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中国語の“过来、过去”と“~过来、~过去”について: 沖縄地域学リポジトリ

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(1)

Author(s)

王, 志英

Citation

沖縄大学人文学部紀要 = Journal of the Faculty of

Humanities and Social Sciences(9): 19-31

Issue Date

2007-03-31

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/6188

(2)

沖縄大学人文学部紀要第9号2006

中国語の“辻来、辻去,,と“~辻来、~辻去,,について

王志英 要約

本稿は中国語の“近来、泣去,,と“~泣来、~泣去”について考察する。方向性の加わった

“近来、泣去,,と“~近来、~泣去”は起点領域Aと終点領域Bという異なる領域の存在が不

可欠で、主体や事物は「Aという領域の境界線を越え、Bという領域へ向っているか、或は通

過する」というプロトタイプ的意味を表す。主体や事物の通過する領域の特徴により、通過領

域を点と空間に分けることができる。空間移動の場合、A領域からB領域までの直線的な移動

と曲線的な移動が見られる。直線的な移動の場合は、A領域とB領域の間の空間を通過し、曲

線的な移動はA領域とB領域は隣り合わせになって、主体や事物はAとBの境界線を通過す

るのである。“泣来、泣去”と“~泣来、~泣去”は更に主体や事物が物理的な空間移動の用法

から抽象的な移動の用法へ拡張され、語用論的に様々な意味を表すことができる。 キーワード:領域場所空間通過起点終点 1.はじめに 中国語の“辻”は動詞として使われる場合と、方向補語("~辻”の形で表す)として他の動 詞と一緒に使われる場合がある。“辻,,の基本的意味について、木村英樹1996:164は「「境界 線や通過点を越えて、異なる空間的領域や時間的領域に移る」こと、つまり「経過する」こと を意味します」と説明している。 杉村博文2000:58は“辻',を 甲:ある地点を通過する。 乙:ある地点から別の地点へ移動する。 丙:X(起点)からY(通過点)を経てZ(終点)へ移動する。 という三つの意味にまとめ、通常の意味である甲義と乙義をまとめると丙義になるとした。も し、「X→Y→Z」という空間移動において、起点と終点が霞み通過点が際立つと甲義となり、 逆に移動の両端が際立ち通過点が霞むと乙義となるという。 しかし、杉村はどういう状況で甲義、或は乙義になるかについては説明していない。 本稿は“辻,,、“~辻',の意味は甲義が中心で、“近来、泣去',と“~近来、~泣去''をつけら れる文は、乙義になると主張する。つまり、“来”と“去',という意味を付与することによって、 起点領域と終点領域という異なる二つの領域が際立つことになる。 本稿は「"辻,'、“~辻',」と「"近来、泣去”と“~泣来、~泣去"」のプロトタイプ的意味は 繋がりはあるが、別のものと見るべきだと考える。 “辻,,と“~辻”のプロトタイプ的意味は「主体や事物はある領域(空間・時間)を通過す

る」と規定し’)、動詞の“泣来、泣去”と方向補語の“~泣来、~泣去,,のプロトタイプ的意

味を「Aという領域の境界線を越え、Bという領域へ向うか或は通過する」と規定する。 2.“泣来、泣去”と“~泣来、~泣去,,について “泣来、泣去',と“~泣来、~泣去”について分析する前に、まず、“辻,'のプロトタイプ的 意味を確認しておく。 2.1“辻”と“~辻,,のプロトタイプ的意味 “辻”と“~辻',の移動の意味は通過場所の形状・機能によって、二つのケースにまとめる -19-

(3)

ことができる。つまり、主体や事物の通過する領域が点である場合(1)と空間である場合(ii.) の二つである。また、視点の置き方によって、ii・は更に三つに分類することができる6 下記の図では、mは移動する主体・事物を表し、LMは通過する領域を表す。A、Bはそれ ぞれ通過する領域の起点と終点を表す。 i・通過領域が点である場合

