1.頸髄損傷急性期の呼吸器合併症の予防・改善に Mechanical Insufflator-Exsufflatorが有効で あった 1 症例 関西労災病院リハ科 土佐 明子・住田 幹男・竜江 哲培 頸髄損傷急性期では吸気筋・呼気筋の麻痺による咳 嗽力の低下,気道分泌物の増加,体動困難などにより 無気肺,肺炎,換気不全などの呼吸器合併症を起こし やすい.よって急性期では呼吸状態を維持・改善する ため,体位ドレナージ,ネブライザー・去痰剤の使 用,必要に応じて酸素投与,呼吸理学療法,胸腹部圧 迫介助による咳補助,早期離床へ向けた座位訓練など を行う.しかし,それでもやはり気道分泌物の除去が 困難なために気管切開が行われる場合も多い.今回 我々は頸髄損傷急性期の呼吸器合併症の予防・改善目 的に Mechanical Insufflator-Exsufflator を導入し,呼吸 状態が改善し,結果的に気管切開を免れた症例を経験 した.
症例は 69 歳,男性,C6 ASIA impairment scale B, 2005 年 11 月末受傷の患者である.受傷後 5 日目から 2 週間,Mechanical Insufflator-Exsufflator を使用した. 2.頸髄損傷後に発生した低 Na 血症の 1 例 大阪労災病院リハ科 竹安酉佳倫・大澤 傑・玉城 雅史 重症脊髄損傷後は亜急性期に低 Na 血症を高率に合 併することが知られている.今回我々は頸髄損傷後に 低 Na 血症を合併した症例を経験したので報告する. 症例は 75 歳,男性.自宅階段から転落し頭部打撲 し受傷した.MRI 上 C3/4 髄内輝度変化を認め,非骨 傷性頸髄損傷と診断し保存療法となる.受傷時完全四 肢麻痺であったが,ステロイド大量療法開始後,徐々 に改善を認めた.受傷 3 週後に血清 Na 120/m l とな り,不隠状態となる.血清浸透圧軽度低値,血清 Na 低値にもかかわらず,尿浸透圧,Na 排泄増加を認め, AVP(バソプレッシン)高値であった.その他レニン, アルドステロン,コルチゾールは基準値内であった. AVP 過剰分泌による低 Na 血症と診断し水分制限を開 始した.水分制限開始後膀胱炎合併し,抗生剤投与, Na 補正を行った.炎症所見は 2 週間で消退,その後約 3 カ月の経過で,低 Na 血症は改善を認めた. 3.関節リウマチに伴う頸髄症に対し,保存的治 療を行った 1 症例と手術的加療を行った 1 症 例の比較検討 千船病院整形外科 岸本真一郎・田村 和哉・佐浦 隆一 加東 武・清水 富男 関節リウマチ患者の脊椎病変,特に頸椎病変は頻度 の高いものである.今回,関節リウマチに伴う頸髄症 を発症した 2 症例について報告する. 1 症例は 72 歳,男性.1993 年発症の関節リウマチ, 2003 年 9 月頃より徐々に両上肢の巧緻運動障害,お よび両下肢の筋力低下を伴う脊髄症状が出現し,頸椎 カラー固定と理学療法にて保存的治療を行い経過をみ た.もう 1 症例は 57 歳,女性.1987 年発症の同じく 関節リウマチ,2003 年 9 月頃より両上肢と両下肢の 痺れ,筋力低下を伴う脊髄症状を認め,同年 10 月に 頸椎に対し,後方除圧術と後方固定術の手術的加療を 行った症例である.関節リウマチを既往にもち,ほぼ 同時期に頸髄症を発症し保存的加療にて経過をみた症 例と手術的加療を加えた 2 症例に対し術前,術後およ び現在までの経過を比較検討してみたところ,保存的 治療にても手術的治療と同等の症状の改善を認めたの で報告する. *兵庫県立総合リハビリテーションセンター中央病院リハビリテーション科/〒 651.2181 兵庫県神戸市西区曙町 1070 Tel 078.927.2727 Fax 078.925.9203
第 20 回 日本リハビリテーション医学会 近畿地方会
─ 2006 年 2 月 18 日(土),於:神戸国際会議場─ 担当幹事:中野 恭一
*4.腰椎内視鏡手術と早期リハビリテーション施 行による退院時筋力 和歌山県立医大リハ医学 幸田 剣・神埜 聖治・神埜 奈美 石田 和也・佐々木 緑・中村 健 田島 文博 和歌山県立医大付属病院紀北分院整形外科 峠 康 和歌山県立医大整形外科 吉田 宗人・岡田 基宏・延與 良夫 【目的】当院整形外科で施行されている後方進入内 視鏡手術では術後 5 時間後から立位歩行が可能であ る.今回,術前と退院時の機能評価を行ったので報告 する. 【対象】内視鏡視下手術を施行された腰椎椎間板ヘ ルニア(LDH)患者 5 例と腰部脊柱管狭窄症(LCS) 患者 12 例とした. 【方法】術前に当科に紹介を受け,術直後よりリハ ビリテーションを開始する説明を行った.測定項目は, 術前と退院時の JOA score,体幹の屈曲・伸展の筋力 測定,術前と術翌日および退院時の FIM とした.術 後 5 時間目より立位歩行訓練を行った. 【結果】術後,平均在院日数は LDH で 8.6 日,LCS で 8.3 日であった.JOA score は LDH,LCS とも術前 と退院時の間で有意に改善した.筋力は LDH,LCS ともに屈曲・伸展筋力において術前と退院時の間で有 意な差はなかった.FIM は LDH,LCS ともに術前に 比べ術翌日では有意に低下し,退院時には術前と同等 に回復した. 【考察】内視鏡手術は低侵襲であり術直後よりリハ を開始することにより,短期間で術前と同等の筋力お よび ADL を獲得し早期の退院を可能とする. 5.温熱刺激が軟骨細胞代謝におよぼす影響の検討 京都府立医大大学院運動器機能再生外科学(整形外科) 谷口 大吾・北條 達也・高橋 謙治 新井 祐志・外村 仁・徳永 大作 長谷 斉・久保 俊一 京都府立医大附属病院リハ部 徳永 大作・長谷 斉 【目的】温熱刺激が軟骨細胞のプロテオグリカンお よび type Ⅱコラーゲン代謝に与える影響を mRNA レ ベルで検討した. 