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小学校3年生における特別支援児童と周囲児童との関係づくり

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†障害児教育専修 障害児教育専攻 指導教員:白石惠理子 原 著 論 文

小学校 3 年生における特別支援児童と

周囲児童との関係づくり

To Make a Relationship between a Child with Special Needs and

Other Children on the Third Grade at Elementary School

Sumiko SAKAI

キーワード:小学 3 年生,発達障害,仲間関係づくり,学級風土 Ⅰ 問 題 意 識 「学級風土の調査を続けていると担任の影響 力の大きさを痛感せざるを得ない。学級生活を デザインする責任者として,教師の役割は甚大 である」(伊藤 2010) とあるように1),発達障 害児が適切な仲間関係を形成し,周囲児童が発 達障害児を理解していく上で,教師の役割は大 きい。渡邊 (2010) は,「教室内外での周囲児 と発達障害児との関わりを質的かつ縦断的に直 接分析し,実態の精査が必要である。また,周 囲児との関係形成には他にも発達障害児の個人 特性や教師との関係,学級風土など多様な要因 が複雑に作用していると予想される。これらす べての要因を包括した関係性の機序を明らかに することが今後望まれる」と周囲児童と発達障 害児の関係性を多面的に明らかにする必要性を 論じている2)。また「どの子も仲間の中でこそ 自分の値打ちを見出し,自分をつくっていく」 (白石 2003) とあるように3),発達障害児も周 囲児童も,子どもたちが自分の中に抱える矛盾 に安心してぶつかり,発達の力を存分に発揮す るためには,生活・教育の過程でどのような人 に出会うかということが大きくかかわっている ことを日々の教育活動の中で痛感する。それは, 時にくじけそうな心を支えてくれる人であった り,自分の存在を認め,必要としてくれる仲間 であったり,一緒にいることで生きる元気が湧 いてくるような仲間の存在であり,そういった 仲間との関係の中で人は自分の値打ちを見出し, 成長していけるのではないだろうか。 これまで発達障害のある児童の個別支援のあ り方については一定明らかになってきているが, その一方で,ともに学校生活を送る周囲の子ど もと発達障害児の仲間関係や,学級づくりにつ いては十分に明らかにされていない。しかし, そのなかでも重要とされているのは,以下の 2 点である。 ① 自分の思いと相手の思いをつなげる教師 の役割 暴力や離席の激しい子どもが在籍する場合, 周囲児童への支援も求められる。筆者のクラス では,4 月当初には休み時間の場面で周囲児童

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が AD/HD 傾向のある児童の暴力や暴言に耐 えていたり,授業時間での理解しがたい行動に 戸惑いつつ我慢したりする傾向にあった。この ような場合,周囲児童に対してどうしてそのよ うな行動をとってしまうのか,といった説明を したり協力を求めたりすることがある。田中 (2006) は,「発達障害の特性を周囲児に伝える ことで,障害理解の深まりや具体的な働きか けがみられるようになり,両者の関係作りが可 能になる」と述べている4)。また,渡部・藤野 (2007) は,2 事例の発達障害児の学級適応過 程を検討した結果,「適切な仲間関係を築いて いくためには,生徒同士が互いに理解し,尊重 しあう学級全体の雰囲気と,発達障害をありの まま受容し,対応してくれる仲間の存在が大切 である」と指摘している5)。「自分の思いと相 手の思いをつなげること」は担任にとって課題 の一つといえよう。 ② どの子にも安心できる場所の確保 佐藤 (2008) は,「どの子どもも受け止めら れ大切にされている安心感と満足度の高い学 級集団の中では,友だちに対する許容度は高 くなり,『先生に協力しよう』という先生への 信頼感が深まる」と述べている6)。また松久 (2010) は,「自分が間違っても周囲から笑われ ることがない,失敗してもなじられない,自分 の存在を認めてくれるクラスは,子どもたちの 意欲を高める」と述べている7)。子どもたちが 自分を好きになり,自分の発達を喜べるような 教室になるためには,様々な課題を抱えた児童 にとって,まずは教室が安心できる場所になる 必要がある。そのうえで,特別支援児童にとっ ても,自分の得意なことを披露できる場所の確 保,みんなの役に立っているという実感が得ら れる活動が必要になる。 筆者は 3 年生を 2 年度連続で担任し,発達障 害を持つ児童がいる学級集団に対して,教育活 動を展開した。周囲の見方としては,小学校生 活も 3 年目を迎え一定の落ち着きが出てくるだ ろうととらえられがちで,低学年のような丁寧 な関わりを弱めていく傾向にあるため,児童が 困っているサインを出していても,気づかな かったり,本人の怠慢のせいにされたりという ことが少なからずある。高学年になると,体と 心にも大きな変化があり仲間関係とともに学習 上の課題が色濃く表出されてくる。その為,周 囲にも課題が見えやすく支援の手を差し伸べる 必要性がかねてから指摘されている。 このように小学校 3 年生という時期は,高学 年や低学年ほどには注目されていないのが現状 であるが,発達障害をもつ子どもにとっても, 周囲児童との関係づくりにとっても,さらには 学級づくりにとっても,実践的に重要なカギを 握る学年であると考える。小学校 3 年生は発達 の質的転換期の準備段階であり,かつ学習課題 も抽象的なものへと質的に大きく変化する時期 である。そのため,様々な不安定さをみせやす く,この時期の過ごし方が,その後の小学校生 活においても重要な意味をもつのではないかと 考える。 そこで本研究では小学校 3 年生に焦点を当て て,発達障害のある児童と周囲児童の仲間関係 について研究を進める。 Ⅱ 研究の目的 Ⅰをふまえ,本研究の目的は以下の 3 点とす る。 ① 小学 3 年生の時期に発達障害児と周囲児童 がどのように関係しながら発達していくの か,事例的に明らかにする。 ② 発達障害について周囲児童がどこまで理解 することができるのかをふまえ,教師がい かに両者の適切な人間関係を支援すべきか, 周囲児童の思いと発達障害児の思いをいか につないでいくか,について考察する。 ③ 発達障害児と周囲児童の育ちあいのために 必要な校内支援体制・地域支援体制のあり 方について明らかにする。 Ⅲ 方 法 筆者が 200X 年度に担任としてかかわった K 小学校の 3 年生のクラスには,発達障害が疑わ れる児童 A 男が在籍していた。本研究では, A 男と周囲児童のかかわりを中心にみていく。

