◇研 究よもや ま話
状 況 に よ る パ ー ソ ナ ル
・コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ・
メ デ ィ ア の 選 択
情報学部
松
田
美
佐
は じ め に 近 年 、携 帯 電 話 や電 子 メ ー ル な どの パ ー ソ ナ ル な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ・メ デ ィア の 普 及 が 著 し い 。 社 団法 人 電 子 通 信 事 業 者協 会 の 発 表 に よれ ば 、2000年11月 末 段 階 で の携 帯 電 話(含 む、PHS) の 加 入 台 数 は6288.2万 台 、二 人 に一 人 が 所 有 して い る計 算 と な る 。 そ の う ち 、2396万 台 以 上 が イ ン タ ー ネ ッ ト接 続 可 能 な 端 末 で あ り、 イ ン タ ー ネ ッ ト経 由 の 電 子 メ ー ル交 換 を お こな い う る 環 境 にあ る とい う。 一 方 、 イ ン ター ネ ッ ト利 用 者 は 、1999年 末 の段 階 で2706万 人(う ち 、 携 帯 電 話 に よ る イ ンタ ー ネ ッ ト ・ユ ー ザ ー の571万 人 。 『平 成12年 度 版 通 信 白書 』 よ り)と な っ て い る 。 これ ら 「新 た な」 コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン ・メ デ ィ ア が 私 た ち の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン様 式 や 人 間 関 係 に さ ま ざ ま な 影 響 を与 え る で あ ろ う こ とは 想 像 に 難 くな い 。 筆 者 は こ れ まで 主 に携 帯 電 話 を 中 心 と した移 動 体 メ デ ィ ア が 実 際 に利 用 され て い る状 況 と そ れ が 日常 的 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンや 人 間 関 係 に与 え る 影 響 につ い て さ ま ざ ま な形 で 調 査 し、報 告 して きた(松 田:1996,2000a,2000b, 印刷 中 、 松 田 ほ か:1998、 岡 田 ほか:2000)。 な か で も興 味 深 い の は 、 同 じ携 帯 電 話 で あ って も、 年 齢 や性 別 、 ラ イ フ ス テ ー ジ な ど に よ っ て 利 用 法 が 異 な って お り、 ゆ え に一 口 に 「携 帯 電 話 の影 響 」 と言 っ て も さ ま ざ まで あ る こ と だ 。 た とえ ば 、 携 帯 電 話 で 連 絡 を 取 る相 手 に 限 っ て も、 中高 年 の方 が 若 年 層 と比 べ る と携 帯 電 話 を利 用 して 連 絡 を取 り合 う相 手 が 少 な く、既 婚 男 性 と既 婚 女 性 で は後 者 の 方 が 携 帯 電 話 で 連 絡 を取 る 相 手 が 少 ない(松 田:印 刷 中)。 若 年 層 ほ ど他 人 との コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン手 段 を 携 帯 電 話 一 つ に 集 中 させ る傾 向 が あ るの に対 して 、 中 高 年 層 は家 庭 の 電 話 や 職 場 の電 話 、 フ ァ ックス な ど他 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン手 段 と使 い分 け る 傾 向 が あ る 。 そ こで 、 以 下 で は 、東 京30キ ロ圏 に住 む満20歳 か ら59歳 ま で の 、 何 らか の賃 金 労 働 に 従 事 す る (以 下 、有 職 者 とす る)男 女400人 を対 象 に 、2000年1月 下 旬 に 自記 式 質 問紙 留 置 式 で お こ な っ た 調 査 の なか で尋 ね た 「メ デ ィア の 使 い 分 け状 況 」 に つ い て紹 介 し よ う と思 う(こ の調 査 につ い て の 詳 細 は、 ワ イヤ レス生 活研 究 チ ー ム,2000)。 な お 、 紹 介 す る デ ー タ は携 帯 電 話 利 用 者260人 の み を 分析 の 対 象 と して い る 。メデ ィアの使い分 け状況の性差
