給湯器及び暖房機器の種類別ストック分布推計モデルに基づく温暖化対策効果のポテンシャル予測
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(2) 𝑝0:基準カテゴリーをとる確率,𝑝𝑖:カテゴリーi をとる確率, x:説明変数,n:説明変数の数. 目的変数は各世帯の給湯器と居間、その他の部屋の暖 房機器である。説明変数はアンケート調査によって得ら れた世帯情報のうち、設備決定に影響を及ぼす世帯情報 である。説明変数を選択する際は多重共線性を考慮して、 統計的指標であるクラメールの連関係数を使用すること により説明変数同士の相関を確認した。 本モデルは最初に住宅がオール電化か否かを判定する モデルを構築し、続いて世帯情報とオール電化か否かを 説明変数の 1 つとして、各世帯の給湯器種類決定モデル を構築した。それと同様に居間とその他の部屋の暖房機 器の種類決定モデルを構築した。本モデルのフロー図を 図 1 に示す。選択された説明変数を目的変数が給湯器と 居間の暖房機器の場合について表 1 に示す。 表 1 選択された説明変数 目的変数. 説明変数 として投入. その他の 世帯情報. +. ②給湯器 種類推計モデル 説明変数 として投入. +. その他の 世帯情報. ③居間の暖房機器 種類推計モデル 説明変数 として投入. +. 給湯器 省エネ基準地域区分. 説 明 変 数 と し て 投 入. その他の 世帯情報. ③その他の部屋 暖房機器種類 推計モデル. 図 1 住宅設備決定モデル. 都市ガスの有無 建て方・所有 説明変数 建築時期 世帯人数 オール電化か否か 世帯年収 目的変数. 建築 省エネ基準. 省エネ基準地域_8 省エネ基準地域_5.6.7 省エネ基準地域_3.4 省エネ基準地域_1.2 2011年以降 2010年以前 世帯人数_5人以上 世帯人数_4人 世帯人数_3人 世帯人数_1.2人 0%. α1 , ⋯ , 𝛼𝑖−1 :定数項, β1 , ⋯ , 𝛽𝑛 :回帰係数. ①オール電化か 否かの決定. 世帯人数 時期 地域区分. では多項ロジスティック回帰分析によりモデルを構築す る。多項ロジスティック回帰分析の回帰式を式 (1)に示す。 i は目的変数のカテゴリー数である.この式から各目 的変数のカテゴリーをとる確率pを導出する。 𝑝𝑖 ln ( ) = 𝛼𝑖 + 𝛽𝑖1 𝑥1 + ⋯ + 𝛽𝑖𝑛 𝑥𝑛 (1) 𝑝0. 居間暖房機器. 20%. 40%. 従来型燃焼式ガス. 燃料電池. 電気温水器. 潜熱回収型ガス. 潜熱回収型石油. HP給湯機. 60%. 80%. 100%. 従来型燃焼式石油. 図 2 給湯器と各説明変数の関係 電気温水器 従来型燃焼式石油 HP給湯機 燃料電池 潜熱回収ガス給 従来型燃焼式ガス 0%. エアコン 石油ストーブ. 20%. 40%. 60%. 電気ストーブ ガス温水床暖房. 80%. 100%. ガスストーブ その他. 図 3 暖房機器と各説明変数の関係. 省エネ基準地域 1、2 といった寒冷地では従来型燃焼 式石油の確率が高く、建築時期では 2011 年以降で潜熱回 収型ガスの確率が高い。また世帯人数が多いほど HP 給 湯機の確率が大きくなることがわかる。これらから、寒冷 地や建築時期が古い建物で高効率給湯器が普及しにくい 傾向があることが明らかとなった。 また図 3 から給湯器に使用される二次エネルギー源と 同じ 2 次エネルギー源の暖房機器を使用する世帯が多い ことがわかった。また燃料電池を所有する家庭ではガス 温水床暖房の保有率が高いことが明らかとなった。. 省エネ基準地域区分 建て方. 3.ケーススタディによる 2030 年 GHG 削減政策の評価 開発した住宅設備決定モデルを用いて全国世帯の給湯 器及び暖房機器のストックを推計し、それを家庭部門エ ネルギーエンドユースモデル(以下、家庭モデル)2 ) の入 力条件の作成に用いて 2030 年度の CO2 排出量の推計を 行った。