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英語科
実践的コミュニケーション能力の基礎を育てる英語教育の実践
English Classes for developing students' practical communication ability塩見 光二 本論の要旨 本研究は,実践的コミュニケーション能力の基礎を養う手だてについて,実際の授業の分析を 通して検証するものである。事例としては,実践的に英語を使っての国際交流会の事例と,スキ ットを活用して実践的にコミュニケーションをとる事例について言及する。 国際交流会では,これまで学習してきた英語を使って交流することで,英語を自然な状況で使 う機会をもうけた。スキットによる事例では,学習したスキットを活用し,意図的にスキットと は異なる発問を取り入れながら,実践的にコミュニケーション活動を仕組んだ。 キーワード 実践的コミュニケーション能力の基礎,場面設定 1.研究主題によせて (1)はじめに 国際化の時代と言われ,日本と世界との関わりが ますます大きくなってきている。国を越えて人と人 とがコミュニケーションを取り合える力が求められ ている 「英語が使える日本人」の育成のための行。 動計画が文部科学省から提案され,時代のニーズに 応えるべく動き始めている。英語の学習をはじめた 生徒たちは,特に英語を話すことへの興味や関心が 高く,コミュニケーションを取り合いたいという思 いをもっている。そこで英語でのスキットや,実際 に海外の方と英語で話す場面を仕組みながら英語の 力を伸ばしていける授業実践ができないかと考え た。 本研究は上記のような問題意識から実践的コミュ ニケーション能力の基礎を育てる英語教育の実践に ついて研究するものである。英語の学習を始めたば かりの中学生が,日本語と同じように自由に英語は 使いこなせないが,これまで学習した表現を運用し ながら自分の伝えたいことを幅広く英語で表現する ことは可能である。その積み重ねの中で生徒の学び を記録しながら,よりよい実践をさぐる研究にして いきたい。 (2)研究のねらい 学習指導要領では,外国語の目標として「外国語 を通じて,言語や文化に対する理解を深め,積極的 にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を 図り,聞くことや話すことなどの実践的コミュニケ ーション能力の基礎を養う 」と示されている。こ。 の目標は,3つの柱,すなわち 「①外国語を通じ, て,言語や文化に対する理解を深める。②外国語を 通じて積極的にコミュニケーションを図ろうとする 態度の育成を図る。③聞くことや話すことなどの実 践的コミュニケーション能力の基礎を養う 」から。 成り立っている。この学習指導要領のねらいは,外 国語(英語)を理解し,外国語(英語)で表現する 能力を養い,外国語(英語)で積極的にコミュニケ ーションを図ろうとする態度を育てるとともに,言 語や文化に対する関心を高め,国際理解を深めるこ とにある。 このねらいをよりよく達成するために,本校の学 習指導の目標をまとめると次のようになる。 ・基礎的・基本的な能力や技能を身につけ,それら を使って身近な事柄を表現できる力を養う。 ・学習を通して,日本文化や異文化を学び,言語や 文化に対する関心を深める。 ・コミュニケーション活動を積極的に行い,自ら英 語を使う態度を養う。 本稿では 「実践的コミュニケーション能力」に, 焦点をあてた実践について紹介する。 「実践的コミュニケーション能力」とは,実際に 英語でコミュニケーションをとることができる,自 分の伝えたいことが伝えることができることと考え ている。また,具体的な場面や状況を明確にしなが ら,それぞれの場合の典型的な英語表現を身につけ ていくことを「実践的コミュニケーション能力の基 礎」と考えている。 今回の事例「Let's Go To Korea! ~修学旅行で 役に立つスキットを作ろう!~」では,昨年度の研 80
-究紀要で述べた「スキット・プラクティス」の取り 組みを土台に,基礎から発展へとつなげたものにな っている。昨年の場合,基本スキットは「ジェニフ ァーの学校生活」から取り出したもの一つを題材に 学習を進めた。今年度は教科書の中で扱われている や県教育委員会が作成したスキット教材 Do it talk 「ジェニファーの学校生活 ,さらに英語Ⅱの教材」 などの既習のスキットの中から,生徒 PASSPORT 達が修学旅行で直面する場面や状況を想定して,土 台となる基本スキットを決める。それを修学旅行に 役立つスキットの作り変えていく取り組みなってい る。四人一組のグループ十班が,それぞれ異なるス キットを基本スキットにするために,基本表現もそ れぞれ異なることになり,全員でこれまで学習した ことをふり返りながら,基礎・基本の復習をし,ま た,具体的な修学旅行の場面や状況を想定したスキ ットを作成して,発表をするという,生徒の創造性 を生かした発展的な学習の機会を仕組んでいる。本 年度はそうした取り組みについて述べる。 (3)研究仮説 スキットを活用し,生徒が現在もてる力でスキッ トを作りかえたり,発表したりしていく機会を積み 重ねていけば,話すことを中心に,生徒の英語力は 向上していくであろう。また,そのようにして養っ た英語を試す体験的な機会を仕組むことで,英語学 習へのモチベーションが高まるであろう。 2.授業実践 「スキットを活用した実践」 (1)主題(単元,題材) Let's Go To Korea! ~修学旅行で役に立つスキットを作ろう!