少子社会 とその背景
『
国民生活 白書 』 を読 む
市 川 孝 一
The Society
of Declining
Births
and its Background
Koichi Ichikawa
は じめ に 『国 民 生 活 白 書 』 は、 毎 年 そ の 副 題 が 注 目 さ れ る 。 そ こに そ の 年 に取 り上 げ られ た テ ー マ が集 約 さ れ て い るか らで あ る。1992(平 成 4)年 版 『国 民 生 活 白書 』 の 副 題 は、 「少 子 社 会 の 到 来 、 そ の 影響 と対 応 」 とい う もの だ っ た 。1990(平 成2)年 に は、 「1.57シ ョ ッ ク 」 と い う言 葉 が 流 行 語 とな っ た が、 「少 子 化 現 象 」 が 『国 民 生 活 白書 』 の 中 心 テ ー マ に まで 取 り上 げ られ る こ とに な った の で あ る。 本 稿 で は、 この1992(平 成4)年 版 の 『国 民 生 活 白 書 』 の 内 容 に従 い な が ら、 「少 子 化 現 象 」 とそ の 背景 に つ い て考 えて み た い 。 少 子 化 ・少 子 社 会 「少 子 化 」 「少 子 社 会 」 とい う言 葉 自体 は、 一 般 的 な 言 葉 と して は あ ま りな じ まな い表 現 で あ るが 、 字 面 を見 れ ば その 意 味 す る と こ ろ は一 目瞭 然 で あ る 。 「子 供 が 少 な くな る こ と」 「子 供 の 少 な い 社 会 」 とい う こ とで あ る(白 書 で は、 少 子 社 会 を 「子 供 や 若 者 の 少 な い社 会 」 と定 義 して い る)。 「少 子 化 」 とい うの は、 言 い換 えれ ば 「出 生 率 の 低 下 」 と い う こ とで あ る。 した が っ て 、 白 書 が 目指 した の は、 少 子 化 現 象 を も た ら した 要 因 や 背 景 の 分 析 とそ れ が 与 え る社 会 へ の 影 響 、 さ ら に は そ の進 行 を ど う した ら食 い 止 め る こ とが で き る か とい う、 そ れ へ の 対 応 を示 す こ とで あ る 。 平 成4年 版 白 書 は、 総 頁460頁 に 及 ぶ 例 年 に な い 大 部 な もの とな っ て い る が 、 その 内容 は、 実 は表 一1に 集 約 され て い る とい っ て よ い。 こ の フ ロ ー チ ャ ー トに は、 「少 子 化 」 の 要 因 が ま んべ ん な く網 羅 さ れ て い る し、 そ れ らの 相 互 連 関 も う ま く ま とめ られ て い る。 「これ を 見 て も ら え ば、良 くわ か る」 とい う こ と にな る の だ が 、 そ れ で は論 文 に な らな い の で 、 以 下 問題 点 を い くつ か ピ ッ ク ア ップ し て検 討 して い くこ とに し ょ う。 1.57シ ョ ック 厂は じめ に」 で もふ れ た よ うに、 「少 子 化 現 象 」 が 大 きな 社 会 問題 と して 注 目 を浴 び た の は、1990年 の こ とで あ る。6月 に発 表 され た 前 年 の厚 生 省 の 人 口動 態 調 査 の 結 果 が直 接 の き っ か け だ っ た。 こ れ に よ る と、1989年 の 「合 計 特 殊 出生 率 」(女 性 一 人 当 た りの 平 均 出 産 数:一 人 の女 性 が 一 生 に産 む子 供 の 数)は 、 史 上 最 低 の1.57を 記 録 した(そ の 後 さ ら に こ の 数 字 は低 下 し、1991年 に は1.53と な っ た)。 この た め、 マ ス コ ミは この 問題 を大 き く取 り上 げ、 社 会 的 反 響 も大 きか った 。 さ らに は、 こ と さ ら事 態 の 深 刻 さ を強 調 す る 「1.57シ ョ ッ ク」 な る 大 げ さ な 命 名 が 、 一 種 の 「流 行 語 」 に ま で な り、 そ の反 響 に一 層 拍 車 を か け る こ と とな った 。 一11一表 一1出 生 率 低 下 の 要 因(フ ロー チャ ー ト) (原 因) (要 因) (背景) 1男 女 の 人 ・の アンバ ランス1
伸
市 化1
1多様 な楽しみの増 大1 1単 身生活の便利 さの増大 ト 7成 熟 化 非 婚 化 ・晩 婚 化一8
1女性の高轣 化 卜 ノ7も //爿 サービス化1 男女の機会均等化1 攵性 の 就 業 率 の 高 まり 老後 の 子 供 依 存 の低 下 育児 へ の 精 神 的 ∠ 負担 感 の 増 大 丶 子供 の 将 来 へ の 不 安 改育 費 の 増 大 丶丶 士事 と家 事 ・育 児 n両 立 の難 しさ 丶 頬 飴 の高まり1 不充分な夫の黐 分担k劃
v 与配 偶 女 子 の 出生 率 の 低' 長い労m問1一
不充分な居住環境
1 過熱して・破 験辮r 一 不充分な家事・育児の支援体制i (備 考)1.婚 外 子 、離 婚 につ い て は 省 略 した 。 2.主 要 と思 わ れ る 関 係 を示 したもの で あ る。 『平 成4年 版 国 民 生 活 白 書 』P .8 古 い タ イ プの 政 治 家 の 中 に は 、 そ の 原 因 を 単 純 に女 性 の 高 学 歴 化 や 、 社 会 進 出 の せ い に す る者 もい て 、 女 性 の ラ イ フ ス タ イ ル の変 化 に的 はず れ な 非 難 を 浴 び せ る コ メ ン ト も聞 か れ た 。 また財 界 か らは 、 「労 働 力 不 足 に な る」 「社 会 の 活 力 が 失 わ れ る」 な どの声 が 上 が り、 出 生 率 回復 策 を求 め る声 は小 さ くな か っ た。 そ の た め もあ っ て か 、 「児 童 手 当 て の増 額 」 「育 児 休 業 制 度 の 法 制 化 」 の 検 討 な ど、 政 治 の側 の 反 応 もい つ に な く素 早 か っ た 。1) しか し、 政 財 界 の リ ア ク シ ョン に は、 時 代 ゜ 錯 誤 の 「生 め よ ふ や せ よ!」 的 な ニ ュ ア ンス が 強 く、 当 事 者 の共 感 を呼 ぶ もの で は な か っ た 。 以 下 で も検 討 す る とよ うに 、 こ の よ うな 上 か らの 「生 め よふ や せ よ」 の か け声 だ けで は事 態 の 改 善 が 図 れ な い こ とは 明 らか で あ る。 非 婚 化 ・晩 婚 化 表 一1に も示 さ れ て い る よ うに 、 「少 子 化 」 (出 生 率 の低 下)の 直 接 の 原 因 は、 「非 婚 化 」 「晩 婚 化 」 及 び 「有 配 偶 者 の 出 生 率 の低 下 」 で あ る。 