ま ず は 、 い くつ か 先 行 研 究 を紹 介 して お こ う 。 岡 田 ら(2000)に よれ ば 、大 学 生 の場 合 、 男 性 よ り女 性 の 方 が 状 況 や 目的 に応 じて 複 数 の 手 段 を 使 い 分 け て い こ う とす る傾 向 が 見 られ た とい う。 つ ま り、 「緊 急 の 連 絡 を と る と き」 「深 夜 に連 絡 を とる と き」 「緊 急 で は な い が 用 事 が あ る と き」 「用 事 は な い が 、 時 間が 空 い た の で 誰 か と連 絡 を 取 りた い と き」 「あ ま り頻 繁 に連 絡 を取 っ て い なか った 友 達 に連 絡 を取 りた い と き」 「待 ち 合 わ せ の予 定 変 更 を伝 え る と き」 「悩 み 事 を相 談 す る と き」 「遊 び の 誘 い をす る と き」 の そ れ ぞ れ の状 況 に お い て 、 「相 手 の 自宅 に電 話 を か け る」、 「相 手 の携 帯 電 話 ・PHSに 電 話 をか け る」 「携 帯 電 話 ・ PHSで 文 字 メ ッセ ー ジ を送 る 」 「電 子 メ ー ル を送 る」 「Faxを 送 る 」 厂手 紙 を書 く」 「直 接 会 う」 と い う7つ の 手 段 の どれ を利 用 す る か ひ とつ ず つ 選 ん で も ら う と い う質 問 を お こ な っ た と こ ろ 、 「悩 み事 を相 談 す る と き」 を の ぞ い た ほ とん ど の ケ ース で 「相 手 の 携 帯 電 話 ・PHSに 電 話 を か け る 」 が 第 一 に 選 ば れ る傾 向 に あ る が 、 「相 手 の 携 帯 電 話 ・PHSに 電 話 をか け る 」 へ の 集 中 度 は 男 性 に高 か っ た とい う 。 あ る い は 、橋 元 ら(2000)が15歳 か ら49歳 を対 象 にお こ な っ た調 査 で は 、男 女 で 有 意 さ が 見 ら れ た の は 、 「世 話 に な っ た 人 」 か ら の 「プ レゼ ン トの お礼 」 につ い て女 性 が 「手 紙 」 を選 択 す る ケ ー ス が 多 い こ とや 「友 人 に対 す る プ レゼ ン トの お礼 」 「目上 の 人 や 友 人 に対 す る悩 み 事 の 相 談 」 で 男 性 が 「直接 対 面 」 を、 女 性 が 「電 話 」 を選 択 す る傾 向 が 高 い こ と な ど で あ る 。 つ ま り、 あ る特 定 の状 況 にお い て 「ふ さわ しい」 と感 じ られ るメ デ ィアが 、男女 に よ って異 な っ て い る の で あ る。 さて 、 こ こで 報 告 す る調 査 で は 、 「相 談 事 が あ る 時 」 「ご機 嫌 伺 い や 世 間 話 な ど の 時 」 「記 録 に 残 して お きた い 時 」 「通 常 の 連 絡 や 定期 連 絡 の 時 」 「急 な連 絡 の 時 」 「メ ー カ ーや 販 売 店 へ の 苦 情 」 「知 人 ・友 人 へ の 文 句 や 苦 情 」 「先 輩 や 目上 の人 へ の 謝 罪 」 「知 人 ・友 人 へ の謝 罪」 「先 輩 や 目上 の 人 へ の お礼 」 「知 人 ・友 人 へ の お礼 」 と い っ た 状 況 を挙 げ 、 そ れ ぞ れ の ケ ー ス で 最 適 だ と 思 わ れ る メ デ ィ ア を 「電 話 ・公 衆 電 話 」 「携 帯 電 話 ・PHS」 「モ バ イ ル メ ー ル 」 「電 子 メー ル」 「手 紙 ・ はが き」 「フ ァ ッ ク ス 」 「直 接 会 って 」 「そ の 他 」 か ら選 んで も ら った 。 