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Academic year: 2021

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(1)

製紙用顔料及び填料の熱重量分析

東京大学 大学院農学生命科学研究科 紙パルプ技術協会紙パルプ 試験規格委員会委員 江前敏晴 Thermogravimetric analysis of pigments and fillers for papermaking

Toshiharu Enomae Graduate School of Agricultural and Life Sciences

Contact e-mail address: enomae@psl.fp.a.u-tokyo.ac.jp

和文要旨

熱重量分析により、クレー、二酸化チタン、タルク、炭酸カルシウム及び A2 コート紙の熱分解 温度について測定したところ、クレーは約 350 ℃付近、タルクは約 450 ℃付近から質量減少が始 まった。市販 A2 コート紙に含まれるクレーの分解は 350 ℃付近で始まった。“ISO 1762:2001, Paper, board and pulps − Determination of residue (ash) on ignition at 525℃”で述べられている“クレーは 525 ℃では分解しない”という部分は明らかな誤りであることがわかった。炭酸カルシウムは 580 ℃付近から質量減少が始まり、JIS P 8251:2002 で規定されている灰化温度 525 ℃ではまった く分解しないことがわかった。従来の灰化温度 575 ℃でも分解が起こらないことになるが、マッ フル炉の性能上、規格では±25 ℃の精度を認めているので、改正で灰化温度を 525℃に下げたの は妥当であると考えられる。二酸化チタンは 1000 ℃までは質量減少がなかった。 Abstract

Thermogravimetric analysis was applied to several kinds of pigments and fillers for papermaking to examine exact temperatures from which mass reduction commences. Clay and talc began to reduce mass from about 350 °C and 450 °C, respectively. Clay contained in coated paper began to reduce mass from about 350 °C. Therefore, “Other fillers and pigments (than calcium carbonate) such as clay and titanium dioxide are also unaffected by ashing at 525 °C.”stated in ISO 1762:2001, “Paper, board and pulps - Determination of residue (ash) on ignition at 525 °C”was found to be apparently wrong. Calcium carbonate began to reduce mass from about 580 °C, suggesting no decomposition at 525 °C specified in JIS P 8251:2002. The result also suggests no decomposition even at the ashing temperature 575 °C specified in the previous edition of ISO 1762. However, the standard tolerates an accuracy of ±25 °C due to technical difficulty in temperature control of muffle furnaces. So, it is appropriate that the ashing temperature was lowered from 575 to 525 °C in the revision. There was no mass reduction

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for titanium dioxide up to 1000 °C.

Keywords : ash, clay, calcium carbonate, talc, thermogravimetric analysis, titanium dioxide

1 緒言 紙パルプ技術協会の紙パルプ試験規格委員会では、最近 “灰分試験方法”に関する 2 つの JIS について素案を作成した。この素案は原案作成委員会での審議を経て既に正式な JIS 原案となって おり、平成 14 年の 12 月頃に制定及び発行が予定されている。この 2 つの JIS の正式な文書番号と 標題は、“JIS P 8251:2002 紙,板紙及びパルプ − 灰分試験方法 − 525℃燃焼法”及び“JIS P 8252:2002 紙,板紙及びパルプ − 灰分試験方法 − 900℃燃焼法”である。関連規格として“JIS P 8003 パルプ及び製紙用パルプの灰分試験方法”及び“JIS P 8128 紙及び板紙の灰分試験方法” があるが、新 JIS の制定と同時に廃止される予定である。2 つの新 JIS は、それぞれ“ ISO 1762:2001, Paper, board and pulps − Determination of residue (ash) on ignition at 525℃”及び“ISO 2144:1997, Paper, board and pulps − Determination of residue (ash) on ignition at 900℃”に整合化している。

JIS P 8251 の素案作成の際、対応国際規格である ISO 1762 にある記述の中に一部疑問な点がある ことがわかった。適用範囲( 1 Scope)に“In samples containing calcium carbonate, there is practically no decomposition of carbonate by ashing at 525 ℃. Other fillers and pigments such as clay and titanium dioxide are also unaffected by ashing at 525 ℃.”との記述があり、“クレーは 525 ℃では分解しない”

