地上ディジタル放送の開始にあたって -技術面からのアプローチ-
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(2) −技術面からのアプローチ−. 解 説 ■ 地上ディジタル放送の開始にあたって. 図 -2 地上ディジタル放送の伝送方式. 図 -3 固定受信と携帯向けサービス例. 地上ディジタル放送の伝送方式はマルチパスや移動. ろう.. 受信に強いキャリア変調方式で,ガードインターバル長. また,OFDM は受信環境の変動に強い伝送方式のた. (GI)を変更できる OFDM を採用しており,1 チャンネ. め,列車・自動車などの移動体において地上ディジタ. ル分の 6MHz を 13 個のセグメント(SG)に分け,この. ル放送を受信する場合においても固定向け放送の受信. セグメントの組合せで,固定向け,移動体向けおよび携. と同等のきれいでかつ安定して HDTV 放送を受信でき. 帯向けサービスに柔軟に対応できるように 4 つのキャリ. る.しかし,一般的に移動受信ではアンテナ高が低い. ア変調方式から選択する 3 階層伝送を可能としている.. ため受信レベルの低下を招きやすく,走行中に周囲の. 2005 年頃には,12 セグメントを使用した固定受信向け. 環境が変化することに伴い受信レベルも変化しやすい.. と 1 セグメントの携帯・移動体向けサービス(図 -3). Doppler 効果による受信周波数の Doppler シフト発生に. が開始され,固定受信向けでは畳込み符号化率 3/4 で伝. 対しては,複数のアンテナからの信号レベルを合成し. 送容量が 16.85Mbps となる.将来的に,固定受信(9 セ. C/N を最大とする重み付け係数を算出するアダプティ. グメント) ,移動体受信(3 セグメント)および携帯受. ブ・アレー・アンテナ方式がある.OFDM 復調前,あ. 信向け(1 セグメント)といった 3 階層伝送を想定した. るいは OFDM 復調後に重み付け演算する方式があるが,. 場合,9 セグメントでの固定受信向けサービスで放送品. OFDM 復調後に搬送波ごとに重み付け係数処理するこ. 質を確保できるような符号化技術の開発が必要となるだ. とで高精度に受信品質を高めることが可能である.残る IPSJ Magazine Vol.45 No.4 Apr. 2004. 379.
(3) 図 -4 将来のコンテンツ流通を支える技術要素. 図 -5 次世代インフラ構想. 課題である Doppler シフトについて,研究開発が進め. 空間やルーティングヘッダを活用して放送波とブロー. られている.. ドバンドを状況に応じて使い分けるとともに,BML と. 一方,ブロードバンドの急速な普及は,地上ディジタ. HTML を区別なくメタデータに統合して送出するとい. ル放送の制作・送出システム等で次世代化への動きを促. った開発が行われている.関連する機器の面でも,熟練. している.これまではプラグアンドプレイシステムとし. カメラマンのノウハウが組み込まれた「知的ロボット. てネットワーク上のコンテンツや機器を利用するための. カメラ」を活用した新世代のバーチャルスタジオの研究. 通信方式が研究されてきているが,最近では,コンテ. 等が進んでおり,これまで極度に限定されていたコン. ンツや機器をオブジェクト化して扱い,あわせて,QoS. テンツ制作環境が,地方やよりライブ感覚溢れる場所へ. 確保のための帯域管理手法が導入されている.これによ. とユビキタスに拡大することが予想される.ARIB(電. って,ネットワーク上の機器をユビキタスに組み合わせ. 波産業会)は,BML に基づいたデータ放送規格「ディ. て編集や合成といった放送局業務アプリケーションを稼. ジタル放送におけるデータ放送符号化方式と伝送方式. 働させることができる.この分野では,今後,HDTV. (ARIB STD-B24)」を策定し,米国ケーブルテレビでは,. 対応や IPv6 対応が検討されており,TAO(通信・放送. 欧州規格団体 DVB(Digital Video Broadcasting)が策. 機構)の委託研究では,放送と補助伝送チャンネル(IP. 定したデータ放送規格である MHP(Multimedia Home. 網)を活用した高品質,高機能なサービス提供に関す. Platform)を採用しており,ディジタル放送アプリケー. る複合放送技術の開発. 380. 3). および IPv6 の豊富なアドレス. 45 巻 4 号 情報処理 2004 年 4 月. ションの国際整合性と相互互換性を考慮し,国内でも民.
