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中国生産システム発展におけるアーキテクチャ選択戦略─アーキテクチャの現状と個別企業技術の成長を中心に─

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(1)

中 国生 産 シ ス テ ム発 展 にお け る

ア ー キ テ クチ ャ選 択 戦 略

アー キ テ クチ ャの現 状 と個 別 企業 技 術 の成 長 を中心 に

目 次 1.問 題 提 起 一 中 国 製 造 業 の ア ー キ テ ク チ ャ=「 疑 似 オ ー プ ン ・モ ジ ュ ラ ー 」 で あ る か? H.ア ー キ テ ク チ ャ の 現 状 と個 別 企 業 技 術 の 成 長 一 疑 似 オ ー プ ン ・モ ジ ュ ラ ー 論 を 超 え て 1ア ー キ テ ク チ ャ の 国 際 化 形 成 に よ る 中 国 製 造 業 へ の 影 響 2ア ー キ テ ク チ ャ の 変 遷 か ら見 る 個 別 企 業 技 術 の 成 長 2-1.モ ジ ュ ー ル 化 の 影 響 で 成 長 し たPCメ ー カ ー 一 レ ノ ボ 2-2.モ ジ ュ ラ ー 型 で 成 長 した 家 電 メ ー カ ー 一 ハ イ ア ー ル 2-3.イ ン テ グ ラ ル 型 と モ ジ ュ ラ ー 型 の2本 柱 で 成 長 す る メ ー カ ー 一 大 陽 オ ー トバ イ 皿.結 論

1.問

題 提 起 一 中 国 製 造 業 の ア ー キ テ ク チ ャ=「

疑 似 オ ー プ ン ・モ

ジ ュ ラ ー 」 で あ る か?

ア ー キ テ ク チ ャ論 に関 す る先 行 研 究 で は,中 国 が 得 意 とす る の は 「

疑 似

オ ー プ ン ・モ ジ ュ ラー 型 」')で

あ る とす る静 態 的 な 考 え が 一般 的 で あ っ た 。 し

か し,こ れ らの 議論 は あ る発 展 段 階 を背 景 と した理 論 形 成 に止 ま っ た の み で

1)藤 本 隆 宏 新 宅 純 二 郎 編 「中 国 製 造 業 の ア ー キ テ クチ ャ 分 析 』 東 洋 経 済 新 報 社 2005年 。10-17頁 を参 照 。 キ ー ワ ー ド:ア ー キ テ ク チ ャ,ハ イ ア ー ル,レ ノ ボ,大 陽 オ ー トバ イ,技 術 の 成 長

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山学 院大学 経済 経営 論集

第56巻 第1号

は ない か2)?な ぜ な らば,中 国 は 「

疑 似 オ ー プ ン ・モ ジ ュ ラ ー型 」 に基 づ く

「コ ピー ・改 造 」 と して の 「

模 倣 段 階 」 に ず っ と居 続 け る と い う前 提 が あ る

よ うに 思 わ れ る か らで あ る 。

中 国 製 造 業 は 多様 化 な 国 内 消 費者 ニ ー ズ の進 化 を 追 い か け な け れ ば な らな

い た め,同

じ企 業 内 で 単純 な 一種 類 の生 産 シ ス テ ム だ け で は激 しい競 争 の 中

で 生 き残 れ る だ ろ う か,と い う疑 問 が 生 じる。 中 国 製 造 業 は,ア ー キ テ ク

チ ャの 選択 戦 略 と して,も は や単 純 に 一 つ だ け選 択 す る の で は な く,多 様 な

選択 をす る段 階 に 来 て い る の で は な い か?

1980年 代 初 め か ら の 「

改 革 ・開 放 」 政 策 で は,先 進 技 術 を学 ぶ た め に外

資系 企 業 の 直接 投 資 を望 ん だ が,当 時 の労 働 者 の技 術 レベ ル は ほ ぼ ゼ ロ に近

か っ た 。 そ の た め,初 期 に発 展 した 産業 は,大 量 の労 働 力 が必 要 で技 術 や設

備 の 依存 性 が低 い もの,例 え ば伝 統 的雑 貨,服

や お もち ゃ,農 産物 等 で あ っ

た 。

1990年 代 に入 る と,第7次5力

年 計 画 に よ る 国 民 生 活 の 向 上 と消 費 市 場

の 拡 大 の 関係 で,中 国 国 内 に お い て家 電製 品 の 需要 が増 え,品 質 が 良 い 日本

の 家 電 製 品 は 大 人 気 で あ っ た 。 しか し,90年

代 後 半 に な る と中 国 メ ー カ ー

が 台 頭 した3)。そ の 要 因 は,生 産 管 理 能 力 向上 に よ る 品質 向 上,生 産 規 模 拡

大 に よる コス ト低 減,販 売 網 や サ ー ビス網 の構 築 の3つ だ が,そ れ 以上 に重

要 な の は 中 国 メ ー カ ー の急 速 な キ ャ ッチ ・ア ップ を可 能 に した 産業 構造 の変

2)藤 本 理 論 が あ る発 展 段 階 を背 景 と した理 論 形 成 に止 ま っ て い る こ とへ の指 摘 につ い て,下 記 の文 献 を参 照 。 ① 沼 上 幹 「議 論 の た めの ノ ー ト 「経 営 学 の貢 献 と反 省:サ ブ テ ー マH事 業 論 』」 (経営 学 史 学 会 第20回 記 念 全 国 大 会 統 一 論 題 討 論 者 コ メ ン ト,2012年5月26 日,明 治 大 学 駿 河 台 校 舎),「 経 営 学 史 学 会 第20回 記 念 全 国 大 会 予 稿 集』1-5 頁 を参 照 。 ② ア ー キ テ クチ ャの 転 換 は イ ンテ グ ラ ル か らモ ジ ュ ラ ーへ の一 方 向性 の もの で は な い。 青 島 らは,「 モ ジ ュ ラ ー 化 と統 合 化 に はそ れ ぞ れ 利 点 と 欠 点 が あ る為, そ の どち らが 強 く出 るか に よ っ て,シ ス テ ム は統 合 化 に 向 か っ た りモ ジ ュ ラ ー 化 に 向か っ た りす る」 と も述 べ て い る。 藤 本 隆弘 武 石 彰 青 島矢 一 編 「ビ ジ ネ ス ・ア ー キ テ ク チ ャ:製 品 ・組 織 ・プ ロ セ ス の 戦 略 的 設 計 』 有 斐 閣2001 年 。45頁 を参 照 。 3)丸 川 知 雄 『現 代 中 国 の 産 業:勃 興 す る 中 国 企 業 の 強 さ と脆 さ』 中 央 公 論 新 社 2007年 。

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中 国 生 産 シ ス テ ム 発 展 に お け る ア ー キ テ ク チ ャ 選 択 戦 略

化 で あ る 。 つ ま り,時 間 と コス トを か け て 自 ら基 幹 部 品 を 開発 す る よ り も,

外 資系 の 有 力 メ ー カ ー や安 い メ ー カ ー の 部 品 ・模 倣 部 品 を組 み合 わせ て消 費

者 の 需 要 に 合 っ た 製 品 を手早 く開発 した 方 が い い とい う考 え で生 ま れ た 産業

構造 で あ る(こ の よ うな構造 は,や が て,の ち に 海外 の ア ー キ テ ク チ ャ論 者

た ち に よっ て 疑似 オ ー プ ン ・ア ー キ テ ク チ ャ と呼 ば れ,ア ー キ テ ク チ ャ議 論

の 中 に位 置付 け て論 じ られ る こ と とな る)。

さ らに,IT産

業 に関 す る コ ン ピュ ー タ産 業 政 策 の 大 転 換 が あ った4)。1993

年 の 国 内事 業 開 放,つ

ま り信 息 産 業 部 以 外 の 国 内 事 業 者 へ の事 業 開 放 で あ

る 。 ポ ケ ベ ル の 大 発展 が もた ら され,つ い で携 帯 電話 の急 激 な発 展 が 開始 さ

れ た 。1995年 には 商 用 イ ン ター ネ ッ ト事 業 が 開 始 され た 。90年 代 後 半 以 降,

政 府 の 支 援 もあ っ て,レ ノ ボ(聯 想)を

中 心 とす る 国 産 コ ン ピ ュ ー タ メ ー

カ ー 主 導 の 市場 が 形 成 され て い っ た 。情 報 化 の推 進 に つ い て は 第9次5力

計 画(1996年

∼2000年)5)に お い て 「

金 字 工 程 」 を 中 心 とす る経 済 情 報 化 の

推 進 が 大 き く謳 わ れ た 。 第10次5力

年 計 画(2001年

∼2005年)6)で は 「

情 報

4)こ の 事 情 につ い て は,下 記 の書 に詳 し く紹 介 さ れ て い る。 ① 田英 夫 編 者 『中 国 の コ ン ピ ュ ー タ産 業 』 晃 洋 書 房2001年 。 ② 北 村 嘉 行 編 『中 国工 業 の地 域 変 動 』 大 明堂2000年 。 ③ 中 川 涼 司 「中 国 のIT産 業:経 済 成 長 方 式 転 換 の 中 で の 役 割』 ミ ネ ル ヴ ァ書 房2007年 。 ④ 安 室 憲 一 『徹 底 検 証 中 国企 業 の 競 争 力:「 世 界 の 工 場 」 の ビ ジ ネ ス モ デ ル』 日 本 経 済 新 聞社2003年 。 5)第9次5力 年 計 画 にお け る情 報 化 推 進 問 題 につ いて は,下 記 の 文 献 を参 照 。 ① 株 式 会 社 野 村 総 合 研 究 所 編 「ア ジ ア諸 国の 産 業 発 展 戦 略 』 野 村 総 合 研 究 所 情 報 リ ソ ー ス部1996年 。 ② 王 曙 光 『中 国製 品 な しで生 活 で きます か』 東 洋 経 済 新 報 社2002年 。 ③ 安 室 憲 一 『徹 底 検 証 中 国企 業 の 競 争 力:「 世 界 の 工 場 」 の ビ ジ ネ ス モ デ ル』 日 本 経 済 新 聞社2003年 。 ④ 津 上 俊 哉 『中 国台 頭 一 日本 は何 を なす べ きか 』 日本 経 済 新 聞社2003年 。 ⑤ 範 建 亭 『中 国 の 産 業 発 展 と 国 際 分 業:対 中 投 資 と技 術 移 転 の 検 証 』 風 行 社2004年 。 ⑥ 陳 錦 華 著/杉 本 孝 訳 『国事 憶 述:中 国 国家 経 済 運 営 の キ ー パ ー ソ ンが 綴 る現 代 中 国 の産 業 ・経 済 発 展 史 』 日中経 済 協 会2007年 。 ⑦ 陳 晋 「中 国製 造 業 の競 争 力 』 信 山社 出版2007年 。 6)第10次5力 年 計 画 にお け る情 報 化 推 進 問 題 につ い て,下 記 の 文 献 を参 照 。 ① 丸 川 知 雄 編 『中 国産 業 ハ ン ドブ ック2001-2002年 版 』 蒼蒼 社2000年 。 ② 丸 川 知 雄 編 『中 国産 業 ハ ン ドブ ック2003-2004年 版』 蒼蒼 社2003年 。

