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「紀式部集」(翻刻)

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(1)

﹁紀

式部集﹂︵翻刻︶

中 西 健 治

                                                        学会春季大会で概略を発表した。今般、一部補訂し

凡 例

て・﹁中西智海先生還暦記念論文集゜人間と世界﹂︿永                                                         田文昌堂刊﹀に収載したので、併せて御参照いただけ 一 、 本文作成にあたっては財団法人青山会所蔵本﹁紀式      ればありがたい。なお・翻刻をお許しいただいた財団

戸聲士籍、縫パ誌横二。°九糎の写 法人青山、、に御礼申し上げ・す.︶   一

本で、題按、内題共に﹁紀式部集﹂とある。奥書はな   翻刻        59

が、良玄︵南可︶が校閲・た旨の塾三未見類本 紀式部集       一

  故 以 私 了簡且校猶追可尋 ぬ▼﹂︶がある。 一 ・ 底 本 の 丁 附 を︵1°オ︶︵1°ウ︶などと示した。オ     過しころ春宮たね松かまふけによりてわたらせ   は表の、ウは裏の、略記である。      給ふそのさままことにいみしまらう人たちのお 一 、 底本の表記を改めることはせず、また、底本にある見      ほんともには少將のともの人にまつりこと人松   せ消ちもそのままに示した。 一 ・ 本文中の和歌に番号を付した。上には本集での通し      かたさうくわん春日のむらかけ府生しまのやす   番号、下には宇津保物語との関係を知るに便をはか      のりつかひのおさ大やまとのさたまつ府生山部

るため、﹃校注古典叢書﹄の歌番号をそれぞれ示した。     のかすなり舎人は八人ふしとねりともおなし数 一 、 その他、参考注記を若干付記した。

 ︵﹁紀式部集﹂についての考察は・平成元年度中古文      なり是らはもの、師才人たちなりかたちあるも ﹁紀式部集﹂︵翻刻︶

(2)

﹁ 紀式部集﹂︵翻刻︶         ︵−・オ︶         の ともをはえ﹂らめりつるそへには小舎人さふ    ん         らひの人かたちをえらひてみゆそれらか前にも      少將         机 ともたて﹀いかめしきあるしをし給ふかくて  5聡春かせの吹上に匂ふ桜花雲の上にもさかせてしか       ︵2・オ︶         御かはらけはしまりはしくたりぬ人くの御ま    な﹂         へ の 折敷ともを見たまひてなかたxの侍従花薗      あるしの君         の こてふにかきて      6捌桜花雲に及はぬ枝なれはしつめるかせをなみのみそ 1田花薗にあさ夕わかすいるてふを松の林はねたくみゆ    みる     らん      らうすけ         少將き﹀給ひてやかてはやしの方なるうくひす  7路桜花そめいたす露のわかねはや底迄にほふ色もみゆ         に かきて      らん      60 2脳常磐なる林にうつる鶯をとひらの花もつらくきくら     座につかうまつれる人くこれをうけてよめる   一

 ︵

呂ウ.        8籍狩ぬれてそきにし鶯の都にをるは色の・・すさに

        たね黍かむすめの君こかねのえたにしろかねの      ちかまさ       ︵マX︶         さくらさかせて立らへ花に蝶ともあまたすへ  9翅人伝にきxこしよりも桜花あやしかりけり春のかさ         てそのひとつにかくかきつx       まは       ︵2・ウ︶ 3皿桜花春はくれとも雨露にしられぬ枝と成そかなしき      ときかけ﹂         となんきこえけれは君達見給ひて蝶ことにかき      あるしの君水の下の魚に         つ けたまふ侍従       10鵬底きよくなかるx水に住魚のたまれる沼をいか﹀み 4批雨露に梢はわかすか﹀れはや花の枝とは人のしるら    るらん

(3)

      ︵3・ウ︶         らうすけ山の鳥ともにかきて      かな﹂

H

猫 芦 茂 る嶋より巣立鳥ともの花の林にあそふ春かな   16撚しら雲にみゆる桜もある物を及はぬ枝とおもはさら         又 みなみの殿におはして人くやまとの寄なと   なん         つくりて琴にあはせてもろこゑにすんしたまふ      たねまつ         か ﹀るに少將かはかりおもしろきあそひにも有  17劉なておほすかひもなきかなさくら花匂ふ春にもあら         ものから所からふきあけの浜辺をみわたし給ひ    すと思へは       ︵3・オ︶         花は色をつくしていま﹂をさかりと見せ風にき     かくて例のきんたちは琴をはひきしもへわらは         ほひて行ちかふ舟ともxいとけうありておかし     ふえをなんふきすさふひねもすあそひ暮して夕

くみたまへは少將      くれに大なる釣舟に蛋の彬縄をは一ふねくりお    一 12 間 行 舟 の花にまかふは春風の吹上の浜をこけはなりけ      きてこきわたるを少將は見給ひてこれかくみゆ   61

  り       ともなかよりかこxうさしはみしかからんかし  一

      ︵4・オ︶        あるしの君き﹀給ひて      なといふ﹂をき﹀てあるしの君うちわらひて 13 細 春風のこき出る舟にちりつめは離の花をよそに見る  18㎜くる人の心のうちはしらね共頼まるx哉泉郎のたく     か

な      縄

        侍 従       侍従うちき﹀てこ﹀まてまいりくるもおとらし 14 細 行 舟に花の残らす降しけは我も手毎につまんとそ思      かしと伝     ふ                                             19紐道遠き都よりくる心にはまさりしもせし海士のたく         らうすけ      なは 15 測 風 吹はとまらぬ舟をみしほとに花も残らす成にける     少將えみわらひて ﹁紀式部集﹂︵翻刻︶

(4)

﹁紀式部集﹂︵翻刻︶ 20 紐愛にくるなかき心にくらふれは名にやたつらんおき    都鳥     つ たく縄       宮家のつかひともいりみたれての﹀しりけるは         かくて日もかたふきぬあるしの君かくおもしろ      おほやけことはようつにつけてなくさむ事もな       ︵マ・︶        きところにいきほひあるすすひはし給へとよき     きにみたまひわつらひていはゆるゐ中人になん        ︵4・ウ︶         ともたちにあひたまふ事﹂此たひなれはかくて      なりにて侍る大將殿もたいらかにやはおはしま         の み おはしまさんとおほせとさてものし給ふへ      すらん少將た﹀いま大將とのはたいらかにおは        ︵5・ウ︶         き人くにもあらぬをおもほすほとになきさの      しましき京にはことなる﹂事はなしこのくにの         か たに都鳥うちつらねて立をりには今ちとりの      前守うれへをなんいひの﹀しるなといひて例の

