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X 線透視画像および三次元コンピュータモデルを用いた肩関節肩甲骨面外転における肩甲上腕関節の生体内回旋動態解析

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 46 巻第 1 号 15 ∼ 肩関節肩甲骨面外転時における肩甲上腕関節の三次元動作解析 20 頁(2019 年). 15. 研究論文(原著). X 線透視画像および三次元コンピュータモデルを用いた 肩関節肩甲骨面外転における肩甲上腕関節の 生体内回旋動態解析* 高 橋 裕 司 1)2)# 西 中 直 也 3)  松 久 孝 行 4) 尾 﨑 尚 代 1)5)  千 葉 慎 一 1)6) 筒 井 廣 明 7). 要旨 【目的】本研究の目的は,3D-to-2D レジストレーションを用いての動的な外転運動における肩甲上腕関 節の回旋角度を無負荷時,負荷時で比較検討することである。 【方法】対象は健常成人 18 例 18 肩,平均 27.9 歳(23 ∼ 38 歳)である。方法は,まず X 線透視像で肩甲骨面上での自動外転運動の動態撮影を無負 荷時と 3 kg 負荷時の二種類で行った。その後,3D-to-2D レジストレーションを用いて上腕骨・肩甲骨の 三次元動態を推定した。得られた結果から肩甲上腕関節における上腕骨の回旋角度を算出し,無負荷群と 3 kg 負荷群の比較を行った。 【結果】下垂位から最大外転位までで上腕骨は無負荷時では 26.5°,3 kg 負 荷時では 16.8 ° 外旋した。外旋角度は両群間で有意差を認めなかった。【結論】健常肩では肩甲上腕関節 における上腕骨の回旋は 3 kg の負荷では影響を受けないことが考えられる。 キーワード 肩甲上腕関節,回旋,三次元動作解析. 緒   言. 動作異常を起因とする肩関節疾患を理解する基礎とな 1) る 。肩関節は 6 つの関節からなる複合体であるが,そ.  肩関節の三次元動態を理解することは,滑液包炎や後. の構成要素である肩甲骨関節窩と上腕骨頭からなる肩甲. 方関節包の拘縮,動揺性肩関節,腱板損傷など肩関節の. 上腕関節の運動を把握することは肩関節の三次元動態を 理解するうえで重要である。以前より肩関節外転運動中. *. Analysis in vivo Humeral Rotation using Fluoroscopy and Shapematching Techniques 1)昭和大学保健医療学部 (〒 226‒8555 神奈川県横浜市緑区十日市場町 1865) Yuji Takahashi, PT, MSc, Hisayo Ozaki, PT, PhD, Shinichi Chiba, PT, PhD: Showa University School of Nursing and Rehabilitation Science 2)昭和大学江東豊洲病院リハビリテーション室 Yuji Takahashi, PT, MSc: Department of Rehabilitation, Showa University Koto Toyosu Hospital 3)昭和大学スポーツ運動科学研究所 Naoya Nishinaka, MD, PhD: Research Institute for Sports and Exercise Sciences Showa University 4)昭和大学藤が丘病院整形外科 Takayuki Matsuhisa, MD, PhD: Department of Orthopaedic Surgery, Showa University Fujigaoka Hospital 5)昭和大学藤が丘病院リハビリテーション部 Hisayo Ozaki, PT, PhD: Department of Rehabilitation, Showa University Fujigaoka Hospital 6)昭和大学病院リハビリテーション部 Shinichi Chiba, PT, PhD: Department of Rehabilitation, Showa University Hospital 7)昭和大学藤が丘リハビリテーション病院スポーツ整形外科 Hiroaki Tsutsui, MD, PhD: Department of Sports Orthopaedic Surgery, Showa University Fujigaoka Rehabilitation Hospital # E-mail: yuji_t@cmed.showa-u.ac.jp (受付日 2017 年 6 月 13 日/受理日 2018 年 10 月 5 日) [J-STAGE での早期公開日 2018 年 12 月 6 日]. における肩甲上腕関節の動態解析は屍体肩を用いる方 法. 2). や単純 X 線画像や X 線透視画像を用いる二次元で. の解析. 3). ,electromagnetic tracking device を用いた三. 次元解析. 1)4). などが行われてきた。屍体肩を用いる方. 法では関節内の詳細な動作を観察することが可能である が筋収縮を伴った動作を再現することは困難である。肩 関節外転運動中の肩甲上腕関節における上腕骨の回旋は 三次元の動作であるが,単純 X 線像を用いた解析では 二次元での解析であるため精度の点で疑問が残る。体表 マーカーを用いた動態解析では,動的な三次元での計測 が可能であるが体表マーカーと皮膚の間の誤差があるこ とは否めない。そこで近年,生体肩において 6 自由度パ ラメータが推定可能な 3D-to-2D レジストレーション法 を用いて肩関節の動態解析が行われている. 5‒7). 。この. 3D-to-2D レジストレーション法は三次元動態解析がミ リ単位の精度で解析が可能である. 8). 。今回我々はこの方. 法を用いて,肩甲上腕関節の動態解析を行った。.

