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日中道徳教育の比較研究 -小学校の道徳教育を中心に- 利用統計を見る

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日中道徳教育の比較研究 -小学校の道徳教育を中心

に-著者

比嘉 佑典, 王 秋華

著者別名

HIGA Yuten, WANG Qiuhua

雑誌名

アジア・アフリカ文化研究所研究年報

29

ページ

47-66

発行年

1994

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00010114/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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│ │ 小 学 校 の 道 徳 教 育 を 中 心 に │ │ は じ め に 一九九三年十一月、華中理工大学で行われた、 日中国際教育シンボジウ ムにおいて、道徳教育の問題が参加者の関心をよんだ。市場経済下におけ る青少年の道徳の問題は、現代中国教育の大問題だとの指摘もあった。 わゆる﹁経済上昇・道徳低下﹂の問題である。急速に発展をとげる市場経 済下において、物質文明と精神文明のバランスの崩壊が現実のものとなっ ているからであり、拝金主義の横行は人民の道徳心に悪影響を与えている というのである。 一 方 、 日本においては、青少年の非行(問題行動)、 いじめ、登校拒否、 中途退学等の問題が社会及び教育問題として、 その解決が課題になってい る 数年前からアジア諸国の教育を調査してわかったことは、 どの国も教育 日 中 道 徳 教 育 の 比 較 研 究 りh プし

におけるこつの課題を指摘していたことである。 一つは、科学・技術革新 に対応する教育の課題。二つには、国民の道徳教育の問題であった。 そ の こ と は 、 なにもアジアに限ったことだけではない。今は、世界あげて青少 年の道徳教育の問題は、重要な教育課題になってきている。科学・技術、 し、 物質文明の発展と矛盾するかのように道徳・精神文化の廃退が指摘されて いる。学校教育は、今はその両者をいかに統合するのかという、もっとも 難問題に遭遇している。 日 本 、 中 国 は 、 それらの道徳教育について、 ど の ように取り組もうとしているのか、 まず本論では、小学校段階の道徳教育 からみてみたいと思う。 一、両国の道徳教育の変遷 歴史的に教育課程の中で、道徳教育はどのように取り扱われてきたのか、 その概略をみておきたいと思う。 四 七