A[二]。

--←①-トー→

図く2-1〉 ii、通過領域が空間である場合 、の軌道とLMとの位置関係によって、a、b、cの三つのケースに分けることができる。 LMIM

B A b a LlVI

A  ̄ ̄ 図く2-2> C i・のケースは以下の例}こ見ることができる。 (1)十路汽牟圦天安、前述。(10番のパスは天安門の前を通る) LM(天安n前) B 図く2-3>I(十路汽卒) 図く2-3>では、“十路汽卒'’はランドマーク“天安、',(LM)に対して相対的に位置づけら れるトラジェクター(、)として解釈される。 TRとLMは図(figure)と地(gound)(Iangackerl986)という概念を一般化したものである。 ここでは、LMは通過する領域を表し、図中の矢印はTRが移動していくその経路(path)を示 している。つまり、“天安、,'(LM)を一つの領域だと見れば、移動物である“十路汽牢”(TR) がその横を通過することを表す。上の図では、→は移動物であるTR“+路汽牟”の移動する 軌道を表し、LMは通過する場所“天安、',を表す。点線はLMの末端にある境界線を示して いる。経路は幅を持っていて、起点Aから終点BヘとLMを通り抜けて延びている。 ii、のa、b、cのケースはそれぞれ例(2)、(3)、(4)、(5)を参照されたい。 aは起点Aと終点Bがプロファイルされていて、TRはAとBの間の領域を通過することを 表すが、起点と終点の外側にはみだしている場合とはみだしていない場合がある。、の領域 内の移動軌道は実線で表し、領域外の移動軌道は点線で表す。 -20-

(4)

王:中国語の“辻来、泣去”と“~辻来、~辻去”について (2)他赫泣河。(彼は河を渡る)(白) uVI(河)

凧U

A 図く2-4>a つまり、移動物である“他,,が川の起点Aと終点Bの間だけを通過したのか、或はAとB を超えた地点から移動しはじめたのか、明確ではないため、A、Bを超えた地点の移動は点線 で表す。 bは、が確実に起点Aと終点Bを越えているので、移動軌道は実線で表す。 (3)剣穿泣了他的喉嘘。(剣は彼の喉を刺し通した)(白) 1M(咽喉)

m(`!) 図く2-5>b cはTRの移動軌道は確実に終点B(中銭)を越えた例である。終点Bはプロファイルされ ている。 (4)球泣了中銭。(ボールは真ん中の線を越えた)(自) LM

図く2-6>c

(4)はmである“球,,の起点Aから終点B("中銭,,)までの移動を表し、終点B("中銭',)

を確実に超えているが(実線で表す)、起点Aをはみだしているかどうかは明確ではない(点 線で表す)。 以上、“辻,,、“~辻”の基本的用法について簡単に見た。 2.2視点の取り方一一“来”と“去',について 自分の位置、自分のいる領域を基点として、そこから離れて移動する場合には“去,,を、そ の基点へ向けて求心的に移動してくる場合は“来”を使う。視点は語彙の意味に内在し、視点 は事態認知に大きく関わってくる要因である。 “辻,,の後は方向補語``来”と“去”をつけることができる。“泣来、~泣来"、“泣去、~泣 去”は基本的に空間移動を表す。視点が話し手にあれば、話し手に向かっている場合の移動は “泣来、~泣来”で、話し手から遠ざかる場合の移動は“泣去、~泣去,,を使う。 以下は視点の変化が対象物の捉え方、事態の解釈を変える事例を見ていく。 2.3実際的な移動に伴う“泣来、泣去,,と“~泣来、~泣去”について 本稿は“近来、泣去,,と“~泣来、~泣去,,のプロトタイプ的意味を「Aという領域の境界 線を越え、Bという領域へ向うか、或は通過する」と規定する。 主体や事物が通過する領域の形状・機能の特徴によって、通過する領域を点と空間に分ける ことができる。 -21-

(5)

23.1通過領域による分類 i・通過領域が点である場合 uVI 一一一一句

図く2-7> TRの通過領域LMが一つの実体として、点だと認識される場合、TRはLMを通過し、Aと いう領域からBという領域へ移動する。 ii・通過領域が空間である場合 Ⅸの通過する領域が空間である場合、TRの移動軌道の特徴によって、以下の三つのケース にまとめることができる。 皿。

|へ」

C 図く2-8> 以上のi、、ii8の分類について、2.3.3と2.3.4で具体的に見ていこう。 23.2統語的な特徴による分類 “i立来、泣去,,と“~近来、~泣去''は以下のような統語的な特徴がある。 ①S(TR)+V泣来(去) ②S(、)+V泣十0(LM)+来(去) ③S(、)+圦+L(LM)+v泣来(去) ④S(TR)+向(朝)+L(1M)+V近来(去) Sは主語であって、移動物のmでもある。Oは目的語であるが、ここでは通過領域のLM を表すbLは場所を表すが、ここではTRの通過する領域LMでもある。 次は移動物であるTIRの通過する領域の特徴について分析してみる。 2.33通過する領域が点である場合

