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中国におけるIT専攻日本語学習者の学習ニーズ及び学習動機 : 日本語主専攻学習者との違いに注目して

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Academic year: 2021

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(1)Title. 中国におけるIT専攻日本語学習者の学習ニーズ及び学習動機 : 日本語主 専攻学習者との違いに注目して. Author(s). 高, 峰; 馬場, 俊臣. Citation. 北海道教育大学紀要. 人文科学・社会科学編, 66(1): 47-62. Issue Date. 2015-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/7847. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(人文科学・社会科学編)第66巻 第1号 Journal of Hokkaido University of Education(Humanities and Social Sciences)Vol. 66, No.1. 平 成 27 年 8 月 August, 2015. 中国におけるIT専攻日本語学習者の学習ニーズ及び学習動機 ― 日本語主専攻学習者との違いに注目して ―. 高 峰*・馬場 俊臣** * **. 瀋陽師範大学ソフトウェア学院. 北海道教育大学札幌校日本語学研究室. Learning Needs and Motivations of Japanese Learners in IT Majors in China: Focusing on the Differences from Japanese Majors. GAO Feng* and BABA Toshiomi** *. College of Software, Shenyang Normal University. **. Department of Japanese Linguistics, Sapporo Campus, Hokkaido University of Education. 概 要 本稿では,中国の瀋陽師範大学に在籍している初級レベルのIT専攻日本語学習者60名及び 日本語主専攻日本語学習者49名の学部学生を対象に行ったアンケート調査の結果を主な資料と して,両者の学習ニーズ及び学習動機などの相違点を検討し,IT専攻日本語学習者の実態と 特徴を明らかにした。IT専攻日本語学習者は,将来の就職を強く意識しており日本語学習の モチベーションが高い傾向が見られること,将来の就職・仕事内容に関連する教材内容を求め ていること,音声言語(聞くこと,話すこと)の解説・練習を重視しその学習ニーズが高いこ と,現在の週2コマ(計180分)よりも多くの授業時間数及び11人以上20人以下の少人数での 授業を望んでいることなどが明らかになった。. 1.はじめに 中国において,日本のポップ・カルチャーへの関心を背景にした学習動機や将来の就職のためなど経済 的・実利的な理由による学習動機に支えられ,大学を中心に日本語学習者数が増加し,2012年時点で学習者 数は2009年より26.5%増加している(国際交流基金(2012))。特に日本語を副専攻とする学習者が急増して いる(李(2007) ) 。近年,中国のIT産業のソフトウェア・アウトソーシング市場が急成長し,その90%は 日本向け業務であるため,日本語能力,ソフトウェア開発技術及び日本的ビジネスを兼ね備えたグローバル 化「複合人材」を養成することが必要になっている。IT(Information technology)専攻の学生に対し日本. 47.

(3) 高 峰・馬場 俊臣. 語科目を実用的で特色ある科目として設ける大学が増えている。大学生の間でも「IT技術」と「日本語」 の習得がブームになっている注1。 IT専攻日本語学習者に関する研究は,理論を紹介する研究が多く,学習ニーズや学習動機の特徴及びそ れに基づいた指導法についての研究は少ない(赵他(2014))。ビジネス日本語に関して,コースデザインを 行う際には学習者のニーズを把握する必要がある(池田(1996))。また,日本語を副専攻とする学習者の日 本語学習に対する意識や考え方を大事にしなければならない(李(2007))。しかしながら,日本向けソフト ウェア開発現場で活躍できることを目的としている日本語学習者数が増加しているにもかかわらず,IT専 攻日本語学習者の学習ニーズ及び学習動機の特徴,また,日本語主専攻学習者との違いについては明確に把 握されておらず,授業内容や指導法などは日本語主専攻のものをほぼそのまま行っている。筆者の一人(高) は,今まで8年間瀋陽師範大学ソフトウェア学院でIT日本語の授業を担当し,シラバスの作成や指導法な ど授業準備に当たって様々な工夫をしているものの,期待する成果は出ていない。そのため,IT日本語学 習者の指導内容や方法について模索しているのが現状である。特に問題と感じているのは次の4点である。 ① IT日本語の授業時間数が少ない。IT日本語は専門を支え就職時に学生の個人競争力を高めるが,副 専攻として従属的な位置付けにあるので,規定された授業時間数には限りがある。学生にとっては,専 門の学習が第一の関心事であり,日本語の学習に充てる時間は僅かである。学生のニーズなどに合わせ て,少ない授業時間数の中で,指導内容や指導法を工夫することが必要になっている。 ② 実用性が高く,かつ学習段階や学習系統を意識して編集されたIT日本語向けの初級教科書はないの が現状である。現在, 『みんなの日本語1・2』を使っているが,IT日本語に関わる内容はなくIT専攻 学生に必要とされる日本文化の紹介なども足りず,補助教材を利用しなければならない。初級段階の日 本語と専門のIT日本語の学習が系統的に両立できる教材を自主的に開発していく必要がある。 ③ 初級から中級までの授業担当教員が必ずしも同じではないため,授業の進め方や進度,補助教材の利 用のし方,学生の日本語到達度などが異なっている。そのため,各学生の学習内容や問題点などを詳細 に記録したりして相互に伝えるなど,各教員が協力することが必要である。 ④ IT日本語の授業のクラスサイズは大人数(現在60人程度)であり,同一クラスの学生の学習動機や 望む日本語レベルなどは多様である。この点を考慮した教授法や教材開発が求められている。 以上の点を視野に入れ,より効果的なIT日本語の授業を開発するためには,IT日本語学習者の学習ニー ズ及び学習動機などの実態及び特徴を把握する必要がある。本稿では,中国人IT専攻日本語学習者のニー ズに適したIT日本語カリキュラムの作成に役立てることを目的に,中国人IT専攻日本語学習者及び日本語 主専攻学習者を対象として,学習ニーズ及び学習動機などに関するアンケート調査を行い,その結果を比較 しながら両者の違いを明らかにするとともに,IT専攻日本語学習者の回答結果の傾向を教育現場の実感を 踏まえて分析しその実態と特徴を明らかにする。. 2.瀋陽師範大学における「IT専攻」と「日本語主専攻」のコース概要 2. 1 「IT専攻」について 現在,対日ソフトウェア開発企業のグローバル展開に必要なIT人材が不足しており,また,語学力とし て日本語能力が求められている。学生の総合的な実力や就職の際の競争力を高めるために,IT人材育成の 一環として日本語コースが開設されている。「IT専攻日本語学習者」(以下「IT専攻」と略す)とは,大学 でITを主専攻とし日本語を第2外国語の副専攻とする学習者のことである。 瀋陽師範大学ソフトウェア学院では,2006年に日本語のコミュニケーション能力を有する「IT+日本語」. 48.

