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社会科教師は現代的な諸課題にいかに取り組むことができるのか : AP 世界史・人文地理デジタル教材『COVID-19』の分析を手がかりに

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社会科教師は現代的な諸課題にいかに取り組むこと

ができるのか : AP 世界史・人文地理デジタル教材

『COVID-19』の分析を手がかりに

著者

堀田 諭, 早瀬 博典, 木下 祥一

雑誌名

埼玉学園大学紀要. 人間学部篇

20

ページ

201-214

発行年

2020-12-01

URL

http://id.nii.ac.jp/1354/00001336/

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えば、2020年最初の四半期の第一波の状況と 現在の状況とでは、医学的・疫学的対応も、 政 府 や 企 業 の 対 応 も、 そ し て 私 た ち の COVID-19への考え方や行動も、まったく異 なる様相を呈している。もちろん、このよう な状況下で教育現場の日々の課題に取り組ん でいくことも喫緊の課題である。一方、社会 科教師として日々変化していくCOVID-19を めぐる問題や課題を取り上げ、未来を担う生 徒と共に考えていくことも重要である。しか しながら、上述した状況によってCOVID-19 を取り上げて教材化・授業化することはより 困難なものになっている。  社会科教師はCOVID-19のような現代的な 諸課題にいかに取り組むことができるのか。 本稿では、この問いに応えるために、世界史 デ ジ タ ル 教 育 財 団(World History Digital Education Foundation)と全米社会科協議会 (National Council for the Social Studies) に よって第一波の最中に作成されたデジタル教 材『COVID-19 Lesson Module: History and Geography of a Pandemic』 (WHDE & NCSS, Ⅰ.問題の所在――新型コロナを教材と して取り上げることの社会科教育上 の課題  現在、COVID-19は、世界各地に影響を及 ぼしており、人類のあり方や生活を、そして 学校教育それ自体をも抜本的に問い直そうと している。しかしながら、COVID-19をめぐ る問題は日々刻々と状況が変化しており、政 府はおろか、専門家ですらその解決策をいま だに見出すことができていない。このような 現代的な諸課題に対して、私たち市民はどの ように応えていけばよいのか。また、学校現 場で教師はこうした問題や課題をいかに取り 扱っていけばよいのか。  COVID-19の感染が拡大している現代社会 は、“infodemic”と呼ばれる情報過多の時代 であり、情報更新速度が速く、どの事実が正 しく、何を判断の基準とすればよいのか、な か な か 見 出 す こ と が で き な い(Sperry & Scheibe, 2020)。COVID-19のような現代的な 諸課題自体も同様の課題を内包しており、例

─ AP 世界史・人文地理デジタル教材『COVID-19』の分析を手がかりに ─

How Can Social Studies Teachers Address Contemporary Issues?

An Analysis of the Digital Teaching Materials “COVID-19” for AP World History and AP Human Geography  

堀 田   諭・早 瀬 博 典・木 下 祥 一

HORITA, Satoru HAYASE, Hironori KINOSHITA, Shouichi

キーワード : 現代的な諸課題、COVID-19、社会科教師、デジタル教材、見方・考え方

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え方」をどのように扱えばよいのかは管見の 限り明らかにされていない。この課題に対し て、本稿では、従前の科目固有の「見方・考 え方」を超えてより多様な「見方・考え方」 から「現代的な諸課題」を検討している 『COVID-19』の分析を通して、「見方・考え方」 の位置づけを再検討していく。  また、近年では、「現代的な諸課題」を授業 で取り扱うにあたって、デジタル教材の活用 が注目されている(田中、2018)。具体的には、 情報が錯綜する課題の場合は、インターネッ トなどを通じて多様な情報に触れることが重 要視されており(堀江、2018)、そのために ICTの活用が求められている。しかしながら、 これらの研究では「見方・考え方」との関連 には十分言及されていない。デジタル教材 『COVID-19』は、「見方・考え方」をデジタ ルツールやICTと関連づけて検討しており、 この事例を取り上げることで、ともするとこ れまで闇雲に情報を検索させるだけで十分な 学習目的を見出せなかった先行研究の課題を 克服することが可能となる。 (2)デジタル教材に関する先行研究 ①デジタル教材の系譜と意義

 近年のICT(Information and Communication Technology)の進化により、デジタル教材は 大きく変化している。山内(2010)は、デジ タル教材を「教育目標の実現のためにデジタ ル化された学習素材と学習過程を管理する情 報システムを統合したもの」と定義しており、 「関連情報へのリンクや動画再生など、アナ ログ教材では実現できなかった表現」が可能 となってきている。文部科学省(2020)によ れば、動画・アニメーション・音声等の活用 による学習者の興味・関心の喚起、調査活動 2020)を事例としながら、近年のデジタルな 教育方法の関係性を捉え直し、見方・考え方 との関連性について検討していく。 Ⅱ.先行研究と研究方法――「見方・考 え方」の位置づけとデジタルな教育 方法の再考 (1)「現代的な諸課題」における「見方・考 え方」の位置づけ  学校教育で取り扱う「現代的な諸課題」の 選択は、各学校と教師に委ねられている。近 年改訂された学習指導要領では、「現代的な諸 課題」として「国際理解、情報、環境、福祉・ 健康など」が挙げられており、教科等横断的 に取り上げることが必要とされる(文部科学 省、2017)。その際、教科等横断的な学びを 構想するためには、「見方・考え方」の位置づ けが重要となる(草原、2020)。とりわけ「現 代的な諸課題」と「見方・考え方」の関連性 を検討することは、各教科等の特性を活かし、 かつその限界を超えた学びを構想する手がか りとして大きな意義をもつ。  その一方、「現代的な諸課題」を取り扱う際 には、教科等横断的に「見方・考え方」が検 討されてきたとは言い難い。むしろ、各科目 固有の「見方・考え方」育成と関連づけられ てきた傾向がみられる。例えば、社会科教育 においては、時事問題を題材とした歴史的な ものの見方の育成(山本、2012)や社会問題 への意思決定を通じた地理的な見方の育成 (泉、2018)がなされてきた。これらは「現 代的な諸課題」を各科目固有の「見方・考え 方」で捉えようとしているが、科目を超えた 「見方・考え方」には焦点が当てられること は少なかった。そのため、教科等横断的に「現 代的な諸課題」を取り上げる際に、「見方・考