つ ま り、 女 性 が 結 婚 しな い 、 結 婚 す る と して も遅 い、 結 婚 し て も子供 を産 まな い とい う こ とで あ る 。 これ ら は あ らた め て 指 摘 す る まで もな く良 く知 られ て い る事 実 で あ る が 、例 え ば 「晩 婚 化 」 は 具 体 的 数 字 で 示 す と次 の よ うな変 化 を 示 し て い る 。 平 均 初 婚 年 齢 を 見 る と、 1951(昭 和26)年 に は、 男 性25.9歳 、 女 性 23.1歳 で あ る の が 、1991(平 成3)年 に は男 性28.4歳 、 女 性25.9歳 とな って い る。40年 間 の 間 に男 性 で2.5歳 、 女 性 で2.8歳 上 昇 した こ とに な る。 平 均 初 婚 年 齢 の 推 移 を見 る と、 団塊 の 世 代 が 結 婚 し始 め た時 期 に 当 た る1971年 前 後 を 除 け ば ほ ぼ 一 貫 し て 上 昇 し て お り、 「晩 婚 化 」 が 大 き な 潮 流 に な っ て い る こ と は 明 白 で あ る(23-24頁 、 以 下 特 に 断 りの な い 場 合 は、 頁 数 は平 成4年 版 『国 民 生 活 白書 』 か らの 引 用 を示 す 。) 結 婚 を す るの が 遅 くな れ ば、 子 供 を産 む の も 遅 くな る、 つ ま り 「晩 婚 化 」 は イ コ ー ル 「晩 産 化 」(27頁)で あ って、 そ うな れ ば産 む 子 供 の 数 も減 少 す る とい う の は必 然 の 結 果 で あ る 。 こ こ まで の 因果 関 係 は誰 で もわ か る 。 非 婚 化 ・晩 婚 化 の 要 因 とい う こ とに な る と、 次 に 問 わ れ な け れ ば な らな い の は、 「非 婚 化 」 「晩 婚 化 」 の原 因 で あ る。 「な ぜ 結 婚 しな い の か 」 「な ぜ 結 婚 す る の が 遅 くな るか」 とい う こ とで あ る。 表 一1で は そ れ ら は、 「男 女 の 人 口 の ア ン バ ラ ン ス」 「多 様 な楽 しみ の 増 大 」 「単 身 生 活 の便 利 さ の増 大 」 「女 性 の 高 学 歴 化 」 「女 性 の 就 業 率 の高 ま り」 とい う項 目 に ま とめ られ て い る。 こ れ ら の 項 目 は、 確 か に そ れ ぞ れ 「非 婚 化 」 「晩 婚 化Jと 深 くか か わ っ て い るだ ろ う が 、 そ の 要 因 を考 え る た め に は、 本 文 の 記 述 に対 応 した 章 別 構 成 の 方 を見 た 方 が 、 問 題 の 所 在 が よ りは っ き り して くる。 白 書 で 「非 婚 化 」 「晩 婚 化 」 の 要 因 を 分 析 し て い るの は、 本 文 で 言 え ば 「第2章 結 婚 と若 者 の 意 識 」 「第3章 女 性 の 職 場 進 出 と 家 族 の 変 容 」 が そ れ に当 た る。 つ ま り、 白 書 は 「非 婚 化 」 「晩 婚 化 」 の 要 因 を大 き く分 けて 二 つ の 側 面 か ら検 討 し よ う と して い る の で あ る。 ひ とつ は、 結 婚 を取 り 巻 く状 況 の 変 化 と若 者 の結 婚 意 識 ・結 婚 観 の 変 化 で あ り、 も う ひ とつ は、 女 性 の社 会 進 出 と それ に伴 う家 族 の変 容 や 男 女 の性 別 役 割 意 識 の 変 化 で あ る。 若 者の結 婚観 こ れ ら も特 に新 しい観 点 とは言 えな い が 、 こ の 中 で 指 摘 され て い る もの の 中 で 、 興 味 深 い と思 わ れ る もの を一 二 取 り上 げ て み よ う。 そ の ひ とつ は男 女 の結 婚 観 の ず れ で あ る。 そ れ は 、 図 一1に 示 され て い る。 男 も女 も互 い に相 手 を重 視 す るで あ ろ う 「結 婚 の 条 件 」 を誤 解 して い る とい うの で あ る。 つ ま り、 男 の 方 は女性 が 夫 の条 件 と し て 重 視 す る も の を、 「容 姿 」 で あ る と か 「学 歴 」 で あ る とか 「収 入 」 や 「資 産 」 だ と思 い こん で い るが 、 実 際 に 女性 た ち の方 は 結 婚 相 手 の 条 件 と して、 これ ら を男 が 思 うほ どは重 視 し て い な い とい う こ とで あ る。 これ は あ ま り に も有 名 に な っ て し ま っ た例 の 「三 高 」(高 学 歴 、 高 収 入 、 高 身 長)を 、 男 た ちが 真 に受 けて しま っ て い る こ とを 示 し て い る。 こ こ に もマ ス コ ミが作 った 「虚 像 」 に 振 り回 され て し ま っ て い る受 け手 の一 例 が 見 られ る 。 逆 に 女 性 の 方 は 、 「男 性 が 重 視 す る で あ ろ う と考 え る結 婚 相 手 の条 件 」 に 「家 事 が で き る」 「家 庭 を第 一 に 考 え る」 な ど を、 実 際 に 男 性 が考 え る よ り多 く上 げて い る。 白書 は、 この ず れ が 結 婚 を阻 む ひ とつ の 要 因 とな り得 る こ とを 示 唆 して い る が(36-39 頁)、 後 者 に関 し て 言 え ば、 男 の 側 が 女 性 に 対 して 求 め る そ れ らの 条 件 の 数 字 自体 の 大 き さ の 方 が 問 題 だ と思 わ れ る。 「家 事 が で き る」 (39.9%)「 家 庭 を 第 一 に 考 え る」(35.7%) は、 決 し て低 い値 で は な い。 多 くの論 者 が 指 摘 す る よ う に、 「女 性 は結 婚 に対 等 な パ ー ト ナ ー を求 め て い るの に、 男 性 の 方 は相 変 わ ら ず母 親 の代 理 を求 めて い る」 とい う男 女 間 の 結 婚 観 の ず れ の 方 が 、 結 婚 の 障 害 と して は 大 きい とい わ ざ る を得 な い だ ろ う。 結 婚 の メ リ ッ トと デ メ リ ッ ト 白書 は 、 「結 婚 と若 者 の 意 識 」 の 章 に、 「結 婚 の魅 力 と不 利 益 」 とい う節 を設 け、 結 婚 の メ リ ッ ト とデ メ リ ッ トを 考 察 して い る。 世 論 一13一
