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「留学生30万人計画」の実現可能性をめぐる一考察

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「留学生30万人計画」の実現可能性をめぐる一考察

茂 住 和 世*

要旨 本稿は留学生30万人計画の達成が現状では困難であることを明らかにすることを目的と し、留学生10万人計画の達成の経緯、及び留学生の就職に係る統計資料や各種調査をレビ ューしたものである。9万人の留学生を増やすのに20年かかった10万人計画は入国管理の 大幅な規制緩和と中国・韓国の経済発展に伴う私費留学生の増加によるものであった。大 学を卒業した留学生のうち国内就職できた者は約3割で、そのほとんどは小企業に就職し ている。一企業あたりの元留学生社員は若干名に過ぎず、留学生の採用実績のある企業は 20年前から1割程度のままである。指導教授・知人からの推薦や紹介で採用に至った留学 生が多い一方、大学側は日本人学生と同様の支援か情報提供など消極的な支援しかしてい ない。以上のことから、現状では入管にも企業にも大学にも30万人の留学生の受入れに対 する主体性の無さが窺われ、2020年までの本計画の実現可能性は低いと言える。以上を踏 まえ、30万人計画実現のために、今後必要と考えられる取り組みについて検討する。 キーワード:10万人計画、入国管理、規制緩和、国内就職、小規模企業、就職支援 2009年12月8日受理 **東京情報大学総合情報学部 教養・教職課程

**Tokyo University of Information Sciences, Faculty of Informatics, Liberal Arts and Teacher's Education Course

A Study on the Possibility to Realize“a Program for 300 Thousand

Foreign Students”

Kazuyo MOZUMI

The purpose of this article is to clarify that a program for 300 thousand foreign students is impractical under the existing circumstances. What came to light by referring to the process of past program for 100 thousand foreign students was that economic growth in China and Korea and Japan’s deregulation of entry-visas had brought an increasing number of foreign students to Japan to study on their own expense. And the statistics by the Ministry of Justice illustrated that the majority of the foreign students were employed by small-scale enterprises. Furthermore, various research data revealed that most of the Japanese companies and universities were reluctant to take the initiative to facilitate the integration of foreign students into the Japanese workforce. These facts suggest that the program to promote the enrollment of 300 thousand foreign students by 2020 is questionable. Considering the circumstances, some ways to realize this program was discussed.

Keyword:a program for 100 thousand foreign students, immigration control, deregulation, Job-hunting in Japan, small-scale enterprises, support for employment oppotunitiy

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1.はじめに 現在わが国には12万人を超す外国人留学生注1 がいる。その留学生を2020年を目処に30万人に しようという「留学生30万人計画」が2008年に 始まった。その背景には日本企業の競争力を増 していくために企業の国際化を進める必要性、 および、国内の生産年齢人口の減少を補う必要 性に基づき、単純労働者ではない外国人高度人 材注2の受入れを推進すべきだという意図があ る。つまり、日本で受け入れ学ばせた留学生を、 卒業後日本企業で活用しようという政策であ る。それゆえ、2008年7月に出された「30万人 計画の「骨子」」は文科省の施策ではなく、6省庁 (文部科学省・外務省・法務省・厚生労働省・ 経済産業省・国土交通省)の連名となっている。 特に、経産省や厚労省はその策定前から積極的 な動きをみせていた注3。その結果30万人計画 は「アジア、世界との間のヒト・モノ・カネ・ 情報の流れを拡大する『グローバル戦略』注4 を展開する一環として」の優秀な留学生の戦略 的獲得をその趣旨とし、このために「わが国へ の留学についての関心を呼び起こす動機付けか ら、入試・入学・入国の入口から社会での受入 れ、就職など卒業・修了後の進路に至るまで、 体系的な方策を実施する」というものとなった。 30万人という数字については寺倉(2009)や 木村(2009)に詳しいが、世界の留学生数の予 測や過去のわが国の留学生受け入れ数の伸び率 から予測された数字の中から「ちょうどいい数 値目標」として選ばれたものである。 しかし、留学生が1万人程度しかいなかった 1983年に「留学生10万人計画」(2000年までに10 万人にするという計画)が打ち出され、それが 2003年にようやく達成されたことは記憶に新し い。当初の計画より3年も遅れ、20年かかって 9万人の留学生をやっと増やすことができたと いう事実から考えれば、今後の12年間でさらに 18万人も留学生を増やそうというこの計画の実 現可能性は疑わざるを得ない。 また、この計画の根幹にあるのは「人材の獲 得」としての留学生の受入れである。すなわち 日本企業が積極的に外国人留学生を採用・活用 し、国際競争力を強化することで日本の国力を 維持しようというのが最終目的なのである。し かし、直近のデータである2008年に大学等を卒 業して日本国内企業に就職した留学生は11789 人(うち、在留許可されたのは11040人)に過 ぎない。その数はあまりにも小さく、日本の経 済社会の活性化・国際化に寄与するものとは言 いがたい。 このように現状を見る限り留学生30万人計画 は予定通りに進むとは考えにくく、その目的の 達成は困難であることが予想される。本稿では、 留学生10万人計画達成の経緯、法務省統計資料 による留学生就職状況の推移、さらに各種調査 により明らかにされた企業、留学生、大学それ ぞれにおける留学生の就職に係る実態をレビュ ーすることで30万人計画が現在までの留学生を めぐる状況を十分に踏まえていないことを明ら かにする。そしてその上で、実現のために今後 どのような取り組みが必要かについての提案を 試みたい。 2.「留学生10万人計画」達成の経緯 「留学生10万人計画」とは1983年に中曽根首 相により始められたものである。「教育」「友好」 「国際協力」のための留学生の受入れを目的と し、2000年までに10万人の受入れを目指すとし たものである。10万人という数字は、当時アメ リカが約31万人、フランスが約12万人、イギリ スおよび西ドイツがそれぞれ約6万人という留 学生を受け入れている実態を踏まえ、たとえば、 1990年ごろには現在のイギリス、西ドイツ並み の、21世紀初頭には現在のフランス並みの留学 生を受け入れることを想定したことによる。 しかし、実際に留学生数が10万人に達したの は2003年であり、当初の計画より3年も遅れた。 1980年代には順調に伸びていた留学生数は1993 年以降5万人程度のまま推移し、2000年以降に

