〈研究ノート〉 アフターコロナでインバウンドが
力強く再生するための考察
著者
冨吉 光則
雑誌名
川口短大紀要
巻
34
ページ
63-71
発行年
2020-12-25
URL
http://id.nii.ac.jp/1354/00001293/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja63
1.はじめに
2020 年は日本の歴史上初めて“観光が日本を支える基幹産業”であることを定着させた年と して後年記憶に残るかもしれない。コロナ禍からの経済復興としての施策が,一連の観光に紐づ くサービス産業であったからだ。2013 年に東京オリンピック・パラリンピック招致が決まって から足掛け 7 年,官民の英知を総動員しての総決算,世界に向けて日本の技術・観光・生活・就 労面を PR するためのショーケース,が一瞬にして吹き飛んだ。過去に発生した世界同時多発テ ロ,SARS(重症急性呼吸器症候群),リーマンショック,MERS(中東呼吸器症候群),東日本 大震災,等たびたび襲ってくる危機を知恵と忍耐力で跳ね返してきたわが国の観光産業(当時は おもにアウトバウンドが中心)は,今回ばかりは,感染範囲が広いこと,すぐにはワクチンが開 発される見通しがないこと,人から人への感染で爆発的に感染者が増える脅威であること,に よって観光産業・航空業界だけではなく世界規模での社会・経済活動の休止を余儀なくされてし まった。これまで繰り返し発生してきた豚コレラ,鳥インフルエンザ,狂牛病,等の鳥類家畜の 感染症ではなくヒトヒト感の恐ろしさを実感させられた。現代史において地球上これほど広範囲 に,壊滅的な影響を与えたリスクはなく,まだ出口が見えない中ではあるが,観光の今後を占う 意味でもコロナ禍における近年の国策であったインバウンド業界の現状を分析し,必要な手立て となるであろう推測を可視化しておきたいと思う。2.国策により観光振興が始動
日本は極東アジアに位置し四方を海に囲まれた島国で,海を隔てた隣国は韓国・北朝鮮・中国 (及び台湾)・ロシア。欧州や北中南米のように陸続きでないことから,江戸時代から続く純血主 義とでもいうべき単一民族を維持する一貫した政策であったため,訪日外国人観光客と外国人労 働者の受け入れには歴代政権は手を付けてこなかった。ところが少子高齢化の進捗と財政が釣りアフターコロナでインバウンドが
力強く再生するための考察
冨 吉 光 則
合わなくなってきたことにより,国内消費・国内生産人口ともにこれまでにない政策を打たなけ ればもたないフェーズに入った。歴史的な背景として後進諸国の労働力の受け入れと,経済的な 側面の観光収入による国家財源の確保は先進国が歩むべき道であり,この流れは必然とも言え, 米国における中南米カリブ諸国,欧州における北アフリカ諸国・中近東・東欧旧ソ連諸国,の受 け入れ先としての構造は,後進国から富める国への労働力提供そのものである。アジアにおける 日本はそれらの要素に加えて,急速なアジア諸国の国力の発展による所得増加によって LCC (Low Cost Carrier の略称,格安航空会社の意)の拡大と日本の稀に見る物価安が彼らの憧れか ら日本への渡航意欲に変わっていったものだ。さらにその高度に洗練された島国で必要とされて いる労働力をアジア各国が手を挙げることの両輪により,政府はしなやかに流れを引き寄せた。 2003 年当時の小泉政権時に「ビジットジャパンキャンペーン」が開始され,そこで初めて「イ ンバウンド」なる用語が市民権を得る。外国人観光客を受け入れるために何をどうしたらいいの かさえ知らない外に出たがりの国民が,歴史上初めて自らの力で魅力を発信し,受入環境を整備 し外国人対応をする,それをビジネスにして産業にまで育てようという試みである。