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も関連し、言語能力とともに、現代の学習者 の学習の基盤となる資質・能力の一つとして 位置づけられている。  近年では、社会のデジタル化を受け、「デジ タル・シティズンシップ」という概念が議論 されている。Jørring et al. (2018)によれば、 デジタル・シティズンシップは、1)規範的、 2)条件的、3)文脈的なものとして捉えら れている。1は、オンラインの参加に関する 倫理的・道徳的な熟慮を意味する。しばしば 狭く捉えられがちであるが、自身の規範性を 批判的に省察する観点という意味もある。2 は、インターネットへのアクセスが市民に とって不可欠なものであり、権利ですらある ことを意味する。この観点は、インターネッ や協働的な学びの促進、学びにおける時間的・ 距離的制約からの解放、遠隔教育、個々に応 じた学びの実現、学習記録データの収集など がデジタル教材の基盤となるICTの活用の意 義として挙げられる。また、山内(2017)は、 このデジタル教材について、主に教育工学の 分野で蓄積された知見のレビューから、3つ の系譜を示している(表1)。そこでは、現 在の学習指導におけるICT活用は、これらの 系譜を引き継いでおり、技術の進歩による環 境の変化(例えば、扱える機器の種類や数等) はあるものの、学習活動のパターンはほとん ど次の三つの組み合わせで構成されていると する。  このような特徴をもつデジタル教材の活用 によって教科等での学びの質を向上させると ともに、「情報活用能力」の育成が期待される。 情報活用能力について、文部科学省(2015)は、 3観点8要素に整理し(表2)、さらに、そ れを引き継ぎつつ、情報教育推進校(IE-School)の取組から段階別の目標を示してい る(文部科学省、2019)。こうした情報活用 能力は、平成29・30年の学習指導要領改訂と 表1 デジタル教材の研究の系譜 年代 デジタル教材の研究とその概要 背景にある学習観 1970年代後半 ~ 1980年代前半

CAI(Computer-Assisted Instruction)

コンピューターが質問を出し学習者の応答の正誤に応じて適切なフィードバッ クを行うもの 行動主義 1980年代後半 ~ 1990年代前半 マルチメディア教材 学習者が興味関心に応じて教材データベースにアクセスしながら学習を進める もの 認知主義 1990年代後半 ~ 2000年代前半

CSCL(Computer Supported Collaborative Learning)

学習者の議論活動によって社会的な知識構成を支援するもの 社会構成主義 (山内, 2017, 245-249より作成) 表2 情報活用力の観点と要素 観点 要素 情報活用の 実践力 ・必要な情報の主体的な収集・判断・ 表現・処理・創造 ・受け手の状況などを踏まえた  発信、伝達 ・課題や目的に応じた情報手段の  適切な活用 情報の 科学的な理解 ・自らの情報活用を評価改善する  ための理論や方法の理解 ・情報手段の特性の理解 情報社会に 参画する態度 ・情報や情報技術の役割や影響の  理解 ・情報モラルの必要性、情報に対す る責任 ・望ましい情報社会の創造への参画 (文部科学省, 2015, 2より作成) ・学習者に問題を解かせ、正答やヒントをフィー ドバックとして与えるもの ・学習目的で構成された映像など多様な学習資源 を提供するもの ・学習者同士で議論をさせるもの

