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開発指標から開発統計学へ (すぐに役立つ開発指標の話 第24回)

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Academic year: 2021

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開発指標から開発統計学へ (すぐに役立つ開発指標

の話 第24回)

著者

野上 裕生

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

195

ページ

51-52

発行年

2011-12

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00004104

(2)

51

アジ研ワールド・トレンド No.195 (2011. 12)   この開発指標をテーマにした 連載も 、今回が最終回である 。 開発途上国を対象にした経済学 が﹁開発経済学﹂になり、しか も、 ﹁開発のミクロ経済学﹂ や﹁ 開 発マクロ経済学﹂も登場してき た。それならば、 ﹁開発統計学﹂ もあっていいのではないか。こ れがこの連載の動機であった 。 ﹁開発統計学﹂ というのは、 現在、 様々な領域で利用されている開 発 指 標 ︵ Development Indicators ︶の集合体にとどま らず、もっと一貫した方法論を 持った、学問体系としての﹁開 発の統計学﹂ができないのか 、 ということである。 ●近代国家建設と統計   統 計 指 標 は近 代国 家 、 国民国 家の 形 成 と 密 接 に 結 び つ い て い る。 ﹁ 年 表 ﹂ は 統 計 活 動 の 歴 史 的 変遷を 示 し た も の であ る 。 ヨ ー ロッ パ で 社 会 の 現 状 を 大 量 の 観 察によ る 数量 的 な 情 報 で 分 析 し ようと い う 機 運 が 生まれた の は 一六 〇 〇 年 代 半 ば と 言 わ れ て い る。 こ の 時 代 に は イ ギ リ ス でJ ・ グラ ント やW ・ ペ テ ィ が ﹁ 政 治 算術﹂ と い う 学 問 を 作 っ て 実 証 的な政治経済学 の 端緒 を 作 っ た 。 またド イ ツ で も 国 家 の 現 状 を把 握す る統計的 研究 が 始 ま り 、 フ ランスで も 統 計 学 の 基 礎 に あ る 確率論 の 端緒が 開 か れ た 。   このような事情は日本や現在 の開発途上国でも同じである 。 ただ、途上国の場合には植民地 時代にすでに統計活動が始まっ ている。たとえば独立後のイン ドの開発計画で重要な役割を果 たした統計学者マハラノビスた ちの活動は独立前から始まって いる。こうした先駆者の仕事の 上に、今日の途上国の統計活動 があることになる。 ● 開発途上国の統計活動の難 しさ   開発経済学の計量分析の第一 者 で あ る デ ィ ー ト ン ︵ Angus Deaton ︶は 、開発途上国の統 計に固有の難しさは自家就業に ある、と述べている。自営業者 や農家のように自分で経営もし て、 消費活動もしている家計は、 自分の私用目的の取引と事業の ための取引がはっきり区別でき ない。このような場合には所得 や利潤、賃金といった経済学の 概念に沿った統計がなかなか得 られない。そのために生産や販 売、購入の細かい情報を調査し て、それらを価格データを使っ て金額に直した上で積み上げて いくしかない。   このようにして得た ﹁生産﹂ や﹁所得﹂の統計は、家計の経 済的な豊かさのおおまかな指標 にはなるかもしれない。しかし ﹁利潤最大化﹂といった形で 、 自営業者や農家の経済行動を説 明する上で、どのくらい有益で あるかは、一概には言えないこ とになる。   ディー ト ン に よ れ ば 、 途 上 国 での 統 計 活 動 の も う 一 つ の 難 し さは 、 家 計 が 自 分 で 生 産 し た も のを 自 分 で 消 費 す る ︵ 市 場 を 経 由 し な い ︶﹁ 自家消費﹂ の 扱 い で あ る 。 自 家消費さ れ て い る 農産 物を金額 に直す に は 価 格 の デ ー タを何 ら か の 形 で 持 っ て く る こ とが 必 要 だが 、 こ れ は 非常 に 難 しい 。 と い う の は 、市 場 で の 経 済活動 が あ ま り 重 要な役割を し てい ない 農 村 での 農 家 の 経 済 活 動を 分 析 す る の に 、 市 場 で 取引 され て い る 財 貨 の 価 格 データ が 役立 つ と は 、 一 概 に は 言 え な い か ら で あ る 。 ま た 、 自家消費さ れている 財 貨 は 何 ら か の 形 で 帰 属計算 で き る が 、 自家消費さ れ ているの は 、 た と え ば 食 事 の 支 度の よ う な 家 庭 内 サ ー ビ ス も あ るから 、 こ れ ら の サー ビ ス 活 動 を 評価す る の は 非 常 に 難し い 。 ● 地球的視点から見た ﹁開発 と統計﹂   二一世紀の開発指標を考える 鍵となるのは ﹁地球﹂ ︵ global ︶ だと思われる 。﹁地球﹂という ことで思い出すのは、まず、地 球を形造る自然と環境に関する 統計である。もう一つは﹁地球 規模﹂で行われている経済活動 に対応した統計である。最後は ﹁地球規模﹂の問題に対応でき るように、統計活動分野での国 際協力である。   まず﹁自然と環境﹂への視点 だが、通常の社会経済統計に環 境への配慮が入ってきたのは先 進国では一九七〇年代で、アメ リカで環境劣化の影響も考慮し た ﹁経済福祉指標﹂ ︵MEW︶