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本研究の方法は,以下の 3 点である。 ① A 男が小学校 3 年生の時期にどのような発 達的変容を見せたか,とりわけ教師との関 係,学習場面での様子,仲間との関係に着 目してエピソードを時系列的にまとめ事例 的検討を行う。 ② A 男と周囲児童がどのように関係しながら 発達していくのかについて,学校生活での 出来事や行事で見られたエピソードを時系 列的にまとめ事例的検討を行う。その際, A 男との関係でトラブルを起こすことも多 かった B 男,C 男についても詳しくみてい く。 ③ 教師が発達障害のある児童と周囲児童との 適切な人間関係をいかに支援すべきか,両 者の思いをいかにつないでいくかについて, 筆者が行った教育活動のエピソードを時系 列的にまとめ分析する。 Ⅳ 結果と考察 1) 対象としたクラスのプロフィール 筆者は K 小学校に赴任した 2 年間,連続し て第 3 学年の担任として勤務した。3 年生は 3 クラスあったが,その学年集団は,発達障害を 抱えた児童が多数存在すること,エネルギーあ ふれた学年であることなどが申し送られた。筆 者が担任するクラスについては,特に AD/HD が疑われる児童 A 男について留意するように 指摘された。そのほか,選択性緘黙の児童 1 名, 不登校傾向の児童 1 名,脳機能障害の児童 1 名, 外国籍児童 1 名,学力不振の児童,幼さを抱え た児童,一人親家庭の児童,祖父母に育てられ ている児童が在籍していること,教育熱心な保 護者が多数いるなどの情報を得た。 2) 対象児童 (A 男) について AD/HD の疑い (巡回相談員の巡回相談員に よると混合性 AD/HD)。9 歳 7 カ月で受けた WISC―Ⅲの結果は言語性 IQ99,動作性 IQ83, 全検査 IQ90 である。前籍校からは「本児は AD/HD の疑いがあるが,母親と連絡が取りに くく相談する機会を持てないままであり,発達 検査を受ける段階にまで達していない。また母 親の本児の発達に対する課題意識は見られな い」という申し送りが来た。また,A 男が在 籍していた学級には数名の発達障害児童がおり 全体的に落ち着かない雰囲気の学級であり,A 男はそれに誘われるかのように授業中立ち歩く, 廊下に人の気配を感じると見に行き,汚言をふ くんだ言葉を発してしまう,授業が始まっても 教室に帰ってくることができない,集会などで はじっと並ぶことができず体育館をうろうろす る,周囲児童への暴言暴力,ルールの逸脱など, 数名で徒党を組んで学校生活を送っていたとい う。そういった児童が他にも在籍しクラス経営 がままならなかった状況が伝達された。 4 月最初の 1 週間の観察では,授業中集中が 続かず立ち歩きが目立った。廊下に人が通る, 窓の向こうに変化があるなど,ちょっとした刺 激に反応して,見にいってしまう,自分の気持 ちを言葉でうまく表現することが難しく,すぐ に暴言・暴力をふるってしまう,集会ではじっ と人の話を聞くことができず,周りの児童にす ぐにちょっかいを出してしまう,漢字練習が特 に苦手で,鉛筆を握ろうとしない,教師の発問 にすぐに答えてしまう,などの特徴的な課題が 目立った。A 男は,1 週間ほどで K 小学校区 をほとんど回り,地名や特徴を把握した。また 教師の名前のほとんどを覚えるなどした。 3) 主な周囲児童 全体としては自分の思いは持ちつつも,あか らさまに全体の場で思いを述べる児童はいない クラスであった。しかし,自分の思いをそれぞ れが持っており,関係ができるとこっそり筆者 に思いを話しに来る児童も多くいた。ここでは, このクラスを分析するにあたり重要であった B 男と C 男について述べる。 〈B 男〉 遊びの場面で勝ち負けをうまく消化しきれず にいつまでもこだわり,精神的に不安定になり, 手を上げてしまう B 男。大人に対して逆なで するような言葉を投げかけたり,授業中も,建 設的な意見を発表する児童に対して意欲を減退 させるような言葉で,場の雰囲気を沈滞させた りしてしまう傾向がある。95 点の答案に納得 ができず,イライラして机をけり,テストプリ

