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課題研究Ⅱ「 学校教育における組織的行動力の育成とソーシャル・キャピタル─日本・台湾・タイでの取組み─」 日本の高等学校における応援団の活動から

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Academic year: 2021

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第29 回大会記録/課題研究Ⅱ

1.高等学校の応援団とその教育課程における位置づけ

日本の伝統的な高等学校の応援団には日本文化独自の応援スタイルが存在す るといわれるが、それらに関する先行研究・資料等はほぼ存在してこなかった (Gudrun GRAEWE:2002)。 しかし、今日に至っても旧制中学の伝統を有する高等学校には、自校の選手た ちを応援する行動をリードあるいは統制する役割を担う応援団(応援指導委員会 など)と呼ばれる組織をもっている学校が多く存在する。その集団は、日々の訓 練とともに、運動部の大会や対外試合での応援をリード・統制するのみならず校 内における体育祭その他の学校行事における集合的な応援活動をサポートしてき た。高等学校の応援団は、一般的には①部活・クラブ活動として、②学校の生徒 会における各種委員会活動として、あるいは①②の両面を兼ねた組織として位置 づけられている。 高等学校学習指導要領に照らせば①の場合、教育課程上の課程外教育活動とし て、また、②の場合には特別活動に位置づけられる。部活動としては、「生徒の 自主的、自発的な参加により行われる部活動については、スポーツや文化及び科 学等に親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等に資するものであり、 学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意すること」とされ、 教育課程外の活動である一方、学校教育の一環に位置づけられている(文部科学 省:2009)。 一方、特別活動の目標とは「望ましい集団活動を通して、心身の調和のとれた

日本の高等学校における応援団の活動から

金 塚 基 (東京未来大学)

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発達と個性の伸長を図り、集団や社会の一員としてよりよい生活や人間関係を築 こうとする自主的、実践的な態度を育てるとともに、人間としての在り方生き方 についての自覚を深め、自己を生かす能力を養う」(同学習指導要領)とされる。 特別活動には、現行の高等学校学習指導要領に「ホームルーム活動」「生徒会(委 員会)活動」「学校行事」があり、主な生徒会活動の内容には、①生徒会の計画・ 運営、②異年齢集団による交流、③連絡調整、④学校行事への協力、⑤ボランテ ィア活動などの社会参加、が位置づけられている(文部科学省:同上)。 なお、「学校行事」は「学校行事を通して、望ましい人間関係を形成し、集団 への所属感や連帯感を深め、公共の精神を養い、協力してよりよい学校生活や社 会生活を築こうとする自主性、実践的な態度を育てる」とされる。また、「学校 行事の内容」における「儀式的行事」のねらいとして、「学校生活に有意義な変 化や折り目をつけ、厳粛で清新な気分を味わい、新しい生活の展開への動機付け となるような活動を行うこと」とされ、「学校、社会、国家などへの所属感を深 める」ことが趣旨とされてきた(文部科学省:同上)。 つまり、学習指導要領では、特別活動において教員の適切な指導による望まし い集団活動、生徒の主体的な態度を育てること、よりよい生活や豊かな人間関係 を築く態度や能力を実践の場を通じて養うこと、健全な生活態度や人生及び社会 について主体的に考えていけることといった集団・組織的な行動力の育成が目指 されてきたといえる。

2.歴史的経緯について

旧制中学では、明治期における校友会の創設より、校内運動会の開催が盛んに なり、校内にとどまらず、県下の諸学校間での交流が深められていった様子がう かがわれる(秦:2014)。明治の早期以降、中学校が野球や陸上、水泳をはじめ 各種の学生スポーツの普及に大きな歴史的役割を果たしており、それらの過程に おいて諸中学校間の対抗試合や対抗競技が開催され、明治の中期以降には学校年 中行事となっていく(田中・新野:2014)。そして、当時の中等学校では応援団 の活動が盛んであったと考えられる各種の資料が存在する。 例えば、水戸第一高等学校(旧制水戸中学校)の記念誌には、明治29年に開

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催された野球部の栃木県尋常中学校(現宇都宮高等学校)との対抗試合において、 「両軍の応援団は熱狂し、不測の事態が生じそうになり、引き分けに終わった」 とある。また、大正12年の栃木県真岡中学校と茨城県下妻中学校の応援団同士 の乱闘騒ぎの結果、当・翌年度の全国中等学校優勝野球大会~関東大会が県校長 会の申し合わせで中止されたと記録されてもいる(水戸一高百年史編集委員会: 1978)。さらに、昭和4年発行の『全國大學校専門学校中等学校野球部應援歌全集』 (盛進堂書店)には、紹介されている応援歌全125集のうち中等学校のものが80 集を占めており、集団的な応援活動が盛んであったことが示されている。