そこにノウ ハウはなく,あるのはただ豊かな自然,四季折々の風光明媚な景観と 1200 年の歴史にはぐくま れた礼節・和の生活習慣,勤勉で規律ある国民性,そしておもてなしの心,である。当時はひた すら手探りでのスタートとなったがアウトバウンドが伸びを鈍化させていく中において,インバ ウンドは着実に芽吹きだす。それは奇しくも東南アジア各国の成長カーブと一致する。そしてつ いに国交省の下に精鋭部隊として「観光庁」を立ち上げたのが 2008 年,これが今に続く観光行 政,観光産業育成専門省庁の登場である。その間 SARS・MERS といった感染症の発生,リー マンショックや中東原油価格の高騰といった経済不安,等もある中においては行政が引っ張る格 好で日本のインバウンド政策は徐々にその成果を見せ始め,やがて軌道に乗っていった。 そんな最中,災害の多い日本に 2011 年,世界に衝撃を与えた「東日本大震災」が襲う。初め ての原発施設の破損による放射能汚染の恐怖も相まってインバウンドの成長にとって大きな水を 差すこととなるが,巡り合わせとは不思議である。その復興が徐々に見え始めた矢先の 2013 年 に 2 度目となる 2020 年東京オリンピック・パラリンピックの開催を勝ち取り,時の政権は「復 興五輪」をスローガンに復興日本のための重要な国際的イベントも手に入れる。それを受ける形 で旅行業界最大の団体である日本旅行業協会(JATA)は 2014 年 6 月の役員改選において,満 を持して JTB 代表取締役会長(当時)を JATA 会長に選任し本丸の旅行業界でも臨戦体制が整 うことになった。このような災害と幸運ともいえる巡り合わせを経て,一言でいえば順風満帆と もいえなくはない観光振興の中で,長年我が国の観光業界を支えてきたアウトバウンド各社の取 組のうち大きな潮流となったものをインバウンドとの対比という面においても振り返っておきた い。
アフターコロナでインバウンドが力強く再生するための考察 65
3.アウトバウンドの歴史
第 2 次世界大戦敗退後の闇から立ち上がった日本経済と観光業界の成長は重なる。その観光分 野の歴史の中で 1964 年と 1970 年は忘れてはならない。まず 1964 年,今では第 1 回目というべ きアジア初の東京オリンピックの開催の年だ。政府はこの開催に間に合わせる形で鉄道事業の 「東海道新幹線」を開通させ,東京・新大阪間 4 時間を達成する。この 2 つの大きなインパクト から 1964 年は旅行ブームの静かな幕開けとなる。それから 6 年後の 1970 年,今度はこちらも第 1 回目となる大阪万国博覧会(大阪万博)の開催とジャンボジェットの就航である。この 2 つは 奇しくも国際的大イベントの開催としては共通しているが,新幹線と航空機の「4 時間の壁」で 表される「鉄道 VS 航空機」の競争を引き起すことになり,政治的な意向も反映しながら観光交 通網は切磋琢磨して拡大していく。1970 年は同時に旅行会社各社の国内パッケージ商品の登場 により,消費者にとって「旅行」が身近で一般的なこととして定着していく。時を同じくして高 速道路の整備も進んだが,マイカー時代の到来とそれを利用した個人旅行化はあと 10 年程待た なければならない。そのジャンボジェットの登場により,航空規則及び運賃の両面で空の自由化 が欧米を中心に急激に進み,日本の航空行政はその後追いの形で「アジア・ゲートウェイ構想の 概要」をまとめ地方空港やチャーター便等の対応可能な個所からの追随を目指していくことにな る。ここまでの歴史に「インバウンド」が登場しないのは当時「外人旅行」と呼んで大手旅行会 社の一部の専門部署が発生ベースで対応していたに過ぎないためだ。 旅行商品の主戦場は旅行会社の存在価値を知らしめることになる海外旅行パッケージ商品に移 る。