家庭モデルでは都道府県ごとに算出したエネル ギー消費量を合計することで日本全国の家庭部門エネル ギー消費量を推計する。そして算出した電気、ガス、灯油 のエネルギー消費量に、 それぞれの CO2 排出係数 (表 2) を乗じることにより CO2 排出量を算出した。なお燃料電 池による発電分の CO2 排出量導出時のみ 2030 年火力平 均係数を使用した。. 建築時期 説明変数 世帯年収 未就学児 給湯器. フロー図. なお本モデルに対して、ホスマー・レメショウ検定を適 用し、目的変数の全カテゴリーに対して、p 値が有意確率 を越えたため、モデルの精度は良いといえる。給湯器種類 推計モデルにより算出された確率を、説明変数のカテゴ リーごとに図 2 に、居間の暖房機器種類推計モデルによ り算出された確率を給湯器種類ごとに図 3 に示す。また 本研究では、従来型給湯器は燃焼式ガス、燃焼式石油、電 気温水器の 3 種類、燃料電池は PEFC と SOFC の 2 種 類、潜熱回収型給湯器は潜熱回収ガス、潜熱回収石油の 2 種類と定義している。. 空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集{2019.9.18 〜 20(札幌)}. 表 2 エネルギー源別 CO2 排出量. -70-. エネルギー源. 電気. 電気(2030年火力平均). CO2排出係数. 0.37[kg-CO2/kWh]. 0.66[kg-CO2/kWh]. エネルギー源. ガス. 灯油. CO2排出係数. 54.6[kg-CO2/GJ]. 68.6[kg-CO2/GJ].
(3) 2030 年家庭部門での目標削減量の達成に向けて給湯、 暖房用途での対策について考察するため、家庭モデルの 入力条件である各世帯の給湯器種類と暖房機器種類を変 更した 3 つのケース(目標到達ケース、給湯器対策ケー ス、暖房機器対策ケース)で CO2 排出量を推計する。各 ケースについて以下に記す。 3.1 目標到達ケース 目標到達ケースは後述する給湯器対策ケース、暖房機 器対策ケースと温室効果ガス排出量を比較し、対策の重 要性を評価するためのものである。本ケースでは高効率 給湯器を世帯の給湯消費特性を考慮せずに、現在の普及 傾向通り、政府の地球温暖化対策計画での目標台数だけ 普及されることを想定した。さらにそれによる暖房機器 のストック変化を考慮した。各世帯の給湯器種類は住宅 設備決定モデルで算出した確率に基づき、地球温暖化対 策計画に記載の普及台数目標に整合するようにサンプリ ングすることで決定した。暖房機器種類も同様に住宅設 備決定モデルで算出した確率を用いてストック分布を決 定した。給湯器及び暖房機器のストック分布は後述の給 湯器対策ケース、暖房機器対策ケースにおいて示す。. 上記のように給湯器を配分した給湯器対策ケースと 3.1 で記載した目標到達ケースにおける世帯人数別給湯 器ストック分布及び地域別給湯器ストック分布をそれぞ れ図 4、図 5 に示す。なお燃料電池 2 種類の割合は PEFC が約 83%、SOFC が約 17%となった。 従来型給湯器. 潜熱回収型給湯器. HP給湯機. 燃料電池. 100%. -71-. 世帯数割合. 80% 60%. 40% 20%. 0%. 1人 2人 3人 4人 5人 6人. 1人 2人 3人 4人 5人 6人. 図 4 世帯人数別給湯器ストック分布 (左 目標到達ケース、右 給湯器対策ケース) 従来型給湯器. 潜熱回収型給湯器. HP給湯機. 燃料電池. 100% 80%. 世帯数割合. 60% 40% 20%. 北海道 東北 関東 中部 近畿 中国 四国 九州. 0%. 北海道 東北 関東 中部 近畿 中国 四国 九州. 3.2 給湯器対策ケース 給湯器対策ケースでは高効率給湯器を削減効果の高い 世帯に優先的に普及させ、高効率給湯器を最適な世帯へ 導入することの重要性を示す。なお、2030 年度における 世帯数は約 5123 万世帯であり、高効率給湯器の目標台数 の合計が 4630 万台であるから、約 493 万世帯は従来型 給湯器を保有していることになる。