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ントを破ってしまったことがあった。「愛され たい」「認められたい」「ほめられたい」「役に 立ちたい」要求をストレートに教師に投げてく る。掃除の時間には,やることが狭い範囲で明 確でなければ取り組めないが,掃除用具と場所 を指定して,責任を持ってきれいにするという 課題を与えると,喜々としてとりくむことがで きた。また,教室移動がある授業では,次に取 り組む活動に自信が持てない場合,始業時間が 来ても動こうとしなかったときがしばしばあっ た。 〈C 男〉 3 歳上に姉がいる。家ではよく姉にいじめら れると話す。一見おとなしいが,友だちの中で は,自分の意見を通そうとすることが多い。A 男の言動に対して最初は意見を言い指摘するこ とをしていたが,暴力や暴言の激しい A 男の 行動に恐れをなして外遊びをやめてしまった経 緯がある。特定の児童と,室内で絵を描いて過 ごした時期もあった。6 月に実施した学級に対 する信頼度を測定するアンケートでは,自分の ことも周りのこともマイナスの評価をしている 傾向が強いことが分かった。C 男は 6 月下旬ご ろ母親に A 男のことについて悩んでいると話 した。 4) 各学期の概要 ① 1 学期の概要 A 男は転校して環境が一変した学校生活に 緊張し,自らを誇示していた時期である。前の 学校では通用してきた暴言・暴力,ルールから の逸脱であるが,それらの行為を許さないとい う取り組みに対していら立ちが目立った。トラ ブルが起こるたびに学級で話し合いを持つこと を繰り返した。また,A 男がなぜこのような 態度になってしまうのかという説明を何度も周 囲児童にした。 6 月に行われたリレーの活動では,隣の班の リーダーがやる気が出るように「ドンマイ」 「ゴー,今出る」などの声かけをしていること で自分のチームの記録をどんどん伸ばしている のを目の当たりにして,自分の横暴なふるまい と比較し,自分の不適切な言動に気付いたのか, 問題となる言動が極端に減った。そして A 男 は,隣の班のリーダーのようにみんなに認めら れるより良い自分になりたいと,その児童をあ こがれのモデルとして,活動ごとにその児童の 様子を観察してはまねをするということを繰り 返した。A 男は前向きにがんばれる日とがん ばりが続かない日の差が激しかったものの,こ のエピソードをきっかけに徐々に自分のがんば りを認めてほしいという態度が見られるように なった。 その一方で,友だちへの暴言が保護者を巻き 込んでのトラブルにまで発展し,筆者と母親が そろって友だちの母親の前で謝罪をすることに なった。その際,A 男は,感情のコントロー ルがきかない自分に気づいているかのような発 言をした。 ② 2 学期の概要 A 男は,徐々に自分の感情や態度をコント ロールしようとする様子と,みんなの役に立ち たいという行動をみせるようになってきた。同 時に,周囲児童から認められる場面が増えてき た時期でもある。 学習面で,短時間ながら話をすることなく課 題に取り組むようになってきた。運動会でのリ レーなどの活躍で,仲間とともにがんばること の楽しさを味わい,落ち着きを見せ始める。し かし,休み時間など教師のいない場面での勝負 事には興奮して,暴言・暴力が出る。一方周囲 児童は A 男に対して自分の不快に感じている 思いを出せるようになってくる。 さらに周囲児童にも学習障害,成育歴などを 背景とした「問題行動」が顕著にあらわれてき た時期でもある。そのため周囲児童についても, 教育相談や学習状況を保護者に知らせるための 懇談を放課後に頻繁に持っていた。 12 月には,A 男について学校教育課の相談 員との教育相談を持った。保護者が A 男の障 害についての理解を深められるように,保護者 と学校教育課の相談員が立ち会って授業場面に おける A 男の観察を行った。A 男には,教師 の発問に対して手を挙げずにぶしつけに応えて しまう,周囲の感情を逆なでするようなことを 言ってしまう,周囲児童が時間をかけて準備し たクイズの答えを話してしまい,一瞬にしてだ めにする,など周囲児童に理解しがたい行動が

