跳び箱に恐怖心を持つ大学生における助走の練習が跳び箱の助走と跳躍に及ぼす影響
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第68巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 68. No.2. 平 成 30 年 2 月 February, 2018. 跳び箱に恐怖心を持つ大学生における 助走の練習が跳び箱の助走と跳躍に及ぼす影響 板谷 厚・小武 真慧*・佐野 元基**・越智 友亮***・玉田 昌平**** 北海道教育大学旭川校 *. 北海道教育大学旭川校卒業生. **. 上富良野町立上富良野中学校 ***. 札幌市立元町中学校. ****. 旭川市立新富小学校. Approach Run Trainings Improve Running Speed and Vaulting Performance of the Box Vault in College Students with Fear of Jumping Over a Vault Box ITAYA Atsushi, KOTAKE Masato*, SANO Motoki**, Ochi Yusuke***, and TAMADA Shohei**** Department of Physical Education, Asahikawa Campus, Hokkaido University of Education *. A graduate, Asahikawa Campus, Hokkaido University of Education **. Kamifurano Junior High School, Kamifurano ***. Motomachi Junior High School, Sapporo. ****. Shintomi Elementary School, Asahikawa. ABSTRACT The purpose of this study was to examine the effects of approach run trainings on approach run speed and vaulting performance of the box vault in college students with fear of jumping over a vault box. Fifteen college students (six female) participated in this study. This study was constructed with four experimental sessions: pre-test, practice 1, practice 2, and post-test. In pre- and post-test, participants were instructed to jump over a vault box in Stoop style with open legs. The vault box was set to the maximum height that he / she could jump over by self-assessment of each participant. The approach distance was set to 15 m. For each participant, a single trial was recorded with two video cameras: one was for measuring his / her approach run speed from a distance at 21 m, and another was for evaluating his / her vaulting performance from a distance at 6 m. In the practice sessions 1 and 2, exercise interventions were performed with the aim of using an accelerating approach run until just before the takeoff point to a springboard. Based on the results of a questionnaire asking the level of fear of the box vault in the pre-test, participants were. 603.
(3) 板谷 厚・小武 真慧・佐野 元基・越智 友亮・玉田 昌平. divided into two groups: fear and no-fear group. Results of statistical analysis showed that in the fear group, the fear level of the box vault decreased drastically in post-test relative to pre-test. In addition, the approach run speed in the period of zero to five meters just before the takeoff point to the springboard significantly increased, and vaulting performance improved significantly in the fear group in post-test. Thus, we conclude that the exercise interventions we adopted in this study are effective to improve approach run speed and vaulting performance of the box vault, especially in college students with fear of jumping over a vault box. . 1.はじめに. いて考慮されていない。 踏み切り直前で減速する原因の1つとして,ロ. 跳び箱運動は小学校,中学校,高校の器械運動. イター板に足を合わせようと小走りになってしま. 領域において扱われる種目1-3)であるとともに,. うことが挙げられる。これを避けるためには,助. 苦手としている児童・生徒が多い種目でもある。. 走の歩数を合わせる必要がある。そのためには,. 跳び箱が跳べない,あるいは跳び箱運動を苦手と. 踏み切り位置を定め,逆算的に助走のスタート位. する児童・生徒は,踏み切りの直前で立ち止まっ. 置を決定することが有効だと考えられる。その際. たり,減速したりしてしまう。このことを引き起. に問題になるのは,踏み切り位置である。跳び箱. こす要因の1つとして考えられるのが,跳び箱に. が跳べない児童・生徒の特徴の1つに,踏み切り. 対する恐怖心である。. 位置がロイター板に近すぎて,力強く踏み切るこ. 跳び箱に恐怖心がある児童・生徒は,跳び箱に. とができないことがある。そこで,踏み切り板か. 近づくほど助走の加速ができない。このため,跳. ら比較的(1m以上)離れた位置に踏み切り位置. び箱の直前で勢いがなくなってしまい,跳び越せ. を設定する必要がある。. る感じをつかむことができない。跳び越せる感じ. ただし,助走の後半で加速できない児童・生徒. がつかめないため,さらに,恐怖心を募らせる。. は,踏み切り板から離れた位置から踏み切ること. このような悪循環を断ち切るために,助走の勢い. に難しさを感じるかもしれない。これに対応して,. を高め,跳び越せる感じをつかませることが肝要. 離れた位置から踏み切る練習も行う必要がある。. である。. 本研究は,大学生を対象に,跳び箱に恐怖心が. これまで跳び箱が跳べない児童・生徒に対し. ある人の助走パターンを改善することを目指した. て,力強く踏み切る,跳び箱の奥に手をつくなど. 練習プログラムを実施し,その効果を確かめるこ. の声かけや指導がなされている。しかし,助走の. とであった。. 後半で加速できない場合,これは有効な手だてと はならないと推測できる。助走で勢いをつけるこ とができていないため,そもそも力強く踏み切る. 2.方 法. ことができない。したがって,跳び箱の奥に手を. 2. 1.対象者. つくこともできない。つまり,これらは,このよ. 被験者は,本学旭川校学生の体育実技2(器械. うな児童・生徒にとって無理な注文である。踏み. 運動)を受講した男子9名(身長:171.7±4.2cm,. 切りの直前で加速できない助走パターンを改善す. 体重65.4±5.9kg,年齢19.0±.0歳),女子6名(身. るためには, 助走そのものを修正する必要がある。. 長:160.9±3.2cm,体重51.8±5.7kg,年齢18.8±.7. にもかかわらず,これらの指導法は,この点につ. 歳)の計15名であった。被験者には,講義中に撮. 604.