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山学 院大学 経済 経営 論集

第56巻 第1号

化 が 工 業 化 を牽 引 す る」 とい う位 置 づ け が 与 え ら れ,実 際 に世 界 第1位

ユ ー ザ 数 を誇 る携 帯 電話 に代 表 され る急 速 な発 展 が見 られ た 。

そ の 急 速 な発 展 も産 業 構 造 の 変 化 に あ る。 そ の 変 化 は,IT産

業 の発 展 に

よっ て 生 まれ た モ ジ ュ ー ル化 原 則 で あ る7)。特 に 製 造 業 に お い て,以 前 は高

級 製 品 で あ っ た もの が,モ ジ ュ ー ル化 原則 に よ り,標 準 化(規 格 化)さ

れ た

部 品 を汎 用化 し,量 産化 が 可 能 に な り,市 場 を拡 大 して い く事 に な っ た 。 モ

ジ ュー ル化 の 原 則 は,1980年

代 後 半 か ら先 進 国 の 企 業 が 安 価 な 労 働 力 の 活

用 に よる コス ト削 減 の為,中

国へ 投 資 を開始 す る と共 に,本 格 的 に 中 国 の産

業構造 へ 導 入 した 。 第7次5力

年計 画 に よ り導 入 され た技 術 国 産化 の促 進 に

よっ て,企 業 間 の競 争 は 次 第 に激 し くな り,政 府 の 関与 は弱 ま っ て,製 品 の

普 及 率 は急 速 に 高 まっ た 。 そ れ の 影響 で,① 単 純 大 量 生 産 を形 成,② 特 に 中

国 家 電 産 業 に お け る 製 品供 給 は 日本 家 電 メ ー カ ー の買 手 市 場 に転 換 ・中 国 で

垂 直 非統 合 型 ・労働 集約 モ ジ ュ ラ ー型 に形 成 され た8)。

筆 者 は,疑 似 オ ー プ ン ・ア ー キ テ ク チ ャや モ ジ ュ ー ル化 とい う語 を,日 本

に 来 て初 め て 知 っ た 。 「日本 にお け る比 較 産 業 論 」(池 田信 夫,国 領 二 郎,藤

③ 丸 川 知 雄 編 『中 国産 業 ハ ン ドブ ック2005-2006年 版』 蒼 蒼社2006年 。 ④ 陳 錦 華 著/杉 本 孝 訳 『国事 憶 述:中 国 国家 経 済 運 営 の キ ー パ ー ソ ンが 綴 る現 代 中 国 の産 業 ・経 済 発 展 史 』 日中経 済 協 会2007年 。 ⑤ 陳 晋 『中 国製 造 業 の競 争 力 』 信 山社 出版2007年 。 ⑥ 苑 志 佳 「先 端 技 術 開発 の可 能 性一 中 国IT産 業 発 展 モ デ ル を め ぐ って 」 『平 成 十 五 年 度 中 国経 済 の持 続 的発 展 の可 能 性 に 関す る調 査 研 究 報 告 書 』2004年3 月 。 7)モ ジ ュ ー ル化 原 則 につ い て,下 記 の文 献 を参 照 。 ① 青 木 昌彦 安 藤 晴 彦 編 「モ ジ ュ ー ル化:新 しい産 業 ア ー キ テ クチ ャ の本 質 』 東 洋 経 済 新 報 社2002年 。 ② 池 田 信 夫 「情 報 技 術 と組 織 の ア ー キ テ ク チ ャ:モ ジ ュ ー ル 化 の 経 済 学 』NTT 出版2005年 。 ③ サ 暁 悉 『モ ジ ュ ー ル 化 と 中 国PC産 業 』[桃山学 院 大 学]2008(桃 山 学 院 大 学 大 学 院経 営 学 研 究 科 修 士 論 文)桃 山学 院大 学 図書 館 資 料ID:00689644。 ④ 安 藤 晴 彦 元 橋 一 之 「日本 経 済 競 争 力 の構 想:ス ピ ー ド時 代 に挑 むモ ジ ュ ー ル 化 戦 略 』 日本 経 済 新 聞社2002年 。 ⑤ 平 松 茂 実 「モ ジ ュ ー ル化 グ ロ ーバ ル経 営 論 』 学 文 社2011年 。 ⑥ 田 中辰 雄 『モ ジ ュ ー ル化 の終 焉:統 合 へ の 回帰 』NTT出 版2009年 。 8)丸 川 知 雄 『現 代 中 国 の 産 業:勃 興 す る 中 国 企 業 の 強 さ と脆 さ』 中 央 公 論 新 社 2007年 。

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中 国 生 産 シ ス テ ム 発 展 に お け る ア ー キ テ ク チ ャ 選 択 戦 略 本 隆 宏 な ど)や カ ー リ ス ・Y・ ボ ー ル ドウ ィ ン=キ ム ・B・ ク ラ ー ク(Carliss Y.Baldwin&KimB.Clark)の[Baldwin,Carliss&KimB.Clark(2000)]の 書 物 『ThePowerofModularity,MassachusettsInstituteofTechnology.』 が 直 接 の 対 象 と し て 扱 っ て い る の は コ ン ピ ュ ー タ 産 業 で あ る が,1990年 代 半 ば か ら,日 本 に お い て,IT産 業 や 自 動 車 産 業 に 焦 点 を 絞 っ た モ ジ ュ ー ル 化 論 が 独 自 に 発 展 し た 。 日 本 で 初 め て,知 識(設 計)と 生 産 物 の モ ジ ュ ー ル 化 が 情 報 交 換 と取 引 の ネ ッ トワ ー ク 化 と 表 裏 一 体 的 に 発 展 し て い く論 理 構 造 を 明 らか に し,そ の 産 業 ア ー キ テ ク チ ャ 的 含 意 を 体 系 的 に 論 じ た 書 物 と し て,『 オ ー プ ン ・ネ ッ トワ ー ク 経 営 』 国 領(1995年),『 情 報 通 信 革 命 と 日本 企 業 』 池 田(1997年)が あ る 。 こ の 産 業 ア ー キ テ ク チ ャ 論 を 研 究 し続 け て い る の が,藤 本 で あ る 。 『製 品 開 発 力 』(1993年,共 編 著),『 生 産 シ ス テ ム の 進 化 論 』(1997年),『 ビ ジ ネ ス ・ア ー キ テ ク チ ャ』(2001年,共 編 著),『 日本 の も の 造 り哲 学 』(2004年) な ど が あ る 。 彼 は,日 本 の も の づ く りの 強 み は,得 意 な(相 性 が よ い)ア ー キ テ ク チ ャ(オ ペ レ ー シ ョ ン重 視 の 擦 り合 わ せ 型 製 品)と 歴 史 的 に 偏 在 す る 組 織 能 力(現 場 の 統 合 力 が 偏 在)で あ る こ と を 提 唱 し た 。 さ ら に,ア ー キ テ ク チ ャ の 産 業 地 政 学 に お け る 比 較 優 位 論 で,ヨ ー ロ ッパ や ア メ リ カ,韓 国, 中 国,ア セ ア ン の 得 意 な ア ー キ テ ク チ ャ と組 織 能 力 の 偏 在 を 分 析 し た 。 そ こ で は,中 国 の 得 意 な ア ー キ テ ク チ ャ は 労 働 集 約 的 な オ ー プ ン ・モ ジ ュ ラ ー 製 品 で あ り,偏 在 す る 組 織 能 力 は 出 稼 ぎ労 働 者 の 動 員 力 で あ る と さ れ た9)。 し か し,2004年 以 後,過 熱 気 味 に 急 成 長 す る 中 国 経 済 が,国 際 原 材 料 市 場 の 需 給 バ ラ ン ス を崩 し 原 材 料 価 格 高 騰 の 一 因 と な る と い う新 し い 現 象 が 加 9)藤 本 の主 張 につ い て は,下 記 の書 を参 照 され た い。 ① 藤 本 隆 弘 武 石 彰 青 島矢 一 編 『ビ ジ ネス ・ア ー キ テ クチ ャ:製 品 ・組 織 ・プ ロ セ ス の戦 略 的設 計 』 有 斐 閣2001年 。 ② 藤 本 隆 宏 「日本 の もの 造 り哲 学 』 日本 経 済 新 聞社2004年 。 ③ 藤 本 隆 宏 新 宅 純 二 郎 編 「中 国製 造 業 の ア ー キ テ ク チ ャ分 析 』 東 洋 経 済 新 報 社2005年 。 ④ 藤 本 隆 宏 中沢 孝 夫 編 「グ ロ ーバ ル化 と 日本 の ものづ く り』 放 送 大 学 教 育 振 興 会2011年 。