LMが点である場合、移動物mはLMの起点から終点までを通過し、その通過領域の全体

がプロファイルされることになるp移動物であるTRはLMの横か上を通過するのが特徴であ る。 TRが点としてのLMの横か上を通過する場合、LMはスキーマに関する限り、その内部構造 が問題とならない実体である。LMが点であれば、その点の大きさに関係なく、一つのまとま りを表し、移動物TRは、その点(LM)の上や横を通過することができるが、その中に入って 通過することはできない‘。 -22- 勺

-⑦-

_ 「 A B A ’ ’  ̄ A,グー

TR -- ̄庁 -- ̄ へ、B TR

、 1

(6)

王:中国語の“泣来、辻去”と“~辻来、~辻去”について

(5)一伏伏背着名包,来着垪又的学生イ「]圦幹英身辺走泣去。(布鞄を背負い、講義録を小脇

に抱えた学生達のグループが幾つも韓英の傍らを通り過ぎて行った)(杉村1997:157)

犀1,

k.ノ

図く2-9>

(5)はTRである“学生伯,'は領域Aから点を表している``韓英,,の横を通過し、Bという領

域に入るのを表すbここでは“韓英',というLMはプロファイルされている。 (6)他圦迭几砲泣去了。(彼はここをかけぬけていった)(自)

(7)-群鶴子打洲「]尖頂上-K泣去.(ハトの群れがわれわれの頭上を飛んでいった)(中)

⑥、(7)の通過点はそれぞれ“迭几',と“尖頭上,'である。 23.4通過領域が空間である場合 通過領域が空間である場合、移動物であるTRは確実に終点まで辿りつく場合と、終点に向

って雅垳している場合に分けることができる。

2.3.4.1TRは終点まで辿りつくか接近中の場合 (8)他姶我遠辻来一条毛巾。(彼は私にタオルを渡してくれた)(自) 1M

、TI、

唾'リ

図く2-10> (8)はTRである“毛巾,'は起点の“他,,という領域の境界線を越えて、終点の“我,,という 領域に辿りつくのを表す6AとBという領域の境界線はプロファイルされている。 (9)父奈抓起茶碗朝他価了泣去。(父は手にした茶碗を彼めがけて投げつけた)(自) (,)は``茶碗',が“父奈”の領域を超え、“他,,という領域に向って移動するが、“他”という 領域に辿りついたかどうかは言及されていない。 (10)血惨泣来了。(血が惨み出てきた)(丸尾2006:42) 丸尾2006:42は(10)の用例を話者の方へ血が(床などを伝わって)接近してくる状況が表 されると説明している。つまり、TRである“血,,が話者の領域に辿りついたかどうかは言及 されていないことを意味している。 LM

LLll

図く2-11> (10)のAの領域の境界線はプロファイルされている。 “泣来、辻去”と“~i立来、~泣去,'は「着点指向のもの」(丸尾2006:46)であるため、

移動物である、が終点に到達するかどうかは、文の全体的な意味から判断すべきである。

(11)哩風走通朱,坐在他対面的一十石発上。(鳴風はやってくると、彼の向かいの石の椅子 -23-

□三Ijij三

意①宝

B 我 A

(7)

に腰掛けた)(丸尾2006:45) (12)喝風向他走ゴミt来・(鳴風は彼のところに歩いてきた)(盲)

(11)は``哩風”は確実に``石発上,,という領域に辿りついたが、(12)は"他”という領域に接

近してくるという読みが強い。

(13)白汗心跳辻去楼着地艀子笑到:“休真是我的心肝小宝瓜,肚子里的銅虫。',(白開心は彼

女のところに飛んでいって彼女の首を抱きしめて、笑った。“お前は私のいとしい人だ。

お腹の中の回虫だ',)(鉋)

(14)他活未悦完,燕南天和小量几已軍了近来。(彼の話がまだ終わら態いうちに、燕南天と

小魚児は走ってきた)(絶)

(13)、(14)はともに“白升心"、‘`他,'は“地”と“他,,という領域に辿りついた例である。

(15)他悦活的声音扱小,但黒白双蛇的眼晴己一芥向他瞭了泣来,他却似乎没有看児,逐是在

雛他的人像(彼の声はとても小さかったが、白黒蛇の目線が一斉に彼を睨みつけた。

しかし、彼は見ないふりをして、人間の像を彫り続けた)(鉋)

