安保破棄岡山県実行委員会学習会 ・ 2011 年 10 月 17 日(岡山市勤労者福祉センター)
米軍機の低空飛行を許さないために
中尾
元重
1.低空飛行の被害とその後
(1)全国の低空飛行 (2)3月2日の県北低空飛行 (3)9月26日の県南低空飛行 (4)抗議・要請・申し入れ (5)米軍と政府、防衛省の姿勢2.低空飛行はなぜ起こるのか
(1)米軍の基地特権と日米地位協定の取り決め (2)低空飛行の目的 (3)日米合同委員会の合意3.政府の見解と司法判断
(1)国会答弁 (2)最高裁の判決4.低空飛行を中止させるためには、どうすればよいか
1.低空飛行の被害とその後
(1)全国の低空飛行 1980年代末から全国で激しくなった。 1991年 十津川ケーブル切断事故;当時4ルート 1994年 早明浦ダム墜落事故+当時8ルート 秋葉忠利衆議院議員の低空飛行訓練に関する質問に対する答弁書(199 8年11月13日)・抜粋 政府として米軍機の低空飛行訓練に伴う被害の全体像について、必ずしも そのすべてを把握しているわけではないが、平成6年度以降に約80の地方 公共団体の議会から提出のあった米軍機の低空飛行訓練の中止を求める政府 あて意見書等から判断するところ、米軍機の低空飛行訓練に伴う被害は、墜(2)3月2日の県北低空飛行 井口さん方の土蔵崩壊 学校・幼稚園などを襲った恐怖 (3)9月26日の県南低空飛行 (4)抗議・要請・申し入れ 日本共産党・民主団体の調査と要請行動 津山市・岡山県の対応 (5)米軍と政府、防衛省の姿勢
2.低空飛行はなぜ起こるのか
(1)米軍の基地特権と日米地位協定の取り決め 岡崎ラスク交換公文 ラスク特別代表から岡崎国務大臣あての書簡(抜粋) 安全保障条約第一条に掲げる目的を遂行するため必要な施設及び区域の決定 及び準備に当つては、施設及び区域でそれに関する協定及び取極が日本国との 平和条約の効力発生の日の後90日以内に成立しないものの使用の継続を許さ れれば、幸であります。 1952年2月28日 ディーン・ラスク 日本国国務大臣 岡崎勝男殿 岡崎国務大臣からラスク特別代表あての書簡(抜粋) 日本国政府は、できるだけすみやかに施設及び区域の使用に関する取極を成 立させるため緊急に協議を開始しようという合衆国政府の要望にまつたく同感 であります。 施設又は区域でそれに関する協定及び取極が日本国との平和条約の効力発生 の日の後90日以内に成立しないものの使用の継続を合衆国に許すことを、日 本国政府に代って、確認する光栄を有します。 1952年2月28日 岡崎勝男 合衆国大統領特別代表 ディーン・ラスク殿日米行政協定(1952年4月28日発効)・抜粋 第3条 1 合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定、使用、運営、防衛又 は管理のため必要な又は適当な権利、権力及び権能を有する。 米軍基地特権の継続についての日米密約(抜粋) 日本国における合衆国軍隊の使用のため、日本国政府によって許与され た施設及び区域内での合衆国の権利は、1960年1月19日にワシントン で調印された地位協定第3条第1項の改定された文言のもとで、1952年 2月28日に東京で調印された行政協定のもとでと変わりなく続く。 1960年1月6日 藤山愛一郎ダグラス・マッカーサー二世 日米地位協定(1960年6月23日発効)・抜粋 第2条(施設・区域の提供と返還) 1(a)合衆国は、相互協力及び安全保障条約第6条の規定に基づき、日本国 内の施設及び区域の使用を許される。個個の施設及び区域に関する協定は、 第25条に定める合同委員会を通じて両政府が締結しなければならない。 第3条(施設・区域に関する合衆国の権利) 1 合衆国は、施設及び区域において、それらの設定、運営、警護及び管理の ため必要なすべての措置を執ることができる。 