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システム理論に基づくICT利活用プロジェクトのリスク低減化手法の研究

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Academic year: 2021

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平成 29 年度学長裁量研究成果報告(様式2号)その2 1

システム理論に基づく ICT 利活用プロジェクトのリスク低減化手法

の研究

研究期間 平成29 年度 研究代表者名 日下部茂 共同研究者名 小松文子、加藤雅彦、荒木啓二郎 1.

はじめに

ICT 技術の利活用がますます進み、種々の利便性が向上すると同時にそのリスク低減 の重要さも増している。セキュリティ関連も含め、従来にない多様な利用・接続形態 に起因するリスクも増加しており、本研究はその対処のための方法論について研究を 行った。ICT 分野では従来から仕様や設計の確信度を高める方法論などが研究開発さ れているが、社会技術システムでの多様化する ICT 利活用のリスク低減に対しては必 ずしも有効とは言えない。本提案では、システム理論にもとづく手法をベースに、幅 広い利害関係者が効果的に利用可能なリスク低減のモデル化と分析法の研究を行った。 2.

研究内容

ICT 分野は技術革新のスピードも速く、細分化された個別の技術だけに注目ことも多 いが、そのような場合俯瞰的なシステムレベルの問題が見えず、適切なリスクの評価 が困難となる可能性がある。本研究は、システム理論に基づく方法論により、このよ うな問題を回避できるようなリスク低減のモデル化・分析の方法論に取り組む点に特 色がある。ICT システムのプロジェクト開始当初にしかるべき利害関係者がリスク分 析をせずにプロジェクトを進め、システムの開発の最中や運用後にリスクが顕在化す る場合の深刻さはこれまでも指摘されてきた。しかしながら、現実にはその費用対効 果の見えにくさなどに起因し、リスクの分析は軽視もしくは敬遠されがちであるため、 費用面を含め、多様な利害関係者が障壁を感じずに利用できる方法論が必要と考える。 ICT 開発プロジェクトでは、対象システムの確信度を高めようと数理学的な手法を 用いる場合もあるが、その手法の非専門家にとって理解し難い記法が使われている場 合、多くの利害関係者には理解できず、必要なリスク分析が効果的に行われない可能 性がある。そのため、本研究は多様な利害関係者に理解容易であるような記法を用い た、適切な抽象度のトップダウンのモデル化・分析を可能とするアプローチを採用す る。これにより、多くの利害関係者にとっても分析が容易で、なおかつプロジェクト の具体化に応じて、専門家が厳密な分析を行うことが可能となる。

(2)

平成 29 年度学長裁量研究成果報告(様式2号)その2 2 3.

研究成果

複数の観点から研究を進めたが、そのうちの二つを紹介する[1,2]。これらの研究は対外発 表を行い、その一つは企業との共同研究の契約に結び付くといった成果もあった。 近年、データの収集や分析を行いながら、人と多様な機器やシステムが相互に作用する ようなサイバーフィジカルシステム(CPS)が普及している。そのような CPS を安全安心な ものにするために、従来は個別に対処されてきた、セーフティやセキュリティといった複 数の観点からリスクを分析することが必要である。そのような複数の関心事を統合的に扱 い、相互に関連する要件や、類似するリスクの分析を限られた開発リソース効果的に実施 できる統合的な開発手法の必要性が高まってきている。CPS 分野のうち特に車のオンボ ードネットワークにおけるセキュリティ要件抽出に関する動向をまとめ、セーフティの分 野で利用されているシステム理論による分析手法であるSTAMP/STPA を、セキュリティ に関連した脅威分析を含める統合的に行うことを検討し対外発表を行った。 また、人の行動を対象とする場合は、ICT ツールを使うプロジェクトであっても、その 関係者間の相互作用にリスクがあることを分析して示した。九州工業大学では、ツールに より記録した自身の開発データに基づき、自身が開発するソフトウェアの品質改善を図る ような、ソフトウェア技術者教育のコースを提供している。このコースは完了できた場合、 ツール支援による自律的な自己改善が定着するという、高い教育効果があるが、受講者の コース完了の割合が期待を下回ることが続いていた。このような問題に、システム理論に 基づく手法を用いることで、既存の指導法を構造化し、受講者と多様なステークホルダと 相互作用にリスクがあることが分析でき、系統的な対策立案を可能とした。 4.

おわりに

本提案では、多様化する ICT の利用・接続形態に起因するリスクが増加している状況 に対し、多様な利害関係者を含め広く効果的に使えるような、システム理論にもとづ くリスク低減のモデル化と分析の方法を研究した。他学科や他大学の研究者と共同で、 セキュリティの問題や、教育プロジェクトに適用し一定の成果を上げた。これらの成 果をさらに発展させることに加え、地域活性化といった、期間内に成果を上げられな かった点についても今後の課題として、教育研究活動を継続していく予定である。

参考文献

[1] 小松文子,日下部茂,サイバーフィジカルシステムに対するシステム理論による脅威 分析の検討,暗号と情報セキュリティシンポジウム(SCIS2018),2E3-5, 2018 年

[2] Shigeru Kusakabe 他, Managing Personal Software Process Education Course

Based on Motivation Process Model by Using System-Theoretic Method STAMP/STPA, 11th International Conference on Project Management, 2017

参照

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