(4) −技術面からのアプローチ−. 解 説 ■ 地上ディジタル放送の開始にあたって. 項 目. 対策例. テレビ・ビデオ. 視聴者が現在使用しているテレビやビデオのチャンネル再設定. アンテナ. −これまでの放送局で受信できなくなる場合があり、隣接局へ受信変更するために受信アンテナ方向の調整が必要 −アンテナ方向の調整だけ受信できない場合には、アンテナ交換が必要 変更されたアナログ周波数によっては,既存 UHF アンテナの交換工事が必要. ブースタ. ブースタを使用している場合には,調整および交換などが必要になる場合がある. フィルタ. 隣接チャンネル波により障害発生時には,本チャンネルを除去するフィルタの追加・交換が必要. 表 -1 アナログ周波数変更地域における受信対策例. (a)直接受信 (b)CATV 受信(CATV 加入者). 図 -6 受信対策例. 間標準規格として,手続き型(プログラム実行型)のデ. も加速化している.自主放送を行う許可施設の CATV. ータ放送を規定する「アプリケーション実行環境標準規. の加入世帯数は 1,500 万世帯と日本の全世帯の約 1/3 に. 格(ARIB STD-B23 略称 ARIB-AE) 」を規格化している.. 達しており,これらの世帯は現状ですでに CATV 経由. BML によるデータ放送は,表示用データや画像,音. にて地上放送を視聴している.このため,地上ディジ. 声などのデータを送出し,受信機は,内蔵されたブラウ. タル放送と CATV の利点を活かす次世代インフラ構想. ザによりデータを表示する.一方,MHP は Java ベー. (図 -5)も期待されている.. スのアプリケーション実行環境において,受信機では, 組み込まれた仮想マシン(Java 実行環境)により,送 出側から配信されたアプリケーション・プログラムを実. 放送インフラ技術. 行する. 現時点では,規格に準拠した機器の運用規程まで定め. ● 地上ディジタル放送の受信形態. られてないが,MHP 方式は,放送局を経由せずに,ピア・. 2011 年 7 月 24 日に地上アナログ放送が終了されるの. ツー・ピアも含めて実現可能になると考えられ,その動. で,地上ディジタル放送の周波数と既存の UHF アナロ. 向に注目が集まっている.. グ周波数が重なる地域では,既存の UHF アナログ周波. 今後の技術動向としては,コンテンツ電子流通の. 数を変更して地上ディジタル放送の周波数を確保してい. ための標準技術と情報家電アーキテクチャの標準化. る.新規に地上ディジタル放送受像機を購入し,地上デ. (図 -4)などが,大きなウエイトを占めると考えられる.. ィジタル放送を受信する際には,直接受信と CATV に. MPEG-1/2/4 は,コンテンツの圧縮・蓄積・伝送を実現. よる受信の 2 つのケースに分類でき,直接受信の場合に. する技術規格であり,現在は著作権管理保護技術を可能. は,各家庭にて受信対策が必要となる(表 -1,図 -6) .. にするメタデータを用いたコンテンツの特徴・構造を記. また現状,地上アナログ放送について電波障害施設を介. 述する MPEG-7 の検討,さらに MPEG-21 では,コンテ. して視聴している世帯も多く,地上ディジタル放送を受. ンツ電子流通の実現に向けて,マルチメディアフレーム. 信できるようにするには,現在 VHF250MHz までの伝. ワークの標準化を推進している.. 送帯域の施設の場合は 770MHz まで広帯域化する必要. 同時に,地上ディジタル放送インフラ整備による全. がある.. サービスエリアの確保に向けて,地域情報インフラや CATV を活用した放送波中継の技術検討・試作機開発 IPSJ Magazine Vol.45 No.4 Apr. 2004. 381.