(4) 中国におけるIT専攻日本語学習者の学習ニーズ及び学習動機. の人材育成のためにIT日本語精読コースが教養科目として設けられた。コース担当教員は,現在,専任3 名(中国人3名) ,非常勤2名(中国人1名,日本人1名)である。ソフトウェア学院の学生全員を対象に したコースであり,2年生前期から3年生後期までの2年間,合計4学期間のコースである。2年生前期の 「IT日本語初級-1」は必修であり全員履修するが,2年生後期以降の3学期間に開設される5科目は選 択である。IT日本語精読コースのレベルは初級から中級まであり,初級前期(2年生前期「IT日本語初級 -1」週2コマ) ,初級後期(2年生後期「IT日本語初級-2」週2コマ),中級前期(3年生前期「IT日 本語中級-1」週2コマ) ,中級後期(3年生後期「IT日本語中級-2」週2コマ)の4段階に分かれてい る(1コマは90分) 。精読コースの使用テキストは『みんなの日本語1・2』である。精読コース以外に, 日本人教師担当の「実践日本語会話初級」が開設されている(3年生前期「実践日本語会話初級-1」週1 コマ,3年生後期「実践日本語会話初級-2」週1コマ)。また,「IT日本語初級-1」及び「IT日本語初 級-2」は,情報管理とシステム専門,ソフトウェアエンジニアリング専門,コンピューター科学専門,ネッ トワーク工学専門の4つの専門分野別にクラス分けされており,2014年の各クラスの受講者数は,2年生前 期開講の「IT日本語初級-1」 (必修,週2コマ)ではそれぞれ41名,76名,73名,65名であり,2年生後 期開講の「IT日本語初級-2」 (選択,週2コマ)ではそれぞれ31名,50名,52名,41名である。本稿のア ンケート調査は,この2年生後期開講の「IT日本語初級-2」の受講者を対象として行った。 2. 2 「日本語主専攻」について 「日本語主専攻学習者」 (以下「日本語主専攻」と略す)とは,中国の大学の外国語学部日本語学科で日 本語を主専攻とする学習者のことである。瀋陽師範大学外国語学院では,4年制の日本語主専攻が1995年に 開設された。開設科目は,必修科目と選択科目に分かれている。現在の必修科目には,精読,日本語発音, 聴解,読解,会話,作文,日本語文法,日本語概況,翻訳,日本文学,日本語視聴説,第二外国語英語,就 職指導がある。選択科目には,翻訳理論,上級読解,旅行日本語,日本文学史,日本詩歌鑑賞,日本言語文 化,古文文法,日本語スピーチ,新聞読解,科学技術日本語,貿易日本語,日本語貿易書状,日本語語彙学, 日本史,IT日本語,大学国語,中国伝統文化がある。必修科目の精読(「総合日本語-1」及び「総合日本 語-2」 )の使用テキストは『新編日本語』である。「総合日本語-1」(1年生前期,週4コマ)及び「総 合日本語-2」 (1年生後期,週4コマ)は,それぞれ3クラスに分かれており,ともに22名のクラスが2 クラス,21名のクラスが1クラス設けられている。本稿のアンケート調査は,この1年生後期開講の「総合 日本語-2」の受講者を対象として行った。. 3.調査の概要 3. 1 調査目的 アンケート調査は,中国の大学のIT専攻日本語学習者と日本語主専攻学習者との間に,学習ニーズ及び 学習動機などについて,具体的にどのような違いがあるかを明らかにするために行った。 3. 2 調査対象者 調査対象者は,中国の瀋陽師範大学に在籍し,ゼロから日本語を学習し始め半年(前期)の入門科目が終 了した後に,後期で初級日本語を学んでいるIT専攻174名及び日本語主専攻65名の合計239名である。調査 対象者は初級レベル注2の日本語学習者である。初級レベルの学習者を対象者としたのは,特に初級レベル の段階で,学習動機及び学習ニーズ等を詳しく把握しそれに応える必要性を強く感じたためである。. 49.

(5) 高 峰・馬場 俊臣. 3. 3 調査方法 調査は,2014年6月~7月に,瀋陽師範大学の教員に依頼し実施した。精読の授業の前に担当教員が調査 目的を簡単に説明し,クラス全員に調査票を配布して記入させ,その場で回収した。IT専攻の場合は,ソ フトウェア学院の同僚教員に依頼し,初級の4つのクラス(「IT日本語初級-2」)で調査を行い,専門分 野のバランスを考えクラス別に回収した調査票から有効な調査票を無作為に各クラス15部ずつ抽出し合計60 部を分析の対象とした。日本語主専攻の場合は,外国語学院日本語学科の教員に依頼し,初級の3つのクラ ス( 「総合日本語-2」)で調査を行い,無効な16部注3を除いた合計49部を分析の対象とした。表1に,分 析の対象となった調査対象者の属性を示す。 表1 分析の対象となった調査対象者の属性 人 数. 学 年. 性 別. 既習歴. IT専攻. 60. 2年生 (後期末). 男. 18. 有. 0. 女. 42. 無. 60. 日本語主専攻. 49. 1年生 (後期末). 男. 4. 有. 0. 女. 45. 無. 49. 3. 4 調査項目の概要 調査票は,縫部他(1995),佐藤(1998),李(2003),楊(2011),張(2012)の調査を参考にし,今回の 調査対象者の実態に合うように,調査内容の追加及び修正を行って作成したものである。中国語で書かれた 調査票を用いて調査を行った。本稿では,その日本語訳によって分析する。 調査項目は次の通りである。 問1 日本語学習の動機・目的 問2 現在の成績(語学力)の状況【文法,聞くこと,話すこと,読むこと,書くことの5項目】 問3 目標とする日本語レベル【聞くこと,話すこと,読むこと,書くことの4項目】 問4 学習の難しい領域(「聞くこと,話すこと,読むこと,書くこと」) 問5 授業内容に関する希望 問6 授業方法に関する希望【担当教員3項目,教材利用4項目,練習方法4項目の計11項目】 問7 教材内容に関する希望 問8 授業外での学習状況【予習復習,アニメを見る,日本語で会話する,日本語の本を読む等8項目】 問9 適切な授業時間数 問10 適切なクラス人数 問11 日本語能力試験【受験経験,受験予定,最高目標の3項目】 質問は全部で11問で,調査項目の合計は37項目である。すべて選択回答形式である。問1,問5,問7に は記述欄のある「その他」の選択肢がある。問1,問5,問7の3問は複数回答の質問であり,それ以外の 8問は単数回答の質問である。また,問2及び問8の2問は4段階評価の選択肢を単数回答する質問である。. 4.結果と考察 4. 1 日本語学習の動機・目的 「問1」では,日本語学習の動機を明らかにするために,日本語学習の目的・日本語科目の選択理由を尋. 50.