(4) 助走の練習が跳び箱の助走と跳躍に及ぼす影響. 影した動画を研究対象とすること,研究へのデー. (図2)。課題1では,ロイター板の手前10cm毎. タ供与とその撤回は自由であり,拒否や撤回は何. に障害物を設置し,障害物に触れないようにロイ. ら不利益がないこと,研究成果の公表の可能性,. ター板を用いてエバーマットへと跳躍するよう被. 守秘や個人情報・研究データの取り扱い等を口頭. 験者に指示した。障害物は徐々に増やした。課題. で説明し,同意を得た。. 2では踏み切り位置(ロイター板から1.5m)を 指定し,助走の歩数を合わせ,そこからロイター. 2. 2.実験の手順. 板へ踏み切り,エバーマットへと跳躍させた。セッ. 大学の体育実技Ⅱ(器械運動)の4回の講義(11. ションの残り時間は開脚跳びの跳躍練習を行っ. 月24日―12月15日)を実験セッションとした。. た。4回目のセッションでは1回目と同様に跳躍. 1回目では跳躍可能最高段数での試技(開脚跳. 可能最高段数での跳躍測定を行った(post)。. びの跳躍)の測定を行った(pre)。最高段数は,. 運動感の内省報告,助走の動作分析および跳躍. 自己申告によって決定した。助走距離を15mとし,. パフォーマンスの観察評価を実施した。内省報告. ロイター板は跳び箱から身長−110cmの距離に設. の測定項目は,助走の主観的運動強度(RPE)と. 置した。デジタルビデオカメラ2台で試技を撮影. 跳び箱への恐怖度であった。これらは0を最低,. した(図1) 。1台は助走局面と踏み切り局面を. 100(%) を最高として該当する数値を回答させた。. 被験者の右側面から撮影した。助走路からの距離. 助 走 の 動 作 分 析 に は,Frame-DIASⅡV3. を21m,レンズ高を床から1.1mとした。もう1台. (DKH社製)を用いて2次元解析を行った。助. は着手局面と着地局面を撮影し,助走路からの距. 走する被験者の右大転子位置を,フレームレート. 離を6m,レンズ高を床から1.1mとした。. 60Hzにてデジタイズした。2次元DLT法によっ. 2回目と3回目のセッションでは運動介入を. て座標平面を再構築し,位置座標波形を遮断周波. 行った。運動介入では2種類の課題に取り組んだ. 数6Hzにて移動平均法で平滑化した。ロイター. 図1 実験設定. 605.