(5) 項目 同期化方式. 概要 SFN を考慮したネットワークでは,従属同期とリファレンス同期方式を規定し,(a)RF 周波数精度が 1Hz 以内,(b)IFFT サ ンプルクロックは平均的に一致し,周波数変動による帯域端キャリアの周波数偏差は± 0.3ppm 以内, (c)多重フレームが同一, (d)OFDM フレーム同期位相の遅延時間差が,SFN 干渉エリア内でガードインターバルに収まること,これら条件を満足する 必要がある.. 回り込みキャンセラー. SFN による放送波中継ネットワークでは,親局からの電波をクリアに再送信しても,中継局では,送信アンテナから発射された 電波が親局波を受信する受信アンテナに回り込んで妨害を生ずることがある.この回り込み波を電気的に相殺する技術により, 高品質で安定した放送波中継を実現している.. ダイバーシチ受信. ダイバーシチ受信には, 複数のアンテナで受信した信号のうち受信レベルの大きい信号を選択する方式(選択ダイバーシティ)と, 複数の受信信号を同相合成する方式 (最大比の利得合成等)2 種類がある.親局電波を中継局は,希望波(直接届く電波)と妨害波 (反 射した電波)が干渉し,受信レベルが変動するフェージングが発生するため,複数のアンテナで受信した放送波(OFDM)信号 の各キャリアの合成 C/N が最大となるように,各キャリアごとにディジタルフィルタのタップ係数を計算し,高品質な信号を 再生する.これにより,受信レベルの低下による C/N 劣化を改善すると同時に,マルチパスによる周波数特性の乱れを補正する.. 等化・判定中継. 中継局で受信した電波をいったん復調し,歪みを除去して元のディジタル信号に戻してから再変調して送信する技術が開発され ている.マルチパルパスによる遅延時間がガードインターバル長を超える場合には,大幅な誤り率劣化原因となり,親局の放送 波信号を受信する中継局が,長遅延のマルチパスを等化し改善する.. 干渉除去. 中継局は見晴らしのよい山頂にある場合が多く,いくつもの送信所からの電波を到達時間がずれて受信してしまい,本来受信し たい電波を判別しにくくなる.これを解決するために,2 ∼ 4 本の独立した受信アンテナで信号を受けて約 5,000 本の OFDM キャリアごとに合成し,そのキャリア周波数ごとに干渉波の影響を最小になるよう判断する技術が開発されている.これは,多 くの搬送波を使う OFDM を採用していることで可能となっている.. 表 -2 SFN による関連技術. ● 送受信技術. 光多重伝送では,ラストアクセスで光ファイバが到達. 地上ディジタル放送はテレビジョン放送が 50 年前に. できない場合に,ミリ波,すなわち空中波に変換して放. 始まって以来,カラーテレビ放送に次ぐ大きな変革とい. 送するシステムが開発されている.ブロードバンドの急. われている.新技術導入に際してさまざまな課題がある. 速な普及によって市場が拡大し光関連技術の低コスト化. のは事実であり,今回の変革の場合は,特に,無線技術. が進む可能性が大きく,かつては大容量の代名詞であっ. のさらなる進歩が期待されている状況といえる.. たテレビ放送がそれほど光ネットワークにとってコスト. (1)単一周波数ネットワーク. 的にも重荷にならなくなると予想され,現ケーブル利用. アナログ放送では送信局間を中継していくために干. 世帯や中継システムで光多重伝送が活用されるようにな. 渉を避けるよう異なるチャンネルを選んでいく必要があ. るのは,予想以上に早まる可能性が高い.. る.これを,ディジタル化によって単一チャンネルで可. (3)受信性能の向上. 能とする技術を単一周波数ネットワーク(SFN: Single. 地上ディジタル放送のメリットの 1 つにマルチパスに. Frequency Network)という.SFN は当初,周波数の. 強くてゴーストが出ないきれいな画像がうたわれている. 有効利用を図るという地上ディジタル放送導入の最大の. が,それは遅延波があらかじめ設定されるガードインタ. 目玉技術であったが,その技術的課題の多さもさること. ーバル内であることが条件となる.この条件を逸脱する. ながら,光伝送技術の高度化と低価格化によって,放送. と,今度は映像がまったく映らなくなる.この対策とし. 技術と通信技術による相互補完した技術開発が進んでい. て,ガードインターバルを超えて到達する長遅延波をキ. る.現在,開発されている主要な関連技術は表 -2 のよ. ャンセルする技術が開発されている.. うになっている.. また,この応用分野として,車などで移動しながら受. (2)光多重伝送の可能性. 信する場合の対策も進められている.当然,家庭等固定. 互いに異なる波長の光信号を 1 本の光ファイバに束ね. で受信する場合よりも条件ははるかに厳しくなるが,ダ. て送ることによって,通信サービスと放送サービスを同. イバーシチ受信装置を組み合わせて改良することによっ. 居させることができる.これは,山間部やビルの谷間と. て,HDTV 受信が可能となるまでになっている.. いった放送波利用が難しい場所での視聴のための補完技. (4)ソフトウェア受信. 術として開発されているが,実は影響範囲がきわめて大. 地上ディジタル放送を ITS の無線通信システムであ. きい.特に,光ファイバの供給過剰が指摘されている点. る DSRC や携帯電話と同じ端末で受信できるように,. と,ビルによる電波障害対策等ですでに全世帯の半分以. ITS 端末がソフトウェアを非常に短く数秒以内でダウン. 上の 2,600 万世帯が共聴施設や CATV 事業による「ケ. ロードしてバージョンアップに対応できる技術が開発さ. ーブル(HFC あるいは FTTH) 」で受信している点が. れている.. 注目されている.. この技術は現在,携帯電話等でも研究されており,従. 382. 45 巻 4 号 情報処理 2004 年 4 月.