こゑくなくをき、てあるしの君       もの、音ともかきあはせてかはらけたひくに   一 21 蹴 都 鳥 友 をつらねてかへりなは独ははまになくくや      なりてきんたち大和寄あそはす藤のはなをおり   62     へ ん                                               て松の千年をしると云題を国守の主       よはひ         侍 従わかきみをまさになとて         25籾藤の花かさせる春をかそへてそ松の疑は知へかりけ 22 脳 雲 路 をはつらねてゆかんさまくにあそふ千鳥の友    り     にあらすや      あるしの君     ︵5・オ︶         少將﹂      26細春雨のにほへる藤にか﹀れるをよはひある松の玉に        れ 23 鰯 都鳥千とりをはねにすへてこそ浜のつと﹀て君にと    こそみる       ︵6・オ︶     らせめ       侍従﹂         ゆきまさ       27捌藤の花そめくる雨もふりぬれは玉の緒結ふ松にそ見 24 蹴 君 とは﹀いかにごたへん浜にすむ千鳥さそひにこし    えける

(5)

        少 將                                       34 錨 匂ひくる年はへぬれと藤の花今日こそ春をき﹀初め       かx 28 鋤 汀 なる松にてれる藤の花影さへふかくおもほゆるか    けれ     な      まつりこと人種松         らうすけ       35脚春の色のみきはに匂ふ花よりもそこの藤こそ花とみ 29 皿 まとゐしていつれひさしと藤の花か﹀れる松の末の    えけれ     よをみん       なとうちすさみてあそひくらす其日のかつけも         国の権の守       のやかてまふけたりきんたち四所くにのかみこ   ︵マ㌔︶       ︵7・オ︶ 30 皿 花の花か﹀れる松のふか緑ひとつ色にて染るはるさ     んのかみまてあをき﹂しらつるはみのからきぬ     め      かさねたる女のよそひ一具つx衛府のそうとも         御まへにさふらひける右近將監まつかた        よりはしめて国のすけにはこきむらさきのあは   63

鍵紫のいとxみたる藤の花うつれる水を人しむすへ  せの撃一かさねあはせのはかまひとへそれよ 一

    は      り下はひとへなるものなと給はらぬ人なし        ︵6・ウ︶       と也         右近のそうちかまさ﹂      弥生のはしめに宮野かりにて給ふ御こもの人は 32 測 ふちの花やとれる水の泡なれはよのまになみのおり     あをきしらつるはみあしけ馬に乗て御鷹すへた     も杜すれ       り御まうけはあるしの君ひわりこともきよ       ︵7・ウ︶        右近のそう時景       け﹂ にてもたせたまへりかくして御前ちかき        ︵マ﹀︶ 33 錨 藤の花色のかきりに匂ふには春さへおしく思ほゆる      野にないとりあかをなとするほとにその﹀花の     かな       木ともこきませに左右の鳥とも立さはきてきん         国のすけ      たちえうちすき給はてあるしの君 ﹁紀式部集﹂︵翻刻︶

(6)

﹁紀式部集﹂︵翻刻︶        ︵8・ウ︶ 36 珊 いりぬれは狩の心もわすられて花のみおしくみゆる     し﹀うの君﹂     春哉       42掘おほつかな立よる浪のなかりせは玉いつる嶋といか        

少將      てしらまし

37 測 春の野x花に心はうつりつx駒のあゆみに身をそま     らうすけ        まイ     かする      43況玉いつる嶋にしあらはわたつうみの波たちよせよみ         侍 従うちきxて       る人有とき        さ 38 細 今日は猶のへにつくらん花をみて心をやるも行にや     かくすさみあひたまひてみなかへりたまひぬ     ︵8・オ︶   ζ     あらすや﹂      三月つごもりの日に君達ふきあけの宮にて春を

らつすけ  めイみ     おしみ給ふ§ら色のなをしつ、し色の下襲な 一

39 捌 花ちらす風も心のこまなりて我身る野へにしはしよ      とき給へりその日の御饗例のことしたりおしき   64

きなん      なとさきくのにあらす額ユ︶らけはしまりて 一

        とておほんわりこまいり鳥ともいさ﹀かとらせ     あそひくらす水の上に花ちりてうきたる洲浜に         て 玉 津 嶋にものしたまふ御まへにまふて給ひて     春を惜と云題をかきてたてまつりたまふに少將         しはし遣遙したまひてかへり給ふとて少將        きこゆ 40 迎 あかすみてかくのみかへるけふのみや玉つ嶋てふな  44瑚水の上の花の錦をこほりとは春のかたみに人むすへ     をはしらまし      とか         あるしの君      しxう 41 田 年 をへて波のよるてふ玉の緒にぬきとxめなん玉出  45細色くの花のかけのみやとりくる水底よりそ春はわ     る島       かる㌔

(7)

        あるしの君らうすけ       かくして四月一日にきんたちかへり給ひにける 46 細 時 のまに千たひ逢へき人よりは春のわかれをまつは      か﹀るほとに国のかんのぬし今日いてたちたま     お しまん       ふなりとてゆくさきにとまり給ふへき御事まう      ︵9・ウ︶         松かた﹂      けしにつかはしてみつからは吹上の宮にくにの 47 籾 行 春 をとむへきかたもなかりけりこよひなからに千      つかさひきゐてまふてたまへりかくてもの﹀音     世 は過なん       なと手なくかきあはせてあそはしつ﹀日たかく         ちかまさ      なり行はいそき給ふおりにあるしの君かはら        ︵10・ウ︶ 48 捌 春なから年は暮つ﹀ようつ代を君とまとゐはものは      け﹂ とりてかくの給ふ

思はし      51渦かたらはぬ夏たにもあるけふしもや契りし人のわか   一         ときかけ      れ行覧      65 49 皿 何方に行とも見えぬ春故におしむご﹀ろの空にも有      少將       一     哉       52淑かへつとて君をこふへきころもをやされ共夏はうす        

たねまつ      き挟を

50 泥 まとひして惜む春たに有物をひとりなけかん君はい      しxう     か にそ       53緬立かへりあはんとそ思ふ夏衣ぬるなるそてもかはき

なんとてけふのかつけ物はいろの小齢かさねた あへぬに

        る女のよそひとそきこゆ御ともの人くにはお     らうすけ        ︵10・オ︶         なし色のあやのこうちき﹂にはかまひとへうへ  54鰯夏衣けふ立たひのわひしきはおしむ涙ももるxなり        きあそひあかす       けり ﹁ 紀式部集﹂︵翻刻︶

(8)