3.応援の機能と応援団の役割

高橋(2011)では、スポーツ観戦時の応援を現代社会における「世俗的な儀礼」 として捉え、観戦者個人が社会秩序に関する価値を再確認する機会となる可能性 を指摘する。応援行動が社会規範や社会的価値の再生産に関与するとした上で、 スポーツ観戦時の集合的な応援活動には観客に共通の感情を形成する演劇的・儀 礼的な表出がみられるという。 個々の生徒の応援を学校の生徒集団における集合的な応援活動としてみた場 合、そこに社会的な意味や動機づけの要因が発生する。普段の学校生活で関係の ない生徒に囲まれていたとしても、同じ学校の選手やチームを応援することを通 して親密な感情を抱いたり、一体感を高めることにつながっていく。つまり、勝 利させたいという願望に基づいて生じる集合的な応援は、生徒の学校に対する集 団的なアイデンティティの形成を促すことであり、それは結果として学校文化に 対する適応に他ならない。生徒にそのようなパーソナリティを育むことは、将来 的な組織的行動力の基盤を形成することにつながる。 さらに、応援団が応援活動のみならず学校行事における儀式的行事の一翼を担 っている場合、儀礼的な教育効果の達成度に影響を及ぼすエージェントとしての 役割がみえてくる。伝統的な高等学校の応援団では、通年の活動役割は野球観戦 時における選手たちの応援や観衆の応援活動の統制を越えて、野球以外のスポー ツ大会における応援活動や各種学校行事における校歌斉唱、壮行会、文化祭、そ して地域における行事での演舞披露など幅広く活動しているからである。そのよ

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うな応援団は、特別活動や部活などの単なる教育課程上の枠組みを超えて、学校 教育運営上、必要とされる重要な役割を担うエージェントとして機能してきたと いえる。 以上のような応援団の歴史的な活動役割ならび教育的意義の経緯を踏まえ、旧 制中学から戦後の新制高等学校に移行した歴史と伝統を有する高等学校を母集団 として、現在の応援団の有無に関する調査結果を示す(表1参照)。なお、関東 地域圏(1都6県)に範囲を限定した上で、今日(2016年)において応援団が通 年で組織化(=常設)して活動している高等学校をカウントした。

4.応援団の文化ならびに応援の技法

舞踊における美的価値の基準は、人間の日常生活の空間から離脱することを大 きな目的の一つとされるなかで追求されてきた。舞踏は元来、祭儀から発生した ものであり、異次元の空間を醸し、神霊に近づくために演じられた原点があると いう(森下:2002)。舞踏を見せる対象は神霊であり、日常から離脱することが 目的の一つとされるなかでの美的価値基準が追求されたといわれる。例えば、日 本舞踊における具体的な身体の動きとして常に重んじられる基準として、第一に 表1 関東都県別公立高等学校(前旧制中学校)の常設応援団の割合(2016 年時点) 都/県 常設校数 常設校割合 常設経験校数 対象校数 神奈川 2校 20% 10校 東京 8校 36% 22校 千葉 0校 0% 13校 栃木 5校 56% 有:不明 9校 埼玉 6校 86% 有:1校 7校 茨城 6校 60% 有:2校 10校 群馬 5校 56% 有:3校 9校 全対象校数 32校 40% 80校 金塚(2016)より抜粋

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姿勢の正しさ(手足・腰・背筋・あご・肩・頭にまで至る)が挙げられる。美し い立ち居振る舞いは、正しい姿勢をくずさずに座り立つことが基本とされる(花 柳:1980)。 応援団の演舞において前提となる審美的基準には、基本的な基準として、動き の速さや止めなどの強弱のキレや正しい姿勢の保持といった共通基準が存在して いる。演舞のパフォーマンスに要求される技術には、儀礼としての応援行動をリ ードするためにはより高い水準が求められることになる。姿勢、動作のキレの美、 そして9回裏まで持続可能な耐久性が求められるため、日頃から技量ならびに体 力の向上を目指した鍛錬が重視されている(金塚:2016)。 実際に、本報告者が実施した演舞の身体動作に関する実験データの分析によれ ば、相対的に技量が高いとされる応援団員の身体動作には、そうでないとされる 団員による演舞の身体動作と比較して、演技中における頭部・頸部・腰部の軸の ぶれがより少ないことが明らかとなっている。このことは、必勝祈願の集合的な 応援の高揚のため、演舞における神事としての美および非日常的なスタイルが希 求された結果と考えられる(金塚:2017) また、応援団の応援文化には独自の様々な特徴点がみられ、学年や役務などに 関する組織のあり方、学生服や袴などの服装、言葉づかい、複数の応援歌の存在 など多岐にわたっている(表2参照)。学校の伝統文化・生活様式に対する保守 的な要因が多くみられる。