JAL パックが 1965 年に日本で初めて販売され,その後大阪万博開催を経て JTB・日通旅行 (NEC)の LOOK(現 LOOK-JTB,NEC は撤退),近畿日本ツーリスト(KNT,現 KNT-CT)の HOLIDAY,日本旅行(NTA)の MACH(マッハ)の大手 3 社ブランドがしのぎをけずりな がら海外パッケージツアーの時代となっていく。ほどなくジャンボジェットの就航による座席の 大幅な増加と航空自由化により航空運賃が格安と呼ばれるほど下がってくると,販売方法にも変 化がみられる。新聞募集と言われる旅行通販の登場である。多くの会社が乱立する中,関西に本 拠を置く阪急交通社が「トラピックス」ブランドとして抜きん出る。とうてい想像しえない圧倒 的な新聞広告量により海外旅行を全国津々浦々まで知らしめ,それに加え高度な企画力と極限と もいえる販売戦略,日本人観光客への対応を世界中の現地サプライヤーに教育する,等に加え徹 底した品質管理と顧客管理を実現し圧倒的なマーケットポジションを確立,我が国旅行業界の歴 史において阪急トラピックスの果たした功績はある面では絶大であった。 一方,アウトバウンドの歴史においてもう 1 つの雄が HIS の登場だ。ベンチャー起業家・澤
田秀雄氏創業の格安航空券を武器にのし上がった伝説の会社である。時は 1980 年代の後半,欧 米の航空業界の自由化の波にさらされたわが国の航空行政において,航空会社が運賃規則と国際 航空運送協会(IATA)のルールに縛られて出発日の 1 ヶ月前を切った時点で余った航空座席の 販売に苦慮する中,当時はまだ未成熟であった個人自由旅行マーケットの扉を開き「格安航空 券」と銘打って一手に再販を仕掛けたのである。これは顧客管理システムの手法がないと小手先 だけでは実現できないものだ。その基幹となるのが当時はまだ市民権さえ得ていなかったコン ピュータによる社内顧客管理システムの導入。1 席でも多く販売したい航空会社と,少しでも安 く航空券を買いたい個人旅行者のニーズをうまくマッチングさせた画期的な戦略であった。航空 業界の弱みと航空券販売の仕組みを巧みに利用したある意味グレーなビジネス,直行便全盛の時 代に格安な経由便を多用した価格戦略,ともに安売りだけがクローズアップされたが大手旅行会 社がまだ未成熟として取り扱わなかったマーケットに積極果敢に取り組み,市場の転換期を巧み に読み取ったセンスと大掛かりな店舗展開によりマスコミの耳目を集め,それにより若者のニー ズも吸い上げ世間の支持を得た。その後は海外支店直営化,スカイマークエアラインズ・ウォー ターマークホテルの設立を相次いで実現し,設立から 20 年もかからずに 1970 年初頭から続いた 旅行業界の序列を覆すほどの急成長を見せる。阪急交通社・HIS はともにアウトバウンドを舞台 に類まれな戦略に若い力を取り入れたことで業界に確固たる地位を築き君臨することとなった。 大手旅行会社のパッケージツアーブランドによる 1 名から催行するパッケージツアー,阪急交 通社による全国津々浦々への新聞広告で中高年の海外旅行ニーズを掘り起こし,HIS による 20 ~30 代の自由旅行を指向する層の拡大,がアウトバウンドのマーケットに存在することで航空 自由化の流れとともに日本のアウトバウンドは 2011 年以降 1500 万人時代を迎え成長カーブは緩 やかになったものの,2019 年はついに念願の 2000 万人を目標より前倒しで達成するまでに至っ たのである。
4.インバウンドの脆弱性と観光庁の組織作り