部分・全体のスキーマは、日常言語の概念構造の拡張にかかわるイメージスキーマの一つで

ある(山梨2000:146)。(15)では、TRである“眼購,'が直接移動するのではなく、移動するの

は「視線」である。“眼晴,,と「視線」は部分・全体のスキーマとして理解される。(15)は物理

的な存在の空間移動ではなく、抽象的な移動と見ることができる。

(11)~(15)まではAの領域の境界線がプロファイルされているのが特徴であるが、Bという領

域の境界線がプロファイルされている例もある。

(16)休圦我的腿下爬辻去。(私の股をくぐってください)(自)

(1のの“腿下迩はBという領域の境界線であって、プロファイルされている。

TRの移動軌道はいくつかの特徴を持っている。

2.3.4.2TRの移動する軌道の特徴 2.3.4.21A領域からB領域への直線的な移動

2.33,2.3.4で見てきた例と次の例は殆ど直線的な移動だと言える。

(17)汽牢升泣析去。(車は橋を渡っていった)(自)

領域Aと領域Bの間を直線的に通過する場合の用例を見てきたが、空間移動に関しては、あ

る高さを通過領域にし、その高さを超えるという曲線的な移動も見られる。

2.3.4.2.2A領域からB領域への曲線的な移動

(18)那十跳高迄劫員跳了三次オ圦横粁上跳了泣去。(あの高跳び選手は3度目にしてバーを

飛び越えた)(森1998:123)

森籾8:123は(18)に関して、バーを境界線と見立てて、バーの手前からバーの向こう側へ

飛びこすことを表し、決してバーの下からバーの上へ越える行為を表しているのではないと説

明している。しかし、"跳高迄幼員',の通過した領域はaからbまでの高さを意味するのである。

ただし、aからbまでの直線的な移動ではなく、cからdまでの曲線的な移動である。つまり、

TRである“跳高迄幼員,,が通過した領域はaからbまでの高さであって、移動軌道はcからd

までの曲線である。図く2-12>では、AとBはそれぞれ二つの違う領域を指すが、この場合の

領域Aと領域Bは離れているのではなく、隣り合っているのが特徴である。aからbまでの領

域の境界線はプロファイルされている。

-24-

(8)

壬:中国語の“辻来、辻去”と“~辻来、~辻去,,について ロ 図く2-12> cb

(19)隊剛掌i超球来,友了辻去。(陳剛はボールを手に取り、サーブをした)(杉オ寸1988:156)

(19)もTRである“球'はaからbまでの領域を通過し、Aという領域の境界線を越え、B という領域に入るのである。 2.3.4.23角度のある移動

動詞“翻,'、“鋳,,、“倒”などは“~泣来、~泣去,'の前に接続すれば、主体や事物が角度の

ある移動を表す6 CO)翻泣身去。(寝返りを打つ) (21)特ゴミt腿来。(後ろを振り向く) (22)倒泣失去。(振り向く) TR=1M ------- ̄~、、

□□

図く2-13>

(20)~(22)の例は、図く2-13>で示されるように、体の一部が起点Aという領域から終

点Bという領域まで180度移動することを表す。

Lindncrl981,1982の「再帰的TR」にならい、ここでのLMと、の関係は「再帰的」だと見

ることができる。つまり、(20)~(22)は体の一部がLMとして働き、残りがⅢとして働い ているのである。 (23)把名字倒igt来写。鮖前を後ろから書く)

②)は名前を書く順序の移動を表すが、角度から考えれば、これも180度の移動になる。

勿論、前に接続する動詞の意味によって、180度でない場合もある。 (24)他側泣きL来向我。(彼は私に向かって聞いた)

(24)は動詞"側,,の意味により、移動する角度は90度までだと見ることができる。

杉村1”7:170は「"回,鋳,別,別鋳,紐,側,傭,背,弩,,など、方向転換を表す動詞は ほとんどの場合、“近来・辻去,,を伴う」と指摘する。

(25)覗任回辻失去,向那些双子友了十信号。(キャプテンは後ろを振り返ると男たちに合図

をした)(杉村19W:171)

(26)寒小宇鋳辻身去,背着陳忠平,拉升雷帝,着着箇外税。(寒小字は向こうむきになり背

中を陳忠平に見せたまま、カーテンを開け、窓の外を見ながら言った)(同上) これはまさに、主体が体を移動する前に見えているもの(領域A)と、方向転換によって新 たに見えてくるもの(領域B)とが違い、異なる領域であるという性質が強いと言える。つま り、“来"、“去''は、異なる領域であることを示していると言える。