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な っ て 再 び 増 え 始 め 、 よ う や く 2 0 0 3 年 に 109,508人と、10万人を超えたというのが実態 である。図1は現在までの留学生数の推移であ る。 1 9 8 0 年 代 に 留 学 生 数 が 増 加 し た の は 滝 田 (1988)によれば「文部省等による日本の留学 生政策とはほとんど関係のない、日本の出入国 管理政策の変化と各国の留学生政策(特に私費 留学生の出国に関する)もしくは出国政策の変 化という二つの条件の相乗効果によって、私費 留学生の増加という現象が生じたため」(文献15) である。また、1993年以降の停滞期について白 石(2006)はその原因を「就学」に対する入国 管理局(以下入管)の厳格な審査の実施のため としている。「就学」というのは民間の日本語 学 校 に 在 籍 し て い る 外 国 人 の 在 留 資 格 で あ り注5、ほとんどの就学生は日本語学校修了後 大学や専門学校へと進学する。「10万人計画」 が始まったのとほぼ時期を同じくして入管が規 制緩和を行い、日本への留学を希望する外国人 本人に代わって日本語学校が一括して所轄の地 方入国管理局にビザ取得手続きを申請でき、身 元保証人も日本語学校が機関で引き受けても良 いことになった。そのため、急激に就学生の入 国者が増え、その結果日本語学校を隠れ蓑にし た不法就労者や不法残留者が増大した。この事 態を重く見た入管は日本語学校のビザ申請に対 し厳格な審査を行い、「就学生」が激減、つま り新規入国者が激減し、それに伴い、「留学生」 総数も停滞したのである。2000年以降に再び増 加に転じたのは、1996年身元保証人制度撤廃、 1998年留学生のアルバイト制限が1日4時間とい う規制から週28時間という柔軟な規制になった こと、1999年、1年更新であった留学ビザが2 年更新になったこと、2000年には大学・適正日 本語学校(不法残留率が5%以下の日本語学校) には申請書のみで在留資格認定書を発給すると いう大幅な規制緩和が次々に行われたことが大 きい。 総務省も2005年に公表した「留学生の受入れ <図1> 留学生数の推移(各年5月1日現在)(日本学生支援機構作成)

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推進施策に関する政策評価」において、10万人 という留学生受入れ目標達成の要因として入 国・在留に係る規制の緩和が大きく影響してい ると指摘している。さらに2005年までの約20年 間に中国・韓国からの留学生数が18.6倍になっ ていることについて、「両国の経済発展に伴う 高等教育に対するニーズの高まりや、留学を経 験していることが就職に有利に考えられている こと等の影響が大きい」とも指摘している(文献 14)。 このように、10万人計画という量的な達成は 入国管理政策の規制緩和と中国や韓国等のアジ ア諸国の経済的状況によるところが大きい。日 本は「アルバイトしながら勉強できる国」とし て認識され、それが経済格差のある周辺の国々 からの私費留学生の増加を牽引してきた。 2003年の量的達成を受けて、中央教育審議会 は改めて留学交流の目的と意義を「知的国際貢 献」とし、現状における問題点の一つとして留 学生数の拡大に伴う質の低下への懸念を表明し た注6。入管もそれを受けて不法残留が著しい 国や地域からの留学生の受入れを制限したた め、2006、2007年に再び留学生総数が減少、停 滞した。このことからも、留学生数の増加の鍵 は入管が握っていることは明らかである。その 後、留学生の入国に係る入管の新たな規制緩和 の動きはない。 その背景には2008年1月現在不法残留者が国 内に約15万人いること、在留資格「留学」の不法 残留者は2005年に8173人まで増加したが、入管 はその審査を厳格化することにより現在は6667 人まで減少したことがあると思われる。これ以 上不法残留者を増やさぬよう入管は留学生の入 国に関する審査方針を当面緩める気はなく(中 山2009(文献18))、したがって10万人計画達成を促 した入国規制緩和による受け入れ数の増大は簡 単には見込めないと言えよう。 3.留学生の日本国内就職の推移 留学生が卒業後日本に残って働くためには、 「留学」ビザを「就労」ビザに変更しなければ ならない。日本の入管政策は「日本社会への有 用性が認められ、日本人による充足が困難な技 術者」であれば入国および就労を許可するとい う姿勢を維持し、一貫して単純労働者の入国を 拒否して来た。その結果、留学生の就職に伴う

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件数

在留許可申請者

許可件数

<図2>在留資格変更数の推移(毎年の法務省入国管理統計より筆者作成)

