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第2章 必修教科等の研究 8 技術・家庭科 技術リテラシーの獲得を目指した技術教育カリキュラムの開発V : 技術史の視点から技術と社会を見つめる学習題材の開発と実践 

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Academic year: 2021

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技術・家庭科(技術分野)

技術リテラシーの獲得を目指した技術教育カリキュラムの開発Ⅴ

技術史の視点から技術と社会を見つめる学習題材の開発と実践

Curriculum development for knowledge oriented technology education

河野 卓也 1. 主題によせて 現代社会での我々の豊かな生活は多くの科学技術によ って支えられている。日常の生活で触れる多くの科学技術 について,それらの仕組みや製法を知らなくとも,それら の装置を使って便利な生活を営むことができる。 生徒は,大人に比べ最新の科学技術に触れる機会が多く, 実際にそれらの使い方を大人より早くマスターし,自分た ちの生活に取り入れようとする。それらの機器の使い方や 有効な利用法,興味を引く機能について強い興味を持つ生 徒は多く,日常の話題にもそれらの機器についての内容が 多く聞かれる。しかし,それらの機器の基本的な仕組みや 動作の原理について興味をもつ生徒は少数であり,多くの 生徒は技術的な興味を持っていない。 最新の科学技術は大変に高度であり,生徒が理解できる ものではない。しかし,科学技術を駆使した多くの機器が ブラックボックスとして扱われることによって,それらの 科学技術の普遍的な基礎知識や,科学技術が社会に与える 影響などまで覆い隠してしまっているように感じること が多い。これからの科学技術社会を支える存在として,科 学技術の基礎を知り,社会の中でそれらを正しく評価する 能力が,科学技術に対する興味の有無にかかわらず,全て の生徒に等しく求められている。このような技術的なリテ ラシーを育成することが技術教育の本質的な目標である と考える。 現代社会で使われる高度な科学技術を駆使した工業生 産品を中学生が手づくりでつくることは不可能である。そ れらの製品の一部であっても,授業の中で製作することは 難しく,また意味を持たない。しかし,それらの機器の動 作を知り,自分たちの生活との関わりを知ることは技術的 なリテラシーを高めるために重要である。 本論の趣旨 本研究は,現代社会で生活する全ての人が身につけるべき技術リテラシーを義務教育段階の全ての生徒 に獲得させることを目指し,指導すべき内容を中心に組み立てた”Knowledge Oriented Curriculum”の開 発と実践と通して,新しい技術教育カリキュラムを確立することを目的としている。 この目的の達成のため,2006 年度は,特にエネルギーと環境の問題を正しくとらえさせるための単元の 開発を重点的に行った。この年からエネルギー環境教育指定校となったことを契機とし,理科とのティー ムティーチングによる科学技術教育に取り組んだ。2007 年度はさらに,素材と環境の問題を正しくとら えさせるための単元開発を中心にカリキュラムの開発に取り組んだ。2008 年度は,新しい学習指導要領 の中で強調されている「技術を正しく評価する能力」の育成のための単元を開発し実践した。2009 年度 は技術分野全体を視野に置いた学習を構築するため,「技術史」に着目して題材開発を行った。本論では これらの実践事例を中心に,カリキュラム開発の概要について報告する。 キーワード Knowledge Oriented,技術リテラシー,技術の評価,技術史