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色濃く残っていた。周囲児童の一人である B 男は,筆者がどのように説明してもそのような A 男に対するいら立ちが隠せなくなっていた。 B 男は 1 学期からため込んでいた A 男に対す る不満と自分自身への葛藤が噴き出してきたよ うであった。 ③ 3 学期の概要 A 男は,長縄大会や「まとめの会」の活動 を通して,周りの人への言葉かけをさらに変容 させ,協力して活動することの楽しさを味わっ ていった。また,自身の特性に気付いている発 言が顕著にみられるようになり,平常でいられ ない場合,自分からクールダウンする時間と空 間を求めてくるようになった。 一方周囲児童においては,A 男へのこだわ りがみられる B 男の課題が顕著になってきた 時期でもある。 3 学期の長縄大会への取り組みの際,ほとん どの児童が,互いに賞賛の声かけを行い,記録 を伸ばそうと一致団結できたのは,教師がゆっ たりとかかわることのできなかった 2 学期の中 で,子どもたち自身が,自治の力をはぐくんで いたからと思われる。教師の知らない世界の中 で,子どもたちは賞賛し合うことが心地よく, 集団の力が高まっていることを肌で感じていた と思われる。帰りの会が教師不在でも成り立つ ようになり,その翌日には,「昨日の帰りの会 の漢字クイズコーナーでみんな盛り上がって, 隣の先生が『そろそろ下校だから,出ておい で』って言われるまで盛り上がった」と,その 成果を伝える声が聞かれるようになった。 5) 小学校 3 年生における A 男の発達的変容 について ① 仲間へのあこがれからより良い自分へと 変わろうとする A 男は勝負にかかわる場面になると,失敗 した周囲児童に対して暴言でののしり,周囲児 童の意欲を低下させていた。しかし,リレーの 活動のエピソードでは,隣の班のリーダーがや る気が出るように「ドンマイ」「ゴー,今出る」 などの声かけをしていることで自分のチームの 記録をどんどん伸ばしているのを目の当たりに して,自分のふるまいに気付くことができた。 そして A 男は,隣の班のリーダーのようにみ んなに認められるより良い自分になりたいとい う思いになり,その児童をあこがれのモデルと して,活動ごとにその児童の様子を観察しては まねをするということを繰り返した。 これは小学校 3 年生という発達段階だからこ そ見られる姿といえる。この時期は周囲児童に 対する視野が広がり,他者と自分とを関連づけ, さらに自分の行動を対象化してとらえることが できてくる時期である。また,あこがれるモデ ルを目の当たりにすることよって,より良い自 分になりたいという自身の成長を信じ,積極的 に良いものを取り込んでいこうとするエネル ギーが湧きやすく,しかも行動として具体化し ていける時期である。高学年の発達段階に入る と,周囲から「かっこをつけている」「自慢し ている」などねたみの対象になることもあり, 本人もそうした他者の目を気にして素直に行動 しにくくなっていく。小学校 3 年生だからこそ, あこがれるモデルの存在は大きく,積極的に良 いものを取り込んでいこうとする大きなきっか けとなることが明らかになった。 ② 仲間との共同・協力によって高まってい こうとする 3 学期に大きく変化した点は,1 学期のリ レーでの取り組みでは,モデルをまねることに よって自分を変えようとしていたが,3 学期の 長縄大会での取り組みでは,記録が伸びていく たびに周囲児童と気分良く盛り上がり,ハンド タッチをする場面も見られたことである。「周 りから認められたい」という思い以上に,仲間 とともに共同,協力することによって自分たち が高まっていくことへの喜びが A 男のプラス の発達的変容につながっていることが明らかと なった。 ③ 自己客観視の兆し 小学校 3 年生の段階では「周りから見られて いる自分」という視点が芽生え始めたばかりの 時期である。それゆえいつもその視点が安定し ているわけではなく,自分に対してわかりやす く指摘をする大人がいる場面ではその視点が発 揮されるが,自分と同じ発達段階の児童と関わ り合っているときには発揮されにくいという行 きつ戻りつの状態を呈するのだと推考する。そ

