氏 名 生年月日
学位論文審査結果の報告書
本籍(国籍)
学位の種類
学位記番号
判立授与の条件
(博士の学位)平成 3年
大阪府
入口友香 博 士(農学第 238 号
学位規程第5条該当
7 論文題目 月 15 日 ーン的学位論文受理日
判立論文審査終了日
審査委員
触 における 日 メダカ2 云的 平成31年平成31年
構造の比 の 1月 2月 (主査) (副主査) (副主査) 、 1 5日 4日 からみた城島透
八丁信正小林徹
圃衝園圃圃
二次的接触とは,異所的に隔離された共通祖先に由来する遺伝的に異なる2系統が
地理的に重複するヒとである.二次的接触の直後に起こる生態学的,進化学朗プロセ
スは多様であり,特に二次的接触により生じる交雑帯は,種分化過程をかいまみるこ
とのできる「天無の実験場」として古くから注目されてきた.同一の種間あるいは集
団間で形成され元二次的接触帯を比較することで,由来,形成年代,地史的背景,物
理的環境が二次的接触帯の遺伝的集団構造にどのような違いをもたらすかを理解する
ことが可能となる.しかしながら,その研究例は数少ないのが現状である.キタノメダカ0ryzias sakaizumiiとミナミメダカ0ryzias la訂'pes (以下,総称を
メダカ2種とする)は,ダツ目メダカ科に属する小型の淡水魚で,水田などの氾濫原環
境を主な生息場所と〒る.近年メダカ2種は,遺伝学的・形態卓的・生態学的な差異
を根拠として別種記載された.しかしながら,自然環境下におけるメダカ2種の生殖
的隔離の実態は検証されていない.そのため,別種として取り扱うことに異議を唱え
る報告もある.2種は基本的に水系レベルで分布を異にするが,(D京都府の由良川水
系,(2)長野県・新潟県の信濃川水系,(3)丹後・但馬地方において,メダカ2種が二
釈的に接触してぃる可能性が報告ぎ五てぃる.また様々な地域において,④人為的
な放流によってメダカ2種が二次的に接触している.日本各地で形成されている二次
的接触帯を対象として,これまでさまざまな研究が行われてきた'しかしながらそれぞれの研究は,個別の地域を対象としており,メダカ2種の二次凾接触帯において推
定された交雑生態が異なる.さらに解析手法の違いから,結果を比較することが困難
である.したがって本研究では,由来,形成年代,地史的背景,物理的環境の異なる
日本産メダカ2種の二次的接触帯における遺伝的集団構造を同一の手法を用いて解析
し,2種の関係性について検討した. 材料と方法メダカ2種が二次的に接触している可能性のある上記の4集団(1×2)(3)④から採集
した個体を解析に用いた.各集団より採集した個体から全D酷を抽出した後,各個体
が持っmwNAがどちらの種に由来するのかを明らかにするために, mtDNAのWtb領域を
対象としたPCR-RFLP分析を行った.核DNA分析には,メダカ2種のそれぞれの種に由来
する対立遺伝子をPCR増幅断片長により容易に特定可能なM-marker20船を用い,それぞれが異なる染色体上に存在する10遺伝子座を分析した.核DNA分析の結果をもと
に,各集団の各遺伝子座における対立遺伝子頻度,各集団におけるへテロ接合度,F玲
やハイブリッドインデックスの値を求め,2種の交雑状態について比較した. ヲ△ ク、 の ^ 34 -岡^結果と考察 mwNA分析および核D醐分析の結果,(D京都府の由良川水系,(3)丹後但馬地方の5 水系では,自然環境下でメダカ2種が二次的に接触し,さらには自由交配しているこ とが明らかとなった.④人為的な放流により形成された日本各地の二次的接触集団 についても,メダカ2種が自由交配していることが明らかとなった.一方,(2)長野 貝・新潟県を流れる信濃川水系では,物理的要因によって2種の二次的な接触そのも のが妨げられていた.以上のことからメダカ2種は,いかなる環境・由来において も,接触すれぱ必ず自由交配することが示唆された. その一方で, a)由良川水系では,上流域からミナミメダカが長期間にわたりキタ ノメダカの分布域まで流下することで2種の交雑帯が形成されているにもかかわら ず,ミナミメダカの遺伝子頻度よりも,キタノメダカの遺伝子頻度が高いまま維持さ れていた.同様に(3)丹後但馬地方の5水系の集団は,2種の過去の交雑により生じた 集団であるにもかかわらず,キタノメダカの遺伝子頻度の方が高いまま維持されてい た.以上の結果から,メダカ2種は交雑するものの,それぞれが自らのゲノムセット を維持する機構を持ち,さらにミナミメダカのゲノムセットよりもキタノメダカのゲ ノムセットの方が有利であるという仮説が考えられた.物理的要因によって2種の二 次的な接触が妨げられている(2)信濃川水系においても,上述の仮説との矛盾は確認 されなかった. 本研究における集団遺伝学的解析により,メダカ2種は,接触すれぱ必ず自由交配 することが示唆された.生物学的種概念にのっとれぱ,野外で自由交配が確認された メダカ2種は同種であるという解釈になる.しかしながら本研究では,メダカ2種が自 らのゲノムセットを維持する機構をもち,キタノメダカのゲノムセットの方が優位で あるという仮説が提唱された.この仮説が正しけれぱ,2種を単純に同種(地理的亜 種)として扱うべきか,疑問が残る. 今後は,本研究で提唱された仮説を検証できるような交配実験を行う必要がある. この仮説が再現され,2種間に普遍的なものであれぱ,新たな種概念として提案でき る可能性がある,