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山学 院大学 経済 経営 論集

第56巻 第1号

わ り,イ ン フ レ要 因 と して 警戒 され る よ うに な っ た 。 さ らに,中 国企 業 が 国

際 分 業 の 中 で担 うの は,ス マ イ ル カ ー ブ の ボ トム 部分 で あ る低 付 加 価 値 部 分

が 多 い 上 に,国 際 的 に急 激 に 進行 す る低 価 格 化 と技 術 的 陳腐 化 に よっ て,利

幅 も小 さ く繁 栄 の期 間 も短 い プ ロ ダ ク トサ イ ク ル が繰 り返 され て い る部 分 も

あ っ た 。 サ ー ビス ・生 産 コス ト ・購 買 戦 略 に お け る優 位 性 へ の依 存 だ け で は

大 手 企 業 とい え ど も外 国 ラ イバ ル に決 定 的 な 差 をつ け ら れ ず,し か も,モ

ジ ュ ラー 型 製 品 開発 力 の 限界 が あ り,モ ジ ュ ー ル化 へ の依 存 の しす ぎが独 自

の 製 品 開発 能 力 の 構 築 を 遅 らせ た 。 貧 富 差 や 高 齢 化 等 の 社 会 問 題 も発 生 し

た 。 こ う して,出 稼 ぎ労働 者 を使 い安 い製 品 を作 る とい う 「

世 界 の工 場 」 と

して の 中 国 が 終 焉 を迎 え よ う と して い る 。

筆 者 は2004年

当 時,藤 本 の理 論 に 対 して興 味 を持 ち始 め た 。 近 年,ア

キ テ クチ ャの発 想 か ら中 国企 業 の 強 み や競 争 力 を分 析 す る 人 も多 い が,彼

が 基 礎 とす る の は,や

は り藤 本 の 理 論 で あ る 。 『

中 国 製 造 業 の ア ー キ テ ク

チ ャ分析 』(2005年

共 編 著)は 彼 ら と藤 本 の 共 同 研 究 の成 果 で あ る。 中 国

の 李 春利,陳

晋彼 らは動 態 分 析 ・比 較 分 析 ・プ ロ セ ス分 析 の視 点 か ら中 国 自

動 車 の ア ー キ テ ク チ ャ とそ の 変 遷 や 製 品 開発 を研 究 し,葛 東 昇 は 中 国 オ ー ト

バ イ 産 業 の事 例 か ら疑 似 オ ー プ ン ・ア ー キ テ ク チ ャ と技 術 的 ロ ック イ ンを分

析 し,欧 陽 桃 花 は動 態 分 析 ・比 較 分 析 ・プ ロ セ ス 分 析 の 視 点 か ら家 電 メ ー

カ ー ・ハ イ ア ー ル の 製 品 開 発 を分 析 した 。 そ の研 究結 果 と して,ア ー キ テ ク

チ ャ概 念 を中 国 生 産論 に応 用 す る基 本枠 組 み を提 示 す る 。 ク ロ ー ズ ド ・イ ン

テ グ ラ ル 型(擦

りあ わ せ 型),ク

ロ ー ズ ド ・モ ジ ュ ラ ー 型,オ

ー プ ン ・モ

ジ ュ ラ ー 型 とい う ア ー キ テ ク チ ャ の3基 本 類 型 を示 し,中 国 に お い て は

「ア ー キ テ クチ ャ の換 骨 奪 胎 」 に よ る 「

疑 似 オ ー プ ン ・ア ー キ テ クチ ャ化 」

とい う現 象 が 多 く見 られ る が,こ れ は 中 国 産業 の競 争 力 の ダ イ ナ ミ ック ス に

大 き く影響 す る こ と を指摘 す る 。 さ らに,今 後,中 国 の製 造 業 は 「

疑 似 オ ー

プ ン ・ア ー キ テ ク チ ャの 膠 着状 態 」 か ら,ど の よ うに変 化 して い くの だ ろ う

か とい う疑 問 に対 して,4つ

の答 え を推 理 した 。 ① 疑 似 オ ー プ ン ・ア ー キ テ

クチ ャの 膠 着状 態 か ら,当 分 の 間,脱 却 で きな い 。② 真 性 オ ー プ ン ・モ ジ ュ

(7)

ラ ー 型 へ 転 換 。 ③ ク ロ ー ズ ド ・モ ジ ュ ラ ー 型 へ 移 行 。 ④ ク ロ ー ズ ド ・イ ン テ グ ラ ル 型 へ の 回 帰 。 さ ら に,中 国 に お け る 今 後 の 製 品 ・工 程 ア ー キ テ ク チ ャ の 進 行 を 見 極 め て い く こ と は,日 本 企 業 の 中 国 戦 略 に と っ て の 重 要 課 題 で あ る1°),と 強 く指 摘 し た 。 彼 ら の 研 究 が,中 国 製 造 業 の ア ー キ テ ク チ ャ の 革 新 に 対 し て,重 要 な 意 味 を 持 つ こ と は 否 定 で き な い 。 し か し,こ こ で 歴 史 的 考 察 を 加 え た い 。 日本 製 造 業 が イ ン テ グ ラ ル 型 生 産 ス タ イ ル を 形 成 し た 要 因 の 一 つ は,高 度 成 長 期 に 国 内 の 消 費 ニ ー ズ に 絞 っ て 製 品 開 発 へ 力 を 入 れ た 事 で あ る 。 こ れ は,限 ら れ た 市 場 規 模 で 企 業 間 競 争 が 激 し く,消 費 者 の 要 求 に 応 え る た め 製 品 の 機 能 ・ 品 質 等 に 次 々 と研 究 ・開 発 能 力 を擦 り合 わ せ し た 結 果 で は な い か 。 中 国 製 造 業 に も 同 じ要 因 が あ る の で は な い か 。 富 裕 層 の い な い1990年 代 に は 消 費 能 力 が 低 い 消 費 層 に 集 中,依 存 で き, ① の 疑 似 オ ー プ ン ・ア ー キ テ ク チ ャ が 低 消 費 ニ ー ズ の 消 費 者 中 心 に 形 成 さ れ,製 造 業 は 一 気 に 成 長 で き た 。 そ の 消 費 ニ ー ズ が 存 在 す る う ち は,疑 似 オ ー プ ン ・ア ー キ テ ク チ ャ の 存 在 も続 くだ ろ う 。 し か し,あ ま り 高 い 商 品 は 買 え な い が 偽 物 や 品 質 が 悪 い 商 品 は も う結 構 と い う,小 康 層(中 間 消 費 層) が 年 々増 え て お り,② 真 性 オ ー プ ン ・モ ジ ュ ラ ー 型 と③ ク ロ ー ズ ド ・モ ジ ュ ラ ー 型 製 品 の ニ ー ズ,市 場 の 存 在 も否 定 で き な い 。 近 年 先 進 国 で も注 目 す る 中 国 の 富 裕 層 の 成 長 と共 に,彼 ら の ニ ー ズ へ の 対 応 も 必 要 に な る 。 ま た,中 国 の 多 国 籍 企 業 に お い て は ハ イ ア ー ル や レ ノ ボ の よ う に 先 進 国 へ の 進 出 も あ り,製 品 を 差 別 化 し 富 裕 層 に 対 応 可 能 な 製 品 も提 供 し な い と成 長 で き な い 。 そ の た め 近 年,製 造 業 の ア ー キ テ ク チ ャ は ④ ク ロ ー ズ ド ・イ ン テ グ ラ ル 型 へ 変 化 の 兆 し が あ る1')。 現 時 点 に お い て,3つ の 消 費 顧 客 層 に 対 応 す る た め,中 国 製 造 業 に お い て 10)藤 本 隆 宏 新 宅 純 二 郎 編 「中 国 製 造 業 の ア ー キ テ ク チ ャ 分 析 』 東 洋 経 済 新 報 社 2005年 。 ll)藤 本 は,ア ー キ テ ク チ ャが ダ イ ナ ミ ック に移 行 す る 事 の 背 景 に,「 ア ー キ テ ク チ ャ を 決 め る の は 究 極 的 に は顧 客 で あ る」 と い う考 え 方 が あ る事 を 指 摘 して い る。 「変 化 や 多 様 性 を好 む顧 客 は モ ジ ュ ラ ー 型 製 品 を,統 合 性 や 洗 練 性 を好 む顧 客 は イ ン テ グ ラ ル型 製 品 を好 む傾 向が あ る」。 藤 本[2002],31頁 を参 照 。

(8)

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山学 院大学 経済 経営 論集

第56巻 第1号

は,以 上4つ の ア ー キ テ クチ ャが 同 時 に存 在 して い る と考 え られ る。 しか

し,現 時 点 の 実 力 条件 に お い て は,ひ た す ら利 益 を 追 求 し 「

不 適 切 」 な技 術

成 長 に よ り長期 的 な技 術 成 長 の 可 能性 を失 うか も しれ な い 。

さ らに歴 史 的視 点 か ら考 え て み た い 。戦 後,人

・金 ・物 不 足 の市 場 の急 成

長 に 直 面 した 日本 は,経 済合 理 的 に 長期 取 引 ・長期 雇 用 を選 択 し,そ の帰 結

と して 「

統 合 力 」(チ ー ム ワ ー ク型 の 組 織 能 力)が 構築 さ れ て お り,設 計 情

報 を転 写 の 難 しい媒 体 に転 写 す る作 業 が得 意

と され た 。 ア メ リカ は,移 民

文 化 の 影 響 で 個 性 を重 視 す る 優 れ た ア イ デ ア を生 み 出 す 事 に 長 け て い る の

で,後 で転 写 の 容易 な媒 体 さえ あ れ ば 強 い製 品 を つ くる事 が で きる,と

され

た 。 中 国 は,多 民族 多 文化 が存 在 して い る が,主 流 の 漢民 族 に は商 人 的 な模

倣 主 義 の組 織 的特 徴 が あ り12),「

コ ピー ・改 造 」 が 得 意,と

され た 。

しか し,後 発 国 に お い て あ る技 術 ・産業 分 野 を 立 ち上 げ る に は,先 行 した

国 ・企 業 を模 倣 す る段 階 が 必 ず あ る。 さか の ぼ れ ば 日本 メ ー カ ー も,欧 米

メー カ ー の や り方 を模 倣 し,キ ャ ッチ ・ア ッ プす る 戦 略 を採 っ て,追 い つ

き,分 野 に よ っ て は抜 き去 っ た の で は な い か 。 た だ し,「模 倣(コ

ピ ー)文

化 」 を持 つ 中 国 は,先 進 国 に キ ャ ッチ ・ア ッ プ す る こ とが で き る の だ ろ う

か?

これ まで の 議論 で は,単 な る 「コ ピー ・改 造 」 で は,構 造 設 計 を繰 り返 す

だ け で機 能 設 計へ の 追体 験 を伴 わ な い た め,製 品 開発 を行 え る知 識 が 累積 さ

れ て い か な い と よ く指 摘 され た 。 そ して,「 疑 似 オ ー プ ン ・モ ジ ュ ラ ー型 」

が,そ の 単 な る 「コ ピー ・改 造 」 と して の 「

模 倣 」 を もた らす こ とで あ る な

ら,こ の状 況 に い る 限 り 「

模 倣 段 階 」 を抜 け 出 す こ とは難 しい だ ろ う。 中 国

は 「

疑似 オ ー プ ン ・モ ジ ュ ラー型 」 に基 づ く 「コ ピー ・改 造 」 と して の 「

倣段 階 」 に い る 。 そ の背 景 に は,急 速 に グ ロ ーバ ル化 が進 ん だ こ とに よ り,

12)中 国人 の組 織 特 徴 につ い て,下 記 の文 献 を参 照 。 ① 増 田英 樹 「中 国商 人 の 知 恵 』 東 洋 経 済 新 報 社2002年 。 ② 馬 場 錬 成 『中 国 ニ セモ ノ商 品』 中央 公 論 新 社2004年 。 ③ 遠 藤 健 治 「中 国 コ ピ ー 商 品 対 抗 記 』 日経BP社/日 経BP出 版 セ ン タ ー(発 売) 2007年 。

(9)