図 一1相 手 の 重 視 す る条 件 に つ い て の 予 想 と実 態 の ず れ 「あ な た が 結 婚 す る際、結 婚 相 手 の 条 件 で 最 も重 視 す るの は何 で す か 。 既 婚 の 方 は 結 婚 した時 の 条件 を お 答 え 下 さい 。(4つ 選 択 可)」 「逆 に、 一 般 的 に言 っ て 、 異性 は 結 婚 す る際 に 、結 婚 相 手 の条 件 で 何 を最 も重 視 す る と思 い ます か 。(4つ 選 択 可)」 〈妻 の 各 件 〉 (%) 100908070605040302010 〈夫の 条件 〉 (%) 0102030405060708090100 資 産 容 姿 学 歴 収入の安定 性格 が合 う 家事ができる 収入が高い 共 通 の 趣 味 を持 って いる 金銭感 覚が似て いる 自分 を束縛 しな い 家 庭 を第 一 に 考 える 自分 にな い性 格 を持 ってい る (備 考)1.経 済 企 画 庁 「平 成4年 度 国 民 生 活 選 好 度 調 査 」に より作 成 。 2.対 象 は 、全 国 に居 住 す る20歳 代 の 男 女347人 。 『平 成4年 版 国 民 生 活 白 書 』P .37 調 査 の 結 果 が 示 す と こ ろ に よ る と、 結 婚 の 利 点 と して 若 者 が 上 げ る の もの は男 女 と も 「精 神 的 な 安 ら ぎの 場 が 得 られ る」 が圧 倒 的 に多 い(図 一2参 照)。 「一 人 前 の 人 間 と して 認 め られ る」 も、 そ れ な りに大 き な値 を保 って い て、 相 変 わ らず 日本 で は 「結 婚 へ の圧 力 」 が 強 力 な 規 範 と し て機 能 して い る こ とを うか が わ せ るが 、 それ ら を除 く と結 婚 の メ リ ッ ト とい うの は今 日で はか な り限 定 され た もの とな っ て い る。 こ う した 変 化 は、 家 族 の 機 能 の縮 小 化 の過 程 で 家 族 に 最 後 まで残 され て い る の は 「社 会 化 の 機 能 」 と 「人 格 安 定 化 機 能 」 だ とい う有 名 な社 会 学 の 理 論 を思 い 起 こさ せ るが 、 裏 返 す とそ れ以 外 の メ リ ッ トは ほ とん どな い とい う こ とで あ る。
図一2結 婚 生活 は安 らぎの場 L般 に 、結婚 の利 点 は 何 だ と思 います か 。(2つ 選 択可)」 〈20・30歳代 の 男性 〉 〈20・30歳代 の 女 性 〉 (備 考)1.経 済 企 画 庁 「平 成4年 国 民 生 活 選 好 度 調 査 」によ り作 成 。 2.対 象 は 全 国 に 居 住 す る20、30歳 代 の 男女852人 。 『平 成4年 版 国 民 生 活 白 書 』P .46 結 婚 の メ リッ ト ・デ メ リッ トに 関 連 して 、 白書 は 「単 身 生 活 の魅 力 」 とい う項 目 を取 り 上 げて い る。 安 価 な家 電 製 品 の普 及 、 加 工 食 品 の 著 しい 供 給 増 、 コ ン ビニ エ ン ス ス トア の 店 舗 数 の増 加 な どにふ れ 、 次 の よ う に コ メ ン トす る。 「… … 種 々 の 便 利 な サ ー ビス が 充 実 し て きた こ とか ら、 あ る程 度 の レベ ル の 生 活 は単 身 で ほ とん ど家 事 を しな い 人 で も維 持 す る こ とが 可 能 に な って き た とい え る だ ろ う」(53頁)。 そ し て 持 っ て 回 った 言 い 方 な が ら も、 こん な 大 胆 な 結 論 も下 して い る。 「結 婚 の利 点 に精 神 的 安 らぎ を求 め る割 合 が 高 い こ と は、 裏 を返 せ ば他 の点 に お い て 結 婚 す る必 要 性 が 薄 れ て きて す る こ とを 表 して い る とい え る部 分 も あ る とい え よ う」(54頁)。 これ は 図 一2か ら も明 らか だ が 、 今 日の 結 婚 で は 、 「生 活 の 便 利 さ」 は男 性 に お い て す ら結 婚 の 強 力 な動 機 づ け に は な って い な い の で あ る。 これ が 昔 の結 婚 とは違 う と こ ろで あ る。 一 世 代 前 の人 た ち の 結 婚 の実 態 を 見 る と、 こ う言 っ て し ま う と ミ も フ タ も な い の だ が 「単 身 生 活 の不 便 さ」 を解 消 す る手 段 と して、 あ る い は 食 欲 と性 欲 を満 た す 手 段 と して 、 結 婚 が選 択 され て い た とい う と ころ が あ る。 一 方 結 婚 の デ メ リ ッ ト と な る と、 男 女 と も、 「自由 に使 え るお 金 が 減 っ て し ま う」 「や りた い こ との 実 現 が 制 約 され る」 の答 が上 位 を 占 め て い る(図 一3参 照)。 し か し、 これ を細 か く見 て い く と興 味 深 い 違 いが 示 され て い る。 「や りた い こ との 実 現 が制 約 され る」 の答 は、 男 性 の場 合 「有 配 偶 者 」 の 数 字 が 「独 身 者 」 の そ れ を大 き く下 回 って い る の に対 して 、 女 性 の場 合 は逆 に な って い る。 差 は小 さい が 、 「自由 に使 え るお 金 が 減 っ て し ま う」 も同 じ パ タ ー ン を示 して い る。 「家 事 ・育 児 の 負 担 が 多 くな る」 は、 男 女 と も 「有 配 偶 者 」 が 「独 身 者 」 を上 回 る とい う同 じパ ター ン を示 して い る が、 そ の 絶 対 値 に 大 き な 差 が あ る。 「不 利 益 は な い 」 に つ い 一 ・15一
図 一3女 性 に 重 い結 婚 後 の 行 動 の 制 約 「結婚 して と くに不 利益 にな る と思 わ れ る点 は何 だ と思 い ます か。(2つ選 択 可) 〈20・30歳代 の 男 性 〉 (%)6050403020100 〈20・30歳代 の 女 性 〉 0102030405060(%) 異 性 との 交 際 が 自 由 にで きない 自由 に使 えるお金 が 咸ってしまう や りたいことの 実 現 が 制 約 され る 配偶者の考えへの 配慮がわずらわしい 家 事 ・育 児 の 負担 が 多くなる 付 き合 い が 増 えるの で わ ず らわ しい 仕 事 が しに くくなる 不利益はない (備 考)1.経 済 企 画 庁 「平 成4年 度 国民 生 活 選 好 度 調 査 」により作 成 。 2.対 象 は 全 国 に居 住 す る20、30歳 代 の 男女 計852人 。 『平 成4年 版 国民 生 活 白 書 』P .49 て そ の 数 字 の 開 き は非 常 に大 き な もの とな っ て い る 。 これ ら を見 て くる と、 「… … 結 婚 生 活 は女 性 に と って 独 身 時 代 に考 え る よ り も、 負 担 ・不 利 益 が 多 い と い え る で あ ろ う」(50 頁)と い う結 論 に な る。 