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日 中 道 徳 教 育 の 比 較 研 究 まず中国に関してみてみると、中国は一九四九年新中国建国以来、学校 における道徳教育に力を入れてきているが、 それらの道徳教育の変遷には、 大きく分けて三つの段階に分けられるという。 第 一 段 階 は 、 一九四九年 J 一九六五年で、建国からプロ文革直前までの 期間である。建国当時の中国は、二つの課題があったといわれる。 一 つ は 、 社会主義国家になったばかりで、 人民に対しマルクス・レ l ニン主義と社 会主義精神を普及徹底させること。二つには、 西側の資本主義諸国からの 封鎖政策への対抗であった。 そうした中で、道徳教育も主にマルクス・レ ーニン主義の基本理論についての政治思想教育の強化と社会主義、集団主 義の道徳価値観の教育であった。 一九五七年、毛沢東主席が打ち出した社会主義教育方針、 つまり﹁われ われの教育方針は教育を受けるものを、徳育・知育・体育のいずれの面で も成長させて、社会主義の自覚を持つ、教養を備えた勤労者を育て上げな ければならない L というもので、徳育は首位におかれるようになった。こ のような道徳重視に加えて、従来あった中国の伝統的な﹁美徳﹂というも のも継承して、伝統的な美徳と社会主義の新しい道徳とを融合させ、道徳 教育を行ったのである。 第 二 段 階 は 、 一九六五年 J 一九七九年の期間である。 つまり、プロ文革 の 時 代 で あ る 。 その時期は混乱した時代であり、学校の授業はすべて閉鎖 され、中国の伝統と文化は封建的な思想だとみなされ、 また外来の思想と 文化は、ブルジョアのものとして否定・批判されたのである。 そして、も つばら政治学習と政治運動が展開された。 当時学校教育は、正常な運営が行われなかったが、 そこでの道徳教育は、 四 ;¥.. 政治学習と政治運動を通して、思想のある方面において浄化と拘束の道徳 的な役割を果したといわれる。 それは、プロ文革期の特別な状況下の道徳 教育というものであった。 第 三 段 階 は 、 一九七九年 J 現在までで、改革開放政策(一九七六年)が 打ち出された以降の段階である。この段階は、道徳教育にとっても一大変 革を迫る時期であった。道徳の領域では二種類の最大の挑戦に直面してい る 一つは、改革開放政策及び今日の市場経済政策によって、経済発展・ 物質文明の建設が精神文明の発展・道徳的進歩に対する挑戦で、大きな衝 撃を与えているということである。二つには、開放政策による西洋・外国 の文化の流入は、中国の伝統的文化への挑戦であり、 そのことが、身分の 上下、老若という人倫関係本位の倫理道徳観・伝統的道徳観に大きな衝撃 を与えている。最近の市場経済政策は、 そ の こ と に 、 一層拍車をかけてい る 。 次 に 、 日本の場合はどうか。 一九四五年の敗戦を期に、道徳教育に大きな改革が行われた。戦前の道 徳教育の支柱であった ﹁ 教 育 勅 語 L ﹁修身﹂等が GHQ の指令によって停 止・廃止された。 か わ っ て 、 一九四六年新憲法が公布され、平和と民主主 義、基本的人権の尊重を根本精神として出発。この憲法の理想の実現は、 根本において教育の力にまつべきものであるとして、 四五年﹁教育基本 法﹂が施行され、 その教育基本法の精神のもとに民主的社会における道徳 の育成も行われるようになった。 一九五一年、教育課程審議会は ﹁道徳教育振興に関する答申(抄)﹂ を 出した。終戦後の成人社会から好ましくない影響もあって、児童・生徒の

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聞に著しい道徳の低下がみられること等を理由に、道徳教育の強化を答申 したのである。﹃道徳教育のための手引書要綱(抄ども同年に出されてい る 一九五八年、同審議会は﹁小学校・中学校教育課程の改善について(抄ど を 答 申 し 、 そこで道徳教育の﹁特設時間﹂をもうけることを提言し、学習 指導要領が改訂され、﹁教科﹂﹁道穂﹂﹁特別教育活動﹂および﹁学校行事﹂ からなる教育課程の編成を行ない、毎週一時間以上の道徳の時聞が実施さ れた。この﹁特設時間における道徳教育は、児童生徒の発達に応じ日常生 活の基本的な行動様式の理解、道徳的心情と道徳的批判力の育成に努め、 他の時間における指導とあいまって、道徳的実践カのかん養を図る﹂とい うもので、指導目標に次の四点をあげている。 (1) 日常生活の基本的な行動様式を理解させ、これを身につけさせるよ う に 導 く 。 (2) 個性の伸長を助け、生活態度を確立するように導く。 (3) 道徳的心情を高め、正邪善悪を判断する能力を養う。 (4) 国家・社会の成員として、 必要な道徳的態度と実践的意欲を高める。 一九六三年、教育課程審議会は寸学校における道徳教育の充実方策につ いて﹂を答申し、当時の国内外の情勢に適合した道徳教育のあり方やその 充実・向上の方策を強調した。 そ の 後 文 部 省 は 、 ﹁道徳の読み物資料につ い て ﹂ ( 一 九 六 五 年 ) 道徳の読み物資料(教材)についての 通 知 を 出 し 、 活用・利用の必要性を説いている。 比較的最近の一九八六年、臨時教育審議会が﹁教育改革に関する第二次 答申(抄どを行ない 初等中等教育の改革の中で、 特に道徳の充実につ 日 中 道 徳 教 育 の 比 較 研 究 いて次のように述べている。 ア 初等教育においては、基本的な生活習慣のしつけ、自己抑制力、 日 常の社会規範を守る態度などの育成を重視する。また、中等教育にお いては、自己探求、人間としてのつ生き方﹂の教育を重視する。 イ 児童・生徒の発達段階に応じ、自然の中での体験学習、集団生活、 ボランティア活動・社会奉仕活動への参加を促進する。 ウ 小・中学校の教育課程における特設﹁道徳﹂については、 その内容 を見直し、重点化を図る。また、道徳的実践カを育成するため、特別 活動等における道徳指導との関連を強化する。 コ ニ 道徳教育の充実に資するため、適切な補助教材の使用を奨励する。 オ 教員養成、現職研修の改善に当たっては、道徳教育に関する教員の 指導力を高めるようにする。 こうした道徳教育の提言を受けて、文部省は一九八九年の﹁学習指導要 領﹂の改訂にともない﹁小学校指導書道徳編(抄)﹂ を 出 し 、 現代の道徳 教育の重視を打ち出した。今回の改訂による道徳教育重視の背景について、 次の三点を指摘している。 第一は、我が国の教育は、情報化、国際化、価値観の多様化などの社会 の大きな変化を考慮し、自ら考え主体的に判断し行動する力を主てる教育 への質的転換を図り、国際社会に貢献し信頼される日本人を育成すること が大きな課題になっていることである。道徳教育は、 そのような教育改革 の基盤となるものであり、これからの生涯教育の推進にとっても重要な役 割を果たすものである。 第二は、科学技術の驚異的な進歩や経済の急激な変化に伴い、人間存在 四 九