「構 造 設 計 → 機 能 設 計 」 と い う プ ロ セ ス を 追 体 験 す る 暇 も な く,国 際 分 業 の 枠 組 み,つ ま り 「共 同 体 間 分 業 」 に 取 り こ ま れ て し ま っ た と い う 事 情 も あ る 。 こ の 「コ ピ ー ・改 造 」 と し て の 「模 倣 段 階 」 か ら抜 け 出 す 方 策 の 一 つ と し て,知 的 財 産 権 保 護 政 策 の さ ら な る 強 化 が あ げ ら れ る 。 違 法 コ ピ ー を 厳 し く 取 り締 ま る こ と は,著 作 権 者 で あ る 先 進 国 企 業 の 権 利 を 守 る と 同 時 に,開 発 費 を投 じて オ リ ジ ナ ル 製 品 を作 り出 そ う と す る 中 国 ロ ー カ ル 企 業 の 育 成 に も つ な が る の で あ る 。 中 国 製 造 業 に お い て は ,コ ピ ー ・改 造 製 品 の 価 格 競 争 を 招 き,製 品 開 発 の 原 資 そ の も の を破 壊 す る と い う悪 循 環 の ロ ッ ク イ ン は 根 強 い も の が あ る 。 そ れ を 改 善 し な い 限 り,中 国 製 造 業 の 長 期 的 発 展 は の ぞ め な い 。 ま た,時 代 と 共 に,技 術 は 進 化 し,消 費 水 準 や 市 場 ニ ー ズ も変 化 し,製 造 業 の 主 流 に な る 分 野 も 変 化 し,さ ら に,主 流 分 野 の 産 業 ア ー キ テ ク チ ャ も 変 化 し て い く。 製 造 業 に お け る ア ー キ テ ク チ ャ の 国 際 的 の 変 化 か ら 考 え て み た い 。 例 え ば,カ ラ ー テ レ ビ は,1960年 代 に お い て イ ン テ グ ラ ル 型 ア ー キ テ ク チ ャ の 高 級 製 品 で あ っ た が,技 術 の 進 化 や 市 場 消 費 ニ ー ズ の 拡 大 等 の 要 因 で,モ ジ ュ ラ ー 型 ア ー キ テ ク チ ャ へ 変 化 し た 結 果,1980年 代 初 め か ら 低 付 加 価 値 の 廉 価 製 品 に な っ た 。 ま た,自 動 車 は,消 費 能 力 の あ ま り な い ア ジ ア に お い て イ ン テ グ ラ ル 型 ア ー キ テ ク チ ャ の 高 級 製 品 で あ り続 け た が,近 年,新 興 市 場 を 中 心 と し た 消 費 水 準 の 向 上 や 技 術 の 進 化 等 の 要 因 で,モ ジ ュ ラ ー 型 ア ー キ テ ク チ ャ 製 品 に な る 兆 し が 出 て き た13)。 こ の よ う に,同 じ 時 代 で も,製 品 の 技 術 水 準 や 市 場 消 費 水 準 等 の 要 因 が, ア ー キ テ ク チ ャ の 変 化 に 大 き な 影 響 を与 え る と考 え ら れ る 。 本 論 文 で は,歴 史 的 視 点 か ら 中 国 製 造 業 の ア ー キ テ ク チ ャ を 動 態 的 に 把 握 す る 。 こ れ は,単 な る 歴 史 紹 介 で は な く,中 国 製 造 業 の 経 験 の 歴 史 的 総 括 で 13)小 川 紘 一 「製 品 ア ー キ テ ク チ ャ の ダ イ ナ ミズ ム を前 提 に した 日本 型 イ ノベ ー シ ョ ン ・シ ス テ ム の 再 構 築 一 新 ・日本 型 経 営 と して の ビジ ネ ス ・モ デ ル ・イ ノベ ー シ ョン(そ の1)」 東 京 大 学COEも のづ く り経 営 研 究 セ ン タ ーMMRODiscussion PaperNo,184MMRC-J-1842007年11月 。

(10)

94桃

山学 院大学 経済 経営 論集

第56巻 第1号

あ る 。 中 国 政府 の 政 策 レベ ル,企 業 レベ ル,消 費市 場 レベ ル な どの要 因 を加

え,そ の発 展 の メ カ ニ ズ ム を解 明 す る こ とに重 点 を 置 く。

この こ と を通 じて,中 国 製 造業 の ア ー キ テ ク チ ャの選 択 戦 略 の現 状 を 明 ら

か に す る 。 そ して,ア ー キ テ ク チ ャ論 の先 行 研 究 の,中 国 が得 意 とす る の は

疑 似 オ ー プ ン ・モ ジ ュ ラ ー 型 」 とい う指 摘 が 妥 当 か ど うか,歴 史 的 発 展 段

階 か ら見 る と 「疑似 オ ー プ ン ・モ ジ ュ ラ ー型 」 もあ る発 展 段 階 を背 景 と した

理 論 形 成 に 止 まっ た の み で は な い か,と い う問題 を提 起 す る 。

藤 本 か ら指摘 した す で に ず い ぶ ん前 か ら 「

疑 似 オ ー プ ン」 状 況 に な っ て い

る 中 国 地 場 の 家 電 産 業 や オ ー トバ イ産 業 は,現 在 又 疑 似 オ ー プ ン ・モ ジ ュ

ラー 型 か?と 疑 問 を持 ち,又 厳 しい 国 際環 境 に対 応 す る た め に,中 国企 業,

特 に 「

ハ イ ア ー ル 」,「レノ ボ ⊥ 「

大 陽 オ ー トバ イ 」 な ど,一 部 の有 力 大 企 業

で は,国 内外 市場 で の シ ェ ア を確 保 す る た め に,独

自の知 的財 産権 や コ ア ・

コ ン ピ タ ンス の確 立 を 目指 して,研 究 開発 費 の投 入 を拡 大 して きた 。

そ の 努 力 の 効 果 を検 討 す る 為,中 国 製造 業 に お い て は,多 様 な ア ー キ テ ク

チ ャが 同 時 に存 在 して い る現 状 を考 察 す る為,次

の 第2章 で,企 業 別 で,企

業 に お い て ア ー キ テ ク チ ャの 変化 を 中心 に どん な 方法 で,ど ん な変 化 を行 っ

て い る か を詳細 に 考 察 す る予 定 で あ る 。

皿.ア

ー キ テ ク チ ャ の 現 状 と個 別 企 業 技 術 の 成 長 一 疑 似 オ ー プ ン ・

モ ジ ュ ラ ー 論 を 超 え て

1.ア

ー キ テ ク チ ャの 国 際化 形 成 に よる 中 国製 造業 へ の影 響

1980年 代 の ア メ リ カ ・エ レ ク トロ ニ クス 産 業 で は,多

くの伝 統 的 な 企 業

が ア ー キ テ クチ ャ と組 織 能 力 の乖 離 を もた らす経 営 環 境 の歴 史 的 な転 換 期 に

直 面 して 苦境 に 立 た され た 。 しか しな が ら大 規 模 企 業 か らス ピ ン ・オ フ した

人 々 が起 こす 多 数 の ベ ンチ ャー企 業 群 が

半導 体 産業 を モ ジ ュ ー ル ・ク ラ ス

ター 型 の 経 営 環境 に転 換 させ た 。彼 らが従 来 の エ レク トロ ニ ク ス 産業 を現 在

のIT産 業 へ と変 貌 させ る こ と に よ っ て,製 品 ア ー キ テ ク チ ャ と組 織 能 力 と

の 乖 離 を埋 め た の で あ る 。 こ こか ら ア メ リ カIT産 業 が グ ロ ー バ ル 市 場 を制

(11)

中 国 生 産 シ ス テ ム 発 展 に お け る ア ー キ テ ク チ ャ 選 択 戦 略

す る まで に な った 。IT産 業 の ア ー キ テ ク チ ャ に 適 応 した ベ ンチ ャ ー企 業 の

組織 能 力 が ア メ リカ の競 争力 を復 活 させ た と言 っ て も よい14)。

本 論 文 の 第 皿 章 で 述 べ た よ う に,1980年

代 初 期,中

国 は ま だ 国 有 企 業 の

天 下 で あ っ た 。 国 有 企 業 は,日 本 同 様 の 「

重 厚 長 大 型 」 な い し 「

垂 直 統 合

型 」 の 生 産 シ ス テ ム を強 く志 向 して い た 。伝 統 的 な 国有 企 業 は,た

とえ規 模

が 巨 大 で も,ア メ リカ 発 モ ジ ュ ー ル ・ク ラス タ ー型 の 経 営 環 境 に よ りIT化,

EMS化

の 流 れ と は無 縁 で あ っ た。1980年 代 後 半 か ら一 度 倒 産 な い し経 営 に

行 き詰 まっ た 国 有企 業 や 集 団公 司 で,後 に優 秀 な経 営 者 に よっ て再 建 され た

私 営 企 業 」 の 出現 は,そ の 転 機 で あ っ た。

こ う した 「私営 企 業 」 は,外 部 か ら部 品 や キ ー コ ンポ ー ネ ン ト,主 原 料 な

ど を買 っ て きて 組 み 立 て,そ れ に 自社 で生 産 した付 加 価 値 の低 い 部 品 や 材

料,原 料 を加 え て 完 成 品 を作 り,積 極 的 な営 業 活 動 で販 売 す る とい う共 通 の

ス タイ ル を もっ て い る 。彼 らは外 資系 企 業 の製 品 な い し輸 入 品 を手 本 に,そ

こか ら引 き算 的 に機 能 を除去 し(高 級 機 種 に つ い て い る機 能 で,そ れ を 除 い

て も基 本機 能 に は影 響 の 少 ない もの),中 国 の一 般 大 衆 に向 い た 製 品 に似 て

い て も,粗 悪 品 しか作 れ な か っ た 。 しか し,ロ ー エ ン ド商 品 と して 中 国 の地

方都 市 や 農村 市場 に浸 透 す る こ とが で きた'5)。

改 革 ・開 放 政 策 の推 進 と と もに,中 国 政府 は,大 型 外 資 の進 出業 種 に優 先

順 位 をつ け,組 立 加 工 産 業 か らで は な く,部 品 産 業 を重 視 す る 政 策 を採 っ

た 。 そ れ に は合 理 的 な理 由 が あ っ た 。 当 時 す で に 中 国 に は 国有 企 業 が あ り,

大 半 が組 立加 工 型 産 業 で あ っ た 。 過 当競 争 を招 く外 資 の組 立加 工 企 業 の誘 致

よ りも,国 有 企 業 の 品 質 向 上 に繋 が る裾 野 産業(部

品 や素 材 の生 産)の 育 成

を重視 す る の は 当然 の 理屈 で あ る 。 この裾 野 産業 重 視 の 政策 が,中 国 の大 型

ア ッセ ンブ ル企 業 が 成 長 す る素 地 とな っ た。 中 国 企 業 のESM化

は,中

国政

府 の 産 業 政 策 の1つ の 帰結 で もあ る16)。

14)渡 部 俊 也 編 「グ ロ ーバ ル ビ ジ ネ ス戦 略 』 白桃 書 房2011年 。 15)苑 志 佳 「現 代 中 国企 業 変 革 の 担 い 手:多 様 化 す る 企 業 制 度 と そ の 焦 点』 批 評 社 2009年 。 16)中 国 国家 統 計 局 編 「中 国統 計 年 鑑 』 中 国統 計 出版 社2002年 。

(12)