﹁ 紀式部集﹂︵翻刻︶         黍かたさきくも侍しかはなとて       て﹀か﹀りひきいてもの﹀をりことにらんしや 55 制 このたひはまとゐぬへくそおもほゆる泪はこ﹀に先     うしまひすたねまつかきたのかたきんたち三所     ︵11・オ︶     に 立 とも﹂      にぬさてうしてたてまつれりしろかねのすき箱        ちかまさ       四つつ﹀くろほうのすみひとすきはこかねの砂        ︵12・オ︶ 56 細 かくはかりあかす尾しきわかれちはふたつなきにも      にしろかね﹂こかねをぬさにしたるひとすきは     まとふへき哉       こはこのうへに耳二やりてむすひめにはりつけ         ときかけ      させたりとなん少將には 57 棚 夏蝉の羽に置露の消ぬまにあふへき君をわかれてふ  59m今はとて立としみれは唐衣そてのうらまて塩のみつ    哉      かな        たねまつ       侍従のぬさ入たるはこに       66 58 珊 初 声 にわかれをおしむ郭公身をそ月にやけふを知ら  60批故郷にかへるぬさたにとりうきをやとに侍らん人を    一

       こそ思へ

    となんいひてかはらけたひくおしまはしぬか     らうすけには金の砂いりたるに     くしてをくりものひきいてものまふけたるかす  61謂君かため思ふ心はありそうみのはまのまさごにをと     の 事 たてまつり給ふ御馬ともかさりそうそきて    らさりけり    ︵11・ウ︶    わきあ﹂けのきぬきたるみまやの人ともむま一      そこよりかんのぬし帰たまひなんとするおりに       ︵12・ウ︶     疋 に ふたりつけつ﹀こまかたさきにたて﹀こま      みやことりとをきこゑにき﹂こゆる少將     あそひしつ﹀いて﹀つきくに見な引ならへた  62鋼名にしおは㌔関をも越し都鳥声するかたを百敷にし     りかくてものおほせたる馬ともはをくれてい   て

(9)

       しxう      なんとて       な 63 蛎 いとxしく越うきものを都鳥関のこなたに聞かうれ  67劉山里にこのめをおきてわかれては浜の辺にかひそ○        ︵13・ウ︶     しさ      かりし﹂         らうすけこなたをし見て       宮内卿のぬし      たな 64 珊 夕暮に立はなれたる駒よりも泪の川もはやくゆきけ  68捌木をくちみふたつときえぬ枝なれはあかす哀と思ふ    る      このめそ         あるしの君       なときこゆ少將宮内卿のぬしに沈のわりこ斗な 65 折 行 人 の 駒 もとxめぬたなはしはをしみとりたるかひ      とたてまつり給ふ∧以上、吹上上巻二相当ス︾

もなき哉      一

        か ん の ぬし       か﹀るほとに歳月すきてそのときの帝をりゐた   67 66 細 なきたむる泪の川の瀧つせもいそく駒にはをくれぬ      まふ春宮国しりたまひて世中をたやかにまつり    一   ︵13・オ︶     る哉﹂      事とりおこなはせ給ふとなんきこゆあるとき兵        みこ         かくして関よりわかれて京の人はのほりゐ中の     部卿の宮おもしろき桜のえたをおらさせたまひ        ︵14・オ︶         人 はかへり給ふ四月四日はかり夜更てなん宮内      て沈の男つくらせたまひ﹂て花の雫にぬれたる         卿殿におはしをちつきたりとなんきこゆあるし     にかく書つけてあてみやの御もとに奉り給ふ         きんたちにはくろかいの机ふたつうすものxお  69田立ちよれは桜の花笠にほふ野も猶佗人はこ﹀ら濡け         もてなとたてまつるのちかはらけをとり給ひて    り        いかに浜のほとりのかいこをらに山さとの草木      さるは二葉にもとおもひ給へつるものをとて奉         をはきこしめしくらふらん少將されと是をのみ      れ給ふあて宮み給ひて簑虫つける花ををらせた ﹁ 紀式部集﹂︵翻刻︶

(10)

﹁ 紀 式部集﹂︵翻刻︶         まひてそれかしたにかさきせたる事の供たてx     なさかりなり梢のみとりほのかにくれなゐのむ       ︵15・ウ︶         かくかき付給ふ       めす﹀めり春﹂の蕨に雪きえ石の火に氷とくと       と 70 田 かくれたる三笠の山のみの虫は花のふるをやぬると      きをさらぬ松春をかさぬる花のへにしつかなる     い ふ らん      人山にさはく鹿かせになひけるえた雨にしたか       ︵14・ウ︶         御つかさの少將なかよりにの給ふようつ﹂の事     ふ草春をおしむはな夏をもよほす虫秋をまつ木         こ﹀うにつく日になんあるた﹀にやはあらん和      の葉冬をいなふる鳥とかきいたして兵部卿の宮         寄の題にすへき事すこしえりいたし給へとの給      にたてまつる御らんしてねまちの月を         ふなるよりつかうまつりにくき事かななといひ  71㎜昨日こそねまちもせしか春のよのこよひの月をい

て か

きいたすあはれけふは春のなかはねまちの か、みるらん    ︵“°オ︶  ︸

       月をきのふといひて花のにほひをさそふうくひ     とかきて中務の御子にたてまつり給ふ﹂      68

すのこゑをむかへ春の﹁金の友をさそひつ﹀な      中務の御子花をいさなふ       一        ノ       こ         り河辺のかものあしまにあさ行このめのはる春  72m我宿のうつしてしかな野へにいて﹀みれ共あかぬ花        ︵15二3         日の宮にわたりかxれは花の﹂鶯えたにさふら    の匂ひを         ひ 松 の せ み梢にをとろき山のさくら時にのそめ     兵部卿の御子うくひすをむかふ         り春の藤のいうわつかに柳のいとをむすへりあ  73皿里に吹花にうつしておく山の松にをくるな鶯のこゑ         したの露みとりのころもなり夕の雲きなるにし      左の大臣薦のつらを         きなり山辺に冬わかく野へに春をひたりけふを  74鵬故郷にともし残さす行﹁は麦にて空をすくさ﹀らめ         みるちかき野へは花をうらやみこ﹀をきく遠き    や         山には雪の峯をうつす雪の下草おひて霜の上の      左大將河辺の鴨を

(11)

75 田 水 鳥のつらねてうつるあすか川をるなるあやはけふ    き     やみるらん      左近中將すけあきらわつかなる藤         右 大 將 木のめの春       82m松よりもはひごほるxそ藤の花今一入のあかす見ゆ 76 鵬 松 の ね に ふ す 山人は野へをみるけふそ柳のはにもし    るは    ︵16・ウ︶     るらん﹂       おなしき中將在原のもとゆきむすへる柳        糸         民 部 卿源さねまさ春日の宮      83m花さかぬ枝にもてふはむつれけり柳の原も結ほ﹀る 77 ㎜ 氏人のまとゐるけふは春日野﹀松にも藤の花そ咲ら   らし     し      宰相さねた﹀春の雨こゑいてx