(2) 16. 理学療法学 第 46 巻第 1 号.  保刈ら 9) は cineradiography を用いて上肢拳上時の. ベルに手を伸ばす動作でもっとも大きい肩関節での外転. 上腕骨頭と肩甲骨関節窩の適合性を 3 kg の負荷をかけ. 角度が必要であり,その角度は 111°であったと報告し. 健常肩と不安定肩を比較している。この中で,彼らは不. ている。本研究は健常肩における肩関節の自動外転運動. 安定肩には健常肩では見られない skid slip,つまり肩甲. の動態解析であるため,日常生活上での挙上動作から逸. 骨面上での挙上・下降動作時の上腕骨頭が肩甲骨関節窩. 脱しないと思われる範囲の下垂位から 120°までを 3 秒. に対して起こす不整なぶれが 3 kg の負荷にみられるこ. で挙げるように規定して行った。負荷の量については保. とを報告している。健常肩と病態肩を比較するにあたっ. 刈ら. て負荷をかけて動態解析を行い,変化を検討することは. 試技は無負荷時と前腕遠位に 3 kg の重錘を巻いた 3 kg. 病態解明にあたり有用な情報となりうる。. 負荷時の二種類を行った。各試技は 3 回撮影し,そのう.  肩関節外転中の肩甲上腕関節における上腕骨の回旋に. ち動態画像において骨が画面からフレームアウトした例. 2). 9). の報告を参考にして負荷量を 3 kg に設定した。. は肩関節外転運動において,上腕. を除き 2 回目の試技を解析した。動態画像において骨が. 骨の外旋は大結節が烏口肩峰アーチの下方を通過するた. 画面からフレームアウトした例は解析可能な骨が画面内. めの重要な因子のひとつであり,肩関節が最大外転する. に留まっている試技を解析した。. のを可能にすると報告している。健常肩に対して肩関節.  その後,各被験者の肩甲骨および上腕骨の CT 撮影. ついて Browne ら. 外転時に負荷をかけて肩甲上腕リズム 10)11). 5). や肩甲骨の動. (LightSpeed VCT: GE MEDICAL SYSTEMS, Little. を検討した報告は散見されるが,負荷時の肩甲. Chalfont, Amersham Place)を 0.5 mm 間隔スライスに. 上腕関節における上腕骨の回旋動態を検討した報告は. て行った。その CT 画像よりコンピュータソフト(ITK-. 我々の検索し得た範囲では見あたらなかった。そこで今. snap; Penn Image Computing and Science Laboratory,. 回は肩甲骨関節窩に対する上腕骨の回旋角度を負荷のな. ® Philadelphia, PA および Rhinoceros ; Robert McNeel &. い群に負荷をかけた群を加えて,群間の変化を比較検討. Associates, Seattle, WA.)を用いて骨の 3-D モデルを作. することとした。. 成し,それぞれに座標系を設定した(図 1) 。肩甲骨の. 態.  負荷時の肩関節動態については諸家らの報告. 5)10)11). において負荷量や結果にばらつきがある。Kon ら. 5). は. 座標系は肩甲骨関節窩面の長軸の二等分点を原点とし, その長軸を Y 軸,肩甲骨関節窩面上を長軸に直交する. 我々と同様に 3D-to-2D レジストレーション法を用いて,. 線を Z 軸,ZY 平面に直交する線を X 軸とした。上腕骨. 無負荷時と 3 kg 負荷時の肩甲上腕リズムを比較検討し,. の座標系は上腕骨頭中心を原点として上腕骨軸に平行な. 3 kg 負荷時に肩甲上腕リズムは変化することを報告し. 線を Y 軸,骨頭中心と結節間溝を結ぶ線を Z 軸,YZ 平. ている。この結果から我々は負荷をかけることにより,. 面に直交する線を X 軸としてそれぞれ規定した。. 肩甲帯に影響する筋群および神経系が負荷に対応するべ.  完成した骨モデルをコンピュータソフト(Joint Track;. く反応することから肩甲上腕関節における上腕骨の回旋. Banks SA 作成. は無負荷群と負荷群で差があると仮説をたてた。. 合わせ,上腕骨・肩甲骨の空間位置での三次元動態を推. 13). )を用いて透視画像の輪郭に位置を. 定した(図 1)。得られた結果から肩甲骨関節窩に対す. 研究方法. る上腕骨の回旋角度を算出した。その後,各被験者にお.  対象は文書による同意を得た健常成人 18 例 18 肩。