と述べているに等しい。しかし、文献1)にある熱重量分析結果を示すグラフから、クレーは 450∼ 500 ℃で熱分解が始まり 525 ℃で約 5 %の質量減少があることが読み取れ、ISO 規格の記述と矛盾 する。しかし、この文献のグラフでは、100∼350 ℃の間でも約 0.8 %の質量減少が徐々に起きた ことを示している(通常この温度では質量変化はない)ことから実験装置自体の精度が高くない と考えられる。さらに約 600 mg もの多くの試料を用いて測定しており、10 ℃/min の昇温速度で 内部まで均一な温度を維持しているかどうか疑わしい。 ISO 1762 は 2001 年に改正されたが、この経緯を解説する文献2)には、塗工紙を用い、規格の操 作手順に従って 525 ℃及び 575 ℃で灰化試験を行った結果が示されている。炭酸カルシウムを含 まない塗工紙に関しては、525 ℃及び 575 ℃での灰分の差は 1 %以下であると考察されているが、 結果を示す表にはクレーだけを顔料として含む塗工紙で約 5.7 %の差を示している試料がある。 これはクレーが 525 ℃と 575 ℃の間の温度で熱分解が起きた可能性を残している。 このように、クレーの分解温度に関して ISO 原案作成者の認識も不確実と考えられる点が多い ので、比較的新しい熱重量分析装置を用い、クレーなどのいくつかの製紙用填料及び顔料数種に ついて熱重量分析を行った。その結果について報告する。 2 実験 2.1 試料 表 1 に試料として用いた填料及び顔料(以下、内添の填料にも用いられるものも含め顔料と呼

(3)

ぶ)を示す。クレー(カオリン)3 種、重質炭酸カルシウム 1 種、軽質炭酸カルシウム 2 種(カル サイトとアラゴナイト各 1 種)、二酸化チタン 2 種、タルク 1 種の合計 9 種類を用いた。市販 A2 コート紙の熱重量分析も合わせて行った。顔料の ISO 白色度は粉体を初期荷重 1 t で約 1 分間プレ スし、直径 13 mm、厚さ 1∼5 mm のペレットに成型して測定した。 2.2 熱重量分析装置と測定条件 装置は、真空理工㈱製 示差熱天秤 TGD-9600 を使用した。赤外線ゴールドイメージ炉により室 温∼1500 ℃の温度範囲で使用できる。1 回の測定では、最大 0.1 ml の試料を白金パンに入れるこ とができ、顔料ではおおよそ 20∼40 mg の質量に相当する。試料の採取量は、表 1 に示してある。 密度、粒子形状および粒子径の分布によって顔料及び填料の粉体密度が異なるため、20.9∼41.4 mg の範囲で測定を行った。窒素雰囲気下で昇温し、窒素ガスは 200 ml/min の速度で流した。一般に 灰分測定は空気雰囲気下で行うが、填料や顔料の熱分解は酸化反応ではないため、雰囲気が窒素 であるか酸素を含む空気であるかは無関係であるが、実際に無関係であることをクレーについて 確認した。温度制御は、最初の 15 分は 100 ℃を維持し、そのあと 5 ℃/min の速度で 1000 ℃(ク レーは 800 ℃)まで昇温した。質量の変化は 1 秒ごとに記録した。 2.3 蛍光 X 線元素分析装置と測定条件 試料中の元素組成とおおよその不純物量を見積もるために㈱堀場製作所製 エネルギー分散型 蛍光 X 線元素分析装置 MESA-500 を使用し、蛍光 X 線スペクトルを測定した。粉体試料はセル に詰めてポリエチレンフィルムで覆ってから測定に供した。管電圧 50 kV、管電流 92∼500 µA、 測定時間 50 s、分析径φ5 mm の条件で行った。 2.4 X 線回折 A2 コート紙に含まれる顔料を推定する目的で X 線回折測定を行った。理学電機㈱製 X 線回析 装置 RINT-2000 を使用した。管電圧 40 kV、管電流 40 µA で、Cu-Kα線を用いた。 3 結果と考察 3.1 熱重量分析 100 ℃を 15 分間維持することにより顔料の質量変化はほとんどなくなった。風乾質量からその ときの質量を差し引いた質量が吸着水であると考えると、風乾時の含水率はすべての顔料で 0.5 % 以下であった。図 1 にクレーの熱重量曲線を示す。100 ℃を 15 分間維持した後、昇温を始める時 点からの質量変化である。クレーでは、350 ℃付近から質量減少があり、480 ℃付近で最も質量 減少率が大きくなり 650 ℃付近で質量減少が停止した。この挙動はどの種類のクレーでも一致し ていた。525 ℃では 10.2∼11.0 %、800 ℃(900 ℃でも同程度)では 12.3∼12.8 %の質量減少が 見られた。なお、100∼300 ℃の間及び 700 ℃以降でもわずかに質量が上昇する傾向を示す試料も あったが、熱天秤の誤差と考えられる。カオリンは、Al2Si2O5(OH)4 の組成式で表され、水酸基が 熱分解により水となって放出される3) 。図 2 は各カオリンの蛍光 X 線スペクトルを示す。主構成元 素であるアルミニウム(Al)とケイ素(Si)以外にチタン(Ti)と鉄(Fe)の存在が確認される。 チタンは、TiO2 として存在し純粋なものは白色度が高いが、天然のものは不純物として三酸化二 鉄を含みこれがカオリンの白色度を下げる原因となる。チタンと鉄はスペクトル強度が大きいが、

