• 検索結果がありません。

〈論説〉業務関連訴訟についての国際裁判管轄--事業活動地管轄における事業者の意義を中心に

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "〈論説〉業務関連訴訟についての国際裁判管轄--事業活動地管轄における事業者の意義を中心に"

Copied!
33
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)業務関連訴訟 についての国際裁判管轄. 業 務 関連 訴 訟 につ いて の 国際 裁 判 管 轄 事業活動地管轄 における事業者の意義 を中心に. 田. 1は. 中. 美. 穂. じ め に. 現 代 で は,企 業 は国 境 を 越 え た激 しい経 済 競 争 に さ ら され,生 産 の 効 率 化 や 販 路 の 拡 大 を 求 めて 国 内市 場 に と ど ま らず 海 外 市 場 に も積 極 的 に事 業 を 展 開 して い る。 企 業 が 海 外 進 出す る際 に は,進 出国 にお いて 支 店 ・子 会 社 を 設 置 す る,あ る い は現 地 企 業 と代 理 店 契 約 ・販 売 店 契 約 を 締 結 す る等 の 手 段 が と られ る が(1),い ず れ の手 段 が と られ るに して も,企 業 はそ の 手 段 を 通 じて 当地 に お いて 実 質 的 に事 業 活 動 を 行 い利 益 を 享 受 す る こ と にな る。 わ が 国 に お いて,2012年4月1日. に施 行 され た 「民 事 訴 訟 法 及 び民 事 保. 全 法 の 一 部 を 改 正 す る法 律 」 に よ り新 設 され た民 事 訴 訟 法3条 の3第5号 で は,事 業 活 動 地 を管 轄 原 因 と して掲 げ,「 日本 に お い て事 業 を行 う者 」 に対 す る訴 え につ いて,当 該 訴 え が その 者 の 日本 にお け る業 務 に関 す る も の で あ る と き に,わ が 国 の 国 際 裁 判 管 轄 権 を 認 めて い る。 本 規 定 は,日 本 に お いて 事 業 活 動 を 行 う こ と に よ り利 益 を 得 て い る者 に対 し,そ れ と引 き 換 え に応 訴 の 負 担 を 負 わ せ る こ とが 衡 平 に適 い,又,当. 事者の予測可能性. (1)松 岡 博 編 『レ クチ ャ ー国 際 取 引 法 」(法 律 文 化 社, 2012年)104頁 望 〕。. 1. 以下. 〔多 田.

(2) 近畿大学法学. 第60巻 第3・4号. と い う観 点 か ら も妥 当 で あ る との 管 轄 理 念 に基 づ い て お り(2),ア メ リカ法 上 のdoingbusiness管. 轄(3)に想 を得 た もの で あ る。民 事 訴訟 法3条. の3第. 5号 に よ り,外 国 会 社 等 が 日本 の 子 会 社 ・代 理 店 等 の 法 人 格 の 異 な る主 体 を通 じて 事 業 活 動 を 行 って い る場 合 につ いて も,当 該 外 国 会 社 を 日本 に お け る訴 訟 に服 さ しめ る こ とが 可 能 とな るの で はな いか との 期 待 が 寄 せ られ て い るが ④,そ れ を 実 現 す る こ と は必 ず しも容 易 で は な い。 な ぜ な ら,そ の 場 合,民 事 訴 訟 法3条 の3第5号. に基 づ き管 轄 を 肯 定 す る た め に は,子. 会 社 ・代 理 店 と い っ た法 人 格 の 異 な る主 体 を 通 じて 行 わ れ た事 業 活 動 が, 事 業 活 動 の 実 行 者 た る子 会 社 ・代 理 店 の 事 業 活 動 で はな く,当 該 外 国 会 社 の 事 業 活 動 で あ る こ とを 立 証 しな けれ ば な らな い か らで あ る(5)。期 待 され る よ う に,民 事 訴 訟 法3条 の3第5号. に よ り,法 人 格 の 異 な る主 体 を 通 じ. て 日本 に お いて 事 業 活 動 を 行 う外 国 会 社 を 国 際 裁 判 管 轄 の 決 定 に際 して 捕 捉 す る こ とが可 能 で あ るの か,可 能 で あ る とす れ ば そ れ は いか な る場 合 か。 この 点 につ き検 討 し,民 事 訴 訟 法3条 の3第5号. の,日 本 に お いて 「事 業. を行 う者 」,す な わ ち事 業 者 の意 義 を 明 らか に す る必 要 性 は,理 論 的 に も, 又,実 務 上 も高 い もの と思 わ れ る。. (2)横. 山 潤 「国 際 私 法 」(三 省 堂,2012年)333頁,兼. 〔 第2版 〕」(弘 文 堂,2011年)55頁 (3)ア. 子 一・ 他 「条 解 民 事 訴 訟 法. 以下。. メ リカ法 上 のdoingbusiness管. 轄 とは,後 述 の通 り,あ る州 にお い て 州. 外 の 法 人 が 事 業 活 動 を 行 って い る場 合 に,当 該 法 人 の 州 内 にお け る事 業 活 動 を 根 拠 に認 め られ る裁 判 管 轄 で あ る。 但 し,こ の 管轄 は,訴 訟 原 因 が 州 内 の 活 動 か ら生 じて いな い場 合 に も認 め られ る点 にお いて,わ 3第5号. が 国 の 民 事 訴 訟 法3条 の. と は性 質 を 異 にす る。. (4)澤 木 敬 郎=道 垣 内 正 人 『国 際 私 法 入 門 〔 第7版 〕』(有 斐 閣,2012年)282頁, 松 岡 「前 掲 書 」 注(1)109頁 〔 多 田望 〕 及 び250頁. 〔 長 田真 里 〕 等 。 こ の他,「 「国. 際 裁 判 管 轄 法 制 に関 す る中 間 試 案 」 に対 して 寄 せ られ た 意 見 の 概 要 」(http:// www.moj.go.jp/content/000012279.pdf)12頁 見参照。 (5)松 岡 『前 掲 書 』 注(1)118頁 以 下 〔田 中美 穂 〕。 2. に掲 載 され る大 阪弁 護 士 会 の 意.

(3) 業務関連訴訟 についての国際裁判管轄 な お,業 務 関連 管 轄 と して は,民 事 訴 訟 法3条 の3第5号. と並 ん で,「 事. 務 所 又 は営 業 所 を 有 す る者 」 に対 す る訴 え で その 事 務 所 又 は営 業 所 にお け る業 務 に関 す る もの につ いて 当該 事 務 所 又 は営 業 所 が 日本 国 内 に あ る と き に管 轄 を 認 め る民 事 訴 訟 法3条 の3第4号 3第4号. が 存 在 す る。 民 事 訴 訟 法3条 の. に お いて 認 め られ る事 務 所 ・営 業 所 所 在 地 管 轄 は,新 法 施 行 以 前. の,財 産 関 係 事 件 一 般 に お け る国 際 裁 判 管 轄 に関 す る明 文 規 定 が 欠 鉄 して い た 旧法 下 で も,国 内土 地 管 轄 規 定 で あ る民 事 訴 訟 法5条5号. の類推 とい. う形 で 異 論 な く認 め られ て きた 管 轄 原 因 で あ る(6)。外 国会 社 等 が 日本 の 子 会 社 又 は代 理 店 等 の 法 人 格 の 異 な る主 体 を 通 じて 事 業 活 動 を 行 い利 益 を 得 て い る こ と に相 応 して 当該 外 国 法 人 等 に 日本 に お け る応 訴 の 負 担 を 負 わ せ る た め に は,専. ら民 事 訴 訟 法3条 の3第5号. 訟 法3条 の3第4号. の 適 用 が 問 題 とな り,民 事 訴. につ いて 「事 務 所 又 は営 業 所 」 に子 会 社 等 が 含 まれ う. る と解 釈 す る余 地 は な い との 指 摘 もあ るが(7),果 た して そ うで あ ろ うか 。 旧法 下 に お いて,事 務 所 ・営 業 所 所 在 地 の 国 際 裁 判 管 轄 の 「事 務 所 ・営 業 所 」 概 念 につ いて は,か ね て よ り学 説 上 は国 内土 地 管 轄 の 解 釈 に拘 束 され ず,よ. り柔 軟 に解 す べ き との指 摘 が な され て い る と こ ろで あ り(8),民事 訴. 訟 法3条 の3第5号. が 新 設 され た こ とで 状 況 が 一 変 す る と は必 ず しも いえ. な い。 仮 に民 事 訴 訟 法3条 の3第5号. につ いて 事 業 主 体 と事 業 の 実 行 者 と. の 法 人 格 の 同一 性 を 問 わ な い と解 す るの で あれ ば,む. しろ,業 務 関 連 管 轄. と して その 趣 旨を 同 じ くす る民 事 訴 訟 法3条 の3第4号. につ いて,事 業 主. 体 と事 業 の 実 行 者 の 法 人 格 の 同一 性 に拘 泥 した解 釈 を な す こ と は必 然 性 に. (6)本 間 靖 規=中 野 俊 一 郎=酒 井 一 「国 際 民 事 訴 訟 法 〔 第2版 〕』(有 斐 閣,2012 年)54頁. 〔中野 俊 一 郎 〕。. (7)佐 藤 達 文. 小 林 康 彦 『一・ 問一・ 答. 平 成23年 民 事 訴 訟 法 等改 正. 法 制 の整 備 」(商 事 法 務 ・2012年)52頁 版 〕」(有 斐 閣,2012年)263頁. 〔 多[H望 〕。. (8)渡 辺 怪 之 「判 批 」 リマ ー クス40号. 〔2010年(上)〕145頁. 3. 国際裁判管轄. 。 松 岡 博 編 『国 際 関 係 私 法 入 門 〔 第3 他。.

(4) 近畿大学法学. 第60巻 第3・4号. 欠 け,平 灰 が 合 わ な いの で はな いか との 疑 念 が 生 じよ う。 以 下 で は,業 務 関 連 訴 訟 につ いて の 国 際 裁 判 管 轄 を 認 め る民 事 訴 訟 法3 条 の3第4号. 及 び第5号 の 管轄 理 念 や立 法 の経 緯 を整 理 した上 で,ま ず は,. 物 理 的 拠 点 に着 目 した管 轄 ル ー ル で あ る民 事 訴 訟 法3条 の3第4号. につ い. て,そ の 概 要 を 踏 まえ た上 で,旧 法 下 の,事 務 所 ・営 業 所 所 在 地 の 国 際 裁 判 管 轄 に お け る 「事 務 所 ・営 業 所 」 概 念 の 解 釈 に関 す る裁 判 例 ・学 説 を あ らた めて 検 証 し,そ の 解 釈 との 連 続 性 を 念 頭 に置 いて,民 事 訴 訟 法3条 の 3第4号. に お け る 「事 務 所 又 は営 業 所 」 の 意 義 につ いて 検 討 を 行 う。 さ ら. に,無 形 の 活 動 に着 目 した管 轄 ル ー ル で あ る民 事 訴 訟 法3条 の3第5号. に. つ いて は,管 轄 原 因 と して 新 た に導 入 され た経 緯 か らわ が 国 に お け る議 論 の 蓄 積 が 乏 しい た め,規 定 の 概 要 を 踏 まえ た上 で,特 3第5号. に民 事 訴 訟 法3条 の. の,日 本 に お い て 「事 業 を行 う者 」,す な わ ち事 業 者 の意 義 につ. い て,民 事 訴 訟 法3条 doingbusiness管. の3第5号. の 発 想 の 源 泉 とな った ア メ リカ法 上 の. 轄 に お け る事 業 者 の 解釈 に 関 わ る議 論 及 び裁 判 例 を紹 介. して 検 討 を加 え,民 事 訴 訟 法3条 の3第5号. を 解 釈 す る に際 して の 示 唆 を. 得 る こ と と した い。 そ して,最 後 に,民 事 訴 訟 法3条 の3第4号. 及 び第5. 号 の 業 務 関 連 管 轄 と して の 一 体 性 を 念 頭 に置 い た若 干 の 考 察 を 行 い,残 さ れ た課 題 につ いて 述 べ る こ と とす る。. 皿. 業務 関連 管轄 を認 め る二種 の ルー ル. ー 民 事 訴 訟 法3条. 1民. 事 訴 訟 法3条 の3第4号. の3第4号. 及 び 第5号. 及 び 第5号 一. に通 底 す る管 轄 理 念 と立 法 の. 経緯 民 事 訴 訟 法3条 の3第4号. 及 び第5号 を 立 法 す る に あ た って は,い ず れ. も業 務 関 連 管 轄 規 定 と して,法 制 審 議 会 に お いて は 当初 か ら一 体 と した議 4.