【方法】刺激温度 37,39,41,43 ℃でそれぞれ 15 分,30 分の温熱刺激を株化軟骨細胞様細胞(HCS― 2/8) に負荷した.温熱負荷後 3 時間培養した後,それぞれ の刺激群のプロテオグリカンおよび type Ⅱコラーゲ ンの mRNA 発現を Real-time PCR を用いて調べた. 37℃温熱負荷群を対照群とした. 【結果】39 ℃の温熱刺激では 15 分,30 分の刺激時 間 で プ ロ テ オ グ リ カ ン お よ び t y p e Ⅱ コ ラ ー ゲ ン mRNA 発現の亢進を認めた.41 ℃,43 ℃の温熱刺激 ではすべての刺激時間で mRNA 発現が低下し,その 低下は刺激温度と刺激時間に依存した. 【結論】適切な温熱刺激は軟骨細胞に対してプロテ オグリカンおよび type Ⅱコラーゲン代謝を促進させ, 軟骨組織の修復に促進的に働く可能性が示唆された. 6.要介護認定の妥当性についての検討 大阪府立身体障害者福祉センター附属病院リハ科 南部 誠治・松岡美保子・松下 直史 鈴木 恒彦 愛風病院リハ科 小西 英樹 【目的】要介護度と実際の ADL との間に乖離が見ら れると感じられることが多い.今回我々は,要介護度 と ADL の関係について調査・検討を行った. 【対象および方法】対象は 2003 ∼ 2004 年度に当院 に入院した患者のうち,要介護認定され,かつ入院中 に FIM で ADL 評価をなされた者 125 例,FIM の運動 項目・認知項目・合計点数を ADL の指標とし,要介 護度との相関性について,retrospective に調査した.
【結果】FIM の合計点数と要介護度の間には負の相 関を認めた(r =−0.773).FIM の運動項目と要介護 度の間には強い相関(r =−0.790)を認め,FIM の認
知項目と要介護度の間には相関性は認めるものの弱い (r=−0.436). 【考察】要介護度の認定は FIM 運動項目から考える と概ね妥当に評価されていると考えられた.しかし, FIM 認知項目との相関は弱く,認知能力に対して妥 当な評価をしているとはいい難い.主治医意見書への 記入に際しては,認知障害者等に対しての十分な配慮 を払う必要性があると認識させられた. 7.都市部における介護保険給付状況―大阪府に おける過去 3 年間の分析― 生長会愛風病院リハ科 小西 英樹・橋本 務 和歌山県立医大リハ科 田島 文博 【はじめに】過去 3 年間の大阪府の介護保険給付状 況を調査・分析したので,その傾向などについて報告 する. 【方法】大阪府介護保険給付状況の月別の平均を過 去 3 年に渡り,居宅・施設などを含めてサービスごと に分けて分析・検討を行った. 【結果】要介護者は 30 万人を超え,その 1/3 は要介 護 1 が占めていた.この結果 2004 年より居宅/施設の 給付率が逆転していた.居宅サービスにおいてはこの ため,訪問介護の伸びが著しく,通所系では通所リハ より通所介護へとより廉価なサービス利用へ誘導され ていた.また,施設サービスにおいては二極化が進ん でいることが伺えた.身体介護の重度な利用者は特養 へ,医療度の高い重度の要介護者は介護療養病院へと 流れていた. 【考察】重度要介護者の disconditioning の予防など に関与することが肝要と思われた. 8.虚弱高齢者に対する筋力トレーニング―筋肥 大効果と栄養摂取量の検討― 箕面市立病院リハ科 相良亜木子・逢坂 悟郎・藤本 哲雄 【目的】低栄養が問題視されている虚弱高齢者に対 し比較的高負荷の筋トレを行い,エネルギー摂取量と 筋肥大の関係について検討した. 【方法】高齢患者 15 名(平均 84.1 歳)に,膝関節 伸展筋群の筋トレを最大筋力(筋力)の 80 %にて 10 回 3 セット/日で,4 週間継続した.評価は筋力,CT による大腿四頭筋断面積(面積)をそれぞれ訓練期間 前後に測定した. 食事摂取量の調査を行い,エネルギー摂取量と訓練 効果の関係を見るため,エネルギー必要量を摂取量が 上回る栄養良好群(良好群)と下回る栄養不良群(不 良群)の 2 群に分けて検討した. 【結果】良好群と不良群での検討では,蛋白摂取量 では有意差なく,筋力増加率は良好群で 65.8%,不良 群で 38.8%であり,良好群で大きい傾向を示した.面 積増加率は良好群で 10.6 %,不良群で 4.4 %であり, 良好群で有意に大きな増加を示した(p<0.05). 【考察】虚弱高齢患者に対する筋力トレーニングに おいて,エネルギー必要量を上回り摂取した患者群は 不足した患者群に比べ有意に大きな筋肥大を示し,訓 練効果とエネルギー摂取量との関連を示唆した. 9.嗅窩髄膜腫が頸髄損傷患者のリハビリテーシ ョンに影響をおよぼした 1 例 愛仁会リハ病院リハ科 奥中 美早・山崎 駿・平山 昭彦 髄膜腫をもつ頸髄損傷患者のリハビリテーション過 程において,腫瘍切除により精神症状の改善が認めら れた症例を経験した. 【病例】64 歳,男性.バイク事故にて前病院に入院. 両上肢優位の四肢麻痺と知覚障害を認め中心性頸髄損 傷と診断され,また偶発的に髄膜腫を指摘され,保存 的加療を受けた.リハ目的で当院に転入院.当初より 易怒性や被害妄想などの精神症状を認めたが,リハの 進行に伴い ADL の改善は得られた.一方,脱抑制等 の精神症状が徐々に増悪し訓練継続が困難となった. 再検 CT では左前頭葉低吸収域増大しており,腫瘍周 辺浮腫増大による前頭葉症状の悪化と判断し,前医に 腫瘍摘出手術を依頼した.術後再入院しリハ再開.嫉 妬妄想は残存したが,訓練意欲は向上,社会的交流は 改善がみられ,その後のリハは順調に進行した. 【まとめ】精神症状をきたしリハの阻害因子となっ た髄膜腫の切除により,リハ効果を高めることができ た.