(5) 板谷 厚・小武 真慧・佐野 元基・越智 友亮・玉田 昌平. 図2 運動課題. 図3 助走の分析区間. 板への踏切位置から5mの区間(5 ― 0区間)と. 2. 3.データ処理および統計. 5mから10mの区間(10 ― 5区間)を設け,それ. preの恐怖度が0%の7名を恐怖心なし群(男. らの区間の平均速度[m/s]を求めた(図3)。. 子7名)とそれ以外の恐怖心あり群(女子6名,. ロイター板への踏切位置とロイター板の後端との. 男子2名)に被験者を分けた。本研究は跳び箱に. 距離を踏切距離[m]とした。. 対する恐怖度が練習効果に与える影響を検討する. 跳躍パフォーマンスは,跳躍の成否,着手位置. ことが目的であることと,群間で男女比が異なる. および着地位置で評価した。跳躍の成否は跳び箱. ことから,統計解析は群別で行った。. への接触の有無で判別し,接触ありを失敗,なし. 恐怖心の有無が助走パターンとその練習効果に. を成功とした。着手位置は,跳び箱を3等分し,. 与える影響を検討するために,助走速度について,. どの部分に着手したかを,撮影した動画から評価. 恐怖心あり群と恐怖心なし群それぞれで測定時期. し,得点をつけた。得点は,ロイター板に近い側. 2水準(pre,post)×助走区間2水準(5 ― 0区. から着地マットに向かって,1点,2点,3点と. 間,10 ― 5区間)による反復測定分散分析を実施. した。着地位置については,着地マットを4等分. した。交互作用に有意性が認められた場合には. し,撮影した動画からどの部分に着地したかを評. Bonferroniの方法によって有意確率を調整した. 価し,得点をつけた。得点は,進行方向側から. t 検定による多重比較を行った。運動感,踏み切. 1 点, 2 点, 3 点, 4 点 と し た。 こ れ ら は. りおよび跳躍パフォーマンスに対する練習効果が. VideoPad動画編集ソフト(NCH software社製). 恐怖心の有無によって異なるかどうかを検討する. によるスローモーション再生動画を検者が見て評. ために,それぞれの群で跳躍評価の各測定項目の. 価した。. preとpost間の差について対応のある t 検定を実 施した。統計的有意水準は α =.05に設定した。. 606.
(6) 助走の練習が跳び箱の助走と跳躍に及ぼす影響. 上記の統計解析は,IBM SPSS Statistics Version. 検定の結果,5 ― 0区間においてpostでpreよりも. 21(IBM社製)を用いて行った。全てのデータは. の助走速度が高くなる傾向が認められた(pre:. 平均値±標準偏差で示した。. 5.41±.52,post:5.80±.27[m/s],P=.090)。 一 方,10 ― 5区間ではpreとpost間の差に有意性は. 3.結 果. 認められなかった(pre:4.53±.56,post:4.51±.31 [m/s],P=.926)。また,preとpostの両方で,. 3. 1.運動感. 10 ― 5区間よりも5 ― 0区間で助走速度が高かっ. 恐怖心あり群の跳び箱に対する恐怖度につい. た(pre:P=.001;post:P<.001)。. て,preとpost間の差に有意性が認められ,post. 踏切距離については,両群ともにpre ― post間. でpreよりも低い値を示した(pre:61.25±19.59,. の差に有意性が認められ,どちらもpostでpreよ. post:6.88±7.04[%] ,t=8.731,P<.001, 図4左) 。. り も 大 き く な っ た( 恐 怖 心 あ り:pre.96±.35,. 一方,助走のRPEは,preよりもpostの方が高く. post1.33±.39[m],t=-3.242,P=.014;恐怖心. なったが,preとpostの差に有意性は認められな. なし:pre1.33±.37,post1.76±.37[m],t=. かった (pre:30.63±24.41,post:52.50±12.54[%] ,. 7.263,P<.001,図6)。. t=-1.872,P=.103)。 恐怖心なし群の恐怖度のpre ― postの差に有意 性は認められなかった(pre:.00±.00,post:4.29 ±11.34[%] ,t=-1.000,P=.356, 図 4 右 )。 た だし,1名の対象者が練習後に恐怖心を感じるよ うになった。助走のRPEについて,pre ― postの 差 に 有 意 性 は 認 め ら れ な か っ た(pre:51.43± 14.64,post:57.14±11.13,t=-.658, P=.535)。 3. 2.助走および踏切 恐怖心あり群の助走速度について,反復測定分 散分析の結果,測定時期×助走区間の交互作用に 有意性が認められた(F(1,6)=7.774,P=.027, 図5上) 。多重比較検定の結果,5―0区間におい. 図4 群別の恐怖度とRPEの練習による変化. てpostでpreよりも助走速度が高くなった(pre: 4.73±.29,post:5.50±.36[m/s],P=.013)。一. 3. 3.跳躍パフォーマンス. 方,10 ― 5区間ではpreとpost間の差に有意性は. 恐怖心あり群の跳躍パフォーマンスについて,. 認められなかった(pre:4.38±.22,post:4.40±.29. preでは4名が跳び箱に接触し跳躍に失敗した. [m/s] ,P=.894)。また,preではこれらの区間. が,postで は 全 員 が 成 功 し た。 着 手 位 置 の. における助走速度の差に有意性は認められなかっ. pre ― post間変化に有意性は認められなかった. た(P=.268)のに対して,postでは,5 ― 0区間. (pre:1.75±.46,post:1.75±.71[ 点 ],t=.000,. において10 ― 5区間よりも助走速度が高かった. P=1.000,図7左)。着地位置は,pre ― post間. (P<.001) 。. の差に有意性が認められ,postでpreよりも高い. 恐怖心なし群の助走速度についても,測定時期. 値を示した(pre:1.25±.46,post:1.88±.35[点],. ×助走区間の交互作用に有意性が認められた. t=-3.416,P=.011)。. (F(1,6)=7.313,P=.035,図5下)。多重比較. 恐怖心なし群では,全員がすべての試技を成功. 607.