そ. いてデータより 3 次スプライン補間法(図 2)を用いて. の内訳は男性 8 名,女性 10 名であり,年齢は平均 27.9. 近似式を算出し,肩甲上腕関節外転 5°毎の外旋角度を. 歳(23 ∼ 38 歳)である。なお実験に関しては共著者が. 導きだした。その角度を元に全被験者の外転角度 5°毎. 倫理委員会の承認を得て,被験者の同意を得たうえで. の平均値を導きだした。肩甲上腕関節の外転角度は,通. 行った。また得られたデータの使用については昭和大学. 常用いられる体幹軸を基準とした外転角度では,体幹が. 保健医療学部倫理委員会の承認を得て行った(承認番号. 側屈した場合に誤差が生じるため,より精度の高い外転. 第 179 号 )。 方 法 は, ま ず X 線 透 視 像(BRANSIST. 角度が得るため肩甲骨関節窩に対する上腕骨の外転角度. safire: SHIMADZU CORPORATION, Kyoto)を用いて,. とし,3 次スプライン補間法(図 2)を用いて算出した。. 前後方向一方向にて,1 秒あたり 15 フレームの設定で. 肩関節肩甲骨面上外転 0°から 120°の肩甲上腕関節外転. 動態撮影を行った。撮影はまず被験者を端座位として体. 角度が,この方法では 15° から 85°に該当したため,15°. 幹屈曲・伸展中間位として上肢を下垂し,手掌を前方に. から 85°の範囲での解析を行った。肩関節回旋角度は通. 向けた thumb up の肢位とした。その後,肩関節の肩甲. 常の ROM と異なり座標軸の設定上,上腕骨と肩甲骨の. 骨面上での自動外転運動を 120°までの範囲で動態撮影. YZ 平面が平行になる角度を内外旋 0° とした。. 12). は髪をとかす,スプーン.  統計学的検討は負荷の有無と外転角度を要因とした二. で食べる,肩関節より上のレベルに手を伸ばすなどの動. 元配置分散分析を用いて行った。多重比較は Tukey 法. 作中に必要な上肢の ROM を検討し,肩関節より上のレ. を用いて行った。統計学的有意水準は 5% とした。. を行った。Magermans ら.

(3) 肩関節肩甲骨面外転時における肩甲上腕関節の三次元動作解析. 17. 図 1 骨の 3D モデル作成と透視画像のマッチング CT 画像より骨の三次元モデルを作成し座標系を設定する.その後,透視画像に合わせて骨モデルの位置 を合わせている.座標移動から動態の推定が可能である.. 図 2 3 次スプライン補間法 上記の連立方程式を計算して係数を求める.. 肩甲上腕関節における上腕骨の回旋角度は無負荷群と. 結   果. 3 kg 負荷群では有意差はみられなかった。この結果か.  結果を表,並びに図に示す(表 1・図 3)。下垂位では. ら健常肩では肩甲上腕関節における上腕骨の回旋は 3 kg. 3 kg 負荷群が無負荷群より 10.1° 外旋位をとっていたが,. の負荷では影響を受けず,大結節は第 2 肩関節を無負荷. 統計学的には有意差は認めなかった。下垂位から肩甲上. 時とほぼ同様の運動路を通過すると考えられる。. 腕関節外転 85° までで上腕骨は無負荷群では 26.5° ,3 kg.  大結節周辺の軟部組織は滑液包の保護にもかかわらず. 負荷群では 16.8°外旋した。2 要因とも主効果,交互作. 肩関節外転時に絶えず圧迫されることから,上腕骨は外. 用を認めなかった。. 旋し大結節は後下方に逃げ摩擦をさける運動方向をもっ ている. 考   察. 14). 。この現象は矯正的外旋と呼ばれ,負担の多く. なった棘上筋が圧迫を避けて自ら選んだ生理的様態であ.  第 2 肩関節内には大結節の運動路が広く存在する。大. るとされている。今回の結果より 3 kg の負荷では健常肩. 結節の水平面上での位置は肩甲骨関節窩に対する上腕骨. においてこのような生理的様態を破綻させることなく肩. の回旋により変化し,その位置により第 2 肩関節内での. 関節肩甲骨面上外転運動が可能であることが考えられる。. 14). 。我々は肩甲上腕関節における上.  角度に注目すると回旋角度は無負荷時と 3 kg 負荷時. 腕骨の回旋角度は無負荷群と 3 kg 負荷群では差がある. を比較して,有意差は認めなかったものの下垂位に近い. と仮説をたてた。しかし今回の結果では肩関節外転時に. 外転角度では 3 kg 負荷時がやや外旋傾向を示した。今. 運動路が決定する.