10.右大腿切断および左上腕切断を有する症例に 対する義肢装着の選択について 大阪府済生会中津病院リハ科 森田 昌宏・北村 嘉雄 【はじめに】本邦では,上肢切断の大半に装飾義手 を処方されている.今回の症例は下肢切断も合併して いるが,本人が機能的な義手を希望されている.当科 では義手処方の経験は少なく,義手の処方および訓練 について広く意見をいただきたいと考える. 【症例】66 歳,女性.交通事故にて,左上肢および 右下肢を轢過され,救急病院へ搬送.同日左上腕切断 術および右大腿切断術を施行された.受傷から約 3 カ 月後,義肢の装着・訓練を目的に当科紹介.転院とな った.上腕長は右 30 cm,左 19.5 cm,左肩関節可動 域屈曲 80°伸展 20°MMT 4 である.断端部の幻肢痛 を認めるが,軽度である.現在,筋電義手の仮義手製 作にむけて筋電信号採取・筋収縮訓練を実施してい る.大腿切断部は長断端で軽度の浮腫を認め,可動域 制限,筋力低下なく,幻肢痛はごく軽度である.TSB 義足用のシリコンライナーを右上肢のみで自己にて装 着可能となっており,今度大腿義足の装着訓練を開始 する予定である. 11.両側性に広範な梗塞巣を呈したがほとんど運 動麻痺を残さず独居で自宅復帰した脳塞栓の 1 例 八尾はぁとふる病院リハ科 小野 仁之・泰麻 良彦・坂本 博和 今回我々は頭部 CT で両側大脳半球に広い皮質梗塞 巣を呈し,失語と高度の知覚障害を残したが高い運動 能力を示し,自宅復帰が可能となった 1 例を経験した ので報告する. 症例は 53 歳,男性(右利き)で甲状腺機能高進症 と心房細動の既往があり 2005 年 5 月 12 日失語と流 涎,意識障害で発症.再発生脳塞栓の診断で近医で治 療を受けた後,当院に紹介されて 7 月 29 日転入院と なった.入院時すでに歩行自立しており,発語は不能 であったが聴覚言語理解は良好であった.頭部 CT で は右大脳半球および左大脳半球弁蓋部にかなり広範な 梗塞巣を認め,体性知覚は両側性に高度に脱失してい た.当初口腔問題による摂食・嚥下障害がみられたが 経口摂取は可能で,失語以外の高次脳機能障害はほと んど消失して発症後 3 カ月までに走ることや自転車運 転も可能となった.本人の意志を考慮し,生活関連動 作とコミュニケーション手段の確立,自宅生活での安 全面援助を中心に援助体制を準備して,12 月 10 日独 居での自宅生活に復帰した.体性知覚の代償として視 覚情報を最大限に活用している様子がうかがわれた が,脳病巣の広がりからみると理解しがたい機能回復 と学習能力を示した 1 例であったと考えている. 12.頸椎牽引療法後に発症した小脳梗塞の 1 例 和歌山県立医大附属病院リハ科 神埜 聖治・中村 健・幸田 剣 佐々木 緑・石田 和也・神埜 奈美 田島 文博 【目的】今回,我々は椎骨動脈閉塞を有する頸椎症 患者において,頸椎牽引療法が誘因となり発症したと 考えられる脳梗塞を経験した. 【症例】69 歳,男性,2005 年 10 月中旬,近医にて 頸椎牽引療法を行った後,突然の嘔吐,幻暈を自覚 し,当院へ搬送された.頭部 MRI 拡散強調画像にて 左小脳半球に高信号域を認め,小脳梗塞と診断された. 脳血管造影検査では,左椎骨動脈の低形成および閉 塞,筋枝による側副血行路を認め,頸部エコー検査で は左椎骨動脈の狭小化および一部で逆流を認めた.急 性期はラジカット,グリセオールにて保存的に加療 し,また,リハビリテーションは頸部の過度の動きに 注意しながら行った.11 月下旬,独歩可能となり, ADL 自立したため自宅へ退院となった. 【考察】今回の症例は,筋枝による側副血行路が頸 椎牽引により圧迫・途絶されたことにより椎骨動脈領 域の血流低下がおこり,小脳梗塞を発症したことが推 察された.椎骨動脈の血流が筋枝の側副血行路により 保たれている場合,頸椎牽引には注意が必要であるこ とが示唆された.