(7) 板谷 厚・小武 真慧・佐野 元基・越智 友亮・玉田 昌平. 図6 練習による踏切距離の変化. 恐怖心あり. 図7 練習による跳躍パフォーマンスの変化. 全員がすべての試技で2点だった。. 4.考 察 preに お け る 恐 怖 心 な し 群 の10 ― 5区 間 と 5 ― 0区間の助走速度を比較した結果,これらの 恐怖心なし. 差に有意性が認められ5 ― 0区間がより速かった。. 図5 練習による助走速度の変化. 対照的に,preにおける恐怖心あり群の10 ― 5区 間と5 ― 0区間の助走速度を比較すると,これら. させた。着手位置のpre ― post間変化に有意性は. の差に有意性は認められなかった。これらの結果. 認められなかった(pre:2.29±.76,post:2.57±.54. は,恐怖心があると踏み切り直前の5 ― 0区間で. [点] ,t=-1.549,P=.172,図7右)。着地位置は,. 加速できないことを示している。また,試技に失. 608.
(8) 助走の練習が跳び箱の助走と跳躍に及ぼす影響. 敗した被験者は,全員が恐怖心あり群であった。. して雄大な第一局面とすることを求めなかったた. これらのことから,試技の成功には,5 ― 0区間. めだと考えられる。見方を変えれば,着手位置得. で加速することが重要であることもわかる。つま. 点に向上が認められなかった結果は,これまで多. り, 恐怖心があると踏切直前で助走を加速できず,. くの教育場面で行われてきた跳び箱の奥の方に手. 跳躍の失敗につながることを確認できる。. を着きなさいとする指導法が,跳び箱に接触せず. postにおいて,すべての被験者が跳び箱への接. に跳躍する上で効果的かどうか疑問を投げかける. 触なく跳躍を成功させた。さらに,両群ともに. ものである。疑問のひとつは,本研究の結果が示. preよりもpostで踏切距離が有意に大きくなった。. すとおり,助走から踏み切りに勢いがあれば,ど. これらのことから,練習プログラムには一定の効. こに着手しても跳躍できてしまうのではないか。. 果があると考えられる。. もうひとつは,跳び箱を跳べない,あるいは,やっ. 恐怖心あり群において,5 ― 0区間の助走速度. と跳べるようになった段階の児童・生徒にとっ. はpreよ り もpostで 高 く な っ た。 さ ら に,preで. て,跳び箱の奥の方に手をつく課題は難しすぎる. は,10 ― 5区間と5 ― 0区間の助走速度に差がな. のではないか。なぜなら,恐怖度が低下し思い切っ. かったのに対して,postでは,5 ― 0区間の助走. て跳躍できるようになったにもかかわらず着手位. 速度の方が高くなった。これらのことから,跳び. 置が変わらなかった本研究の結果は,着手位置の. 箱に対して恐怖心がある者の助走が,本研究で. 決定要因として,跳び越す勢いだけでなく,跳躍. 行った練習を通じて,踏切直前まで加速し続ける. 技術も挙げられうることを示唆するからである。. 勢いのある助走に変化すると考えられる。. 跳躍パフォーマンスは,向上の余地が大きかっ. 恐怖心あり群の助走のRPEは,postで高くなる. た恐怖心あり群で向上に有意性が認められた一方. 傾向にあり,比較的思い切り走れるようになった. で,恐怖心なし群では向上しなかった。助走速度. ことを示している。加えて,恐怖度は大幅に減少. では,恐怖心あり群の5―0区間に有意な向上が認. した。これらの心理的要因が助走速度や跳躍パ. められた一方で,恐怖心なし群では向上したもの. フォーマンスに影響している可能性は高い。しか. の統計的有意性に至らなかった。これらのことは,. しながら,これらの間の因果関係については,断. 恐怖心あり群において練習効果が顕著に認められ. 定することができない。したがって,恐怖度が低. たことを示している。したがって,本研究で採用. 下する結果, 助走を思い切り走れるようになるか,. した練習プログラムは恐怖心がある者に対して効. 思い切り走れるようになるから恐怖度が低下する. 果的な運動介入であると考えられる。恐怖心から. かの2通りの解釈が可能である。ただし,本研究. 