(4) 18. 理学療法学 第 46 巻第 1 号. 表 1 肩甲上腕関節外転に対する上腕骨外旋角度 上腕骨回旋角度(平均値±標準偏差) 3 kg 負荷群. 肩甲上腕関節外転角度. 無負荷群. 15. 49.8 ± 24.9. 59.9 ± 22.8. 20. 52.4 ± 20.3. 57.4 ± 22.4. 25. 54.9 ± 18.9. 62.9 ± 18.7. 30. 59.4 ± 19.4. 65.9 ± 16.3. 35. 60.4 ± 18.4. 65.4 ± 14.9. 40. 61.2 ± 17.1. 65.2 ± 14.2. 45. 62.0 ± 15.9. 65.1 ± 13.7. 50. 62.9 ± 14.7. 65.1 ± 13.1. 55. 64.0 ± 13.5. 65.2 ± 12.5. 60. 65.4 ± 12.3. 65.4 ± 11.9. 65. 67.2 ± 11.1. 64.8 ± 10.5. 70. 69.5 ± 10.1. 65.8 ± 10.1. 75. 72.0 ± 9.3. 67.9 ± 10.0. 80. 74.3 ± 8.7. 70.5 ± 9.7. 85. 77.0 ± 9.3. 75.4 ± 10.9. 無負荷群(0 kg)と 3 kg 負荷群(3 kg)の肩甲上腕関節外転に対する上腕 骨の外旋角度を数値にて示す.. 図 3 肩甲上腕関節外転に対する上腕骨外旋角度 無負荷群(0 kg)と 3 kg 負荷群(3 kg)の肩甲上腕関節外転に対する上腕骨の外旋角度を示す。 標準偏差を Y 軸方向の線で表すが両群で重なる部分があるため無負荷時では負方向のみ、負荷 時では正方向のみで示した.. 回,精度が高いとされる 3D-to-2D レジストレーション. 下から内方へと移動する。すると大結節の移動できる空. 法を用いたにもかかわらず結果に有意差が見られなかっ. 間が烏口突起,烏口肩峰靭帯,肩峰などにより制限され. た。下垂位に近い外転角度では標準偏差が大きく 3 kg. る。そのため外転角度が大きくなるにしたがい,無負荷. 負荷時のほうが,より外旋している例もあるが変化して. 時と 3 kg 負荷時ともばらつきが少なくなることが推察. いない例もあった。この結果は今回の対象において下垂. される。. 位に近い角度では負荷時の対応にばらつきがあったこと.  肩甲上腕関節は上腕骨頭に対する肩甲骨関節窩の接触. が考えられる。. 面積が小さいことから骨性に不安定な関節であり,関節.  しかし最大外転位に近づくにつれ標準偏差が小さく. を求心位に保持するために様々な安定化機構が働く必要. なっている。この結果は,最大外転位において上腕骨は. がある. 肩甲骨関節窩に対して,無負荷時,3 kg 負荷時とも同. 作用の他に腱板,関節包などの肩甲上腕関節周囲の軟部. じ肢位をとることを示している。大結節は下垂位では肩. 組織や肩甲上腕リズムといった安定化機構が存在する。. 峰の外にあるが,外転するにしたがい大結節が肩峰の直. 同時に肩関節は懸垂関節であるため今回のような重量を. 15). 。肩関節は運動時の関節安定化のため骨性の.