(6) −技術面からのアプローチ−. 解 説 ■ 地上ディジタル放送の開始にあたって. (「地上ディジタルテレビジョン放送の受信特性に関する調査研究会報告書 (平成 13 年 3 月四国総合通信局) 」より. ( 「地上ディジタルテレビジョン放送の受信特性に関する調査研究会報告書 (平成 13 年 3 月四国総合通信局) 」より. 図 -7 反射・遮蔽によるディジタル波の受信特性実験の構成イメージ. 図 -8 SFN における受信特性実験の構成イメージ. 来のように受信システムをハードウェアで実装するので. 理論的には,どちらか強い電界の波について映像復調が. なく,PC のように汎用チップとソフトウェアで柔軟に. 行われるはずであるが,実際の四国地域の実験(図 -8). 構成することにより,同じ端末で異なる方式の携帯電. では,2 つの放送エリアが重なる斜線の部分の両側の帯. 話サービスやディジタル放送受信を実現することがで. 状のエリアで受信に成功できないとの結果が報告されて. きる.. いる.電解強度も弱いレベルで近似するために,システ. (5)ディジタル放送の受信特性. 4). アナログ波の受信の場合,ビルの反射により遅れて到. ムが選択できない状態に陥る状況が推察され,解決策は 今後の課題として残されている.. 達する波との本来の波との重なりで映像が二重三重にな るゴースト現象や,根本的に弱電界の場合に映像が乱れ. ● アナ・アナ変更の実態. るという現象が発生する.これに対してディジタル波の. 現行のアナログ放送を続けつつ新たにディジタル放送. 場合,一般的には,完全に美しく映るかまったく映らな. を始めることによって,周波数状況をいっそう厳しくす. いかの二者択一となる.場合によっては,ブロックノイ. る結果を招いており,当初予想以上に受信障害問題がク. ズと呼ばれる現象が発生することもあるが,たいていの. ローズアップされている.これらは,技術だけでは解決. 場合ブロックノイズ状態が長く続くことはなく,いわゆ. しにくい分野であり,放送事業者や国,関係団体の間で,. るフリーズし,まったく映っていないのと同様の状況と. 現在,さまざまな調整が行われているところである.. なる.. (1)ブースター障害. A)反射やマルチパスへの強さ. アナログ放送波に加えて地上ディジタル放送の放送波. ディジタル放送はゴーストのないクリアな映像が得ら. が受信され,ブースターの処理能力を超えた電波が入力. れるという謳い文句がよく使われるが,これは,ビルの. されることによって,一部の世帯および共聴施設のアナ. 反射波や異なる送信所から遅れてくる波が混じっても,. ログ受信に対して障害が出る.具体的には画面上にゴマ. 最も電界強度の強い波を選択して処理できるという特性. 塩のようなホワイトノイズが出たり,ひどい場合には画. を有していることによる.実際に,四国で行われた実験. 面が乱れたりしてしまうことがあり,これをブースター. でも,アナログ波の場合にはゴーストが発生する複数の. 障害と呼んでいる.. 受信地点すべてで,ディジタル波の場合はまったくゴー. 要因としては,受信電波の強さ以外にブースターの特. ストが現れないという結果が報告されている(図 -7).. 性によるところも大きく,さらに,障害と判定する基準. B)SFN による受信特性. も個人差が大きいという厄介な側面を持っている.しか. SFN による中継の場合,2 個所以上の送信所から時間. しながら,このブースター障害は地上ディジタル放送の. 差をもって同一波が到達することとなるが,ガードイン. 普及を阻害する大きな要因として認識されており,国. ターバルと呼ばれる時間差許容範囲の外側で混信保護の. をはじめ各方面で対策が講じられようと調査研究が進め. 割合を満足しないエリアがきわめて限定的に発生する.. られている.特に,次のような条件整理が必要とされて IPSJ Magazine Vol.45 No.4 Apr. 2004. 383.