右衛門のかみ藤原きよまさ花鶯を       84陶花をのみむらこにそむる春雨はときはの松はつらく    一 78

m

枝毎にいもせつらぬる鶯のとくらをせはみ花そちり    みゆらん      69

ける       宰相なをまさ花風をうし       一         中納言平のまさあきら黍の蝉         85団竿姫やものうからん春の﹀に花のかさぬふ枝のみえ       ︵17・ウ︶ 79

m

松 風 の 声にくらふる琴のねを知る﹀せみはしらへ   ぬは﹂     つ ﹀めや       とてむかひたる人の四位よりはしめの人に給は         左 大 弁 源さたすみ春をさとる寄       りて左中將さねよりおとろう梅 80 ㎜ 琴のねに春の草木のをとろへはをのれを人や引とな  86慨白妙の衣とたとる梅の花めにみすくもおとうふる     るへし       かな        ︵17・オ︶         右衛門おなしくもろすみときにのそめる桜を﹂      右近の少將源なかよしあしたの霜みとりなり 81 団 樟 姫のほのかに染る桜にはよひさしそむる藤そ嬉し  87団鶯の羽風を寒み春日山霞の衣けさはたつかも ﹁紀式部集﹂︵翻刻︶

(12)

﹁ 紀式部集﹂︵翻刻︶         お なしき少將もとかた雲のにしきをなんよめり  94圃春雨の花に降置くれなゐに染てそむらし春のさほ姫 88 ㎜大空にかせのをりしく錦をは谷より雲そ立渡る      侍従藤原なかたx蕨きゆる雪   ︵18・オ︶     らし﹂       95姐雪とくる春のわらひのもゆれはやのへの草木のけふ         おなしき少將かすさね冬わかく春おゆ       り出らん 89 瑚 見渡せは雪ふる山も有物をのへのわかなのおひにけ      侍従かねとき石の火にとくる氷     るかな       96頂春わかす冴るかはへのあしのめは石より出る火にや         左 衛 門佐あきすみ雪をうつす山      もゆらん 90 団 富士のねのかすかの春をよそにみてかのこの雪も今      侍従これかせときをさとらぬ黍     やきゆらん       97珊みる人のよはひは千代のあたりをや緑の松は春を待                                                                                                              一        

同しきゆきまさ雪の下草を       らん       70

91 ㎜ 雪 のうへしゐて草木のもゆれはや春日の飛火有とい     侍従もとまつ春をかさぬる花      一     ふ らん       98皿ふたxひやこ﹀の桜は匂ふらんおなし花にも春をそ        ︵19・オ︶         兵 部卿の少將かねすみ霜のうへのな         ふれは﹂ 92

m

日野㌔雪間におひしわかなをは野守はみきやけふ      大夫ちかすみ野へにしつかなる人     つまんとは      99珊春ふかみ汀の芹もおひぬらし今はものうしわかな摘         侍従なかすみはつかなる木のめ      人 93 出 春 をあさみ野へのこのめもまたしきをいつこよりつ      式部丞きよすみ山にさはく鹿       ︵18・ウ︶      渡     む わ かな成覧﹂       ㎜珊萌ぬる草木もあらぬ春へには山へにそむく鹿そふむ         侍従源た﹀まさ紅の梅      らし

(13)

        右衛門尉よりすみかせになひける枝      おなしきせう平のこれすけをくれたる日に        の端 皿 瑚 鶯の冬のねくらや春立はかせのなひかす柳なるらん  ㎜m朝かけに遙にみれは山陰に残れる月もうれしかりけ         蔵 人 ふ ちはらなりとを雨にしたかふ草       り 皿 田 春雨のふるをか野への草木とや秋のやとりの虫は頼      かくして年月ゆいて大將故院には世中にまた侍     まん       りときこえさせしゆるされさりしいとまをしの       も き         木工のすけこれもと春をおしむ花       ひてまかててやかてまいらすしかはおつみつみ

m

皿 竿姫はいくらの春をおしめはか染出す花の八重に咲      侍りなんそれなん今におそろしくかなしき事に   ︵19・ウ︶       ︵20・ウ︶     らん﹂      は侍ると云おと﹀桜いろ﹂のあやのほそなか一         兵衛の丞ふちはらのちかまさ秋をまつ木の葉      重をもていて給ひてたひて 地 陶 春わかみほのかにみゆる木のめには秋こそいと﹀遠  珊㎜咲花をかくとちつれとことの音をしらへて帰る風そ   71    くみえけれ       とまらぬ         右近のせうきよはらのまつかた夏をもよをす虫      との給へは 班 掘 春山の木のねの蝉はすをせはみ夏のこのはや恋しか  皿皿いにしへにけふをくらふの山風は花の衣をふきかへ     るらん       すかな         右 兵 衛 の 丞 在 原 のときかけ冬をいなふる鳥       といふ夕暮にかすみをさそふかせはけしくて御       やとり本ノマx ㎜ 慨 冬 山にすくひし鳥も冬寒み春のさとにや宿とるらん     まく吹上たるより見いるれは君達三所めてたく        ︵20・オ︶         右 兵 衛 せうもとすけまとゐにたらぬ月﹂        きよらにておはします中にあてみやこよなくま       ︵21・オ︶ ㎜ 邸 わ かともの野へのまとゐにをくる∼は過にけらしな     さりて見え給た﹀かくありかたき御かたち﹂と     春の望月      もの中にこよなうまさり給へりさるへき人にご ﹁紀式部集﹂︵翻刻︶

(14)

﹁ 紀式部集﹂︵翻刻︶         そなとおもふにとしころかけて思はさりつるむ     んかくもきこえさせ給へとてかき付たまふ        いイ       たて         か し思はてられて世中に猶あらましかは今はた  田瑚春立と身のかすならぬ青柳は花にましらん事そくる         かき位にもなりなましなとおもひたれと又こx    しき         らのとしころ露霜草かつらの音をときにしつ﹀     といひて中のおと﹀に奉れ給ふつれはあて宮か         仏 の お ほんことならぬ事をは口にまねはてつと     きて奉れ給ふとなん女のさうそく一具かつけ給        めおこなひつるほとけのおほさん事おそろしく      へは宰相かく聞え給ふ          ︵21・ウ﹀         なとおもひかへ﹂せともせんかたしらすおほゆ  田面涙さへなき世なりせは我恋の身より出るをいつちや        ︵22・ウ︶         れはちりおつる花ひらに爪もとより血をさしあ    らまし﹂         やしてかくかきつx       この御返しはなし兵部卿のみやより

m

脱 浮 世とて入ぬる山を有なからいかにせよとか今も尾  田瑚山彦もこたへぬ空に鳴田鶴は天の川原にひとりふす   72

しき      かな       一

        春 宮より柳に御文つけて右近の少將を御つかひ      この日ころ里すみのかひなさにうちにのみなん         に て しはくも聞えまほしけれとなる﹀はとか     ときこえ給へりあて宮         い ふなる内にもこのころまいり給ふへきやうに  旧描こたへうくおもほゆるかな盧田鶴のつるてふ名をも         有しかはなんいてや       独なかねは 皿 陶 たのめこし春立しより青柳のいとやくるとも思け     平中納言殿   ︵22・オ︶     る哉﹂      m瑚水まさる淀のまこものおひの世にふかく物思ふ春に         とて奉れ給へりとなんおと﹀みたまひてかしこ    も有哉         くかくの給はするをいか﹀御かへりきこえさら     こたみは御かへりなし三の御子かく人のきこえ

