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これからの理学療法の話をしよう

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Academic year: 2021

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これからの理学療法の話をしよう 311 はじめに  日本に理学療法士が誕生して約 50 年,半世紀が経過した。 私たち理学療法士にとって,築き上げてきたものをより確かな ものにしていくための「大切な半世紀」であった。現在,日本 の社会情勢は,少子高齢化社会を迎えたことで,医療・福祉の 様々な法制度改革が行われ,私たちを取り巻く医療の現場は, めまぐるしく変化している。そこで,本学術研修大会のテーマ である「理学療法の専門性と可能性∼ 10 年後を見据えて∼」 に沿って,制度の変遷を振り返り,10 年後の将来を見据えた 視点でこれからの理学療法を考えてみたい。 制度改革  1965(昭和 40)年に「理学療法士及び作業療法士法」が施 行され,理学療法士が誕生した。それは 1961(昭和 36)年に 国民皆保険が実現して間もなくの頃である。  医療保険制度は,1927(昭和 2)年に施行された労働者の被 用者保険からはじまり,市町村などが運営する国民健康保険 の制度が整備され,1961 年に国民皆保険が実現した。その後, 医療問題の変遷に伴って,1985(昭和 60)年に第 1 次改正医 療法が施行され,以降 2007(平成 19)年に第 5 次改正医療法 が施行となるなど,現在までに様々な制度改革が行われた。第 5 次改正では,医療法全般に亘って大幅に改正され,患者の選 択に資する医療機関情報提供の推進,広告規制緩和,医療安全 対策の強化,患者相談窓口設置の努力義務,医療計画の見直し, 医療機能の分化・連携,行政処分を受けた医師等への再教育, 医療法人制度の改革などが定められた。また,診療報酬は原則 として 2 年に一度,定期的に見直されており,これは理学療法 士として把握しておかなければならない情報である。  社会福祉に関しては,1946(昭和 21)年に生活保護法,1947 (昭和 22)年に児童福祉法,1949(昭和 24)年に身体障害者福 祉法のいわゆる福祉三法が制定された。また,児童福祉法と ともに学校教育法が制定され障害児に教育の機会が,さらに 1979(昭和 54)年の養護学校義務化により,すべての児童に おいて教育の機会が得られるようになった。  障害者福祉は,身体障害者福祉法,知的障害者福祉法,精神 保健および精神障害者福祉に関する法律,児童福祉法その他障 害者および障害児の福祉に関する法律などにより,行政の措置 決定でサービスを受ける形になっていた。しかし,利用者の意 向が尊重されにくいという問題点を解決するため 2003(平成 15)年に支援費制度が導入された。支援費制度は,身体障害者 および知的障害者を対象として,障害者の自己選択・自己決定 を前提としたノーマライゼーション実現をめざす社会福祉基礎 構造改革の理念を基に導入され,必要に応じて契約に基づいて サービスを利用する制度である。しかし,サービス利用場所の 制限等,積み残した問題点が多くあり,また措置制度から契約 制度への移行によりサービス利用者が急激に増加し,予算が深 刻化したことから,2006(平成 18)年に精神障害者も含めて 障害種別にかかわらずサービスを一元化とする障害者自立支援 法へ移行した。さらに,難病患者を対象に加え,障害程度区分 を見直して,2013(平成 25)年に障害者の日常生活および社 会生活を支援するための法律,通称障害者総合支援法が施行と なった。  理学療法の対象者は,多くの方が障害をもっている。理学療 法士は,対象者の人生の支えとなる法制度を理解して対応する ことが必要である。  高齢者の社会保障については,かつては老人福祉法が担って いたが,財政の圧迫を打開するために,医療分野を切り離し, 1982(昭和 57)年に老人保健法が制定された。老人保健法は 医療事業や保険事業を無料から有料に切り替え,そこに該当し ない場合のみを老人福祉法で担うという体制とされた。しかし またもや財政は破綻し,介護部門を賄う財源として 2000(平 成 12)年に介護保険法が制定された。そこで高齢者福祉を担 うシステムとしては,まず老人保健法と介護保険法が適用さ れ,やむを得ない場合のみ老人福祉法を適用するという形式と なった。介護保険法は,原則として 3 年を 1 期として計画が進 められ,見直し改正されている。医療保険改正と併せて動向を 把握しておかなければならない。現在,老人保健法は,高齢者 医療の確保に関する法律へと変わり,医療事業は後期高齢者医 療制度へ,保険事業は健康増進法へ移行した。 理学療法学 第 42 巻第 4 号 311 ∼ 312 頁(2015 年)