本ケースでは CO2 排 出削減効果が最大となるように配分させるために、まず CO2 排出量が小さい世帯順に従来型給湯器を配分した。 次に世帯間で削減効果にばらつきが多く、また削減効果 が大きい順(燃料電池、HP 給湯機、潜熱回収型給湯器) に配分することで効果が最大になるように配分した。 以下に配分方法の詳細を示す。 ( 1 ) 従来型ガス給湯器の配分 従来型ガス給湯器を使用した場合の CO2 排出量を 全世帯分推計し、CO2 排出量が小さい世帯から順 に配分していく。 ( 2 ) 燃料電池の配分 燃料電池 2 種類( PEFC、SOFC )をそれぞれ使用 した場合の CO2 排出量を全世帯分推計し、CO2 排出量が小さい方の燃料電池を世帯ごと決定す る。そして( 1 )で選択された世帯を除き、選択さ れた燃料電池を導入した時の CO2 排出削減効果 (従来型ガス給湯器基準)が大きい世帯から順に 目標台数分配分していく。この時オール電化世帯 空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集{2019.9.18 〜 20(札幌)}. が燃料電池導入世帯に選ばれた場合、その世帯は 除外する。 ( 3 ) HP 給湯機の配分 ( 1 )、( 2 )で選択された世帯を除くオール電化の世 帯に HP 給湯機を配分する。そして残りの世帯で HP 給湯機を導入した時の CO2 排出削減効果(従 来型ガス給湯器基準)が大きい世帯から順に目標 台数分配分していく。 ( 4 ) 潜熱回収型給湯器の配分 ( 1 )、( 2 )、( 3 )で選択された世帯以外の世帯に潜 熱回収型給湯器を配分していく。. 図 5 地域別給湯器ストック分布 (左 目標到達ケース、右 給湯器対策ケース). 図 4 から HP 給湯機の普及率が世帯人数が多くなるほ ど高まる点は両ケースで共通であるが、燃料電池の普及 率が目標到達ケースでは世帯人数別で一定であり給湯器 対策ケースと傾向が異なる。これは現状の普及傾向のま ま目標台数分燃料電池が普及するより世帯人数の多い世 帯ほど燃料電池の導入率が高まるように普及させる方が、.
(4) 削減効果が大きくなることを示している。従来型給湯器 の保有率で比較すると目標到達ケースでは給湯器対策ケ ースより多人数世帯で従来型給湯器を保有している割合 が大きい。多人数世帯の従来型給湯器を優先的に燃料電 池や HP 給湯機にすべきであることが明らかとなった。 図 5 から、給湯器対策ケースでは燃料電池や HP 給湯 機が北海道、東北、中部地方で普及率が比較的高いことが 明らかとなった。これは寒冷地で給湯需要が大きくなり、 削減効果の大きい給湯器が優先的に導入されたことが考 えられる。逆に目標到達ケースでは寒冷の地域で HP 給 湯機の導入率が小さく、燃料電池はどの地域も一定の普 及率であり、現状の普及傾向のままでは高効率給湯器の 普及が効果的な温室効果ガス削減に寄与するとは言い難 いことが明らかとなった。 CO2 排出量は目標到達ケース、給湯器対策ケースでそ れぞれ約 128 [Mt-CO2]、約 111 [Mt-CO2]となり、高効率 給湯器の世帯配分を工夫することで約 17 [Mt-CO2]の削 減効果が得られた。 以上から高効率給湯器を普及させる世帯を変化させる ことで削減効果に大きな差が生じることが明らかとなり、 給湯需要に大きく影響を与える世帯属性に基づき配分方 法を工夫させることが効果的に CO2 排出量を削減させる ために重要であることが示された。 3.3 暖房機器対策ケース 高効率給湯器の普及に伴う暖房機器のストック変化に よる暖房用途での温室効果ガス排出量の増加を想定し、 対策を講じた場合の削減ポテンシャルを評価する。燃料 電池が大量に普及すると同熱源を使用するガス温水床暖 房とガスストーブの保有率が高まる可能性がある。