(5) 肩関節肩甲骨面外転時における肩甲上腕関節の三次元動作解析. 19. 加える負荷は上腕骨頭に肩甲骨関節窩に対する下方への. かった。特に下垂位では 3 kg 負荷群のほうが 10.1°外旋. 剪断力を加えることになるためより大きな安定化作用が. していたが有意差はなかった。健常肩において肩甲上腕. 10). は体表マーカーを使用. 関節における上腕骨の回旋は 3 kg の負荷では影響を受. し肩関節外転時に 0.9 ∼ 2.9 kg の負荷をかけ肩甲骨の動. けず,肩関節肩甲骨面状外転動作を可能にすることが示. 態を観察したが,無負荷時と比較して変化はなかったと. された。. 働く必要がある。de Groot ら. 報告している。しかし彼らの報告は静止姿勢を下垂位か ら 30°ごとに撮影しており肩関節外転の自動運動とは異 なっている。また Michels ら. 16). は X 線による連続撮影. で肩関節外転時の 2 kg 負荷時の肩甲上腕リズムを検討 し,負荷の影響はなかったことを報告している。  近年 3D-to-2D レジストレーション法を用いた肩関節 の動態解析の報告が散見されるようになっている Matsuki ら. 5‒7). 。. 6). は無負荷での肩関節肩甲骨面上外転運動に. おいて,肩甲上腕関節における上腕骨の回旋角度を測定 している。彼らは下垂位から 60°までに上腕骨は 15°外 旋し,その後,最大挙上位までに 9° 内旋すると報告して いる。肩関節外転時の肩関節外旋角度は諸家の報告 でばらつきがあるが,Matsuki ら. 1‒4). 6). はこの外旋角度の違. いについて測定方法や被験者,動作の条件による差異と 考えられるが,もっとも大きな理由は解剖学的な座標系 の設定の違いによるものであると考察している。今回, 我々の結果では無負荷群においては下垂位より外旋し続 け,最大挙上位までで 26.5°外旋した。この違いは外転 速度の違いなど動作条件の差異が挙げられる。たとえば 外 転 速 度 に つ い て 我 々 は 120 °ま で を 3 秒 で 外 転 し, Matsuki らは最大外転角度まで 1 秒で外転していると いった違いがある。また健常肩であっても個々の機能は 異なるため,肩甲骨の機能も含めた検討が必要である。  本研究の限界は被曝の問題がある点,ならびに透視像 を一方向で撮影しているため,画像の奥行き方向の精度 に劣る点である。松木ら. 8). は,一方向透視では透視画. 像内の上下左右の移動誤差は 0.4 mm,回旋が 0.6°であ るが透視画像の奥行き方向の上下左右の移動誤差は 4.6 mm,回旋が 3.0°でありやや精度が劣るため,奥行 き方向の精度が必要となる動作解析では二方向透視が望 ましいと報告している。しかし被曝量の問題もあるため 適応を十分に検討する必要があることも述べているた め,必要に応じて一方向透視と二方向透視を使い分ける べきである。 結   論  本研究は 3D-to-2D レジストレーション法を用いて上 肢挙上時の肩甲骨関節窩に対する上腕骨の回旋角度を検 討した。今回は対象の肩関節肩甲骨面上外転動作を無負 荷時と 3 kg 負荷時の 2 つの条件で撮像し,無負荷群と 3 ㎏負荷群の二群に分けて比較を行った。下垂位から肩 甲骨面上外転 120°までで上腕骨は無負荷群では 26.5°, 3 kg 負荷群では 16.8°外旋したが,群間で有意差はな. 利益相反  本論文に関連して開示すべき利益相反はありません。 文  献 1)Ludewig PM, Vandana P, et al.: Motion of the shoulder complex during multiplanar humeral elevation. J Bone Joint Surg Am. 2009; 91: 378‒389. 2)Browne AO, Hoffmeyer P, et al.: Glenohumeral elevation studied in three dimensions. J Bone Joint Surg Br. 1990; 72-B: 843‒845. 3)Hallstr m E, K rrholm J, et al.: Shoulder kinematics in 25 patients with impingement and 12 controls. Clin Orthop Relat Res. 2006; 448: 22‒27. 4)Stokdjik M, Eilers PH, et al.: External rotation in the glenohumeral joint during elevation of the arm. Clin Biomech. 2003; 18: 296‒302. 5)Kon Y, Nishinaka N, et al.: The influence of handheld weight on the scapulohumeral rhythm. J Shoulder Elbow Surg. 2008; 17: 943‒946. 6)Matsuki K, Matsuki KO, et al.: Dynamic in vivo glenohumeral kinematics during scapular plane abduction in healthy shoulders. J Orthop Sports Phys Ther. 2012; 42: 96‒104. 7)Nishinaka N, Tsutsui H, et al.: Determination of in vivo glenohumeral translation using fluoroscopy and shapematching techniques. J Shoulder Elbow Surg. 2008; 17: 319‒322. 8)松木圭介,和田佑一:肩関節における 2D / 3D レジスト レーション法の精度─ 1 方向および 2 方向透視での検討─. 臨床バイオメカニクス.2012; 33: 151‒156. 9)保刈 成:肩関節安定性の評価:cineradiography を用い た研究.日関外誌.1995; 16: 151‒160. 10)de Groot JH, Valstar ER, et al.: Effect of different arm loads on the position of scapula in abduction postures. Clin Biomech (Bristol, Avon). 1999; 14: 309‒314. 11)Forte FC, de Castro MP, et al.: Scapular kinematics and scapulohumeral rhythm during resisted shoulder abduction: Implications for clinical practice. Phys Ther Sport. 2009; 10: 105‒111. 12)Magermans DJ, Chadwick EKJ, et al.: Requirements for upper extremity motions during activities of daily living. Clin Biomech (Bristol, Avon). 2005; 20: 591‒599. 13)Banks SA, Hodge WA: Accurate measurement of threedimentional knee repalacement kinematics using singleplane fluoroscopy. IEEE Trans Biomed Eng. 1996; 43: 638‒649. 14)信原克哉 : 肩:その機能と臨床(第 3 版) .医学書院,東京, 2001,pp. 35‒40. 15)Saha AK: Dynamic stability of the glenohumeral joint. Acta Orthop Scand. 1971; 42: 491‒505. 16)Michiels I, Grevenstein J: Kinematics of shoulder abduction in the scapular plane: On the influence of abduction velocity and external load. Clin Biomech (Bristol, Avon). 1995; 10: 137‒143..