(15)

給ふをみ給て         もひしかとつ欝くなくうちくらしぬこののり

播す笥鉦もみえぬ物から鶯の山のいろくふみもみ  弓の御あるしにかいまみてのちはふししつみ病

るかな﹂         になりてふしぬさるを蹴三春日まうてにから

ときこえ給へれは例のいらへ給はすかのなか     うしてをきあかりたりしになくさみてあれとな

た、の侍従うちの御つかひに水の尾といふとこ      をえあるましかりけれはおかしき柳のもえいて         うにまうて﹀そのかへりにおかしき松におもし                                                               たりけるにかきて付たり

ろき藤のか、れるを松の枝なから折てもていま携物おもひの枝にこもれるものならは萌渡るともみせ         して花ひらにかくかきつくとなん                                                          すそあらまし

瑞奥山に幾代へぬらん藤の花かくれてふかき色をたに  あごきみにこれなかのおと﹀にもてまいり給へ 一

見て   ︵三     とて奉・あてみや見たまひてあなむ−つけ見る ヨ

くなんとたにとてうわうの君にこれく御ら      ましきものかなとて引結ひてすて給ひつし﹀う

ん せ

させ給ぷ主のはな給はりてをき給へれは  のきみはみ給ひてかく㌍弓

 Aフた、いまと己内にまいりぬあてみや御らん摺人しれぬ泪の川となかる﹀をいかてたまれる水とこ         して人くの中にこともなしとおほす人なれは                                                           た へ ん

く書付て給      となんきこゆ例のこたへ給はすゆきまさかくき ㎜

m

ふ か しともいかxたのまん藤の花か﹀らぬ山はなし        こえたり

とこそきけ      m田玉札の終にとたえぬ物ならはむなしき身とも成ぬへ

そわ.つの君なかた、に見せたまひけるとなん右 きかな         近 の少將なりよりもとしころいかて聞えんとお ﹁ 紀 式部集﹂︵翻刻︶

(16)

﹁紀式部集﹂︵翻刻︶ 返 しなしとなん ∧以上、春日詣巻二相当ス︾      ましくこそおほゆれようつの事心ほそくかなし        ︵26・オ︶ かくてあて宮に侍従のいとこ﹀ろほそくものし     くてときこゆあて宮さなおほしそ﹂とてたち給るをわたりてみたまへ物のはしめにいとうた     ふ てとおもへとたいめんせんとものしつれはなと  盟珊ふしまろひから紅になきなかす泪の川にたきるむね の たまふあて宮こ﹀ろうしとはおほせともき   の火 ︵25 ・オ︶ こえ﹂たまへはわたり給ふ宮おと﹀のすみ給北      と書てちいさくをしもみて御ふところになけ入 の おと﹀にふしたまへりあて宮そのころ御かた     あて宮ちらさしとおほしてとりて立給ひぬるを ちのさかりなり御たけ五しやくに今すこしたら      見るま︾にたえいりていきもせすなりて見え給 ぬほといみしく姿おかしけに御くしのこるはし     へりとなんみやおと﹀あるか中にもかなしき子 くきよらなるむらさきの衣をやうせる事おひた      のか﹀るめをなん見る事よと共に絶入はかりそ   74 るかきり末まていたらぬすちなしめてたき事か      かなしみ給ふとなんされとも生死のみちなれは   一       ︵26・ウ︶ きりなしとなんひやうゑの君そわうのきみはか      ちからなくけふりとなし給ひてあと﹂の御いと          ︵25・ウ︶ り御ともにおはしたりと﹂きこゆし﹀うの君見      なみとりおこなひ給ふ人くまいりつとひてと たてまつり給ひてとみに物もきこえ給はすから     ふらひ給ふ中にも源少將もくの君にあひたてま うしてけふやまいり給ふ御をくりをたにえつか      つり給ひてとみにものもいはて涙をなかす事か うまつらすなりぬる事いきて又たいめい給はら     きりなししはしありて御をくりをたにつかうま ん吏かたくもあるかなと涙をなかしてきこゆと      つらて過ぬる事こそほゐなけれかきりの事を なんあてみや心にもあらすのみなんいてやなと     きx侍らてたいめいせさるこそいみしう悲しけ かはかくのみはものし給ふらん侍従なをえ侍る      れとて

(17)

鵬 珊 今はとてふりつる時は紅の泪とまらぬ物にそ有ける     いふのこもくの君少將の子少納言左近右近ゑも        ︵27・オ︶         もくの君うちきx給ひて心ほそくもの給﹂もの     んなといふ人いとおほかりうないなと御前にさ        ︵28・オ︶    い         か なとしころはけに心さし有てきこえ給ふと見      ふらふ左大弁のきみ﹂なとまつり給へりける        たてまつれともかひなくてかくむかしかたりに     ごxに宮おはしましてしやうの御琴なとかきな         成 給ふ事よとて      らしあてのみやと碁なとひねもすうちくらし給 ㎜ 謝 ふ かき色に君しもなとかふりつへき誰もとまらぬ泪      へりとなんつきには中將たち殿上人あつまりて       たうち    ならぬを       擁あそひするにうへちかき御局なれは思ふ         さても少將はいふはかりなくなきまとひかなし      まxにもあらす物しつやかにみゆかxる折に隔        ︵マこ

給ふかやかて法躰になりて世中をうしろにそ      のおほくつれてなきわたりけれは宮この腐はい    一         見給ひける月日ゆいて春宮はあてみやの御かた      つちそやとの給へは中將なかた>         75

 へおはしましけり宮はうたxねいり給へるけし  田珊つれて行隔金きけはあかてのみ春の宮より帰るとそ   一       ︵27・ウ︶      ︵28・ウ︶         きに見え給ふを春宮やをらさしより給ひて﹂う    きく﹂         こかしまいらせ給ひて      宮の御 捌 斑 めつらしき君に逢夜は春霞あまの岩戸をたちもこめ  ㎜脳あかてのみわかる﹀隔の手向には花の錦もとちられ     南

      ぬ哉

        ときこえ給ふあて宮うつxともおほさす御返し      左大將         もなかりけりとなんこxは大將殿御局なりあて  ㎜渦青柳のいとまおしとて鶯の鷹の手向もとちすや有覧                の 君 中納言は御とし十九そはの君廿一そちの君      源少將         十七宰相のおもと十八兵衛の君廿中將小弁こた  m珊帰行鷹の羽風にちる花をおのか手向の錦とや見ん ﹁紀式部集﹂︵翻刻︶

(18)