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在留資格の変更申請および許可件数は図2のよ うな実数でしかない。 次に、法務省が毎年出している統計資料によ り、その実態がどのように変化してきたかを詳 しく見てみたい。10万人計画の開始当初の1983 年の在留資格変更申請者数は144人、うち許可 件数はわずか110人であった。出身国別では台 湾人が申請者数、許可者数ともに最多であった。 就職先は売上高が1∼100億円未満および100億 円以上の大企業が中心であった。雇用契約期間 は半年から5年までその年数にはばらつきがあ るが、契約社員という形態での雇用が半数以上 を占めた。1985年のデータでは就職年齢は26∼ 30歳が全体の43%。業種別では商社や貿易会社 の営業や翻訳・通訳が中心であり、月額初任給 与額は男性が平均19.3万円、女性が18.2万円と 非常に高い(当時の日本の大卒初任給は男性14 万円、女性13.4万円)。これは、高給を払って も雇いたいという大企業からの申請に対しては 在留資格変更を入管が認めたという事実を示し ていると言える。 このような傾向はその後もしばらく続くが、 変化が現れるのは1989年である。この年、申請 件数、許可件数ともに台湾人を抜いて中国人が 第1位となった。この要因は、1985年の新規入 国者数で台湾を抜き最多になった中国人が順調 に大学を卒業し、就職に至ったという背景があ ると推測できる。また、1年契約の割合が終身 雇用の割合を超えたのもこの年である(1年契 約43.4%、終身雇用32%)。 1990年には1年の雇用契約者が50%を超え た。また、それまでの申請者は大学院卒より学 部卒が中心だったが、この年その割合は逆転し た(大学院卒39%、学部卒30%)。この傾向は 以後しばらく続く。 1991年、入管は在留資格の整備・拡充を行い、 「人文知識・国際業務」という新たな在留資 格注7が設けられた。これにより、文系出身の 留学生が就職する道が大きく開かれた。こうし てこの年の在留資格変更は、人文知識・国際業 務62%、技術27%、合計で90%となった。この 2種の在留資格で9割を占める状況は現在まで 変わらず続いている。 1992年、それまで就職先は大企業中心であっ たが、この年は従業員数300人以下の中小企業 が47.5%を占め、大企業への就職者数を上回っ た。入管は、海外取引業務を行う中小企業の増 加がその背景にあると指摘している。 1993年にはバブル崩壊後の景気低迷により、 増加し続けてきた申請者数が初めて減少に転じ た。 1994年、従業員数300人以下の中小企業への 就職者が70%となり、業種別では、これまで 「商業」中心であったのが、この年初めて、IT 関連企業を含む「電気・電機」が最多となった。 1995年、さらに小さな規模の従業員50人未満 の企業への就職が41%となり、50∼99人の企業 の12%と合わせると、100人未満の中小企業だ けで53%を占めるようになった。売上高で見て も3000万円以下の企業が45.1%であるのに対 し、かつての就職先の中心であった100億円以 上の企業は16.2%にまで縮小した。入管は「小 規模な貿易会社への就職者が多数いたため」と 説明している。 1997年には、大学院卒の就職者の割合を学部 卒の就職者が上回った。(学部卒48.4%、大学 院卒43.9%)1990年以来の傾向が逆転し、現在 に至っている。 その後は、申請者数、許可者数ともに順調に 伸び、最も最近のデータである2008年に日本企 業へ就職した留学生は下記のような状況であ る。 ・在留資格変更申請者数11789人、うち許可 数は11040人(許可率は93.6%) ・国別では中国69.3%、韓国12.3%、台湾 2.7%の順で、アジア諸国が全体の96.6%を 占めている ・就職を許可された留学生の我が国における 最終学歴:学部卒48%、大学院卒30.8% ・雇用先企業の規模:従 業 員 数 3 0 0 人 以 下

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63.6%(とくに1∼50 人未満41.3%) ・就職先企業の資本金:500∼1000万円の企 業への就職が20.7% と最多で、5000万円 以下の企業への就職 は52.0% ・月額報酬:20∼25万円未満50.0%、次いで 20万円未満25.6% 以上、留学生の日本企業への就職の実態を概 観した。現在、留学生の就職先は中小企業が中 心である。榎(2009)が財務省法人企業統計の 資料を基にして述べているように、日本人労働 者のうち、資本金1億円以下の中小企業で働く 従業員比率が70.6%であるなら、留学生の就職 先の比率と日本人の従業員比率は大差がないと 言える。外国人を雇用することが「特別」であ った1980年代に比べれば、現在は一般的になっ てきたと言えよう。 しかし、30万人計画推進のためには留学生の 雇用を促進させる必要があるが、前述したよう に留学生の雇用先は日本人従業員数が300人未 満の小規模企業が中心である。さらに1995年以 降は50人未満の企業が多くなっている。そのよ うな企業にさらに多くの留学生の受入れを望む のは無理があろう。 また、上記2008年の留学生の卒業者総数は 33634人(同年の留学生総数の約27.2%)であ った。そのうち、内定が取れて実際に日本で就 職しようとした実数が在留資格変更申請者数 11789人であり、卒業者数に占める割合は35% に過ぎない。金融危機のため景気が後退した今 年度は日本人学生であっても内定が取れないこ とが予想されている。留学生の就職に関しても バブル崩壊後と同様再び申請者数は減少するこ とが予想される。景気が後退してもなお留学生 の就職をすすめようとするためには、日本人学 生の採用よりも留学生の採用の方が勝るという インセンティブを企業側が持たなければならな いが、現状はそのような状況であるとは言いが たい。 留学生が30万人に達した場合、上記の割合で 卒業者総数を算出すると毎年約81500人が留学 期間を修了することになる。そのうち、教育再 生懇談会注8が求めた50%の留学生が日本企業 に就職するとなると毎年約4万人の外国人を従 業員として受け入れることになる。現在のよう に中小企業中心の雇用で、その人数を採用して いくのには無理がある。このように、30万人計 画の目的である留学生の就職はその受け皿とし ての企業規模の現状を踏まえていないものであ ると言えよう。 4.各種調査に見る、留学生の就職に係る 実態 (1)留学生を雇用している企業の実態 留学生の就職に関する企業への調査は1980年 代末から散見されるようになり、現在まで多く の報告がなされている。そのほとんどはアンケ ート調査によるもので、調査内容は、採用動機、 採用の際何を重視するか、採用後の元留学生の 活用方法や感想、そして今後の採用方針につい てが中心である。しかし、それらの調査結果を そのまま「企業の実態」とするには疑問が残る。 その理由は、まず、回答者が企業の人事部署か 外国人社員の直接の上司か経営者かで答える内 容も異なるし、回答時における印象や感覚に過 ぎない質問が多いということによる。また、採 用していない企業にその理由を尋ねる調査も多 いが、はたしてそれらの企業がその留学生を外 国人だからという理由で不採用としたのか、応 募してきたその留学生個人の能力の問題である のか、また、門前払いであったのか、面接を重 ねた結果の不採用であったのかははっきりしな い。各企業においても、外国人社員一般と元留 学生であった外国人社員とを区別して回答して いるかどうかもあいまいである。元留学生の外 国人社員を現在雇用している企業であっても、 それが1人か2人しかいない場合はその社員個 人の働き振りをもってして「外国人社員は…」