(5) 業務関連訴訟 についての国際裁判管轄 論 が な され て き た(9)。民 事 訴 訟 法3条. の3第4号. は,財 産 関 係事 件 一 般 に. お け る国 際 裁 判 管 轄 に関 す る明 文 規 定 が 欠 鉄 して いた 旧法 下 にお いて,国 際 裁 判 管 轄 の 存 否 判 断 に際 して 類 推 と い う形 で 用 い られ て いた 国 内土 地 管 轄 規 定 で あ る民 事 訴 訟 法5条5号. と 同様 に,事 務 所 ・営 業 所 の 所 在 に基 づ. く国 際 裁 判 管 轄 を 認 めて お り,こ の 部 分 の 国 際 裁 判 管 轄 ル ー ル につ いて 実 質 的 な 変更 は な い。但 し,民 事 訴 訟 法3条. の3第4号. の 規 定 の 内 容 自体 は,. 証 拠 収 集 や 訴 訟 追 行 の 便 宜 の 観 点 か ら異 論 な く認 め られ る もの の,今. 日で. は,物 理 的 拠 点 な く して 日本 に お いて 事 業 を 行 い利 益 を 得 る こ と は十 分 に 可 能 で あ り,業 務 関 連 管 轄 を 認 め る に あ た って 物 理 的 拠 点 が 日本 に あ る こ とを必 要 条 件 とす る こ とは社 会 の実 態 に沿 わ な くな って い る こ と,そ して, 平 成14年 の商 法 改 正 に よ り外 国会 社 の 営 業所 設 置 義 務 が廃 止 され た た め に, 外 国 会 社 が 日本 に お いて 継 続 的 に取 引 を 行 う場 合 で あ って も必 ず しも営 業 所 が 設 置 され な くな っ た こ とか ら,業 務 関 連 管 轄 と して,事 務 所 ・営 業 所 と い っ た物 理 的 拠 点 の 所 在 に基 づ く国 際 裁 判 管 轄 ル ー ル を 認 め るだ けで は 不 十 分 で あ り,被 告 外 国 会 社 の 物 理 的 拠 点 が 日本 に無 くて も,日 本 にお い て 事 業 活 動 を 行 って い る場 合 に は,当 該 事 業 活 動 に関 連 す る訴 え につ いて は国 際 裁 判 管 轄 を 認 め るべ き との 見 解 が 法 制 審 議 会 で の 議 論 にお いて も多 数 を 占 め,こ の 見 解 に基 づ い た国 際 裁 判 管 轄 法 制 に関 す る 中間 試 案 が 作 成 され,又,中. 間試 案 に対 す るパ ブ リ ック コメ ン トで も多 くの支 持 を得 て(1①,. 民 事 訴 訟 法3条 の3第5号. が 設 け られ る に至 っ た。. 以 上 の よ う に,民 事 訴 訟 法3条 の3第4号. 及 び第5号. は,い ず れ も,訴. え が 被 告 の 日本 に お け る業 務 に関 連 す る場 合 に は,当 該 事 業 に よ り利 益 を 享 受 す る被 告 に 日本 に お け る応 訴 の 負 担 を 負 わ せ る こ とが 衡 平 で あ り,被 (9)法 制審 議 会 国 際裁 判管 轄 法 制部 会 議事 録(第2回. ・第6回. ・第10回 ・第11回 ・. 第13回 会 議 等)参 照 。 ⑩. 前 掲 注(4)「「国 際裁 判 管 轄 法 制 に 関 す る 中 間試 案 」 に対 して 寄 せ られ た 意 見 の 概 要 」12頁 参 照 。. 5.

(6) 近畿大学法学. 第60巻 第3・4号. 告 の 予見 可 能 性 の 観 点 か ら も妥 当で あ る との管 轄 理 念 に基 づ くもの で あ り, 民 事 訴 訟 法3条 の3第4号. 及 び第5号 が 相 互 補 完 的 に機 能 す る こ と に よ っ. て,業 務 関 連 訴 訟 につ いて の 国 際 裁 判 管 轄 規 定 と して 遺 漏 の な い管 轄 の 網 を張 る こ とが 可 能 とな る との 意 図 が あ っ た こ とが,法 制 審 議 会 で の 議 論 か らも読 み取 れ るql)。こ の点 を踏 ま え,民 事 訴 訟 法3条. の3第4号. 及 び第5. 号 が 共 有 す る管 轄 理 念 に照 ら して 業 務 関 連 管 轄 の 全 体 と して の 射 程 を 設 定 す る こ とが 必 要 で あ る との 認 識 を 持 つ こ と は,民 事 訴 訟 法3条 の3第4号 及 び第5号. 2民. それ ぞ れ の 解 釈 を な す 上 で 非 常 に重 要 で あ る と思 わ れ る。. 事 訴 訟 法3条 の3第4号. 一 物 理 的 拠 点 に着 目 した 管 轄 ル ー ル. 物 理 的 拠 点 に着 目 した業 務 関 連 管 轄 ル ー ル と して,民 事 訴 訟 法3条 の3 第4号 は,日 本 国 内 に事 務 所 又 は営 業 所 ⑫ を 有 して事 業 を営 む 者 ⑬ に 対 し, 当該 事 務 所 又 は営 業 所 に お け る業 務 ω に関 す る訴 え につ いて わ が 国 の 国 際 裁 判 管 轄 を 認 めて い る。 民 事 訴 訟 法3条 の3第4号. は,業 務 の 中心 地 で あ. る事 務 所 ・営 業 所 を その 業 務 につ いて は住 所 に準 ず る もの と捉 え て 管 轄 を 肯 定 して お り⑮,事 件 類 型 を 問 わ な い とい う意 味 か らす れ ば,業. 務関連性. を条 件 と した一 般 管 轄 原 因 で あ る と もい わ れ る⑯。 な お,民 事 訴 訟 法3条. ⑪. 法 制 審 議 会 国 際 裁 判 管 轄 法 制 部 会 議 事 録(第2回. ⑫. 「営 業 所 」 は 営 利 団 体 の 拠 点,「 事 務 所 」 は 非 営 利 団 体 の 拠 点 を 指 す と も説 明 され る。 澤 木. 会 議)等 参 照 。. 道 垣 内 『前 掲 書 」 注(4)275頁,佐 藤=小 林 『前 掲 書 』 注(7)51頁,. 松 岡 「前 掲 書 」 注(7)263頁 〔 多 田望 〕。 但 し,「事 務 所 」 に つ い て は,「 駐 在 員 事 務 所 」 の よ う に,営 業 と呼 ぶ に至 らな い 程 度 の 業 務 が 行 わ れ る営 利 団 体 の 拠 点 を 意 味 して 用 い られ るケ ー ス も あ る。 東 京 地 判 昭 和59年2月15日 ∼4号69頁 参 照 。. 下 民 集35巻1. ⑱. 自然 人 で あ るか,法 人 で あ るか を 問 わ な い 。 兼 子 「前 掲 書 」 注(2)55頁。. ω. 本 号 の 「業 務 」 に は,営 利 目的 の業 務 の み な らず,非. 営 利 目的 の 業 務 も含 ま. れ る。 兼 子 『前 掲 書 』 注(2)55頁。 ⑮. 佐 藤=小 林 『前 掲 書 」 注(7)51頁。. ⑯. 横 山 『前 掲 書 』 注(2)333頁,松 岡 『前 掲 書 」 注(7)264頁 〔 多 田望 〕。. 6.

(7) 業務関連訴訟 についての国際裁判管轄 の3第4号. に よ り管 轄 が 肯 定 され る た め に は,訴 え が 当 該 事 務 所 ・営 業 所. に よ る業 務 に 関連 して い れ ば よ く⑰,民 事 訴 訟 法3条. の3第5号. と は異 な. り,「 日本 に お け る」 業務 で あ る こ とを 要 しな いq8)。 つ ま り,日 本 国 内 に所 在 す る事 務 所 ・営 業 所 に よ る業 務 で あれ ば,そ の 業 務 行 為 の 実 施 地 は問 題 と され ず,訴 え が 当該 事 務 所 ・営 業 所 の 外 国 に お け る業 務 に関 連 して い る 場 合 に も,管 轄 は肯 定 され う る。 民 事 訴 訟 法3条 の3第4号. に お け る 「事 務 所 又 は営 業 所 」 の 意 義 につ い. て,被 告 と別 個 の 法 人 格 を 有 す る子 会 社 や 販 売 店 ・代 理 店 等 は民 事 訴 訟 法 3条 の3第4号. に お け る 「営 業 所 」 等 に は あ た らな い とす る見 解 が み られ. る⑲。 民 事 訴 訟 法3条. の3第4号. にお け る 「事 務 所 又 は営 業 所 」 の意 義 に. つ い て は,旧 法 の下 で 蓄積 され た 従来 の裁 判例 又 は学 説 に お け る,事 務 所 ・ 営 業 所 所 在 地 の 国 際 裁 判 管 轄 の 「事 務 所 ・営 業 所 」 概 念 の 解 釈 が 参 考 にな る と思 わ れ るが,確 か に,旧 法 下 の 裁 判 例 で は,子 会 社 や代 理 店 とい った, 被 告外 国会 社 と は別 個 の法 人 格 を 有 す る事 業 拠 点 が わ が 国 に あ る場 合 に は, 当該 拠 点 を 被 告 外 国 会 社 の 営 業 所 又 は事 務 所 と 同視 す る こ と につ いて,一 ・ 貫 して 消 極 的 な 姿 勢 が と られ て き た⑳。つ ま り,従 来 の裁 判 例 に お い て は, 被 告 外 国 会 社 と は法 人 格 の 異 な る子 会 社 等 の 事 業 拠 点 を 被 告 の 事 務 所 ・営 業 所 と認 め う るの は,法 人 格 否 認 の 法 理 の 要 件 が 満 た され る よ うな,あ ⑰. な お,民 事 訴 訟 法3条. の3第4号. く. に よ り管轄 を肯 定 し得 る業 務 関 連 性 と して,. 訴 え が 当該 事 務 所 又 は営 業 所 で実 際 に行 わ れ た業 務 に 関連 す る こ と(具 体 的 業 務 関 連 性)を 要 す る と解 す るか,そ. れ と も,訴 え が 当 該 事 務 所 又 は営 業 所 で 行. い う る業 務 範 囲 に関 連 す る こ と(抽 象 的業 務 関連 性)で. 足 り る と解 す るか とい. う問 題 につ いて は,見 解 が 分 か れ て い る。 ㈹. 佐 藤=小 林 『前 掲 書 」 注(7)52頁,本. 間=中 野=酒 井 『前 掲 書 」 注(6)54頁 〔 中. 野 俊 一 郎 〕,横 山 『前 掲 書 』 注(2)334頁,兼 子 『前 掲 書 」 注(2)55頁。 ⑲ ⑳. 佐 藤=小 林 『前 掲 書 」 注(7)52頁,松 岡 『前 掲 書 」 注(7)263頁 〔 多 田望 〕。 横 浜地 判平 成18年6月16日 1003号292頁,東. 判 時1941号124頁,東. 京 地 判 平 成19年11月28日. 28日 判 時1275号77頁 等 。. 7. 京地 判 平 成10年11月2日. 判タ. 判 例 集 未 登 載,東 京 地 判 昭 和62年7月.

