30 経済学 第12回 22AC3 AC8 AC6 LAC B A D E C 自動車の費用
AC3曲線は生産量が3台のときの平均費用を最小にする ように固定費用を選んだ場合の短期の平均費用曲線. → AC3曲線は生産量が3台のとき,LACと接する. 長期的に生産量が3台のときの平均費用が最も低くなるよ うに固定費用を選択した場合,その固定費用から導かれ る短期平均費用曲線の最小費用生産量が3台になるとは 限らない. AC3曲線は,最小費用生産量が3の短期平均費用曲線で あるとは限らない. 2010/6/30 経済学 第12回 24
企業がもともとAC6で生産活動ができるような固定費用を 選択していた場合,生産量が6台のときは点Cで生産活動 を行う. » 点CはLAC上の点である. » 3台しか生産しなくなると,この企業はAC6上の点Bで生産すること になり,LAC上では生産できなくなる. » 固定費用を下げてもっと低い平均費用(AC3)を実現していれば, 点Bより下の点Aで生産活動ができていた. » 反対に,8台も生産することになったとすると,短期的にはAC6上 の点Eで生産することになる. » 固定費用を増やして可変費用を減らし,より低い平均費用(AC8)
短期の費用と長期の費用
急激な需要増大に対応して生産量を突然増やさなくては いけないような場合,企業の短期の平均費用は急激に増 大する. しかし,時間をかければ,新工場を建設したり,機械を新 たに導入したりして,平均費用を下げることができる. 2010/6/30 経済学 第12回 26規模の経済性
生産量が拡大するにつれて長期の平均費用が減少する 場合,規模の経済性があるという. » 自動車の生産量が6台より少ない範囲 生産量が拡大するにつれて長期の平均費用が増加する 場合,規模の不経済性があるという. » 自動車の生産量が6台より多い範囲 生産量が拡大しても長期の平均費用が変わらず一定の 場合,規模に対する収穫不変の状況にあるという. → このとき,長期の平均費用曲線は水平になる.ここまでのまとめ
費用の測り方 定義 表記 短期 固定費用 生産量に依存せずかかる費用 FC 平均固定費用 生産物1単位につきかかる固定費用 AFC = FC/Q 長期と短期 可変費用 生産物に応じてかかる費用 VC 平均可変費用 生産物1単位につきかかる可変費用 AVC = VC/Q 総費用 固定費用(短期の場合)と可変費用を 足し合わせた費用 TC = FC + VC 平均費用 生産物1単位につきかかる総費用 AC = TC/Q 限界費用 もう1単位生産量を増やしたときの総費 用の増加額 MC 長期 長期の平均費用 各生産量での平均費用を最小にするよ うに固定費用を選んだ場合の平均費用 LAC 2010/6/30 経済学 第12回 28完全競争
たとえば,トマトのような生鮮野菜の市場では,非常にたくさ んの農家がトマトを生産して,非常にたくさんの消費者がト マトを購入している. このような状況で,ある1軒のトマト農家がトマトを作るのを やめたり,例年の2倍作ったりすると,トマトの市場価格は変 わってしまうだろうか?完全競争
トマトを生産している農家は非常にたくさんあるので,たった 1軒のトマト農家が少なく生産しようが,多く生産しようが,ト マトの市場価格は変わらない. 競争相手がたくさんいるため,自らの行動で財の市場価格 を変えることができない. → トマト農家は価格受容者(プライス・テイカー)である. 2010/6/30 経済学 第12回 30完全競争
経済学では,競争が激しい状態というのは,非常に多くの 競争相手が存在し,自分の競争相手がだれかを特定する ことには意味がなくなるような状態を指す. » 2つ,3つの企業が互いに優位に立とうとして争っているような状 況は,経済学的にはあまり競争がない状況である. 競争が十分に激しく経済学的に競争が「完全」である状態 のとき,すべての生産者は価格受容者である.完全競争
消費者についても同じように考えて,ある消費者がどれくら
い多く買おうが少なく買おうが,その財の市場価格が変化 しない状況のとき,その消費者を価格受容者という.
完全競争
生産者であろうと消費者であろうと,すべての市場参加者 が価格受容者である市場のことを完全競争市場と呼ぶ. » 需要と供給のモデルで扱ってきた競争市場とは,完全競争市場 のこと. ほとんどの場合に消費者は価格受容者であるが,生産者 は財の価格に影響を及ぼすことができる場合がある. すべての市場が完全競争市場ではないが,ある産業の生 産者が価格受容者であれば,その産業は完全競争産業 と呼ばれる.完全競争
すべての生産者が価格受容者になるのはどんなときか?
完全競争産業が成立するためには2つの条件がある. さらに,もう1つ,条件が付け加えられることがある.