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を活用したコミュニケーション)を学習者自 ら行うことについては十分検討がなされてい ない。  以上の整理から、デジタル教材の活用につ いて、「(a)教師の側から見た活用が多く、 学習者の側から見た活用の場面(その数や種 類)が少ない」という課題が指摘できる。  また、活用の場面に関連してこれまでの社 会科教育では、デジタル教材の活用が「(b) あくまで教室を主な学びの場とする前提のも とに行われている」という課題も指摘できよ う。伊藤(2017)は、Skypeを活用した教室 外の人々との活動について検討しているが、 このような活用に関する研究の蓄積はまだ少 ない。特に、「学習者が自らオンライン環境を 整備し、議論や協働などオンライン空間で学 ぶ」という視点に立った研究を進めることも 今後求められるであろう。  さらに、デジタル教材はただ使用すればよ いという訳ではなく、情報活用能力の育成や 教科の学びの質の向上等の目的をもった活用 が求められる(例えば、山内、2017; 文部科 学省、2020)。しかし、社会科教育において 情報活用能力に着目した先行研究(例えば、 中村・菅原、2005; 小林、2016)は蓄積が少 なく、「見方・考え方」との関連についても十 分に検討がなされていない。  まとめれば、社会科教育でデジタル教材を 活用することで、「(c)どのように『情報活 用能力』や『見方・考え方』を育成しうるか を分析した研究の蓄積が少ない」という課題 が指摘できる。  以下では、デジタル教材『COVID-19』の 内容やその構成について概観し、上記の先行 研究の課題に即して分析していく。 トに接続できない者を排除してしまう危険性 も同時に伴っている。3は、デジタルな市民 性自体が文脈依存的であり、オフラインの市 民性とも混交し、政治的・文化的・社会経済 的な関係の中で形成されることを意味する。 つまりは、個人的な経験に焦点化する。  これらの観点は、デジタル教材上で、自ら ICTを活用して学びを進める学習者(豊福、 2020)にとっても重要であり、市民性育成を 担う社会科教育にとっても重要である。 ②社会科教育におけるデジタル教材に関する 先行研究  以上を踏まえ、社会科教育においてデジタ ル教材とその基盤となるICTの活用はどのよ うに取り上げられてきたのかに注目して、社 会科教育における先行研究を整理する。堀田 (2018)は、教育におけるICT活用は大きく 分けると教授者としての教師による活用と学 習者による活用に分類でき、前者の研究には 蓄積があるが、後者の学術的研究は蓄積がま だ十分ではないという課題を指摘する。この 課題は、社会科教育にも当てはまる。  例えば、教師の側から見たデジタル教材や ICTの活用については、デジタル教科書や NHK for Schoolの動画、グーグルマップ、パ ワーポイントのスライドなどの様々な資料を 教師が提示する方法が多く見られる(松岡、 2019; 下村、2017; 小林、2016)。  一方、学習者の側から見た活用については、 インターネット上での情報の検索や情報発信、 ICTを活用した地図の作成、配布されたデジ タル教材への書きこみなどの活用がなされて い る( 中 村・ 菅 原、2005; 大 井・ 田 尻・ 西、 2008; 五十嵐、2019)。とりわけ上記の研究では、 ICTのC(Communication)に関わる部分(ICT

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を説明する」と「3.D;結論を出すために地 図や定量的データ、地理空間データにおける パターンや傾向を比較する」に基づいている。 (2)授業構成  デジタル教材『COVID-19』は、各学校や 教室のカリキュラム編成の柔軟性を保障しな がらも、基本的には3日間の授業で構成され ている。  1日目(歴史)は、2020年のCOVID-19と 1918年のスペイン・インフルエンザを比較し て主題を設定し、根拠に基づいた主張を構築 することを目的としている。「新型コロナウ イルスは、スペイン・インフルエンザとどの くらい類似しているか?」を主発問として、 宿題を加えた3つの活動で構成されている。 宿題では、COVID-19についてインターネッ トで自由に調査し、後の活動で情報を共有す るためにデジタル形式でリンク先を保存する。 ウォームアップの活動では、アメリカ疾病管 理予防センター(CDC)のサイトで現在の COVID-19に関する最新の情報を個々の調査 結果と比較し、今後の学習の共通基盤を形成 する。活動1では、ヴァーチャルな形式で個々 の調査結果を共有・議論する。ここでは、T チャート(比較表)を用いて、自身の調査結 果を大きく6つの枠組み(科学・文化・政治・ 人口統計・地理・経済など)から分類する。 活動2では、1918年のスペイン・インフルエ ン ザ に 関 す る 映 像 をYouTubeで 視 聴 し、 COVID-19との類似点がないかメモを取る。 活動3では、関心の異なるメンバーでグルー プを再編成し、関心に応じてスペイン・イン フルエンザの歴史物語を読解する。Tチャー トを用いて、先の6つの枠組みで構成された 物語を読み解きながら内容を確認・共有し、 Ⅲ.WHDE/NCSSデジタル教材『COVID-19 Lesson Module』の内容と構成 (1)概要――AP世界史・人文地理スタン ダードとの関連  『COVID-19』は、冒頭で述べたように、第 一波の最中に開発され、2020年4月にウェブ 上で公開された1)。開発主体であるWHDEは、 本デジタル教材のレッスン・コンテストを開 催し、また教材の各日程に関する導入として ウェビナー・シリーズを開催するなど、教師 の研修に積極的である。この団体は、これま でにもアメリカのAPコースで韓国が取り上 げられることになった際に朝鮮戦争以後の歴 史に関する教材(WHDE & NCSS, 2018)を 開発しており、本教材もAP世界史(College Board, 2019b)及 びAP人 文 地 理(College Board, 2019a)のスタンダードに準拠している。  1日目は、AP世界史スタンダードの内容 「トピック9.2;技術的な進歩と限界:疾病」 に準拠しており、「展開とプロセス(スキル 1)」の傘の中に「関係を構築する(スキル5)」 「比較(スキル5)」「議論(スキル6)」の歴 史的思考スキルが配置されている。  2日目は、AP人文地理の内容「トピック 3.6;現代的な流行の原因」と「トピック2.3; 人口構成」に準拠しており、人文地理の科目 スキル「1.B;地理的な概念、プロセス、モ デル、理論を説明する」及び「2.D;異なる 場所や時間における地理的な類似点と相違点 の意義を説明する」に基づいている。  3日目は、同じくAP人文地理スタンダー ドの内容「トピック7.6;貿易と世界経済」 に準拠しており、人文地理の科目スキル「5.B; 地理的な概念、プロセス、モデル、理論を用 いて様々な地理スケールにおける空間的関係