こ う な る と、 女 性 が 結 婚 した が ら な い の は 当 然 だ とい う こ とに な っ て くる 。 それ で な く て も、 「シ ン ドイ こ とは した くな い」 と い う の が 今 時 の 女 性 の顕 著 な性 向 で あ る。 女 性 に とっ て デ メ リ ッ トばか りの 目立 つ 結 婚 を、 何 で 好 き好 ん で す る もの か い う話 に な る。 現 に、 自宅 か ら通 勤 す るOLな どは、 経 済 的 に最 も 余 裕 の あ る、 可 処 分 所 得 が 最 も多 い女 性 た ち だ とい うの は良 く知 られ た 事 実 で あ る 。 一 般 論 と し て 少 し カ ッ コ よ く言 え ば、 「自 己 実現 に つ なが ら な い よ うな 結 婚 は した くな い」 とい う の が 当 世 女 性 の 結 婚 意 識 とい う こ とに な る。 これ を下 世 話 の レベ ル の本 音 の 発 言 に置 き換 えれ ば、 「今 の 生 活 の レ ベ ル を下 げ る よ うな 結婚 は した くな い!」 とい う こ と に もな る。 この よ うに 、 現 状 は女 性 を結 婚 か ら遠 ざ け る条件 が そ ろ って い る とい う こ とに な る。 仕 事vs結 婚 ・出産 女 性 の 職 場 進 出 も、 一 般 的 に は 「少 子 化 」 の一 因 と し て考 え られ て い る。 こ の 問題 につ い て は、 す で に さ ま ざ ま な議 論 が 出 つ くして い るの で 、 白書 の 分 析 に も特 に新 味 は な い 。 この 問 題 を単 純 化 す る と次 の よ うに 言 え る。 現 在 の 日本 社 会 で 働 く女 性 に は 、 「結 婚 か 仕 事 か 」 「仕 事 か 出産 ・育 児 か 」 とい う二 っ の ハ ー ドル が存 在 す る。 そ れ を い か に ク リア ー す るか とい う こ とで あ るが、 そ れ らが 二 者 択 一 の 形 で 当事 者 に選 択 を迫 りが ち だ とい う と こ ろが 問題 な の で あ る。 いず れ か 一 方 しか
図 一4女 性 が 望 む就 業 形 態 職 業 をもたな い ほうカミよい 職 業 をもち 結婚 ・出産 を 契 機 として 家庭 に入 るほうが よい 職 業 をもち 、結 婚 や 出産 な どで 一 時 期 家 庭 に 入 り、 育 児 が 終 わ ると再 び 職 業 を もつほうが よい 職 業 をもち、 結 婚 や 出産 の 後 も 仕 事を続 ける `まうカミよし、 /'v… … 一'▼ 就 職(業)し 、結 婚 や 出 産 などを 契 機 として 家 庭 に入 る ioo(%) ロ 就]職(業)し 、長 く働 く 就 職(業)し 、結婚 や 出産 な どで 一 時期 家 庭 に入 るにして も、再 び 働 く (備 考)i.総 理 府 「婦 人 に 関 す る 意 識 調 査 」(昭和47年)、 「婦 人 の 就 業 に 関 す る 世 論 調 査 」(昭和58年)、 「女 性 の 就 業 に 関 す る世 論 調 査 」(平成 元 年)に よ り作 成 。 2.対 象 は 、 昭 和47年 調 査 が18歳 以 上 の 女 性 、58年 調 査 が20歳 以 上60歳 未 満 の 女 性 、 平 成 元 年 調 査 が20歳 以 上 の 女 性 で あ る 。 『平 成4年 版 国 民 生 活 白書 』P.63 選 べ な くて 、 仕 事 が 選 択 され た場 合 、 それ は 確 か に直 接 的 に 「少 子 化 」 に む す び つ くだ ろ う。 した が って 、 一 般 論 と して は この 問 題 を解 決 す る 方 策 は じつ に は っ き り して い るの で あ る。 つ ま り、 働 く女 性 が 安 心 し て 結 婚 や 出 産 ・育 児 が で き る よ う に す る こ と、 結 婚 生 活 ・家 庭 生 活 と仕 事 が 両 立 で き る と よ うな 条 件 が 整 え られ る こ とが必 要 だ とい う こ とにつ き る。 図 一4に も示 され て い る よ う に、 女 性 の 就 業 意 欲 は 年 を追 う ご と に ます ま す高 ま って い くこ とが わ か る。 また 、 経 企 庁 「女 性 の 就 業 と出 産 ・育 児 の両 立 に関 す る 意 識 調 査 」(平 成 3年 、 対 象:20∼44歳 有 職 既 婚 女 性)で も、 将 来 の 出産 とその 際 に仕 事 は ど うす る か につ い て 尋 ね た と こ ろ、 「い っ た ん 仕 事 を や め 、 し ば ら く して 再 就 職(復 職 を含 む)す る」 と 答 え た 人 が42.3%と 最 も多 く、 「産 前 産 後 の 休 み を除 い て 仕 事 を続 け る」 も、16.6%で あ った 。 逆 に 「出 産 を機 に仕 事 を辞 め 、 以 降 は 家 事 ・育 児 に専 念 す る」 は21.0%で あ る(96 頁)。 これ らの デ ー タ が示 す よ うに 、 女 性 の 高 い 就 業 意 欲 と出 産 ・育 児 を両 立 さ せ るた め る に は、 再 雇 用 ・再 就 職 制 度 を整 備 す る こ と しか な い。 これ と は別 に、 実 際 に働 い て い る女 性 た ち は、 出産 や 育 児 を支 援 す る制 度 や 条 件 と して どん な もの を考 え るて い るだ ろ うか 。 それ を 示 した の が 、 図 一5で あ る。 最 も多 い の が 、 「育 児 休 業 の 充 実 」(46 .7%)で あ る。 以 下 「出 産 費 用 の補 助 」(33 .0%)、 「労働 時間の短 縮 」(31.9%)と 続 く。 男 性(夫)の 回 答 と の 間 に は微 妙 な 違 い が あ る が 、 「育 児 休 業 」 の 有 効 性 を認 め る点 で は一 致 して い る。 育 児 休 業 法 に つ い て は先 に もふ れ た が 、 問題 は育 児 休 業 中 の 所 得 保 障 で あ る。 育 児 休 業 の 実 現 は確 か に 大 き な進 歩 だ が 、 所 得 保 障付 きで な い と、 休 業 中 の 経 済 的 不 安 は払 拭 で きな い 。 そ の点 、 白書 で も言 及 して い る ス ウ ェー デ ン の育 児 休 暇 制 度 は、 完備 し て い る 。休 暇 中 一17一