(4)

実際の含有量はどちらも酸化物の重量濃度で通常 2 %以下である3) 。このような不純物は分解しな いために、純粋なカオリンの熱分解による質量減少の理論値 13.9 %より小さくなる。なお、蛍光 X 線スペクトルの 2.7 keV付近にあるピークは、X 線管のターゲットに使用されているロジウム(Rh) の特性 X 線が現れたもので試料に含まれている元素ではない。 図 3 に二酸化チタン及びタルクの熱重量曲線を示す。二酸化チタンは、1000 ℃以下では熱分解 を全く起こさない安定な物質であることがわかる。1000 ℃までで 2.5 %程度の質量増加が見られ るが装置に由来する誤差である。タルクは、Mg3Si4O10(OH)2の組成式で表されるが不純物を多く含 んでいる。450 ℃付近から熱分解が始まり 660 ℃付近の間に何種類か不純物の熱分解が見られ、 これらは緑泥石(chlorite、(Mg, Fe)4Al4Si2O10(OH)8など)や苦灰石(Dolomite、CaMg(CO3)2)の脱 水反応4) である。図 4 は、二酸化チタンとタルクの蛍光 X 線スペクトルを示す。タルクにはカルシ ウム(Ca)と鉄(Fe)のピークが見られ、これらの不純物の存在を裏付けている。850 ℃付近か らの熱分解は純粋なタルクの脱水による。タルクもまた 525 ℃で既に分解が起きている顔料の一 つということができる。 図 5 に炭酸カルシウム及び A2 コート紙の熱重量曲線を示す。炭酸カルシウムは、重質・軽質及 びカルサイト・アラゴナイトの結晶形の違いによらず、全て 580 ℃付近から分解が始まり、760 ∼820 ℃の間で分解が終了した。質量減少は 40∼46 %程度であり、酸化カルシウムに変化すると きの理論値 44.0 %にほぼ一致した。炭酸カルシウムは、JIS P 8251:2002 で規定されている灰化温度 525 ℃では分解せず、JIS P 8252:2002 で規定されている 900 ℃では全て分解することがわかった。 A2 コート紙は、100 ℃以下で起こる水分の蒸発による質量減少のあと、パルプ繊維及び添加薬品 などの有機物の熱分解による減少が 220 ℃付近から始まった。350 ℃付近以降からは塗工顔料で あるクレーの熱分解由来と考えられる質量減少が重なった。600 ℃前後でこれが終了したあと、 炭酸カルシウムの熱分解と考えられる質量減少が同時に始まり 740℃付近で終了した。この A2 コ ート紙の 525、575 及び 900 ℃の灰化温度における灰分は、それぞれ 28.1、27.7 及び 14.0 %となる。 図 6 は、炭酸カルシウムの蛍光 X 線スペクトルを示すが、3 種類の炭酸カルシウムの構成元素 に差はほとんど見られなかった。図 7 は A2 コート紙の X 線回折パターンを示す。クレー(カオリ ン)と炭酸カルシウム(カルサイト)が含まれていることを示している。 4 結論 熱重量分析により、クレー、二酸化チタン、タルク、炭酸カルシウム及び A2 コート紙の熱分解 温度について測定したところ、クレーは約 350 ℃付近、タルクは約 450 ℃付近から質量減少が始 まった。市販 A2 コート紙に含まれるクレーの分解は 350 ℃付近で始まった。“ISO 1762:2001, Paper, board and pulps − Determination of residue (ash) on ignition at 525℃”で述べられている“クレーは 525 ℃では分解しない”という部分は明らかな誤りであることがわかった。炭酸カルシウムは 580 ℃付近から質量減少が始まり、JIS P 8251:2002 で規定されている灰化温度 525 ℃ではまった く分解しないことがわかった。従来の灰化温度 575 ℃でも分解が起こらないことになるが、マッ フル炉の性能上、規格では±25 ℃の精度を認めているので、改正で灰化温度を 525℃に下げたの は妥当であると考えられる。二酸化チタンは 1000 ℃までは質量減少がなかった。