13.術後長期挿管により反回神経麻痺をきたした 総合失調症の 1 例―摂食嚥下チーム,NST チ ーム,精神科他,多職種の連携が有効であっ た病例― 京都桂病院リハ科摂食嚥下チーム 宮崎 博子 京都桂病院消化器センター外科 上原 正弘 同 外科 NST チーム 松谷 泰男 同 内科 松原 進 京都桂病院精神科 太田 多紀 【病例】62 歳,女性.【既往歴】統合失調症で加療 中.【現病歴】食思不振で来院,Hb 8.1 g/dl,Hct 10.4 %で緊急入院. 【入院後経過】出血性胃潰瘍穿孔と診断,緊急幽門 側胃切除術を施行された.第 2 病日より理学療法を開 始し第 7 病日抜管.第 15 病日より作業療法を,水分 摂取時のむせに対し言語療法を開始したが,嚥下造影 検査(VF)で多量の誤嚥を認め,禁食,NST による TPN 栄養管理とした.脳 MRI で両側大脳半球病変・ 脳幹病変なし.月 1 回 VF とカンファレンスで確認し つつ食事を開始し拡大した.退院前第 3 回 VF でも食 事環境設定が必要であったが,症例による自己規制が 困難なため,家族による設定の徹底を図り退院した. 6 カ月後に第 4 回 VF で評価した. 【結果・考察】本例の摂食嚥下障害は,長期挿管後 の反回神経麻痺と考えられた.術後反回神経麻痺は改 善が期待できるため,障害期における対応が重要であ るが,統合失調症においても同様で,家族や他職種の 有機的な関わりが奏功したと考えられた. 14.長期にわたり回復を示した Locked-in syndrome (LIS)の 1 例 西宮協立リハ病院リハ科 寺山 修史・太田 利夫・松本 憲二 奧野 太嗣 兵庫医大篠山病院リハ科 後藤 健・宗本 尚志 兵庫医大リハ部 川上 寿一・道免 和久 【症例】22 歳,女性.【現病歴】2004 年 4 月意識消失 で発症.頭部 CT にて中脳∼橋にかけて出血を認め, 中脳水道に穿破.緊急脳室外ドレナージ術,2 週後に シャント術施行.意識は清明,四肢の弛緩性麻痺. 左瞬目だけで意思疎通が可能な locked-in syndrome の 状態を呈していた.FIM 運動項目は 13/91. 【経過】集中的な入院でのリハビリテーションを 2005 年 12 月まで行い自宅退院.当院外来リハ継続中. 四肢の弛緩性麻痺は改善,ベッドから車椅子への移 乗,車椅子駆動は自立.ADL も FIM 運動項目 49/91 と改善.嚥下機能も改善し 3 食経口摂取可能となっ た. 【考察】Locked-in syndrome では一般的に運動麻痺 の回復は困難といわれるが,本症例のように早期から 長期間にわたり集中的なリハを行うことにより改善を 示す例もある. 15.回復期リハビリテーション病棟の地域特性― 2 施設の比較から― 大阪医大リハ医学教室 村尾 浩・山口 淳 西宮協立リハ病院リハ科 太田 利夫・松本 憲二 清恵会三宝病院 齊藤 治 【はじめに】回復期リハビリテーション病棟(以下, 回復期病棟)はその病床数は増え続けているが,標準 化されたシステムや患者層などはいまだに確立されて いない.今回,2 施設の回復期病棟を比較することで, 地域や運営姿勢の違いによる特性を明らかにした. 【対象と方法】2005 年上半期の N 病院回復期病棟退 院患者(男 62 名,女 56 名,平均 69.6 歳)と S 病院 回復期病棟退院患者(男 26 名,女 51 名,平均 74.9 歳)を対象とした.疾患名,発症から入院までの期間, 入院時 FIM,在院日数,退院時 FIM,自宅復帰率を 調査し,2 施設間で比較した. 【結果】N 病院と S 病院のそれぞれの脳卒中比率: 83.1%,44.2%(p<0.01),発症から入院までの期間: 42.6 日,31.8 日(p<0.01),入院時 FIM : 65.1 点, 91.0 点(p<0.01),在院日数: 93.7 日,78.1 日(p< 0.05),退院時 FIM : 83.0 点,100.4 点(p<0.01),自 宅復帰率 66.9%,68.8%(NS)であった. 【考察】施設間に疾患や入院時,退院時の ADL 能力, 在院日数に差を認めたが,これらは地域特性のみなら ず病院特性による影響も考慮する必要があると考えら れる.