すぐに役立つ開発指標の話

第24回

開発指標か

開発統計学

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野上

裕生

最終回

(3)

52

アジ研ワールド・トレンド No.195 (2011. 12) や ﹁持続可能な経済福祉指標﹂ ︵ISEW 、GPI︶といった 先駆け的な指標が作成された 。 一九九二年にリオデジャネイロ で開催された ﹁地球サミット﹂ で採択された行動計画﹁アジェ ンダ二十一﹂の実現に向けて 、 ﹁環境と開発﹂に関わる統計活 動も活発になっている。   また国際協力の指標もOEC Dの開発援助委員会 ︵DAC︶ を中心に行われてきた。開発途 上国への統計支援は国連創設以 来行われてきたが、国連総会で 二〇〇〇年九月にミレニアム開 発目標が採択された時期から一 層活発になってきた。国連統計 部、国連諸機関、OECDなど が二〇〇四年モロッコのマラケ シで協議して 、﹁ 統計に関する マ ラ ケ シ ュ 行 動 計 画 ﹂︵ The Marrakech Action Plan for Statistics MAPS︶を採択し た。また一九九九年一一月には 統計に関わる国際機関が協力し て統計活動の支援を行うコン ソーシアムとして PARIS 21 ︵ The Partnership in Statistics for Development in the 2 1 st Century ︶が発足した 。公表さ れた開発指標だけでなく、その 背景にある統計活動支援や統計 を通じた国際協力にも、人々の 関心が集まることを祈りたい。 ︵のがみ   ひろき/アジア経済 研究所   開発研究センター︶ ︽参考文献︾ 開 発 途 上 国 の 統 計 の 問 題 は Deaton, Angus [1995] Data and Econometric T ools for Development Analysis, in J. Behrman and T . N. Srinivasan eds. , V olume III A, Amsterdam: E lsevier , pp. 1785-1882 を参照した 。先進国 ・途 上国の統計活動の変遷や開発途 上国の統計活動支援は島村史郎 [二〇〇六] ﹃統計制度論︱日本 の統計制度と主要国の統計制 度﹄ 、日本統計協会、 絵所秀紀 [二 〇〇二] ﹃開発経済学とインド ︱独立後インドの経済思想﹄日 本評論社、倉林義正・作間逸雄 [一九八〇] ﹃国民経済計算﹄東 洋経済新報社、作間逸雄編[二 〇〇三] ﹃SNAがわかる経済 統計学﹄有斐閣、暉峻淑子[一 九八九] ﹃豊かさとは何か﹄岩 波書店、 細野助博 [一九八七] ﹃社 会統計学概説﹄共立出版、竹本 和彦 ・ 森口祐一 [一九九八] ﹁﹃ 持 続可能な発展﹄ という概念﹂ ︵内 藤正明・加藤三郎編﹃岩波講座   地球環境学 10  持続可能な社 会システム﹄岩波書店︶ 、八七 ︱一二六ページ 。﹁統計に関す るマラケシュ行動計画﹂は﹃国 連 ミ レ ニ ア ム 開発 目標報告 二 〇 〇八 ﹄ www .u n ic.o r.j p/pdfM DG_ Report _ 2008_ J.P FD ︵二〇 一 一 年一〇 月 六 日 ア ク セ ス ︶、 PARIS 21 は h tt p ://www .p a ros2 1 .o rg . ab out ︵ 二 〇一 一年一〇 月 六 日 ア ク セ ス ︶ で も 情 報が 得 ら れる。 1662年 グラント『死亡率に関する自然的および政治的考察』公刊 1691年 ペティ『政治算術』公刊 1857年 エルンスト・エンゲルが家計調査を分析し、「エンゲル係数」を導出 1912年 ジーニ係数が提案される 1920年 日本で第一回国勢調査(大正9年) 1931年 インドのカルカッタ(コルカタ)でインド統計研究所が設立される 1944/45年 統計学者マハラノビスらにより「1943年ベンガル飢饉の後遺症のサンプルサーベイ」が実施される 1947年 国際連合統計委員会発足。日本で統計法が制定公布される(3月26日) 1949年 マハラノビスがインド政府の内閣名誉統計顧問に任命される 1950年 ネルーの賛同を得て、マハラノビスの指導の下でインドにおいて全国レベルのサンプルサーベイを実施 する「全国標本調査」(NSS)が設立される 1952年 中国の国務院に国家統計局設置 1953年 国際連合統計委員会でSNAが採択される 1968年 国連で新しいSNAが採択される 1970年 国連統計局とペンシルヴァニア大学の協同による国民経済計算比較の最初の研究成果が公刊される 1972年 ノードハウスとトービンのMEW公表 1983年 中国で統計法制定 1989年 デーリーとコブのISEW公表 1990年 UNDPが人間開発指数(HDI)公表 1993年 国連で93SAN採択される 2000年 ミレニアム開発目標が採択 2003年 世界開発センターが開発貢献度指標(CDI)を公表 開発指標の展開に関する年表 (出所)参考文献にある資料から筆者作成。

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