(7) JCL 運用仕様. ラボ運用仕様 STB. 番号. 170 番. 200 番. 270 番. 400 番. 470 番. 500 番. BS ディジタル放送トランスモジュレーション. JCL SPEC-001. ○. ○. ○. ○. ○. ○. 東経 110 度 CS ディジタル放送トランスモジュレーション. JCL SPEC-002. ○. ○. ○. ○. ○. ○. ディジタル放送リマックス(自主放送). JCL SPEC-003. ○. ○. ○. ○. ○. ○. ディジタル放送リマックス運用仕様(i-HITS). JCL SPEC-004. ○. ○. ○. ○. ○. ○. JC-HITS トランスモジュレーション. JCL SPEC-005. ○. ○. ○. ○. ○. ○. 地上ディジタル放送パススルー. JCL SPEC-006. ○. 地上ディジタル放送トランスモジュレーション. JCL SPEC-007. アナログ・デジタル変換. JCL SPEC-008. ディジタル放送双方向 TV システム. JCL SPEC-009. ディジタル放送双方向運用仕様. JCL SPEC-010. ○ ○. ○ ○. ○ ○. ○. ○. 表 -3 JCL 運用仕様. 図 -9 地上ディジタル放送の再送信方式. いる.. アナ・アナ変換計画を立てるときなどに,これらのチャ. ・現アナログ UHF チャンネルの数とディジタル用チャ. ンネル変換の実態が十分に把握できていないために,い. ンネルの数,それらと送信局の実効輻射電力(ERP). ざ,ディジタル波を発信すると,以下のような状況によ. の差異. って障害が発生することとなる.. ・受信地点でのアナログ波とディジタル波の電解強度の 差異. ・BS 波やアナログ波をディジタル波と同一の UHF チャ ンネルに変換して再送信している場合. ・エリア外の遠方送信局を受信しているかどうか ・極度の弱電界のためにブースターを 2 重使用していな いかどうか ・多方向受信していて周波数分離のためのフィルタを使 用しているかどうか. ・アナログ波の UHF → VHF 変換施設で,ディジタル 波が隣接チャンネルに変換されて再送信される場合 このような障害の場合,対策としては操作員が現地に出 向いて,状況を正確に把握した後,変換チャンネルを再 設定するという作業が発生する.個別の手作業の部分が. ・ブースター利得(増幅量)の調整の適正さ. 多いだけに,広く普及しているこの共聴施設への飛込み. (2)飛込み障害. 障害が大きな問題として認識されている.. 受信状況のよくない山間地や高層ビルの陰になる地 域,さらにはマンション内では,共同の受信施設(共聴. ● CATV の技術動向. 施設)を状況がよい遠隔地や屋上に設けてそこからケー. ディジタル化の進展において,CATV の一層の高度. ブルで再送信しており,日本では実はかなりこの方法が. 化,多様化や放送と通信の融合をもたらす状況の中で,. 広く普及している.. CATV 事業者の経営的判断による機器仕様の要求を纏. しかしながら,この共聴施設による再送信では,各々,. め,機器の普及促進と価格の低減化を図る目的で, (社). 勝手にチャンネル変換されている場合が多くみられる.. 日本ケーブルテレビ連盟内に, (社)日本 CATV 技術協. 384. 45 巻 4 号 情報処理 2004 年 4 月.