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という一般化をして回答していることも考えら れる。 さらに、調査に回答した企業で実際に留学生 を採用していた場合でも、その企業の受入れ姿 勢により採用後の印象や今後の採用計画も異な ることが考えられる。例えば、白木(2008)は 日本企業が外国人あるいは留学生を採用・活用 する目的を下記のような7つのタイプに分類し ている(文献10)。 ①高度技術人材確保型:IT技術者も含む理 系の人材として採用 ②ビジネスのグローバル展開型:国際化のた めに採用 ③企業ダイバーシティ型:外国人が職場に入 ることで社内が活性化して生産性が上がる ことを期待 ④ビジネスの特性型:顧客に外国人が多い、 あるいは外国の製品を国内で販売するのに 外国人のほうがふさわしい場合。例:漢方 薬の販売 ⑤たまたま外国人型:特に留学生を採ろうと したのではなく、大勢の応募者の中に留学 生が含まれており、採用試験の結果成績が 良かったので採用に至るケース。大企業に 多い。 ⑥コストダウン型:契約社員などの雇用形態 により人件費を安く抑えようとする ⑦日本人代替型:日本人学生が来ないので仕 方なく外国人を採用する。中小企業に多い。 ①∼④は留学生を積極的に採用しようという 意向の企業であり、⑤∼⑦は消極的な動機によ る採用である。各調査に回答した企業が上記の どのようなタイプの受入れ姿勢であったかによ り回答結果は異なってくるだろう。 そこで本項では、これまでの各種調査の中か ら採用実態として客観的に認められる調査結果 だけを抽出したものを<表1>としてまとめ た。この結果から1990年ごろの調査で留学生の 採用実績のある企業は全体の1割程度でしかな かったものが2008年の調査に至っても変わら ず、留学生の雇用はほとんど進んでいないとい うことが窺われる。さらに、留学経験者を雇用 しているという企業でも実質的には1∼3人く らいの少人数の雇用に過ぎず、1つの会社に若 干名の元留学生の外国人社員がいるというのが 実態である。そのような企業は当然留学生の採 用には慎重にならざるを得ず、その外国人の人 材としての「確からしさ」を大学の指導教員か らの紹介や大学からの推薦という形で補おうと している様子が採用ルートに関する回答から窺 われる。 (2)留学修了後に日本企業に就職した留学生 の実態 各種調査の多くは在学中の留学生に、卒業後 の進路や就職希望の有無、就活上の困難点、希 望の就業年数などを多肢選択式で回答させるも のである。しかし、これらの調査結果もそのま ま「留学生の実態」としてしまうのには疑問が ある。まず、調査対象が「外国人留学生」とし て一括りにされており、学部生か大学院生かの 区別は明らかではない。また、彼らの就職に対 する意識は学年進行によっても異なるはずであ るが、それが区別されないまま就職に対する期 待や不安を回答しているように見受けられるも のが多い。特に問題なのは、出身国を問わずに まとめて調査しているものが多いことである。 遠藤(1992)は1992年に国際留学生協会が日本 企業就職希望登録者1791人を対象に行った調査 で、希望雇用年数を中国系か非中国系かで分け て集計をした場合、1∼3年の短期雇用希望は 非中国系26.2%、中国系6.2%であったのに対し、 10∼30年の中・長期雇用および30年以上の長期 から終身雇用を希望する非中国系は29.6%、中 国系は51.8%に上ると述べている(文献3)。この 傾向が現在も同じであるのかは不明だが、一般 的に韓国や台湾出身者は比較的短期の就業希望 である場合が多い。中国人の場合は長期を希望 する者も短期を希望する者もおり、すべての国 の出身者を単純合計した結果が留学生の実態を 表しているとは言いがたい。