16.アルゴンガス吸入による低酸素脳症患者の家 庭復帰 大阪府済生会中津病院リハ科 北村 嘉雄・森田 昌宏 症例は 28 歳,男性:アルゴンガス吸入による低酸 素脳症,四肢麻痺,遷延性意識障害である.作業中に アルゴンガスを吸引し意識消失し A 病院に入院.呼 吸は弱く低酸素状態になっていた.徐々に意識レベル の改善がみられ,若干追視が認められるようになっ た.体動も出現し,時には開閉眼の指示に応じるよう になった.在宅復帰に向けて発症 5 カ月後当院に転院 となった.ADL は全介助を要し食事は胃瘻からの摂 取,排泄はおむつ内に失禁状態であった.患者の可能 性を諦めずに座位耐性訓練,関節運動,嚥下・構音な どに対する多面的リハビリテーションアプローチを行 った.意識レベルが改善し座位の安定化や嚥下とコミ ュニケーションがとれるようになった.退院後,水分 を含めた食事摂取が可能になり胃瘻も閉鎖した.表情 もさらに豊かになり短文であれば発語でき歌も歌える 状態になった.入院時,どこまでの改善が望めるかわ からない低酸素脳症患者に対して入院リハを継続する ことにより傷害された脳の可塑性による回復と二次的 に加わった廃用症候群の改善に結びついたと考える. 17.都市部総合病院回復期リハビリテーション病 棟の急性期病院との連携―リハビリテーショ ン科としての対応― 大阪府済生会中津病院リハ科 森田 昌宏・北村 嘉雄 当院は,大阪市の中心に位置する都市部総合病院で ある.2001 年 11 月より回復期リハビリテーション病 棟を開設した.当初,病院自己完結型を目指していた が,大阪市および府下の急性期病院から転院希望が増 えるに従い,リハ科として病病連携による都市部地域 完結型へと変化を遂げてきた.当初,発症後期間が経 過した適応外の患者紹介などが多くみられたため,急 性期病院との病病連携用に回復期リハ病棟運用基準を 作成し,入院をお断りした場合もその内容を送付して きた. さらに,近隣急性期病院からの紹介があり判断に困 る場合は,患者の事前訪問診療を行った.また,一般 病棟にリハ科病床を確保し,入院決定から一週間以内 の転院を可能にした.その結果,一年前と比べ近隣急 性期病院からの転院割合が高まり,障害の軽重にかか わらず在宅復帰を目標にしていることを,近隣急性期 病院および患者家族に理解していただいたことで,在 宅復帰率も向上している.今後も,都市部総合病院内 に回復期リハ病棟があることの意義を急性期病院にさ らに知っていただき,リハ結果を残していきたい. 18.胃ろう造設症例に対する PEG 造影の臨床的有 用性―第 2 報告― 生長会愛風病院リハ科 小西 英樹・橋本 務 和歌山県立医大リハ科 田島 文博 【はじめに】PEG 症例における胃食道逆流症(GER) の頻度の高さについては前回も報告した.今回はより 生理的な検査方法に変えたので,その結果について報 告する. 【方法】従来はガストログラフィンを約 5 分かけて 100 ml 注入していたが,検査時に胃内圧を上昇させ, GER を来たしやすい環境にあったのを,生食 100 ml とガストログラフィン 100 ml を 30 分かけて投与 (400 ml/h)して評価を行った. 【結果】8/20(40 %)の症例において GER を認め た.軽度の症例は経過観察としたが,重度(中部食道 までの逆流あり)例に対しては,なんらかの対策が必 要と思われた. 【考察】PEG 症例の GER については多因子の関与 があると考えられた.造設場所,消化管蠕動,大腸の ガスの影響など複雑であり,その詳細について考察を 加えたので報告する. 19.脳血管障害患者の脈波伝播速度(PWV)測定 における臨床的特徴と意義 兵庫県立リハ中央病院内科 加藤 順一・戸田 美佐・楠 仁美 高田 俊之・阿佐美雅子・高田 雅美 中村 知子・早川みち子・谷崎 俊郎
脈波電播速度(PWV:pulse wave velocity)は動脈 硬化の程度を反映する一指標として幅広く臨床応用さ れている.今回,脳血管障害例において PWV を測定
し,臨床的特徴およびその意義について検討する.片 麻痺を伴う脳血管障害患者 200 例(男性 146 例,女性 5 4 例 : 6 1±1 1 歳 ) を 対 象 に , 麻 痺 側 と 非 麻 痺 側 baPWV を測定し,運動麻痺が PWV におよぼす影響 をみるとともに機能的自立度評価法(FIM:function-al independence measure)による身体活動量および血 清脂質との関連について検討した.麻痺側 baPWV は 非 麻 痺 側 と 比 較 し て 有 意 に 高 値 を 示 し た が ( p < 0.0001).脳出血と脳梗塞による病型別および左右麻 痺側別では有意差を認めなかった.麻痺側 baPWV は 年齢と有意に正相関を示し(r=0.56,p<0.05),FIM と負相関を認めたが(r=−0.29),血清脂質との間に は相関を認めなかった.これらの結果より片麻痺を伴 う脳血管障害患者の麻痺側では,非麻痺側と比較して 四肢血管の伸展性が低下しているだけでなく,加齢お よび運動麻痺により身体活動量が低いほど動脈スティ フネスの低下と関連していることが示唆される.