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表3 『COVID-19 Lesson Module』の授業構成 生徒の活動 資料 教師による支援 1日目   歴史 宿題 ○COVID-19に関してインターネットで自 由にリサーチし、リンク先を保存する。 ・正確な情報にアクセスできるように、メディア、政府、保健機関等を調べておく。 W-UP ○アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のサイトで最新情報を確認する。 ・調査結果と最新情報を比較させることで、最新の共通基盤を形成する。 活動1 ○個々の調査結果をデジタル形式でパート ナーやグループで共有・議論する。 ○Tチャート(比較表)でリソースを比較 のための6つの枠組みに分類する。 ・Google Docやウェブ会議プラットフォーム(Zoom, Skype等)の活用を支援する。 ・科学的、文化的、政治的、人口統計的、地理的、 経済的などの枠組みに分類させる。 活動2 ○1918年のスペイン・インフルエンザに関 する映像資料をYouTubeで視聴する。 ・流行の拡大、死亡率、政府や保健機関の対応についてメモを取るよう支援する。 活動3 ○異なる枠組みに関心をもつメンバーでグ ループを再編成し、スペイン・インフル エンザに関する歴史物語を読解する。 ○各自のTチャートの分類に従って資料を 選択し、読み取った内容を記述・共有す る。 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ・適切にグループ編成されたか確認する。 ・6つの枠組みに応じた歴史資料に適切にアクセス できるように支援する。 ・活動1のCOVID-19のリソースの記述を再構成する ことも可能である。 評価 ○議論の主題を設定し、論拠を箇条書きす る。 ○クラス全体で討論する(宿題も可)。 (主題例)流行は世界中に拡大しているが、死亡率や 政府の対応は異なっている。 2日目   地理 W-UP ○KWLチャートを用いて、COVID-19に関 する既知の事項(K)とこれから知りた い事項(W)を記述する。 ・K列の情報の正確さを確認することで、調査の必 要性や選別の仕方の理解を促す。 ・グループでいつでも共有・編集可能なGoogle Docを 準備する。 活動1 ○COVID-19に関する7つの資料を分析し、 それぞれの資料の問いに答える。 ○COVID-19がいかに拡散したのか自分の 言葉でまとめる。また、L列に発見を記 述する。 ⑦⑧ ⑨⑩ ⑪⑫ ⑬⑭ ・Google Formで答えを記録するためにリンク先を共 有し、個人での分析を促す。 活動2 ○5つの国の人口ピラミッドを分析し、そ れぞれの特徴について説明する。また、 各国を比較して、人口構造の若さの順序 について予想し、各国の年齢の中央値を 確認する。 ○COVID-19の死者数の表と関連させなが ら、ウイルスの拡散に関心をもつべきな のはどの国か、またそれはなぜか説明す る(L列)。 ・トップヘビー(壺型)、ボトムヘビー(富士山型)、 均一分散(釣鐘型)に着目させる。 ・Googleなどの検索エンジンで確認させる。 ・活動の背景となる情報について、YouTubeや関連記 事を見せることも可能である。 ・拡張的な活動として、5つの国の死亡率と老衰以外 の死亡率の調査が可能である。 評価 ○情報の拡散はウイルスの拡散に影響を及ぼすのか、これまで学んだこと(L列) をもとに自分の立場を形成し、小論文を 作成する。 ・オンライン管理ソリューションを用いる場合には、 回答の共有や意見の賛成・反対の確認のために掲 示板を活用させる。 Q.新型コロナウイルスは、スペイン・インフルエンザとどのくらい類似しているのか? Q.私たちはこのグローバル化した世界でいかにしてCOVID-19の拡散を抑制できるのか?