図 一5共 働 き世 帯 が 望 む 出 産 ・育 児 に 必 要 な 制 度 「一 般 的 に 出 産 や育 児 を しや す くす る た め に は どの よ うな 制 度 、 環境 を整 え て い く必 要 が あ る と思 い ます か 。(3つ 選 択 可)」 (%〉 出産費用の補 助 育児手 当の 充実 育児休業の 充実 保育 園の充 実 夫の応分な家事分担 住宅 の改善 再雇用制度 の充 実 労働時間の 短縮 育 児を助けあえる ような環境の育成 ベ ビー シッターの 普 及 01020304050 (備 考)i.経 済 企 画 庁 「平 成4年 度 国 民 生 活 選 好 度 調 査 」に より作 成 。 2.「共 働 き世 帯 の 夫 」は 本 人 、 妻 が と もに 「勤 め 人 」と答 え た159人 、「共 働 き世 帯 の 妻 」は 本 人 、 夫 が と も に 「勤 め 人 」と 答 え た182人 の 回 答 で あ り、 同 一 世 帯 の 夫 婦 の 回 答 で は な い 。 『平 成4年 版 国 民 生 活 白 書 』P.91 の所 得 保 障 は 父 母 に あ わ せ て450日 間 あ り、 そ の う ち360日 に つ い て は勤 労 所 得 の90%、 残 り90日 に つ い し て は 一 定 額(1990年 に は60 ク ロー ネ 、1ク ロ ー ネ=約25.4円)が 支 給 さ れ る と い う(193頁)。 こ う し た 制 度 の 力 も あ って か 、 ス ウ ェ ー デ ンで は、 先 進 諸 国 が軒 並 出 生 率 を下 げ る 中 、 唯 一 例 外 的 に とい って い い ほ ど出 生 率 を 大 き く回復 して い る(資 料 2参 照)。 今 ま で 述 べ て きた こ とは い ず れ も 「制 度 」 の 問 題 で あ る。 制 度 とい うの は極 端 な こ とを 言 え ば 、 作 っ て し ま え ば そ れ で 済 む こ とで あ る(実 現 す る こ と 自体 が 困難 で あ る こ と は言 う ま で も な い が)。 と こ ろ が 、 あ る意 味 で も っ とや っ か い な こ とが あ るの だ 。 それ は人 々 の 「意 識 」 と 「現 実 の行 動 」 と い う問 題 で あ る。 一 般 論 と し て は、 「男 は仕 事 、 女 は 家庭 」 とい う伝 統 的 な役 割 分 担 意 識 に時 系 列 的 な変 化 は 見 られ る(図 一6参 照)。 しか し、 ち ょっ と設 問 を変 え る と、 これ も怪 し く な っ て く る(図 一7参 照)。 「女 性 は 家 事 」 と答 え る もの は 、 全 体 で男 性 は、66.2%、 女 性 で も52.4%と な って い る。 しか も、20歳 代 の 男 性 を 見 る と、 「Aに 近 い」 とす る もの は11.2%と 他 の 年 齢 層 よ り少 な い もの の 「ど ち らか とい え ばAに 近 い」 と合 わ せ る と65.0 %と な っ て 、30歳 代 、40歳 代 の 男 性 を上 回 る (83頁)。 さ らに 、 実 際 の 家 庭 で の 日常 的 な 家 事 分 担 を見 る と こち らは相 変 わ らず 進 ん で お らず 、 家 事 は相 変 わ ら ず 妻 の 仕 事 とな さ れ て い る (図 一8参 照)。 しか も、 これ は共 働 きの 世 帯 の夫 の場 合 で もほ とん ど違 い は な く、 家 事 は 共 働 きの 女 性 に大 きな 負 担 とな る こ とが わ か る 。 共 働 き の主 婦 は、 仕 事 に加 えて 家 事 労働 も しな けれ ば な らず 、 疲 れ 果 て て い る とい う 現 実 が あ る。 これ に関 して は、 男(夫)の 側 に もそ れ な りの 言 い分(言 い 訳!)が あ るだ ろ う。 現 状 の よ うな、 長 時 間 労 働 、 長 時 間 通 勤 とい っ た 働 き方 の 中 で は 、 た と え 「家 事 を分 担 し た い 」 とい う気 持 ち が あ つ て も、 物 理 的 に 困難 で あ る と… … 。 男 の仕 事 中 心 ・会 社 中 心 の ラ イ フ ス タ イ ル そ れ 自体 の 変 更 と同 時 に、 男 の側 の 意 識 改 革 が 必 要 とな っ て くるだ ろ う。 有 配 偶 者 の 出生 率 の 低 下 上 で 述 べ た よ う に、 日本 の 現 状 で は さ ま ざ まな 結 婚 を妨 げ る条 件 が あ る。 そ の よ う な 困 難 を乗 り越 えて 結 婚 まで こ ぎつ け た と し て も 出 産 に も大 き な障 害 が あ る。 女 性 た ち は結 婚
図 一6男 女 の 役 割 分 担 意 識 の 変 化 「男 は仕 事、 女 は 家 庭 」 と い う考 え方 が あ り ます が 、 あ な た は こ の 考 え 方 に同 感 す る方 で す か、 そ れ と も同感 しな い 方 で す か 。」 同感する方 どちらとも わ か らない 同感 しな い方 男 性(1,635人) 昭和62年 女 性(2,148人) 0 io 2030 40 50 60 70 80 soioo(%) 1.7 男 性(1,655人) 平成2年 女 性(2,096人) 0 io 203040 5060 70 80 soioo(%) (備考)総 理 府「女性 に関 する世論調 査」(昭和62年 、平 成2年)により作成 。 『平 成4年版 国 民生活 白書』P .81 図一7性 別 ・年代 で違 う男 女 の役 割 意識 A「 女性 は家 にいて家事 をすべ きで ある」 B「 女性 も男性 と全 く同様 に社会 に出 て仕事 をすべ きであ る」 どち らか といえば どちらか といえば こ近 い 男 性 女 性 OIO2030405060708090100(%) 〈男 性 〉 目.2 53.8 i 28.06.3i 0 辱、 、、 覧 ノ 1: 17.2 46.0 i 29.37.0 】 1!∠ 16:3 47.6 r26 .47.6 鳳 、 、 ・コ 18.i 47.3 i 27.25.8 卩 ■ 丶、 \ 丶3ノ is 52.1 18.9 1 4.61 〈女 性 〉 20歳 代 30歳 代 40歳 代 50歳 代 60歳 以上 0.7 0.5 2.1 1.6 3.6 0102030405060708090100 0102030405060.708090100(%) (備 考)L経 済企画 庁 「平 成4年 度国民 生活選 好度 調査 」により作 成。 2.対象は全 国に居 住する20歳以上 の男女2,440人 。 『平成4年 版 国民 生活 白書』P .82 一19一