96桃

山学 院大学 経済 経営 論集

第56巻 第1号

また,外 資系 企 業 は リス ク を恐 れ て い た た め,中 国へ の 直接 投 資 を避 け,

そ の か わ りに 華南 地 方周 辺 に 委託 加 工 工 場 を建 設 した 。工 場 と人員 は 地方 の

鎮 政 府 が提 供 し,外 資 は工 場 設備,原 材 料,技 術 を持 ち 込 ん だ 。外 資 は報 酬

を完 成 品 で 受 け取 る こ とが 多 く,現 地従 業 員 に は加 工 賃 を,鎮 政府 に は工 場

敷 地 の賃 貸料 を支 払 っ た 。 しか し,こ の ビジ ネ ス モ デ ル は企 業 と して利 益 を

出 す構 造 に な っ て い な い た め,中 央 政府 に は法 人税 が入 らな い17)。

他 方,大 規模 な 国有 企 業 や 集 団 公 司 は,多 数 の外 資系 企業 と合 弁 企 業 を設

立 し,彼 ら を通 じて 製 造技 術 や 近代 的 マ ネ ジ メ ン トを学 ん だ 。 こ の 時 に彼 ら

が 学 ん だ製 造 技 術 とは,モ

ジ ュ ー ル型 生 産 に 近 い もの で あ っ た。 なぜ な ら

委 託 加 工 は 外 資 側 が 部 品 ・原 材 料 を持 ち 込 む 形 式 で あ っ た の で,モ

ジ ュ ー ル 型 生 産 以外 の 手 の 込 ん だ生 産 方法 は 適用 で きな か っ た 。 中 国 は経 済

の 仕 組 み と して,統 合 型 か らモ ジ ュ ラ ー型 へ,自 然 な形 で生 産構 造 の転 換 が

図 られ た18)。

国 有企 業 製 品 の低 品 質 は,部 品 や コ ンポ ー ネ ン トの性 能 ・品 質 の悪 さが原

因 で あ っ た 。 国 有企 業 の再 建 に は,外 資 が機 能 の 良 い 部 品 を安 価 に供 給 し,

国 有企 業 の 製 品 に組 み 込 む こ とが 必 要 で あ っ た 。 国有 企業 の製 品 が競 争 力 を

持 て ば,外 国 か らの輸 入 品 は怖 くな い 。 中 国 は対 日貿 易 収 支 の慢 性 的赤 字 を

回 避 す る だ け で な く,日 本 へ の輸 出 に よる外 貨 獲 得 も可 能 に な る 。 日系 の部

品 会社 か ら高性 能 の 部 品 を購 入 し,中 国 製 品 に取 り付 け る動 きが広 が る と と

も に,中 国 の 伝 統 的 ブ ラ ン ドが 復 活 して きた 。家 電 製 品 か らオ ー トバ イ ま

で,い

ま心臓 部 は 日系 や 欧米 系 の 部 品 ・コ ンポ ー ネ ン トを装 備 して い る 。彼

らの 製 品 は 日系 合 弁 製 品 と遜色 の な い性 能 ま で に 向上 した 。

近 年 中 国 は急 速 にR&D力

を培 い つ つ あ り,す で に 自 力 に よ る ビ ッ グバ ン

型 モ デ ル に よっ て,新

しい事 業 で グ ロ ーバ ル市 場 を大 き く開拓 して い る企 業

が 現 れ て い る 。ハ イ ア ー ル な ど はす で に家 電 で 日本 市 場 に も進 出 して い る

17)安 室憲一 『

徹底検 証中国企業 の競 争力:「世 界の工 場」の ビジネスモデ ル』 日本

経済新 聞社2003年

18)苑 志佳 「

現 代 中国企業 変革の担 い手:多 様化 す る企業制 度 とその焦 点』批 評社

2009年 。

(13)

中国生 産 シス テム発 展 にお ける アー キテ クチ ャ選択戦 略97

が,例 え ば 中 国 の広 東 省 に あ るZTEは1986年

の 創 設 で,ス

ウ ェ ー デ ン の エ

リ ク ソ ンな どの 欧 州勢,中

国 の華 為 技 術(ホ

ア ウ ェ ー)な

ど と並 ん で携 帯 電

話 向 け基 地 局 で 世 界 大 手 の 一 角 を 占 め,携 帯 電 話 や 固 定 電 話 事 業 者 向 け の

サ ー ビス や イ ン フ ラの ほ か,モ バ イ ル端 末 や タブ レ ッ ト,デ ー タ カ ー ドな ど

す べ て揃 え て い る の が功 を奏 し,過 去5年

間平 均 成 長 率 は世 界 の通 信 設 備 業

界 で は トップ の37%と

な り,年 間売 上 高 は100億

ドル に達 し,そ の54%が

海 外 向 け で あ る。2011年1か

ら3月 の 国 際 特 許 出 願 件 数 で も世 界 トッ プ と

な り,世 界 の 通信 機 器業 界 で急 成 長 を続 け て い る 。 日本 な ど先 進 国 を凌 駕 す

る 戦 略 と して は,事 業 育 成 の研 究 開発,グ

ロ ーバ ル市 場 志 向 を行 い,又 強 く

マ ス ・マ ー ケ ッ トの 地域 適合 開拓 に 意 を用 い,潤 沢 な 開発 投 資 を し続 け て い

る と ころ に あ り,中 国企 業 で は あ る が,十 分 な 川上 能 力 を もつ 同社 は,川 下

の 市 場 参 入 が 難 しい 日本 に 対 し て,ビ

ッ グ バ ン 型 を 捨 て て,そ

の 強 力 な

R&D力

を基 盤 に,新IM統

合 型 モ デ ル 的 な協 業 で市 場 開 発 を 図 る体 制 を整 え

て い る19)。

次 は,中 国 の パ ソ コ ン ・家 電 ・オ ー トバ イ企 業 を事 例 と して,ア ー キ テ ク

チ ャの 変 遷 か ら企 業技 術 の 成 長 を 見 て み よ う。

2.ア ー キ テ ク チ ャ の 変 遷 か ら 見 る 個 別 企 業 技 術 の 成 長 2-1.モ ジ ュ ー ル 化 の 影 響 で 成 長 し たPCメ ー カ ー 一 レ ノ ボ 2-1-1.会 社 概 要 レ ノ ボ 集 団 は 非 国 有 企 業 で,「 国 有 民 営 企 業 」 と 呼 ば れ る 。1984年 に 中 国 科 学 院 計 算 技 術 研 究 所 の 研 究 員ll人 に よ っ て 創 立 さ れ た 。 当 時 の 名 称 は 中 国 科 学 院 計 算 技 術 研 究 所 新 技 術 発 展 公 司 と い い,創 立 時 に 計 算 技 術 研 究 所 か ら20万 ドル の 資 金 を も らい,研 究 所 の 入 り 口 に あ っ た20平 方 メ ー トル の 受 付 室 を事 務 室 と し て 提 供 さ れ た2°)。 19)平 松 茂 実 『現 代 モ ジ ュ ー ル化 経 営 論 一 日本 企 業 の再 発 展 戦 略 』 学 文 社2012年 。 20)中 川 涼 司 「中 国 のIT産 業:経 済 成 長 方 式 転 換 の 中 で の 役 割 』 ミネ ル ヴ ァ書 房 2007年 。 橋 田坦 「中 国の ハ イテ ク産 業一 自主 イ ノベ ー シ ョ ンへ の道一 』 白桃 書 房2008年 。

(14)

98桃 山 学 院 大 学 経 済 経 営 論 集 第56巻 第1号 設 立 翌 年 の1985年 に 中 国 科 学 院 が500台 のIBMコ ン ピ ュ ー タ を 輸 入 し て 科 学 院 傘 下 の 各 研 究 所 に 配 っ た と き,レ ノ ボ は こ の500台 の コ ン ピ ュ ー タ の 検 収,教 育 訓 練 修 理 の 仕 事 を 請 け 負 う こ と に 成 功 し,130万 人 民 元 の 利 益 を 得 た と と も に,IBM北 京 セ ン タ ー の 代 理 業 務 な ど を 受 注 す る 事 が 出 来 た 。 レ ノ ボ は こ の 利 益 を レ ノ ボ 漢 字 辛(中 国 語 カ ー ド)の 開 発 に 投 入 し た 。 中 国 語 カ ー ド と は,IBMコ ン ピ ュ ー タ の 互 換 機 に 搭 載 す る 中 国 語 に よ る 入 力 で き る 基 板 で あ る 。 そ の 技 術 を 移 転 し1986年 に 「レ ノ ボ 式 漢 字 カ ー ド」 を 発 売 し,国 内 の シ ェ ア を拡 大 し,レ ノ ボ 式 漢 字 カ ー ドは ヒ ッ ト商 品 と な り,利 益 を 得 た 。 当 初IBM社PCを 販 売 し て い た が,互 換 機 で あ るAST社PCの 代 理 店 に 転 換 し,1988年 に香 港 レ ノ ボ 電 脳 有 限 公 司 を 設 立 し た 。 そ れ か ら,成 長 が 順 調 で,2004年 末 レ ノ ボ はIBMに 現 金6.5億 ドル,自 社 株6億 ドル を 支 払 い,PC部 門 の 債 務5ド ル と と も に,技 術,IBMブ ラ ン ド(5年 間 使 用 可 能),年 商130億 ド ル の 市 場,約1万 人 の 従 業 員 を 引 き 受 け て,世 界 第3 位 のPCメ ー カ ー(2005年 の 世 界 シ ェ ア6.2%)に な っ た 。 そ れ か ら レ ノ ボ は 一 気 に 世 界 的 に 有 名 なPCメ ー カ ー に な っ た21)。 レ ノ ボ の2005年 以 後 の ビ ジ ネ ス モ デ ル ・組 織 図 ・コ ア ・コ ン ピ タ ン ス に 集 中 す る 戦 略 は 以 下 の よ う で あ る 。 ①.ビ ジ ネ ス モ デ ル 情 報 化 社 会 の 特 性 の た め,パ ソ コ ン と い う 製 品 の ラ イ フ サ イ ク ル は 極 め て 短 く,一 歩 遅 れ れ ば ま っ た く売 れ な くな る よ う に,リ ス ク は 極 め て 高 い 。 こ の リ ス ク を最 小 限 に 抑 え る に は,パ ソ コ ン業 界 の 最 新 の 動 き を 随 時 に 把 握 す る こ と が 不 可 欠 で あ る 。 そ の た め,レ ノ ボ は 誕 生 後,い ち 早 く ア メ リ カ の ロ サ ン ゼ ル ス に 子 会 社 を,シ リ コ ン バ レ ー に 研 究 拠 点 を作 り上 げ た 。1993年 中 川 涼 司 「華 為 技 術(フ ァ ー ウ ェ イ)と 聯 想 集 団(レ ノ ボ)の 対 日 進 出 一 中 国 企 業 多 国 籍 化 の 二 つ の プ ロ セ ス 再 論 一 」ICCSJoumalofModernChineseStudies Vol.4(2)2012。45-54頁 。 21)丸 山 知 雄 「連 想 集 団 」http://web.iss.u-tokyo.ac.jp/∼marukawa/legend.pdf# search='%E4%B8%B8%E5%B1%B1%E7%9F%A5%E9%9B%84%E3%80%8C%E 8%81%AF%E6%83%B3%E9%9B%86%E5%9B%A3%E3%80%8D'ダ ウ ン ロ ー ド 2009年2月3日 。