ガス 床暖房とガスストーブは暖房機器の中でもエネルギー消 費量が多く、2030 年の目標台数分高効率給湯器が導入さ れると暖房用途で CO2 排出量が増加する可能性がある。 そこで、燃料電池はエアコンと組み合わせるのが最も省 エネルギーであるという森國ら 6 )の知見に基づき、燃料 電池導入世帯の暖房機器をエアコンに変更し、CO2 排出 量推計を行った。暖房対策ケースの普及率を図 6 に示す。 エアコン. ガスストーブ. 電気ストーブ. ガス温水床暖房. 石油ストーブ. その他. おける給湯、暖房用途の CO2 排出量を図 7 に示す。 給湯. 20%. 40%. 60%. 80%. 40.0. 60.0. 80.0. 参考文 献 1) 2). 地球温暖化対策推進本部;日本の約束草案,2015 年 7 月 環境省;地球温暖化対策計画,2016 年 5 月. 3). 松岡綾子,他 4 名;長期エネルギー需給見通しにおけ る家庭部門 CO2 排出量削減見込み量の検証,日本建築 学会環境系論文集 第 84 巻, No.757, 2019 下田吉之他;;家庭用エネルギーエンドユースモデルを 用いた我が国民生家庭部門の温室効果ガス削減ポテン シャル予測,エネルギー・資源,30-3(2009), 1-9 松岡綾子,他 3 名;アンケート調査における給湯器種 類の正答率に関する分析,第 35 回エネルギーシステ ム・経済・環境コンファレンス講演論文集, 2019 森國太朗,他 3 名;世帯の需要特性に応じた給湯およ び暖房システムの最適組み合わせの提案,第 34 回エネ ルギーシステム・経済・環境コンファレンス講演論文 集, 553-558, 2018. 6). -72-. 20.0. 4. まとめ 住宅設備決定モデルから、燃料電池が普及することで 温室効果ガス排出量が比較的多いガス熱源の暖房機器 の普及拡大が示唆された。また高効率給湯器を削減効 果の高い世帯に、優先的に目標台数分導入した場合と 無対策に目標台数分導入した場合では、CO2 排出量に 約 17 [Mt-CO2]の差が生じ、さらに燃料電池導入世帯が 保有する暖房機器をエアコンにすることで、 約 0.6 [MtCO2]の削減ポテンシャルがあることが明らかとなっ た。 今後の課題としては市場の変化や政策等で給湯器や 暖房機器の普及傾向が変化した場合の将来推計や、地 球温暖化対策計画の目標台数に縛られないより効果的 な高効率給湯器普及ケースの検討が挙げられる。. 暖房機器ストック分布. 空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集{2019.9.18 〜 20(札幌)}. 0. 給湯、暖房用途での CO2 排出量は発電量を差し引くと 目標到達ケースで約 60.5 [Mt-CO2]、暖房対策ケースで約 59.6 [Mt-CO2]となり、約 188 万世帯に燃料電池とエアコ ンを併用させることによる CO2 削減ポテンシャルは約 0.9 [Mt-CO2]であることがわかった。これは政府試算で 高効率給湯器を目標台数導入することによる温室効果ガ ス削減量 6.17 [Mt-CO2]の約 15%にあたる。高効率給湯 器の導入に伴い普及拡大する可能性のある CO2 排出量の 多い暖房機器の普及を抑制することは、効果的に CO 排 出量を削減する上で非常に重要であると考えられる。. 5). 暖房機器対策ケースでは目標到達ケースと比較して、 約 188 万の燃料電池保有世帯の暖房機器をエアコンに変 更することとなった。目標到達ケース、暖房対策ケースに. 60.5. 図 7 各ケースにおける給湯、暖房用途の CO2 排出量. 100%. 図 6 暖房機器対策ケース、目標到達ケースにおける. 59.6. CO2排出量[Mt-CO2]. 4) 0%. 発電量. 目標到達ケース -20.0. 電気ヒータ式床暖房. 暖房機器対策ケース 目標到達ケース. 暖房. 暖房機器対策ケース.
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