﹁紀式部集﹂︵翻刻︶         中將さねより       おこなひてなみたを海とた﹀へなけきを山とお 斑 醐 故 郷へつはさやすめに飛鷹も今宵はこxを過そ鳴な      ほして暮し給へるを帝をはしめたてまつりおし     り      みかなしみ給はぬはなしとなん中にも大將殿お         左兵衛佐      もふご﹀ろやありけんあはれなとの給ふたかき 団 珊 しら雲の隔の手向のにしきとや山のはかせにおり乱      山をたつねててん上人きんたちとひ給ふをみつ    ︵29・オ︶     るらん﹂      からおはしつ﹀とひ給ふを頭中將源中將兵衛の         左 近 中將      すけなとはおかしきもてあそひしたるものをお        ︵30・オ︶      ︵マ﹀︶ 団 珊 ほ ころひてわかる﹀隔の故郷をいまやとふらん天の      かしこと少將をよひて花﹂つみかてら北の尾に       対

       おはしたり少將よう.﹂ひて揃面してものなとい 一

        中將すけすみ       ふ人に泪ををとさぬはなし頭中將あか仏なとか   76 斑 珊 花をおる春はへぬれと鳴鳩のかへれる数を知人のな      かく思はぬさまにてはものしたまふなかた﹀ら   一     き      かたとき世にふへきこ㌔ちもせねともおやにつ         左 衛 門佐      かうまつらんとおもふご﹀ろふかけれはしはし 団 別 鳴隔にうかへる雲のゆきかひていつくに待と契をき      ましらひ侍れとかくておはするをみ侍りけれは     けん      まつかなしくなんとて         なとこれかれの給ひてあくる宮より人ζにかつ  即蹴打みれは泪の河となかれつ﹀別ち思ふ瀬をしらぬ       ︵30・ウ︶         けものともそこくいたし給へりけるとなんか    身は﹂       ごく         くて源少將は山にこもりにし日よりかたく穀と      少將          ︵29・ウ︶         塩 をたちてこの﹂み松の葉をすきて六時まなく  瑚珊世中をおもひ入にし心こそふかき山へのしるへなり

(19)

   れ     けり       給ひてのち一くたりにてもみるなりとおもひて    ζ       ︵31・ウ︶         源 中將       かしこきたからにすへし水の尾の高﹂き山のい ㎜ 強 蝶 とりのあそひし花の挟には太山の苔のおひんとや      た﹀きに日かけ庵なとある成におかしけなる道     み し       ありこ﹀に殿上人いましたり少將あさのよそひ         となくく物かたりしてかへりぬ大將との﹀君     あさやかにてたいめひし給へり山のうへよりお         達 ものしたまへるにもたいめんし給ひて物かた     ほひなる瀧をちたり弟子一人はわかうより上に         りなとしてかへり給ふに付てあて宮の御もとに     つかひつけ給へる童子ひとりそれも舎人につか         かくきこえ給へり       ひ給へるいろく花の木ともしけく生たり少將

撒紅の袖そかたみとおもほえし今はくろくもそむる涙  はた.つをかさりてねんすしたりいとは、記しさ 一

    か                                                      て宰相は東坂本に小野と云ところにいき﹂て大   77

ならぬはなきこそいみしくなとき≡、島.たり  願を立ようつ神仏にいのりてなきこかれつ﹀ま 一

        あて宮あやしくも成にけるかなものいひし時い     とひ給ひけれはからうしていきいてたれともう         らへもせす成にしをかく哀になりにたる事今は      しやうにもあらす宮つかへにもをよはてたxつ         何 か はと思して      れくとありふれとかなしく覚ゆれは小野より

m

珊 今はとてふかき山へに墨染の挟はぬれぬ物とこそき     兵衛のきみのもとにかく聞えたり    け      皿蜥かく斗消るわか身に年をへてもゆる煙のたえすも有         とのたまへり少將みて涙をなかして此御文をふ    哉         しおかみておもへはいよく後の世ふかくそお     いつれの世にかおもひ給へなくさめんあないみ        かイ         ほし入にけるありほとけ宮のたうとけれは参り     しやときこえたりあて宮み給ひてあはれとおほ ﹁紀式部集﹂︵翻刻︶

(20)

﹁紀式部集﹂︵翻刻︶       ︵32・ウ︶         せ とものもの給す源宰相かなしくお﹂ほゆれは  M珊いひゐても終にとまらぬ水の泡をみこもりてこそ有        ︵33・ウ︶         三月つごもりかたにかく聞ゆ       へかりけれ﹂ 囎 珊    かけていへは ちりもくたくる たましゐに      となんよみてまいらせ給ふとなん         ふ かきおもひの つきしより いりえのとこに       ︽以上、あて宮巻二相当ス∨           としをへて つらをならへて すむとりの       かくて殿より祭の使出立給ふ兵衛つかさのつか         行 衛もしらす をしのこの たちけんかたも       ひには中將君内蔵寮のつかひにはくらのかみを         おもほえて きなる泉に きえかへり 涙のか      かけたるゆきまさ馬寮には式部卿の宮のむまの         はに うきねして いまやくと 頼みこし       きみと出立給ふあるしのおとx三所のつかひを         君 か こxろを かきりそと 思ひし日より 山      いたはりいたし給ふみな出立給ふにちしおと﹀ さとに ひとりなかめて もえわたる ふかき      つかひの中將にかさしをたてまつり給ふとて    78

山へにみつし隔巴︶袖のもるまてたえて臨㎜ふた葉なるまつらかつらとみし物をかさしをる迄成 一

       ︵34・オ︶

もみるめもとめんかたもなきいまはかひ  にける哉﹂

なき こxちして なこりそ物は かなしかり      つかひの中將 ける なときこゆれとも御返なしかくおほつか  珊加もとみれはたかきかつらもけふよりや枝をとりすと なけれはさらにわすれきこへすとをりくにつ   人の云らん けて猶きこえけりましらひもせす宮の御もとへ     とて出給ふに桂より左大將ぬしよき御馬ふたつ もまいらすなかめ給へり月日をへて身はよはく      ひとつはかさりひとつはまうけ御馬にて舎人三   つ・       ︵マ﹀︶ なりつくえたえましく覚ゆれはあてみやにかく      十人えもはかすそうにかせてとりものせさせて きこえ給ふ       かねの枝にちいさき壼を付てそれにかつら川の

(21)

        水 を入て仲忠して      うにこその給はさらめ君達ともの﹀給ふをたに        ︵マ﹀︶

W

㎜ かさしとるそてのぬるxは白波のかつら河よりをれ      きかせ給へなとせちしのたまひけれはちかき所     る也けり       にすへて御琴ひかせたてまつりものいはせたて        ︵34・ウ︶      ︵35・ウ︶         これにあやしうとの給ふとなんつかひの﹂君か      まつりなとしけるをきxてよりおもひ入﹂てふ         くきこえ給ふ      しにしま﹀に物おほえねとかくきこえたり 蝿 捌 水 上 に かさしつる哉桂川けふ人なみのこ﹀ちのみし  ㎜㎜奥山のふるすをいて﹀郭公たひねに年そあまたへに        る     て       けり         けふは暮にのみなんと聞えて出たち給ひぬ大み     あか君やかてたに今はえきこえさすましきこそ