(6) 中国におけるIT専攻日本語学習者の学習ニーズ及び学習動機. ねた。設問は「あなたは何のために日本語を勉強していますか。最も重要な理由を3つ以内で選び,記号に ○をつけてください。」 (選択肢は図1参照)及び「選んだものを重要な順に並べて記号を書いてください。」 である。図1及び図2(順位)に回答結果を示す。 回答が多かったのは,IT専攻では「G 将来,中国国内での就職に有利だから」(62%),「F いろいろ な外国語力を身につけたいから」 (60%), 「A 現在の日本の漫画・アニメ・映画などが好きだから」 (55%) であり, 日本語主専攻では「F いろいろな外国語力を身につけたいから」 (55%), 「A 現在の日本の漫画・ アニメ・映画などが好きだから」(45%), 「G 将来,中国国内での就職に有利だから」(37%), 「H 将来, 日本に留学したい,又は日本で就職したいから」(37%),「I 親や先輩や友達に勧められたから」(35%) であった。 「G 将来, 中国国内での就職に有利だから」はIT専攻が多く,日本語主専攻と大きな開きがある。また, 特に注目すべき点としては, 「I 親や先輩や友達に勧められたから」がIT専攻では0%であり大きな違い が出ている。また,日本語主専攻では「その他」(10%)で「両親に(日本語を)勉強するように言われた」 「大学受験の成績が良くなく(日本語を)勉強することになった」のような記述が見られた。これは日本語 学習を選んだ時点に関係があると思われる。IT専攻の場合,日本語ができると就職に有利であることは事 実であり,外国語力やそれに伴う自分の競争力を高めようとする意識が強く大学2年生から日本語学習を選 んだと考えられる。一方,日本語主専攻の場合,大学入試後に日本語主専攻の大学を選んでおり,将来の就 職よりも自分の興味で選択する意識が強く,また身近な人から勧められたという理由も大きいと考えられる。 選択した回答の順位付けについては,IT専攻では,第1位で「A 現在の日本の漫画・アニメ・映画な どが好きだから」,第2位で「G 将来,中国国内での就職に有利だから」,第3位で「F いろいろな外国 語力を身につけたいから」がそれぞれ最も多いのに対し,日本語主専攻では,第1位で「A」,第2位・第 3位でともに「F」がそれぞれ最も多い。日本語主専攻に対して,IT専攻ではやはり「G」の理由が顕著 である。なお,IT専攻でも「A」が第1位となっていることに関しては,IT専攻が日本語に興味を持ったきっ かけはアニメやマンガなどが多いが,その後,学習活動を支える学習動機となっているのは言語能力のアッ プ及び将来の就職であろう。 以上のように,IT専攻の学生は,将来の就職や自分の意欲関心などによって積極的に日本語を選択し勉 強していることが分かった。それに対し,日本語主専攻は,IT専攻に比べ,日本語学習の目的や選択理由 が消極的である学生が多いようである。. A. 現在の日本の漫画・アニメ・映画などが好きだから B. 伝統的な日本文化などに興味を持っているから C. 5%. 日本語は学習しやすい言語だから. G. 33%. 29% 10%. 日本語で話したり聞いたりして会話をしたいから F. 32%. 12%. いろいろな外国語力を身につけたいから. 55%. 将来,中国国内での就職に有利だから. J. 0%. その他. 0%. 62%. 37%. 0%. 親や先輩や友達に勧められたから. 60%. 37%. 23%. H 将来,日本に留学したい,又は日本で就職したいから I. 55%. 30%. 12%. 日本語そのものに興味を持っているから D. E. 45%. 35% 10%. 10% IT専攻(60名). 20%. 30%. 40%. 50%. 60%. 70%. 日本語主専攻(49名). 図1 日本語学習の動機・目的. 51.

(7) 高 峰・馬場 俊臣. IT専攻(60名). A 40%. G 30%. F 32% A 26%. F 23%. 日本語主専攻(49名). 0%. 10%. F 30%. 20% 第1位. 30%. 40%. 50%. 第3位. 第2位. 図2 日本語学習の動機・目的(各順位で最多の回答). 4. 2 現在の成績(語学力)の状況と目標とする日本語レベル 「問2」では,現在の語学力を自分ではどのように把握しているかを明らかにするために,「文法」「聞く こと」 「話すこと」「読むこと」「書くこと」の5項目それぞれについて,現在の語学力を尋ねた。設問は「あ なたは1年間の日本語の授業を通して,次の成績はどうでしたか。当てはまるものを後のA~Dから選んで, 記号を書いてください。」(選択肢は図3参照)である。図3に回答結果を示す。. 文 法. 12%. IT専攻(60名). 聞くこと. IT専攻(60名). 47%. 22%. 話すこと. 65% 23%. 日本語主専攻(49名). 読むこと. IT専攻(60名). 書くこと. 0% A とても身についた. 33%. 0%. 8% 14%. 53%. B ある程度身についた. 40%. 0% 4%. 23% 60%. C あまり身につかなかった. 80%. 0% 4%. 47% 59%. 20%. 2%. 16%. 70%. 14%. 日本語主専攻(49名). 2%. 52%. 12% 0%. IT専攻(60名). 29%. 59% 40%. 日本語主専攻(49名). 0%. 53% 59%. 2%. 4%. 22%. 25%. 10%. 日本語主専攻(49名). 0%. 35%. 27%. 日本語主専攻(49名). IT専攻(60名). 53%. 100%. D まったく身につかなかった. 図3 現在の成績(語学力)の状況. 「文法」については, 「A とても身についた」を選択した割合はIT専攻が12%であるのに対し日本語主 専攻は27%でありIT専攻が少なくなっている。しかし,「A とても身についた」及び「B ある程度身に ついた」の合計は,IT専攻は65%であり,日本語主専攻は74%であり,違いは少なくなっている。日本語 主専攻では専門として1年間学習してきたのに対し,IT専攻は学習時間が少ない中でかなり積極的に高成 績を残そうと努力していることが推測できる。指導者側には,短時間の学習でも効果が上がる分かりやすく 興味の持てる文法の教授法が求められるであろう。 「聞くこと」については,IT専攻では「C あまり身につかなかった」(53%)が最も多く,日本語主専 攻では「B ある程度身についた」 (59%)が最も多いが,「A とても身についた」はIT専攻は22%であ るのに対し日本語主専攻は10%でありIT専攻の方が高い。「話すこと」については,IT専攻では「B ある 程度身についた」(65%)に次いで「C あまり身につかなかった」(33%)が多いのに対し,日本語主専攻 では「B ある程度身についた」(59%)に次いで「A とても身についた」(23%)が多い。「読むこと」. 52.