本論文「二次的接触帯における遺伝的集団構造の比較からみた日本産メダカ2種の 関係性」は,わが国に広く分布する身近な淡水魚で,メダカの呼称で親しまれている メダカ種群oryzias latipes species compleX1こつし、て,国内に生息、する2種(ミナミ
メダカ0ryzias latipeSとキタノメダカ0ryzias sakaizumiD の関係性について集団
遺伝学的手法を用いて検討したものである.これらの日本産メダカ2種は,遺伝学 勺・形態学的・生態学的な差異を根拠として2012年にそれぞれ別種として分類されて いるが,飼育環境下では容易に交雑することが知られており2種が生物学的な別種, すなわち相互に生殖的に隔離された集団であることについて疑問がもたれていた.本 研究では,自然環境下においてメダカ2種が同所的に生息する二次的接触帯を中心に2 種の交雑実態の検証を行い,2種の関係性について検討がおこなわれている. 本論文は6つの章から成り立っており,第2章から5章まではそれぞれ異なる地域や 状況において二次的接触が生じている可能性のある集団の解析を行っている。これら の章では,それぞれ十分な採集地点と最終個体数を得た上で,分析方法を統一し,次 DNA分析ではマーカーとしてM-m釘ker2003という2種の対立遺伝子を判別するマー カーセットの中から選定した10遺伝子座の角軍析を行っている. M-marker2003は,そ れぞれのマーカーが対象とする染色体上の位置が特定されているため,ゲノムの広い 範囲を解析することが出来ている.また,母系遺伝マーカーのミトコンドリアDNA分
析も同時に行い,その遺伝子型構成から集団の母系起源の特定を行っている.第2章
では,京都府の日本海側を流れる由良川水系を対象とした解析を行っている.この水 系では、過去の河川争奪により上流部にミナミメダカが侵入しており,下流にもともとこの河川に分布していたキタノメダカが生息していふが,中流部で両種が混在し二
次的接触帯を形成していることが明らかとなっていた.本研究の二次的接触帯における集団遺伝解析の結果,2種が自由交配していることを明らかにしている.メダカ2種
の自然条件における交雑実態を明らかにしたはじめての研究成果として特筆すべきである.また,地史的な情報,生態的な情報を加えたうぇでこの河川における2種の交
雑の状況を精査すると,2種が自由交配しているにも関わらず一方的に遺伝し流入を
受けるはずの下流側のキタノメダカの対立遺伝子頻度が極めて高い状態で維持されて いることを明らかにしてぃる.このことは両者が交雑の結果,単純に1つの集団ヘと融合してぃくものではない可能性を示している.第3章では,由良川と同様に上流と
下流で異なる2種が生息する信濃川水系について,流域のとくに2種の分布境界付近の地域において網羅的な採集調査を行い集団遺伝学的に検討したものであるが,この水
系では地形的,物理的な要因から2種の二次的接触帯が形成されていないことを明ら かにしてぃる.第4章では,兵庫県の丹後但馬地方に5水系に分布する「境界集団群」 とよばれる2種の過去の交雑により生じたとされる集団についての網羅的な最終と集団遺伝解析を行っている.結果として,一部の領域ではミナミメダカの対立遺伝子が
高い割合で含まれているが,すべての集団が高頻度のキタノメダカの対立遺伝子に
よって構成されていることを示している.これらの集団では交雑の痕跡を残しつつも
キタノメダカのゲノムセットに近づいていった可能性が高い.第5章では,近年,多
くの地域で行われているメダカの移殖放流により生じている複数の2種の二次的接触
集団にっいての集団遺伝解析を行っており,いずれの集団においても2種の自由交配
が生じていることを明らかにしている. 号△ イ 、 の ^ 36-本研究における集団遺伝学的解析により,メダカ2種は接触すれぱ必ず自由交配す ることが示されている.生物学的種概念にのっとれば,野外で自由交配が確認された メダカ2種は同種(亜種)であるという解釈になる.しかし,メダカ2種は交雑するも のの,それぞれが自らのゲノムセットを維持する機構を持ち,さらにミナミメダカの ゲノムセットよりもキタノメダカのゲノムセットの方が優位であるという仮説によ リ,由良川や境界集団群のゲノム構成の結果について説明している.この仮説が正し ければ,2種を単純に同種(地理的亜種)として扱うべきではなく,従来の交雑の有無 を持って別種とする生物学的主概念の解釈に新たな視点を提案してぃる. 本研究は,十分な個体数や採集地点,明確な解析手法をもってメダカ2種の交雑実