1.脳卒中患者が障害を個性の一部と認める時期 と要因 勤医協札幌丘珠病院リハ科 岡本五十雄 同 神経内科 塩川 哲男 【はじめに】脳卒中後に,障害を個性の一部と認め られるようになることは,障害受容(克服)の指標の 一つであると考えられ,障害の受容(克服)を考える 上できわめて重要である.しかし,どのようなことが 影響しているのか,検討した報告はほとんどみられな い.今回,障害を個性の一部と認める時期と影響する 要因について検討した. 【対象と方法】対象は 2004 年 6 ∼ 12 月の間に,当 院の外来に通院していた脳卒中患者で男性 63 例,女 性 33 例である.年齢は 63.4±10.6 歳.発症後の期間 は 9.1 ± 6.2 年である.外来で面接による調査を行っ た.統計の検定には,c2検定,Mann-Whitney の U 検 定,平均値の差の検定を用いた. 【結果】障害を個性の一部であると認められるのは 72 例,認められないのは 24 例であった.認めた時期 は,発症 2 年未満 15 例中 6 例(40%),発症後 2 年以 降 3 年未満 10 例中 6 例(60 %),3 年以降 5 年未満 8 例中 7 例(88 %),5 年以降 10 年未満 29 例中 24 例 (83%),10 年以降 22 年未満 34 例中 29 例(85%)で あり,発症 3 年を過ぎる頃から,障害を個性の一部と 認める例が多くなる.個性の一部と上肢能力との関係 では,廃用手 43 例中 27 例(63 %),補助手 24 例中 19 例(79%),実用手 32 例中 29 例(91%)上肢能力 が高くなるに従い障害を個性の一部と認める割合が高 くなっていた(p< 0.01).発症 5 年未満は上肢能力の 影響を認め(p<0.01),5 年以降は認められなかった. 年齢,性別,他の運動障害や日常生活動作(ADL)な どとの関連は認められなかった.人生に満足している 56 例全例が障害を個性の一部と認めていた.生き甲 斐の有無との関連は認められなかった. 【考察】個性の一部と認めるには,歳月を要してい る.早期の受容には上肢能力が影響し,それ以降は他 の要因が考えられる.なお,受容には歳月を要してい るので,早期に認めさせようとすることは,患者に多 大な精神的負担をかけ,破局に追い込むことになるの で,気をつけなければならない.患者の気持ちを汲み ながらみていく必要があると考える. 2.脳卒中後の落胆 勤医協札幌丘珠病院リハ科 岡本五十雄 同 神経内科 塩川 哲男 【はじめに】脳卒中後に,どれくらいの患者が落ち 込む(落胆する)のか,よくわかっていない.その落 胆が,どのようなことと関連しているのか,それを明 らかにすることは,患者をサポートする上でもきわめ て重要である. 【対象と方法】対象は 2004 年 6 ∼ 12 月の間に,当 院の外来に通院していた脳卒中患者で男性 64 例,女 性 33 例である.年齢は 63.4±10.6 歳.発症後の期間 は 9.2 ± 6.2 年である.外来で面接による調査を行っ た.統計の検定には,c2検定,Mann-Whitney の U 検 定,平均値の差の検定を用いた. 【結果】脳卒中後落胆したのは 77 例,落胆したこと のないのは 20 例であった.入院中のみの落胆 22 例, 退院後のみ 3 例,入・退院後も落胆していたのは 52 例であった.発症時年齢は落胆群 51.9±10.4 歳,非落 胆群 63.4±10.0 歳であった(p<0.01).落胆と推計学 的に有意であった機能障害,活動制限は上肢能力 (p < 0.01),下肢の麻痺の程度(p < 0.05)であった. 性差,家族数,歩行能力,杖の有無,装具の有無,車 いすの有無,失語とは推計学的有意差は認めなかっ た.落胆と苦悩との関係では,落胆群の 73 例(95%), 非落胆群では 5 例(25%)が苦悩していた(p<0.01). 落胆群の 41 例(53 %)は,過去に希死念慮があり, *北海道大学病院リハビリテーション科/〒 060.8648 札幌市北区北 14 条西 5 丁目 Tel 011.706.6066 Fax 011.706.6067
第 14 回 日本リハビリテーション医学会 北海道地方会
─ 2006 年 9 月 16 日,於:北海道大学学術交流会館─ 担当幹事:生駒 一憲
*非落胆群は 20 例中 1 人も希死念慮は抱いていなかっ た. 【考察】発症時年齢が若く,上肢の機能が落ちてい て,下肢の麻痺の重い人に落胆が大きいことがわか る.若い人は,仕事を持っていたり,将来に向けての 希望が大きく,それが,手足の麻痺によって,将来の 道が絶たれたことにより落胆し,苦悩し,希死念慮を 抱くことになっているのではないだろうか.この点 を考え,精神的なサポートが重要であると考える. 3.大腿骨骨幹部骨折術後,大腿骨顆部骨折が発 見され,在宅復帰が遷延した生体肝移植患者 の 1 例 北海道大学病院リハ科 橋 邦彦・ 橋 春子・竹内 直行 松尾雄一郎・中馬 孝容・生駒 一憲 【目的】生体肝移植患者は,術前から脂肪の吸収障 害から脂溶性ビタミンの欠乏をきたし,骨密度は低下 状態にある.術後は,ステロイドの使用も相まって更 に骨密度が低下し,全体で 17 ∼ 38 %に骨折が認めら れると報告されている.