(8) −技術面からのアプローチ−. 解 説 ■ 地上ディジタル放送の開始にあたって. 方 式 項目. 規格. 波長(µm) 上り / 下り. 下り(映像). 伝送モード. 伝送速度(Mbps) 上り / 下り. 分岐数. ATM-PON. G983.1. 1.31/1.55. ATM. 156/600(156). 32. B-PON. G983.3. 1.31/1.49. 1.55. ATM. 156/600. 32. IEEE802.3ah. 1.31/1.49. 1.55. Ethernet. 1,000/1,000. 64. GE-PON. 表 -4 PON システムの規格. 会と協力して,日本ケーブルラボ(JCL)が設立された. 日本ケーブルラボでは,すべての放送メディアのディジ タル化に対応し,ディジタル放送関連の国内標準規格に 準拠したケーブルテレビ事業者運用仕様(表 -3)を策 定し,円滑にディジタル化を推進して視聴者の利便性の 5). 向上を図っている . 地上ディジタル放送の再送信(図 -9)には,放送局 が送信した UHF 帯周波数と同じ周波数で伝送する「同 一周波数パススルー方式」 ,放送局が送信した UHF 帯 周波数を MID 帯や SHB 帯の周波数に変更して伝送す る「周波数変換パススルー方式」 ,地上ディジタル放送 の OFDM 信号を 64QAM 方式に変換して伝送する「ト ランスモジュレーション方式」があるが,周波数変換パ ススルーを採用した場合には,チャンネル再設定が自動 でないため,CATV 事業者は,チラシによる案内,コ ミュニティチャンネルからの放送などの手段を用いて. 図 -10 FTTH システム. 初期スキャン動作を視聴者へお願いする告知が必要とな る.また CATV 事業者によっては,集合住宅あるいは 電波障害対策として共同受信施設にて,再送信チャンネ. MC 方式の場合には,1.5µm 帯波長で伝送されるアナロ. ルのみをテレビで視聴する世帯が多いこともあり,トラ. グおよびディジタル映像信号の光受信機能と 100Mbps. スモジレーション方式と同一周波数パススルー方式の両. 通信サービスに対応した MC 機能を内蔵し,PON 方式. 方式を用いて運用するケースが多くなる.. の場合には,WDM 分離フィルタ,1.5µm 帯波長の映像. CATV は,通信用の帯域を確保し,通信サービスを. 信号の光受信機能,通信サービスに対応した機能を内蔵. 提供できるネットワークインフラであり,通信と放送融. している.通信事業者も通信サービスに映像配信型サー. 合を実現しているといえる.ネットワークのアーキテク. ビスを加えたビジネスを開始あるいは検討中である.. チャとしては,HFC,FTTH 方式に大別できる. HFC は,幹線系を光ファイバで,支線系を同軸ケー ブルで構築したアクセス網の 1 つであり,自主放送を行. 光技術と IP 融合による通信・放送サービス. う CATV 施設では,幹線の光化がほぼ 100%,770MHz 伝送路と広帯域化されている.FTTH には,分岐点か. ● 通信インフラの技術動向. らの距離,カバー世帯数,ネットワークトラフィック量,. PDS 型システムである PON 方式(表 -4)をベース. 設備投資コストなどを考慮し,2 芯光(MC)方式ある. に,通信インフラ上で映像配信の実現を可能とする,経. いは 1 芯光(PON)方式がある.上位回線および幹線. 済的な FTTH システム構築(図 -10)を目指してい. は,大容量化・超高速化,高品質化・長距離伝送化への. る.PON 方式に放送型サービスを付加した B-PON は,. 対応で光化,支線は柱上から家庭あるいは柱上からマン. ATM-PON に放送型サービス用の搬送波を加えた方式. ションまでの回線区間は,要求条件,拡張性,利用者の. で あ る. さ ら に, よ り 経 済 的 で, よ り 高 速 な FTTH. 利便性等を考慮し,設備投資の観点から光か同軸かを選. システムのニーズが高まり,ギガビットイーサ PON. 択することが適切と考えられる.また FTTH 方式にお. (GE-PON)が,次世代の広帯域なアクセス方式の 1 つ. ける通信・放送一体型の宅内機器の低価格が必須である.. と し て 提 案 さ れ,IEEE 802.3ah タ ス ク フ ォ ー ス に お IPSJ Magazine Vol.45 No.4 Apr. 2004. 385.