(15)

中 国 生 産 シ ス テ ム 発 展 に お け る ア ー キ テ ク チ ャ 選 択 戦 略

の 末 頃 に は,そ の ビジ ネ ス モ デ ル を お お む ね構 築 した 。概 して い え ば,レ ノ

ボ の ビジ ネ ス モ デ ル は 次 の よ うに 説 明 で きる 。

まず,シ

リ コ ンバ レー で作 り上 げ た ネ ッ トワ ー ク を利 用 して最 新 技 術 と情

報 をキ ャ ッチ し,分 析 と市場 予 測 を行 っ た後

そ れ を香 港 に 送 る 。香 港 で は

新 しい技 術 を実 施 す る た め の 条件 を論 証 し,販 売 予 測 を行 っ た後,そ

の結 果

を北 京 に送 る 。北 京 で は,レ ノ ボ の 経 営 層 が 意 思 決 定 を行 う。仮 に 「OK」

を出 した な ら,自 社 の研 究 と開発 部 門(聯 想 研 究 院)お

よび そ のバ ック で あ

る 中 国科 学 院 計算 技 術 研 究 院所 の専 門 家 に,開 発 プ ロ ジ ェ ク トの全 体 設 品 を

させ る 。 そ の 後,広 東省 恵 陽市 に あ る工 場 に製 造 開始 を指 示 す る 。 そ こ で 出

来 上 が っ た 製 品 は,二 つ の ル ー トで 出荷 す る.一 つ は,香 港 を経 由 して輸 出

す る。 海 外 で の販 売 情 報 は シ リ コ ンバ レー と北 京 の 本 社 に 同 時 に フ ィ ー ド

バ ッ ク され ,次 の行動 につながるサークルが再 び始 まる。

この モ デ ル をイ メ ー ジ した もの が,図 で あ る 。事 業 の拡 大 に つ れ,上 海,

北 京,深 訓 に も製 造 拠 点 が で きた た め,国 内 販 売 の ル ー トは広 が っ た 。現

在,恵

北 京,上 海,深 訓 の 四 工 場 の 生 産 力 は,400万

台 で あ る。 そ れ を

図1.レ ノボ の ビジ ネスモ デ ル 出所:徐 方啓 「柳 傳 志:聯 想(レ ノボ)をつくった男 』ナ カニシヤ 出版2007年 。

(16)

100桃 山 学 院 大 学 経 済 経 営 論 集 第56巻 第1号 超 え る 場 合,レ ノ ボ は 設 備 投 資 よ り も ア ウ トソ ー シ ン グ が 得 だ と判 断 し,台 湾 の メ ー カ ー にOEMで 委 託 生 産 を す る こ と に な る22)。 仮 に,他 の 中 国 系 パ ソ コ ン メ ー カ ー が こ れ に 似 た よ う な ビ ジ ネ ス モ デ ル を と っ て い た と し て も,レ ノ ボ ほ ど う ま くい く と こ ろ は 少 な い だ ろ う 。 ②.組 織 図 レ ノ ボ の 組 織 図 を 見 る 前 に,ま ず 聯 想 ホ ー ル デ ィ ン グ 有 限 会 社 に お け る レ ノ ボ の 位 置 を 見 て み よ う 。 先 に 述 べ た よ う に,レ ノ ボ は 中 国 科 学 院 計 算 技 術 研 究 所 の 出 資 で 設 立 さ れ た 会 社 で あ る 。1994年2月 に 香 港 証 券 取 引 所 に 上 場 し た 香 港 聯 想 は,後 に 北 京 レ ノ ボ と一 体 化 し,北 京 レ ノ ボ は 株 式 の57%所 有 す る こ と に な っ た 。 後 に,北 京 レ ノ ボ は グ ル ー プ を 再 編 し,持 株 会 社 に な り,レ ノ ボ と神 州 デ ジ タ ル が そ の 子 会 社 に な る わ け で あ る 。 レ ノ ボ と神 州 デ ジ タ ル は 兄 弟 会 社 で あ る が,後 者 は 前 者 か ら 独 立 し た と き,総 資 産 の10%,従 業 員 の20%,業 務 の20%と 販 売 収 入 の20%し か 持 ち 出 さ な か っ た 。2004年 度 の 売 上 高 で い え ば,神 州 デ ジ タ ル は 結 構 頑 張 っ て い る が,ま だ レ ノ ボ の61.6%し か 占 め て い な い 。 ほ か の 三 社 は い ず れ も 近 年 設 立 し た た め,ま だ 完 全 に 軌 道 に 乗 っ て 進 ん で い る と は い え な い 。 つ ま り,レ ノ ボ が 聯 想 ホ ー ル デ ィ ン グ の 中 核 企 業 で あ る こ と は,明 ら か で あ る 。 図2は,聯 想 ホ ー ル デ ィ ン グ の 組 織 図 で あ る 。 次 に,レ ノ ボ の こ と を 見 て み よ う 。 2005年4月30日,レ ノ ボ はIBMパ ソ コ ン事 業 と の 統 合 を 完 了 し た 。 レ ノ ボ 社 内 で は,統 合 後 の 会 社 を新 聯 想(ニ ュ ー レ ノ ボ)と 呼 ぶ 。 ニ ュ ー レ ノ ボ は,レ ノ ボ チ ャ イ ナ と レ ノ ポ イ ン タ ー ナ シ ョ ナ ル か ら な る 。 前 者 は 本 部 を 北 京 に 後 者 は 本 部 を ア メ リ カ ニ ュ ー ヨ ー ク 州 の パ ー チ エ ス(Purchase)に お く。 楊 元 慶 会 長 を 始 め と す る 経 営 陣 は,レ ノ ボ チ ャ イ ナ を 最 高 執 行 役 (COO)の 劉 軍 に 任 せ,ほ ぼ 全 員 が ア メ リ カ に 常 駐 し て い る 。 レ ノ ボ 本 体 に は,14の 事 業 部,一 つ の 研 究 院33の ス タ ッ フ 部 門 と 四 つ 22)徐 方 啓 「柳 傳 志:聯 想(レ ノ ボ)を つ くっ た男 』 ナ カ ニ シ ヤ 出版2007年 。

(17)

中 国 生 産 シ ス テ ム 発 展 に お け る ア ー キ テ ク チ ャ 選 択 戦 略 図2.レ ノボ ホール デ ィングの 組 織 図 中 国科 単院 fi'S°1035°/o

聯想持秣会社従業員持株会

会 長:曾 茂 朝 社 長;柳 傳 志

聯想挿蛛会社

49% 1

5Q°/aI 100°/a 100%1 1QQ°/o

,.七

`蝋想集団

趨織 会社

Y::.i :ti: 神 輯 デジタル 有限会社

聯想担資

有限会社

翻t京融醇智地不動 産銅発有撮会社 北京弘澱按 資 蹟 問有限会 杜 E 会長:楊 元慶 会 長:李 勤 会長:柳 傭志 会長:柳 傭志 会 長;柳 傭 志 社長;ウ ィリアム 社 長;郭 為 社長:朱 立 南 社長 二陳国棟 社 長:趙 令 歓 ・ア メ リオ 資料:聯 想 ホール デ ィングが 提 供 した資料 とレノボ の年 報 により作 成 。 の 工 場 が あ り,ま た グ ル ー プ は19の 子 会 社 と5つ の 関 連 会 社 を も つ こ とが わ か る 。14の 事 業 部 を 分 類 し て み れ ば パ ソ コ ン(ラ ッ プ ト ッ プ パ ソ コ ン と ノ ー トパ ソ コ ン),サ ー バ ー,移 動 通 信(携 帯 電 話 とPDA)と プ リ ン タ ー な ど の 接 続 機 器 の,四 種 類 に な る 。 売 上 げ は,パ ソ コ ン が 約55%,サ ー バ ー が20% ,移 動 通 信 が10%,接 続 機 器 が15%を,そ れ ぞ れ 占 め て い る 。 い わ ゆ る 商 用 パ ソ コ ン,消 費 パ ソ コ ン は,レ ノ ボ が 作 り 出 し た 概 念 で あ る 。 つ ま り,法 人 向 け の 製 品,た と え ば 設 計 を メ イ ン と す る パ ソ コ ン や,会 計 を 中 心 と す る パ ソ コ ン な ど特 別 の 需 要 が 求 め ら れ る パ ソ コ ン を 商 用 パ ソ コ ン と い う 。 こ れ に 対 し ,消 費 者 個 人 向 け の 汎 用 パ ソ コ ン を 消 費 パ ソ コ ン と い う。 聯 想 研 究 院 は,ス タ ー ト し た 時 に は,中 国 科 学 院 と の 合 弁 で あ っ た が,後 に レ ノ ボ の 独 立 の 研 究 機 関 と し て 位 置 づ け ら れ る よ う に な っ た 。 現 在,北 京 の 本 社 ビ ル に 入 居 し て い る 研 究 院 本 部 の ほ か に,四 川 省 の 省 庁 所 在 都 市 の 成 都 市 に 分 院(支 社)が 設 け ら れ て い る 。 聯 想 研 究 院 は,グ ル ー プ の 中 央 研 究 院 機 関 で あ る た め,レ ノ ボ 最 高 技 術 責 任 者(CTO)の 賀 志 強 氏 が 聯 想 研 究 院 院 長 を務 め て い る 。