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調査者 日本経団連 産業第二本部 (文献20) 労働政策研 究・研修機構 (文献17) 雇用・能力開 発機構& (財) アジア・人口 開発協会 (文献7) 海外技術者研 修協会 (経済 産業省委託調 査) (文献8) 経済同友会 (文献9) 総務省 (文献14) 三菱総合 研究所 (文献5) リクルート・ リサーチ (文献19) 雇用開発 センター (文献22) 2008 2008 2007 2007 2006 2005 2004 1992 1989 技術系留学生の採用に 関するアンケート調査 結果 外国人留学生の採用に 関する調査 アジア各国からの留学 生の雇い入れに関する 実態調査報告書 日本企業における外国 人留学生の就業促進に 関する調査研究 企業の採用と教育に関 するアンケート調査 留学生の受入れ推進施 策に関する政策評価の ための「留学生に対す るアンケート調査 」 留学生の日本における 就職状況に関する調査 外国人留学生の雇用意 向と活用実態に関する 調査 企業の国際化と外国人 留学生・研修生 公表年 タイトル 2008.3.27-4.14 2007.1.5-23 2006.9-12 2006.11- 2007.2 2006.2-3 2004.1. 2004.2.1-3.5 1991.8-9 月 1988.12月 質問紙調査 質問紙調査 聞き取り調査 質問紙調査 質問紙調査 質問紙調査 質問紙調査 質問紙調査 質問紙調査 60社 3244社 10社 288社 250社 53社 521社 1710社 193社 全国 全国 首都圏 全国 全国 全国 全国 全国 全国 経団連所属の企業 従業員30人以上の民 間企業の日本人担当 者 留学生を雇用してい る首都圏内の企業 国内上場企業 経済同友会会員所属 企業 留学生の採用実績の ある企業 外国人雇用の可能性 が高い業種の企業 従業員300人以上の 民間企業 海外進出企業・外資 系企業のうち、留学 生・研修生を受け入 れていた企業 調査期間 調査地域 調査対象 調査方法 回答数 採用ルート 大学を通じた情報収集・採用情報 発信19社(46%) 、インターンの 受入18社(44%)に取り組んでい る。次いで自社HPによる採用情 報発信16社。 採用企業の採用経路:新聞や就職 情報サイト、就職情報誌、自社H Pで募集36.2%、大学・指導教授 の紹介27.9%、ハローワーク・外 国人雇用SC 18.6%。なお、正 社員数30人未満の企業ではHWや 外国人雇用SC利用が29.2%と最 も高い。 採用方法は、東京外国人雇用サー ビスセンターを利用する以外は日 本人と同じ方法を用いている 留学生に関する情報獲得手段は大 学による企業訪問等を通じた情報 提供87%、 大学教授を通じて 81%、 大学のインターンシップの実施 66%、民間のインターンシップに よる60%、就職課からのDM 60% 日本の新聞・雑誌・HP等広告 38.5%、国大大学等からの紹介 38.5%、自社日本人社員からの紹 介19.2%、国内の人材紹介業者・ 派遣業者13.5% 製造業では友人・知人の紹介 46.0%、指導教官の紹介 42%。サ ービス業では「本人の直接訪問」 40% 雇用の実態 国内拠点での研究業務34社 (83%)開発・設計業務33 社(80%) 。海外拠点での 業務に従事させている会社 は少数(10社24%) 元留学生の在籍者数は1企 業あたり1−11人 採用している企業のうち、 外国人留学生の採用枠を設 けているのは4.4% (5社) 、 90.3%が日本人学生と同じ 扱い 随時採用している64.2%、 以前は採用していたが現在 は採用していない13.2%、 定期的に採用11.3% 正社員は71%、契約から正 社員への変更可能な企業 29%、変更不可の企業23% 採用者の国籍 採用者の67% は中国人 在籍者の出身 は中国65.7 %、韓国17.3 % 留学経験者の 6割は中国人 過去の採用経験 68%(41社)で技術系留学生 の採用実績があり、42%の企 業(25社)では定期的(ほぼ 毎年)に採用を行っている 。 過去3年間で留学生を採用し た企業は1割。 (3244社の 9.6%)情報通信業では26.5%。 企業規模別では300人以上の企 業が36.3%の採用実績。 回答した企業の50.7%が元留 学生の新卒採用経験があった 。 「既に採用している 」が48.8% 留学生の定着状況:長期間勤 務しているものが多い(40社 中16社=40%) 企業全体の2割 (119社)が 「外国人」を雇用。その56.3% が日本での留学経験者を雇用。 留学経験者を1−3人未満雇 用している企業が30%、3− 5人、5人以上は各6% 。 全体の12%の企業が現在雇用 中。5000人以上の企業では2 社に1社が雇用中。 (採用実績 を見ると「1人」が25%、2 人が14%、3人が15%、これ を合わせると54%。雇用して いる企業の半数以上が3人以 下の少人数の雇用 ) 過去3年間に留学生を採用し た企業は135社(10.9%) 。し かも採用した企業の過半数が 1人の採用。 <表1> 各種調査における、外国人留学生を雇用している企業の実態