(8) 中国におけるIT専攻日本語学習者の学習ニーズ及び学習動機. については,IT専攻では「B ある程度身についた」(52%)に次いで「A とても身についた」(40%) が多いのに対し,日本語主専攻では「B ある程度身についた」 (70%)に次いで「C あまり身につかなかっ た」 (14%)が多い。「書くこと」については,IT専攻では「B ある程度身についた」 (53%)に次いで「C あまり身につかなかった」 (47%)が多く「A とても身についた」は0%であるのに対し,日本語主専攻 では「B ある程度身についた」(59%)に次いで「C あまり身につかなかった」(23%),「A とても身 についた」 (14%)となっている。 以上の結果から,IT専攻にとっては「聞くこと」「話すこと」及び特に「書くこと」の学習の難しさを改 めて感じさせられる。しかし, 「読むこと」はIT専攻の方が学習達成感が高い。また,一部のIT専攻は「聞 くこと」 の学習達成感も高い。これは,学習内容の難易度及び授業で重視する内容と関連が深いと思われる。 副専攻としてのIT日本語は日本語主専攻より内容的な難易度が低く,また,日本語能力試験に合格させる ために「聞くこと」及び「読むこと」を中心に強化練習で授業を進めていることが関連していると考えられ る。 次に, 「問3」では,学習者の目標とする日本語の到達レベルを明らかにするために,「聞くこと」「話す こと」 「読むこと」「書くこと」の4技能それぞれについて,目標とする到達レベルを尋ねた。設問は「あな たが望む日本語レベルを選んでください。それぞれの技能についてA~Dから最も当てはまるものを1つだ け選び,記号に○をつけてください。」(選択肢は図4~7参照)である。図4~7に回答結果を示す。 「聞くこと」については,IT専攻では「D 母語話者の自然なスピードでも,どんな話題も理解できる」 (第4段階) (63%)が最も多かったのに対し,日本語主専攻では「D」(第4段階)(35%)及び「C 自 然に近いスピードの長い会話やニュースや講義が理解できる」(第3段階)(35%)が多くなっている。「話 すこと」については,IT専攻では「C 日常生活や自分や仕事に関連することについて準備せずに話せる」 (第3段階) (57%)が最も多かったのに対し,日本語主専攻では「B 日常場面で短い社交的なやり取り がほぼできる」 (第2段階)(29%)と「C」(第3段階)(26%)と「D 母語話者と流暢で自然な会話がで きる」 (第4段階) (31%)がほぼ同じ割合となっている。「読むこと」については,IT専攻では「D 抽象 的で複雑な評論や文学作品が理解できる」(第4段階)(50%)が最も多かったのに対し,日本語主専攻では 「B 日常的な話題についての具体的な内容を表す文章が理解できる」 (第2段階) (35%),次いで「D」 (第 4段階) (33%)となっている。 「書くこと」については,IT専攻では「C 自分の興味・関心について明 瞭で詳細な説明が書ける」(第3段階)(45%),次いで「B つながりのある文章や手紙やメールが書ける」 (第2段階) (38%)となっているのに対し,日本語主専攻では「C」(第3段階)(31%)と「D 複雑な 話題について適切な結論を導きながら論述できる」(第4段階)(29%)が多い。 上記の結果から,IT専攻は日本語主専攻に比べて,「聞くこと」及び「読むこと」に関して極めて高い到 達目標を持っているのに対し, 「話すこと」は中程度の到達目標を,また特に「書くこと」についてはやや 低めの到達目標を持っていることが分かる。 IT専攻が「聞くこと」 「読むこと」に高い到達目標を抱いている理由の一つは,前述の通り,授業で「聞 くこと」 「読むこと」を重視しているからであろう。また,就職した後に,日本語で書かれた技術文書等の 理解が重要になることや日本語での口頭のコミュニケーションではまず正確に聞き取ることが求められると いうようなことを意識している可能性もある。. 53.

(9) 高 峰・馬場 俊臣 8% IT専攻(60名). 8% 11%. 18%. IT専攻(60名). 63%. 57%. 20%. 15%. 10% 20%. 日本語主専攻(49名). 0%. 35%. 20%. 40%. 60%. 14%. 日本語主専攻(49名). 35%. 80%. 0%. 100%. 26%. 29%. 20%. 40%. 60%. 31%. 80%. 100%. A 短くて簡単な挨拶やアナウンスが聞き取れる(第1段階). A 相手が助けてくれれば,挨拶や簡単なやり取りの会話ができる(第1段階). B 日常場面でゆっくりと話される会話の内容がほぼ理解できる(第2段階). B 日常場面で短い社交的なやり取りがほぼできる(第2段階). C 自然に近いスピードの長い会話やニュースや講義が理解できる(第3段階). C 日常生活や自分や仕事に関連することについて準備せずに話せる(第3段階). D 母語話者の自然なスピードでも,どんな話題も理解できる(第4段階). D 母語話者と流暢で自然な会話ができる(第4段階). 図4 目標とするレベル「聞くこと」. 図5 目標とするレベル「話すこと」. 5% IT専攻(60名). 22%. 23%. IT専攻(60名). 50%. 15%. 38%. 45%. 2%. 10% 35%. 日本語主専攻(49名). 0% A. 20%. 22%. 40%. 33%. 60%. 22%. 日本語主専攻(49名). 80%. 0%. 100%. A. 基本語彙で書かれた短くて簡単な身近な話題の文章が理解できる(第1段階). 18%. 20%. 31%. 40%. 60%. 29%. 80%. B. 日常的な話題についての具体的な内容を表す文章が理解できる(第2段階). B. つながりのある文章や手紙やメールが書ける(第2段階). C. 幅広い話題についての新聞の記事が理解できる(第3段階). C. 自分の興味・関心について明瞭で詳細な説明が書ける(第3段階). D. 抽象的で複雑な評論や文学作品が理解できる(第4段階). D. 複雑な話題について適切な結論を導きながら論述できる(第4段階). 図6 目標とするレベル「読むこと」. 100%. メモやメッセージのように簡単で短い身近な話題が書ける(第1段階). 図7 目標とするレベル「書くこと」. 4. 3 学習の難しい領域 「問4」では,学習の難易度の意識を明らかにするために,「聞くこと」「話すこと」「読むこと」「書くこ と」のどの領域が難しいかを尋ねた。設問は「あなたは日本語を学んで「聞くこと・話すこと・読むこと・ 書くこと」のうち,どれが最も難しいと感じますか。1つ選び,記号に○をつけてください。」である。図 8に回答結果を示す。 難易度が高い順に並べると,IT専攻は「聞くこと」(37%),「話すこと」(33%),「書くこと」(25%)で あり,日本語主専攻は「聞くこと」(45%),「話すこと」(39%),「書くこと」(10%)であり,同じ順番で ある。特に両者とも「聞くこと」の方が「話すこと」より難しいと感じていることが分かった。これは,両 者ともに,日本語の発音が難しいこと,また日本人と会話するチャンスが少ないことなどが共通するためと 考えられる。回答が最も少なかったのは,ともに「読む」(IT専攻5%,日本語主専攻6%)であり,他に 比べて「読むこと」の学習達成感が高いことが分かる。 また特に注目すべき点としては, 「書くこと」についてはIT専攻(25%)が日本語主専攻(10%)より高かっ たことである。理工系のIT専攻にとって「書くこと」はかなり難しいと意識されていることが分かった。. 5% IT専攻(60名). 37%. 33%. 25% 6%. 45%. 日本語主専攻(49名). 0%. 20% 聞くこと. 39% 40% 話すこと. 10%. 60% 読むこと. 80% 書くこと. 図8 学習の難しい領域. 54. 100%.