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従来,技術分野のカリキュラムは,生徒の手作業による 物づくりを中心として考えられることが多かった。設計・ 製作・評価という物づくりの流れを追い,それぞれの行程 で必要となる時間を元にカリキュラムがつくられている ことがほとんどであった。これらの手法によってつくられ たカリキュラムでは,製作に必要となる技能を学ぶことは できても,現代科学技術の基礎を俯瞰的に学ぶことはでき ないであろう。 本年度に示された新しい学習指導要領では,全ての内容 が必修化されるとともに,「技術を正しく評する能力」の 育成が求められている。 自然環境保全の意識の高揚と共に,人工的なものは全て 環境を破壊するものであるという認識が生徒のみならず 大人の中にも強いように感じる。この認識は限られた資源 を人為的に乱用し,廃棄物を自然の許容する量を超えて排 出してきた反省から,強く感じるようになったものと考え る。昨今の化石燃料の利用による人為的な温室効果ガスの 排出によって,地球環境が激変するという認識も,推測で はなく事実として認識されている。 科学技術は,その発展の過程において,さまざまな問題 を引き起こしてきた。新たな技術をもって開発された兵器 は強い殺傷能力をもち,戦争被害を拡大している。現代の 情報技術の発展により,さまざまな問題が起こっているの も,科学技術の進展が引き起こしたものである。しかし, 科学技術は,人間の生活を豊かにすると共に,人間の能力 を拡大し,不可能であったことを可能にしてきた。また, 過酷な労働から解放することで,奴隷制度を破壊し安定し た社会制度をつくりあげることにも貢献した。 自然が最上であり,人工的なものは必ず問題を引き起こ すという認識は,現在・未来の科学技術によって支えられ た社会を構成することになる生徒たちにとって,正しいも のではないと考える。科学技術が引き起こした問題を解決 するためには,科学技術によらねばならないという根本的 な認識を深めさせることこそが,科学離れや技術離れを食 い止めるための重要な方策である。 技術分野での「技術」の認識は,必ずしも科学技術をさ すものではなく,技能をさすことも多い。しかし,現状で 評価し,生活に正しくいかす対象は,「技能」ではなく「科 学技術」であると考える。理科の新学習指導要領に「科学 技術と人間」の単元が加えられたが,科学技術は技術であ り科学ではない。技術分野独自の視点から科学技術を評価 することが必要であると考える。 本 年 度 は こ の 考 え を も と に , Knowledge Oriented Curriculum の中で,「技術を正しく評価する能力」を育成 するための単元開発に取り組んだ。

2. Knowledge Oriented Curriculum

現行の学習指導要領で,技術分野に割り当てられた授業 時間は激減した。特に三年生での授業時数は大変少なく, 二週間に一時間の学習時間が確保されるだけである。この ような学習時間の減少の中で,技術分野が本来担うべき責 任を果たすために,目的を明確にした効果的なカリキュラ ムの改善が必要である。 複雑な手工過程をともなう大きな作品をつくるために は多くの時間を必要とする。従来,技術分野で主流となっ ていたプロジェクトを基本とした学習では,製作を通して 製作に必要な技能を習得するだけでなく,材料に関する知 識や社会の中での技術の役割を指導することによって,科 学技術の基礎を指導してきた。科学技術が高度になったこ とと共に,大幅な授業時数の減少によって,本来「ものの つくりかたを学ぶ」ものを「ものをつくらせる」学習だけ にとどまらせていることが多いと感じている。「ものをつ くらせる」学習では,簡易的な製作キットを用い,画一的 な作品をつくらせるだけに終始する学習に教師側の抵抗 感がなくなっている傾向がある。 十分な時間を割いて作品製作に取り組むことができれ ば,本来の目的を達成することができるようなカリキュラ ムを組むことは不可能ではない。しかし,現在の技術分野 がおかれている状況からも,カリキュラムの根本となる考 え方の思い切った改変が必要であると考えている。 研究の視点として,カリキュラムを作品製作の工程を中 心とした(“Project Oriented”)計画から,指導すべき内 容を中心とした(“Knowledge Oriented”)計画へと再構築 していくことを考えた。半年に近い長い時間をかけての作 品製作ではなく,数時間単位のトピックを取り上げ,現代 技術について考える学習を中心にしていきたい。これらの 学習は単に講義形式をとるのではなく実験・実技を伴い, 作品製作やレポート製作,意見の発表などを盛り込み,現 代技術の基礎についての総合的な学習ができるようにカ リキュラムを構築したい。これらの変化は「実技教科」か ら「実技を伴う教科」への移行に取り組むことにもなる。 指導したい内容として,従来から指導してきた手工技能

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に加え,現代科学技術の基礎や密接な関係をもつ技術と自 然環境保全の問題などを大きく取り上げ,生徒が技術的な リテラシーを獲得することができるカリキュラムを目指 して開発に取り組んだ。 新しい学習指導要領では,技術分野に割り当てられた時 間数に変化はなかったものの,選択教科の実践が難しくな り,従来選択して扱う内容が必修とされたことによって, これまで以上に授業時間数の不足を心配する声が多い。割 り当てられた時間の中で,効果的なカリキュラムを構築す るためには,技術分野の目的を再確認するとともに,新し い学習指導要領の主旨を理解し,内容を絞り込む必要を強 く感じる。本研究は開始後,5 年目を迎えることとなるが, 学習指導要領の移行期間の中で,真価を発揮させることが できると考えている。 木 材 加 工 に か か わ る 学 習 内 容 を 例 と し て , 従 来 の “Project Oriented Curriculum”と開発した“Knowledge Oriented Curriculum”での,学習項目と学習内容との関 連の概念を図 1,図 2 に示す。

