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編集後記

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Academic year: 2021

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編 集 後 記

『人間学研究』第 11 号が、刊行の予定時期より大きく遅れてではありますが、皆さまの手元に届くこととなり ました。原稿を執筆いただいた方々、査読をご担当くださった方々に、この場を借りてお礼申し上げます。 今号ではたまたま私が編集長という役をいただいたものの、これはほとんど名目的なものです。実際には、人 間学研究所の運営実務を担当されている立石尚史氏が、雑誌刊行のための苦労をほぼ一手に引き受けて下さいま した。これについて、感謝の気持ちを立石氏に申し述べたいと思います。――と、これで話を終わらせては、私 の貢献するところが何も無く、余りに心苦しい気がするので、余談を一つ加えておきます。 本誌のタイトルにも含まれている「人間(にんげん)」という語についてです。この語は、現代ではもっぱら「ひと」 (英語でいう human being)の意味で用いられます。しかし、ひとを表すのに、ただ「人(にん)」の字だけでなく「間 (けん)」を付けるのには、どんな理由があるのでしょうか。いくつかの辞書を頼りに、その来歴を調べてみると、 「人間」はどうやら、もともと漢訳仏典の用語であったようです。 例えば、『法華経』の法師品には「愍衆生故 生此人間」(衆生をあわれむために、[悟りの世界から]この人 間に生まれた)という一文があります。ここでの「人間」は、サンスクリット原典にある manusyesu、つまり manusya-(人)の複数・処格形の漢訳です。従って、「人々の間(に)」と、全く字義どおりに理解して良い用例です。 『信長公記』に引かれた謡曲『敦盛』の一節「人間五十年 下天のうちをくらぶれば 夢幻のごとくなり」にある「人 間」の語も、法華経と同じく「人々の間」つまり「人間界」を指しています。人間界の五十年は、天界の底辺部 である下天では一昼夜にしかならないという話で、これは仏教論書『倶舎論』第十一の「人間五十年 下天一昼夜」 を下敷きにしたものです。 このように、もともと「人々の間」という空間を指した「人間」という語を、「人」の意味で用いるようになっ たのは、日本の平安時代あたりのようです。例えば、『今昔物語集』巻五の三に「天人は目瞬(まじろ)かず 人 間は目瞬(まじろ)く」(天人はまばたきをせず、人はまばたきする)というパッセージが見えます。これは、天 人(divine being)と対比され、しかもまばたきをする主体ですから、明らかに人(human being)を指す用例です。 なぜこうした語義の発展が起きたのか、国語学者でない私にはよく分かりません。 ただし「人間」という語が、まず初めに「天界」や「天人」といった、私たち人とは異なるものと比べて使わ れていたことは、意義深いように思えます。つまり、原意としての「人間」には、私たちが普段沿っている常識 や習慣を、異世界への想像を通して相対化する意識が含まれているのです。 さて、今号の刊行の遅れも、下天界でいえば一昼夜の 50 分の 1、つまりは約 29 分程度……。と、つまらない 言い訳で締めくくるとともに、皆様のご寛恕を願う次第です。 手嶋 英貴 編集委員   委 員 長:手嶋 英貴  編集委員:秋田  巌、高石 浩一、中窪  靖、       永澤  哲、橋本 和也、潘  宏立  編集事務:立石 尚史

京都文教大学人間学研究所紀要 第十一号

2011年3月29日 印刷 2011年3月31日 発行 編集・発行 

京都文教大学人間学研究所

      〒611-0041 宇治市槇島町千足80       ☎0774-25-2891 印   刷 (株)栄文堂

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