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土木工学からみた防災研究の展望

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Academic year: 2021

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土木工学からみた防災研究の展望

著者

北村 良介

雑誌名

奄美ニューズレター

12

(2)

土木工学からみた防災研究の展望

工学部海洋土木工学科北村良介 〔はじめに〕

災害には自然災害(豪雨,台風,地震,火山噴火等に起因する災害)と人為的な災害(火災,

ガス爆発等に起因する災害)がある。鹿児島県では梅雨末期,台風来襲期の集中豪雨によって斜

面崩壊や土石流に起因する土砂災害(土の移動に起因して生じる災害)がしばしば発生する。本

稿では,自然災害の中の降雨に伴って生じる鹿児島県の土砂災害に限定する。 〔土木工学の防災への貢献〕 降雨に伴う斜面崩壊や土石流は地球46億年の歴史の中で繰り返し発生してきた自然現象であ る。シラスは地質学的には火砕流堆積物の非溶結部と定義されている。鹿児島市周辺のシラス台 地表面は姶良カルデラを噴出源とし,2.2万年前に発生した入戸火砕流の堆積物によって形成さ れた。地形輪廻からは幼年期の地形とみなされ,侵食(斜面崩壊を含む)・運搬・堆積過程を経験 し,壮年・老年期の地形へと変遷していくものと考えられる。 斜面崩壊や土石流のような自然現象が人間生活に不都合を及ぼすと災害となる。人間の生命が 奪われることは,人間生活にとって最大の不都合である。自然現象を人間に不都合を及ぼす災害 にしないようにすることが防災であり,そのための研究が防災研究となる。これまで大学等の研 究機関で行われてきた防災研究の多くは自然現象である斜面崩壊や土石流の発生機構の解明に重 点がおかれ,発生機構解明のための成果を収めてきている。しかし,人間生活に不都合を及ぼさ ないための方策へと結び付けることは今後の防災研究の課題となっている。 例えば,国道10号磯一重冨間を取り上げてみよう。93年8月6曰に10キロメートルほどの区 間である国道10号磯一重富間に住民,ドライバー,バスや鉄道の乗客2500人余り,車800台余り が孤立した。関連する行政機関は鹿児島県土木部砂防課,総務部消防防災課,林務水産部森林保 全課,鹿児島市市民局防災火山対策謀,建設局河川港湾課,消防局警防課,国士交通省鹿児島国 道事務所,JR九州鹿児島支社である。これらの機関が住人,乗客,ドライバーの安全を最優先 し,整合性のある防災対策を確立することは,斜面崩壊や土石流の発生機構を解明することと同 様に今後の防災研究にとって重要な課題である。 土木工学は英語ではCivilEngineeringといい,「土木」という語は「築士構木」に由来する といわれている。人間のための工学である土木工学は人を最優先した防災研究を進めて行くため に最も適した工学と考えられる。 〔おわりに〕 今年は台風の当たり年で鹿児島県にも台風16,18号が立て続けに来襲した。しかし,土砂災害 に限定していえば,93年豪雨災害の後に実施された社会資本の整備が行き届いたためか,大規模 な災害は発生しなかった。大学の地域への貢献が求められている昨今,防災へのバランスのとれ た研究が求められており,それに応えることが大学に所属する土木技術者の責務と考えている。

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