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Title
歯の問題を伴う不正咬合の矯正治療2.過剰歯を伴う不
正咬合について
Author(s)
野村, 真弓; 末石, 研二
Journal
歯科学報, 113(2): 118-120
URL
http://hdl.handle.net/10130/3070
Right
カ ラ ー ア ト ラ ス の 解 説
過剰歯の好発部位としては上顎前歯部等があげら
れる。正中離開や叢生等の不正咬合を生じる原因と
なる。過剰歯が永久歯の萌出障害ならびに歯根吸収
や嚢胞化の可能性が考えられる1,2)
。
過剰歯と永久歯との位置関係を把握するために,
画像検査として従来はパノラマ X 線撮影,デンタ
ル X 線撮影,偏心投影法等を用いていたが,近年
歯科用コンビーム CT の普及に伴い過剰歯と永久歯
との位置関係,周囲構造物との位置関係等を三次元
的により詳細に把握できるようになった。
上顎前歯萌出遅延や正中離開等の不正咬合が認め
られる場合,過剰歯の存在を疑う必要があり,パノ
ラマ X 線撮影を行い,過剰歯の存在を認めた場合
は歯科用コンビーム CT 撮影を行い精査する必要が
あり,多数の過剰埋伏歯を認める場合,鎖骨頭蓋異
骨症を疑う必要があると考えられる3,4)
。
今回,上顎前歯部に過剰埋伏歯を認めた正中離開
と叢生の症例を提示し,解説する。
症例1
症例は8歳5か月の男児。前歯の噛み合わせを主
訴として来院した。特記すべき全身疾患の既往はな
い。咬合状態は Vertical type,叢生,overjet −1
mm を示した。上顎左側中切歯は逆被蓋を示し,上
顎右側中切歯は萌出中であり,右側側切歯の萌出ス
ペースが不足している(図1)。 パノラマ X 線写真,
デンタル X 線写真所見では,上顎中切歯間と上顎
左側中切歯根尖部に過剰歯が2本認められ,上顎両
側中切歯歯根は1/2∼2/3程度の歯根完成が認められ
る(図2)。CT 画像所見では,上顎中切歯間口蓋側
に歯冠を口蓋側に向けて過剰歯の埋伏が認められ,
上顎右側中切歯歯頚部と接している所見が認められ
る。上顎左側中切歯根尖部口蓋側に歯冠を上方に向
けて過剰歯が認められ,左側中切歯根尖部と接し,
上方は鼻腔側と近接し,切歯管とも近接している所
見が認められる(図3−A,B)。
治療方針
早期治療を行うこととし,上顎前歯の被蓋改善,
正中離開の改善,歯列弓の拡大をはかることとした。
上顎中切歯間に認めた過剰歯が正中離開の原因と
考えられ,上顎左側中切歯根尖部口蓋側に認めた過
剰歯は上顎前歯の唇側傾斜をはかる場合障害となる
ことや鼻腔への萌出や嚢胞化が考えられ,また上顎
両側中切歯歯根は1/2∼2/3程度の歯根完成が認めら
れ過剰歯抜去時の歯根への影響は少ないと考えら
れ,抜歯の適応と考えられた。
症例2
症例は12歳の女児。叢生を主訴として来院した。
アレルギー性鼻炎を認め,その他特記すべき全身疾
患の既往はない。咬合状態は大臼歯関係左側 Angle
Ⅰ級,右側 AngleⅡ級,叢生,overjet
2mm,over-bite 4mm,上顎両側犬歯の低位唇側転位を認める
(図4)。パノラマ X 線写真,デンタル X 線写真所
見では,上顎右側中切歯根尖部と上顎左側中切歯根
尖部に過剰歯が2本認められる(図5)。CT 画像所
見では,上顎右側中切歯口蓋側に歯冠を鼻腔側に向
けて過剰歯が認められ,またその歯冠が一部鼻腔に
達しており,上顎右側中切歯と側切歯の歯頚部と接
している所見が認められる。上顎左側中切歯根尖部
口蓋側から第一大臼歯部に歯冠を向けて過剰歯が認
められ,鼻腔底と近接している所見が認められる(図
6−A,B)。
治療方針
本格矯正治療を行うこととした。マルチブラケッ
ト装置を用いて,上下顎両側第一小臼歯を4本抜去
し,治療を行うこととした。
上顎右側中切歯口蓋側に認めた過剰歯は歯冠が一
部鼻腔に達しており,また右側中切歯と側切歯の歯
頚部と接していることから,歯根吸収や鼻腔内への
萌出が考えられ,上顎左側中切歯根尖部口蓋側から
第一大臼歯部に認めた過剰歯は鼻腔底に近接してお
り鼻腔内への萌出が考えられる。過剰歯が鼻腔内に
萌出した場合,鼻症状として鼻閉,鼻出血,鼻漏等
を呈することがあり抜歯の適応と考えられた5)
。
治療
上顎過剰埋伏歯を全身麻酔下にて2本抜去し,そ
の後上下顎両側第一小臼歯を4本抜去し,マルチブ