以上はTRカミ実際に物理的に移動していくプロセスを話者が見たままの状況として、客体的

に捉えた場合の例である。 -25- 『 ジワーーつ ̄ ̄ ̄ グ ゲ ヴ

画!○

' 6 J 0 0 A 』 A 、 、 1111 、 B 』

(9)

24抽象的な移動一一視点の取り方と表現の意味 単純な方向の移動ではなく、ある状態の変化を表す時でも“~近来、~泣去,,を使うことが できる。話者の視点や視線の動きが事態の解釈に重要な関わりを持ち、それらが言語表現にも 反映されている。視点によって、話者のもとに移動する場合は“~泣来,,で、話者から離れる 場合は“~泣去”である。 (27)把那家工「栗i立来も(その工場を買い取る)(白) (27)は“~泣来,,を使っているが、実際何も移動していく物体はなく、ここで移動している のは“工r,'の権利である。話者によって、心的に“工「,,の使用権が他人から話者まで移動 する経路が表現されている。つまり、“笑,,という行為によって、対象“工r,,が移動するので

はなく、“工ノー,,の抽象的な権利が話者の方に移動するのであり、TRである“工r,,の権利は

他人という領域を超え、話者という領域に辿りつくのである。 (28)把錦栃寺泣来。(優勝旗を奪い取って来る)(中) (29)“老樹同志,祢好棯法'冴!”他羨慕地望着櫛輻,恨不得立吋把栃ラリドミi重手松法学近来。(「楊 さん、あんたの銃は大した腕前だねえ!」彼は羨ましげに楊傑を見つめていた。すぐに も楊傑の銃の腕前を自分のものにしたかった)(杉村1997:159) (28)、(29)はTRである“錦杯,,、“棯法”が話者``我イ「]',(省略されている)と“他,,のもと に移動することを表す6

CO)送句日珸翻痒辻来是迭/iL意思。(この日本語を翻訳すると、こういう意味になる)(自)

Cl)迭句双珸翻悸i立去是迭小意思。(この中国語を翻訳すると、こういう意味になる)(自)_

CO)、(31)は話者が中国人である場合の発話で、話者の母国語に訳すw場合は"~ゴミt来,,を使い、

話者の母国語以外の言語に訳す場合は“~辻去,,を使う。

G2)他的銭財都被我イド]拾鵠辻来了。(彼の財産はすべて私たちに編し取られた)(自)

(32)の'Rである“銭財,'は“我イ「],,という領域に移動したことを表す。

“辻去、~泣去,,が使われる場合、TRは話者から離れていくことを表すb

c3)那一片樹林子,全ロリ他芙泣去了。(あの森をみんな彼に買われてしまった)(中)

移動物である“村林子',の権利は話者の領域から“他',の領域へ移動したのである。

以上は状態の展開が話者の心の中で組み立てられているものであり、心的走査(またはメン

タル・スキヤニング)と呼ばれるこうした表現は、視点(心の視線)を鮮明に反映している(辻

2002:”)。

次は杉村'”7の研究を参考に、“~近来、~述去,,によって、日常生活の現象が言語表現に

どのように表現されているのかを見てみよう。 2.4.1正常な状態と非正常な状態

正常な状態と非正常な状態という二つの異なる領域の間で、TRである主体や事物が正常な状態と

非正常な状態の境界線を越え、非正常な状態の領域か正常な状態の領域に入ることを表す。正常な

状態から非正常な状態への移行は“泣去、~泣去',によって表され、非正常の状態から正常な状態

への移行は“i立来、~近来”によって表される。

生きていることや意識がある場合は正常で、死んでいくことや意識がない場合は非正常だと認識さ

れる。

c4)他又活辻来了。(彼はまた生き返った)(自)

(34)は本来の正常な状態(あるいはより良好な状態)に戻ることを表している。

(35)人都泣去了,情大夫也投用。(本人はもう死んでしまったから医者を呼ぶまでもない)(中)

(36)他一所到送十消息一下子就昏辻去了。(彼はこの知らせを聞いた途端、意識を失ってし

-26-

(10)

主:中国語の“泣来、辻去',と“~辻来、~泣去”について まった)(自)

Cs)、(36)は死んでいる場合、意識を失う場合の用例である。

G7)我咲了洪,咲不j立来,在紗里汪一夏幼陶。(私は彼女の機嫌を取ろうと頑張ってみたが、

だめだった。夢の中でずっと合点がいかない)(空)