現在,日本政府観光局(JNTO)は渡航制限・入国制限が発せられて以降,対前年比 99.9%減 という壊滅的な訪日外国人の集計を発表することを余儀なくされている。東京オリパラを前に 2019 年 1 月より導入した国際出国税により,ビジットジャパン施策以降 17 年にわたる政策の仕 上げとしての財源効果はこれにより十分であったが,その後ろ立てはアウトバウンド 1800 万人, インバウンド 3000 万人がいてこそ初めて財源化できるもの,世界規模で移動制限となると人の 行き来に関して徴収する税収はすぐに絵餅となる。今年度はともかく,次年度の予算に響くのは 間違いないが,五輪開催は何物にも代えがたいインパクトである。この機に借りてきてでも原資アフターコロナでインバウンドが力強く再生するための考察 67 をかけないわけにはいかない。そこでインバウンド政策の現状に触れておこう。 観光庁は従来の観光組織体に対し再編成を行っている。都道府県単位の観光連盟(一部の県に よっては別称を用いることもある)があり,その下に市町村単位の観光協会がある組織体が従来 型でいずれも地方自治体の一組織・部署のため各都道府県の予算事業の範囲であり,悪く言えば 公務員の行う振興策である。極端に言うとその多くは毎年代り映えしないパンフレットを継続し て印刷し,地元の農作物・加工品・工芸品を駅構内やイベント会場等で販売する程度のもので, そこに戦略もなければ事業性も乏しく,前年の繰り返しや隣県との横並び政策を基本とするもの だ。観光庁は地方活性化のため,さらにこの従来型の組織体から大きく変革させるため「DMO」 への衣替えを後押ししてきた。DMO は「稼ぐ観光組織」ともいわれ主体的に稼ぐ観光を実現す る世界的スタンダードの組織づくりだ。これを観光庁の 2 つの資料から具体的に紹介しよう。ひ とつは体制そのものの定義であらゆる地域の産業,各地の観光資源化を高度化させその司令塔と しての役割を果たすことを目指すものである。「地域の官民の関係者との効果的な役割分担をし た上で,例えば,着地型旅行商品の造成 ・ 販売やランドオペレーター業務の実施など地域の実情 に応じて,観光地域づくり法人が観光地域づくりの一主体として個別事業を実施することも考え られる。」とも定義する。もうひとつは以下の表 1 に取りまとめられる。 表 1 観光地域づくり法人(DMO)の定義(観光庁ウェブサイトより抜粋) 「観光地域づくり法人」とは 地域の「稼ぐ力」を引き出すとともに地域への誇りと愛着を醸成する「観 光地経営」の視点に立った観光地域づくりの舵取り役として,多様な関係 者と協同しながら,明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実現す るための戦略を策定するとともに,戦略を着実に実施するための調整機能 を備えた法人。 観光地域づくり法人が必ず 実施する基礎的な役割・機 能(観光地域マーケティン グ・マネジメント) ⑴ 観光地域づくり法人を中心として観光地域づくりを行うことについて の多様な関係者の合意形成 ⑵ 各種データ等の継続的な収集・分析,データに基づく明確なコンセプ トに基づいた戦略(ブランディング)の策定,KPI の設定・PDCA サイ クルの確立 ⑶ 関係者が実施する観光関連事業と戦略の整合性に関する調整・仕組み づくり,プロモーション 名称変更 観光地域づくり法人の登録について厳格化を行ったことから,「日本版 DMO」の名称を「登録 DMO」に変更する。 この中で特筆すべきは基礎的な役割・機能の⑵に KPI の設定と PDCA サイクルの確立,が明 記されている点である。KPI とは数値目標を設定し数字で結果を判定すること,PDCA とは計 画・実行・改善・計画の再修正を繰り返すマーケティング手法だ。いずれも一般的な企業では年 間予算策定時の当然の指標であり,4 半期毎または毎月その進捗をレビューして原因や次の修正
アクションをスピーディーに行動に移すものである。これまでの自治体に所属する組織体ではこ の責任の所在が不明瞭であったため,主体性のない活動が許されていた。より具体的な活動内容 が定義されているので,それを以下に引用しておく(図 1 参照)。