(10) 中国におけるIT専攻日本語学習者の学習ニーズ及び学習動機. 4. 4 授業内容及び授業方法に関する希望 「問5」では,授業で学習したい内容を明らかにするために,精読授業で希望する学習内容を尋ねた。設 問は「あなたが精読の授業で学習したい内容は何ですか。最も学習したい内容を3つ以内で選び,記号に○ をつけてください。 」 (選択肢は図9参照)及び「選んだものを重要な順に並べて記号を書いてください。」 である。図9及び図10(順位)に回答結果を示す。 回答が多かったのは,IT専攻では「D 会話」 (63%), 「H 日本文化・社会」 (57%), 「C 聴解」 (53%) であるのに対し,日本語主専攻では「H 日本文化・社会」(59%), 「B 文法」(53%), 「A 語彙・文字」 (49%)である。 「D 会話」はIT専攻が多く,日本語主専攻と大きな開きがある。また,特に注目すべき点としては, 「C 聴解」がIT専攻では53%であるのに対し,日本語主専攻では22%であり,大きな違いが出ている。また, IT専攻では「A 語彙・文字」が10%, 「B 文法」が25%でありともに少なく日本語主専攻と大きな違い が出ている。IT専攻では「聞くこと」及び「話すこと」に関する希望が強く,語彙や文法だけの授業には 抵抗感を覚えることが推察される。 選択した回答の順位付けについては,IT専攻では,第1位で「D 会話」,第2位で「C 聴解」,第3 位で「H 日本文化・社会」がそれぞれ最も多いのに対し,日本語主専攻では,第1位で「A 語彙・文字」, 第2位・第3位でともに「H」がそれぞれ最も多い。やはりIT専攻では「D」の希望が顕著であるのに対し, 日本語主専攻では「A」の希望が強い。また,両者とも「H 日本文化・社会」の内容に強い希望を持って いることが分かった。指導者側が適度に日本文化・社会に関する内容や日本文化体験や課外活動を導入する ことによって,学生のモチベーションが高まると思われる。. 10%. A 語彙・文字. 49%. 25%. B 文法 C 聴解. 53% 53%. 22%. D 会話 E 発表. 13%. F 読解. 14%. 5%. G 作文. 20% 38%. 14%. 57% 59%. H 日本文化・社会 I. 日本語能力試験に合格するための試験対策 J その他 0%. 30%. 16%. 5% 4% 10%. 63%. 47%. 20%. 30%. 40%. IT専攻(60名). 50%. 60%. 70%. 日本語主専攻(49名). 図9 授業内容に関する希望. IT専攻(60名) H 22% H 33%. 日本語主専攻(49名). 0%. 10%. 20% 第1位. 第2位. D 40%. C 38%. 30%. A 35% H 32% 40%. 50%. 第3位. 図10 授業内容に関する希望(各順位で最多の回答). 55.

(11) 高 峰・馬場 俊臣. 以上のように,精読の授業内容に関して,IT専攻の学生は「聞くこと」「話すこと」に対する学習希望が 強い。それに対し,日本語主専攻の学生は,語彙や文法に対する学習希望が強い。また,両者ともに日本文 化・社会の内容に強い希望を持っている。 「問6」では,精読授業においてどのような学習方法を希望するかを明らかにするために,精読授業の「担 当教員」 「教材利用」「練習方法」のそれぞれについて希望する学習方法を尋ねた。設問は「あなたはどのよ うな方法の精読授業を受けたいですか。当てはまるものをA~Dから選んで,記号を書いてください。」(選 択肢は図11~13参照)である。図11~13に回答結果を示す。 「担当教員」については, 「A 受けたい」を選択した回答が一番多かったのはIT専攻が「日本人教師が 授業をする」 (93%)であるのに対し,日本語主専攻は「中国人教師が授業をする」(74%)であり,「B 受けたくない」を選択した回答が一番多かったのはIT専攻が「中国人教師が授業をする」(23%)であるの に対し,日本語主専攻は「日本人教師が授業をする」(18%)である。さらに,「C どちらでもいい」を選 択した回答についても「日本人教師が授業をする」については大きな差があり,IT専攻が7%であるのに 対して日本語主専攻は33%である。 「教材利用」については, 「A 受けたい」を選択した回答が多かったのはIT専攻が「実物や日本のマン ガや絵・写真を使う」 (95%) , 「日本のアニメやドラマのDVD映像教材を使う」(85%)であるのに対し, 日本語主専攻は「コンピューターやインターネットを使う」(76%),「日本のアニメやドラマのDVD映像教 材を使う」 (74%)である。「B 受けたくない」を選択した回答が一番多かったのは両者とも「教科書だけ 使う」で,IT専攻が65%であるのに対し日本語主専攻は45%であり,IT専攻が多い。特に注目すべき点は, 「コンピューターやインターネットを使う」について,「C どちらでもいい」を選択したのはIT専攻が 48%であるのに対し,日本語主専攻は18%であり,IT専攻がかなり多いことである。 「練習方法」については, 「A 受けたい」を選択した回答が多かったのはIT専攻が「ゲームやロールプレー などでタスク練習を行う」(90%),「ペアワークなどを取り入れ,グループ練習を行う」(82%),「反復・代 入・変換練習などで個人練習を行う」 (77%)である。これに対し日本語主専攻は「ゲームやロールプレー などでタスク練習を行う」 (67%)が最も多いが他の回答も63%,55%,53%であり,IT専攻ほどには希望 の強弱は出ていない。 「B 受けたくない」を選択した回答が一番多かったのはIT専攻が「クラス全体やグ ループでの一斉練習を行う」 (35%)であるのに対し,日本語主専攻は「反復・代入・変換練習などで個人 練習を行う」 (24%)である。 以上の結果から,IT専攻にとっては「日本人教師担当」,「実物やマンガや絵・写真,アニメやドラマの DVD映像の教材利用」,「タスク練習,グループ練習」という授業方法に関する希望が強いことが分かる。 こうした希望は日頃の授業の際にも感じていたことであり,改めてその希望の強さが分かった。こうした希 望は,IT日本語教育の現状と関連が深いと思われる。副専攻としてのIT日本語は日本語主専攻に比べクラ スの設置数が少なく,日本人教師の授業も僅かである。また,大人数の授業内での一斉練習・個人練習が中 心であり,授業時間数も足りず内容が主に文法や語彙に偏りマンガやアニメのような日本文化関連を扱った 教材の利用も少ない。IT専攻の学生は日本語でコミュニケーションできる面白みのある授業を求めている。 日本人留学生や日本語主専攻の学生を授業に招いたり,タスク練習やグループ練習を行ったり,日本のアニ メのDVDやマンガを利用したりするなどの工夫を適度に指導者側がすることで学生のモチベーションが高 まることが期待される。. 56.