(8) 近畿大学法学. 第60巻 第3・4号. まで も例 外 的 場 合 に限 られ る との 立 場 が 示 され て きて い る⑳。 しか し,旧 法 下 の 学 説 に お いて は,旧 法 下 の 裁 判 例 と 同様 に子 会 社 ・代 理 店 な どの 被 告 外 国 会 社 と法 人 格 の 異 な る事 業 拠 点 を 事 務 所 ・営 業 所 と 同 視 す る こ とに否 定 的 な 立 場 を と る見 解 も若 干 み られ る もの の⑳,む 私 見 を含 め,多. しろ,. くの 見 解 は,子 会 社 ・代 理 店 な どの 被 告 外 国 会 社 と法 人 格. の 異 な る事 業 拠 点 で あ って も,当 該 拠 点 が 営 業 所 と 同様 の 機 能 を 担 って い る場 合 に は,当 該 拠 点 を 営 業 所 と 同視 す る こ と に賛 意 を 示 して い た㈱。 この よ う に,旧 法 下 で 多 くの 見 解 に よ り提 示 され て い た,事 務 所 ・営 業 所 所 在 地 管 轄 に お け る 「事 務 所 ・営 業 所 」 概 念 の 柔 軟 な 解 釈 は,新 法 で あ る民 事 訴 訟 法3条 の3第4号. の 下 で も基 本 的 に維 持 され るべ き もの と考 え. られ る。 わ が 国 と同 様 に営 業 所 の特 別 裁 判 籍 を 認 め る ドイ ツ 民 事 訴 訟 法. ⑳. 例 え ば,前 掲 横 浜 地 判 平 成18年6月16日,前. 掲 東 京 地 判 平 成10年11月2日. 参. 照。 ⑬. 吉野内謙志 「 判 批 」 平 成18年 度 主 要 民 事 判 例 解 説(判 夕1245号)244頁,宮. 武. 俊 夫 ・若 井 隆 「裁 判 管 轄(1)」元 木 伸 ・細 川 清 編 『渉外 訴 訟 法 ・裁 判実 務 体 系10」 (青林 書 院,1989年)7頁 ⑳. 。. 松 岡 博 『国 際 取 引 と国 際 私 法 」(晃 洋 書 房,1993年)23頁,渡. 辺 怪 之 「国 際 裁. 判 管 轄 」谷 口安 平 ・井 上 治 典 編 「新 ・判 例 コ ン メ ン ター ル 民 事 訴 訟 法1』(三 堂,1993年)71頁,野. 轄 」 阪 大 法 学60巻1号67頁,同 人 編 『新 ・裁 判 実 務 大 系3国 71頁 以 下,道. 「事 務 所 ・営 業 所 の 管 轄 権 」 高 桑 昭=道 垣 内 正 際民 事 訴 訟 法(財 産 法 関 係)』(青 林 書 院,2002年). 垣 内 正 人 「国 際 的 裁 判 管 轄 権 」 新 堂 幸 司 ・小 島 武 司 編 『注 釈 民 事. 訴 訟 法(1)」(有 斐 閣,1991年)126頁,河 版 会,2002年)175頁 935号)262頁. 省. 村 美 明 「管 轄 シ ステ ムか らみ た 外 国 法 人 等 の 国 際 裁 判 管. 以 下,高. 村 博 文 「国 際 会 社 法 論 集 」(九 州 大 学 出. 桑 昭 「判 批 」 昭 和63年 度 重 要 判 例 解 説(ジ. 以 下,齋 藤 彰 「 判 批 」 ジ ュ リ942号121頁 以 下,竹. ュリ. 下 守 夫 「判 批 」. 金 融 ・商 事 判 例637号49頁 以 下,福 井 清 貴 「 判 批 」 ジ ュ リ1415号120頁 等 。 私 見 と して も,① 当 該 拠 点 が 被 告 会 社 の た め に わ が 国 にお い て どの よ うな 役 割 を 果 た して い るか(契 約 締 結 権 限 等 が 付 与 され て い るか),② 人 員 の 交 換 の 有 無,③ 役 員 の 兼 任 の 有 無,④ 資 本 関 係,⑤ 外 観(外 部 へ の 表示),と して,被. い った 事 実 に着 目. 告 外 国 会 社 と法 人 格 の 異 な る当 該 拠 点 を 被 告 外 国 会 社 の 事 実 上 の 営 業. 所 にあ た る とみ る こ とで き るか 否 か を 判 断 す べ きで あ る と して い た。 田中 美 穂 『多 国 籍 企 業 の 法 的 規 制 と責 任 』(大 阪 大 学 出 版 会,2005年)54頁. 8. 以下参照。.

(9) 業務関連訴訟 についての国際裁判管轄 (ZPO)21条. ⑳ にお いて も,外 観 信 頼 法 理 を通 じて被 告 と法 人 格 の 異 な る. 拠 点 が 被 告 の営 業 所 と され る余 地 が 認 め られ て い る こ とか ら して も㈱,こ の よ うな 解 釈 は決 して 特 異 な もの で はな い。 前 述 の よ う に,外 国 会 社 が 子 会 社 ・代 理 店 等 を 通 じて 日本 に お いて 事 業 活 動 を 行 って い る よ うな 場 合 に つ いて は,民 事 訴 訟 法3条 の3第5号. に よ り管 轄 を 肯 定 す る こ とが 可 能 と. 考 え られ た こ とで,民 事 訴 訟 法3条 の3第4号. の 「事 務 所 ・営 業 所 」 概 念. につ いて は柔 軟 に解 釈 す る必 要 性 が 薄 れ たか の よ う に解 され て い る節 も あ るが,適 切 と は思 わ れ な い。 そ も そ も 「事 務 所 ・営 業 所 」 と い っ た物 理 的 拠 点 で はな く,「事 業 活 動 」 に着 目 した管 轄 ル ー ル を 新 た に認 め た と して も,子 会 社,代 理 店 と い った 法 人 格 の 異 な る主 体 が 実 行 す る活 動 を その 実 態 に即 して 被 告 外 国 会 社 自体 の 事 業 活 動 と評 価 す る可 能 性 を 肯 定 す るの で な けれ ば,子 会 社 等 を 通 じた 事 業 活 動 に よ り被 告 外 国 会 社 を 日本 に お け る訴 訟 に服 さ しめ る こ と はで き な い。 仮 に,被 告 外 国 会 社 と 日本 の 事 業 拠 点 の 法 人 格 が 異 な る こ とを 理 由 に 当該 拠 点 が 事 務 所 ・営 業 所 所 在 地 管 轄 に お け る被 告 の 「事 務 所 又 は営 業 所 」 に は あ た らな い と され るの で あれ ば,同 様 に,事 業 活 動 地 管 轄 に関 し て も,法 人 格 の 異 な る主 体 が 実 行 す る活 動 は 当該 活 動 の 実 行 者 自身 の 事 業 活 動 で あ り,被 告 外 国 会 社 の 事 業 活 動 に は あ た らな い と解 され る こ と につ な が り,い ず れ の ル ー ル に お いて も,法 人 格 の 相 違 と い う壁 に阻 まれ,被. ⑳. ド イ ツ 国 際 民 事 訴 訟 法 上,ZPOの. 土 地 管 轄 規 定 に よ り国 内土 地 管 轄 と国 際. 裁 判 管 轄 が と も に 決 定 さ れ る と い う土 地 管 轄 規 定 の 二 重 機 能 説 が 支 配 的 で あ り, ZPO21条. は 国 際 裁 判 管 轄 規 定 を 兼 ね る と 解 さ れ て い る 。ZOLLER/GEIMER,. ZPO,29.Aufl.,2012,S.48.STEIN/JONAS/ROTH,ZPOBd.1,22.Aufl., 2003,S.437. ⑳. こ の 点 に 関 し て 詳 し く は,田. 中 『前 掲 書 」 注 ⑦の39頁 以 下 の,ZPO21条. け る 営 業 所 概 念 の 解 釈 及 び 裁 判 例 に つ い て の 記 述 を 参 照 。 さ ら に,ZOLLER/ VOLLKOMMER,a.a.0.,S.136.MUNCHKOMM/PATZINA,ZPO,Bd.1, 4,Aufl.,2013,S,216.STEIN/JONAS/ROTH,a.a,0,,S.441undS.444.. 9. にお.

(10) 近畿大学法学. 第60巻 第3・4号. 告 外 国 会 社 を 日本 に お いて 管 轄 上 捕 捉 で きな い結 果 とな ろ う。 問 題 の 本 質 は,物 理 的 拠 点 に着 目す るか,無 形 の 事 業 活 動 に着 目す るか と い う点 に あ るの で はな く,事 業 主 体 と事 業 の 実 行 者 の 法 人 格 の 相 違 に拘 泥 せ ず に,国 境 を超 え た ビジネ スの 実 態 を 的 確 に捉 え て それ を 管 轄 判 断 に反 映 させ る柔 軟 な 解 釈 姿 勢 を と る こ とが で き るか 否 か と い う点 に あ る。 子 会 社,代 理 店 と い っ た法 人 格 の 異 な る主 体 を 通 じた 日本 に お け る事 業 活 動 に よ り利 益 を 得 る被 告 外 国 会 社 を 業 務 関 連 訴 訟 に お いて 管 轄 上 捕 捉 す べ き必 要 を 認 め る の で あれ ば,民 事 訴 訟 法3条 の3第4号. の 「事 務 所 又 は営 業 所 」 と い う概. 念 の 解 釈 に お いて も,法 人 格 の 相 違 と い っ た表 面 的 な 事 象 に捉 わ れ るべ き で はな い。 この 意 味 に お いて,民 事 訴 訟 法3条 の3第5号. に お いて 事 業 活. 動 地 管 轄 が 導 入 され,子 会 社 等 を 通 じた 日本 に お け る事 業 活 動 に よ り外 国 会 社 を 日本 に お け る訴 訟 に服 さ しめ得 るの で はな いか との 期 待 が 各 界 か ら 示 され た こ と は,民 事 訴 訟 法3条 の3第4号. に お け る 「事 務 所 ・営 業 所 」. 概 念 を狭 く限 定 的 に解 釈 す る契 機 とな るの で はな く,む しろ,事 業 主 体 と 事 業 の 実 行 者 との 法 人 格 の 同一 性 に拘 泥 す る考 え 方 を 払 拭 す る好 機 と され るべ きで あ ろ う。. 3民. 事 訴 訟 法3条 の3第5号. 一 事 業 活 動 に着 目 した 管 轄 ル ー ル ー. わ が 国 に お け る物 理 的 拠 点 で はな く,無 形 の 活 動 に着 目 した管 轄 ル ー ル と して,民 事 訴 訟 法3条 の3第5号. は,日 本 国 内で 事 業 を 行 う者 に対 し,. その 者 の 日本 に お け る業 務 に関 す る訴 え につ いて,わ が 国 の 国 際 裁 判 管 轄 権 を認 めて い る。 本 号 の 「事 業 」 と は,日 本 に お いて 一 定 の 目的 を 持 って 反 復 継 続 的 に行 わ れ る活 動 を 指 す と も説 明 され⑳,そ の 目的 は 営 利 ・非 営 ⑳. 佐 藤=小 林 『前 掲 書 」 注(7)54頁。 但 し,事 業 は継 続 性 を 含 む 概 念 で あ る こ と は確 か で あ る もの の,こ. の よ うな 定 義 で は 広 す ぎ る と の指 摘 が あ る。 多 田 望. 「国 際 取 引事 件 の 国 際裁 判 管 轄. 契 約 債 務 履 行 地,事 業 活動 地 お よ び財 産 所 在 地. を 中 心 に」 日本 国 際 経 済 法 学 会 編 『日本 国 際経 済法 学 会 創 立20周 年 記 念. 10. 国 際/.