図 一8家 事 分 担 の 実態 「あなたが 家 の 中の 仕 事 で 最 も重 視 して 行 って いることは 何 です か。(3つ選 択 可)」 妻 夫 (%)so 60 40 20 家 計 の 管 理 食 事 の支 度 隻事 の あと片 づ け 部 屋 の 掃 除 風 呂 ・トイレ掃 除 ご み を出す 洗 濯 アイロンか け 子供 の しつ け 子供の入浴の世話 子供 の勉 強をみる (備 考)1.経 済 企 画 庁 「平 成4年 度 国 民 生 活 選 好 度 調 査 」に よ り 作 成 。 2.「共 働 き世 帯 の 夫 」は本 人 、妻 が と もに 「勤 め 人 」と答 え た159人 、「共 働 き 世 帯 の 妻 」は本 人 、 夫 が と も に 「勤 め 人 」と 答 え た[82人 の 回 答 で あ り、 同 一 世 帯 の 夫 婦 の 回 答 で は な い 。 3.「専 業 主 婦 の 夫 」は 「妻 が 無 職 」と答 え た421人 、「専 業 主 婦 」は 「無 職 の 主 婦 と答 え た399人 の 回 答 で あ り 、同 一 世 帯 の 夫 婦 の 回 答 で は な い 。 『平 成4年 版 国 民 生 活 白 書 』P .84 して も子供 を産 まな い の で あ る。 よ り正 確 に 言 え ば 、 厂多 くの 子 供 を産 む 」 女 性 が 少 な く な っ て い る とい う こ とで あ る。 しか し、 この 問題 は 果 た して 女 性 た ち は 「子 供 を産 まな い 」 の か 、 「産 め な い の か 」 か とい う形 で 問 い 直 し て み る必 要 が あ る。 こ れ に 関 して は 、 面 白 い デ ー タ が あ る 。 「平 成 4年 度 国 民 選 好 度 調 査 」(対 象:全 国 の20才 以 上 の男 女2440人)に よ る と、 理 想 の子 供 数 ほ尋 ね る と平 均2.55人 とい う結 果 に な るが 、 現 実 に予 定 して い る子 供 の 数 は2.04人 に な る とい う。 現 実 の 子 供 の数 が 、 理 想 の子 供 の 数 を 下 回 っ て い るで あ る(11頁)。 「本 当 は もっ と も子 供 が欲 しい の に、 そ うす る こ とが で き な い 」 とい う意 味 で は、 これ は 「産 まな い」 で は な く 「産 め な い」 の で あ る とい う こ とに な る。 「少 子 化 」 の 問題 の 核 心 は こ こに あ る。 つ ま り、 生 理 的 に は産 む能 力 が あ りな が ら、 「産 め な い 」 とい う こ とが 問題 で あ る。 同 調 査 で 、 そ の 理 由 を3項 目複 数 回 答 で 尋
ね た と こ ろ、 「子 供 を育 て る の に お 金 が か か る」(34.5%)、 「年 齢 的 な 理 由 等 で 無 理 」 (20.5%)、 「育 児 の体 力 的 な 問題 」(19.6%) が 上 位 を 占 め る。 そ れ に次 い で 、 「家 が狭 い 」 (15.4%)、 「教 育 をめ ぐる状 況 に 対 して不 安 」 (13.4%)、 「の び の び と育 つ生 活 環 境 が な い 」 (13.0%)な どの 育 て る 環 境 に つ い て の 不 安 な ど にふ れ た もの が 続 く(11頁)。 「年 齢 的 な 理 由」 や 「体 力 的 な 理 由 」 は、 「晩 婚 化 」 の 問 題 へ 戻 っ て い て し ま うが、 そ れ を 除 く と 「少 な い 数 の 子 供 の し か 持 た な い 」 とい う選 択 を夫 婦 に強 い て い る の は、 「子 供 の 教 育 の 問 題 」 と 「住 まい の 問 題 」 に つ き る。 白 書 で も、 「子 供 の 教 育 問 題 」 に は 多 くの ス ペ ー ス を さ い て 、 「子 供 の 教 育 」 が 親 に大 き な 負 担 を強 い て い る現 状 を 分 析 して い る(「 第4章 子供 へ の期 待 と教 育 」)。 前 出 の 選 好 度 調 査 に よ る と、 「子 供 に は ど の 程 度 の教 育 をつ け て ほ し いで す か 」 とい う 問 い に対 して 、 男 の子 に つ い て は 「大 学 」 と 答 え る もの が 、 男 性 の場 合 で66.3%、 女 性 の 場 合 で74.3%と 高 い数 字 を示 して い る。 女 の 子 に関 して は、 「短 大 ・高 専 」(男 性34.0%、 女 性38.6%)と い う回答 が 最 も多 く、 これ に 「大 学 」(男 性28 .6%、 女性31.2%)と い う回 答 が 続 く。 女 の子 の場 合 で も、 短 大 あ る い は 大 学 ま で い っ て ほ し い と思 っ て い る人 が6 ∼7割 い る と い う こ とで あ る。(103-105 頁)。 こ う して 、 高 学 歴 を 目指 した 子 供 へ の教 育 投 資 が 始 ま る の だ が 、 近 年 教 育 費 の 金 額 は増 大 す る一 方 で、 そ の 絶 対 額 は か な りの 数 字 に 達 す る 。 白書 の試 算 に よ る と、 最 もお 金 の か か る幼 稚 園 か ら大 学 まで の私 立 コー ス(た だ し、 小 学 校 の み は 公 立 で 、 大 学 は 下 宿 の 場 合)で は 、 教 育 費 の 総 額 は1512万 円 に 及 ぶ (ち な み に、 これ は最 も安 い 自 宅 公 立 コ ー ス の713万 円 の2倍 以 上 と な っ て い る。129-130頁)。 特 に 大 学 の場 合 、 最 も支 出 の 多 か っ た 私 立 コー ス下 宿 の ケ ー ス で は、 大 学1年 の1年 間 で は 、初 年 度 納 付 金 を含 め て 、 約259万 円 必 要 に な る と い う。 こ れ は親 の 年 間 実 収 入725 万 円(平 成3年 家 計 調 査 、 全 国 勤 労者 世 帯 の 世 帯 主年 齢45歳 ∼54歳 の 平 均 年 間 実収 入)の 34.4%に 当 た る とい う驚 くべ き数 字 も紹 介 さ れ て い る(130頁)。 大 学 の サ ー ビス を提 供 す る側 に身 を置 く もの と して は気 持 ち は複 雑 だ が 、 高等 教 育 に要 す る教 育 費 が 「限界 」 に近 い もの とな って い る こ とは事 実 と して 認 め ざ る を得 な い 。 しか し、 教 育 へ の投 資 額 の多 寡 が 、 受 験 戦 争 で の勝 者 を決 め る要 因 に な る よ うな 現 在 の 受 験 シ ス テ ム が あ るが ぎ り、 この事 態 を根 本 的 に変 え る こ とは で き な いだ ろ う。 高 給 消 費財 と して の 子供 子 供 を め ぐる流 行 語 が 、1990年 代 前 後 に あ い つ い で 登 場 した。 「一 児 豪 華 主 義 」 「エ ン ジ ェル 係 数 」 「シ ッ クス ポ ケ ッ ト族 」 「キ ッ ズ ・ ビジ ネ ス 」 な どが そ れ で あ る。 