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調査者 海外技術者研 修協会(経済 産業省委託調 査) (文献8) 三菱総合 研究所 (文献5) 2007 2004 日本企業における外国 人留学生の就業促進に 関する調査研究 留学生の日本における 就職状況に関する調査 公表年 タイトル 2006.11- 2007.2 2004.2.1-3.5 質問紙調査 質問紙調査 64人(うち中国人46人、平均滞在 年数7.8年、平均在職年数3.6年) 46人(うち中国人 67.4%、滞在年 数平均8年、就労年数平均3.4年、 30歳未満19人) 全国 全国 元留学生の社員 日本で就職した 元留学生 調査期間 調査地域 調査対象者 調査方法 回答者 調査結果 国内業務および海外関連業務を兼務 76.7%(国内メイン46.9%、海外メイン 29.7%)国内のみ12.5%、海外のみ10.9% Aインターネット等での情報収集41.3%、 B学校・大学の推薦枠への応募 32.6%、 C知人からの紹介 30.4% 就活ではインターネット利用44%、大学 の就職課29%、友人関係14%、教授の紹 介13%、OBOG12% 年齢別に見ると、30歳未満は半数が左記 のB、30∼40歳はA55.6%、C33.3%、就 職課での情報収集33.3%である。40歳以 上はC50.0%、 「公的機関を通じて」が 25.0% <表2> 各種調査における、日本企業に就職した外国人留学生の実態 調査者 広島大学大学 教育センター (文献2) 白土悟・権藤 与志夫 (文献12) 三菱総合 研究所 (文献5) 総務省 (文献14) 横須賀柳子・ 小熊裕美 (文献24) 1990 1991 2004 2005 2006 全国大学における留学 生受入れと教育に関す る調査報告 留学生受け入れ・教 育・指導に関する調査 留学生の日本における 就職状況に関する調査 留学生の受入れ推進施 策に関する政策評価の ための「留学生に対す るアンケート調査 」 外国人留学生の就職活 動に関する調査研究 公表年 タイトル 10名以上の留学生が在籍する4年制 大学の学長または学部長宛にアンケ ート調査を実施 (1988校への配布 ) 。 回答数427学部 全国73校にアンケート用紙を配布 。 指導教官397人、事務職員130名から 回答 全国4年制大学690校の就職担当課へ のアンケート調査:回答大学 258校 全国81の大学・高専・専修学校への アンケート調査 全国28大学への質問紙調査 (国立大 学12、私立大学26) 就職の斡旋をしないという学部が国公私立とも最多で 、全体では59%。組織的にはしないが、個々の教官レベルでの対応が29学部、組織 的な対 応は18学部。日本人学生とは区別せずにという回答が比較的多い 。 397名の指導教授のうち 、就職の斡旋をしている 22%、していない63.5%。 「非常に負担」 「少し負担」を合わせると73.9% 4割の大学が「留学生は日本での就職が難しい ケースが多い」と回答。2割が「日本で就職し たい留学生はそれほど多くない」と「特に問題 ない」 。 大学では、所属科における紹介 36.5%、掲示板へ の掲載と学内専担部署の設置がそれぞれ 47.6%、 日本人と同じ支援 41.3% 留学生のみを対象とする就職説明会を実施した のは18校(47%) 。実施校の多くは1999年までに 8校、2000年以降が9校と、日本での就職者数 の増加時期と一致。留学生対象の専門職員を配 置しているのは5校 (大規模大学) 調査対象および回答数 就職支援策の実態 4年制大学では何らかの留学生向けの特 別な支援策を実施しているのが 14.7%。 今後の留学生への就職支援を 「積極的に 行う」が31.6%、特に積極的な支援はし ない27.5% 10大学が、留学生が日本で就職できない 主な理由は「留学生と企業の採用方針と の違い」としている 民間の人材ビジネス会社と提携して支援 にあたっている大学は約1割 。 留学生向けの求人ファイルの作成 8.9%、就職ガイ ダンスの開催5.0%、求人情報コーナーの設置 5.0%、いずれも1割未満 。また、ポータルサイト 上での就職情報において、留学生向けの求人情報 が整理されているのはは4年制大学のうち 26% 各種キャリア講座の実施率が日本人学生を含めた 全額対象では87%だが、留学生の参加は6% <表3> 各種調査に見られる、大学における留学生の就職支援の実態

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一方、少数ではあるが、日本企業に採用され た留学生を対象とした調査もある。調査内容は、 就職理由、就職時の状況(日本語力や職務内容)、 就労上の問題点、今後の就労意向(年数や転職) について尋ねるものが多い。しかし、これらに ついても、その企業に外国人社員が自分1人し かいない場合から、毎年採用するような企業も あり、量的な調査を行ってもそれが実態を反映 しているとは言えないし、本人の主観的な印象 で答えるような質問も多い。 このようなことから本項では、これまでの各 種調査の中から、日本企業に就職した留学生社 員本人の印象・感想以外についての調査結果の みを<表2>としてまとめた。その結果はわず か2つの調査にしか見当たらなかった。そこで は、彼らが就職活動の際にインターネットによ り情報収集する一方で、指導教授や知人を通し ての紹介により採用に至ったケースが多いこと が明らかになっている。これは(1)で見た、留 学生を雇用している企業の採用ルートについて の回答と一致している。 (3)大学における留学生に対する就職支援の 実態 留学生の国内就職については、1980年代はそ の数が少なかったことから大学ではほとんど話 題にされることはなかった。1990年代に入り、 深海(1990)のように「留学生交流の円滑な発 展のために外国人留学生の卒業後のアフター・ ケアの問題」の一つとして就職問題に触れ、 「外国人雇用の一層の拡大と自由化が必須の前 提となる」(文献21)という意見が散見されるよう になり、ようやく各種調査の一端に留学生の就 職問題が扱われるようになるが、その数は依然 として少ない。その調査結果は<表3>として まとめた。 調査は大学教員に直接尋ねるものや就職担当 課に尋ねるもの等が混在している。留学生の就 職への支援は基本的には日本人学生と同じであ るのが実態であることがわかる。留学生向けの 特別な支援策と呼べるものも徐々に始まってい るが、それは学内の留学生に就職情報を提供し たり、説明会をしたりという「内向き」のもの である。大学側に留学生の国内就職は難しいと いう認識はあるものの、直接企業と留学生を引 き合わせようとしたり、指導教授からの推薦状 を持たせて送り出すなどの積極的な支援策はま ったく行われていない。 このような「出口」対応は、大学入学の際に留 学生定員枠を設け、留学生入試による選考で日 本人学生とは別のルートで入学をさせるという 「入口」対応とはまったく対照的である。各大学 は様々な理由で留学生を受け入れているが、卒 業後の彼らの動向には関心が薄いか、支援をし なければならない必要性を感じていないのかも しれない。あるいは、何をどのように支援した らいいのかがわからないのが現状であるという ことも考えられよう。 5.まとめと今後の課題 ここまで述べてきたように、留学生受入れの 入口と出口についての現状は30万人計画実現の ネックを示している。留学生数の増減は入管の 審査と景気如何であるということ、現在の留学 生の就職先は小規模企業中心であり、1企業あ たり若干名の雇用しかしておらず、企業全体の 1割程度しか採用実績がないという状態がずっ と続いているということ、留学生の就職は紹介 や推薦による採用がかなりの割合を占めるとい うこと、留学生の就職に対する大学側の支援は 日本人の学生と同様か情報提供程度のものであ ることが明らかになった。 これらのことから、30万人計画実現のために は、入国にかかる入管の大幅な規制緩和、また、 一企業あたりの採用留学生数を増やす、未採用 の企業に一人でも多くの留学生を採用させる、 日本人学生より留学生を採用することが企業に メリットとなる施策をする、留学生の就職に大 学側が積極的に関与・介入する、などの施策の 必要性が考えられるがそのいずれもが容易なも のではない。それは、現状では入管にも企業に