(9) 実現方式. 概要. シングルコンバージョン. 前段コイルの調整・高さなどにより低消費電力化・薄型化が課題であるが,RF 処理部からの IF 周波数を OFDM 復調回 路へ直接入力し,ダウン・コンバートするのに必要だったミキサやフィルタ回路を不要にした方法を採用している. 地上アナログ放送も受信可能とするデュアルチューナも開発されている.. デュアルコンバージョン. 小型化および調整個所が不要である利点はあるが,1GHz で混合し所望周波数を抽出するため,高価でかつ急峻な特性を 持つ SAW フィルタが必要で,VCO,PLL が 2 組必要で低消費電力化への課題も挙げられている.. ダイレクトコンバージョン. 中間周波数が必要でないため,IF 処理部が不要となる利点があるが,局発信号とアンテナ経由の回り込みによる局発信号 同士がミキシングされるため,DC オフセットを除去する必要がある.IF 周波数に低い 1MHz ∼数 Hz を使用することで, 自己ミキシングを防ぐことが可能で,さらに IF 用フィルタの IC 化ができる利点もある.. 表 -5 各チューナ方式の概要. いて標準化が進められている.GE-PON は,上り下り. 携帯端末による受信,バスおよび車など高速移動中での. 1Gbps の伝送速度を複数の利用者で共有するシステム. 受信を可能にするチューナモジュール,アンテナ,高精. で,B-PON や ATM-PON とは異なり,イーサネットの. 細な表示パネルなどコア部品の開発が進んでいる.. フレームを ATM セルなどに変換しないで伝送するの. (1)チューナモジュール 3. で,伝送処理機能部を既存の LAN で用いられている部. チューナモジュールは,1cm 程度の容積サイズ,厚. 品で実現することが可能で,大幅なコスト低減が期待で. さ(部品高)1.0 ∼ 2.0mm 以下,消費電力 100mW を目. きる.. 指し,小型化・薄型化・省電力化,高性能化,低価格化,. 現在,IEEE802.3ah では,ネットワークの基本機能の. 無調整化などを実現する要素技術,アーキテクチャ検討. みについて,2004 年 6 月に標準化が完了する予定であ. を踏まえ,シングルコンバージョン,デュアルコンバー. るが,実運用サービスを提供するためには,通信事業者. ジョンおよびダイレクトコンバージョン方式のいずれか. が独自に動的な帯域割り当て,利用者認証用の暗号化,. を採用し(表 -5),2004 から 2005 年にかけ製品が市場. セキュリティ機能等を規定する必要がある. 通信と放送の垣根を越えるための規制緩和として,電. 投入されていくと考えられる. (2)アンテナ. 気通信役務利用放送法の下で,有線役務利用放送事業. 携帯端末のアンテナでは,テレビの広帯域な周波数帯. 者に登録したビー・ビー・ケーブルは,ADSL 回線で. (UHF13ch ∼ UHF62ch)で高利得で,かつ小型化・低. 2Mbit/s から 4Mbit/s 程度の SDTV 映像 (MPEG-2 圧縮). 消費電力化,これは相反する性能を同時に解決しなくて. を IP マルチキャスト技術で配信するサービスを開始し. はならない.さらに地上アナログ放送と地上ディジタル. ている.また登録申請したオプテイキャストは,光ファ. 放送も視聴可能とするには,VHF 帯含め広帯域となり,. イバを用いた映像配信サービスとして CS 番組に加え,. 小型あるいは内蔵アンテナが必須条件となっている.. 地上ディジタル放送を含む地上放送や BS ディジタル放 送,FM 放送の同時再送信を行う予定で,1 芯の光ファ イバに複数の光波長を多重し,SDTV 映像(MPEG-2 圧. ま と め. 縮換算)で最大 500 チャンネル分を配信し,上り下りの 通信では 100Mbps を共有したインターネット接続サー. 地上ディジタル放送のサービスの本格化とともに親. ビスを想定している.通信事業者も,FTTH による光. 局・中継局の整備,および放送中継ネットワークによる. ソリューションサービスを開始あるいは検討している.. サービスエリア確保等,通信・放送の多様な技術開発が 急速に進むものと予想される.一方,携帯電話がインタ ーネットと融合して急速に普及・高度化し,インターネ. 受信端末に集約される技術. ットではブロードバンド(高速・常時接続)サービスが, 登場からわずか数年で全世帯の 1/3 にまで普及した.今. 地上ディジタル放送では,テレビ型サービス,デー. 後は有線・無線技術の融合した次世代インフラによりブ. タ型サービスの中で移動用および携帯用サービスを可. ロードバンド環境がより高度化し魅力的なコンテンツの. 能とする階層化伝送ができる点が 1 つの特長であり,. 流通を促進していくものと考えられる.. 2005 年頃開始が想定される 1 セグメント放送サービス. コンテンツ流通の普及促進に向けて,MPEG-21,サ. 向けに,多くの利用者が見込める受信端末(携帯電話,. ーバ型放送運用,手続き型のデータ放送運用などの運用. PDA,カーナビなど)の技術・試作開発が行われている.. 規程を定めるとともに,チューナ内蔵の携帯端末および. 386. 45 巻 4 号 情報処理 2004 年 4 月.