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3日目   地理 宿題 ○自分の家にあるモノの製造国を調べ、地 図に示し、そのパターンから、経済のグ ローバル化やサプライチェーンの影響を 確認する。 ・健康上の緊急事態によって扇動しようとする陰謀 説や党派的なサイトに飛び込まないように、6つの 枠組みに導くようにする。 活動1 ○COVID-19パンデミックのグローバルな 経済的影響を決定する経済データ(製造 業・株式市場・観光産業の影響)を分析 する。 ⑮⑯ ⑰⑱ ⑲⑳ ・資料を分析させるグループ活動では、個別あるい は協働で作業することも可能であり、オンライン 学習でも可能である。 活動2 ○COVID-19の感染拡大に関する各国(イ タリア・アメリカ・韓国;2/15~3/ 16)のデータを分析し、今後の感染者数 を予測する。 ㉑ ㉒ ㉓ ・3つの国の感染者数の合計のグラフと各国の新規 感染者数に関するグラフから3つの分析の問いに 答えさせる。 ・指数関数的増加とSカーブに着目させる(補足資料)。 活動3 ○COVID-19の感染拡大への3つの国の対応に関する資料を手がかりに、活動1・ 活動2を踏まえて、政府の対応が現在や 将来の感染者数の増減にいかに寄与する のか説明する。 ㉔ ・各国の数値データと政府の対応の記述について検 討させ、総合問題に応えさせる。 ・ベン図を用いて各国の対応の違いを比較させる。 評価 ○COVID-19の感染拡大に影響を及ぼす要 因や経済的影響に関する理解を証明す る。 ○各国の今後のGDP成長率を予測する。 ㉕ ・グローバルな影響に関する理解度チェックの5つ の問いに答えさせる。 (WHDE & NCSS, 2020, 4-54をもとに作成) Q.COVID-19パンデミックは、個々の国に対していかなる経済的影響を与えているのか? <資料> 1日目:①「スペイン風邪はなぜそこまで致命的だったのか?インフルエンザの背景にある科学(科学)」②「芸 術とスペイン風邪(文化)」③「新たな伝染病と闘うための政府の対策(政治)」④「史上最大規模のインフル エンザ・パンデミック(人口統計)」⑤「インフルエンザはいかにしてアメリカ全土に広まったのか(地理)」 ⑥「1918年のインフルエンザ・パンデミックの影響(経済)」/2日目:⑦「COVID-19の感染者数の地図」⑧「指 数関数的対一次関数的な増加曲線」⑨「イタリアにおけるCOVID-19の感染者数のグラフ」⑩「カーブを横ばい にする」⑪「航空路線の接続の地図」⑫「CDCからの社会的距離のツイート」⑬「ホワイトハウスの外食を避 けるツイート」⑭「都市化レベルの世界地図」/3日目:⑮「中国で生産されている自動車部品と付属品の上 位5位の市場(2018)」⑯「2020年Q 1におけるCOVID-19発生の推定されている影響」⑰「2020年2月18日か ら2020年3月12日までのダウ平均株価、ユーロ・ストックス50指数、日経平均株価、上海総合指数」⑱「新型 コロナウイルスによる航空会社の財源の損失」⑲「ユナイテッド航空に対する影響」⑳「ロイヤル・カリビアン・ クルーズに対する影響」㉑「2020年2月15日から2020年3月16日までの新型コロナウイルスの感染者の総計」 ㉒「2020年2月15日から2020年3月16日までのイタリア・アメリカ・韓国における新型コロナウイルスの新規 感染者数」㉓「韓国・イタリア・アメリカの新型コロナウイルスの感染拡大への対応」㉔「2020年に予測され るOECD加盟国のGDP成長率の変容」

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存の状況やスマート・ウォッチやノートパソ コンなど影響に関するデータ、2020年の株式 市場の下落の状況や航空産業の業績低下に関 するデータを読み解くことで、COVID-19が グローバル化した経済に打撃を与えたことを 理解する。活動2では、イタリア・アメリカ・ 韓国のCOVID-19の感染者のデータをもとに、 今後の感染者数を予測する。活動3では、上 記3つの国の政府の対応に関する記述や数値 データを比較考察し、それらの対応が将来の 感染者の増減にいかに寄与するのか予測する。 この際、ベン図を用いて各国の関係を表し、 対応の違いを比較する。最後に、COVID-19 のグローバルな影響について、先進国の今後 のGDP成長率の予測などを検討しながら、理 解を深めていく。 Ⅳ.分析と考察 (1)『COVID-19』における「見方・考え方」 の位置づけ  では、以上の内容や構成をもつデジタル教 材『COVID-19』と「見方・考え方」との関 連性はどのようになっているのだろうか。特 に、本教材の各日程における「見方・考え方」 (山括弧部分)がどのような構造として位置 づいているのか検討していきたい。  1日目は、〈歴史〉の「見方・考え方」を基 盤として構成されている。今まさに世界的な 流行の最中にあるCOVID-19をめぐる課題に 対する解決の糸口を、100年前のスペイン・ インフルエンザの歴史物語の分析に求めてい る。その歴史は、大きく6つの枠組みから構 成されており、それぞれ〈科学〉〈文化〉〈政 治〉〈人口統計〉〈地理〉〈経済〉の各観点か らスペイン・インフルエンザをめぐる課題に ついて読解・探究するものとなっている。 最終的な評価課題である議論のための主題を 考え、その論拠を準備し、議論のアウトライ ンを構成する。  2日目(地理)は、「グローバル化した世界 でいかにしてCOVID-19の拡散を抑制できる のか?」という問いの下、COVID-19に関す る資料を分析し、課題に応えるものとなって いる。具体的には、2日目の授業全体を通し て用いるKWLチャートに記入しながら活動 を進めていく。ウォームアップでは、1日目 の学習を通して、COVID-19に関して既知の 事項とこれから知りたい事項について、それ ぞれK列およびW列に記入する。活動1では、 各国の感染者マップとその理由、感染者の増 加曲線とその意味、航空会社の乗継地図、疾 病対策センター(CDC)やホワイトハウスの ツィート(情報拡散の意味)、国別の都市化 などの7つの資料を分析し、COVID-19がい かに拡散したのか自分の言葉でL列に記述す る。さらには、活動2として5つの国の人口 ピラミッドの特徴を分析し、ウイルスの拡散 に関心をもつべき国はどの国なのか、その根 拠をもとに説明する(L列)。最後に、評価 課題として、情報の拡散とウイルスの拡散の 関連性について小論文を作成する。  3日目(地理)は、「COVID-19パンデミッ クは、個々の国に対していかなる経済的影響 を与えているのか」という主発問に対して、 主としてグローバルな経済的影響を決定する ようなデータを分析し、問いに答えていく。 宿題では、自分の家にある身近なモノの製造 国を調べて、どこで製造されているのか地図 で示し、サプライチェーンなど経済のグロー バルなつながりを確認する。活動1では、 COVID-19に 関 す る 経 済 データ を 分 析 す る。 具体的には、アメリカの自動車部品の中国依