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桃 山学 院大学 経済 経営 論集

第56巻 第1号

レ ノ ボ に は,企 画 部,人

的 資 源 部 な ど の ス タ ッ フ部 門 が33も

あ る。

ち ょっ と多 す ぎで は な い か と思 わ れ る か も しれ な い が,筆 者 か ら見 れ ば,そ

れ に は そ れ な りの 理 由 が あ る 。

一 つ に は

,レ ノボ は チ ャ レ ンジ精 神 が 強 い会 社 だ か ら,外 部 環 境 の変 化 に

応 じて,適 時 に組 織 の建 設 を行 っ て い る,と い う こ とが あ る 。例 え ば,政 府

や 地 方 自治体 の 公 開 入札 に積 極 的 に参 加 す る た め に,レ ノ ボ は 政府 事 務 部 を

設 立 した 。 法 人 向 け の ビジ ネ ス の増 加 に と もな っ て,法 人 サ ー ビス部 が増 設

され た 。IBMパ

ソ コ ン事 業 を買 収 した 後,国 際 ビ ジ ネ ス 開 発 部 が 設 け ら れ

た 。 この よ うな組 織 の 設 立 に よっ て,事 業 部 の タテ の壁 を越 え,ヨ コ の 関係

を強化 して全 社 の経 営 資 源 を活 か す こ とが で きる 。

も う一 つ は,レ ノ ボ の 人材 育 成 戦 略 に 関 連 す る 。 レノ ボ で は,有 能 な 人材

に は,い つ で も適材 適用 の 原則 に も とつ い て,活 躍 の舞 台 を提 供 して い る。

例 え ば,素 晴 ら しい 実績 を作 り出 した者 は,昇 進

昇 格 させ な け れ ば な らな

い 。 そ の場 合 ,も ともとの部署に適当なポジシ ョンがなければ,新 たに部署

をつ くる とい う こ とが よ くあ る 。 レノ ボ 人 的 資源 部学 習 と文化 セ ンタ ー総 監

伊 敏 女 史 の 話 に よれ ば,そ れ は有 能 な 人材 の た め に 天井 の な い舞 台 を提 供 す

る とい う こ とで あ る。 だ か ら,レ ノ ボ で は,20代

の 部 長 が 決 して 珍 し くな

い23)。 ③.レ ノ ボ の コ ア ・コ ン ピ タ ン ス 集 中 戦 略 1999年 後 半 頃,ネ ッ ト ビ ジ ネ ス は 太 平 洋 の 向 こ う 側 で 急 速 に 盛 り 上 が り, し か も 光 の 速 さ の よ う な ス ピ ー ドで 世 界 各 地 へ 波 及 し て い っ た 。 ア メ リ カ で は,そ の 象 徴 は ナ ス ダ ッ ク の 平 均 株 価 の 急 上 昇 で あ り,日 本 で は 光 通 信 や ヤ フ ー ・ジ ャ パ ン が そ の 代 表 と な っ た 。 同 じ く,中 国 で も,ネ ッ ト ビ ジ ネ ス の 23)レ ノ ボ 組 織 に つ い て,以 下 の 文 献 を 参 照 。 ① 徐 方 啓 『日 中 企 業 の 経 営 比 較 』 ナ カ ニ シ ヤ 出 版2006年 。 ② 徐 方 啓 『柳 傳 志:聯 想(レ ノ ボ)を つ く っ た 男 』 ナ カ ニ シ ヤ 出 版2007年 。 ③ 丸 山 知 雄 「聯 想 集 団 」http://web.iss.u-tokyo.ac.jp/∼marukawa/legend.pdf #search='%E4%B8%B8%E5%B1%B1%E7%9F%A5%E9%9B%84%E3%80%8C %E8%81%AF%E6%83%B3%E9%9B%86%E5%9B%A3%E3%80%8D'ダ ウ ン ロ ー ド2009年2月3日 。

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ブ ー ム が,マ ス コ ミ の 煽 りに よ っ て 引 き起 こ さ れ た 。 従 来,十 分 に 考 え て か ら で な け れ ば 行 動 を し な い 柳 傳 志 で さ え,つ い に い て も た っ て も い ら れ な くな り,楊 元 慶 が ネ ッ ト ビ ジ ネ ス に 参 入 す る こ と を 認 め た 。 周 知 の よ う に,ネ ッ ト ビ ジ ネ ス は 若 い 世 代 の 世 界 で あ る 。 正 直 に い え ば 柳 傳 志 の よ う な 年 代 の 経 営 者 が い く ら 考 え て み た と こ ろ で,そ の コ ッ が わ か る は ず は な い 。 し か し,若 い 世 代 の ビ ジ ネ ス と い っ て も,本 当 に そ の コ ツ を 身 に 付 け て い る 若 い 世 代 は,わ ず か だ と い わ ざ る を 得 な い で あ ろ う 。 し か し,市 場 と い う 見 え ざ る 手 を コ ン トロ ー ル で き る 力 を も つ 会 社 は,古 今 東 西 を 問 わ ず こ の 世 界 に 存 在 し て は い な い 。2001年 の 第14半 期,中 国 の パ ソ コ ン市 場 は 前 の4半 期 よ り6 .6%縮 小 し た 。 こ れ は,1986年 以 来 は じ め て 現 れ た マ イ ナ ス 成 長 の 現 象 で あ る 。 そ の 後 の4半 期 も膠 着 状 態 が 続 い て い た 。 幸 い に も,レ ノ ボ の パ ソ コ ン は す で に 消 費 者 に 定 着 し,か つ 全 国 3000の 代 理 店 の 努 力 で284万4,378台 を 売 り,前 年 度 よ り17%の 増 加 に な っ た が,目 標 の50%増 に は 至 ら な か っ た 。 ま た,売 上 高 が20%,営 業 利 益 が69%減 少 し た こ と は,悩 み の 種 と な っ た 。 い う ま で も な く,楊 元 慶 は,レ ノ ボ の こ れ ま で の 戦 略 を 見 直 し,ド メ イ ン を 再 構 築 し な け れ ば な ら な か っ た 。 そ の 結 果,六 つ の ドメ イ ン は 三 つ に 圧 縮 さ れ た 。 新 し くで き た の は,次 の と お り で あ る 。 A類:IT製 品 パ ソ コ ン,サ ー バ ー と付 属 品 が 中 心 B類:移 動 通 信PDAと 携 帯 電 話 が 中 心 C類:ITサ ー ビ ス コ ンサ ル テ ィ ン グ,応 用 ソ フ トの 開 発,メ ン テ ナ ン ス な ど が 中 心 こ の 戦 略 的 調 整 に よ り,レ ノ ボ は ネ ッ ト ビ ジ ネ ス か ら完 全 に 手 を 引 き,マ ザ ー ボ ー ドの 注 文 製 造 を も 手 放 し て,再 び パ ソ コ ン事 業 に 経 営 資 源 を 集 中 す る こ と に な っ た 。 レ ノ ボ で は,こ れ を 「専 注 」 と い う言 葉 を 使 っ て 表 現 し て い る 。 つ ま り,も っ ぱ ら パ ソ コ ン事 業 に 注 意 を 払 う と い う 意 味 で あ る 。 こ の 戦 略 的 調 整 に と も な っ て,レ ノ ボ は 戦 略 的 人 員 削 減 を 実 施 し た 。 戦 略 的 人 員 削 減 と は,会 社 の 発 展 戦 略 に も と つ い て お こ な わ れ る 行 動 で あ り,部

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104桃 山 学 院 大 学 経 済 経 営 論 集 第56巻 第1号 門 と 個 人 の 業 績 と 関 係 は な い と い う こ と を 意 味 し て い る24)。 当 時,レ ノ ボ の 主 な 成 功 要 因 は,第1,迅 速 か つ よ り的 確 に 世 界 標 準 に 則 る 戦 略 を取 っ た こ と 。 第2,技 術 優 位 で な く マ ー ケ テ ィ ン グ 優 位 を 志 向 し た こ と 。 第3,そ れ ら を 支 え た 柔 軟 な 組 織 戦 略 を 取 っ た こ と で あ る 。 具 体 的 に は,世 界 と の 「同 時 化 」 と 中 国 人 ユ ー ザ 向 け の 改 良 を 中 心 と し た 製 品,シ ナ ジ ー(相 乗 効 果)を 意 識 し た 製 品 ラ イ ン,リ ベ ー ト制 や 専 売 店 制 な ど を 整 え た 流 通 チ ャ ネ ル,全 国 統 一 価 格 巧 み な 広 告 宣 伝 ・セ ー ル ス な ど で あ る25)。 2-1-2.定 常 ・蓄 積 ・時 代 要 因 か ら み る 技 術 の 変 化 中 国 に お け る 電 子 計 算 機 の 研 究 開 発 は1950年 代 か ら始 ま り,1958年 に 開 発 さ れ た103型 小 型 電 子 管 汎 用 デ ジ タ ル 電 子 計 算 機 は 中 国 初 の コ ン ピ ュ ー タ で あ っ た 。1963年 に 大 型 トラ ン ジ ス タ 計 算 機1974年 に 中 国 初 の マ イ ク ロ コ ン ピ ュ ー タDJSO50型 が 開 発 さ れ ,北 京,天 津,江 山 東 な ど の 地 域 に お い て 少 量 生 産 を 開 始 し た 。1980年 代 ま で に,中 国 は ア メ リ カ 製 機 種 の コ ピ ー に よ っ て,ミ ニ コ ン ピ ュ ー タ や 大 型 機 の よ う な 汎 用 機 器 の 分 野 を 中 心 に,研 究 開 発 を 行 っ た 。 一 方,中 国 に お け る パ ソ コ ン(パ ー ソ ナ ル コ ン ピ ュ ー タ)産 業 の 発 展 は 外 国 製 品 の 輸 入,代 理 販 売 と い う形 態 で ス タ ー ト し た26)。 1980年 以 降,政 府 は 外 資 企 業 か ら50本 以 上 の パ ソ コ ン 組 み 立 て ラ イ ン を 導 入 し,パ ソ コ ン 年 産40万 台 の 生 産 能 力 を 整 え た 。 ま た,プ リ ン ト基 板, キ ー ボ ー ドな ど,パ ソ コ ン 関 連 機 器 生 産 ラ イ ン30本 以 上 が 導 入 さ れ,初 期 の パ ソ コ ン 産 業 は 形 成 さ れ た 。 こ れ ら の 生 産 ラ イ ン に 対 し,技 術 の 学 習 ・吸 収 が 行 わ れ る 一 方,パ ソ コ ン 生 産 は 従 来 のSKD方 式 か らCKD方 式 へ 進 み, 部 品 の 国 産 化 が パ ソ コ ン 産 業 の 発 展 目標 と し て 提 起 さ れ た 。 当 時,各 地 に 立 地 す る パ ソ コ ン 工 場 は 政 府 の 認 可 を 受 け,集 積 回 路 とパ ソ コ ン周 辺 機 器 の 製 24)徐 方 啓 『柳 傳 志:聯 想(レ ノ ボ)を つ くっ た男 』 ナ カ ニ シ ヤ 出版2007年 。 25)中 川 涼 司 「華 為 技 術(フ ァ ー ウ ェ イ)と 聯 想 集 団(レ ノ ボ)の 対 日進 出一 中 国企 業 多 国籍 化 の二 つ の プ ロ セ ス再 論 一 」ICCSJoumalofModernChineseStudies Vol.4(2)2012。45-54頁 。 26)丸 山伸 郎 『中 国 の工 業 化 と産 業 技 術 進 歩』 ア ジ ア経 済研 究 所/ア ジ ア 経 済 出 版 会 (発売)1988年 。