助走を加速できずに,踏み切り前に勢いがなくな. では,踏み切りに向かって助走を加速し続け,跳. り跳び越せる感じをつかめないことで,さらに恐. び箱を跳び越せる感じをつかませることをねらい. 怖心を募らせる悪循環を断ち切るために,助走の. に練習を行った。この点を考慮すれば,後者の解. 勢いを高め,跳び越せる感じをつかませることが. 釈を採択することが妥当だと推察する。. 有効だと考えられる。. 恐怖心あり群の跳躍パフォーマンスについて,. 本研究で採用した練習プログラムは,恐怖心が. pre ― post間の着地位置得点の向上に有意性が認. ない者に対しても,助走速度が向上傾向にあり,. められた。助走を踏切直前まで加速できるように. 踏み切り距離も大きくなったことから,より高度. なることで,跳び箱を跳び越す勢いが増加し,跳. な技を習得する場合などで効果を発揮する可能性. 躍距離は伸びると考えられる。その一方で,着手. がある。ただし,練習の過程で,助走の勢いが増. 位置得点に向上は認められなかった。これについ. し,かえって恐怖心を覚える場合も考えられる。. て,本研究では,跳躍技(開脚跳び)そのものの. 実際に,本研究では,preにおいて恐怖心がな. 技術指導において,できるだけ跳び箱の奥に着手. かったが,postで恐怖心を感じると回答した者が. 609.
(9) 板谷 厚・小武 真慧・佐野 元基・越智 友亮・玉田 昌平. 1名あった。この被験者は,助走速度が高まり, 跳躍に決断力を要するほどに至っていた可能性が ある。. 1) 文 部 科 学 省:小 学 校 学 習 指 導 要 領.http://www.. 総合すると,今回行った2種類の運動介入によ り,恐怖心の有無にかかわらず助走から踏み切り にかけての局面を向上させることができたと考え られる。また恐怖心がある人に対しては,跳躍局 面も向上させることができた。このことから従来 の教育現場で行われているような, 「手を跳び箱 の奥の方に着くんだよ」などの着手局面や,「ロ イター板の真ん中を思い切り踏むようにしよう」 などの踏み切り局面だけの指導ではなく,今回 行ったような助走局面の改善を目指した運動介入 を加えることによって,より効果的に児童・生徒 が跳び箱を跳べるようになり得る。 本研究の結果,跳び箱に恐怖心がある者は,跳 び箱の直前で加速できないことが明らかになっ た。さらに,本研究では,踏み切り直前まで加速 する助走を目指し,2種類の運動介入を行った。 1つではロイター板の前に障害物を設置し,それ らを跳び越えてロイター板へ踏み切り,エバー マットへと跳躍させた。もう1つでは歩数を被験 者毎に設定し,1.5m前からロイター板へ踏み切 り,エバーマットへと跳躍させた。その結果,恐 怖心がある者の跳躍に対する恐怖度は減少した。 さらに,踏み切り直前まで加速する助走に変化し た。また,踏切距離が増加し,跳躍パフォーマン スも向上した。これらのことから,本研究で行っ た練習法には一定の効果があると結論づけられる。 本研究は対象者が大学生であった。したがって, 今後,教育現場において児童・生徒を対象に練習 指導を行い,その効果を確かめる必要がある。. 謝 辞 データ提供にご協力くださいました,平成28年 度体育実技2(器械運動)受講者のみなさまに, 深く御礼申し上げます。. 610. 文 献. mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syo/ index.htm, 2017年9月18日閲覧. 2) 文 部 科 学 省:中 学 校 学 習 指 導 要 領.http://www. mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/chu/, 2017年9月18日閲覧. 3)文部科学省:高等学校学習指導要領.http://www. mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/kou/kou. pdf, 2017年9月18日閲覧.. (板谷 厚 旭川校准教授) (小武 真慧 北海道教育大学旭川校卒業生) (佐野 元基 上富良野中学校) (越智 友亮 元町中学校) (玉田 昌平 新富小学校) .
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