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も大学にも実際に30万人の留学生を受け入れよ うとする主体性が見受けられないことによる。 ただ、筆者はだからといって30万人計画に反 対しているのではない。より多くの留学生の受 入れは日本社会にとってプラスになることが多 いと思うからだ。そこで、本項ではこれまでの 検討を元に、現段階ではまだ不明な点を明らか にすることで今後の30万人計画の実現を模索す るための手がかりをつかむ方法をいくつか提案 したいと思う。 ① 留学生の日本国内就職の実態を把握するた めの統計資料は現状では法務省入国管理統計 しかなく、留学生が在留資格を「就労」に切 り替えた時点での情報しか見ることができな い。別データとしての「外国人労働者数」に は元留学生だけでなく、海外からの直接雇用 の者や在日韓国朝鮮人、日系ブラジル人、大 使館勤務の者までが含まれている。したがっ て、その中に元留学生の就業者がどのくらい 存在しているか、現在までの就労年数や、離 職率、転職の回数などの実態については不明 である。外国人はすぐに辞めてしまうから雇 いたくないというような企業もいる。正確な 実態の把握が必要である。 ② 日本企業における留学生の採用が進まない 理由は企業側の問題だけでなく、現在のわが 国の外国人雇用施策による面もあるのではな いだろうか。例えば、外国人を雇用しようと する企業は、入管にその企業の損益決算書や 登記簿謄本など正式書類の提出が求められ る。日本人の雇用なら保証人の印鑑程度で済 むのに比べその手続きは煩雑で、その面倒さ ゆえに外国人雇用を敬遠するということも考 えられる。また、現在は「人文知識・国際業 務」「技術」といった職務でなければ在留資 格は与えられない。つまり、一般の事務職や 販売員などに留学生を雇い入れることはでき ないのである。既に数年日本社会に適応して 暮らしてきた留学生をそのような職務でも雇 用できるようにする、また、その手続き方法 を簡略化することなどへのニーズ調査や検討 も今後の課題であると思われる。 ③ 現在の日本の就活システムが留学生の就職 にとってのボトルネックになっているという 指摘もある(岡崎2009)。しかし、具体的に 日本人学生の就活にくらべ留学生の就活にお いてどんな点で差が出てしまい、それが不採 用につながっているのかについての調査はま だなく、実態は不明である。それがどのよう な差であり、その要因が何であるのかが明ら かになれば大学の具体的な支援として留学生 側に指導をする、企業側に配慮を請うなどの 手段を講ずることができるのではないだろう か。 ④ 日本企業に就職し働いている留学生に対す る調査をもっと増やし、彼らが辞めずに働け ている理由を明らかにすることも必要であ る。留学生は、その出身国や出自、母国で受 けた教育などに多様な個人差がある上に、母 国および日本の経済・政治状況など彼らを取 り巻く社会からの影響も大きく、量的な調査 では十分にその実態を把握することはできな い面が多い。したがって質的な調査を詳細に 行い、彼らの継続就労を支えている要素が何 かを明らかにすることは、今後日本での就職 を希望する留学生にとって重要な情報になる とともにそのような環境を企業側が意識して 整えることが企業の活性化につながる。日本 企業は社員の人材育成に時間をかけるという 企業風土があり、外国人であっても腰をすえ て働いてくれるなら雇用しようと考える企業 も出てくるだろう。また、横田(2008)が述 べたように、大学卒業後に日本企業へ就職で きるということは留学生にとっての大きなイ ンセンティブとなりうる。世界的な趨勢でも 留学生は「主権国家の国境を越える国際的人 的移動の一形態で、移民へとつながる可能性 が大きく、定住・就職の傾向が強い」(滝田 1988(文献15))。30万人計画が求める外国人高度 人材として日本に定住して日本社会・企業の