面 白 い こ とに これ らは 、 いず れ も 「金 のか か る存 在 と して の子 供 」 に言 及 す る とい う点 で共 通 して い る。 白 書 で は、 これ らの 問 題 を 「第II部 第2 章 子供 を取 り巻 く消 費 の動 向」 で 詳 し く検 討 して い る。 そ して 、 これ らが単 な る 「流 行 語 」 で はな く、 事 実 の 裏 づ け が あ って 出 て き た言 葉 で あ る こ と を具 体 的 な数 字 で検 証 して い る 。 まず 「一 児 豪 華 主 義 」 とい うの は 、 「一 点 豪 華 主 義 」 を も じ った もの で、 一 人 の 子 供 に 多額 の お 金 を つ ぎ込 ん でぜ い た くを させ る と い っ た 意 味 の言 葉 で あ る。 単 純 に考 え れ ば、 子 供 人 口 の減 少 は、 子 供 関連 マ ー ケ ッ トの 規 模 を縮 小 させ る。 しか し、 子供 一 人 当 た りの 消 費 が高 額 化 す れ ば、 そ の マ イ ナ ス は十 分 に埋 め る こ とが で き、 全 体 と して み れ ば産 業 規 模 は拡 大 す る こ と も可 能 に な って くる。 白書 の結 論 は 、 子供 関 連 の マ ー ケ ッ トの 実 情 は業 種 等 に よ りさ ま ざ まで あ り、 一21一
一 概 に断 定 で き な い が、 「… … 総 じ て 子 供 数 が 急 激 に 減 少 して い る 中 に あ って 比 較 的 堅 調 に推 移 して い る とい え よ う」(276頁)と な っ て い る。 そ う した 中 で 、 子 供 に タ ー ゲ ッ トを絞 った 新 しい子 供 ビジ ネ ス(キ ッズ ビ ジ ネ ス)も 登 場 し、 隆 盛 を見 せ て い る もの も少 な くな い 。 東 京 原 宿 ・渋 谷 地 区 に は子 供 服 専 門店 や 子 供 洋 品店 が 数 多 く集 ま り、 全 館 子 供 専 門 の デパ ー トも現 れ た。 子 供 を対 象 と した 美 容 院 や フ ィ ッ トネ ス ク ラ ブ、 メ ガ ネ 売 り場 や 宝 石 売 り 場 まで あ る とい う(276頁)。 玩 具 の レベ ル を は るか に越 え た 子 供 用 の 家 電 製 品 の 存 在 も良 く知 られ て い る。 こ う し た事 態 を、 も うひ とつ別 の 観 点 か ら 見 た の が 「エ ン ジ ェル 係 数 」 で あ る。 これ は 全 消 費 支 出 に 占 め る養 育 費(学 費 、 食 費 、 衣 料 費 等 子 供 に か か る全 費 用)の 割 合 を指 した 言 葉 で、 「エ ン ゲ ル 係 数 」 を ひ ね った もの で あ る こ とは 言 う まで も な い。 白書 が 「平 成4年 度 国 民 生 活 選 好 度 調 査 」 の 結 果 か ら割 り出 した と こ ろ に よ る と、 「エ ン ジ ェル 係 数 」 は 、 大 ま か な 平均 で 子 供1人 世 帯 で16∼17%程 度 、 子 供2人 世 帯 で24∼27 %程 度 に な って い る とい う(279頁)。 決 して 小 さ くな い 数 字 で あ る。 「エ ン ジ ェ ル 係 数 」 の場 合 も、 単 な るム ー ドで は な く、 そ の 言 葉 に見 合 っ た 現 実 が 存 在 す る こ とが 確 認 さ れ て い る。 そ こ で 、 白 書 と し て は珍 し い 過 激 な (!?)表 現 の 次 の よ う な 結 論 が 導 か れ る。 「… … 子 供 の 存 在 が 昔 の よ う に労 働 力 と して と らえ られ る の で は な く、 その 成 長 や 愛 す る こ と自体 が 楽 しみ で あ り喜 び で もあ る とい う 意 味 で 、 いわ ば 生 産 財 か ら高 給 消 費 財 に変 わ って き て い る と い う 面 も あ る も の と思 わ れ る」(280頁)。 さ ら に 悪 い 言 葉 を 使 う な ら、 今 や子 供 はす っか り 「金 食 い虫 」 的 な 存 在 に な って し ま った とい うわ けで あ る 。 対応策 そ れ で は ど う す れ ば い い の か 。 「少 子 化 」 の 原 因 は、 今 まで 見 て き た よ う に非 常 に は っ き りして い る。 した が っ て 、 そ の 対 応 策 も理 屈 の 上 で 、 そ の 方 策 を述 べ る こ とは容 易 で あ る。 白書 が そ の 「む す び」 の タ イ トル と して 使 って い る言 葉 一 「安 心 して 子 供 を産 み 育 て る こ とが で き る豊 か な 社 会 の 確 立 」、 こ れ に つ き る の で あ る。"子 供 を安 心 して 生 み 育 て る こ との で き る社 会 環 境 の 整 備"と い う こ と で あ る。 抽 象 的 な一 般 論 と して は ま さ に この とお り な の だ が 、 さす が これ で は答 と して は納 得 が 得 られ な い だ ろ う。 白 書 は具 体 的 に次 の3点 を対 応 策 と して あ げ て い る。 (1)出 産 ・育 児 に 関 す る支 援 体 制 の 一 層 の整 備 。 (2)住 宅 や都 市 公 園 な ど親 や 子 供 が ゆ っ た り と安 心 して 過 ごせ る空 間 の充 実 。 (3)一 人 一 人 の子 供 の 個 性 が重 視 され た教 育 の充 実 と教 育 費 負 担 の軽 減 。 さ ら に これ らに 加 え て 、"社 会 の 変 化 に対 応 して家 族 とそ の構 成 員 の 役 割 も見 直 さ れ る必 要 が あ る"と の補 足 が あ る(308-309頁)。 こ こで 上 げ られ て い る論 点 は、 す で に 個 々 の議 論 の 中 で ふ れ て き た こ とで あ る。(2>につ い て は本 稿 で は 敢 えて 取 り上 げ な か っ た が 、 そ れ は あ ま りに も 自明 な こ とだ か らで あ る。 生 活 の 器 と して の 住 居 に 、 十 分 な ス ペ ー スが 備 わ って い な い と ころ で 子 育 て が で きな い の は当 然 過 ぎ る こ とだ か らで あ る。 劣 悪 な住 環 境 が 「晩 産 化 」 の 原 因 と な る こ と(高 年 齢 初 産 を強 い る こ と)は 、 早 川(1979)な どで つ と に 指 摘 さ れ て い る。 し た が っ て、 劣 悪 な (特 に都 会 の)住 環 境 の 現 状 が 改 め ら れ な い 限 り 「少 子 化 」 の根 本 的 解 決 は あ り得 な い と 思 う。 それ に対 し、(3)は実 現 が 一 番 難 し い こ とで あ るか も しれ な い。 す で に先 に 述 べ た よ う に、 こ の た め に は教 育 へ の 投 資 額 の 多 寡 が 、 受 験