(11) 業務関連訴訟 についての国際裁判管轄 利 を問 わ な い伽。 日本 に お け る事 業 活 動 の な か に は,イ. ン ター ネ ッ トを 通. じて 日本 の 消 費 者 向 けの ウ ェ ブサ イ トに お いて 通 信 販 売 等 を 行 って い る場 合 の よ う に,外 国 の 被 告 が 日本 に お け る物 理 的 拠 点 を 全 く置 か ず に外 国 か ら直 接 に 日本 に向 け た事 業 を 展 開 して い る よ うな ケ ー ス も含 まれ る と解 さ れ る㈱。 又,本. 号 の 「業 務 」 は,日. と を前 提 とす るが,事. 本 にお け る事 業 活 動 に関 連 して い る こ. 業 に 関 連 して い れ ば継 続 性 の な い単 発 的 な もの で. あ って も よ いか 否 か につ いて は議 論 の 余 地 が あ る⑫9。 又,「 日本 に お いて 事 業 を行 う者 」 の 典 型 例 と して,民 事 訴 訟 法3条 3第5号. の. で は 「日本 に お いて 取 引 を 継 続 して す る外 国 会 社 」 が 挙 げ られ て. い るが,「 日本 にお いて 事 業 を行 う者 」 に は,法 人 に 限 らず,個 人 も含 ま れ る⑳。 さ らに,外 国 会 社 等 が 日本 に お い て子 会 社 ・代 理 店 等 の 法 人 格 の 異 な る 主 体 を通 じて事 業 を 展 開 して い る よ うな 場 合 に,当 該 外 国 会 社 が 「日本 に お いて 事 業 を行 う者 」 と認 定 され 得 る の か,又,認. 定 され得 る と. す れ ば それ は いか な る場 合 か と い う問 題 につ いて は,立 法 時,法 制 審 議 会 に お いて も ほ とん ど議 論 され て お らず,解 釈 論 に委 ね られ て い る。 これ ま で,こ の 点 につ いて 具 体 的 に述 べ た文 献 は ご く限 られ るが,例 え ば,立 法 担 当者 の解 説 で は,「 子 会 社 や 輸 入 総 代 理 店 等 が 関 与 して い る取 引 と い っ て も,そ の 事 実 関 係 は様 々で あ る こ とか ら,外 国 の 事 業 者 の 事 業 の 内容 と 我 が 国 との 関 係,我 が 国 に お け る子 会 社 や 輸 入 総 代 理 店 を 通 じた 取 引 と当 該 事 業 者 の 関 係,そ の 事 業 と訴 え に係 る取 引 との 関 係,当 該 取 引 の 内容 や. \ 取 引 法 講 座]1取. 引 ・財 産 ・手 続 」(法 律 文 化 社,2012年)166頁. (幼 佐 藤=小 林 『前 掲 書 」 注(7)54頁,本. 以下。. 間=中 野=酒 井 『前 掲 書 」 注(6)55頁 〔 中. 野 俊 一 郎 〕。 ㈱ ⑳. 本 間=中 野=酒 井 『前 掲 書 」 注(6)55頁 〔中野 俊 一・ 郎 〕。 日本 にお け る業 務 に関 す る もの で あれ ば,そ れ 自体 が 継 続 的 な 日本 で の 業 務 で な くて も よい とす る見 解 と して,兼 子 『前 掲 書 」 注(2)56頁参 照 。. ⑳. 佐 藤=小 林 『前 掲 書 」 注(7)54頁。. 11.

(12) 近畿大学法学. 第60巻 第3・4号. 契 約 関 係 等 を 踏 まえ な が ら,事 案 ご との 事 実 関 係 に基 づ いて 」 判 断 す る と の 立 場 が 示 され て い る㊤1)。 又,代. 理 と い う観 点 か ら,日 本 の 子 会 社 が 外 国. 親 会 社 の 名 に お いて 取 引 を して い る場 合 に は,民 事 訴 訟 法3条 の3第5号 に よ り当該 外 国 親 会 社 に対 す る管 轄 権 が 肯 定 され う る とす る見 解 も示 され て い る働。以 上 の見 解 を踏 ま え つ つ,以 下 で は,さ らに 比較 法 的観 点 か ら, 民 事 訴 訟 法3条 の3第5号. に お け る 「事 業 を 行 う者 」 の 意 義 につ いて 検 討. した い。 民 事 訴 訟 法3条 の3第5号. が 認 め る事 業 活 動 地 管 轄 は,旧 法 下 で. は,そ の萌芽 と して,学 説上,ア メ リカ法 上認 め られ て い るdoingbusiness 管 轄 に着 想 を得 て 事 業 活 動 地 を 一 般 管 轄 原 因 と して 主 張 す る注 目す べ き見 解 ㈱ が あ った もの の,国. 内土 地 管 轄 に お いて は事 業 活 動 地 を 管 轄 原 因 とす. る規 定 が な か っ た た め,特 段 の 事 情 論 を と る従 来 の 裁 判 例 に お いて は ほ と ん ど問 題 と され る こ とが な く,事 業 活 動 地 管 轄 につ いて はわ が 国 に お いて 議 論 の 蓄 積 が 特 に欠 けて い る。 民 事 訴 訟 法3条 の3第5号 轄 は,簡 潔 に 表 現 す れ ば,ア. の事業活動地管. メ リカ法 上 のdoingbusiness管. 轄 をベー ス. に,業 務 関 連 性 と い う条 件 を 付 す と い う ア レン ジを 加 え た もの で あ る と い う こ とか らす れ ば,民 事 訴 訟 法3条 の3第5号. に お け る事 業 者 の 意 義 を 考. 察 す る上 で,ア メ リカ法 上 のdoingbusiness管. 轄 にお け る事 業 者 の解 釈 に. 関 す る議 論 を知 る こ と は非 常 に有 益 で あ る と考 え られ る。 従 って,以 下 で は,ア メ リカ法 上 のdoingbusiness管. 轄 に お け る事 業 者 の解 釈 に 関す る議. 論 及 び裁 判 例 を整 理 ・分 析 し,民 事 訴 訟 法3条 の3第5号 の 意 義 を解 釈 す る上 で の 示 唆 を 得 る こ と と した い。. ⑳. 佐 藤=小 林 『前 掲 書 」 注(7)57頁以 下 。. 舩. 横 山 『前 掲 書 』 注(2)335頁 。. ⑬. 松 岡 『前 掲 書 』 注 ㈱23頁 。. 12. に お け る事 業 者.

(13) 業務関連訴訟 についての国際裁判管轄. 皿. ア メ リ 力 法 上 のdoingbusiness管. 轄 にお ける. 事業 者 の解釈. 1doingbusiness管. 轄 と企 業 間 の 関 係 性 に基 づ く管 轄 の 交 錯. ア メ リカ に お いて,各 州 は,州 外 で 設 立 され た 法 人 が 自州 にお いて 事 業 活 動 を 行 う場 合 に は,当 該 法 人 に対 し州 外 法 人 登 録 を な す こ とを 義 務 づ け て お り,こ の よ うな 州 外 法 人 登 録 に お いて は,当 該 州 の 裁 判 管 轄 権 に服 す る こ と に 同意 し,州 内 に お いて 訴 状 受 理 代 理 人 を 選 任 す る こ とが 通 常 要 求 され る⑳。 従 って,外. 国 法 人 を 含 む,州. 外 で 設 立 され た 法 人 が 州 外 法 人 登. 録 を な した場 合 に は,当 該 法 人 は 当該 州 の 裁 判 管 轄 権 に当 然 に服 す る こ と にな るが,さ. らに,州 外 で 設 立 され た法 人 が その よ うな 登 録 を 行 わ ず に州. 内で 事 業 活 動 を 行 って い た場 合 で あ って も,当 該 州 に は当 該 法 人 の 州 内で の 事 業 活 動 を 根 拠 に した裁 判 管 轄(doingbusiness管 とが,ア. 轄)が 認 め られ る こ. メ リカ法 上 広 く承 認 され て い る絢。. doingbusiness管. 轄 が 認 め られ る に あ た って は,州 内で 行 わ れ る活 動 の. 質 と量 が 問 わ れ る こ とは無 論 で あ るが㊨ ㊧,こ の他,特. に よ く論 じられ る点. と して,州 外 の 法 人 が あ る州 に お いて 子 会 社 ・代 理 店 等 の 法 人 格 の 異 な る. eのHAY,BORCHERS,SYMEONIDES,CONFLICTOFLAWS,5THed.,510 (2010). ㈲WEINTRAUB,COMMENTARYONTHECONFLICTOFLAWS,6THed., 232(2010). ㊨⑤doingbusiness管. 轄 は,ア. メ リ カ 法 上,訴. 訟 原 因 が 法 廷 地 との 関 連 か ら生. じ て い る か 否 か を 問 わ ず 認 め ら れ る 一 般 管 轄 権(generaljurisdiction)で る と さ れ て お り,従. 組 織 的 な 関 連 性 を 要 す る と 解 さ れ て い る 。 リ ッ チ マ ン=レ 他(訳)『. ア メ リカ 抵 触 法. ン,2008年)142頁. あ. って 管 轄 が 肯 定 され るた め に は特 に法 廷 地 との 継 続 的 か つ. 管 轄 権 編(上. 。WEINTRAUB,8配. 巻)」(レ. ρrαnote35,at238.. 13. イ ノ ル ズ(著)松. 岡. ク シス ネ ク シス ・ジ ャパ.