ラケット装置を装着し矯正治療を行った。
動的矯正治療終了時の口腔内写真を図7に示す。
動的矯正治療期間は1年6か月であった。動的矯正
治療終了時のパノラマ X 線写真,デンタル X 線写
真所見では,上顎右側中切歯部に歯根吸収等の変化
は認められない(図8)。保定装置として上顎には
Begg type retainer,下顎には Fixed type retainer
を用いた。
動的矯正治療終了2年経過時のパノラマ X 線写
真,デンタル X 線写真所見では,上顎中切歯根尖
部の変化は認められず,過剰歯等の出現は認められ
ない。舌癖がいまだ残存しているため,口腔周囲筋
機能療法を行い,定期観察中である。上顎正中過剰
埋伏歯を抜去し,埋伏した上顎両側中切歯の開窓牽
引を行い,上下顎両側第一小臼歯を4本抜去し,マ
ルチブラケット装置による矯正治療を行い,その後
下顎両側小臼歯抜去部位にあらたに小臼歯様過剰歯
が出現したという報告6)
があるので,今後も定期観
察が必要である。
おわりに
上顎前歯萌出遅延や正中離開等の不正咬合が認め
られる場合,過剰歯の存在を疑う必要があり,パノ
ラマ X 線撮影を行い,過剰歯の存在を認めた場合
は歯科用コンビーム CT 撮影を行い精査する必要が
あると考えられる。
過剰歯が永久歯の萌出障害ならびに歯根吸収や嚢
胞化の可能性が懸念される場合は抜歯の適応と考え
られる。
文 献
1)澁井武夫,高野伸夫:小児歯科臨床において知っておき
たい口腔外科処置,小児歯科臨床,14⑸:38−47,2009.
2)伊藤綾子,倉重多栄,佐藤夕紀,藤本正幸,西平守昭,
松下 標,青山有子,平 博彦,丹下貴司,五十嵐清治:
埋伏過剰歯に由来した上顎正中部の含歯性嚢胞の1例,小
児歯科学雑誌,44⑷:591−597,2006.
3)佐野大輔,白水敬昌,瀬口信綱,宮地 斉,河合俊彦,
古川博雄,大林修文,加藤 勇,夏目長門:鎖骨頭蓋異骨
症の2例,愛知学院大学歯学会誌,38⑷:679−684,2000.
4)内田啓一,永山哲聖,新井嘉則,安河内知美,黒岩博子,
塩 島 勝:上 顎 過 剰 歯 の 精 査 に 歯 科 用 小 型 X 線 CT(3
DX)が有用であった1例,日本口腔診断学会雑誌,17⑴:
70−73,2004
5)小田明子,吉原俊雄:鼻腔内に萌出した逆生歯の1例,
耳鼻と臨床,44⑵:139−144,1998
6)太田義之,山本 学,田中章夫,中田利明,吉武一貞:
正中埋伏過剰歯を伴った両側上顎中切歯の埋伏と矯正治療
終了後に両側性に下顎小臼歯部に過剰歯を認めた希有なる
例,小児口腔外科,9⑵:71−76,1999
歯の問題を伴う不正咬合の矯正治療
2.過剰歯を伴う不正咬合について
野 村 真 弓,末 石 研 二
東京歯科大学歯科矯正学講座
図1 症例1:初診時 8歳5か月の男児,口腔内写真
上顎左側中切歯は逆被蓋を示し,上顎右側中切歯は萌
出中であり,右側側切歯の萌出スペースが不足している。
図3−A 症例1:初診時 CT画像(3次元構築画像)
上顎中切歯間口蓋側に歯冠を口蓋側に向けて過剰
歯の埋伏が認められる。過剰歯は上顎右側中切歯歯
頚部と接している所見が認められる(図3−A,B)。
図3−B 症例1:初診時 CT 画像
上顎左側中切歯根尖部口蓋側に歯冠を上方に向けて過剰歯が認
められる。過剰歯は左側中切歯根尖部と接し,上方は鼻腔側と近
接し,切歯管とも近接している所見が認められる(図3−A,B)。
図6−B 症例2:初診時 CT 画像
上顎左側中切歯根尖部口蓋側から第一大臼歯部に
歯冠を向けて過剰歯が認められる。過剰歯は鼻腔底
と近接している所見が認められる(図6−A,B)。
図5 症例2:初診時パノラマ X 線写真
上顎右側中切歯根尖部と上顎左側中切歯根尖部に
過剰歯が2本認められる。
図8 症例2:動的矯正治療終了時 パノラマ X 線写真
図2 症例1:初診時 パノラマ X 線写真
上顎中切歯間と上顎左側中切歯根尖部に過剰歯が
2本認められる。
図4 症例2:初診時 12歳の女児,口腔内写真
上顎両側犬歯の低位唇側転位を示し,叢生が認め
られる。
図6−A 症例2:初診時 CT 画像(三次元構築画像)
上顎右側中切歯口蓋側に歯冠を鼻腔側に向けて過剰歯が認めら
れ,またその歯冠が一部鼻腔に認められる。過剰歯は上顎右側中切
歯と側切歯の歯頚部と接している所見が認められる(図6−A,B)。
図7 症例2:動的矯正治療終了時 15歳3か月,口腔内写真
動的矯正治療期間は1年6か月。