5.学校および地域のシンボリックな活動組織としての応援団

表1に示したように、過去には常設の応援団組織が存在したが既に消滅してい る学校も少なくないため、今後、伝統的な応援団を有する常設校の数が減少して いくことも考えられる。しかし一方で、新たに応援団組織を創設した本郷高等学 校のように、伝統的な学校の応援団文化に対して一定の距離を置き、合理的な視 点やより明確な教育目標を基盤に活動のあり方を模索する動きもみられる(本郷 高等学校応援指導委員会顧問教員へのヒアリング:2018年3月)。 さらに、SNSを通じて高校野球の応援ならびに応援団のあり方が急激に変化 しているという指摘(朝日新聞デジタル:2018年7月8日)もあるなど、「応援」

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活動自体に対する需要は衰退しておらず、逆に保護者・地域を含めた活動として 拡大している傾向がみられている。例えば、これまでの学校行事における活動に 加えて、地域の商工会や自治体が主催する各種行事・イベントへの出演依頼によ り演舞披露を行う機会が増加する傾向がみられ、結果として校内のみならず外部 の地域社会に対する当該学校の存在感を高めている(金塚:2019)。そして、そ のことは再び他の同校の全生徒における学校に対するアイデンティティを高める ことにもつながっていくのであり、地域住民を含めたソーシャル・キャピタルの 形成を高める可能性を有するといえる。 【参考文献】 1 )Gudrun GRAEWE「応援団について─キャンパス・ライフに不可欠の団体か奇妙な遺物か」 『言語文化研究』14巻2号,2002年。 2 )金塚基「高等学校応援団の儀礼的役割に関する一考察」『比較文化研究』No.123,2016年/「高 等学校の応援団の活動に関する研究:演舞における儀礼的要因の分析に向けて」『未来の保育 と教育:東京未来大学実習サポートセンター紀要』2017年/「地域文化の再生における高等 学校応援団の活動の意義に関する一考察」日本学習社会学会『学習社会研究』第3号,2019年。 表2 応援団における文化的特徴(抜粋例) ・3年生は袴・羽織・高下駄(1本)、 1 ~ 2年生=学生服(下のみ変形)を着用 ・歴代数字の刻印された団バッジを所有する ・応援歌8種/演舞6種/その他流行歌は分かりやすさ重視 ・発声訓練は毎回30分間実施 ・演舞には速さと溜めのみならず要耐久力 ・応援時の編成=リーダー 1名 旗手・鼓手各1名 ・2・3年生のみ変形学生服 ・総重量が80キロの団旗を試合時に保持し続ける ・演舞はシンプルで分かりやすさをモットーとして生徒の参加を図る ・夏季の授業時でも学生服を着用 ・「押忍」を使う ・応援時にはリーダー役は1名制でローテーションを組む ・団長のみ高下駄(年代物) ・応援時に鉢巻+白袋を着用 ・校歌2種/応援歌2曲+流行もの/演舞は8種 ・基本的には受け継ぐべき伝統を踏襲する姿勢 ・変化する部分や新しいものも発生するが消えていくものもある ・団長は袴と羽織/幹部は変形学生服/その他は一般学生服 ※金塚(2016)による

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3 )水戸一高百年史編集委員会『水戸一高百年史』1978年。 4 )文部科学省「高等学校学習指導要領(平成29年告示)/同解説」2009年。 5 )森下はるみ「舞踏における動きの美しさ」『バイオメカニズム学会誌』26(3),2002年, 132. 6 )花柳千代『実技日本舞踊の基礎』1980年,26-29,80-81. 7 )秦真人「明治期の旧制中学における運動会の研究(3)─愛知県第一中学校の事例から・そ の1」『愛知学泉大学・短期大学紀要』49,2014年,92. 8 )高橋豪仁『スポーツ応援文化の社会学』世界思想社,2011年。 9 )田中譲・新野守「大阪へのスポーツ移入とその発展について(第1報)─戦前の旧制中学 校を窓口として─」『大阪産業経済大学人間環境論集』13,2014年,127.

参照

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