(14) 近畿大学法学. 第60巻 第3・4号. 主 体 を通 じて 事 業 活 動 を 行 って い る場 合 に,州 外 の 法 人 を 事 業 活 動 の 主 体 と捉 え る こ と に よ り,そ の 法 人 に対 す る 当該 州 の 裁 判 管 轄 権 が 認 め られ る か と い う問 題 が あ る。 特 に,親 子 会 社 関 係 に基 づ く裁 判 管 轄 権 につ いて,抵 触 法 第2リ トメ ン ト52条注 釈bで. ステイ. は,単 に子 会 社 が 域 内 に お いて 事 業 活 動 を 行 って い. る と い うの み の 理 由で,親 会 社 に対 す る裁 判 管 轄 権 が 認 め られ る こ と に は な らな い との 原 則 が 示 され つ つ も,子 会 社 が 親 会 社 の 指 示 に よ って 若 し く は親 会 社 の 業 務 の 過 程 に お いて 域 内で 行 為 し若 し くは結 果 を 生 じさせ て い る場 合,又. は親 会 社 が 事 実 上 子 会 社 の 独 立 した会 社 と して の 存 在 を 無 視 し. 得 る ほ ど に子 会 社 を 支 配 し管 理 して い る場 合 に は,親 会 社 に対 す る裁 判 管 轄 権 が 認 め られ る とさ れ て い るGの 。 つ ま り,子 会 社 が域 内 にお い て 事 業 活 動 を行 って い る との 一 事 を も って 域 外 の 親 会 社 に対 す る裁 判 管 轄 権 が 肯 定 され る こ と と はな らな いが,他 方 で,親 会 社 ・子 会 社 間 の 代 理 関 係 又 は強 固 な 支 配 関 係 が 認 め られ る場 合 に は,域 外 の 親 会 社 に対 す る裁 判 管 轄 権 が 肯 定 され る との 姿 勢 が 明 らか に され て い る。 ア メ リカ法 上,企 業 間 の 関 係 を具 にみ た上 で それ を 対 人 管 轄 権 の 存 否 判 断 に お いて 反 映 させ る と い う考 え 方 は,後 に紹 介 す る裁 判 例 を み て も,doingbusiness管. 轄 に関 して 深 く. 浸 透 して い る こ とが 認 め られ る鮒。 さ らに,抵 触 法 第2リ. ス テ イ トメ ン ト52条注 釈bで. は,域 外 の 会 社 が 独. 占的 販 売 店 等 の 株 式 所 有 関 係 にな い拠 点 を 域 内 に設 置 して い る場 合 につ い て も,域 外 の 会 社 が 当該 拠 点 に対 して 販 売 等 に関 し支 配 を 行 使 して い る こ. ⑳RESTATEMENT,SECOND,CONFLICTOFLAWS§52comment b(1971). ㈱. な お,こ business管. の よ う な 企 業 間 の 関 係 の 実 態 を 管 轄 判 断 に 反 映 さ せ る考 慮 は,doing 轄 以 外 の 管 轄,す. な わ ち 特 別 管 轄 に 関 し て も 働 く余 地 が あ る 。. FELIX&WHITTEN,AMERICANCONFLICTSLAW,6THed.,92(2011).. 14.

(15) 業務関連訴訟 についての国際裁判管轄 とを も って,当 該 拠 点 が 域 外 の 会 社 の 代 理 人 と して 域 内 にお いて 活 動 して い る と認 定 で き る場 合 に は,当 該 活 動 に基 づ いて 域 外 の 会 社 に対 す る裁 判 管 轄 権 が 正 当化 さ れ る余 地 が あ る 旨が 述 べ られ て い る㈱。 この よ う に,域 外 の 会 社 と域 内の 拠 点 との 間 に株 式 所 有 関 係 が あ る場 合 と比 較 す る とや や 控 え めな 表 現 な が ら,支 配 を 背 景 と した代 理 関 係 を 媒 介 に,域 外 の 会 社 と 域 内の 拠 点 との 間 に株 式 所 有 関 係 が な くと も,域 外 の 会 社 に対 す る裁 判 管 轄 権 を肯 定 す る可能 性 が 認 め られ て お り,doingbusiness管. 轄 に関 して も,. この よ うな 考 慮 が 働 く余 地 が あ る。. 2ア. メ リ 力 連 邦 最 高 裁 のCannon判. 決 とそ の 後 の 裁 判 例 の 動 向. 親 子 会 社 関 係 に 基 づ く裁 判 管 轄 権 に つ い て の リー デ ィ ン グ ケ ー ス と して は,1925年. の ア メ リカ 連 邦 最 高 裁 のCannon判. 決 ㈲ が あ る 。本 件 に お い て,. ノ ー ス カ ロ ラ イ ナ 州 法 人 た る 原 告CannonManufacturingCompanyは, メ イ ン州 法 人 た る 被 告CudahyPackingCompanyの. 契 約違 反 を理 由 に. ノ ー ス カ ロ ラ イ ナ 州 裁 判 所 に お い て 訴 訟 を 提 起 し,そ. の 後 連 邦 裁 判 所 に移. 送 が な さ れ た 。 ノ ー ス カ ロ ラ イ ナ 州 に お い て は,被 告 の 子 会 社 た るCudahy PackingCompanyofAlabama(以. 下,CPCA)が. 事 業 活 動 を 行 っ て お り,. ノ ー ス カ ロ ラ イ ナ 州 に 営 業 所 と 訴 状 受 理 代 理 人 を 有 して い た こ と か ら,本 件 の 訴 状 もCPCAの. 訴 状 受 理 代 理 人 に 送 達 さ れ た が,被. ラ イ ナ 州 内 で 事 業 活 動 を 行 っ て お らず,従 (presence)し. 被 告 に 対 す る 裁 判 管 轄 権 の 存 否 に つ い て,連. b(1971). ωCannonManufacturingCo.v.CudahyPackingCo.,267U.S.333, 45S.Ct.250,69L.Ed.634(1925).. 15. ースカロ. って ノー ス カ ロ ラ イ ナ州 に所 在. て い な い と し て 管 轄 を 争 い,訴. ㈱RESTATEMENT,SECOND,CONFLICTOFLAWS§52comment. 告 は,ノ. え の却 下 を 求 め た。 邦 最 高 裁 は,CPCAを,被.

(16) 近畿大学法学. 第60巻 第3・4号. 告 親 会 社 の 製 品 を ノー ス カ ロ ラ イ ナ州 に お いて 販 売 す る た めの 手 段 で あ っ た と認 め な が ら も,CPCAが. 被 告 親 会 社 か ら製 品 を 購 入 した上 で デ ィー. ラ ー に販 売 して い た事 実 か ら,CPCAは. 被 告 の 代 理 人 と して 活 動 して い た. の で はな い と認 定 したω。 さ らに,被 告 親 会 社 がCPCAを. 全株式の所有等. を通 じて 支 店 と 同様 に事 実 上 完 全 に支 配 して い た こ とを 認 めつ つ も,被 告 親 会 社 とCPCAの. 帳簿 が別 個 に され て い る点,両 者 間 の す べ て の取 引が 独. 立 当事 者 間取 引 と して 帳 簿 に記 載 され て い る点 に着 目 し⑫,両 者 の 法 人 格 の 分 離 は,お そ ら く形 式 上 の もの で あ る と して も実 在 して お り,純 粋 な 擬 制 で はな か っ た と述 べ,CPCAに. よ る事 業 活 動 を 被 告 親 会 社 の 事 業 活 動 と. 同視 す る こ と はで きな い と して,被 告 親 会 社 に対 す る裁 判 管 轄 権 を 否 定 し た。 こ のCannon判. 決 は,親 会 社 が 子 会 社 を 用 い る こ と に よ り州 内で 事 実. 上 事 業 を 展 開 して い る場 合 で あ って も,親 会 社 と子 会 社 の 間 で 法 人 格 の 形 式 的 な 分 離 が 遵 守 され て お り,又,子. 会社が厳密な意味で親会社の代理人. で あ る と も認 め られ な い場 合 は,州 外 の 親 会 社 に対 す る裁 判 管 轄 権 を 否 定 す る との 立 場 を 示 す もの で あ っ た。 しか し,Cannon判 Shoe判. 決 は,1945年 の ア メ リカ連 邦 最 高 裁 のInternational. 決 ⑬ 以 前 の もの で あ り,InternationalShoe判. 決 に よ って対 人 管. 轄 権 行 使 の根 拠 と して 廃 さ れ た 「物 理 的所 在(physicalpresence)」. 概念. ql)1記267U.S.at335. q2)1わ'紘 ㈹InternationalShoeCo.v.Washington,326U.S.310,66S.Ct.154, 90L.Ed.95(1945).InternationalShoe判 mumcontacts)が nationalShoe判 る 適 正 手 続(デ. 決 に よ り,最. 小 限 の 関 連(mini-. 裁 判 管 轄 権 の 根 拠 と して 新 た に 提 示 さ れ た 。 な お,Inter決 以 降,州. の 対 人 管 轄 権 行 使 が 合 衆 国 憲 法 修 正 第14条. ュ ー ・プ ロ セ ス)条. 項 に 反 す る か 否 か は,①. る 州 と の 間 に 最 小 限 の 関 連(minimumcontacts)が. 存 す る か,②. の 行 使 が フ ェ ア プ レ イ と 実 質 的 正 義 の 観 念 に 合 致 し合 理 的 か,と テ ス トに よ り判 断 され る。. 16. にお け. 被 告 と法 廷 地 で あ 裁判管轄権 い う2段. 階の.

(17) 業務関連訴訟 についての国際裁判管轄 に基 づ くもの で あ っ た こ と等 か ら,現 在 で は その 先 例 性 は揺 ら いで い る と の 見 方 が 強 いω。 但 し,単 に親 会 社 が子 会 社 の株 式 を所 有 して い る こ との み に基 づ いて,子 会 社 に よ る事 業 活 動 が 親 会 社 の 事 業 活 動 と 同視 され て 親 会 社 に対 す る裁 判 管 轄 権 が 肯 定 され る こ と と はな らな い と した 点 につ いて は,抵 触 法 第2リ. ス テ イ トメ ン ト52条注 釈bに. う に,InternationalShoe判 う。 又,Cannon判. お いて も述 べ られ て い る よ. 決 以 降 も広 く是 認 され て い る と いえ るで あ ろ. 決 の立 場 に よ って も,実 体 法 上 の 法 人 格 否 認 の 法 理 に. お け るの と 同等 の 厳 格 な 法 人 格 否 認 の 基 準 に よ り,あ る い は狭 義 の 代 理 関 係 の 存 在 に よ り,子 会 社 に よ る事 業 活 動 を 通 じて 親 会 社 に対 す る裁 判 管 轄 権 が 肯 定 され る余 地 は残 され る。 近 年 の 傾 向 と して は,企 業 間 の 関 係 性 に基 づ く広 義 の 代 理 関 係 の 存 在, 又 は実 体 法 上 の 法 人 格 否 認 の 法 理 よ りも要 件 が 緩 和 され た 管 轄 法 上 の 法 人 格 否 認 の 法 理 の 基 準 を 用 いて,親 会 社 に対 す る裁 判 管 轄 権 の 存 否 が 検 討 さ. ωBLUMBERG,THELAWOFCORPORATEGROUPS,PROCEDURAL PROBLEMSINTHELAWOFPARENTANDSUBSIDIARYCORPORATIONS47(1983);CASAD,JURISDICTIONINCIVILACTIONS,VOL13160(2ded.1991);FELIX&WHITTEN,即rαnote38,at91;Brylmayer &Paisley,Pε. 渚80ηα1溜r∫54∫ α'oη αη45配. わ3'αη'∫v6五 θ8αZRεZα'∫oη3'Coη. Coη5p'rαc'θ&α. η4A86ηc第74No,1CALIF.L.Rev.1(1986);Wellborn,. ∫麗わ3∫4'αryCoη. アorα"oη3'η1V8w}b沈Whθ. η'3ル. E5∫αわ1∫ 訥. ノ配r'54∫c"oηov6r'加Pαrθ. Brown,ノ. 配r'54'c"oηov6rαCorρorα'∫oηoη. 雌. ゜ 〃o'θ4Coη. ノ6rθ0脚8r訪. し,現. 読 θ わα5∫5(ゲ'乃. し て 下 級 審 に お い て 一・ 定 の 影 響 力 を 保 持. フorα'64が. θrc加8'舵 を'〃 α'63」AηE配. αc'3(ザ. αη. 決 を 支 持. し,対. 体 法 上 の 法 人 格 否 認 の 法 理 の 適 用 基 準 と 同. 等 の 厳 格 な 法 人 格 否 認 の 基 準 を 適 用 す る 裁 判 例 も あ る 。Cannon判. OyθrCoη. θCo厩. フorα'θ 絶 〃2,61Cin.. 在 で も 依 然 と し てCannon判. 人 管 轄 権 の 存 否 判 断 に お い て も,実. て,Swain&Aguilar,P∫. ψEηo麗9ぬ'o. η',22BUFFALOL.Rev.681(1973);. フorα"oη'Do}b配Hov6'01)'6κ6'舵Coη. L.Rev.595(1992).但. アo置α'∫oη5,. 惚'1'oA∬6r'Pθr50η. μr'cα15砺. B.U.L.Rev.445(2004).. 17. 決 が 依 然 と. し て い る と の 見 解 が 示 さ れ た 文 献 と し. のqプ. ぬ6Coη. α」 潮r'54'c"oη ηoηDoc〃. 加6,84.