この観光地域づくり法人「登録 DMO」は,2020 年 3 月 31 日時点で「広域連携 DMO」10 件, 「地域連携 DMO」79 件,「地域 DMO」73 件の計 162 件を登録しており,観光地域づくり候補法
人「候補 DMO」は同時点で「地域連携 DMO」35 件,「地域 DMO」84 件の計 119 件を登録し ている,と記載されている。「広域連携 DMO」はこれまでも機能してきた北海道・東北・中部・ 近畿・中国・四国・九州・沖縄の地方ブロックエリアごとの組織体がそのまま DMO 化されてい る(図 2 参照)。中心となる観光施策を立案し,さらに中央省庁・運輸局・都道府県からの予算 を獲得する核となる団体だ。職員はおおむね各県の観光経験豊富な職員および地元旅行会社から の出向者で組織され,いわゆるその地方における旅行・観光のプロが集まった組織体といえる。 図 3 では,「地域連携 DMO」「地域 DMO」の中から北海道地区の登録を紹介した。「地域連携 DMO」は複数の自治体が連携して地域の観光資源を運営する目的が見て取れる。一部協会や連 盟等の既存団体が「DMO」として再編成された形がこれも大いに歓迎である。また「地域 DMO」は単独の自治体がそのエリア内に存在する観光資源に特化して振興する目的である。こ 図 1 DMO の役割と体制の構築定義(観光庁ウェブサイト公開資料より)
アフターコロナでインバウンドが力強く再生するための考察 69 ちらも観光協会や業界の組合が「DMO」に衣替えをして再出発しているようだが,そこには変 革の意思を感じることができるからこれも良とする動きだ。いずれにおいても DMO は従来の都 道府県による観光予算にとどまらず,省庁が発する多くの補助金・助成金事業を「広域連携 DMO」を通じて矢継ぎ早に獲得することもできる。その地域に本当に必要な観光施策を立案し, 次年度からの自走(初年度に獲得した助成金・補助金等の財源のない状態での事業の継続)に移 行する従来の観光行政とは異なる責任の所在をはっきりさせた運営といえる。この新組織への衣 替えをしない従来型の観光行政は早期に解散してその役割を終えるべきである。町村単位にある 「商工観光課」等の名称で役所の中に存在する部署のことで,時代が必要としていない。 また観光客は 1 ヶ所にとどまる旅行形態ではなく幅広い観光地を周遊することで消費額が増 図 2 広域連携DMOの最新登録リスト(観光庁ウェブサイト公開資料より) 図 3 「地域連携 DMO」「地域 DMO」最新登録リスト一部抜粋(観光庁ウェブサイト公開資料より) 〈「広域連携 DMO」10 件〉 申請区分 名 称 マーケティング・マネジメント対象とする区域(自治体単位) 広域連携 (公社)北海道観光振興機構 北海道 広域連携 (一社)東北観光推進機構 青森県,岩手県,秋田県,宮城県,山形県,福島県,新潟県 広域連携 (一社)関東観光広域連携事業推進協議会 福島県,茨城県,栃木県,群馬県,埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県,新潟県,山梨県,長野県 広域連携 (一社)中央日本総合観光機構 富山県,石川県,福井県,長野県,岐阜県,静岡県,愛知県,三重県,滋賀県 広域連携 (一財)関西観光本部 福井県,三重県,滋賀県,京都府,大阪府,兵庫県,奈良県,和歌山県,鳥取県,徳島県 広域連携 (一社)せとうち観光推進機構 兵庫県,岡山県,広島県,山口県,徳島県,香川県,愛媛県 広域連携 (一社)山陰インバウンド機構 鳥取県,島根県 広域連携 (一社)四国ツーリズム創造機構 徳島県,香川県,愛媛県,高知県 広域連携 (一社)九州観光推進機構 福岡県,佐賀県,長崎県,熊本県,大分県,宮崎県,鹿児島県 広域連携 (一財)沖縄観光コンベンションビューロー 沖縄県 〈「地域連携 