Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
局部床義歯における咬合床を用いた咬合採得のポイント
は何ですか?
Author(s)
田中, 章啓; 山下, 秀一郎
Journal
歯科学報, 118(4): 362-364
URL
http://hdl.handle.net/10130/4679
Right
Description
1.局部床義歯における咬合床を用いた咬合採得 (咬合床) 咬合床は欠損部顎提や口蓋部に設けられる基礎床 と,歯列に相当する部分の咬合提とからなり,上下 顎の位置関係を記録し,さらに唇,頬などの外観の 回復程度や人工歯の排列位置を決めるために用いら れる。 基礎床の所要条件としては, 1)義歯床下粘膜面(作業用模型)と緊密に適合す ること 2)口腔内で温度や咬合圧によって変形しないこ と 3)完成義歯の義歯床に近似した外形線,厚さ, 辺縁形態を有すること などがあげられ,通常,常温重合レジンやシェラッ ク板が用いられる。 ただし,基礎床の外形線は可及的に広くして咬合 採得時の誤差を最小限に抑える必要があるために, 必ずしも完成義歯床の外形線とは一致しない。さら に基礎床の安定を図るため,残存歯に基礎床を接触 させた形態とする(図1)。 なお基礎床に残存歯が近接する部分には,着脱時 に模型を摩滅させないように十分なブロックアウト を施し,パラフィンワックスで残存歯と接触させ る。また骨隆起部,鋭縁部,粘膜肥厚部あるいは菲 薄部のリリーフも必要である。 咬合床の安定を得るために,残存歯の一部に暫間 的にクラスプを設けることもある。咬合堤の幅は残 存歯の頬舌径に合わせ,前歯部5mm,小臼歯部7 mm,大臼歯部10mm 程度とする。 (フレームワークを用いた咬合採得) 正確な顎間関係を記録するためには,適合性にす ぐれ,動揺の少ない咬合床が必要である。このため 作業用模型が完成後にフレームワークの設計が可能 な場合には,これをまず製作し,口腔内に試適後, 適合や咬合関係に問題がなければ,欠損部の維持格
臨床のヒント
Q&A
有床義歯補綴系
Q&Aコーナーは,東京歯科大学の3病院の臨床研修歯 科医から寄せられた質問に対しての回答です。回答は本 学3施設の専門家にお願い致します。内容によっては基 礎や臨床,あるいは歯科や医科と複数の回答者に依頼す る場合もあります。毎号掲載いたしますので,会員の皆 様もご質問がございましたら,ぜひ東京歯科大学学会ま でeメールかファックスで依頼していただきたいと存じ ます。必ずご期待に添えることと思います。今号は局部 床義歯における咬合採得に関する質問です。Question
局部床義歯における咬合床を用いた咬合採得のポイントは何ですか?Answer
図1 残存歯に接触させた形態とした基礎床 362 歯科学報 Vol.118,No.4(2018) ―102―子部に咬合堤を設けて咬合床として使用することが できる。 咬合床の付与されたフレームワークを口腔内に装 着し,咬合堤の調整を行ったあとに,残存歯の咬合 接触を参考に咬合位を求め記録する。 (咬合採得時のポイント) 咬合床を口腔内に装着し,咬合堤のワックスを添 加あるいは削除して,咬合堤の幅や頬,唇舌的な位 置などを調整する。さらに咬合堤の高さは対合歯と の間に約2mm の間隙があるように調整する。これ は咬合記録を行う際に,バイトワックスなどの軟ら かいワックスを添加するためである。 咬合提に添加したワックスは十分に軟化させ,ご く軽度な力で咬合記録が得られるようにすることが 肝要である。咬合採得時に咬合床に加わる咬合力に よって床下組織の顎堤粘膜には変位が生じる。咬合 堤のワックスの軟化が不十分で硬すぎると,咬合採 得時の咬合圧が印象採得時の印象圧よりも大きくな り,咬合床の過度な沈み込みが生じ,咬合床を模型 に戻したときに高くなる。つまり,採得した咬合高 径が高くなってしまう。補綴装置の種類にかかわら ず咬合記録を採得する場合には,できるだけ圧をか けないように行う。このステップの操作が適切に完 了したか否かは,口腔内の咬合接触関係と模型上で の咬合接触関係とが同一になっていることを目視下 でよく確認することが重要である1) 。 以下に下顎 Kennedy Ⅰ級欠損症例における咬合 採得の手順を示す(図2∼6)。 1)咬合堤の調整 咬合床を口腔内に試適し,咬合床が安定している ことを確認する。習慣性閉口位で静かに閉口させ る。その際に,対合歯との間に約2mm の間隙があ るように咬合堤の高さを調整する(図3)。 2)ワックスの軟化 咬合堤上に軟化したワックスを添加したのち,加 熱したワックススパチュラで咬合堤を均等に軟化す る(図4)。咬合堤の側壁を少し残して軟化すると, ワックスが流れない。 3)閉口 咬合床を口腔内に装着し,習慣性咬合位で静かに 閉口させる(図5)。 4)咬合状態の確認 残存歯での咬合が適正されていることを確認す る。軟化が足りなかったり,ワックスが多かったり すると咬合床が過度に加圧されてしまう。その場合 は再度軟化し,咬合採得を行う。 ワックス部分にエアーをかけ,ワックスを冷却し た後に,蠟堤部分を変形させないように口腔内より 咬合床を撤去する。 5)印記の確認 咬合堤に咬合面が印記されていることを確認す る。パラフィンワックスを冷却して硬化させる。 6)トリミング 咬合堤には咬頭頂の印記のみ残してトリミングす る。模型同士を浮き上がらずに咬合させるためであ る。 図2 下顎 Kennedy Ⅰ級欠損症例の作業用模型と咬合床 図3 約2mm の間隙を開けた咬合床 歯科学報 Vol.118,No.4(2018) 363 ―103―
2.咬合採得時終了時の確認事項 咬合採得を終了させるにあたり,以下の3点を確 認する。 1)作業模型の表面,咬合床の内面にワックスが付 着していないこと。 2)咬合床を模型に装着して上下顎模型を咬合させ ると,がたつかず安定していること。 3)口腔内と模型上の咬合接触関係が一致している こと。 Answer:田中章啓,山下秀一郎 東京歯科大学パーシャルデンチャー補綴学講座 文 献 1)スタンダードパーシャルデンチャー補綴学(藍 稔,五 十嵐順正 編),pp.203−214,学建書院,東京,2016. 2)平成27年度 局部床義歯学臨床基礎実習テキスト(山下秀 一郎 編),[東京歯科大学,東京,2015.] 3)平成30年度 局部床義歯学臨床基礎実習テキスト(山下秀 一郎 編),[東京歯科大学,東京,2018.] 図5 咬合床装着した閉口の口腔内 図4 均等に軟化させた咬合堤 図6 咬合床を装着した際の口腔内(左)と模型上(右)での比較 364 歯科学報 Vol.118,No.4(2018) ―104―