(18) 近畿大学法学. 第60巻 第3・4号. れ て い る こ と が指 摘 で き る㈲。 即 ち,代 理 関係 が根 拠 と され る場 合 に は, 代 理 権 の 存 在 を 前 提 とす る狭 義 の 代 理 関 係 で はな く,企 業 間 の 緊 密 な 関 係 性 と強 固 な 支 配 に基 づ く一 般 的 代 理 関 係 の 存 在 を 根 拠 に,又 は,親 会 社 に よ る子 会 社 へ の 非 常 に強 固 な 支 配 の み を 要 件 と した管 轄 法 上 の 法 人 格 否 認 の 法 理 の 適 用 に よ り,親 会 社 に対 す る裁 判 管 轄 権 が 肯 定 され る裁 判 例 が 数 多 くみ られ る。 対 人 管 轄 権 の 存 否 判 断 に お いて 親 子 会 社 間 の 関 係 に着 目 し た検 討 が な され る場 合 に は,上 記 の 二 つ の 根 拠 の いず れ か,或 方 が 用 い られ るが,独. い は その 両. 占的 販 売 店 等 の,被 告 と株 式 所 有 関 係 にな い主 体 と. の 間 の 関 係 が 問 題 とな る場 合 に は,代 理 関 係 の 存 在 の み が その 根 拠 と して 用 い られ る㈹。 但 し,独 占的 販 売 店 な どの,被. 告 と株 式 所 有 関 係 にな い主. 体 との 間 の 関 係 に基 づ く管 轄 の 有 無 が 問 題 と され て い る裁 判 例 は,古 い も の が そ の ほ とん どを 占め て お り㊨,最 近 の 裁 判 例 で これ を 問題 とす る もの は それ ほ ど多 くはな い姻。. ㈲FELIX&WHITTEN,3配prαnote38,at91-92.リ 『前 掲 書 」 注 ㈲143頁 ㈹FELIX&WHITTEN,∫ ㊨. ッ チ マ ン=レ. イノルズ. 。 叩rαnote38,at91.. 例 え ば,DelrayBeachAviationCorp.v.MooneyAircraft,Inc,,332 F.2d135(5thCir.1964).Delagiv.VolkswagenwerkAG,29NY.2d 426,278N.E.2d895,328N.Y.S.2d653(1972).Dicksonv.HertzCorp., 559F.Supp.1169,19V,1.501(D.V.1.1983).. ⑱. こ の よ う な 裁 判 例 の 傾 向 の 要 因 と し て,理. 論 上 は さ て お き,実. の 被 告 と 州 内 の 主 体 の 間 に 株 式 所 有 関 係 が な い 場 合 に は,そ. 際 上 は,州. 外. れ が あ る場 合 に比. して 一 般 に被 告 に よ る州 内 の主 体 へ の強 固 な支 配 が認 め られ 難 い とい う点 が 挙 げ ら れ る で あ ろ う が,さ. ら に,州. 内 に 独 占 的 販 売 店 等 を 設 置 し て い る 場 合 に は,. 訴 訟 原 因 が 法 廷 地 と の 関 連 か ら 生 じて い る の で あ れ ば,代 轄 判 断 よ り も,む. 理 関 係 に 着 目 した 管. し ろ 通 商 の 流 れ(streamofcommerce)理. (purposefulavailment)理. 論 等 を 用 い た 管 轄 判 断 の ほ う が,よ. 論や意図的利用 り一 般 的 と な っ. て い る こ と も そ の 要 因 の 一・つ で は な い か と 推 測 さ れ る 。 通 商 の 流 れ(stream ofcommerce)理. 論 や 意 図 的 利 用(purposefulavailment)理. World-WideVolkswagenCorp.v.Woodson,444U.S.286,100S.Ct. 559,62L.Ed.2d490(1980).BurgerKingCorp.v.Rudzewicz,471/. 18. 論 に つ い て は,.

(19) 業務関連訴訟 についての国際裁判管轄 以 下 で は,doingbusiness管. 轄 に 関 して,特. に,子. 会社等の別法人を通. じ た 事 業 活 動 に よ り州 外 の 親 会 社 に 対 す る 裁 判 管 轄 権 の 存 否 が 争 わ れ た 最 近 の ア メ リ カ の 裁 判 例 を 紹 介 し,具 business管. 3ア. 体 的 に い か な る 点 に 着 目 し てdoing. 轄 にお け る事 業 者 の 認 定 が 行 わ れ て い るの か を 見 て い きた い。. メ リカ にお け る最 近 の 裁 判 例 の 紹 介. ①CityofGreenvillev.SyngentaCropProt.,Inc.,830F.Supp.2d550 (S.D.IIL,2011). 市 の 水 道 事 業 者 で あ る 原 告 ら は,ス AG's(以 SAGが. 下,SAG)と,SAGと 率 い るSyngentaグ. Protection,Inc.(以 い う 除 草 剤 を,そ. イ ス 法 人 た る 持 株 会 社Syngenta. は 直 接 の 株 式 所 有 関 係 は な い も の の, ル ー プ 傘 下 の デ ラ ウエ ア 州 法 人SyngentaCrop. 下,SCPI)に. 対 し,SAGとSCPIが,ア. トラ ジ ン と. れ が 農 地 か ら流 出 し水 源 に 流 入 す る 可 能 性 が 非 常 に 高 い. こ と を 知 りな が ら製 造 販 売 し た と 主 張 し,イ. リノ イ州 南 部 地 区 連 邦 地 裁 に. お いて 損 害 賠 償 請 求 訴 訟 を 提 起 した。 こ れ に 対 し,SAGは,自 又,SCPIの. 社 は イ リ ノ イ 州 と十 分 な 関 連 を 有 し て お らず,. イ リ ノ イ 州 と の 関 連 に つ い て は,自. 的 な 支 配 を 行 使 し て お ら ず,SCPIを を 行 っ て い な い た め,SCPIの と は な い と主 張 し,SAGに. 社 はSCPIに. 対 して 日常. 通 じて イ リ ノ イ 州 に お い て 事 業 活 動. イ リノ イ 州 との 関 連 が 自社 に帰 せ られ る こ 対 す る 対 人 管 轄 権 が 欠 鉄 して い る と し て 訴 え を. 却 下 す る よ う 求 め た 。他 方,原. 告 ら は,SAGはSCPIに. 対 し非 常 に 強 固 な. \U.S.462,105S.Ct.2174,85L.Ed.2d528(1985).AsahiMetalIndustryCo.,Ltd.v.SuperiorCourtofCalifornia,SolanoCounty,480 US.102,107S.Ct.1026,94L.Ed.2d92(1987).J.MclntyreMachineryv.Nicastro131S.Ct.2780,180L.Ed.2d765(2011)等. を 参. 照 。. 19.

(20) 近畿大学法学. 第60巻 第3・4号. 支 配 を行 使 して お り,一 般 管 轄 権 を確 立 す る上 で,SCPIの の 関 連 はSAGに. イ リノイ 州 と. 帰 責 され る と主 張 した㈹。. イ リノ イ州 南 部 地 区 連 邦 地 裁 は,親 会 社 が 子 会 社 に対 し過 度 の 支 配 を 行 使 した こ と に よ り子 会 社 の 関 連 に基 づ き親 会 社 が 裁 判 管 轄 権 に服 す るか 否 か を判 断 す る に あ た って,イ. リノ イ州 の判 例 法 に従 い6①,役 員 ・取 締 役 の. 兼 任 の 有 無,子 会 社 の 日常 業 務 に対 し親 会 社 が 行 使 して い る支 配 の 程 度, 親 会 社 に よ る子 会 社 の 財 務 へ の 関 与 の 有 無,帳 簿 ・納 税 申告 書 ・財 務 報 告 書 が 別 個 で あ るか 否 か,親 会 社 が 子 会 社 を 代 理 人 と して い るか 否 か,子 会 社 に よ る親 会 社 へ の 支 払 方 法 等 の 諸 要 素 が 考 慮 され る と指 摘 した61)。 な お, 子 会 社 の 業 務 や 財 務 上 の 決 定 を 監 督 し一 般 的 な 政 策 を 策 定 す る と い っ た投 資 者 と して 当然 の 支 配 は,管 轄 上 子 会 社 の 関 連 を 親 会 社 に帰 責 す るの に十 分 で な い と され て い る励。 本 件 にお い て,ア. トラ ジ ンの ア メ リカ にお け る製 造 ・販 売 に直 接 従事 し,. イ リノ イ州 と直 接 に 関 連 を 有 して い た の はSCPIで 株 会 社 で あ って,イ SCPIは,過. あ り,他 方SAGは. 持. リノ イ州 との 直 接 的 な 関 連 は何 ら存 しな か っ た。 又,. 小 資 本 状 態 にな く,独 自の 帳 簿 ・財 務 報 告 書 を 維 持 し,独 自. の 納 税 申告 書 を 提 出す るな ど,法 人 格 の 形 骸 化 を うか が わ せ る状 況 に はな く,又,SAGとSCPIの. 間 に は役 員 ・取 締 役 の兼 任 も存 しな か った。 しか. し,そ れ に もか か わ らず,イ. ㈹SCPIに. リ ノイ州 南 部 地 区連 邦 地 裁 は,Syngentaグ. 対 す る裁 判 管 轄 権 につ い て は 当然 認 め られ る こ とが前 提 と され て い. る 。 判 旨 に お い て 明 確 に は 示 さ れ て い な い が,原 に 対 し て は 一 般 管 轄 権,す. な わ ちdoingbusiness管. 告 の 主 張 か らす る と,SCPI 轄 が 認 め られ て い た よ う. で あ る。 ⑳. 州 籍 相 違 事 件 に お い て,連. 邦 裁 判 所 は,連. を 用 い る 。 連 邦 民 事 訴 訟 規 則 第4条(k)(1)㈲. 邦 地 裁 が 所 在 す る州 の 管 轄 ル ー ル 参照。. (5DCityofGreenvillev.SyngentaCropProt,,Inc.,830F.Supp.2d 550(S.D.Ill.,2011),at555. (52>1記at555-556.. 20.