今回,自転車走行中の転倒に よる大腿骨骨幹部骨折の骨接合術の術後訓練中,更に 大腿骨顆部骨折が発見され,在宅復帰まで長期に至っ た 1 例を経験し,生体肝移植患者の訓練の注意点を骨 密度の低下に照らし合わせ考察する. 【症例】53 歳女性.2000 年 6 月生体肝移植術を受け る.2006 年 2 月 22 日自転車走行中の転倒により,右 側大腿骨骨幹部骨折受傷.3 月 2 日当院整形外科にて, 骨接合術施行,8 日理学療法訓練開始,27 日当科に転 科した.転科時は,HKB 装具装着し,膝伸展位固 定・免荷の状態であった.右股関節屈曲の徒手筋力検 査(MMT)は 4 であった.骨幹部骨折部の骨癒合悪 く,荷重開始が遅れていた.そして髄内釘より遠位の 位置に大腿骨顆部骨折が発見され,更に荷重開始が遅 れ,4 月下旬・術後 8 週で部分荷重・膝関節の可動域 訓練開始となり,結局 5 月下旬・術後 12 週で全荷重 となった.自宅が 2 世帯住宅の 2 階であったので,階 段昇降自立の確認後,7 月 4 日自宅退院となった. 【考察】当院では生体肝移植が行われている.生体 肝移植後の合併症の一つとして,骨密度の低下・易骨 折性がある.移植後の訓練において,骨密度の低下・ 易骨折性に注意を払うことに加えて,今回の場合数年 後の骨折の術後訓練においても,骨癒合の遅延・再骨 折などに,十分な注意を払う必要がある. 4.リハビリテーションの訓練中に生ずる痛みに 対する灸の鎮痛効果 登別厚生年金病院リハ科 橋本 茂樹・鈴木秀一郎 登別厚生年金病院 時田 捷司 リハビリテーションの訓練中に過用・誤用等に起因 する痛みが起こり,それが訓練を阻害する場合があ る.また合併する関節症等の骨・軟骨由来の疼痛の再 燃,増悪も経験する.痛みのコントロールのために, 内服・シップ等の鎮痛消炎剤,温熱等の物理療法,局 麻剤等のトリガーポイントの局所注射や関節内注射等 の種々のアプローチにて疼痛緩和を図っている.最 近,代替療法が注目されておりリハ訓練中の痛みの鎮 痛に対しても利用できないかと考えていた.今回,簡 易タイプの灸(せんねん灸レギュラー)を使用しリハ 訓練中の痛みのコントロールを試みた. 対象はリハ目的の入院患者で 2006 年 2 月∼ 3 月の 2 カ月間に痛みを訴え,訓練に何らかの支障をきたし た 7 症例 10 部位.骨・関節由来 3 部位,腱・筋由来 7 部位.簡易タイプの灸を 1 日 1 回(症例により 2 日) 使用.使用結果は骨関節部位由来は一時的に有効であ ったが,腱・筋由来は全例で著効であった.この簡易 タイプの灸がリハ訓練中の痛みコントロールに有用で あることが分かった. 5.軽度誤嚥を呈する小児に対する摂食嚥下訓練 の経験 北海道立札幌肢体不自由児総合療育センター 続 晶子・津川 敏 【はじめに】小児期では軽度誤嚥を呈していても, 姿勢や食物形態などを調整し,嚥下摂食訓練をするこ とにより経口摂取が可能になるといわれている.軽度 誤嚥を呈すると評価された小児についてリハチームに よる嚥下摂食指導を行い,経口開始および維持に必要 な条件について検討したので報告する. 【対象と方法】1999 年 4 月から 2006 年 3 月までに 当センターに在籍し食事指導を行った 40 人を対象と した.全員摂食嚥下障害があり,誤嚥が疑われ 3±0.9 歳までに初回嚥下評価をされていた.また,同一症例
に対し 16±1.3 歳までの経過を診療録より後方視的に 調査した.調査項目は,臨床診断,ビデオ透視下嚥下 造影検査,大島分類である.なお,2001 年度より耳 鼻科でのビデオ内視鏡検査(鼻咽腔喉頭ファイバース コープ).小児科で日本広範小児リハ評価セットおよ び超重症児スコア評価も併せて行った. 【結果】男性 24 人,女性 16 人からなる軽度誤嚥群 40 人の基礎疾患は,脳性麻痺 17 人,後天性脳障害 13 人,その他 10 人であった.理学療法で座位バランス および頭頸部の安定性と対称性を行い,作業療法で食 事に対する認知と受け入れ,言語療法で間接訓練,看 護で口腔内ケア等を継続して行った.訓練開始後,感 覚過敏が抑制された時点で,唾液や 5 %糖水を嚥下さ せ,むせや酸素飽和度の低下,飲み込み後の喘鳴がな いことを確認し食物を使用した直接訓練に移行した. 88 %が経口単独となったが,5 %は不顕性誤嚥などに より経口困難と評価された.誤嚥しにくい姿勢,とろ み付けの程度選択,増粘剤の種類と程度,1 回嚥下量, 食事時間,食物形態などについて評価したところ,痙 攣がコントロールされ,工房椅子座位姿勢が保持で き,口腔内および顔周辺への刺激受け入れが可能であ ると経口単独で食事摂取が可能であった.16±1.3 歳 の時点では,一旦経口単独になっていても 77 %が経 管を一部併用することをすすめられていた.障害児の 摂食に関しては,訓練や評価を含め長い経過をたどる ことが多く,多職種チームによるアプローチは有効で あると考えられた. 6.摂食・嚥下障害例における栄養管理の重要性 ∼栄養介入前後の比較∼ 中村記念南病院脳神経外科 岡 亨治 中村記念病院耳鼻咽喉科 小西 正訓 同 栄養科/中村記念南病院栄養科 山田和佳子 【はじめに】本邦の自立高齢者では,ほとんど低ア ルブミン血症が見られないのに対し,入院者では約 4 割に見られることが知られている.また,摂食・嚥下 障害状態は栄養摂取障害状態であるとも考えられ,適 切な栄養管理を行い栄養状態の改善を図らなければな らないと思われる. 