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どのような学習が展開できるのだろうか。こ こでは、COVID-19の一つのキーワードであ る「社会的距離(social distancing)」を事例 に各日程の活動について論じていく2)  1日目は、過去と現在の感染症の事例を対 比的に扱いながら、直接的な個人間の「社会 的距離」にどのような影響があったのか学習 している。例えば、スペイン・インフルエン ザのウイルス拡散の原因は、第一次大戦下の 人が密になる軍のキャンプやその行動にあっ たことを学んでいく。また、ウイルスの特定 が科学的に十分なされていない中、保健所や 専門家は教会での礼拝や店の外での密集の禁 止を要請する一方で、戦費を集めるための軍 事パレードを強行し、感染が拡大してしまっ た過去の教訓を学習していく。  2日目は、都市化レベルや航空路線の接続 に 関 す る 主 題 図 な ど の 読 解 を 通 し て、 COVID-19のウイルスの拡散によって都市間・ 地域間の「社会的距離」の意味合いがいかに 変化し、そのことが人間の行動にいかに影響 をもたらしたのか検討していく。具体的には、 都市化した地域は「社会的距離」が近く、感 染拡大の一因となることを根拠にCOVID-19 の中心地はどこなのか検討する学習や、他方 では、ハブ空港の問題点についても考察して いく学習が想定されている。加えて、CDCと ホワイトハウスのツイートの比較から、情報 やその根拠が人間の選択や判断にいかなる影 響を及ぼしているのか検討している。  3日目は、グローバル化した世界の相互依 存 性 に つ い て 学 ん で い く。 つ ま り は、 COVID-19の感染拡大によって、これまで築 き上げてきたヒト(航空産業)・モノ(製造業)・ カネ(株式市場)の国際的なつながりが立ち 行かなくなることを学び、そうした国家間の  2日目は、〈地理〉と〈政治〉の「見方・考 え方」を基盤として構成されている。具体的 には、航空会社の乗継地図や都市化の地図を 読み解きながら感染者との関連を見出したり (〈地理〉)、感染症固有のグラフの見方(〈人 口統計〉)を学んだり、人口ピラミッドの基 本的な見方から各国とウイルスの感染状況を 予測したりしている。これらの地理的な探究 やスキルを踏まえながら、政治機関や保健機 関の〈政治〉的メッセージ(情報の拡散)と ウイルスの拡散とを関連させて捉えさせてい る。  3日目は、グローバル化した世界について 〈地理〉と〈経済〉の「見方・考え方」を基 盤に分析するよう構成されている。ここでは、 製造業・航空産業の各国の相互依存性を〈地 理〉的・〈経済〉的に認識したり、株式市場 の株価の下落からそれを国の〈経済〉の指標 として今後の予測に役立てたりすることを学 んでいく。それを踏まえて各国の感染者数の グラフの見方(〈人口統計〉)を確認し、とり わけ各国の検査に関する政策や財政投入の在 り方(〈政治〉)について探究させている。  以上、1日目は歴史、2日目・3日目は地理 の 科 目 の 中 でCOVID-19を 取 り 扱 う こ と に なっているが、科目内で通例みられる観点を 超えた多様な「見方・考え方」で探究するこ とになっている。また、感染症固有の〈人口 統計〉的な「見方・考え方」や、ともすると 文化史の一部として扱われがちな〈科学〉的 な原因解明のエピソードを物語の主題として 探究させるなど現代的な諸課題に取り組むた めのより多様な「見方・考え方」をカリキュ ラムの中に設定している。  では、本教材の上記のような「見方・考え 方」の位置づけを踏まえながら、具体的には