(21) 業務関連訴訟 についての国際裁判管轄 ル ー プ 企 業 間 の 組 織 的 な 連 携 関 係 を 非 常 に 詳 細 に 検 討 す る こ と で,SAG がSCPIに. 対 し,投. 資 者 の 立 場 を 超 え る 非 常 に 強 固 な 支 配 を 行 使 して い た. こ とを 認 定 した。 そ の 際,イ. リ ノ イ 州 南 部 地 区 連 邦 地 裁 は,SCPIの. 開 催 さ れ ず,Syngentaグ. 取 締 役 会 は 稀 に しか. ル ー プ の よ り上 層 の 意 思 決 定 機 関 に よ り 下 さ れ. た 決 定 を 単 に 追 認 す る の み で 最 終 的 な 決 定 権 限 を 有 して い な い 等,現. 実 に. は ほ とん ど機 能 して い な か っ た 点,さ. ら に,人 材 管 理 に つ い て も,Syngenta. グ ル ー プ 企 業 に 属 す る 従 業 員 は,あ. た か もSyngentaグ. SAGに. ループの ため に. よ っ て 雇 用 され た か の よ う に グル ー プ全 体 の た め に 活 動 し,Syngenta. グ ル ー プ 企 業 は 完 全 に 統 合 さ れ た 一 つ の 会 社 の よ う に 機 能 して い た と い う 点 に 着 目 し て い る 。 又,SAGがSyngentaグ マ ー ケ テ ィ ン グ 戦 略,販. 売 計 画 を 中 央 集 権 的 に 決 定 し,特. る ア トラ ジ ン の 製 造 販 売 に 関 し,SCPIは き ず,グ. ル ー プ の 製 品 の デ ザ イ ン, に,SCPIに. よ. 独 自の 判 断 で実 施 す る こ とが で. ル ー プ の 上 層 機 関 の判 断 を仰 ぎ承 認 を 得 た上 で 実 施 す る必 要 が. あ っ た こ と が 指 摘 さ れ,こ. の よ う な 状 況 は 通 常 親 会 社 が 行 使 す る 支 配 ・監. 督 を 超 え る も の で あ る と さ れ て い る 。 そ の 結 果,SAGがSCPIに な 支 配 を 行 使 して い た こ と が 認 め られ た こ と に よ り,管 ノ イ 州 と の 関 連 はSAGに. 帰 責 さ れ た 上 で,さ. 轄 上SCPIの. ら に,SAGに. 轄 権 は デ ュ ー ・プ ロ セ ス に 違 反 しな い と さ れ ㈲,SAGに. 対 し強 固 イ リ. 対 す る裁 判 管 対 す る裁 判 管 轄 権. が 肯 定 され た。. ②Gallelliv.Crownlmps.,LLC,701F.Supp.2d263(E.D.N.Y.,2010). 本 件 は,ビ. 働. ー ル 瓶 の 破 裂 に よ り 失 明 し た 幼 児 の 両 親 が,当. 州 の 対 人 管 轄 権 行 使 につ いて は,ま ず,各 が 審 査 され,さ 適 正 手 続(デ. 該 ビー ル の 製. 州 法 上 対 人 管 轄 権 が 認 め られ るか. らに,当 該 裁 判 管 轄 権 の 行 使 が 合 衆 国 憲 法 修 正 第14条 にお け る. ュー ・プ ロセ ス)条 項 に反 しな い か 否 か が 審 査 され る。. 21.

(22) 近畿大学法学. 第60巻 第3・4号. 造販 売 を業 とす る企業 グル ー プの持株会社 たるメ キ シコ法人GrupoModeloz, S.A.B.deC.V.(以. 下,GMSAB)及. び そ の 関連 会 社 等 に対 し,ニ ュー ヨー. ク州 東 部 地 区 連 邦 地 裁 に お い て 提 起 した損 害 賠 償 請 求 訴 訟 で あ る。GM SABは,ニ. ュ ー ヨー ク州 に事 務 所 も従 業 員 も有 して お らず,ニ ュー ヨー ク. 州 に お いて 直 接 に は活 動 して いな か っ た た め,関 連 会 社 らの 行 為 が 帰 責 さ れ る こ と に よ り管 轄 が 肯 定 され るか 否 か が 問 題 とな っ た勧。 ニ ュー ヨー ク州 東 部 地 区 連 邦 地 裁 は,子 会 社 を 通 じた事 業 活 動 に よ る親 会 社 へ の 裁 判 管 轄 権 の 行 使 につ いて,ニ. ュー ヨー ク州 の 判 例 法 に従 い,支. 配 を根 拠 に法 人 格 否 認 を 認 め る,基 準 が 緩 和 され た管 轄 法 上 の 法 人 格 否 認 の 法 理(MereDepartmentTheory),及. び 代理 理 論(AgencyTheory). に基 づ き 判 断 を行 った。 まず,管 partmentTheory)に. 轄 法 上 の 法 人 格 否 認 の 法 理(MereDe-. よ り,子 会 社 を 通 じた事 業 活 動 に よ って 親 会 社 に対. す る裁 判 管 轄 権 を 認 め る に あ た って 考 慮 す べ き不 可 欠 の 要 素 と して,子 会 社 の 株 式 の 所 有 が 挙 げ られ,さ. らに必 ず 考 慮 す べ き要 素 と して,親 会 社 に. 対 す る子 会 社 の 財 務 上 の 依 存 度,子 会 社 の 重 役 の 選 任 につ いて の 親 会 社 の 関 与,会 社 法 上 の 手 続 が 遵 守 され て い るか 否 か,子 会 社 の 日常 業 務 に対 す る親 会 社 に よ る支 配 が列 挙 され て い る㈲。 本 件 に お い て,管 轄 法 上 の 法 人 格 否 認 の法 理 に基 づ くGMSABに. 対 す る裁 判 管 轄 権 が認 め られ るた め に. は,上 記 の諸 要 素 の立 証 に よ り,GMSABが. 関連 会 社 らが従 事 す る ビー ル. の 製 造 販 売 事 業 の 全 て の 側 面 につ いて 強 固 な 支 配 を 行 使 して い る こ とが 認 め られ る必 要 が あ っ たが,原 告 は この 点 につ いて 曖 昧 な 立 証 しか しな か っ た た め,管 轄 法 上 の 法 人 格 否 認 の 法 理(MereDepartmentTheory)に づ くGMSABに. 働. 対 す る裁 判 管 轄 権 は否 定 され た。. 本 件 に お い て,関. 連 会 社 に対 す る裁 判 管 轄 権 につ いて は争 わ れ て いな い。. ㈲Gallelliv.CrownImps.,LLC,701F.Supp.2d263(E.D.N.Y.,2010), at272.. 22. 基.

(23) 業務関連訴訟 についての国際裁判管轄 又,ニ ュー ヨー ク州 東 部地 区連 邦地 裁 は,さ らに代 理理 論(AgencyTheory)に 基 づ く裁 判 管 轄 権 を 肯 定 す るた め に は,親 会社 が 自社 の職 員 に よ っ て な したで あ ろ う あ らゆ る業 務 を 子 会 社 が 州 内で 行 って い る こ とを 立 証 す る必 要 が あ る と した上 で6③,但 し,本 件 の よ う に,問 題 と され る親 会 社 が 持 株 会 社 で あ る場 合 に は,持 株 会 社 の 業 務,す な わ ち投 資 事 業 を,全. く異. 業 種 の ビー ル の 製 造 販 売 事 業 に従 事 す る関 連 会 社 らが 州 内で 代 行 して い る と はい え な い と述 べ6の,代理 理 論 に基 づ くGMSABに. 対 す る裁 判 管 轄 権 に. つ いて も認 め られ な い と され た。. ③Baumanv.DaimlerChryslerCorp.,644F.3d909(9thCir.Cal., 2011). ア ル ゼ ン チ ン の 住 民 た る原 告 ら は,DaimlerChryslerAktiengesellschaft (以 下,DCAG)に. 対 し,DCAGが. 率 い るDaimlerChryslerグ. す るMercedes-BenzArgentinaが. ル ー プ に属. か つ て ア ル ゼ ンチ ンの 軍 事 政 権 下 で 国. 家 保 安 機 関 と 共 謀 して 様 々 な 労 働 者 弾 圧 行 為 を 行 っ た と して,外 行 為 法(AlienTortStatute)等. 国人不法. に基 づ きカ リフ ォル ニ ア州 北 部 地 区 連 邦. 地 裁 に お い て 訴 訟 を 提 起 し た 。 カ リ フ ォ ル ニ ア 州 北 部 地 区 連 邦 地 裁 で は, DCAGに. 対 す る 裁 判 管 轄 権 の 欠 鉄 を 理 由 に 訴 え が 却 下 さ れ,原. た 。 本 件 に お い て,第9巡. 回 区 連 邦 控 訴 裁 は,DCAGの. ウエ ア州 法 人Mercedes-BenzUSALLC(以 の 代 理 人 に 相 当 す る と した 上 で,本. 6⑤. ∫玩4.こ. の よ う に,代. 告 は控 訴 し. 孫 会 社 で あ るデ ラ. 下,MBUSA)⑬. が管 轄 上DCAG. 件 の 状 況 下 で はDCAGに. 対 す る裁 判. 理 理 論 に よ り裁 判 管 轄 を 肯 定 す る に あ た っ て は,厳. 密 に. 子 会 社 が 親 会 社 の事 業 につ い て の代 理 権 を有 して い る こ とが 求 め られ るわ けで はな い 点 に留 意 す べ きで あ る。 (57)'紘at274. ㈹MBUSAは,DCAGの AmericaHoldingCorporationの. 完 全 所 有 子 会 社 で あ るDaimlerChryslerNorth 完 全 所有 子会 社 で あ った。. 23.