(12) 中国におけるIT専攻日本語学習者の学習ニーズ及び学習動機 IT専攻( 名) 日本語主専攻( 名). 23%. 50%. 中国人教師が授業をする. 27%. 0% 0%. 93%. 日本人教師が授業をする. 49. 48%. 中国人教師が日本人教師と協力し授業をする. 12%. 0% 受けたい. B. 8%. 20% C. 受けたくない. 40% D. 2%. 25%. 60%. どちらでもいい. 2%. 33%. 63%. 中国人教師が日本人教師と協力し授業をする. 0% 20%. 18%. 47%. 日本人教師が授業をする. A. 40% 4%. 74%. 中国人教師が授業をする. 0%. 7%. 60. 4%. 80%. 100%. わからない. 図11 授業方法に関する希望「担当教員」. IT専攻( 名). 60. 7%. 教科書だけ使う. 65%. 実物や日本のマンガや絵・写真を使う 48%. 48%. 日本語主専攻( 名). 31%. 0%. 13%. 65%. 0%. 20%. 40% C. 受けたくない. 60%. どちらでもいい. D. 0% 0%. 18%. 2%. 74%. 日本のアニメやドラマのDVD映像教材を使う. 2%. 22% 6%. 76%. コンピューターやインターネットを使う. 49. 0%. 15%. 22%. 45%. 実物や日本のマンガや絵・写真を使う. 0% 4%. 85%. 教科書だけ使う. B. 5%. 0%. 日本のアニメやドラマのDVD映像教材を使う. 受けたい. 0%. 95%. コンピューターやインターネットを使う. A. 3%. 25%. 2%. 22%. 80%. 100%. わからない. 図12 授業方法に関する希望「教材使用」. IT専攻( 名). 60. 35%. 35%. クラス全体やグループでの一斉練習を行う. 77%. 反復・代入・変換練習などで個人練習を行う. 日本語主専攻( 名). 21% 24%. 63%. ペアワークなどを取り入れ,グループ練習を行う. 49. 8%. 0% B. 受けたくない. 20%. 40% C. どちらでもいい. 60% D. 2%. 21%. 2%. 21% 80%. 3%. 22%. 27%. 10%. 67%. ゲームやロールプレーなどでタスク練習を行う. 受けたい. 7%. 53%. 反復・代入・変換練習などで個人練習を行う. 3%. 0%. 55%. クラス全体やグループでの一斉練習を行う. 6%. 15%. 90%. ゲームやロールプレーなどでタスク練習を行う. 0%. 12%. 0%. 82%. ペアワークなどを取り入れ,グループ練習を行う. A. 30% 5%. 0% 4% 100%. わからない. 図13 授業方法に関する希望「練習方法」. 57.

(13) 高 峰・馬場 俊臣. 4. 5 教材内容に関する希望 「問7」では,精読授業の教材についてどのような内容を希望するかを明らかにするために,精読教材の 内容の希望を尋ねた。設問は「あなたは精読教材にどのような技能や知識を希望しますか。最も希望する内 容を3つ以内で選び,記号に○をつけてください。」(選択肢は図14参照)及び「選んだものを重要な順に並 べて記号を書いてください。」である。図14及び図15(順位)に回答結果を示す。 回答が多かったのは,IT専攻では「E 総合的な技能」(68%),「B 「話す」技能」(55%),「J 就 職に関する知識」(42%)であり,日本語主専攻では「H 生活事情に関する知識」(65%),「I 社会文化 に関する知識」 (51%),「G 文法知識」(49%),「F 語彙・文字」(47%)であった。 「E 総合的な技能」及び「J 就職に関する知識」はIT専攻が多く,日本語主専攻と大きな開きがある。 また,特に注目すべき点としては,IT専攻では「G 文法知識」(10%)及び「F 語彙・文字」(17%) が少なく大きな違いが出ている。これはコース・科目設置と学習動機に関係があると思われる。IT専攻の 場合,IT日本語精読及び実践日本語会話初級だけが設置されており,僅か2年間で集中的に日本語を学習 するため,将来就職に有利となるコミュニケーションを図ることができる総合的な日本語能力及び日系企業 への就職に関する知識といった教材内容を希望していると考えられる。一方,日本語主専攻の場合,日本語 精読の他に,会話や聴解や就職指導などが設置されており,専門として4年間学習するため,基礎となる文 法知識や語彙・文字及び教養的な生活事情・社会文化を中心とした教材内容を希望していると考えられる。 選択した回答の順位付けについては,IT専攻では,第1位で「E 総合的な技能」,第2位で「B「話す」 技能」 ,第3位で「J 就職に関する知識」がそれぞれ最も多いのに対し,日本語主専攻では,第1位で「G 文法知識」 ,第2位で「H 生活事情に関する知識」,第3位で「I 社会文化に関する知識」がそれぞれ最 A. 「聞く」技能. B. 「話す」技能. C. 「読む」技能. D E. 8% 8%. 12%. 総合的な技能 G. I. 社会文化に関する知識 J. 就職に関する知識. K. 留学に関する知識 L. 25% 47%. 10%. 文法知識. 生活事情に関する知識. 68% 17%. 語彙・文字. H. 55%. 18%. 7%. 「書く」技能 F. 27%. 16%. 49%. 33%. 65%. 27% 4% 0% 0%. その他. 0%. 4%. 51%. 42% 7%. 10%. 20%. 30%. IT専攻( 60名). 40%. 50%. 60%. 70%. 日本語主専攻( 49名). 図14 教材内容に関する希望. E 37%. B 28%. IT専攻(60名). J 27%. H 32%. 日本語主専攻(49名). 0%. 10%. 20% 第1位. 第2位. G 28% I 32% 30%. 40%. 第3位. 図15 教材内容に関する希望(各順位で最多の回答). 58. 50%.