これからの理学療法の話をしよう

─制度の変遷から─

清 宮 清 美

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基調講演「これからの理学療法の話をしよう」

Let’s Talk about the Future of the Physical Therapy Based on the Change of the Public Medical Welfare System

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埼玉県総合リハビリテーションセンター (〒 362‒8567 埼玉県上尾市西貝塚 148‒1)

Kiyomi Kiyomiya, PT: Saitama Prefectural Rehabilitation Center キーワード:医療保険制度,福祉制度,障害者

Japanese Physical Therapy Association

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理学療法学 第 42 巻第 4 号 312 地域包括ケアシステム  厚生労働省は,団塊の世代が 75 歳以上となる 2025 年を目途 に,高齢者が生きがいや役割をもって住み慣れた地域で生活が できることの実現のため,地域包括ケアシステムを構築するこ ととしている。人口が横ばいで 75 歳以上人口が急増する大都 市部や 75 歳以上人口の増加は緩やかだが人口は減少する町村 部等,高齢化の進展状況には地域格差がある。地域包括ケアシ ステムは,被保険者である市町村や都道府県が,地域の自主性 や主体性に基づいて,地域の特性に応じてつくり上げていくこ とが必要である。  介護保険法第 5 条第 3 項には,「国及び地方公共団体は,被 保険者が住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常 生活を営むことができるよう,保険給付に係る保健医療サービ ス及び福祉サービスに関する施策,要介護状態等となることの 予防又は要介護状態等の軽減若しくは悪化の防止のための施策 並びに地域における自立した日常生活の支援のための施策を, 医療及び居住に関する施策との有機的な連携を図りつつ包括的 に推進するよう努めなければならない。」と地域包括ケアに係 る理念規定が創設されている。  以上のことから,地域包括ケアシステムの構築には,急性期 から維持期まで,臨床から教育・研究までの理学療法士が領域 とするすべてが,それぞれに専門性を活かして力をあわせてい かなくてはならない。  現在,団塊の世代が後期高齢者となる約 10 年後に向けて対 応するべく,日本理学療法士協会と都道府県理学療法士会が協 同して体制整備を行っている。障害者のみならず,多くの方が 健康な後期高齢者になれるよう予防的な観点からも対応が必要 であり,我々理学療法士の担う役割は大きく,積極的な関与を 望まれている領域である。 これから  理学療法は,小児から高齢者まで様々な年代を対象として, 障害者の社会復帰を目標に施行する。少子高齢化により対象者 の高齢比率が高まり,高齢者を対象とする機会が増えることに 間違いはないが,障害をもった高齢者が主軸であることを忘れ てはならない。障害を評価して対応することは,まさに理学療 法士だからできることである。そして対象者の身体機能や社会 的背景等の状況によって,優先される制度を選択し,それをど のように助言するのか,制度を熟知した適切な対応が望まれ る。また,理学療法士は対象者の人生のほんの一部にしかかか わることはできないが,それは大変重要なかかわりであり,対 象者の人生に大きな影響を与えている。急性期から維持期・生 活期まで,それぞれにかかわる理学療法士は,対象者の一生が 見通せるような広い視野をもち,連携して切れ目のない援助を することが望まれる。  私が理学療法士の免許を取得したのは,ノーマライゼーショ ンを掲げた国際障害者年の頃であった。当時は,障害者・リハ ビリテーション・社会復帰などの言葉が世に知れはじめた頃で ある。その後,社会情勢の変化と様々な制度の変遷とともに, 理学療法士としての自身の立場を考え,医療・福祉領域に携 わってきた。制度によっては,理学療法とは直接関係ないと判 断する場合もあると思われるが,これからの理学療法を考える きっかけの一助となれば幸いである。 文  献 1) 厚生労働省ホームページ.http://www.mhlw.go.jp/(2014 年 9 月 1 日引用) 2) 文部科学省ホームページ.http://www.mext.go.jp/(2014 年 9 月 1 日引用)

Japanese Physical Therapy Association

参照

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