(24) 近畿大学法学. 第60巻 第3・4号. 管 轄 権 の行 使 は合 理 的 で あ る と して,カ 関 連 を通 じ69DCAGは. リ フ ォル ニ ア 州 と のMBUSAの. カ リ フ ォル ニ ア州 の 一 般 管 轄 権 に服 す る と結 論 付 け. た。 第9巡 回 区 連 邦 控 訴 裁 は,法 廷 地 に お いて 事 業 活 動 を 行 う子 会 社 との 関 係 に基 づ く外 国 親 会 社 に対 す る裁 判 管 轄 権 の 行 使 に要 す る関 連 を 検 討 す る に あ た り,第9巡. 回 区 連 邦 控 訴 裁 の 先 例 に従 い,法 人 格 否 認 の 法 理 を 用 い. た判 断 基 準(alteregotest)と,代. 理 を用 い た判 断 基 準(agencytest)が. あ る と した上 で6①,本 件 で は,代 理 を 用 いた 判 断 基 準(agencytest)に りDCAGに. よ. 対 す る裁 判 管轄 権 が認 め られ る と した。. 第9巡 回区 連邦 控 訴裁 は,判 旨に お いて,代 理 を用 いた判 断 基 準(agency test)に. よれ ば,子. と,す な わ ち,も. 会 社 が 親 会 社 の 代 理 人 と して の 機 能 を 果 た して いた こ し親 会 社 が 代 理 を 有 して いな けれ ば親 会 社 自体 の 従 業 員. が 行 って い たで あ ろ う ほ ど に十 分 に重 要 な 業 務 を 子 会 社 が 実 施 して い た こ と及 び子 会 社 に対 す る親 会 社 の 支 配 の2点 を 立 証 す る こ とで 充 足 され る と 述 べ㈹,ま ず,親 会社 が代 理 を有 して い な け れ ば親 会 社 自体 の従 業 員 が 行 っ て い たで あ ろ う ほ ど に十 分 に重 要 な 業 務 を 子 会 社 が 実 施 して い たか 否 か と い う点 につ いて,MBUSAは,DCAGか. らMercedes-Benzの. 乗用車を購. 入 しア メ リカ に お いて 販 売 す る総 販 売 店 で あ り,Mercedes-Benzの の ア メ リカ に お け る販 売 は,全 世 界 で のMercedes-Benzの. ㈹MBUSAは. 乗用車. 乗用 車 の販 売 の. カ リフ ォル ニ ア 州 に事 業 所 を 設 置 して事 業 活 動 を行 って い た た. め,MBUSAが. カ リフ ォル ニ ア 州 の一 般 管 轄 権 に服 す る こ とに つ い て は争 わ れ. て い な い。 ㈹Baumanv.DaimlerChryslerCorp.,644R3d909(9thCir.Cal.,2011), at920.な. お,第9巡. 回 区 連 邦 控 訴 裁 の 先 例 に お い て,alteregotestは,実. 質 法 上 の 法 人 格 否 認 の法 理 に お け る の と同等 の厳 格 な法 人格 否認 の 基 準 を 採 用 し て お り,他. 方 で,agencytestに. つ い て は,alteregotestに. 支 配 の 程 度 よ りも よ り少 な い支 配 の 立 証 で 足 り る と され て い る。 ㊨1)1わ 泓. 24. 求 め られ る.

(25) 業務関連訴訟 についての国際裁判管轄 19%を 占 めて い る こ と,さ らにMBUSAに. よ る カ リフ ォル ニ ア州 にお け る. 販 売 だ け で も全 世 界 で の 総 販 売 数 の2.4%を 占 め て い る こ とを 指 摘 し勧, MBUSAが. カ リフ ォル ニ ア州 に お い て 果 た して いた 役 割 はDCAGに. とっ. て 欠 くべ か らざ る重 要 性 を 有 して い た と述 べ て い る。 さ らに,判. 旨で は,DCAGとMBUSAの. 間 に支 配 関 係 が 認 め られ るか. 否 か につ き検 討 す る に あ た って,MBUSAとDCAGの. 間 で 締 結 され た 販. 売 協 定 が 大 きな 重 要 性 を 有 す る と して 詳 細 な 検 討 が な され て い る。 当 該 協 定 に よ る と,MBUSAが. 販 売 しな けれ ばな らな い台 数,MBUSAの. 売 店 や そ の販 売 施 設 の 所 在 地 に つ い てDCAGの 他,販 売 に 際 してMBUSAが ま た,人 事,顧. 承 認 を 得 るべ き こ とそ の. 遵 守 す べ き諸 事 に つ い て事 細 か に定 め られ,. 客 情 報 管 理,販. つ い てDCAGは. 公認小. 売 戦 略 を含 むMBUSAの. あ らゆ る活 動 に. 報 告 を 受 け て いた こ と等 ㈹ か ら,DCAGがMBUSAの. 事. 業 活 動 の ほ とん ど全 て の 面 を 支 配 す る権 利 を 有 して いた こ とが 認 定 され, 代 理 を 用 い た判 断 基 準(agencytest)を MBUSAの. 充 足 す る に十 分 なDCAGに. よる. 支 配 が あ っ た と認 定 され た。. ④SGIAirHoldingsIILLCv.NovartisInt'lAG,239F.Supp.2d1161 (D.Colo.2003). デ ラ ウ エ ア 州 法 人 た る 原 告SGIAirHoldingsIILLCは,ス NovartisInternationalAG(以 AG(以. 下,NA)の. NIAとNAに. 下,NIA)が. イ ス法 人. そ の ス イ ス 持 株 会 社Novartis. た め に 航 空 機 の 販 売 に 関 す る 契 約 に違 反 した と して,. 対 し損 害 賠 償 を も と め て コ ロ ラ ド州 連 邦 地 裁 に お い て 訴 え. を 提 起 し た 。 こ れ に 対 し,NIAとNAは,い. ㊨2>1と 孟at922. (63>1記at924.. 25. ず れ も コ ロ ラ ド州 に 財 産 及.

(26) 近畿大学法学. 第60巻 第3・4号. び 従 業 員 を 有 せ ず,州. 外 法 人 登 録 も 行 っ て い な い 等 と して,対. 欠 鉄 を 理 由 に 訴 え 却 下 を 申 立 て た 。 こ れ に 対 し,原 ド州 に お け る 関 連 会 社5社,特 Inc.(以. 下,Geneva)を. 告 は,被. 人管轄権の 告 らは コ ロ ラ. に コ ロ ラ ド州 法 人GenevaPharmaceuticals,. 通 じ て コ ロ ラ ド州 に お い て 事 業 活 動 を 行 っ て お り,. こ の よ う な 関 連 会 社 と 被 告 の 間 の 代 理 関 係 に よ り,被. 告 らに対 す る一 般 管. 轄 権 が 肯 定 され る と主 張 した。 親 子 会 社 関 係 に 基 づ く対 人 管 轄 権 を 主 張 す る 場 合,第10巡 裁 の 先 例 に よ れ ば,法. 回区連邦控訴. 人 格 否 認 の 法 理(alteregotheory)と. (generalagencytheory)の. 代 理理 論. 適 用 が 考 慮 さ れ う る が,両 理 論 の 適 用 に あ た っ. て は 共 に 強 固 な 支 配 が 必 要 と さ れ る 点 で 共 通 性 が あ り,こ. の点で両理論の. 区 別 は 難 し い と判 旨 に お い て 指 摘 さ れ て い る ㈹。 しか し,第10巡. 回区連邦. 控 訴 裁 の 先 例 に よ れ ば,法. 人 格 否 認 の 法 理(alteregotheory)に. 轄 を 主 張 す る た め に は,コ. ロ ラ ド州 で 活 動 す る 子 会 社 等 と 取 引 を し た 第 三. 者 に 詐 欺 ・不 正 義 が 生 じ た こ と,つ. よ る管. ま り訴 訟 原 因 が 当 該 取 引 か ら生 じて い. る こ と が さ ら に 要 件 と して 加 重 さ れ る た め ㈹,本. 件 で は,原. 告 とGeneva. の 間 に 取 引 関 係 が な か っ た こ と か ら,法 人 格 否 認 の 法 理(alteregotheory) を用 い た管 轄 の 主 張 自体 が な され な か っ た。 上 記 の よ う に,代. 理 理 論(generalagencytheory)に. 基 づ く管 轄 が 認 め. られ る た め に は 親 会 社 に よ る 強 固 な 支 配 の 立 証 を 要 す る が,コ 邦 地 裁 は,こ. の 点 に つ い て,NAが. わ た っ てGenevaに る ㈹。 例 え ば,Genevaが. 投 資,人. 事,販. ロ ラ ド州 連. 売 と い っ た事 業 全 般 に. 日常 的 な 支 配 を 及 ぼ し て い た こ と を 詳 細 に 検 討 して い 投 資 判 断 を す る 際 に はNovartisグ. ㈹SGIAirHoldingsIILLCv.NovartisInt'lAG,239F.Supp.2d 1161(D.Colo.2003),at1166. (65>14,at1165-1166.. 26. ル ー プの 上 層.

(27) 業務関連訴訟 についての国際裁判管轄 機 関 の 承 認 を 受 け た 上 で な け れ ばGenevaの き ず,さ. ら に,GenevaのCEOの. 下 す な ど,重 はNAが. 取締 役 会 が 承 認 す る こ と はで. 就 任 に つ い て も被 告 らが 最 終 的 な 判 断 を. 役 人 事 に も被 告 ら は 深 く関 与 し て い た 。 又,Genevaの. 事業. 派 遣 し て い る 幹 部 の 監 督 の 下 に 置 か れ,事 業 状 況 がNAに. れ た 上 でGenevaの. 報告 さ. 事 業 の 改 善 が 提 案 さ れ て い た こ と な ど,NAに. よるグ. ル ー プ 企 業 の 統 制 の 様 子 が 浮 き 彫 り と な っ て い る 。 コ ロ ラ ド州 連 邦 地 裁 は, こ の よ う なNAに も,単. よ る 強 固 な 支 配 を 前 提 に,NAは. 持 株 会 社 で あ る けれ ど. に 会 社 投 資 事 業 に 従 事 して い た の で は な く,む. プ の 頂 点 に 君 臨 し,又,Genevaは,Novartisグ の う ち の 一 つ に お い てNAの. し ろNovartisグ. ル ー プ の 中 核 事 業5分. 事 業 活 動 を 実 行 す る と い う,Novartisグ. プ に と っ て 不 可 欠 な 活 動 を 行 っ て い た と して,GenevaはNovartisグ プ の 総 代 理 人(generalagent)で. ルー. あ る と 認 め,被. 野 ルー ルー. 告 ら に対 す る裁 判 管 轄 権. を 肯 定 した。. ⑤Collazov.Enter.Holdings,Inc.,823F.Supp.2d865(N.D.Ind.2011). イ ンデ ィ ア ナ 州 民 で あ る原 告Collazoは,ミ Holdings,Inc.及 で,プ. ズ ー リ州 法 人 た る被 告Enter.. び そ の プ エ ル ト リ コ 子 会 社 た る 被 告Prerac,lnc.と. エ ル ト リ コ 滞 在 中 に レ ン タ カ ー を 借 り る 契 約 を 締 結 し,そ. の間 の契約の. 一 部 と して 原 告 が プ エ ル ト リ コ の 空 港 か ら被 告 らの 店 舗 ま で トロ リー バ ス で 運 送 さ れ る 途 中 バ ス の 急 停 車 に よ り負 傷 し た と して,ネ. グ リジ ェ ン ス と. 契 約 違 反 を 理 由 に イ ン デ ィ ア ナ 州 に お い て 被 告 らを 訴 え た 。 こ れ に 対 し, 被 告 ら は,い て,対. ず れ も イ ン デ ィ ア ナ州 に お いて 事 業 活 動 を 行 って いな い と し. 人 管 轄 権 の 欠 鉄 を 理 由 に 訴 え 却 下 を 申 立 て た 。 原 告 は,被. す る 裁 判 管 轄 権 の 根 拠 に つ い て い くつ か の 主 張 を した が,そ. (66>14,at1166-1169.. 27. 告 ら に対. の 中の 一 つ が.

参照

関連したドキュメント

判決において、Diplock裁判官は、18世紀の判例を仔細に検討した後、1926年の

について最高裁として初めての判断を示した。事案の特殊性から射程範囲は狭い、と考えられる。三「運行」に関する学説・判例

10) Wolff/ Bachof/ Stober/ Kluth, Verwaltungsrecht Bd.1, 13.Aufl., 2017, S.337ff... 法を知る」という格言で言い慣わされてきた

指定管理者は、町の所有に属する備品の管理等については、

事  業  名  所  管  事  業  概  要  日本文化交流事業  総務課   ※内容は「国際化担当の事業実績」参照 

② 現地業務期間中は安全管理に十分留意してください。現地の治安状況に ついては、

ケース③

生活介護  2:1  *1   常勤2名、非常勤5名  就労継続支援B型  7.5:1+1  *2