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れゆえ「大人の前では態度を変える A 男」と いうように映ってしまうが,小学校 3 年生とい う発達段階を考慮すると,そのように揺れた状 態を見せることが当然の時期だと理解すること ができる。 一方で,A 男が「先生にあそびのときもつ いてきてほしい。そうしたら,ルールが守れ る」というように変化を見せたことについて以 下のように考察した。 自分の中にある,他者から見られる自分とい う視点を持つことが弱いと思われる A 男は, 自分の言動をコントロールするために自分の外 にある,担任である筆者を自己客観視するため の自分のモニターとして求めたのではないか。 このモニターとしての他者は単なる大人という 存在ではなく,頻繁に生じるトラブルにおいて, 子どもたちがお互いの思いを理解し,尊敬した 形で問題解決を図っていけるように丁寧に援助 してくれる大人でなければならないと考える。 さらに A 男はトラブルのなかで今までの ルールから逸脱する自分ではなく,そのルール に従ってみんなと遊べる自分になろうとしてい るからこそ,「先生がついてきたらルールを守 れる」という表現になったのだと考える。これ も 1 学期の A 男に比べれば大きな成長である し,それは他者とかかわってこそ現れてくる発 達要求であるととらえる。 また,3 学期になって,自分のイライラして いる状態を友だちに見られたくなくなっている 様子や,クールダウンの方法を知り,それを実 行している A 男の姿から,自己客観視の兆し を見ることができる。こういった姿を省察して みると,涙を流して謝罪をしたり,大人の前で は自分をコントロールできたりすることについ て,まだまだ無意識のうちに,周囲の状況・状 態にあわせて自分をころっと変えてしまう様子 は障害からくる特徴でもあると同時に,そうし た自分の行動を自己認識できるようになること が,A 男の次の発達課題であると考える。 ④ 謝罪を態度で表す 1 学期からのトラブルの中で,筆者は A 男 に対して適切な言動をとれずに周囲児童を傷つ けてしまった時には謝るべきであるということ を伝え続けてきた。その繰り返しのなかで A 男がかたくなに自分を正当化してきた相手にも, 自分の言動の反省と謝罪を態度で表すという行 為ができるようになった。 た だ,こ の 様 子 は,A 男 に と っ て す ぐ に 「ごめん」と言っておけばよいと,一つの方便 になってしまっているのではないかという面か らと,教師もそのように言っておけばその場が おさまるだろうという対処の方法の学習をさせ てしまっているのではないかという意識をもつ べきである。 それでも,そういった姿に触れることによっ て周囲児童は,「あやまる」という行為ができ るようになってきた A 男を評価し,子ども同 士のトラブルが丸く収まるようにもなってきた。 初めはかたくなに自分の立場のみを主張してい た A 男が,3 学期には柔軟な謝罪をするよう に変容したことをみると,その場を逃れるため 謝れば済むという思いだけでなく,謝るという 行為を通して,自分の行動をコントロールし, 自分の謝罪の意識を表出することで周囲児童に 承認してほしいという思いがあったと考えられ る。同時に,周囲児童もまた,A 男の努力を 感じ取っていたと推考できる。 ⑤ 活躍する場所があるということ 帰りの会に自分が調べてきた魚偏の漢字の読 みを当てるクイズを担当することで大変やりが いを見出し,ルールを作って周囲児童に答えさ せるということを何日にも及んで活動できた。 魚偏の漢字を毎日探す必要があったわけだが, それを A 男に毎日繰り返すことができるほど のやる気を喚起させたものは何かということを 考察したとき,やはり,「みんなの役に立ちた い,認められたい」という発達的要求に依拠し た活躍の場所となっていたことがうかがえる。 自分は価値ある存在として認められる場所があ るということが発達にとって大きなエネルギー につながることが明らかとなった。 ⑥ 学習の変化 学習においては,丁寧な見取りと適切な指導 を前提として,さらに重要なことは周囲児童と のかかわりである。A 男が学習の力をつけて いった背景にあったのは,「漢字がんばってる なあ」など周囲児童が自分を見ていてくれて, 良い方向に変わっていくことを評価してくれる

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仲間がいたことであり,自分が活躍する場が保 障され自分の居場所を実感できる空間が存在し ていたことである。その仲間と空間に支えられ ることで,よりよい自分になっていこうとする エネルギーがうまれたと考察する。 6) A 男と周囲児童の関係について ① 周囲児童との親和的関係の重要性 人が変化しようとするときにはかなりのパ ワーと周囲からの激励がないと,その意欲を継 続しようとする気力が続かないことが往々にし てある。A 男と周囲児童との関係は頑張る自 分を見ていてくれている仲間であり,良い方向 に変わっていくことを評価してくれる仲間であ り,そこは自分が活躍する場が保障され自分の 居場所を実感できる空間であったと推考する。 その仲間と空間に支えられることで,よりよい 自分になっていこうとするエネルギーがうまれ, さらに,そうしたよい方向へ向上していこうと する A 男の変化をみている周囲児童は,自分 理解が進み,自分自身の成長にも手ごたえを感 じていて,だからこそ,A 男と自分との間に 「A 男も○○を頑張っている」「わたしも○○ を頑張っている」といったような共通性を見出 していけるのだと考えられる。 ② クラス集団で一つの目的に向かう取り組 みの意味 リレーでの活動,各学期のまとめの会,縄跳 び大会で競争という形態がたびたび出てきた。 競争という形態はトラブルが起こるから全くな くしてしまえばよいというものではない。筆者 は競いあうという中身を丁寧にひも解き,その 意味を子どもたちに説明してきた。なわ跳び大 会に際しては「勝った,負けただけではなく, このメンバーでよりよい記録を追及していこう。 みんなが自分の持っている力を出し切るにはど うしたらよいかを考えよう」と,子どもたちに 繰り返し話し合いをさせてきた。その活動の中 で,子どもたちは徐々に,個人的,あるいは, チーム間での競争から,自分の成長を認めるだ けではなく,「このチームのバトンを渡すのが 上手になった」「このリーダーの声かけならが んばれる」など友だちの頑張りや成長も認めら れるようになってきた。楠 (2009) の言うよう に,個人的,あるいは,チーム間での競争から, 「発達的な共感関係」8) の構築が進んだことが 明らかとなった。 ③ 大人がいないところでのトラブルを通し て成長すること 意見が対立したり複数の意見の中で葛藤した りする機会をとらえて,お互いが他者を理解し, 共に生きる力になるような導きが,重要である と述べてきた。 A 男の感情に任せて周りに暴言を言ってし まう様子は,大きくは改善されなかったものの, 「ごめん」と謝ることができるようになった A 男に対して周囲児童は,A 男が間違った言動 をしたときには「やめときや」「そんなこと いったらあかん」など精一杯の言葉かけをする ようになってきた。 仲間集団で遊びを展開する中で,A 男にひ どいことを言われている友だちをかばうと同時 に,A 男にそれは間違っているよという思い を伝えるという,対等な関係が成立してきたこ とは次につながるお互いを尊重し合う関係への ステップとなったと考えられる。 筆者は,3 年生の時にかみつくがごとく友だ ちと口げんかしていた A 男が,5 年生になっ て友だちと楽しく休み時間を過ごしていた姿を 見て感心した。小学校 3 年生の段階で,仲間と 真剣に対立し,葛藤していた経験が,やがてト ラブルを起こしたお互いの観点を融合させ相手 の立場を配慮して問題を解決していく力を伸ば していったのだと推考する。 けったり叩いたりした行動に視点を当てれば, その子どもは一方的に悪者にされてしまう。し かし指導者が「どうしたのかな」と子どもの思 いに問いかけるならば,良い悪いという二分的 な見方ではなく「なぜ」という問いかけをく ぐって友だちとも向き合えるようになると考え る。 しかし,教師が常に休み時間の児童の様子を 見ることは不可能である。今回の事例では, 「シュート決めたのにアウトやって A 君がいう から,みんなでどうやったか話したんや。そう し た ら,み ん な が『A 君 が お か し い』っ て 言った。そしたら,A 男君はちかくにいた W 君の腹をけって教室に帰ってしまってん」と報

