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多細胞活動計測と光操作で神経回路の仕組みと働きを探る

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Academic year: 2021

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10 研究内容  礒村研究室では、動 物の行動発現を担って いる大脳の神経回路に おける情報処理の仕組 みと働きを、独自の行 動学的、電気生理学的、 光遺伝学的手法を駆使 して探っています。  例えば、ラットが前 肢でエサをつかんで食 べるとき、いったい脳の中では何が起こっているので しょうか? 皆さんの教科書には、大脳皮質が形成する 「運動指令」が脊髄へ伝わり骨格筋を収縮させて随意運 動を実現する、と書かれていることでしょう。しかしな がら、大脳皮質の一次運動野のなかでは、どのような神 経細胞が、どのような信号をやり取りして、どうやって 「運動指令」を形成するのか、そもそも「運動指令」と いうものの実体は何なのかさえ、まだまったく解明され ていないのです。  そこで、私たちは、ラットの行動発現を制御する大脳 皮質や大脳基底核の神経回路の仕組みを明らかにするこ とを当面の研究目標に掲げています。具体的には、まず 独自に開発した行動実験装置(特許取得)を使って、前 肢でレバーを適切に操作すると報酬を得られる行動課題 をラットに効率よく 学 習 さ せ ま す。 次 に、ラットが行動課 題を遂行していると きに、傍細胞(ジャ クスタセルラー)記 録法、マルチニュー ロン記録法、オプトジェネティクス技術などを組み合わ せて、大脳皮質(運動野、連合野、海馬など)や大脳基 底核(線条体など)の神経細胞の発火活動をミリ秒単位 で計測・操作します。さらに、得られた実験データに理 論的な解析を加えて、大脳皮質や大脳基底核の神経回路 が行動発現を制御す る過程をさまざまな 視点から丹念に調べ 上げていきます。  これまでに、随意 運動の準備と実行の 各局面に運動野の全 層が関与すること、 介在細胞の多くは運動の実行を調節する働きを持つこ と、錐体細胞や介在細胞の間に強い同期的発火がみられ ること、運動の準備と実行に関連した異なるガンマ波活 動がみられること、大脳基底核の 2 つの主経路で運動情 報が報酬期待による修飾を受けること、などの新知見を 報告してきました。 現在は、光遺伝学的 に投射先を同定する マルチニューロン記 録法を開発し応用を 試みているところで す。  従来の脳科学研究 研究室紹介 15

多細胞活動計測と光操作で

神経回路の仕組みと働きを探る

礒村宜和 研究室

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11 は、脳活動を「平均」することにより、脳機能の「局在性」 をあぶり出す方向に進んできました。しかし、脳活動は 時々刻々とダイナミックに変化していますし、単一領域 ごとではなく多領域ネットワーク全体が情報処理を担っ ているのは今や疑いありません。私たちは「静から動へ」 「点から線へ」という視点を大切にして、研究手法を洗 練し、高度な理論的思考を取込み、多少の失敗を恐れず に、真のオリジナリティを追究したいと考えています。 研究体制  礒村研究室は、2010 年 4 月に脳科学研究所において 塚田稔名誉教授(現 在)の研究室を引き 継ぐ形で研究活動を 開始しました。  私(礒村)の助言 のもと、大学院生と ポスドク研究員数名 が、各自の研究課題 に沿って立案した実験に日々取り組んでいます。また、 実験補助員 2 名と事務支援者 1 名が研究活動を日常的に 支えてくれています。  研究室のスペースは十分に広く、マルチニューロン記 録装置や光遺伝学的刺激装置などの最新の実験装置や動 物飼育室を含む実験施設も完備しており、基本的に 1 人 1 台の実験セットアップをとことん使いこなして大量の 実験データを蓄積していきます。実験データは効率よく コンピューター処理された後に、実験者自らが標準的な 生理学的解析を施して、研究の方向性を定め結論を導い ています。必要に応じて、酒井裕研究室の協力を得て高 度な理論的解析も実施しています。また、木村實名誉教 授と大脳基底核の意思決定の仕組みに関する共同研究も 進めています。  知識よりも論理力を育むディスカッションを大切にし ており、礒村研究室、酒井裕研究室、相原威研究室、鮫 島和行研究室の合同で月に数回開かれる「S ゼミ」では、 最新論文を巡って徹底的に議論して研究者の感性を磨き ます。木村名誉教授が主宰する大脳基底核機能研究会で は、国内の第一線の大脳基底核研究者と緊密な連携を 保っています。このように、実験と解析の技術を一通り 習得し、実験と理論の融合を体感する指導カリキュラム が特色となっています。  とはいえ、徹夜続きの困難な実験と解析の日々、なん てことは決してありません。四季折々、お花見やBBQ やたこ焼きパーティーなどの楽しい行事も企画して、適 度に息抜きしつつ次なる実験への英気を養っています。 ぜひ一度、礒村研究室を訪ねてみてください。 略歴  1996 年大阪大学医学部医学科卒業、2000 年京都大学 大学院医学研究科博士課程修了。京都大学博士(医学)。 同年東京都神経科学総合研究所・CREST 研究員/日本 学術振興会特別研究員(米国 Rutgers 大学 Buzsaki 研究 室にて在外研究活動も)。2005 年理化学研究所脳科学総 合研究センター・研究員、2008 年副チームリーダーを 経て、2010 年より玉川大学脳科学研究所・教授。専門 は神経生理学。所属学会は日本神経科学学会、日本神経 回路学会、Society for Neuroscience など。

参考文献

・Saiki A et a1. (2018) Cereb Cortex 28(3): 1024―1038 ・Isomura Y et al. (2013) J Neurosci 33(25): 10209―10220 ・Kimura R et al. (2012) J Neurophysiol 108(6): 1781―1792 ・Isomura Y et al. (2009) Nat Neurosci 12(12): 1586―1593

参照

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