アミオダロン塩酸塩速崩錠
「TE」の開発
トーアエイヨー 研究開発部
製薬技術研究所 製剤技術センター
菊池 浩一
1本日の内容
●
会社紹介
●
製品開発コンセプト
規格追加,速崩錠の申請
●
製剤設計
製造方法,誤投与対策,製剤評価
2会社紹介(アミオダロン錠)
不整脈治療剤(日本薬局方)アミオダロン塩酸塩
速崩錠50mg・ 100mg
発売
特徴:二つの日本初!!
①
日本初のアミオダロン50mg 錠
医療現場の要望 “より細やかな用量調節をしたい”に貢献.②
日本初のアミオダロン速崩錠
・服用のし易さ考慮 ・少量の水で速やかに崩壊 “服薬コンプライアンス向上”に貢献3
製品開発コンセプト
4製品開発コンセプト
~先発製剤~
アンカロン錠(100 mg)
成分:
アミオダロン塩酸塩
Vaughan Williams分類第Ⅲ群
に属する
抗不整脈薬
として,世界各国で広く使用されている.
有効性が高いものの重篤な副作用として,間質性肺
炎等が認められている.
その適応は「生命の危機のある再発性不整脈で他の
抗不整脈が無効か,又は使用出来ない場合」となっ
ている.
切り札的な使用
用量調節する機会が多くて大変.
分割し難い
分割片の管理が大変
製品開発コンセプト
~医療ニーズの確認~
6
アミオダロン塩酸塩
・Essential Drug である. ・“最後の切り札”的使用.個々の患者にあわせた適切な投与設計が必要
副作用の問題 ・間質性肺炎 ・肺胞炎 ・肺繊維症 ・肝障害低用量規格製剤(50 mg)の開発
調剤時曝露の問題 ・頻度の多い分割 規制区分上毒薬 ・厳重な管理が必要 ・端数の分割片の問題規格追加に関するまとめ
7・用量調節が可能な
低用量規格製剤
・複数錠飲んでも負担にならない
服用性の良さ
・高齢者にも飲みやすく
取り扱いやすい
・速崩壊性を有する服用性の良い50mg錠.
・両規格とも直径6~9mmの範囲で,
割線を持つ錠剤.
製品開発に関するまとめ
8製剤設計
9
~原薬物性~
原薬特性から考えられる製剤設計上の課題 1)微妙な溶解性を示す.水での溶出挙動.=溶出BE難しい 2)原薬物性の制御が必要.=打錠障害リスク 付着性が高い. 圧縮成形性に乏しい。 水にぬれると油状化?する. 3)主薬用量が多い.錠剤が大きくなりすぎる. CO O CH2CH2CH2CH3 OCH2CH2N CH2CH3 CH2CH3 I I ・ HCl CO O CH2CH2CH2CH3 OCH2CH2N CH2CH3 CH2CH3 I I ・ HCl 10~製造方法~
・恒常的な品質を保証出来ること
・
製造上の問題点を精査
すること
・目的とした特性を持つ製剤とすること
・自社の
製造ラインを考慮
すること
造粒
乾燥
整粒
混合
打錠
~製造方法~
12
~造粒~
結合液①予備混合1
②予備混合2
③造粒
④表面改質
造粒イメージ
ポイントは,造粒時の添加剤投入のタイミング!!
13~混合~
・崩壊性を付与する
・打錠末の粒度を揃える
・
服用感を向上
させる
混合工程のポイント
14~打錠~
打錠障害の発生
-キシミ-
臼の内壁に杵の動きを阻害する固着が発生15
~打錠~
打錠障害の発生 -キシミへの対応-
・
杵チップ部分の短縮による改善
・
杵と臼のクリアランスを精査
杵臼のクリアランスを適度に 設けることによって,キシミの発生抑制
・
杵側面への特殊加工処理
スティッキング抑制の為に施した 加工処理を側面に付与
・
臼内壁へのメッキ処理
16求められたデザイン
・識別性の良い・大きな刻印
⇒ 片面割線で片面刻印
・付着を生じさせない面形成
⇒ ややゆるめな曲面
・分割性の優れた割線
⇒ 厚みの30%程度欲しい
~杵デザイン設計~
~杵デザイン設計~
18
~医療過誤防止対策~
表に
製品名
と規格および
薬効名
「不整脈治療剤」の記載
さらに
1錠ごとに
切り離しても
製品確認しやすい
設計
意匠登録第1394886号 他 19~医療過誤防止対策~
裏にも
製品名
と規格および
薬効名
「不整脈治療剤」の記載
バーコードを表示
20製剤設計
~製剤評価~
21 0 20 40 60 80 100 120 0 12 24 36 48 時間(hr) 血 漿 中 薬 物 濃 度 (ng/mL) アミオダロン塩酸塩 速崩錠100㎎「TE」 標準製剤100㎎ 1396.06±462.03 1406.43±443.48 83.05±29.37 81.99±25.37 6.7±1.4 6.3±0.7 15.61±2.14 16.14±2.20 製 剤 AUC0-48(ng・hr/mL) CMAX(ng/mL) tmax(hr ) t1/2(hr )
(平均値±標準偏差、n=22) ●:アミオダロン塩酸塩速崩錠「TE」 ●:標準製剤
~体内動態~