(10) −技術面からのアプローチ−. 解 説 ■ 地上ディジタル放送の開始にあたって. 車載端末など,PC や情報家電など利用シーンに応じて 放送/通信/番組のストリーミングサービスなどを享受 できるシステム開発への期待が高まる. これまで,必ずしも,ディジタル放送技術とインター ネット技術とは近くなかったが,今後のユビキタスネッ トワーキングの時代では,無線や光,ネットワークプロ トコルやアプリケーション等の諸技術が各レイヤごとに. 参考文献 1)中澤宣彦 , 中村秀治 : 地上ディジタル放送の開始にあたって−市場・ 行政面からのアプローチ− , 情報処理 , Vol.45, No.2, pp.152-159(Feb. 2004). 2)http://www.d-pa.org/ 3)加藤嘉明 他 : ISDB 技術に関する研究開発(通常放送と補完放送によ る複合放送技術に関する研究開発)(2003). 4)「地上ディジタルテレビジョン放送の受信特性に関する調査研究会報 告書」, 平成 13 年 3 月四国総合通信局. 5)http://www.jcl.or.jp/ (平成 15 年 2 月 8 日受付). 連携あるいは一体化できるような技術開発がますます求 められることとなる.. <略語> DSP: Digital Signal Processor ディジタル信号処理で用いられる半導体.高速動作し,プログラミン グによってさまざまな処理を行う. DSRC: Dedicated Short Range Communications 有料道路料金自動収受システムで用いられる,料金所に設置されたア ンテナと車に搭載された機器間での専用の狭帯域無線通信. ERP: effective radiated power アンテナから幅射される実効電波の出力で Watts の単位で表わし, 1/2 波長 Dipole アンテナと比較した電波出力. FPU: Field Pick-up Unit 放送番組の映像・音声素材を取材現場から放送スタジオへ直接または TSL を介して伝送する無線伝送機器. HFC: Hybrid Fiber Coax(光同軸). ONU: Optical Network Unit 光ファイバによる伝送を基本にしたアクセス・ネットワーク・システ ム(FTTH)で,利用者に設置される加入者線終端装置. PDA: Personal Digital Assistant 携帯情報端末 PDS: Passive Double Star 光信号から電気信号に変換しないスター・カプラ(光分岐結合器)な どをパッシブ(受動)素子といい,光アクセス・システムの網形態(ネ ットワーク・トポロジ)の 1 つ.スター・カプラなどの光受動(パッシ ブ)素子を使用して分岐し,1 本の光ファイバにいくつかの ONU(Optical Network Unit,光加入者線終端装置)を接続する形態. PON: Passive Optical Network PDS(Passive Double Star)方式を採用した光アクセス・ネットワー. ユーザ宅から通信事業者を結ぶアクセス網の方式の 1 つ.CATV に. クの 1 つの形態. QAM: Quadrature Amplitude Modulation. おいて同軸ケーブルと光ファイバを組み合わせることで,多チャンネル. 位相変調と振幅変調とを複合させた変調方式.ディジタル有線テレビ. 放送サービスと音声通話,高速・双方向のデータ通信サービスを実現で きる. ITS: Intelligent Transportation Systems. ジョン放送の伝送方式は,64QAM. SAW: Surface Acoustic Wave device. 情報通信技術を活用し,円滑な交通流による渋滞の緩和,安全運転支. 固体の表面に 1 対の櫛形電極を設け,電気信号を表面弾性波(固体表 面を伝わる音波,超音波)に変換して,対向する電極まで伝達し,再び. 援による事故の削減などを実現する高度道路交通システム. MC: Media Converter. 電気信号として出力する素子. SDTV: Standard Definition Television. FTTH システムにおいて,100Base-T の信号を光のインタフェース. 標準画質のテレビ放送で,画面の縦横比は 4 対 3,走査線数 525 本(有. である 100Base-FX の光信号に変換する装置. OFDM: Orthogonal Frequency Division Multiplexing(直交周波数分. 効走査線数 480 本).HDTV(High Definition Television)は,現在の テレビに比べ,格段に高精密の画像を生み出すことのできるテレビ.走. 割多重). 査線 1,125 本の「ハイビジョン」を採用している.画面(ディスプレイ). 無線アクセス技術の 1 つで,高速に送信されるディジタル信号を高品 質に伝送する方式の 1 つ.地上波ディジタル放送,IEEE 802.11a など. の縦横比率はは 16 対 9 となっている. SNG: Satellite News Gathering. の無線 LAN,電力線モデムなどの伝送方式に採用されている.. 通信衛星を利用してディジタルデータ(映像,音声など)を伝送する 機器,あるいは,そのシステム.. IPSJ Magazine Vol.45 No.4 Apr. 2004. 387.
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