戦 争 で の 勝 者 を決 め る よ うな 受 験 シ ス テ ム を 改 善 しな けれ ば な らな いか らだ 。 受 験 戦 争 を 終 結 しな けれ ば な らな い わ け だ が 、 そ の 弊 害 は繰 り返 し指 摘 され続 け て い る もの の 、 一 向 に改 善 され る気 配 も な い。 仮 に、 受 験 シ ス テ ム が 改 善 され て も、 問 題 の根 本 的 解 決 に な ら な い こ とは誰 で も良 くわ か って い る。 その 背 後 にr学 歴 社 会 」 とい う動 か しが た い 難 物 が 横 た わ っ て い るか らだ 。 そ して 、 実 は も っ と難 物 な の が 白書 が 付 け 足 した 部 分 で あ る。 これ は 言 い換 え る と家 族 の構 成 員 の意 識 の 問 題 に な って く る。 伝 統 的 な 役 割 意 識 と りわ け性 別 役 割 意 識 の 改 変 が 要 求 され て い るの で あ る 。 多 くの論 者 が 指 摘 す る よ うに 、特 に男 の意 識 改 革 が 求 め ら れ て い る2)。そ して そ れ は、 最 近 よ うや く議 論 が 盛 り上 が りつ つ あ る会 社 本 位 主 義 ・企 業 中心 主 義 か らの脱 却 とい う問題 と も深 くか か わ って い る3)。 と こ ろが 、 制 度 を 変 え る こ と よ り も 意 識 を変 え る こ との 方 が ず っ と困 難 な の で あ る。 お わ り に そ れ で は今 後 厂少 子 化 」 は どの よ うな 展 開 を 示 す だ ろ うか 。 平 成4年 版 『国 民 生 活 白 書 』 へ の 感 想 と し て 、(も ち ろ ん ア イ ロ ニ カ ル に だ が)"こ うな った ら あ とは 、 貴 花 田 ・宮 沢 りえの カ ップ ル 効 果 で 「少 子 化 」 を 食 い止 め て も ら う しか な い"と コ メ ン トした 人 が い た が4)、そ れ もだ め に な っ た 今 とな っ て は、 「小 和 田 雅 子 さ ん 効 果 」 に で も期 待 す る し か な い とい う こ とに な るか も し れ な い 。 キ ャ リ ア ウ ー マ ン の 「駆 け 込 み 結 婚 」 「駆 け 込 み 出 産 」 に期 待 す る とい うわ け だ。 小 和 田 さん の 結 婚 を そ の 本 質 を誤 解 して 「や っ ぱ り女 性 は 結 婚 だ!」 と受 け取 る人 もい る ら し い の で 、 ま ん ざ ら効 果 な し と も言 え な い か も しれ な い。 は た ま た、 バ ブ ル 崩 壊 に よ る女 性 の就 職 難 が 、 女性 を結 婚 に向 か わせ る とい う珍 説 も あ る。 「永 久 就 職 と して の 結 婚 」 の 再 評 価 と い うわ けで あ る。 こ こ まで珍 説 が 出 た ら、 こん な説 も可能 だ 。 「非 摘 出 子 の 差 別 の 廃 止 」 で あ る。 これ に よ って 未 婚 の母 も安 心 して子 供 が 産 め る!? 「結 婚 は した くな い が 子 供 は欲 し い 」 とい う 女 性 は少 な くな いか ら、 案 外 これ は有 効 か も しれ な い。 いず れ に して も、 これ か ら 「親 」 とな っ て 実 際 に子 育 て をす る の は 、例 の 「新 人 類 」 及 び そ れ 以 降 の 世 代 で あ る。 新 し い タ イ プ の 「親 」 た ち が 登 場 して く るわ け で あ る。 彼 ら を動 か す た め に は、 今 まで に は な い新 し い仕 掛 け とそ れ な りの戦 略 が 必 要 とさ れ るだ ろ う。 そ して何 よ り も重 要 な の は、 個 々 の 「産 む か 産 まな い か 」 の選 択 につ き ま と う切 実 な悩 み に ど う答 え られ る か とい う こ とで あ る。 注 1)1992(平 成4)年4月1日 よ り 「育 児 休 業 法 」 が施 行 され 、 男 女 を 問 わ ず 子 供 が 1歳 に達 す る まで の 間 、 育 児 休 業 を取 る こ とが 可 能 とな った 。 児 童 手 当 制 度 は 、 平 成3年 に 支 給 対 象 を第1子 か ら に拡 大 す る と と も に支 給 額 を2倍 に増 額 し、 第 1子 及 び 第2子 につ い て は5千 円、 第3 子 以 降1人 につ き1万 円 とす る こ と、 支 給 期 間 を段 階 的 に3歳 未 満 に重 点 化 す る こ とを 内 容 とす る改 正 が 行 わ れ 、 平 成4 年1月 か ら実 施 され た 。 2)佐 藤 綾 子 「男 性 の意 識 改 革 必 要 」(平 成 4年 版 『国 民 生 活 白 書 』 へ の コ メ ン ト) 『読 売 新 聞 』1992 .11.13 3)奥 村(1992)、 内 橋 ほ か(1992)、 市 川 (1992)参 照 。 4)西 川 り ゅ う じん 「私 の 感 想 一 み ん な 未 熟 で 計 算 高 い 」(平 成4年 版 『国 民 生 活 白 書 』 へ の コ メ ン ト)『朝 日 新 聞 』1992. 11.13 一23一
資 料1一合 計 特殊 出生 率 の推 移 (備考)i厚 生省 「人 口統計 資料集 」りより作成 。 『平 成4年 版 国 民 生 活 白 書 』P .5 資 料2一 諸 外 国 との 出生 率 の 比 較 (人) 2.5 2.4 2.3 2.2 2.1 2.0 1.9 1.8 L7 i.s 1.5 1.4 1.3 1.2 1965'70'75'80'85'86・'87'88'89'90(年) (備 考)1.各 々 以 下 に よ り 作 成 。 (1)アメリカに つ いて は 商 務 省"StatisticalAbstractoftheUnitedStates,1991"、1965に つ い て は60 ∼64年 の 平 均 で あ る 。 (2)旧西 ドイ ツ 、フ ラ ン ス 、ス ウ ェ ー デ ン 、イ タ リア お よ び イ ギ リ ス に つ い て は 、欧 州 評 議 会"Re-centDemographicDevelopmentinEurope,1990" (3)日本 に つ い て は厚 生 省 資 料 。 『平 成4年 版 国 民 生 活 白 書 』P .7
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