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器の操作などの技術がなければ、オンライン 空間での学びの場に参加することはできず、 情報を扱う際のスキルや態度を習得していな ければ、学びは深まらないと考えられるから である。(ⅰ)(ⅱ)を踏まえ、「(ⅲ)オンラ イン空間での協働的な学び」を行うことが重 要となる。つまりこれらの要素によって、オ ンライン空間での学びの場を形成することに もつながる。  以下では、これらの要素がデジタル教材 『COVID-19』にどのように組み込まれている かを分析する。 (ⅰ)オンライン空間で学ぶ際の前提となる 技術の習熟  本教材は、オンラインでの学習を前提とし た場合、教材や課題の受取(配布)、課題の 提出(回収)は、オンライン上で行われる。 そのためにここでは、情報を扱う基礎技能 (ファイルの受取、送信、キーボード入力を 始めとした機器の使用方法)を活動の中で学 んでいく。また、教師より配布される資料を オンライン上で確認したり、自らインター ネットで情報を探す活動が設定されたりする など、様々な媒体の情報にアクセスする技術 も求められる。さらに、オンラインの場にお いて学習者自らがグループでの課題や議論を 行う場が設定されており、この場へのアクセ ス方法やこの場を作る方法の技術も学んでい く。  こうした技術の習熟を支援するために、教 師は、情報のURLや、ウェブ会議プラット フォーム(Zoom、Skype等)の使い方の動 画のURLを提示するなどの支援を行う。 「社会的距離」に対して影響を及ぼすことや、 3つの国の政府の対応から、一国・一地域の 決定が他の地域や国際的に影響を与えること を踏まえて、これからの国家や社会の在り方 を予測し、探究するものとなっている。  要約すれば、デジタル教材『COVID-19』 においては、各日程の異なる構成原理から個 人間・都市間(地域間)・国家間の「社会的 距離」について探究し、主として過去・現在・ 未来へと時間軸を緩やかに移行させながらカ リキュラムを拡張させている。 (2)オンライン空間での学びの場の形成 ①デジタル教材『COVID-19』におけるICT 活用の方法と意義の分析  表3に示されるように、デジタル教材 『COVID-19』は、様々なICT活用場面が組み 込まれ構成されている。本節では、本教材に おけるICT活用の方法と意義について分析・ 検討を行う。  デジタル教材の先行研究を踏まえると、従 来の社会科教育においては、ともするとICT の活用のみを目的とし、他方では「見方・考 え方」を働かせることなく、教師主導で、か つ教室空間を前提に行われてきた。そうでは なくて、ICTの活用によって「情報活用能力」 を育み、「見方・考え方」を働かせて、「学習者 自らがオンライン空間で学ぶ」ことはできな いのだろうか。  オンライン空間で学ぶ際には、インター ネットや情報、オンラインでの学びの場にア クセスするための技術やこれらを支える機器 の操作といった「(ⅰ)オンライン空間で学 ぶ際の前提となる技術の習熟」や「(ⅱ)問 題解決や協働の場で情報を扱う際に必要な資 質・能力の育成」が求められる。そもそも機

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のリンクをデジタル形式で記録することが求 められ、オンライン空間での他者への配慮が 想定されている。この際、教師は、オンライ ン・プラットフォームでの学習に参加し、学 習の支援や、実際にGoogle Doc等での資料の 共有、共有された情報の集約と提供などを行 うことになっている。こうした手立ては、オ ンライン空間での他者との意見交流の機会を 生み出し、「見方・考え方」を育成する場の形 成に寄与している。 ②オンライン空間での学びと社会形成  以上のように、デジタル教材『COVID-19』 は、(ⅰ)~(ⅲ)で示したオンライン空間で の学びの場を形成する要素に関連したICTの 活用場面が組み込まれ、構成されている。こ うしたICTの活用を通して学習者の主体的な 問題解決を基盤とした学習を補強、拡張し、 これに関わる支援を教師が行うことが計画さ れている。また、学習者自らオンラインでの 学びの場を形成する活動や、それまでに学ん だ技術や視点を活かす活動が企図されている。 これらは、オンライン空間、あるいはオンラ イン・オフラインの混じりあう空間で社会を 形成する資質・能力の段階的な育成にもつな がっている。  なお、本教材は、教室空間で各日程の課題 に取り組む形での学習ももちろん想定してい る。この場合でも、(ⅰ)~(ⅲ)に関わる ICTの活用は、単なる活用のみならず、学び を補強、拡張する役割を担っている。それゆ え、本教材は、オンライン空間への移行や参 加を視野に入れながら、従来の教室空間中心 の学びを問い直す視点を私たちに与えてくれ ている。 (ⅱ)問題解決や協働の場で情報を扱う際に 必要な資質・能力の育成  本教材でのインターネットの使用について は、単に情報を取得するだけではなく、「最新 情報への更新」や「情報の正確さの判断」が 求められている。具体的には、CDCのサイト で最新情報を確認したり、資料に記載された URLから基データにアクセスして、情報の真 偽や妥当性について判断したりする。  さらに、情報の質を高めるために「自身の もつ情報との比較」、「情報の分類」、「情報の フィルタリング」が行われる。例えば、1日 目ではTチャート、2日目ではKWLチャート、 3日目ではベン図を用いて情報を分類・比較 している。また、科学・文化・政治・人口統 計・地理・経済の6つの枠組みとしての「見 方・考え方」を働かせて、情報を観点ごとに 分類し、その後の交流や協働の足掛かりとし ている。  ただし、以前の学習で用いた「見方・考え 方」でそのまま次の事象を検討すればよいわ けではない。COVID-19のような情報更新性 の高い現代的な諸課題を取り扱う場合には、 「見方・考え方」自体も絶えず変容・拡張さ せていく必要がある3) (ⅲ)オンライン空間での協働的な学び  本教材では、「ウェブ会議プラットフォーム (Zoom、Skype等)を用いたパートナーやグ ループメンバーとの情報の共有や課題の遂 行」や「Google Doc等を用いた共有文書の作 成」、「Google Formへの意見の投稿」、「オンラ インのディスカッションボードへの意見の投 稿」など、オンラインでの学びを前提としな がらも、様々な協働を行う。オンライン空間 で他者と情報を共有するために、事前に情報