DMO」79 件〉 申請区分 名 称 マーケティング・マネジメント対象とする区域(自治体単位) 地域連携 (一社)大雪カムイミンタラDMO 【北海道】旭川市,鷹栖町,東神楽町,当麻町,比布町,愛別町,上川町,東川町 地域連携 (一社)ひがし北海道自然美への道DMO 【北海道】釧路市,網走市,帯広市,北見市,根室市,紋別市,中標津町,羅臼町,標津町,別海町,弟子屈町,斜里町,新得町,鹿追町,上川町 地域連携 (一社)釧路観光コンベンション協会 【北海道】釧路市,弟子屈町 地域連携 (一社)千歳観光連盟 【北海道】苫小牧市,千歳市,恵庭市,由仁町,長沼町,安平町 地域連携 (一社)ニセコプロモーションボード 【北海道】蘭越町,ニセコ町,倶知安町 地域連携 (一社)ふらの観光協会 【北海道】美瑛町,上富良野町,中富良野町,富良野市,南富良野町,占冠村 〈「地域 DMO」73 件〉 申請区分 名 称 マーケティング・マネジメント対象とする区域(自治体単位) 地域 (特非)阿寒観光協会まちづくり推進機構 【北海道】釧路市 地域 (一社)岩見沢市観光協会 【北海道】岩見沢市 地域 大雪山ツアーズ(株) 【北海道】上川町 地域 (一財)丘のまちびえい活性化協会 【北海道】美瑛町 地域 十勝川温泉旅館協同組合 【北海道】音更町
す。DMO の特徴も自治体のエリアをまたぐ政策を実行することを可能とする。さらに各観光エ リアで訪日外客が自由に訪問して情報を得る「観光案内所」(認定案内所)の認定も JNTO の範 疇として拡大政策を続けており,2020 年 8 月現在約 1400 ヶ所の認定管理を行っている。このス ポットをさらに 100 ヶ所増設して手薄な道の駅や農漁村にもネットワークを広げたい意向だ。地 域の観光運営と相談窓口となる相談スポットの両面を,国は全国に張り巡らす整備を実行してい る最中で,もう間もなく完了する。全国をくまなく網羅するのは災害発生時に情報収集拠点の役 割も果たすことができるからだ。
5. インバウンドの成長なくして観光の未来はない
わが国の観光産業の歴史は,翻れば旅行会社による国内旅行と海外旅行(アウトバウンド) の歴史そのものであった。阪急交通社,HIS の成長ノウハウを紹介したが,様々なアイデアと努 力と航空会社,及び現地ランドオペレーター(契約により現地手配を代行する現地の旅行会社の こと)との協調により,アウトバウンド取り扱い各社はそれぞれ独自の成長を見せ,その後 2001 年に発生した世界同時多発テロから SARS・MERS 等を乗り越えてきて今がある。自己責 任と絶え間ない工夫により,それぞれが道を切り開いてきた。政府予想を前倒しして 2000 万人 を達成した昨年から来年のオリンピック・パラリンピックの開催を経て,着実にまた成長カーブ を描くと期待されている。一方,それに比べて脆弱なのがインバウンド人気に便乗して乱立気味 の日本国内のインバウンド事業者である。その中心にいるべき観光連盟・観光協会が旧泰然とし ていたため,観光庁は DMO に鞍替えさせ,責任と利益を追求する強い組織への変換を求めてい る最中である。しかし,それを取り巻くサービス事業者の財務的・組織的バックボーンが追い付 いていないのが現状。またインバウンドにおける取扱人数は隣国である中国・韓国が 50%近く のシェアを占める,それは裏返せば,海外からの直手配が可能であり,滞在中も旅行業法に則っ てない不可思議な受入れが横行し,正当に旅行会社やインバウンド事業者が潤うビジネススキー ムには沿っていないことを意味する。最大手と言われる JTB グローバルアンドマーケティング (GMT)では,顧客の中心は欧米豪および中南米で,東南アジアを含むアジア特に中国・韓国は ビジネスにならないと聞く。コロナ禍で業界秩序が再構築されるなら,これらの安い・儲からな いマーケットの原因であるリモート手配を排除し,正当な価格で提供するサービスへの転換を望 む。バルセロナ・パリ・ローマ・ラスベガス・ハワイ,等がその見本とは言わない,しかし欧米 の人気観光地は新参会社や個人が現地の手配をすることはむつかしい,ピーク時には宿泊用客室 を確保することさえ困難であるばかりか,返金不可の全額前払いのルールさえある。行政には見 えない隙間が存在することはやむを得ないとしても,地域に根差した DMO が改善の矢面に立た