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告を受けたことがあった。周囲児童から聞き 取ったことを A 男に確認し,「ほんとうはあの とき自分が悪いってわかってたんやね。でもみ んなに言われて悔しかったから,それを W 君 にぶつけてしまったんやね」ともう一度言語化 した。A 男は「ぼくがわるかってん。あやま らなあかん」と発した。うまく伝えられなかっ た自分の気持ちを教師が言語化することで A 男と周囲児童との懸け橋となって思いをつなぐ と,お互いの関係を自分たちで修復できるよう になってきた。 この事例のように,トラブルは,お互いの思 いを理解し合い,話し合いで解決していく学び の機会となっており,小学校 3 年生の段階では 教師がその橋渡しの役をする場面も多々あった が,2 年後の 5 年生の段階で「遊びのとき言い あいになっても,自分たちで解決することがで きるようになっている」という変容の報告を児 童達から受けた。ぶつかり合いながらもお互い の思いを理解し,話し合いで解決する学びの機 会を与えることが重要な実践課題であることが 明らかになった。 ④ 自治活動を通して他者への多面的理解へ 筆者は,子どもたちに,発達障害に限らず自 分と違うところを持つ児童を排除したり,避け たりするのではなく,違うからこそ素敵なとこ ろ,共通するところを見つけていこうという視 点が持てるように常に支援してきた。そして児 童の視点が少しでも変化したときには「○○君 は A 男くんのことこわがってたけど,いいと ころ見つけたんやねえ」など成長した言動を言 語化して価値づけ,児童自身に認識させるよう に関わってきた。学級内でのグループによる自 治活動などを通して友だちの違う面に触れ,い いところを発見できる機会が与えられると「す ぐに怒り出す A 男くんが,私が大変だったと き,かばんを運んできてくれた」といったよう に他者への多面的理解がすすむことが明らかと なった。ここで,研究対象とした集団は小学校 3 年生の発達段階だからこそ A 男の成長した 点や、周囲児童のよくなった点を集団に素直に 伝えあい,喜び合える関係の構築が進みやす かったと考える。 また活動のすべてに大人が介入するのではな く,児童の集団の力や自治の力を信じていくこ とは,大人の手を借りずに自分たちでやり遂げ たいという意欲を支えていることが分かる。ま た子どもの力を信じて任せることによって,子 どもたちは失敗や成功を繰り返しながら,子ど もが本来持っている支え合い成長しあう力も同 時に伸びていくことが明らかとなった。 7) 児童をつなぐ教師の役割 ① 一人ひとりの児童が安心して自分をさら け出す場所の確保 すべての周囲児童を筆者がつなごうとして, 関係作りがすべてできたかというとそうではな い。自分自身が満たされないものを抱えていた B 男は最後まで A 男のことを「そんなこと 言っても,あいつだけは許せん」や「わけわか らへんし」と全面的に否定するような言葉を発 し続けた。 児童自身が心から受け止められる場を持って いるときは,A 男のおかれている背景を「自 分と同じ所があるやん」「こんなことしてやる けど,いいところもあるねん」とそれを受け入 れることができる。しかし自分自身が折れそう な時や躓いたときに,受け入れてもらえる場所 を持たない場合,まず自分も受け入れてもらい たいと思う気持ちが働く。B 男は児童の前では 最後まで荒れた様子を見せ,筆者と一対一で話 した時には涙を流して自分のことを語り,穏や かな表情を見せた。このことから自分以外の人 の思いや背景を受け入れ,理解しようとし,つ ながっていく関係になるには,まず一人ひとり の児童が安心して自分をさらけ出す場所が存在 することが必要条件だということが明らかと なった。 ② 子どもたちの成長や頑張りを目ざとく見 つける 小学校 3 年生の発達段階は他者との比較の中 で「できない自分」を強く感じてしまい,学習 や活動への意欲を失う危険性がある時期でもあ る。だからこそ一人ひとりの子どもたちの成長 や頑張りを目ざとく見つけ,常に子どもの姿を 多面的に,形成的にみる教師のまなざしと,そ れを子どもたちにとってわかりやすく実感の持 てる方法で伝える工夫が必要だと考える。