Project Oriented Curriculum

設計と製図 製作 評価 大きな製作物 設計方法 製図法 素材の特性 つくり方 工具の使い方 工具 作品の評価 素材を使う上での環境問題 木製本棚の つくり方 本棚の設計方法 使用する木材の特性 本棚のつくり方 のこぎり,やすり, げんのうの使い方 木材と環境の問題 木製本棚つくるための技能, 木製本棚をつくるための知識

図 1 Project Oriented Curriculum

図 2 Knowledge Oriented Curriculum

作品ではなく,内容に依存するカリキュラム作成のため に,技術分野で扱うべき科学技術に関する内容を整理する 必要がある。本年度は,昨年度に引き続き,現代の科学技 術社会を支える三大要素であると考えられる「物質・エネ 大きな製作物をつくる過程 か ら カ リ キ ュ ラ ム を 制 定 す る。製作するものに関する素 材や設計・工具・技能を指導 する。作品をつくる流れの中 で指導することが出来るが, 指導できる内容は作品に関連 した限定的なものになること が多い。 製作を伴う単元では,効率 的なグループワークで製作を 行い,短時間で製作の基本的 な行程を体験させる。他の単 元では,製作するものに関係 なく,技術的な知識の基礎を 体 験 的 に 体 系 づ け て 指 導 す る。指導する内容は網羅的な ものになる。

Knowledge Oriented Curriculum

基礎的な素材 2×4材を使った製作 工具の秘密 環境に 関する問題 素材の特性と性質 さまざまな素材の 特性比較 グループでの製作 電動工具を含めた 基礎的技能 行程の概観 工具の種類 工具の 使い方・選び方 工具と人間 素材と資源の関わり エネルギーと 素材、経済の関わり 技術的なリテラシー 現代技術の体系的・基礎的知識