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Ⅴ.おわりに――社会科教師は現代的な 諸課題にいかに取り組むことができ るのか  本稿では、日々の変化が著しいCOVID-19 のような現代的な諸課題に対して、社会科教 師がいかに取り組むことができるのか探究し てきた。ここでは、デジタル教材『COVID-19』 を事例として、主として「現代的な諸課題」 を取り扱う上での「見方・考え方」の位置づ けや、学習におけるオンライン空間の在り方、 そこでの教師の役割について検討してきた。  本稿の意義は、次の三点である。  第一は、『COVID-19』の内容構成や「見方・ 考え方」の位置づけの分析を通して、各日程 の歴史や地理といった科目を超えたより多様 な「見方・考え方」から構成されていること を明らかにした点である。現代的な諸課題に 取り組む際にも、これまでともすると科目固 有の伝統的な「見方・考え方」のみから探究 されがちであったが、本教材は科目の範囲を 超えた感染症について検討していくための 「見方・考え方」の活用を含んだものとなっ ていた。  第二は、デジタル教材自体がオンライン空 間での学びを促す支援をしていることを明ら かにした点である。とりわけ、本教材が開発 された時期には、世界各地で休校措置が採ら れるなど、学校での学びは制限され、オンラ イン上での学びを選択するほかなかった。そ のような状況下で、現代的な諸課題としての COVID-19について学習するために、オンラ イン上での学習に焦点を当て、開発されてい た。  第三は、第二の意義と関連して、教室空間 とオンライン空間双方での学びの必要性や、 (3)オンライン上の学びの促進者・ゲート キーパーとしての社会科教師  では、上記のような特質をもつデジタル教 材を取り扱う場合、社会科教師はどのような 役割を担うことができるのだろうか。結論か ら述べれば、社会科教師の役割として、1) オンライン空間への生徒の参加を保障し、2) 「見方・考え方」をカリキュラムの枠組み・ 生徒の足場として捉え直し、3)生徒のニー ズに合わせて同期的・非同期的な活動のバラ ンスをとっていくこと、が求められる。  具体的には、オンラインの学びに機器の取 扱いの制約などで参加できない場合には、オ ンライン・プラットフォームの使い方の支援 やデジタル上で共有できる文書の準備など、 できる限り学習環境を整備し、参加を促す。  他方、例えば生徒がインターネットの表面 的な検索しかできていない場合には、「見方・ 考え方」の枠組みで検討させる過程で検索情 報を洗練させることもできる。  また、デジタル上での話し合いや共同作業 ばかりだと、自らの学びを振り返ることが難 しくなることも予想され、そのような場合に は、同期的・即時的な作業よりも、非同期的 でやや時間間隔が空くウェブ掲示板やメール での添付ファイルの送受信などの作業を取り 入 れ る こ と が 求 め ら れ る(Journell, 2013; 2014)。  すなわち、ここでの教師は、オンライン空 間における生徒の学びの促進者でもあり、生 徒の特性に応じてより適切な形で学びを調整 するゲートキーパーでもあり、双方の役割を 担う必要がある。  また、政治的・文化的・社会経済的な理由 からオンライン上の学びに参加できない者に 対して配慮することも重要な課題となろう。

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徒自身の言葉で検討・表現させることを意味する。 裏を返せば、「見方・考え方」は普遍的なものでは なく、それへの認識自体も変化するものであり、 従前の「見方・考え方」では次の事象について検 討することができず、別の観点や代替的な方法が 求められることを意味している。敷衍すれば、こ のような「見方・考え方」の特性は、科目固有の それだけでは十分検討できない場合も出てくると いうことである。つまり、たとえ科目内で限定さ れている場合でも、教育目的に即してより多様な 「見方・考え方」を保障することが求められよう。 この点に関しては、今後の課題としたい。 【参考文献】

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そこで育成される市民性について検討した点 である。デジタル機器を活用したこれまでの 学習は、教室中心の学びを前提としていたが、 本教材は、オンライン空間まで視野に入れ、 双方の空間での経験を前提としていた。  後者を前提とした場合、たとえオンライン 空間であっても、学習者にとっては真正な状 況であり、そうした空間への参加やその再構 成・再形成をしていく新たな市民像を模索す ることになる。本教材の分析から見れば、こ のような新たな市民を育成する立場から開発 されている。  本稿の課題に応えれば、社会科教師は、以 上の3つの意義、つまりは教育の内容・方法・ 目標にかかわる点を踏まえて教育実践を創造 していくことが求められる。本教材は、その 手がかりを私たちに与えてくれる。  COVID-19の流行によって学校教育や教師 の在り方が問い直され、これまで顕在化して いなかった課題が見えてきている現在、学習 におけるデジタル空間の在り方やそこでの社 会科学習も今一度検討されるべきだろう。 【註】 1)2020年4月4日のNCSSの会員向けメールで共 有されている。また、WHDEやNCSSのHPにもそ れぞれ掲載されている。 2)本教材は、各学校や子どもの実態に合わせて、 教師が主体的かつ柔軟にカリキュラムを変更する ことが可能となっている。 3)例えば、本教材の1日目では、スペイン・イン フルエンザとCOVID-19の各リソースをTチャート で比較する際に、6つの枠組みのいずれかに分類 して注釈をつける活動がある。この枠組みとは、 本稿で言えば「見方・考え方」に該当し、そこで の注釈とは、「見方・考え方」とのずれについて生

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参照

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