第5条(公の船舶・航空機の出入国、施設・区域への出入権) 1 合衆国及び合衆国以外の国の船舶及び航空機で、合衆国によって、合衆国 のために又は合衆国の管理の下に公の目的で運航されるものは、入港料又は 着陸料を課されないで日本国の港又は飛行場に出入することができる。 2 1に掲げる船舶及び航空機、合衆国政府所有の車両(機甲車両を含む。)並 びに合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族は、合衆国軍隊が使用 している施設及び区域に出入し、これらのものの間を移動し、及びこれらの ものと日本国の港又は飛行場との間を移動することができる。合衆国の軍用 車両の施設及び区域への出入並びにこれらのものの間の移動には、道路使用
航空法の特例に関する法律(1952年7月15日)・抜粋 3 前項の航空機及びその航空機に乗り組んでその運航に従事する者につい ては、航空法第六章の規定は、政令で定めるものを除き、適用しない。 航空法特例法によって航空機運航の際に除外される義務 a 夜間飛行の際の灯火義務 b 飲酒・麻薬・心身障害の操縦禁止 c 出発前の安全確認義務 d 危難の場合の報告義務 e 離着陸場所の特定 t 飛行禁止区域の遵守 g 最低安全高度の遵守 h 巡航高度の遵守 i 速度制限の遵守 j 衝突予防義務 k 編隊飛行の禁止 l 粗暴操縦の禁止 m 爆発物の輸送禁止 n 物件の曳航・投下 o 落下傘降下の禁止 p 曲技飛行の禁止 (2)日米合同委員会の合意 在日米軍による低空飛行訓練について 平成11 年 1 月 14 日、日米合同委員会は、在日米軍による低空飛行訓練につ いて別紙を公表することに合意した。 なお、日米両国政府は、今後、必要に応じ、低空飛行訓練について協議して いくこととなっている。 (別紙) 日本において実施される軍事訓練は、日米安全保障条約の目的を支えること に役立つものである。空軍、海軍、陸軍及び海兵隊は、この目的のため、定期 的に技能を錬成している。戦闘即応体制を維持するために必要とされる技能の 一つが低空飛行訓練であり、これは日本で活動する米軍の不可欠な訓練所要を 構成する。安全性が最重要であることから、在日米軍は低空飛行訓練を実施す る際に安全性を最大限確保する。同時に、在日米軍は、低空飛行訓練が日本の
1 最大限の安全性を確保するため、在日米軍は、低空飛行訓練を実施する区 域を継続的に見直す。低空飛行の間、在日米軍の航空機は、原子力エネルギー 施設や民間空港などの場所を、安全かつ実際的な形で回避し、人口密集地域や 公共の安全に係る他の建造物(学校、病院等)に妥当な考慮を払う。 2 .在日米軍は、国際民間航空機関(ICAO)や日本の航空法により規定され る最低高度基準を用いており、低空飛行訓練を実施する際、同一の米軍飛行高 度規制を現在適用している。 3. 低空飛行訓練の実施に先立ち、在日米軍は、訓練区域における障害物な いし危険物について、定期的な安全性評価の点検を行う。更に、情報伝達及び 飛行計画チャートへの記載のため、パイロットは訓練区域における変化をスケ ジュール策定担当部局に継続的に報告する。 4. 低空飛行を含む訓練飛行の実施に先立ち、飛行クルーは、標準的な運用 手続及びクルーの連携機能をレビューするため徹底したブリーフィングを実施 し、計画された飛行経路を念入りに研究する。また、整備要員と飛行クルーは 離陸に先立ち航空機を点検し、航空機が安全にその任務を遂行することを確保 する。 5. 在日米軍は、日本国民の騒音に対する懸念に敏感であり、週末及び日本 の祭日における低空飛行訓練を、米軍の運用即応態勢上の必要性から不可欠と 認められるものに限定する。 6. 米国政府は、低空飛行訓練によるものとされる被害に関する苦情を処理 するための、現在の連絡メカニズムを更に改善するよう、日本政府と引き続き 協力する。 我が国においては、航空法(昭和27 年法律第 231 号)及び同法に基づく航空法施行規則 (昭和27 年運輸省令第 56 号)に規定されている国際民間航空機関ICAO 条約付属書の基 準に基づく最低安全高度が民間航空機及び自衛隊の航空機に適用されている 航空法 (最低安全高度) 第81 条 航空機は、離陸又は着陸を行う場合を除いて、地上又は水上の人又は物件の安全および 航空機の安全を考慮して国土交通省令で定める高度以下の高度で飛行してはならない。但