図1と 図2は 男 女 別 に 集 計 した もの で あ る(凡 例 は い ず れ も図2横)。 一 般 的 に 、 女 性 よ り男 性 の 方 が 「携 帯 電 話 ・PHS」 を選 ぶ 人 が 多 い 傾 向 が 見 ら れ る が 、 「電 話 ・公 衆 電 話 」 と 「携 帯 電 話 ・PHS」 を合 わせ る と男 女 差 が 少 な くな る項 目 も多 い(た とえ ば 、「相 談 事 が あ る時 」 「通 常 の 連 絡 や 定 期 連 絡 の 時」 「急 な 連 絡 の 時 」 「知 人 ・友 人 へ の文 句 や 苦 情 」 厂知 人 ・友 人 へ の お礼 」 な ど)。 男 性 は 「電 話 利 用 」 を 携 帯 電 話 に一 本 化 させ る傾 向 が あ る の に対 して 、 女 性 は状 況 に 応 じて(固 定)電 話 や 公 衆 電 話 と携 帯 電 話 を 使 い 分 け る の で あ ろ う。 一 方 、 「ご 機 嫌 伺 い や 世 間 話 な どの 時 」 「先 輩 や 目上 の 人 へ の 謝 罪 」 「知 人 ・友 人 へ の 謝 罪」 な どの項 目で は 、男 性 は 「直接 会 っ て 」 を 女 性 は 「電 話 ・公 衆 電 話 」 を選 択 す る傾 向 が 高 い 。 や は り、 あ る特 定 の 状 況 に お い て 「ふ さ わ しい 」 と感 じ られ る メデ ィア は、 男 女 に よ っ て 異 な っ て い るの で あ る 。図1状 況 別 ・最 適 な連 絡 手 段(男 女)
メ デ ィ ア 使 い 分 け 状 況 の 年 齢 差
同様 に 、 メ デ ィ ア使 い 分 け 状 況 の 年 齢 差 を あ らわ した の が 図3と 図4で あ る 。(煩 雑 と な る た め 、 差 の大 きい20代 と50代 の み を グ ラ フ化 した)
図3状 況 別 ・最 適 な 連 絡 手 段(20代 と50代)
一 般 的 に 「携 帯 電 話 ・PHS」 は50代 よ り20代 に 選 ば れ る傾 向 が 高 い が 、 こ こで も 「通 常 の 連 絡 や 定 期 連 絡 の 時J厂 急 な連 絡 の 時 」 「メ ー カ ー や販 売 店 へ の 苦 情 」 「先 輩 や 目上 の 人 へ の 謝 罪 」 「先 輩 や 目上 の 人 へ の お 礼 」 「知 人 ・友 人 へ の お礼 」 な ど の項 目で は 、 「電 話 ・公 衆 電 話 」 と 「携 帯 電 話 ・PHS」 を合 わ せ る と差 が 小 さ くな る 。音 声 に よる 同 期 的 な コ ミ ュニ ケ ー シ ョ ン(い わ ゆ る 、 「電 話 的 コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン」)を 選 択 す る場 合 、 若 い ほ ど携 帯 電 話 の み を用 い る 傾 向 が 高 く、 同 じ よ う に携 帯 電 話 を所 有 して い て も年 齢 が 上 が る ほ ど状 況 に応 じて 「電 話 ・公 衆 電 話 」 と 「携 帯 電 話 ・PHS」 を使 い 分 け る よ う だ 。 興 味 深 い の はr相 談事 が あ る時 」 「先 輩 や 目上 の 人 へ の 謝 罪 」 厂知 人 ・友 人 へ の 謝 罪 」 「先 輩 や 目上 の 人 へ の お 礼 」 な どの項 目で は50代 よ り20代 の ほ うが 「直 接 会 っ て 」 を選 択 す る 人 が 多 い 一 方 、 「ご機 嫌 伺 い や 世 間 話 な どの 時」 につ い て は50代 の方 が20代 よ り 「直 接 会 っ て 」 が 多 い 傾 向 に あ る こ とだ 。 顔 を合 わせ る だ けの 時 間 的 余 裕 が あ る か とい っ た 物 理 的 要 因 や 、20代 と50代 で は 「先 輩 や 目上 の人 」 「知 人 ・友 人 」 の 意 味合 い が 異 な る な ど さ ま ざ ま な要 因 は 考 え られ る が 、 少 な く と も、 一 概 に 若 い ほ ど(あ る い は 、逆 に 年 を と る ほ ど)あ る コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン手 段 を常 に選 択 す る傾 向 が 見 られ る の で は な く、 年 齢 に応 じて あ る 特 定 の状 況 に お い て 「ふ さ わ しい」 と感 じ られ る メ デ ィア が 異 ・な っ て い る こ と は興 味深 い 。 