つ か ひ の 君 み 給 はんとて車十はかりしていて      いみしけれなときこえたりあて宮      一         たち給ひぬ大しやう殿へ南のおと﹀に使三所つ  皿勿夏はかりうゐ立すなる時鳥巣にはかへらぬ年もあら   79

き給へり鷺に御子四所上達部五所四位五位あ しな      一

        はせて六十人はかりありとなんおほん馬ともひ      兵部卿宮より        きたてxたちならひたり一条の大路に物見車と  皿㎜ぬるみ行板井の清水手に汲て猶こそたのめそこはし       ︵35・オ︶         もかすしらす殿の御くるま﹂ともものしたる    らねと     しぢ         楊とも立つ﹀四位五位まきちらしたる事かすし      あて宮       そイ         らす春宮よりかくきこえ給へり        陶㎜あた人のいふに付ても夏衣うすき心も思ひしら       ︵36・オ︶ 珊 認 今年よりつむへき物か千早振かもの祭にかさすあふ    る﹀﹂     ひは      平中納言       初         ときこえ給ふ例のさいしやうやよひはかりにま  瑚却何とても尾しきものを時鳥身を千花のいと﹀咲かな ﹁紀式部集﹂︵翻刻︶

(22)

﹁ 紀 式部集﹂︵翻刻︶         あて宮       て御返なし三の御子 皿 却 か ひもなき巣をたのめはや郭公身をうの花の咲もみ  陶ぴなかめする五月雨よりも歎つ﹀月日のふるそ袖は濡       ︵37・オ︶     ゆらん       ける﹂         仲忠空蝉の身にかく書付て奉る      ときこえ給へり御返事なし仲頼 珊 ㎜ ことの葉の露をのみまつ空蝉もむなしき物とみるか  瑚鰯思ふ事なすこそ神もかたからめしはしなくさむ心つ     わ ひ しき      けなん         ましていかならむときこえたりあて宮         行政 研 脇 ことの葉のはかなき露と思へ共わか玉章と人もこそ  皿獅いふ事にいらへぬ人はつらからて思ひそめたる       本女、     み れ

      身を○うらむる

                                                                                                            一         と思ふになんきこえにくきときこえたまへり紀      ときこえ給へりとなん五月五日つとめてあやめ   80

国の吹上の君のもとよりいかて嬬已もひけ  のなかくしろき根をみてし﹀うの君きこえ給ふ 一

        るを人さへかたりきかせ給へれはしつこ﹀うも  皿却泪川汀のあやめ引ときは人しれぬねのあらはる﹀か         なくおほえけれはあるか中にかとある童してか   な         く聞え奉る      宮は蔵人の兵衛佐行正をめして大將とのにかく       ︵37・ウ︶ 皿 却 お ほつかないかて心をつくはねのまつかけなしと歎      いひつかはすはかなくかx﹂えものせられたる     なるらん      をあるしの事なとをいかにとなん引出物なとも         大 將のおと﹀見給ひてた﹀いまの罵る人にこそ      ともしくは内侍料なともあまたものせらるらん       ︵マ・︶         はあんめれ上達ひになりぬへき君なめれはつれ     を御心にまかせて物せられよとてかはらけにか         なくいひていたしたるなめりかしなとのたまひ      く書付給ふ

(23)

旧 魏 所 せ き身はよそなれとあそふなる宿に心を忘もやる    れ     かな       左大將とのより         かくて五月雨にも成ぬれは右のおと﹀かんたち  珊測佗はてし何の心もなけれとも猶なつのよはなかくも         めなとあつめ給ひてかはらけとりまはし給ふに   有かな       ︵38・オ︶         郭公なきわたりけれは﹂       中納言より 脳 盟 郭 公 なくねひさしく成ぬるをさみたれなからいくよ  m閣佑ぬれは五月そ惜きあふちてふ花の名をたに聞と思     ふ れ はそ       へは         あるしのおと﹀       源宰相 面 脱 時鳥花立はなにやとれはそ猶五月雨もときは成へき  m蹴沈みぬる身にこそ有けれ泪河うきても物を思ひける   一         人くかくたはふれてあそひあかしかへり給ふ    かな      81

春宮きこしめしてかく聞え給ふ     身の徒になるともおもひ給へすごxうさしのむ 一

㎜ 鵠 ためしにも人の引へき時鳥この五月雨を今もあへな      なしうなるこそいみしけれなときこえたまへり       ︵39・オ︶     ん                                                     あはれと見給へと御返事﹂なし三の御子         ね たくもおもほされすや猶はやくをときこえた  m踊君か為かろき心もなき物をなみたにうかふころにも         まへりあて宮      有かな

m

祖 いはさらむ事そくるしき憂にこそ世の例にもあると     紀伊国より     い ふ なれ      m捌いつこともまた白雲の佗しきはいひやる空のなきに         ︵38・ウ︶         兵部卿の御子﹂       そ有ける 瑚 踊 よ所にのみ思ひける哉夏山のしけき歎は身こそ有け     藤侍従五月のつごもりの日くちたる立花のみに ﹁紀 式 部集﹂︵翻刻︶

(24)

﹁紀式部集﹂︵翻刻︶         かく書付て       御子見たまひて右の大殿へかくかきてまいらせ 刑 捌 橘 のまほしも月にくちぬれは我もなこしをいか︾と      給ふ     そ思ふ      m鰯木かくれに寒く吹らむかせよりもうちなる枝の陰そ         さみたれのすくるもおそろしくなんしxうの君    涼しき

m

蹴うらやましやかて入ぬる夏虫やたえぬ思そ佗しかり      右のおと﹀見給ひて中宮に奉れ給   ︵39・ウ︶     ける﹂      ㎜田風にさる物こそ誰もす﹀みぬるもとのかけをも頼む        

少將       物から

蝸 瑚 詠 めつ﹀常にくもらし橘はつねに空なるみとやなる      みこ見給ひてかく書付て民部卿とのに奉れ給ふ     らむ       皿蹴こかくれはかけにまとゐるもえまつのねより起たる                                                                                                             一        

らうすけ      末にあらすや       82

m

捌 山も野もしけくなれ共我宿のまたことのはもみえす      民部卿との       一     も有哉       皿捌大かたのかけとは見つ﹀東風かせの吹こかくれとし       ︵40・ウ︶         釣 殿 に てけふす﹀ませ奉らんけうあらむくたも    らすそ有ける﹂         のなとたまへはなときこえおき給ひて釣殿にい     左衛門督殿         て給ひぬとなんきんたちさなからさふらひ給へ  ㎜捌我たのむ千とせの陰はもらすして松かせのみそ涼し         は大臣御扇にかくかき付て式部の宮のかたへま    からなん         いらせ給      ’ 藤宰相殿 田 況 枝 茂 み 露 たにもらぬこかくれに人待かせのはやく吹  脳加まとゐする千とせの影のうれしきはもるともなけの   ︵40・オ︶     か