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筆者は 30 人を超える児童に,わかりやすく 即座に伝えるために,ハッピーレターと命名し, 毎日 5 人から 8 人の児童にショートメッセージ を渡すことにしている。このメッセージは子ど もの日常で見せるわずかな出来事の中から,筆 者が本人に自分の素晴らしいところに気付いて ほしいという面を取り上げて伝えた内容であっ た。この取り組みでは,筆者がゆっくりと会話 を交わすことができなかった児童とも,その日 の頑張りと成長を一人ひとりに伝えることがで きることで,「先生は見ていてくれる」という 安心感とともに,子どもの自信へとつながって いた。 ③ 「ちがうけど同じ」という視点をあたえ ること 暴言を吐き,ルールから逸脱する,課題に向 かわない,このような A 男に対して,周囲児 童は筆者がどのように対応するかを見据えてい るのがわかった。他者に危害を加えた場合,厳 しく指導した。その後なぜこのようになってし まうのかを,周辺児童に代弁するようにした。 本人がそうしたくてしているのではないこと, 後になったら気づいて反省していること,集団 で言われると素直に謝れなくなることなど,A 男の気持ちを教師が代弁することを繰り返した。 たとえば「こういう思いやったんだよね」「本 当はこうしたかったんだね」「みんなもこんな ときあるよね」というように言語化して,周囲 児童達と A 男は全く別ではなく「同じ」とこ ろをたくさん持っているということにも気付か せた。こういったことを通してお互いの思いを わかり合うことが,お互いの視点を考慮しなが ら解決していく方法を見出す力を培うことにつ ながったと考える。 周囲児童が心の居場所を持っている場合,A 男のような理解しがたい言動をとる児童につい て「自分にもこういったことがあるよね」など 自分との共通点を見出すと,A 男の粗暴なふ るまいに寄り添うことができる。それは帰りの 会で「A 男君がぶつかって謝ったら,いいよ と言ってくれました」といったような A 男の 小さな変化も見逃さずに賞賛していく姿から始 まった。 実際に筆者のクラスに在籍していた女子の一 人 が,母 親 に「学 校 で い や な こ と も あ る で しょ」とたずねられたときに「人の悪いところ はすぐに目につくけど,いいところや成長した ところを見ていこう。それを知らせていこ う,っていうクラスやねん。先生がそやねん」 と話したという。目に見えない子どもたちの肯 定的な感情を言葉にし,つないでいくことが子 ども集団の力となり,それが発達を促進させる 要因になることを実感した。児童一人ひとりに とってのプラスに向かった行動を,教師だけで なく周囲児童から賞賛されるというのはこの上 ない喜びであろう。 自分の感情や心の要求のありようを教師が言 葉で意味付けていくことは,子どもたち自身が 自他の成長を認めることができ「○君も頑張っ ている」と共感的に自分たちの発達を喜びあう ことができる力に発展する。教師が児童の言動 の裏にある背景を言語化し,つながり合うこと で子ども同士が認め合うことが始まる。それは 児童が次に頑張ろうとする意欲や熱意へとつな がっていくことが明らかとなった。 ④ 両者の要求を見逃さないという複眼的な 視点をもつこと A 男は図工作品を作るときにも,B 男をあこ がれのモデルとしてまねることが多々あった。 A 男からすればあこがれて,まねたい対象で あるが,B 男にしてみると A 男が模倣するこ とを腹立たしい行為としてとらえていた。B 男 はなかなか A 男に言いだせず,無言の反抗と して,友だちをけり,学習に集中できない様子 を表した。B 男は 1 学期には A 男への不満に ついて筆者に一度も言いに来たことがなかった。 しかし 2 学期から 3 学期にかけて,A 男が自 分を模倣することを不満に思っていると筆者に 話すようになった。 それに伴ってクラスの児童に暴言や暴力をす ることがあった。「すぐにイライラして,人が 嫌な気持ちになることをしたり,言ったりして しまう自分が嫌だ」と自分のことを分析しなが ら筆者に話すことがあった。B 男は自分の中で 起こってくる葛藤を筆者に投げかけることで安 定しようとし,最後には自分のことを「いや だ」と言うことでつらさを吐き出しているよう だった。