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造 装 置 を 導 入 し,従 来 の パ ソ コ ン 開 発 ・生 産 工 程 か ら ア セ ン ブ リ ー 工 程 へ 集 中 す る 動 き が み ら れ た 。 導 入 し た 技 術 を 吸 収 し た 結 果,パ ソ コ ン 部 品 の 国 産 化 が 図 ら れ た 。 例 え ば,中 国 語 処 理 シ ス テ ム を 用 い る パ ソ コ ン(長 城0520CH)が1985年 に 開 発 さ れ,採 用 さ れ た 部 品 の5割 が 国 産 部 品 で あ っ た27)。 1986年 か ら ス タ ー ト し た 第7次5力 年 計 画 で,パ ソ コ ン 産 業 が 重 要 な 産 業 と し て 指 定 さ れ た こ と に よ り,パ ソ コ ン メ ー カ ー は 税 制 ・資 金 に お け る 様 々 な 優 遇 措 置 を 享 受 し て お り,特 に,資 金 調 達 に お い て,パ ソ コ ン メ ー カ ー は 政 策 融 資 及 び 政 府 の 指 示 に よ る 銀 行 か ら の 融 資 を 獲 得 し 始 め た 。 ま た,政 府 は 電 子 産 業 を 発 展 させ る た め に,毎 年 の 財 政 予 算 か ら1億 人 民 元 の 「電 子 工 業 発 展 基 金 」 を 設 け,企 業 所 有 税 の 減 免 な ど も行 っ た 。 さ ら に,パ ソ コ ン の 輸 入 関 税 を1986年 にll4%ま で に 引 き上 げ,国 内 パ ソ コ ン 産 業 の 保 護 や パ ソ コ ン の 国 産 化 率 の 引 き上 げ な ど を 促 進 し た 。 こ う し た 政 策 の 実 施 に よ っ て,ロ ー カ ル パ ソ コ ン メ ー カ ー の 成 長 が み ら れ,1990年 代 の 初 め か ら パ ソ コ ン の 国 産 化 が 実 現 さ れ て い る28)。 し か し,ロ ー カ ル パ ソ コ ン メ ー カ ー は い ず れ も 生 産 規 模 が 小 さ く,当 時,外 国 ブ ラ ン ドに 太 刀 打 ち で き な い 状 況 で あ っ た 。 レ ノ ボ,長 城 計 算 機 な ど のIT企 業 が こ の 時 期 に 設 立 さ れ,中 国 パ ソ コ ン 産 業 の 形 成 に 大 き く貢 献 し た 。 レ ノ ボ は,1986年 に パ ソ コ ン に 中 国 の 使 用 環 境 を加 え た 「レ ノ ボ 式 漢 字 カ ー ド」 を 開 発 し,一 気 に 市 場 シ ェ ア の 拡 大 を 果 た し た 。1987年 以 降,レ ノ ボ はAST社 やHP社 製 品 の 中 国 市 場 の 販 売 代 理 商 と な り,経 営 管 理 ・マ ー ケ テ ィ ン グ な ど の ノ ウ ハ ウ を 吸 収 し た 。1989年 に 中 国 で 初 め てCPUに イ ン テ ル 社286を 搭 載 し た パ ソ コ ン を 開 発 し た こ と に よ っ て,80%の 市 場 シ ェ ア を 占 め,短 期 間 で 国 内 パ ソ コ ン 市 場 を 握 る よ う に な っ た 。 27)中 川 涼 司 「中 国 コ ン ピ ュ ー タ産 業 の業 界 構 造 と企 業 戦 略 一 「微 笑 曲線 」 と聯 想 集 団 の マ ー ケ テ ィ ン グ 戦 略 」 阪 南 大 学 社 会 科 学 編 「阪 南 論 集 』33(3)1998年1 月 。 28)本 田英 夫 『中 国 コ ン ピ ュ ー タ産 業 』 晃 洋 書 房2001年 。

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106桃 山 学 院 大 学 経 済 経 営 論 集 第56巻 第1号 中 国 パ ソ コ ン 市 場 の 拡 大 に つ れ,外 資 企 業 は 中 国 現 地 事 務 所 の 設 立 す る こ と へ 変 化 し,中 国 に お け る 長 期 的 な 市 場 戦 略 を 取 り 込 み 始 め た 。 政 府 は 国 内 パ ソ コ ン 技 術 を 発 展 さ せ る た め に,1990年 に 輸 入 関 税 の 引 き 下 げ,輸 入 「許 可 証 制 度 」(ラ イ セ ン ス)を 廃 止 す る 事 に 踏 み 切 り,外 資 メ ー カ ー に 対 し 市 場 開 放 を 宣 言 し た 。1992年 の 郡 小 平 「南 巡 講 話 」 以 降IBM,コ ン パ ッ ク,HP,ア ッ プ ル な どの 大 手 外 資 企 業 が 中 国 市 場 に 本 格 的 に 参 入 し,パ ソ コ ン の 生 産 台 数 が 急 増 し て き た29)。 1991年 に は,中 国 の パ ソ コ ン 販 売 台 数 が120万 台,ロ ー カ ル ブ ラ ン ドが 市 場 シ ェ ア の67%を 占 め て い た 。 しか し,外 資 企 業 の 中 国 へ の 進 出 に 伴 い, 国 内 メ ー カ ー の 市 場 シ ェ ア が 一 気 に 下 落 し,1995年 に は ロ ー カ ル ブ ラ ン ド の 市 場 シ ェ ア が20%ま で に 落 ち 込 ん だ 。 1990年 代 の 後 半 に な る と,イ ン テ ル 製 最 新 のCPUチ ッ プ を 搭 載 す る 中 国 ブ ラ ン ドの パ ソ コ ン が 市 場 に 投 入 さ れ,ロ ー カ ル 製 品 の 技 術 の 向 上 が み ら れ た 。 特 に,IntelのCPU交 替 に つ れ,レ ノ ボ と北 大 方 正 は,MMXPentium, Pentiumllを 搭 載 す る パ ソ コ ン を 一 気 に 値 下 げ し,再 び 国 内 市 場 の 復 権 を 果 た した 。1996年,国 内 の パ ソ コ ン販 売 台 数 は180万 台 に な り,そ の う ち, ロ ー カ ル メ ー カ ー が40%の 市 場 シ ェ ア を 占 め た 。 更 に,レ ノ ボ は1997年 に 20万 台 の 販 売 シ ェ ア を あ げ,IBMか ら 国 内 首 位 の 座 を 奪 還 し,ノ ー ト ・パ ソ コ ン 分 野 に お い て も,東 芝 を 抜 い て 国 内 市 場 ト ッ プ ブ ラ ン ドの 座 に 着 い た30)。 パ ソ コ ン 産 業 は,コ ア 部 品 と応 用 ソ フ トを 外 部 か ら調 達 で き,製 品 技 術 と ア セ ン ブ リ ー コ ス トに さ え 工 夫 す れ ば,競 争 力 に 結 び つ か せ ら れ る 特 性 を 有 し て い る 。 ロ ー カ ル メ ー カ ー は キ ャ ッ チ ・ア ッ プ を 通 じ て,パ ソ コ ン の ス ペ ッ ク に お い て ,外 資 製 品 と の 格 差 を縮 め て き た 。 ま た,低 価 格 戦 略 に 加 え て,ア フ タ ー サ ー ビ ス,販 売 ル ー トな ど の 面 に お い て も外 資 企 業 よ り競 争 優 29)葉 剛 「激 戦 区 の 中 国 コ ン ピュ ー タ市 場 一 花 火 散 る 「国 産 勢 」 対 「外 国 勢 」 の 争 い」 「週 刊 東 洋 経 済 』 東 洋 経 済 新 報 社54281997年6月7日 。 30)呂 形 『聯 想 喘 息 』 漸 江 人民 出版2003年 。

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位 を 有 し て い る 。 低 価 格 の パ ソ コ ン 製 品 に 対 抗 す る た め に,中 国 市 場 の 事 業 展 開 に 遅 れ た 外 資 パ ソ コ ン メ ー カ ー は1997年 以 降,中 国 国 内 で の 生 産 を 本 格 化 し,生 産 コ ス トの 削 減 を 図 っ た 。2000年 以 降,IBM,HP,サ ム ソ ン が 中 国 に 大 規 模 投 資 を 行 っ た 。 同 時 に,東 芝,ソ ニ ー,NEC,エ イ サ ー,華 碩 な ど も 積 極 的 に 中 国 事 業 に 取 り組 ん で お り,中 国 の パ ソ コ ン市 場 で は,国 内 ブ ラ ン ド と外 資 ブ ラ ン ドの 競 争 が 徐 々 に 激 し くな っ た 。 外 資 企 業 は ロ ー エ ン ド製 品 分 野 に お け る 価 格 競 争 か ら脱 出 し,高 付 加 価 値 の 分 野 へ 集 中 し つ つ あ る 。 そ の 結 果,ロ ー カ ル メ ー カ ー が デ ス ク ト ッ プ パ ソ コ ン 市 場 を 独 占 す る 状 態 に な り,生 産 ・販 売 を 一 層 拡 大 し た 。1999年 の 上 半 期,中 国 市 場 に お け る ロ ー カ ル ブ ラ ン ドの 販 売 台 数 は,140万 台 に 達 し, 市 場 シ ェ ア の74.2%を 占 め た 。 一 方 ,ロ ー カ ル パ ソ コ ン メ ー カ ー の 量 産 拡 大 や 値 下 げ 販 売 は,中 国 に お け る パ ソ コ ン の 普 及 を 牽 引 し て い る 。 中 国 パ ソ コ ン 保 有 台 数 を み る と,1996 年 に542万 台 に 過 ぎ な か っ た が,レ ノ ボ な ど 国 産 メ ー カ ー の 値 下 げ に よ っ て,2000年 に は2,423万 台 に 達 し た 。2002年 の 中 国 国 内 パ ソ コ ン の 出 荷 台 数 は 日 本 を抜 い て,世 界 第2位 と な っ た 。 中 国 は 早 い 時 期 か ら コ ン ピ ュ ー タ 技 術 の 研 究 を 行 い,技 術 と 人 的 資 源 の 蓄 積 が で き,ま た,改 革 開 放 の 政 策 で,短 期 間 に モ ジ ュ ー ル 化31)の オ ー プ ン ・モ ジ ュ ラ ー 型 の コ ン ピ ュ ー タ 製 造 技 術 の 吸 収 が で き た 。 そ の 半 面,2002年 以 降,国 際 標 準 化 の 進 化 と 共 に 中 国 パ ソ コ ン 産 業 の オ ー プ ン ・モ ジ ュ ラ ー 化 の 加 速 に し た が っ て,パ ソ コ ン 産 業 に お け る 参 入 企 業 の 増 加 と値 下 げ 競 争 の 問 題 で レ ノ ボ な ど ロ ー カ ル 主 要 パ ソ コ ン メ ー カ ー の 平 均 利 益 率 が 低 下 の 一 途 を 辿 っ た 。 し か し,そ ん な な か で も,1999年 ∼ 2005年 の 売 上 高 に 対 す るR&D比 率 は,レ ノ ボ が 平 均2。8%,北 大 方 正 は 平 31)モ ジ ュ ー ル化 につ い て,以 下 の文 献 を参 照 。 ① 池 田 信 夫 『情 報 技 術 と組 織 の ア ー キ テ ク チ ャ:モ ジ ュ ー ル 化 の 経 済 学 』NTT 出版2005年 。 ② 國 領 二 郎 「オ ー プ ン ア ー キ テ クチ ャ戦 略 』 ダ イ ヤ モ ン ド社1999年 。

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脚注 [1] 一橋大学イノベーション研究センター(編) “イノベーション・マネジメント入門”, 日本経済新聞出版社 [2] Henry Chesbrough

(1999) Blown to Bits: How the New Economics of Information Transforms Strategy, Harvard Business School Press. 藤本隆宏

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