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引用文献

1) Julia Papp: Svensk Papperstidning nr 17 487 (1980) 2) Söderhjelm, L. and Tehomaa, M.: TAPPI J. 84(5) 57(2001)

3) Sennett, P. : Pigments for paper, Tappi Press, Atlanta, Georgia, USA, 1997, 55-88 4) Trivede, N.C.: Pigments for paper, Tappi Press, Atlanta, Georgia, USA, 1997, 199-214

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Table 1 Pigments and fillers subjected to thermogravimetric analysis

Pigment or Filler Manufacturer

- Product Description ISO Brightness Sample mass, mg

A-1 78.6 20.9 B-1 71.0 36.0 Clay B-2 78.8 36.0 C-1 Precipitated CC, Calcite 94.5 20.9 D-1 Ground CC, Calcite 91.3 41.4 Calcium carbonate

E-1 Precipitated CC, Aragonite 95.2 21.8

F-1 93.5 30.4

Titanium oxide

G-1 93.9 34.3

Talc H-1 80.8 23.8

(7)

-15

-10

-5

0

5

0

100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000

Temperature, ℃

Mass change, %

A-1

B-1

B-2

(8)

0

10

20

30

40

50

60

70

1

3

5

7

Energy, keV

X-ray count, cps

A-1

B-1

B-2

Si

Al

K Ca

Ti

Ti

Fe

Fe

(9)

-15

-10

-5

0

5

0

100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000

Temperature, ℃

Mass change, %

F-1

G-1

H-1

(10)

0

50

100

150

200

250

300

350

1

3

5

7

Energy, keV

X-ray count, cps

F-1

G-1

H-1

Mg

Ti

Al

Si

Fe

Fe

Ti

Ca

Ca

(11)

-100

-90

-80

-70

-60

-50

-40

-30

-20

-10

0

10

0

100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000

Temperature, ℃

Mass change, %

C-1

D-1

E-1

I-1

(12)

0

50

100

150

200

250

300

350

1

3

5

7

Energy, keV

X-ray count, cps

C-1

D-1

E-1

Ca

Ca

Ti

(13)

10

15

20

25

30

35

40

2

θ

, degree

X-ray counts

C: Calcium carbonate (Calcite)

K: Clay (Kaolinite)

K

K

C

C

C

C

C

Cellulose

Table 1 Pigments and fillers subjected to thermogravimetric analysis  Pigment or Filler  Manufacturer

参照

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