(14) 中国におけるIT専攻日本語学習者の学習ニーズ及び学習動機. も多い。 以上のように,IT専攻の学生は,就職のため日本語の総合的な技能や会話や就職知識といった教材内容 を希望していることが分かった。それに対し,日本語主専攻では,基礎となる文法・語彙や教養的な文化等 といった教材内容を希望している学生が多いようである。 4. 6 授業外での学習状況 「問8」では,授業外でどんな学習活動をしているかを明らかにするために,予習復習,アニメを見る, 日本語で会話する,日本語の本を読むなど8項目を尋ねた。設問は「あなたは授業外でどんな学習活動をし ていますか。1~8の学習活動について,当てはまるものをA~Dから選んで記号を書いてください。」(選 択肢は図16参照)である。図16に回答結果を示す。 「A 全く経験がない」については,IT専攻では「7 日本語サークルの活動に参加する」(92%)が最 も多く, 日本語主専攻では「8 大学以外の語学学校に通う」 (82%)が最も多くなっている。これに対して, 「1 日本語の授業の予習・復習をする」及び「2 日本のテレビ番組・アニメ・映画を見る」は,IT専 攻及び日本語主専攻ともにほぼ0%である。「B 経験がある」については,IT専攻では「5 日本語で日 記やメールを書く」(80%)が最も多く,日本語主専攻では「2 日本のテレビ番組・アニメ・映画を見る」 (59%)が最も多くなっている。また,特に「8 大学以外の語学学校に通う」では,IT専攻(32%)が 日本語主専攻(6%)に比べ多くなっている。「C しばしば行っている」及び「D 毎日行っている」は 併せて集計した。これらについては,多かったのは,IT専攻では「2 日本のテレビ番組・アニメ・映画 を見る」 (78%),「1 日本語の授業の予習・復習をする」(60%)である。日本語主専攻はそれぞれ41%, 39%でありIT専攻が多くなっている。 日本語サークルへの参加や大学以外の語学学校通学で違いが出ているのは,日本語主専攻は大学での主専 攻であり大学内で日本語を学習するための多様な活動がしやすい環境にあるのに対して,IT専攻は副専攻. 0%. 1 日本語の授業の予習・復習をする 2 日本のテレビ番組・アニメ・映画を見る IT専攻( 名). 60. 0%. 40%. 60%. 22%. 78% 35%. 3 日本人の留学生や同級生と日本語で会話する. 60%. 4 日本語の本や雑誌を読む 18%. 6 インターネットで情報を調べたり読んだりする. 80% 40% 92%. 8 大学以外の語学学校に通う. 7% 32%. 68% 4%. 日本語主専攻( 名). 55% 41%. 5 日本語で日記やメールを書く. 41%. 49. 6 インターネットで情報を調べたり読んだりする. 12%. 33%. 14%. 45% 43%. 16%. 45%. 31%. 7 日本語サークルの活動に参加する. 24% 16%. 78%. 8 大学以外の語学学校に通う. 6%. 82% 0%. 全く経験がない. 20% B. 経験がある. 0%. 41%. 59%. 4 日本語の本や雑誌を読む. 40% C. 1%. 39%. 57%. 0%. 3 日本人の留学生や同級生と日本語で会話する. A. 2%. 40%. 20%. 7 日本語サークルの活動に参加する. 2 日本のテレビ番組・アニメ・映画を見る. 15%. 10%. 75%. 5 日本語で日記やメールを書く. 1 日本語の授業の予習・復習をする. 5%. しばしば行っている 及び D. 60%. 80%. 6% 12% 100%. 毎日行っている. 図16 授業外での学習状況. 59.

(15) 高 峰・馬場 俊臣. でありそのような環境が相対的に乏しいことが関わっていると思われる。しかし,IT専攻はそうした環境 にあるからこそ逆に日本語学習への積極性が強いと考えられる。特に,授業外で日本のドラマやアニメなど に大きな興味を持っていることが改めて分かった。指導者側が,日本のドラマやアニメを授業で活用したり, またIT専攻向けのサークルを作ったりコンクールを開催したりするなどの工夫を積極的に行うことで,学 習者のモチベーションを向上させ学習効果を挙げることができると考えられる。 4. 7 適切な授業時間数及びクラス人数 「問9」では,精読の授業数(時間数)に対する満足度を明らかにするために,授業数に対する考えを尋 ねた。設問は「あなたは毎週の日本語精読の授業数についてどう思いますか。最もよく当てはまるものを1 つ選び,記号に○をつけてください。」(選択肢は図17参照)である。図17に回答結果を示す。 選択した回答数が高い順に並べると,IT専攻は「ちょうどいい」(50%),「どちらかといえば少ない」 (37%) , 「少ない」(13%), 「どちらかといえば多い」「多い」(ともに0%)であり,日本語主専攻は「ちょ うどいい」 (67%), 「どちらかといえば多い」(23%), 「多い」(6%), 「どちらかといえば少ない」「少ない」 (ともに2%)である。授業時間数について日本語主専攻はやや多いと感じているのに対しIT専攻は少な いと感じていることが分かった。これは,IT専攻が日本語学習に強い意欲を持っているにも関わらず受講 できる授業数が少ないためであると考えられる。指導者側は,現状と学生の希望を踏まえ,コース全体の改 善を検討することが求められるであろう。 「問10」では,精読のクラス人数に関する希望を明らかにするために,適切なクラス人数を尋ねた。設問 は「あなたは日本語の精読クラスの人数は何人ぐらいが適当だと思いますか。最もよく当てはまるものを1 つ選び,記号に○をつけてください。」(選択肢は図18参照)である。図18に回答結果を示す。 回答が多かったのは,IT専攻では「16~20人」(38%), 「11~15人」(37%), 「21~30人」(20%)であり, 日本語主専攻では「16~20人」(45%),「11~15人」(25%),「10人以下」(18%)であった。「10人以下」は IT専攻では0%であり,日本語主専攻と違いがある。クラス人数についてIT専攻は,ほぼ11人以上20人以 下のクラス人数を希望していることが分かった。現状は,副専攻であるIT専攻の日本語クラスは大人数で あり,80名近くのクラスもある。指導者側には,学生の希望を踏まえ,少人数クラスの設置を工夫すること が求められるであろう。. 0%. 0% 0% IT専攻(60名). 50%. 13%. 37%. 多い. 67%. 23% 0%. 38%. 37%. 20%. 2%. 2%. 6% 日本語主専攻(49名). 3%. IT専攻(60名). 20%. どちらかといえば多い. 40% ちょうどいい. 60%. 2% 80%. どちらかといえば少ない. 100% 少ない. 18%. 日本語主専攻(49名). 0% 10人以下. 図17 適切な授業時間数. 45%. 25% 20%. 11~15人. 40% 16~20人. 60% 21~30人. 12% 80%. 31~40人. 0% 0%. 100% 41~50人. 図18 適切なクラス人数. 4. 8 日本語能力試験 「問11」では,日本語能力試験の受験状況を明らかにするために,日本語能力試験の受験経験,受験予定, 最高目標の3項目について尋ねた。設問は「あなたは日本語能力試験の受験経験又は予定がありますか。ま た, 大学在学中,日本語能力試験の最高目標は何級ですか。それぞれ1つ選び,記号に○をつけてください。」 (選択肢は図19~21参照)である。図19~21に回答結果を示す。 受験経験については, 「いいえ」はIT専攻が90%であり日本語主専攻が78%である。初級レベルの学習者. 60.