我々は,2004 年 6 月より,中村記念南病院での摂 食・嚥下カンファレンスにおいて,栄養介入を行った 患者について,介入開始時・終了時の栄養状態などに 関し検討を行ったので報告する. 【方法】対象は,当院での摂食・嚥下カンファレンス にて 4 週間以上介入を継続した 23 例(男:女= 15: 8,平均年齢 74.8 歳±10.6 歳)で,介入期間は 68.6± 35.4 日であった.予想基礎代謝(BEE)を Harris-Benedict の式にて計算し,活動係数・ストレス係数を 乗じて必要エネルギー量を算出し,栄養投与量の是正 を行った.% IBW,% TSF,% AMC,% AMA,血 清アルブミン,末梢血リンパ球数を栄養状態の評価項 目とし,それぞれを,1:正常,2:低リスク,3:中 リスク,4:高リスクに分類し,悪い方から 2 番目の 項目のリスク分類をその患者の栄養指数とした. 【結果】開始時は 20 %以上栄養投与量不足した例が 7 例 30.4 %だったが,終了時は 1 例のみと,有意に改 善させることができた.今回の観察期間では,介入後 の栄養指数は介入前と比べて有意な改善を認めず,む しろ,介入終了時の栄養指数は,有意に開始時の指数 に相関した.ただし,血清アルブミンは,介入前と比 べ,介入終了時には有意の上昇を認めた.栄養指数と 介入開始までの期間の関連では,介入開始時,終了時 とも,栄養指数の不良な症例では,栄養指数の良好な 症例に比べ,有意に入院から介入開始までの期間が長 いことが分かった. 【結論】摂食・嚥下障害例に対しては,可及的に早 い時期における栄養管理の重要性が示唆された. 7.摂食・嚥下障害例における栄養管理の重要性 ∼摂食・嚥下障害のない群との比較∼ 中村記念病院耳鼻咽喉科 小西 正訓 中村記念南病院脳神経外科 岡 亨治 同 栄養科/中村記念病院栄養科 山田和佳子 【目的】摂食・嚥下障害があることによる栄養リス クを検討する. 【方法】対象は,摂食・嚥下障害群として 2004 年 6 月以降当院で摂食・嚥下カンファレンスを行った 36 例(男:女=19:17,年齢 35 ∼ 94 歳,平均 74.9± 11.9 歳)と,対照群として摂食・嚥下障害群と入院期 間,原疾患,年齢,性別でマッチした,摂食・嚥下障 害のなかった 36 例(男:女=16 : 20,年齢 33 ∼ 93 歳,平均 74.3±12.0 歳).摂食・嚥下障害群と対照群 の全例について,入院時に血清アルブミンを計測し, 初回カンファレンス時点(対照群ではマッチした摂
食・嚥下障害例の初回カンファレンス時点と同じ入院 日数の時点)で% IBW,% TSF,% AMC,% AMA, 血清アルブミン,末梢血リンパ球数を測定,前演題と 同様に栄養指数を決定した.また,前演題と同様に必 要エネルギー量を算出し,実際の栄養投与量と比較し た. 【結果】初回カンファレンスの時点で,摂食・嚥下 障害群と対照群の間に栄養指数の有意な差は認めなか った.しかし,血清アルブミンに関する検討では,入 院時には障害群と対照群の間に有意差がなかったにも かかわらず,初回カンファレンスの時点では有意差を もって障害群の方が対照群より低かった.また,対照 群も入院後有意に血清アルブミンが低下するが,障害 群ではそれ以上に低下し,対照群では初回カンファレ ンス時点では血清アルブミン 3.5 g/dl 未満の症例が 30.6 %なのに対し,障害群では 60.7%に達することが 分かった.さらに,摂食・嚥下障害群では対照群に比 べ,必要エネルギー量に対する投与量の充足率が低 く,かつ投与量のばらつきが大きいことが分かった. 【結論】摂食・嚥下障害例では特に栄養障害に陥り やすいと考えられ,可及的早期からの栄養管理が重要 であると思われた.同時に,摂食・嚥下障害のない例 でも入院患者には栄養障害のリスクがあり,栄養管理 はその全体に対し行われなければならないものと考え られた. 8.脳血管障害後遺症に対する連続経頭蓋磁気刺 激療法 北海道大病院リハ科 竹内 直行・中馬 孝容・松尾雄一郎 生駒 一憲 【目的】脳出血後の麻痺の回復には残存した運動関 連領域が関与していると考えられている.しかしなが ら患側半球および健側半球の第一次運動野の麻痺の回 復に対する役割は現在のところ一定した見解が得られ ていない.連続経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation:rTMS)は大脳皮質を経頭蓋的 に安全に刺激することが可能である.我々は慢性期脳 卒中患者に連続経頭蓋磁気刺激を用い麻痺側手指およ び上肢機能の改善を得ることに成功したためここに報 告を行う. 【方法】運動機能評価による運動訓練効果を除外す るために,rTMS の 1 週間前より集中的な運動訓練を 行い,Magstim Rapid stimulator を用い rTMS を行っ た. 【結果】磁気刺激による副作用は認めず,刺激直後 より手指の動作が滑らかになり,上肢挙上の改善を認 めた. 【まとめ】慢性期の脳卒中患者にて rTMS は運動機 能の悪化を伴わず麻痺側手指機能の改善をもたらし た.この改善は脳梁抑制減少との関連が考えられてい る.本研究結果は脳卒中患者の神経リハビリテーショ ンにとって有用な知見と考えられる.