お わ り に 本 稿 で は 、性 別 や 年 齢 に よっ て 、 あ る特 定 の 状 況 に お い て 「ふ さ わ しい」 と感 じら れ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ・メ デ ィ アが 異 な っ て い る こ と を調 査 デ ー タか ら紹 介 して きた 。同 じよ うに複 数の コ ミュ ニ ケ ー シ ョン ・メ デ ィ ア が利 用 可 能 な 状 態 に あ っ て も、あ る特定 の状 況 におい て実 際 に利 用 す る メ デ ィ ア は 性 別 や 年 齢 に よっ て 異 な る 傾 向 が あ る の だ 。 しば しば 社 会 に 新 た に登 場 し、 普 及 した メ デ ィ ア は そ の 技 術 的 特 性 か ら社 会 に 与 え る影 響 が 考 慮 さ れ 、 議 論 され る。 しか し、 メ デ ィ ア に対 す る 社 会 構 成 主 義 的 な ア プ ロ ー チ が 明 らか に し て き た よ うに(Fischer,1992=2000)、 メ デ ィ アが 持 っ て い る の は 我 々 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 変 化 させ 、 ひ い て は社 会 の あ り方 を変 容 させ る 「可 能 性 」 に す ぎ な い 。 現 実 の変 化 を考 え る場 合 に は 新 しい メ デ ィ ァ を利 用 者 側 が い か に使 う のか との 観 点 か らの 検 討 が 必 要 不 可 欠 な の で あ る 。 〈引 用 文 献> Fischer,Claude.AmericaCalling:ASocia!HistoryoftheTelephoneto1940.University ofCaliforniaPress,1992=2000吉 見 俊 哉 ・松 田 美 佐 ・片 岡 み い 子 訳 『電 話 す る ア メ リ カj NTT出 版 橋 元 良 明 ・石 井 健 一 ・中 村 功 ・是 永 論 ・辻 大 介 ・森 康 俊2000「 携 帯 電 話 を 中 心 と す る 通 信 メ デ ィ ア 利 用 に 関 す る 調 査 研 究 」 『東 京 大 学 社 会 情 報 研 究 所 調 査 研 究 紀 要 』 第14号 松 田 美 佐1996「 移 動 電 話 利 用 の ケ ー ス ・ス タ デ ィ 」 『東 京 大 学 社 会 情 報 研 究 所 調 査 研 究 紀 要 』 第7号
松 田 美 佐 印 刷 中 「パ ー ソ ナ ル フ ォ ン ・モ バ イ ル フ ォ ン ・プ ラ イベ ー トフ ォ ン ー ラ イ フ ス テ ー ジ に よ る携 帯 電 話 利 用 の 差 異 の 検 討 か ら」 『現 代 の エ ス プ リ』 特 集 「携 帯 電 話 と社 会 生 活 」 松 田美 佐 、 富 田英 典 、藤 本 憲 一 、羽 渕 一 代 、 岡 田 朋 之1998「 移 動 体 メ デ ィ ア の 普 及 と変 容 」 『東 京 大 学 社 会 情 報 研 究 所 紀 要 』 第56号 岡 田朋 之 ・松 田美 佐 ・羽 渕 一 代2000「 移 動 電 話 利 用 に お け る メ デ ィ ア特 性 と対 人 関 係 一大 学 生 を対 象 と した 調 査 事 例 よ り一」 『平 成11年 度 情 報 通 信 学 会 年 報 』 社 団 法 人 電 子 通 信 事 業 者 協 会 のHPhttp://www.tca.or.jp/index.html ワ イヤ レス 生 活 研 究 チ ー ム2000『WirelessWave∼ ワ イ ヤ レス 生 活 者 調 査 報 告 書 』NTTア ド 郵 政 省 『平 成12年 度 版 通 信 白書 』