~ (2)主題によせて(単元設定の理由,題材観) 国際化の時代と言われ,世界の国々同士の関わり がますます大きくなってきている。テロ,戦争,鳥 インフルエンザなど世界中が大きな影響を受け,そ , , の発生国だけでなく 世界がお互いに話し合ったり 解決したりしていかなければならない状況にある。 また,個人のレベルでも、海外旅行を筆頭に様々な 形で国を超えて人々の行き来が日常のように行われ ているEメールをはじめ ITのレベルでは,コンピ ュータを通して世界の人々との情報のやりとりが瞬 時にして可能な時代となってきている。実際、国を 超えて人と人とがコミュニケーションを取り合える 力が求められている。 英語の学習を始めた生徒たちは,多くの場合,英 語が話せるようになりたいという願いをもってい 。 , る 英語が苦手であると感じている生徒の中でさえ 話せるようになりたいとか,会話は大切であるとか 考えてる生徒が多いのが実態である。本校は,毎年 7月には姉妹校韓国教員大学校附設美湖中学校から の訪問,12月には修学旅行での美湖中学校訪問と 英語を使う貴重な体験も約束されている。そこで, そうした体験をより生き生きとしたものにするため に,生徒達が体験する場面に焦点を当てて,英語の 力を伸ばしていける授業実践ができないかと考え た。 今回は,修学旅行で生徒達が体験する場面や状況 を想定して,その典型的な場面で役に立つ表現を復 習しながら,スキットを発表会という形で楽しく協 力しながら学ばせたいと考えている。 (3)学習目標 (1) スキットの学習に興味や関心をもって意欲的 に取り組むことができる。 【関心・意欲・態度】 (2) スキットを書いたり,暗唱して演じたりする ことができる。 【表現】 (3) スキットにを聞き取ったり,読んだりして理 解できる。 【理解】 (4) 具体的な場面や状況における適切な英語の表 現を身につけることができる。 【言語への関心・知識】 (4)学習計画(全8時間) 第1次 学習の概要と修学旅行の場面を想定したス 時間 キット学習 0.5 第2次 修学旅行の場面を想定したスキット学習 時間 2.5 時間 第3次 スキットの作成と練習 3 ) 第4次 発表会 1時間 本時( 時間 第5次 まとめと反省 1 (5)本時の目標 (1) 意欲的にスキットを発表したり,興味を持っ てスキットの発表が聞ける。 【関心・意欲・態度】 (2) 場面や状況に応じたスキットの発表ができ る。 【表現】 (3) 場面や状況を把握し,スキットの発表を理解 することができる。 【理解】 (4) 具体的な場面や状況に置ける典型的な英語表 現を理解することができる。 【理解】 81
-(6)本時の学習の過程 写真 授業の様子 ▼ (7)授業のふり返り <生徒の感想より> ・みんなのスキットのよいところを見つけ「自分が そのような場面にあったら,話せるようになれるよ うに」と真剣に聞いていました。このスキット発表 のために,前々から班で練習をして,英文を考え, 振り付けを考え,とがんばりました。その成果が出 せればと,何日も前から楽しみでした。いろいろと 考えて取り組んできたので,スキットの発表が終わ って,今はホッとしたようなスッキリとしたような 不思議な気分です。 ・しっかり発音することや相手に伝えようとする気 持ちを持つことなど,英語を通してたくさんのこと を学ぶことができました。普段は英語を使う機会が あまりないので,その分このような時間にはみんな で協力をして文章をたくさん考えたり貴重な経験で きた。どれだけ発音をしっかりしても,伝えようと する気持ちが大切だと思うので,気持ちをしっかり と持ちたい。 ・普段は教科書通りに勉強したり,単語を覚えたり しているけれど,スキットを自分たちが作って,わ かりやすい言葉を選んで辞書で引き 「日本語を話, しているように」ということを目標に,がんばるこ とができました。本当に外国で英語を話すときに頭 に浮かばせられるように,これまでだけではなく, これからも練習をして慣れられるように,英語が好 きという気持ちを高めることができました。 今回の授業では,修学旅行という明確な目標もあ り,生徒一人ひとりが生き生きと活動する姿が随所 に見られた。楽しみ半分,不安半分の中で,一人ひ とりの精一杯の姿が見られたことを評価したい。ま た,授業後のアンケートでは「充実感や達成感を持 つことができましたか」という問いに対して,ほぼ 全員が高い評価を出しており,生徒の気持ちのこも った実践となったことの裏付けができた。 (8)まとめ 本校では県下の英語科の先生方や指導主事の先生 と連携をとりながら,教育活動を進めている。特に 「 」 県教育委員会作成の教材 ジュニファーの学校生活 の活用については力を入れて取り組んできている。 本年度も県教委より指定を受けている公立中学校の 先生方や指導主事の先生と懇談の場を持ち研究を深 めてきた。取り組みを深め,共有し,広げていけるよ うに推進をしていきたい。 英語は外国語であり,自ら触れようとしなければ 大きな成長はのぞめない。英語を教えるという立場 にあって,最も心がけていることは「主体的な英語 の学習者の育成」である。英語をもっと勉強したい という思いを育てるために英語を使う楽しさを生徒 が感じるような実践を心がけている。なかなか思う ようにはいかないが,試行錯誤を繰り返しながら様 々実践に取り組み,活動場面を海外で試す機会を約 束するまでになった。コミュニケーションの喜びを 感じながら,学習意欲を高め,一層主体的な学習者 を育成していきたい。 82