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教師は支援の必要な児童からの一方的な視点 からだけでなく,必ずまねをされたり傷つけら れたりする相手側の子の「僕のこともわかって ほしい」という要求を見逃さないという複眼的 な視点をもつことが大切である。そのうえで, お互いの思いが対立したり,葛藤したりする機 会をとらえて,その葛藤が両者を理解し共に生 きる力になるような導きが重要な実践課題とな る。 ⑤ 自分の感情や心の要求のありようを意味 づける存在 筆者は「今いらいらしているのは,あのとき いやだったことがうまく言えなかったからだ ね」「〜さんは友だちのいいところが見つけら れるのがすごいね」など子どもにわき上がって きた感情や,本人が気づいていないよい言動へ の意味づけをあらゆる場面で行ってきた。小学 校 3 年生の発達段階では,多様な人間関係の中 で,自分の言動などに対する他者の評価をより 客観的にとらえることができはじめ,「自己客 観視」の力が芽生えてくるといわれている。そ れは同時に,自分のおかれた状況を客観的に理 解することも意味する。そのため,他者から向 けられてくるまなざしや評価を敏感に感じ取り, 自分への否定的な感情が強まっていく危険性も 指摘されている。したがって,仲間集団の中で 承認されている自分をしっかり確認し,自己肯 定感を育んでいけるように援助していくことが 極めて重要である。 楠 (2009) は,「これまでの自分のがんばり や成長を先生にしっかりと意味付けてもらい, 『やさしさ』などの,目では見えにくい見方が できたことを伝えていくとさらにいろいろな観 点からお互いの成長や頑張りを認めていけるよ うになる」,「仲間集団の中で承認されている自 分をしっかりと確認し,自己肯定感を育んでい けるように援助することが極めて重要になって くる」という8)。筆者は,集団で関わることを 通してお互いを知り合い,その中で起こってく るトラブルに対してお互いを理解し合うことを くぐらせることで解決する方法を見出させるよ うにしてきた。自分の意見を表明し,集団の中 で受け入れられてこそ,仲間集団の中で承認さ れている自分をしっかりと確認することにつな がったと考察する。 最後に,発達障害児童と周囲児童をつなぐた めには,教師の特別支援教育の知識の深まりと, 校内支援体制のシステムが構築されることの重 要性に加えて,そのシステムの中で子どもたち と対峙する教師集団の中身を問う必要がある。 互いに違った意見を出し合い,時間をかけて議 論しお互いが学び合うことが必要であり,子ど もの発達要求に依拠した教育活動とはいかなる ものかについて民主的に話し合える教職員集団 が今こそ求められている。子ども集団の在り方 を問うことはそれにかかわる大人集団の在り方 を問うことであり,真に民主的な教師集団の在 り方というのはどういったものなのかというこ とを問い直す必要がある。 引 用 文 献 1 ) 伊藤亜矢子:学級風土から見た特別支援,LD 研究 19 (1),10-11,2010. 2 ) 渡邊雅俊:通常学級に在籍する発達障害が疑わ れる児童生徒に対する仲間関係の実態,教育 実践学研究 15,173-183,2010. 3 ) 白石恵理子:知的障害の理解における「可逆操 作の高次化における階層―段階理論」の意義, 障害者問題研究 37 巻 2 号,106,2009. 4 ) 田中真理:発達障害のあるこの友達作りへの支 援 ―周りの子どもたちとの関係作り,児童心 理 841,52-57,2006. 5 ) 渡邊美緒・藤野博:軽度発達障害児の学級への 適応 ―親へのインタビューの分析―,東京学 芸大学紀要総合教育科学系,34,2007. 6 ) 佐藤愼二:通常学級の特別支援 ―今日からで き る! 40 の 提 案 ―,日 本 文 化 科 学 社,58, 2008. 7 ) 松久真実:特別支援教育を学級作りの切り口に, LD 研究 19 巻 (1),13-15,2010. 8 ) 楠凡之:7〜9,10 歳の発達の質的転換期,教 育と保育のための発達診断第 8 章,全障研出 版部,160,2009. 参 考 文 献 白石正久・白石恵理子編:教育と保育のための発達 診断,全障研出版部,2009. 田中康雄・高山恵子:わかってほしい!気になる子 ―セルフエスティームを高めるために,学研, 2004.

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佐藤暁・森田暁美:こどもをつなぐ学級づくり第 2 章,学級経営のてだて,東洋館出版社,2009. 湯浅恭正:困っている子と集団作り,かもがわ出版, 2008. 大和久勝:困った子は困っている子,かもがわ出版, 2006. 白石正久:発達の扉,かもがわ出版,1996. 佐藤曉:子どもも教師も元気が出る授業作りの実践 ライブ,学研,2009. 浅川陽子:言葉の生まれ育つ教室,金子書房,2006.

参照

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