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ルギー・情報」を具体的に取り上げ,それぞれの領域ごと に新しい単元の開発と実践を行った。 本稿では,本年度実践した単元・授業の中から,技術史 の視点から技術と社会を見つめる学習題材を取り上げ,紹 介する。 3. 技術史の視点から技術と社会を見つめる学習題材の 開発と実践 新しい学習指導要領では,技術・家庭科技術分野の目標 として,技術と社会・環境のかかわりについて理解させる こと,技術を正しく評価する力をもたせることが求められ ている。科学を社会の中でいかすためには技術というフィ ルターが必要であり,技術の歴史をたどることは社会の中 での人間と科学・環境のかかわりを見つめていくことに他 ならない。本研究では技術史の流れをテーマとした技術分 野のカリキュラムを作成し実践することで,手工技能の枠 にとらわれず科学技術について深く理解する学習を構築し たいと考えた。 これらの学習は新しい学習指導要領での技術分野のガイ ダンスにあたる内容としても十分機能すると考えている。 材料と加工に関する技術,エネルギー変換に関する技術, 生物育成に関する技術,情報に関する技術のいずれにおい ても,発展してきた歴史が存在し,人間の生活や社会の在 り方に密接に結びついている。技術史の観点からカリキュ ラムを考えることは技術分野の題材すべての見通す視点の 一つになりえると考える。 技術史を題材化するうえで,技術史について整理するこ とが必要であった。人間が火をつかうようになったことで 猿と決定的な違いを持つことになり,道具の利用によって 生活を充実させる術を身につけることになった。技術は人 間の進化にとって必要不可欠なものであったと考えること ができた。技術は狩猟から耕作へと移り変わる過程で重大 な役割を演じ,産業革命,情報通信手段の発展をへて,現 代の生活の根幹をなすものになっている。これらの技術史 を,現代の生活を振り返り,生徒自身に自分と技術のかか わりを見つめなおさせるための視点として提供することを 考えた。 本年度は,年度当初にモデルケースとして,技術史を扱 う単元を盛り込んだ年間計画を作成した。この単元には年 間五時間程度しか時間を割くことができないため,短時間 で実践可能な以下の題材の開発と実践を行った。 ・エネルギーに関する技術 「明かりの歴史と私たちの生活」 人類は誕生して以来,様々なエネルギーを利用しながら 生活をしてきた。常により便利で扱いやすく,大きな力を 得ることのできるエネルギーを模索し,エネルギーやその 利用技術の発展とともに生活を豊かにしてきた。この単元 では,理科などでのエネルギーに関する基礎的な理解を礎 とし,これまで人類が利用してきたエネルギーを概観させ るとともに,電気エネルギーが利用される以前から使われ ている植物由来のエネルギーが持つ特徴を確認させたうえ で,現実の社会ではこれらのエネルギーに頼り切ることは できないこと,あわせて,自分の生活において環境保全を 意識するために,地球規模や地域規模で考え判断する必要 があることを理解させたいと考えた。さらに,昨今の原油 価格の高騰に触れ,将来の資源状況を予想させるとともに, 生活に直結する問題であることに気付かせたい。 温暖化要因ガスの排出規制とともに資源枯渇を防ぐ観点 からも,化石燃料の多大な消費に関して多くの警鐘が鳴ら されている。新エネルギーへの移行や原子力の利用などの 方策はあるものの,特に石油によって支えられた生活から の移行は単純にできない状況にある。化石燃料を代替する エネルギー資源としてバイオエタノールをはじめとする生 物由来の燃料の開発が脚光を浴びるようになった。これら の生物由来の燃料は,化石燃料が主流となる以前に,日常 的に使われてきた。 日本で使われてきたエネルギーの歴史に目を向けると, 熱や明かりを取るために多くの生物由来のエネルギーが使 われてきた。松明,蝋燭,菜種油などが,多くの工夫のも と,生活を支えていた。現代の日本では,日常の明かりは 電気による照明であり,化石燃料や原子力・水力による電 力生産によって支えられている。再生可能な植物由来のエ ネルギーから,化石燃料などの大量消費によって資源の枯 渇が危惧される状況になってきた変化を元に,我々の生活 とエネルギーの関係を見つめなおさせたい。 この単元では,理科などで学習したエネルギーに関する 基礎的な理解を礎とし,植物由来のエネルギーが持つ特徴 を確認したうえで,現実の社会ではこれらのエネルギーに 頼り切ることはできないことを理解させたいと考えた。あ わせて,自分の生活において環境保全を意識するために,