G8)弛税不是,iji早就把祢忘了,只是情堵通有点鋳不近来。(彼女は違うと言っていた。も

うとっくにあなたのことを忘れたと言ったが、機嫌は直らなかった)(空)

(39)休息了一会ル精神媛泣来了。(しばらく休憩したら、元気になってきた)(自)

G7)、G8)、(39)は人間の正常な精神状態に戻る例である。

Z4Z望ましいことと避けたいこと

人間にとって、望ましい状況、プラスになる状況にする場合は“j泣来、~辻来,,で、避けた

い状況は“泣去、~ゴミt去,,を使う。

(40))r卜道理他慢慢地明白近来了。(彼はこの事情が少しずつ分かってきた)

(41)逸脱明弛完全圦祢粗暴地加在弛身上的打由中恢夏了泣来。(彼女はあなたが乱暴で、か

つ彼女に与えたショックから立ち直ったということを証明した)(空)

人間にとって、望ましくないものを「自分の領域に留まらせず、自分の領域から追い払う」

場合は“辻去、~泣去”である。

㈹)当然警察是一定要追査康子的,康子慈祥オ能庫付辻去,是我最担心的事情。(ただ、こ

れから当然起こると思われる警察の追及を、康子がどうして逃げきれるかと、それだけ

が心配でたまりませんでした)(杉村1997:162)

“)対子他的工作,迭些人或者公升反対,或者暗中作梗。他之所以憩算能移庫付i§t来,那全

鑓寺本首相的枚勢和威望。(彼らの陰に陽になされる妨害や非協力をこれまでどうにか

乗り切ってこられたのは、寺本首相という「虎の威」のゆえであり、……。)(杉村1197:

165)

鯉2)は話者にとって望ましいことではないため、自分の領域に留まらせず、外へ行かせるの

で、‘`~泣去”を使う。㈹)はマイナスの状況を望ましい状況に変えるため、“~辻来,,を使う

のである。 意図的にごまかして避けたい時は、“~泣去,,を使う。 (44)蒙混不泣去了。(もうごまかしようがない)(中) 2.43表と裏 普通、表の状態にする場合は“~近来”で、裏の状態にする場合は``~泣去,'である。

対象に表と裏がある場合、表の部分を話者から離し、裏にする時は、“~泣去”で、話者に

対して、表の状態にする時は、“~i立来”である。

(45)祢把手翻泣来i上我礁礁。(手のひらを上にしてみせてください)

“6)祢把手翻泣去辻我樵礁。(手の甲を上にしてみせてください)

015)は、“手,'を“泣来”することによって、表の状態にすることを意味し、(46)は、‘`手”を

“泣去,,することによって、裏の状態にすることを意味する。

以上は、物事の表と裏によって、“~述来”と``~辻去,,の使い分けをしているが、そうでな

い場合もある。

杉村1”7:171は、「表にする」「裏にする」は“翻,,という動詞に“辻来・泣去”を付けて

表すという。

(4刀祢把手心翻辻来辻我礁礁。(手のひらを上にしてみせてください)(杉村1”7:171)

杉村1997:171は(47)の例を、「表にする」場合に``近来Pが使われると解釈しているが、実

-27-

(11)

は「裏にする」場合も、“~泣来,,を使うことができる。

(48)体把手背翻辻来辻我礁礁。(手の甲を上にしてみせてください)(自)

すなわち、「表にする」、「裏にする」は関係なく、話題になっている部分を話者側に引っ繰り

返す場合は、“~j立来”を使うのである。同じく杉村の例であるが、

(49)李膵把相片翻辻去放在巣子上,上面扣住地剛剛喝完水的玻璃杯。(李暉は写真を裏返し

に机の上に置き、上から茶を飲み終わったばかりのガラスコップでおさえた)(杉村

1997;172)

(49)の“相片''は普通画像のある面のことを意味するので、画像のある部分が話者に近づく場

合は“~泣去”となる。

しかし、“相片”の裏のことを話題にするなら、画像のある面を裏にしても、“~近来”を使

う。

(50)把相片的背面翻泣来放在菓子上。(写真の裏を上にする)(盲)

つまり、物の表や裏のことを話題にする場合、その物を「表にする」か「裏にする」かとは

関係なしに、話題になっている面を話者に向いた状態にする場合なら、“~近来,'となり、話者

から離れ、裏の状態にする場合なら“~泣去,’となる。 更に、物の表や裏に関係なく、ただ話者が意識している側を話者に向いた状態にする場合は、 “~j立来,,で、そうでない場合は“~泣去,,を使う場合もある。