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活性化に貢献してもらうためにはこのような 実態調査が求められる。 30万人計画はまだ始まったばかりである。急 速な受け入れ数の拡大は現段階では望めそうに ないが、何もせずにいたのでは景気後退ととも に留学生数は減少してしまう恐れもある。そう ならないよう、まず不明な点を明らかにし、そ こから次のステップへの手がかりをつかみ、留 学生にとっても日本社会にとっても満足の行く 社会の構築に向かいたい。 【注】 1)「留学生」とは留学ビザ受給者、つまり 「出入国管理および難民認定法」別表第1に定め る在留資格「留学」で入国を許可された者を指 す。主に大学・専門学校などの高等教育機関で 学んでいる者であるが、一部予備教育機関(日 本語学校)に通学中で、正式に日本の高等教育 機関にはまだ属していない者も含まれる。 2)「外国人高度人材」とは、専門的、技術 的分野の在留資格を有する外国人労働者(人文 知識・国際業務、技術、教育等の在留資格で働 く外国人)を指す。 3)経済産業省は2007年「グローバル人材マ ネジメント研究会報告書」「アジア人材資金構 想」を公表。厚生労働省は2001年「留学生の就 職支援に関する連絡協議会」を発足させ、2007 年「外国人留学生に対する労働行政施策につい て」2008年「留学生等の高度人材受け入れ推進 に関する施策」を公表している。 4)2007年1月の「グローバル人材マネジメ ント研究会」報告では、少子高齢化の進展、グ ローバル企業との競争激化、途上国の市場化を 背景に「日本企業にとって人材の国際化という 方向性が必然かつ必要」であることから「急速 に高度外国人人材活用の必要性が高まってい る」と述べられ、企業が留学生を外国人人材と して採用することへの支援が求められている。 5)私費留学生の場合は、国費留学生とは異 なり、海外から直接日本の大学等に入学するの ではなく、来日直後はまず、大学等へ進学する ための予備教育を民間の日本語学校等で1∼2 年間受けることが多い。その間の在留資格が 「就学」であり、彼らは「留学生」と区別され 「就学生」として扱われる。 6)平成15年(2003年)11月、中央教育審議 会「新たな留学生政策の展開について」(答申) は副題を「留学生交流の拡大と質の向上を目指 して」とし、留学生数の拡大はそれ自体望まし いとしながらも、安易な数の拡大が招きかねな い大学等の受け入れ体制、教育研究内容、学生 等の質的低下について指摘している。 7)「法律学、経済学、社会学その他の人文 科学の分野に属する知識を必要とする業務、ま たは外国の文化に基盤を有する思考もしくは感 受性を必要とする業務に従事する活動」をする ための在留資格 8)平成20年(2008)5月、教育再生懇談会 は「これまでの審議のまとめ−第1次報告」と して「留学生30万人計画」を国家戦略と位置付 け、その方策の一つとして留学生の就職支援の 充実を掲げ、「留学生の5割が日本国内で就職 することを目指す」とした。 【参考文献】 1)榎友嘉(2009)「日本企業の留学生採用につい て」スタッフアドバイザー2009.2月 p64-75 2)江渕一公編(1990)『留学生受入れと大学の国 際化−全国大学における留学生受入れと教育 に関する調査報告』(高等教育研究叢書1) 広 島大学大学教育センター 3)遠藤誉(1992)「外国人留学生の日本企業就職 と国際貢献」留学交流4(11)p2-7 4)岡崎仁美(2009)「外国人留学生の採用動向と 就職支援のポイント」留学交流21(2)p22-25 5)株式会社三菱総合研究所(2004)『留学生の日 本における就職状況に関する調査報告書』株 式会社三菱総合研究所 6)木村孟(2009)「「留学生30万人計画」のために」 IDE現代の高等教育507 p27-32 7)雇用・能力開発機構、財団法人アジア人口・開 発協会(2007)『アジア各国からの留学生の雇 い入れに関する実態調査報告書』雇用・能力

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開発機構、財団法人アジア人口・開発協会 8)財団法人海外技術者研修協会(2007)『構造変 化に対応した雇用システムに関する調査研究 (日本企業における外国人留学生の就業促進に 関する調査研究)報告書』財団法人海外技術 者研修協会 9)社団法人経済同友会(2006)『「企業の採用と教 育に関するアンケート調査」結果』社団法人 経済同友会 2006年4月 10)白木三秀(2008)「留学生の採用活性化に向け て」グローバル経営2008年4月号 p4-21 11)白石勝己(2006)「留学生数の変遷と入管施策 からみる留学生10万人計画」ABK留学生メー ルニュース61 p1-6(財団法人アジア学生文化 協会) 12)白土悟・権藤与志夫(1991)「外国人留学生の 教育・生活指導における現状と課題」九州大 学比較教育文化研究所紀要42 p97-119 13)信時裕(1992)「留学生の就職」IDE現代の高 等教育335 p47-54 14)総務省(2005)「留学生の受入れ推進施策に関 する政策評価」 15)滝田祥子(1988)「1980年代における日本留学 の新展開」国際政治87 p106-123 16)寺倉憲一(2009)「我が国における留学生受入 れ政策」レファレンス2009.2 p27-47国立国会 図書館調査及び立法考査局 17)独立行政法人労働政策研究・研修機構(2008) 『外国人留学生の採用に関する調査』JILPT調 査シリーズ42 独立行政法人労働政策研究・ 研修機構 18)中山昌秋(2009)「留学生の受入れと出入国管 理行政について」留学交流21(2)p6-9 19)日経流通新聞「外国人留学生の採用、8割が採 用に満足−異なる発想、貴重」1992.3.5. 20)日本経団連産業第二本部(2008)『技術系留学 生の採用に関するアンケート調査結果』日本 経団連産業第二本部 2008年9月 21)深海博明(1990)「総合戦略と具体戦略の確立 を求めて」外国人留学生問題研究会編『新時 代の留学生交流』めこん p194 22)毎日新聞「外国人留学生、「日本で働きたい」 が33% 雇用開発センター調査」1989.8.30. 23)山崎哲夫(1987)「就職を目的とする外国人の 入国・在留」国際人流5 p54-57 1987.10月 24)横須賀柳子・小熊裕美(2006)『外国人留学生 の 就 職 活 動 に 関 す る 調 査 研 究 ― 2 0 0 3 年 度 JAFSA調査・研究女性報告書』特定非営利活 動法人国際教育交流協議会 25)横須賀柳子(2007)「大学における留学生の就 職支援の現状と課題」留学交流19(2)p10-13 26)横田雅弘(2008)「三十万人計画が実現する条 件」留学交流20(8)p6-9 【政策等参照URL】 「留学生10万人計画」の概要 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chu kyo4/007/gijiroku/030101/2-1.htm 総務省「留学生の受入れ推進施策に関する政策評価」 http://www.soumu.go.jp/kanku/tohoku/aomori/txt /ryuugakusei.pdf 「留学生30万人計画」骨子  http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/rireki/20 08/07/29kossi.pdf 教育再生懇談会「これまでの審議のまとめ―第1次 報告」(平成20年(2008)5月) http://www.47news.jp/CN/200805/CN200805260100 0660.html 経済産業省産業人材参事官室「グローバル人材マネ ジメント研究会報告書」 http://www.meti.go.jp/press/20070524002/globaljin zai-houkokusho.pdf 厚生労働省「留学生等の高度人材受け入れ推進に関 する施策」 http://www.jil.go.jp/event/ro_forum/resume/08121 1/ogata.pdf 法務省入国管理統計  http://www.immi-moj.go.jp/toukei/index.html 日本学生支援機構 http://www.jasso.go.jp

参照

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