(6) 20. 理学療法学 第 46 巻第 1 号. 〈Abstract〉. Analysis in vivo Humeral Rotation using Fluoroscopy and Shape-matching Techniques. Yuji TAKAHASHI, PT, MSc, Hisayo OZAKI, PT, PhD, Shinichi CHIBA, PT, PhD Showa University School of Nursing and Rehabilitation Science Yuji TAKAHASHI, PT, MSc Department of Rehabilitation, Showa University Koto Toyosu Hospital Naoya NISHINAKA, MD, PhD Research Institute for Sports and Exercise Sciences Showa University Takayuki MATSUHISA, MD, PhD Department of Orthopaedic Surgery, Showa University Fujigaoka Hospital Hisayo OZAKI, PT, PhD Department of Rehabilitation, Showa University Fujigaoka Hospital Shinichi CHIBA, PT, PhD Department of Rehabilitation, Showa University Hospital Hiroaki TSUTSUI, MD, PhD Department of Sports Orthopaedic Surgery, Showa University Fujigaoka Rehabilitation Hospital. Introduction: External humeral rotation clears the greater tuberosity from beneath the coracoacromial arch and also relaxes the capsular ligamentous constraints, thereby allowing maximum abduction. Kinematics of the glenohumeral joint have been analyzed using various methods. Several studies reported that a loaded condition causes changes in the scapulohumeral rhythm during arm abduction, but few studies reported kinematics of the glenohumeral joint under the loaded condition. The aim of the present study was to determine the influence of loading a 3-kg wrist weight on the external rotation of the humerus during abduction in the scapular plane using a three-dimensional (3D)-to-two-dimensional (2D) model registration technique in vivo. Methods: Eighteen dominant side shoulders in 18 subjects (8 males, 10 females; average age 27.9 years, range 23 ‒ 38 years) were studied. Each participant performed two trials of arm abduction in 0° ‒ 120° in the scapular plane while holding a thumbs-up position. Loading with a 3-kg wrist weight was applied in one trial, and no loading was applied in the other trial. 3D motions of the scapula and humerus were determined using model-based 3D-to-2D registration techniques. Motion data were grouped into 5° intervals of shoulder abduction for loaded and unloaded conditions and compared using two-way repeated-measure analysis of variance (p = 0.05) and t-tests. Results: The humerus was more than 10.1° externally rotated in the starting position in loaded trials compared with unloaded trials. From the starting position to 85° glenohumeral abduction, the humerus was externally rotated an average of 16.8° in loaded trials and 26.5° in unloaded trials. There was no significant difference in the rotational value between the two groups. Discussion: The results of this study revealed that the humerus exhibits the similar external rotation in both loaded and unloaded conditions to clear the greater tuberosity from beneath the coracoacromialarch. Key Words: Glenohumeral joint, Rotation, 3-D motion analysis.

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