(51)茂造生気了,用双手把吃悼半辺的木叶蝶色翻了辻来,仔細地副着刺吃着。不管信利億公

悦,他再也不搭腔了。(茂造は、むっとして、ついでに片身を食べ終わった目板鰈を両 手を使って裏返し、丹念に骨をよけて食べ始めると、もう信利がどう話しかけても相手 にならなかった)(杉村19W:172)

(52)他一@k而尽,井把酒忠反扣泣来姶大家看。(彼は一息に飲み干し、盃を逆さまにして全

員に見せた)(杉村1997;173) (51)の話者は魚の身のある部分を食べたいから、焦点は身のある側に置かれており、その側 を話者に向いた状態にするので、“~ii来',を使っている。 (52)は“酒忠”の中の様子を見せたいため、焦点は“酒患',の底にあり、その底を話者の手 前にする場合は``~i立来,’となる。 (53)我的名字被倒辻来写,井用虹筆打上了“×"。(私の名前は逆さまにして書かれ、なおか つその上に赤で「×」が打ってあった)(杉村19W;173) (54)把稿翻辻来仕我看看价桟。(本を裏返して、値段を見せてください)(自) 文は左から右へという順序で書くので、視点は普通左側にあり、右から左への移動は“~泣 来''を使う。よって、名前が右から左へ移動する時は、“~泣来',を使う。(54)は本の値段を見 たいため、焦点は裏側にあって、本の裏側を手前にするには“~泣来',を使う。 以上は話者の心的要素に左右され、“~辻来、~泣去,,が選択される用例である。 2.4.4時間領域への転換 「時間は移動する物体である」(ThneisamovingObiect)(LakoぽandJOhnsonl980:41-44)。時 間概念を表すのに空間化メタファーを用いる二とカミできる。つまり、“辻''は空間のドメインを 背景化して、時間のドメインに拡張されうる。

図く2-14> -28-

(12)

王:中国語の“辻来、辻去”と“~辻来、~辻去”について (55)祢距辻去大不一祥。(あなたは昔と少し変わっている)(空) (56)他伯都是近来的人。(彼らは皆経験者である)(空)

(55)のように、“現在”に視点を置けば>“現在,'から離れ、「過去」のほうへ向っていく場

合は“泣去、~泣去”である。“現在',に視点を置き、「過去」から“THI在,,に向っている場合 は"泣来、~j立来”である((56)の例)。 2.4.5是と非 歪んでいること、非であることを正す場合は鶴~ゴミt来,,を使う。 (57)把坏刀慣改泣来了。(悪い習慣を改めた)(中) (58)功j立来。(思い直させる)(中) 2.4.6可能表現

空間的に、時間的に、数量的に、ある領域の境界線を超え、別の領域に到達できるか否かの

場合は「V+得十泣来」と1V+不十近来」という表現を使う。 (59)迭公大的林境,祢三天忽公砲得辻来?(こんなに広い営林場を三日で全部見て回るのは ちょっと無理でしょう)(杉村19W:166) 1M林場

図く2-15> (59)はTRである称,'がAという領域の境界線を超え、LMである“林溺,,を通過し、Bと いう領域に到達できるかどうかについての文である。 (60)達焦渇的地面也滋洞不泣来的春雨。(乾ききった地表さえ潤すことのできない春の雨) (杉村19W:167) (60)もTRである“春雨”がLMである“焦渇的地面”を通過し、Bという領域に到達できな いという文である。 ある状況に対して、話者がその状況の領域を通過できるか否かという意味を表す場合は「v +得十泣去」とⅣ+不十泣去」という表現を使い、ある推測や判断を表す6 (61)迭末西迩看得泣去,休就栗了ME。(これはまだなんとかみられるよ,買ったらどう)(杉 村1997:169)

(②工作迭公忙,我再清假,実在税不泣去。(仕事がこんなにも忙しいのに、これ以上休み

をくれなんてとても言えたもんじゃない)(杉村1997:170) (63)外表上逐悦得泣去的年経人。(外見はまあまあの若者)(杉村1997:170) 「V+得十泣来」と1V+不十泣来」は、話者が終点という領域に立っていて、TRがその状 況を通過できるか否かということによって、達成できるか否かという抽象的な意味を表現する。 それに対して、「V+得十泣去」と|V+不十辻去」は、話者が起点という領域に立っていて、 TRがこれからの状況という領域を通過できるか否かということによって、話者のある判断や 推測という抽象的な意味を表すら (64)名太多了,我実在看不辻来。(本が多すぎて、読みきれない)(高2005:60) (65)*お太多了,我実在看不泣去。(本が多すぎて、読みきれない)(同上) “~辻来,,の意味によって、(64)は本が多すぎて、読むという行為が達成できないという意 味を表すが、“~述去''は達成という意味がないため、(65)の文は非文になる。 -29-