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地球規模や地域規模で考え判断する必要があることに気付 かせたい。さらに,昨今の原油価格の高騰に触れ,将来の 資源状況を予想させるとともに,生活に直結する問題であ ることを理解させたい。 授業では,菜種油での明かりから,ガソリンランタン, 電気ランタンと明るさや扱いやすさを比較させた。菜種油 は昨夏の太陽のエネルギーであるが,ガソリンは何億年も の前の太陽エネルギーを,時間をかけて変成させたもので あり,それらの再利用性やエネルギー密度の違いを実感さ せるようにした。また,白熱灯から蛍光灯,LED と進化する 照明技術を取り上げ,技術の進歩によって環境への負荷を 下げる努力がされていることを確認させた。 生徒は菜種油による灯りの暗さと不便さを体験すること により,現代の生活が大変恵まれたものであることに気付 いた。しかし,照明が簡単に使えるようになったことが, 夜の時間の使い方を変え,受験戦争を激化させているので はないかという生徒の意見もあった。自分の生活を見つめ なおす新たな視点を得ることができた生徒が多く,題材設 定の目的に十分に到達できたと感じている。 これらの学習は,技術の進歩が環境を破壊するという短 絡的な思考を持つ大人が多い中で,技術の有用性と問題点 を正しく把握しようとする態度の育成につながるものであ ると考える。 ・生物育成に関する技術 「食と農の関係を考える」 新しい学習指導要領では,技術分野の学習内容として「生 物育成に関する技術」が取り上げられ,全生徒に履修させ ることになった。「エネルギー変換に関する技術」とともに, 必修となる領域が広くなったが,中学校 3 年間での授業時 数は従来と同じであり,カリキュラム編成や内容の検討に 新たな視点が必要になる。太古から繰り返されてきた「食」 に関する技術の開発は,この内容の学習として大変価値の あるものであると考え,「食と農」の問題を取り上げること にした。 飽食でありながら食糧自給率が 40%にしか満たない日本 にはさまざまな食と農に関する問題が山積している。技術 では世界的にトップクラスであり,実際にもっと大きな生 産能力を持っていることが明白な日本の農業が,その生産 能力を十分に発揮できず,輸入された食品が大勢を占める 現代の食糧事情について,技術的な観点から考えさせる授 業を仕組むことが大変に重要であると考えた。 世界に誇るべき日本の農業技術は,長い歴史をもち,各 地域の気候・風土にあわせて発展するとともに,農薬・肥 料,土壌の改良,潅水,品種改良など多岐にわたっており, 遺伝子組換えなどの最先端の技術も有している。 世界の人口が急激に増加し,安定的な価格であった小麦 などの穀物が高騰し始め,食糧の奪い合いが始まっている。 収量をあげ,安定的に生産をすることで,安く大量に安全 な食品を供給しるための技術が開発されているが,安全性 への不安から,それらの技術を用いた食品は敬遠される傾 向にある。特にそれらを敬遠するのは,輸入食品による飽 食になれた日本人である。その陰には,科学的な裏付けな しに恣意的に恐怖をあおるマスメディアの報道姿勢がある。 現代より食糧事情が厳しくなると考えられる将来の意思 決定者である生徒たちにとって,農業技術を通じて科学技 術についての正しい認識を深めるとともに,科学技術をた だしく評価し,生活の中に正しく取り入れていこうとする 態度の育成は非常に重要であると考える。これらのことを 総合的に考慮し,日本の栽培技術とその歴史を中心とした 題材を設定し実践した。 授業では,稲作に関する栽培技術の進歩を稲作が伝来し たと考えられる時点から,現代までの概観させることから 学習を始めた。生徒は,田植え機などの農業機械が開発さ れる以前から,知恵を絞って稲作がおこなわれていたこと に感嘆の声をあげた。単純に見える水田の断面構造などを 学習し,高度な農業技術によって耕作がおこなわれている ことを理解することができたようである。 さらに,人間にとって都合がよい作物を育てるための技 術として,品種改良を取り上げた。 「キヌヒカリ」と「コシヒカリ」を題材に,品種改良と それらの品種をつかった栽培の実際について考えさせた。 実際に高島市の農家からいただいた「キヌヒカリ」と「コ シヒカリ」の収穫直前の稲穂に触れさせ,実物から品種改 良の目的と,高島市でこれらの品種を選択する理由につい て考えさせた。 実際に栽培されている品種は,高島市の風土にあわせて 生育させやすい条件を持つものであることや,品種改良の 技術や遺伝子組み替えの技術が,収量を上げるとともに, 栽培しやすく品質の高いものの生産に寄与していることを 理解させることができた。

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これらの作物の実物は,容易に入手することができず, 授業を行う上で大きな問題となることが多い。地域の題材 をつかった学習を進めるために,実際の映像などをネット ワーク上でデータとして共有することなど,授業をやりや すくするためのコンテンツの整備についても努力していく 必要があることを強く感じた。 4.今後にむけて カリキュラム自体の考え方は十分に定着し,スムーズに 単元を実践することができるようになってきた。 これらの単元のデザインを通じて,「ものをつくること」 そのものではなく,「生活を支える技術」を学習のコアに 据えた授業を構築することができた。この考え方は,新し い学習指導要領の主旨の中で,十分に機能するものである と考えている。 技術分野全体のガイダンス的な内容や,技術と社会・環 境の関わりを考えさせる題材は,技術分野での言語活動の 充実とともに,新しい学習指導要領のもとでの授業実践の 大きな課題である。 本研究によって,これらの題材の具体例を開発すること ができたが,引き続き広い視野で題材を掘り起こし実践可 能な形に整える努力が必要である。これらの学習を充実さ せるためには,教材・教具の工夫とともに,ICT の活用や, 言語活動の充実が必要となるため,従来の加工を中心とし た学習とは違う観点で授業を構築することが必要となる と考えている。引き続き,広い視野での題材開発を継続し ていきたい。 参考文献

Takuya Kawano , Yasumasa Itakura , INDUSTRIAL ARTS EDUCATION FOCUSED ON RECENT TECHNOLOGICAL TOPICS: A CASE OF THE SECONDARY SCHOOL ATTACHED TO SHIGA UNIVERSITY,2006-1,International Conference of Technology Education,HONGKONG

図 1 Project Oriented Curriculum

参照

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