(16) 中国におけるIT専攻日本語学習者の学習ニーズ及び学習動機. であり受験経験はともに少ない。受験予定については,「はい」はIT専攻が97%であり日本語主専攻が98% であり,ほぼ同じである。最高目標については,日本語主専攻がN1(98%)に集中しているのに対し, IT専攻は回答結果を高い順に並べるとN2(37%),N3(28%),N4(22%),N1(13%)となっており, 大きな違いがある。IT専攻では個人の学習目標や能力によって目標設定が違っていると思われる。日本語 能力試験を受けさせることは学生のモチベーションを高める一つの手段になる。また,よりレベルの高い日 本語能力試験に合格することは就職にも有利である。日本語能力試験を受けることを学生に積極的に勧める ことが必要であろう。. 10% IT専攻(60名). 90%. 22%. 日本語主専攻(49名). 0%. 78% 20%. 40% はい. 60%. 80%. 100%. 13%. 97%. 3%. 日本語主専攻(49名). 98%. 2%. 0%. いいえ. 20%. 40% はい. 図19 日本語能力試験の受験経験. IT専攻(60名). IT専攻(60名). 37%. 28%. 60%. 80%. 100%. いいえ. 図20 日本語能力試験の受験予定. 22% 2% 0% 0%. 98%. 日本語主専攻(49名). 0%. 20% N1. 40% N2. N3. 60%. 80%. 100%. N4. 図21 日本語能力試験の最高目標. 5.おわりに 本稿では,中国の瀋陽師範大学に在籍している初級レベルのIT専攻日本語学習者60名及び日本語主専攻 日本語学習者49名の学部学生を対象にアンケート調査を行い,その結果を主な資料として,両者の学習ニー ズ及び学習動機などの相違点を検討し,IT専攻日本語学習者の実態と特徴を明らかにした。 IT専攻日本語学習者の実態・特徴として,特に次の4点を挙げることができる。 ① 将来の就職に対する意識が強く,日本語学習のモチベーションが高い傾向が見られる。 ② 将来の就職・仕事内容に関連する教材内容を求めている。 ③ 「聞くこと」「話すこと」の解説・練習を重視しその学習ニーズが高い。 ④ 現在の週2コマ(計180分)よりも多くの授業時間数及び11人以上20人以下の少人数での授業を望 んでいる。 ①に関しては,IT専攻日本語学習者は将来の就職を強く意識して日本語を自ら選択しており,積極的に 学習に取り組み,四技能(特に「聞くこと」 「読むこと」)において高い目標を設定していることが分かった。 授業の予習・復習を行う学生の割合も多く,殆どの学生が日本語能力試験を受験する希望を持っている。ま た,将来の就職を強く意識しているため,②のように将来の就職・仕事内容に関連する教材内容を求める傾 向が強い。③に関しては,IT専攻日本語学習者は授業時間が少なく練習の機会も少ないこともあり,「聞く こと」 「話すこと」に学習の難しさを感じている。授業内容や授業方法などに関しても「聞くこと」「話すこ と」の希望が多かった。④は,授業時間数及びクラスサイズの希望であり,今後のコース設定及びクラス設. 61.

(17) 高 峰・馬場 俊臣. 定に有益な情報である。 また,学習者のモチベーションを高めさらに学習効果を挙げるために指導者側が今後,取り組まなければ ならない工夫として,日本文化・社会に関する内容や日本文化体験や課外活動を導入すること,日本人留学 生や日本語主専攻の学生を授業に招いたりタスク練習やグループ練習を行ったり日本のアニメのDVDやマ ンガを授業で活用したりなどすること,IT専攻向けのサークルを作ったりコンクールを開催したりなどす ること,日本語能力試験を受けさせることなどがあることも示した。 今後は,本稿の調査結果を踏まえたうえで,IT専攻日本語学習者の学習動機や目標に応じたコースデザ インの改善,学習内容や効果的な指導法・教室活動の開発などに取り組んでいきたい。. 注 注1 株式会社セネット「中国理工系新卒採用支援事業」 (http://www.senet-inc.co.jp/kk/h-resource01.html) (2014年7月 18日閲覧)などでも「IT技術と日本語を習得した学生」が日本企業への就職を熱望していることが分かる。 注2 前期及び後期の2学期間をかけて,日本語学習時間総数はIT専攻では108時間,日本語主専攻は216時間となる。 注3 「無効な16部」の内訳は,属性だけを回答し他の全ての設問が無回答のもの2部,一部の設問が無回答のもの9部,設 問の指示に従わずに回答したもの4部,日本語の既習歴がある被調査者が回答したもの1部である。. 参考文献 池田伸子(1996)「ビジネス日本語教育における教育目標の設定について―文化・習慣についての重要性を考える―」 『ICU 日本語教育研究センター紀要』5,国際基督教大学日本語教育研究センター,pp.11-24 国際交流基金(2012)『2012年度 日本語教育機関調査 結果概要 抜粋』 (http://www.jpf.go.jp/j/japanese/survey/result/ dl/survey_2012/2012_s_excerpt_j.pdf)(2014年7月10日閲覧) 佐藤友則(1998) 「韓国および台湾の日本語学習者のニーズ調査」 『言語科学論集』 (2),東北大学文学部言語科学専攻,pp.49-60 張立波(2012)「東北大学における「展開中国語」学習者の語学力・学習ニーズなどの基礎調査の結果について」 『東北大学高 等教育開発推進センター紀要』(7),東北大学高等教育開発推進センター,pp.145-153 縫部義憲・狩野不二夫・伊藤克浩(1995)「大学生の日本語学習動機に関する国際調査―ニュージーランドの場合―」 『日本語 教育』(86),日本語教育学会,pp.162-172 楊孟勲(2011)「台湾における日本語学習者の動機づけと継続ストラテジー―日本語主専攻・非専攻学習者の比較―」 『日本語 教育』(150),日本語教育学会,pp.116-130 李受香(2003) 「第2言語および外国語としての日本語学習者における動機づけの比較――韓国人日本語学習者を対象として ――」『日本語教育論集 世界の日本語教育』(13),国際交流基金日本語国際センター,pp.75-92 李友敏(2007)「中国の大学における日本語選択履修生のBELIEFSについて―日本語選択科目の改善を考える―」『言語文化 と日本語教育』(34),お茶の水女子大学日本言語文化学研究会,pp.70-73 赵圣花・刘艳伟・颜冰(2014)「培养国际化软件日语人才的模式与创新」『语文学刊(外语教育教学) 』2014(4),内蒙古师范大 学,pp.101-102. 付 記 本稿は,北海道教育大学大学院研究留学生としての高の研究成果をまとめたものである。馬場は指導教員 として指導助言を行った。 (高 峰 北海道教育大学大学院研究留学生・瀋陽師範大学ソフトウェア学院日本語教師) (馬場 俊臣 札幌校教授) . 62.

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