22 ※数値は3ロット3回の平均値 条件 規格 試験項目 開始時 1M 3M 6M 12M 24M 36M 含量試験 99.9 100.0 99.3 99.7 純度試験 ≦0.1 ≦0.1 0.2 0.2 硬度 3.9 4.4 4.4 4.2 溶出性 95.2 94.9 94.4 95.2 含量試験 99.4 100.0 99.6 99.8 純度試験 ≦0.1 ≦0.1 0.2 0.2 硬度 4.6 4.7 4.4 4.8 溶出性 95.0 93.7 94.5 94.9 含量試験 99.9 99.7 100.7 100.2 100.6 100.7 純度試験 ≦0.1 ≦0.1 ≦0.1 ≦0.1 ≦0.1 ≦0.1 硬度 3.9 4.2 4.3 4.2 4.5 4.6 溶出性 95.2 93.9 95.2 95.4 93.9 94.1 含量試験 99.4 101.3 100.4 100.3 101.8 100.43 純度試験 ≦0.1 ≦0.1 ≦0.1 ≦0.1 ≦0.1 0.2 硬度 4.6 4.4 4.6 4.3 4.6 4.6 溶出性 95.0 94.4 94.7 95.0 94.3 94.4 40℃ 75% RH 25℃ 60% RH 50mg 100mg 50mg 100mg~安定性試験~ PTP/Al袋
条件 規格 項目 開始時 1M 3M 6M 含量試験 101 100.8 99.8 100 硬度 4.87 1.78 1.55 1.49 溶出性 94 92.7 96.6 91.6 含量試験 99.7 101.2 100.7 99.6 硬度 6.16 2.75 2.12 2.22 40℃ 75% RH 50mg 100mg~安定性試験~ 無包装
24 最小通過 サイズ 5分 10分 5分 10分 適1 8Fr. ○ 適1 ○ 適否 水(約55℃) 破壊→水 懸濁させ方 画分 内容 50mg錠 100mg錠 A1 懸濁液上清 25 14.6 B1 懸濁液沈殿 60.2 70 C カップ・シリンジ 10.6 8.1 D チューブ 0.3 0.4 A1+B1 懸濁液 85.2 84.6 C+D 使用器具 10.9 8.4 A1+B1+C+D 全体 96.1 93.1 A2 懸濁液上清 31.4 18.6 B2 懸濁液沈殿 60.5 75.4 E シリンジ 2.8 2.9 F チューブ 0.3 0.3 A2+B2 懸濁液 92 94.1 E+F 使用器具 3.1 3.2 A2+B2+E+F 全体 95 97.2 カップの中で崩壊・懸濁させて シリンジに加える シリンジ内に直接錠剤を投入して 懸濁させる 原薬付着性から,懸濁のさせ方で,回収率は変化する可能性がある.
~簡易懸濁法への適応~
25 シリンジの種類で吸着量は異なる 懸濁液中の主薬安定性 A社 B社 C社 懸濁液中含量 96.6% 91.3% 92.2% 洗浄・回収液中含量 100.6% 101.6% 103.4% 吸着量 4.0% 10.3% 11.2% ※洗浄・回収液中含量には,チューブ洗浄液を含む 懸濁上澄み 懸濁液沈殿 合計 360分放置後含量 50mg錠1錠 47.6mg(95.1%) 2.0mg( 4.0%) 49.6mg(99.1%) 100mg錠1錠 98.0mg(98.0%) 1.5mg( 1.5%) 99.5mg(99.5%)~簡易懸濁法への適応~
26 入院患者で,「中には口の中に入れておいてあとでベットの下に捨てる患者もいて困っ ている.速崩錠なら少しの水で口の中で崩壊するから服薬コンプライアンスの向上が期 待できますね」とご評価いただいた. 水を入れたカップに錠剤を入れたところすぐに溶け始め,少し振っていたので15秒ほど で溶けた.「これは良いですね~」との反応で,是非使いたいとのお話でした. 速崩錠へのご評価 50mg錠へのご評価~発売後の反響~
アミオダロンとワーファリンとを併用する事が多く,相互作用で出血して大変な事に なった経験がある.50mg錠があるのは非常に助かる. 実は処方には1日50mgの処方が結構あり分割して患者に渡している. 50mg錠なら,100mg錠を半分に割らなくてもそのままPTPで提供できるので楽. また,患者さんも半錠の薬を飲むよりはPTPから出して錠剤を飲む方が,衛生的で気持 ちが良いのではないか.27 ①パンフレットの毒薬の文字が小さい.これは毒薬という非常に重要な情報が 分かり難いので大きな文字にした方が良い. ②アミオダロン塩酸塩速崩錠100mg「TE」は名前が長く,処方が大変. ③速崩錠のメリットが薄い.むしろ口腔内で少量の水で溶けるというプロモー ションよりも簡易懸濁法で溶け易いといった方が薬剤師受けするのでは? ④DPCの部分ではメリットあり. ⑤100mg錠に割線があるので50mg錠の必要性は無いのでは? ⑥先発品にない50mgや速崩錠という特徴をもった製品である点は評価できる (100mgを割って150mg/日という処方も良く出ている).ただ,残念な のは50mgと100mgが同じ白色の錠剤である点.大きさの違いがあるかも しれないが同じ白色だと一包化した時に間違いが起こるかもしれない.せっ かく50mg,速崩錠と特徴を持った良い製剤を作っているのに,どうして錠 剤の色を変える工夫しなかったのか. ご指摘・ご意見・ご要望