(13)

3.終わりに 本稿は中国語の“辻来、述去',と“~近来、~泣去,'について考察した。“辻”はある領域を 通過するという意味を表すが、方向性の加わった“近来、辻去,,と“~泣来、~泣去”は起点 領域Aと終点領域Bという異なる領域の存在が不可欠であり、“辻,,とは異なることを明らか にした。“泣来、泣去',と“~泣来、~泣去”は、主体や事物が「Aという領域の境界線を越え、 Bという領域へ向っているか、或は通過する」というプロトタイプ的意味を表すが、主体や事 物の物理的な空間移動の用法から抽象的な移動の用法へ拡張され、様々な意味を表すようにな る。また、その主体や事物の通過する領域は点と空間の場合がある。 <注> 1)王志英「認知的な視点による“辻,,と“~辻”についての再分析」(投稿中)を参照。 く参考文献> Lako丘GeolgeandMaIkJolmson、1980.“AIgumentFormsinLexicalSemantics,,,PmccEzji"glqハルe 町elI?Mm0JzJノM2eZj"gq/、伽比施勿L加9,3伽Sbcね肌442-454. LangackeLRonaldW1986.“AnInn℃ductiontoCOglitiveGIamman,,COgmtiveSciencelO:l-40 LmdneLSusan,1981ML伽。-sG1"”伽伽ulb』sなqプ随'6側、bノセの…"加施w鋤⑰〃 1oz〃,,PhD・disseItationPniveIBityofCalifbmia,SanDiego. Lin〔melbSusanl98ZWhatGoesUPDoesn,tNecessarilyComeDown:ThelnsandOutsofOppositesJn PqpeP5ノラDJMieEKghZeel2的RBglO"cz/M2efj"gdiibZKgDLjP28WjS加肋c町,、30523Chicago:Chicago LinguisticSociety・ 高順全2005.<夏合趙向不予引申用法的珸又解軽>,<双珸学司>第1期,56-6l 木村英樹1996.『中国語はじめの一歩』筑摩書房 丸尾誠2006.<“辻,,の表す移動義について>,<現代中国語研究>第8期,40-51,朋友書店 森宏子1998.「"圦”の空間認識」,『中国語学』245号,122-131 杉棚専文1997.「現代中国語における「むこう」と「こちら」の諸相」,『日本語と中国語の対 照研究論文集』,153-180,くるしお出版 杉村1専文2000.「方向補語“辻''の意味」,『中国語』1号,58-60,内山書店 田中茂範・松本曜1997.『空間と移動の表現』研究社 辻幸夫2002.『認知言語学キーワード事典』研究社 島村典子2003.「動詞の前後に位置する起点と経過点上『中国語学』250号,122-136 山梨正明2000.『認知言語学原理』くるしお出版 <主要用例出典> (多):古尤《多情剣客元情散》 (絶):古尤《錨代双続》 (空):王瀕《空中小姐》 (自):筆者の作例

*出典を示していないものは『中国語デジタルマルチ大辞典』,ChineseWriterV8,

(KODENSHA)によるものである。 -30-

(14)

王:中国话 ω" 过来、过去"之...过来、~过去"忆 3 们 τ

关于汉语的"过来,过去"和飞过来,~过去"

王志英 提要 本论文对汉语的"过来、过去"和"...,过来、~过去"进行分析和考察。带有方向性的"过 来、过去"和"...,过来、~过去"一定具有表示起点的领域 A 和表示终点领域的 B ,表示的基本 意思是主体或事物越过 A 领域的界线,朝着 B 领域或通过 B 领域。根据主体或事物通过的领域 的特征,可把其领域分为点和空间。空间移动时,从 A 领域到 B 领域可有直线移动和曲线移动。 直线移动时,主体或事物通过 A 领域和 B 领域的空间,曲线移动时, A 领域和 B 领域邻接,主 体或事物通过 A 和 B 的共同界线。"过来、过去"和"~过来、~过去"还可以由主体或事物的 实际的空间移动引申到抽象的移动。可表示各种各样的语用意义。 关键词:领域场所 空间通过起点终点 咱 t4 门气 U

参照

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