航空法施行規則 (最低安全高度) 第174 条 法第81 条の規定による航空機の最低安全高度は、次のとおりとする。 一 有視界飛行方式により飛行する航空機にあっては、飛行中動力装置のみが停止した 場合に地上又は水上の人又は物件に危険を及ぼすことなく着陸できる高度及び次の 高度のうちいずれか高いもの イ 人又は家屋の密集している地域の上空にあっては、当該航空機を中心として水 平距離600 ㍍の範囲内の最も高い障害物の上端から 300 ㍍の高度 ロ 人又は家屋のない地域及び広い水面の上空にあっては、地上又は水上の人又は 物件から150 ㍍以上の距離を保って飛行することのできる高度 ハ イ及びロに規定する地域以外の地域の上空にあっては、地表面または水面から 150 ㍍以上の高度 二 計器飛行方式により飛行する航空機にあっては、告示で定める高度 (最低安全高度の飛行の許可) 第175 条 法第 81 条但書の許可を受けようとする者は、左に掲げる事項を記載した申請書を国土 交通大臣に提出しなければならない。 一 氏名及び住所 二 航空機の型式並びに航空機の国籍及び登録記号 三 飛行計画の概要(飛行の目的、日時、径路及び高度を明記すること。) 四 最低安全高度以下の高度で飛行する理由 五 操縦者の氏名及び資格 六 同乗者の氏名及び同乗の目的 七 その他参考となる事項
3.政府の見解と司法判断
(1)国会答弁 秋葉忠利衆議院議員の質問に対する答弁書(1998年11月13日)・抜粋 米軍は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和3 5年条約第6号)第6条の規定に基づき、我が国の安全に寄与し、並びに極東に おける国際の平和及び安全の維持に寄与するため、我が国において施設及び区域的の達成のため、飛行訓練を含め軍隊としての機能に属する諸活動を一般的に行 うことを当然の前提としているところ、米軍は、個々の飛行訓練の内容等につい て、我が国への連絡を行う必要はない。 米軍の飛行ルートについては、米軍が、飛行訓練の目的達成、飛行の安全確保、 住民への影響抑制等の必要性を安定的に満たすとの観点から、一定の飛行経路を 念頭において飛行することがあることは承知しているが、御質問の具体的ルート の詳細等は、米軍の運用にかかわる問題であり、承知しておらず、また、これら を事前に明らかにするよう米側に求める考えはない。 (2)最高裁の判決 横田基地公害訴訟判決(1993年2月25日) 米軍機による騒音被害を発生させているのは、国ではなくて米軍であるから、米 軍機の離発着の差止めを国に対して請求することが出来るためには、国が、米軍 の運航を規制し制限する立場になければならない。 しかし「関係条約及び国内法令に右のような特段の定めはない。そうすると、 上告人らが米軍機の離着陸等の差止めを請求するのは、被上告人に対してその支 配の及ばない第三者の行為の差止めを請求するものというべきであるから、…… 主張自体失当として棄却を免れない。」(自衛隊機差止請求、米軍機差止請求につ き上告棄却、過去の損害賠償請求につき破棄差戻し。) 新横田基地公害訴訟のうち、米国を被告とする訴訟について、被害住民らの上 告を棄却する判決(2002年4月12日) 「本件差止請求及び損害賠償請求の対象である合衆国軍隊の航空機の横田基 地における夜間離発着は、我が国に駐留する合衆国軍隊の公的活動そのものであ り、その活動の目的ないし行為の性質上、主権的行為であることは明らかであっ て、国際慣習法上、民事裁判権が免除されるものであることに疑問の余地はな い。」