アフターコロナでインバウンドが力強く再生するための考察 71 ない限り正常化の見込みはないといえるだろう。 さらに DMO の機能として期待したいことは,地域内のインバウンド事業者を加盟社員として 取り込むことになるが,プレイヤーとしての役割に期待するとともに,財務チェックを含む経営 支援も行いたい。コロナ禍で露呈したのが,政府補助金でさえ設立間もないスタートアップ企業 を救えていない実態があった。秀逸なサービスで着実に実績を上げベンチャーキャピタルからの 出資も受け順調であったがコロナ禍により営業ストップ。営業年数が少ないこと,スタートアッ プ企業のため借入額が多いこと,等により国の補助金や金融機関の融資が受けられない状況が続 き,このままでは倒産の憂き目が目前であったがなんとか資金調達とリストラで持ち直した例も あった。このように規模は小さいが日本人らしいきめ細かいサービスと発想のユニークさで立ち 上がった事業者を簡単に時代がつぶしてはならない。アウトバウンド各社の動きは早く運転資金 の調達に加え雇用調整助成金の調達も 3 月には取りにかかっており,ある程度の長期戦に備えて いた。これらは JATA を中心とした情報展開とサポート体制が奏功した結果である。DMO 組 織の中には地元の金融機関も顔を出していることが多い。財務面のアドバイスや資金調達の方法 を DMO 主体で発信し,事業者の自走・経営維持の支援もその機能にすべきである。 1990 年代~2010 年を経験し,修羅場をくぐってきたアウトバウンド各社およびその中堅・上 級社員もまたこれからのインバウンドをけん引する原動力となるだろう。彼らの多くは 40 歳代 半ばから 50 歳代で観光に関する正しい価値観を持っている。さらに世の中は働き方改革の真っ 最中,副業 OK の時代だ。世界各国の観光の現場を知り,日本(地方)をきちんと分析し導くこ とができる経験値こそ,アフターコロナ時代を強くリードできるピースとなり得る。幸いにもコ ロナ禍ではテレワークやリモートが認知され,ワーケーション・ブレジャーや分散休暇も本格化 する。IT を駆使したネット戦略,AI によるサービスの自動化を推進し,人間が行う仕事は高度 化していかなければならない。そこには若い力も必要だが経験に裏打ちされた観光知識が不可欠 だと認識する必要がある。ベテランの活用により品質を向上させ働き方も多様化すべきである。 参考文献 株式会社 JTB 総合研究所(2018 年)「観光学基礎 観光に関する 14 章」 第 6 章 様々な観光ビジネス―旅行業 p. 98-101 第 11 章 観光政策と観光行政 p. 213-232 参考 URL 観光庁 観光地域づくり法人(DMO) https://www.mlit.go.jp/kankocho/page04_000048.html https://www.mlit.go.jp/common/001337879.pdf https://www.mlit.go.jp/common/001337880.pdf 観光庁 日本の観光の再生に向けた取組について https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kanko_vision/kanko_kaigi_dai37/siryou1.pdf (提出日 2020 年 9 月 23 日)