な﹂      松のかけかは

(25)

      ︵マ﹀︶         中將      とあるかなきかにかきならすあてみや 鰯 批 ひ はことに千とせのかけをそふる松幾世限れるよは     きんの御ことに     ひ 成 らむ       珊猫にほとりの常にうかへる心には音をたにたかくなか         あるしのおと﹀けふご﹀にこのすき物ともひと    すもあら南         りなきさうくしやなかすみは藤侍従よひにや      なとの給ふほとに内より藤し﹀うた﹀いままい         れ か しふかきちきりある人もよしあるおりをす      り給へせんしなりと云なかたxあなわりなや折       ︵41・オ︶         くさぬそよきなと﹂の給へはをとろきての給ひ      しもこそあれわりなきめしかなといひてたxい         つ かはしけれは三所なからあそひ人といてきて      ままいりてなんとてまいりぬ左大將とのなとか       ︵42・オ︶

舟 に のりて釣殿へまふつあるしのおと、白き綾      す、みには﹂いて給はさりつる釣殿御らんせさ    一         の お ほんそぬきてし﹀うに給とて       せてしつるを闇のよの錦とかいふやうになん宮   83

劉ふかき池の底に生つxひしつむとけふくる人の衣に  人す・み給へれはこまてなんとて   一

   そする      ㎜蜥枝ことにわかすや風の吹つらんこもれるねさへ涼し         侍

従      かりつる

皿 脳 底 ふ かくおひけるものをあやしくも上なる水のあや      おと︾     とみる哉       m捌おく山に松のふるねをのこしてはきしになひくそか         琴 かきならしてあるに鳩とりのほのかに鳴を藤    ひなかりつる        ︵41・ウ︶        侍従き﹀てさうのことにかく﹂ならす         又神楽十七日になんすへきそのまうけせさせた 珊 描 我のみとおもひし物を鳩鳥のひとりうかみてねをも     まへ宮おもしろからん所こそよからめおとx左     なくかな       大將のぬしのなかた﹀か母すゑ給ひたるところ ﹁紀式部集﹂︵翻刻︶

(26)

﹁紀式部集﹂︵翻刻︶       ︵42・ウ︶         なかた﹀か心に入てつくらせたる所﹂いとおも      たり         しろしとなん      珊卵我ふみはやをようつ代の神ことによむとも数はつき         かくて春宮より蔵人を御つかひにしてかくきこ    すや有覧         え給へり       あるとき春宮より常夏の花を折てかくきこえ給 脱 別 打はへて我につれなき君なれはけふの御祓もかひな     ふ     かるらん       凹珊独のみわかふす宿の常夏は常にをりうき物にそ有け       ︵43・ウ︶        

あて宮       る﹂

㎜ ㎜ 逢 事のなこしのはらへしつる哉おほぬさならん人を     今はすみうくさへになんあて宮     み しとて      珊㎜しら露のをきかはるなる常夏をいつれのをりに独み                                                                                                             一         藤 侍 従御まへのわたりにたちよりそわうの君に    るらん      84

ものいひなとするにわきいてたる水をみて       例の宰相ひさしくてりたる日盛に        一 脳 加 河 辺 なる石のおもひの消ねはや岩の中より水のわく  珊魏大空も我ことものや思ふらん草木こかれててれる夏   ︵43・オ︶     らん﹂      の日         そわうの君のいらへ      あて宮

m

底をあさみ石間を分て行水のわくとみれ共ぬるまさ  ㎜珊時のまにいらぬ宿なく照日には君さへなとかをとら     りけり      さる覧         なといふほとに例のさいしやう兵衛の君のもと     兵部卿宮より夕立のいたうするをりに         にあるふみをきんたちこれかれみ給ひてうちわ  ㎝捌年ふれといと﹀つれなくなる神のひ﹀きにさへやお         らひつ﹀ものもの給はぬをき﹀て又かくきこえ    とろかぬ君

(27)

        あて宮      すれ草 批 捌 ひ xけともつれなき人はおとろかて雨雲のみもさは     あて宮     ︵44・オ︶     くへき哉﹂      珊加あた人の心をかくる岸なれや人わすれ草つみに行ら         左 の 大 將 とのよりうみにのぞきたるあまてる酬    ん         浜 に かくかきつ﹀       三の宮 加 加 わ たつうみの底にみるめのおふれはそ我さへ頼むふ  珊捌鳴せみももゆる蛍もみにしあれはよるひるものぞか     かき心を      なしかりける         あて宮あさりしたるすはまにかきつく         紀伊国より 脳 珊 あさりする海士はなにそも海といへと如何なる底に  ㎜捌常よりもなこしの月のわひしきはいむてふことのな    一     生 るみるめそ       きにそ有ける       85

平 中納言殿より       君達見給ふを侍従のきみをみてはしにかく書付    一        ︵45・オ︶ 猫 捌 見る人は小鹿のつのにあらねともなくさむほとのな      てあてみやにたてまつり給﹂     きそわひしき       田蹴人はいさなこしの月そ頼まれしせ﹀のみそきにわす        

あて宮       らるやとて

猫 猫 思 ふ らん事はしられて夏の野につのをちかはる鹿と      かくしておと﹀つくれりける文を一人にすんせ     こそきけ       させて御琴にあはせてまつことなくおもしろし       ︵44・ウ︶         藤侍従はらへしに難波のうらへ下りてそ﹂れよ      おとxすゑふさに御かはらけ給ふ       をイ     り      犯珊色かへぬ黍をはをきて藤かえに秋の山にもうつして ㎜ 郷 まとひつxうみへこしかと住吉のおひすも有か恋わ    しかな ﹁紀式部集﹂︵翻刻︶

(28)

﹁ 紀式部集﹂︵翻刻︶         すゑふさ給はるとて 田 初 あらかねのつちの上より藤かつらはひてしけふそう     れ しかりける         中將のおと﹀東面の竹のはに書つく 脳 蹴 彦 星 の 逢 み て か へる暁も思ふ心のゆかすもある   ︵45・ウ︶     か な﹂         奉 りけれは春宮より 鵬 魏 つ れもなき人を待まに七夕の

  あふよもあまた過に︵“°オ︶       一

                              けるかな﹂       86

︿ 以 上、祭の使巻二相当ス∨       一

  ︵“.⊇

  ︵47・オ ﹂︶       ︵47・ウ︶           未見類本故以私了簡且校猶追可尋 山●﹂     ︵48・オ︶       ﹂ ︵相愛大学人文学部︶ ︵財 団法人青山会特別研究員︶

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