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日 中 道 徳 教 育 の 比 較 研 究 そのものの在り方が根本から問われていることである。環境問題や科学の 倫理についての問題とも併せて、人間としての在り方や生き方についての 自覚に立った道徳教育が求められている。 第三は、深刻化する児童生徒の自殺やいじめ、非行などの問題行動の増 加がある。これらの現象は様々な要因が影響して生起するが、根本には、 それらの抑止力ともなる児童生徒の道徳性が育っていないことが指摘され て い る 。 以 上 、 おおざっぱに日中の道徳教育について概観した。市場経済下でゆ れる中国の道徳教育。情報化、国際化、価値観の多様化、科学技術の急激 な発展の中でゆれる日本の道徳教育、 それぞれの国情は異なっていても、 根底においては、科学技術、経済の発展と道徳の問題は共通の課題である といえる。こうした中にあって、現在両国の道徳教育は、 どのように行わ れているのかについてみてみたい。 ニ、現代日中の道徳教育要綱 (1) 中国の小学校徳育要綱 一九八八年七月に﹁小学校徳育綱要﹂が出されているが、これは社会主 義精神文明建設の基礎をなすもので、共産主義思想道徳教育の体系に属す るとして、学校教育の全課程と児童の日常生活の各方面に貫かれた知育、 体育、美育と労働教育の中で行われ、生徒の全面発達の促進と人材の養成 に対して、道徳教育は主導的な役割をはたすものであると述べている。 してその育成の目標について次のようにうたっている。 五

中華全民族の思想道徳素質を高めるため、 はじめに児童が祖国を愛し、 人民を愛し、労働を愛し、科学を愛し、社会主義を愛する思想感情と、社 会公衆道徳を守る意識と文明行為習慣、善良な意志、品格と明朗な性格、 自己管理能力をもち、他人を援助し、集団に奉仕し、善悪の判断能力など を培うこと。理想があり、道徳があり、教養があり、規律正しい社会主義 の公民になるように初歩的な思想品徳の基礎をつける。 そ し て 、 そのような道徳育成の目標に対し、 ﹁ 玉 愛 ﹂ を基本内容として 行われるべきであるとして、十項目にわたる基本要求を掲げている。五愛 とは﹁国を愛し、人民を愛し、労働を愛し、科学を愛し、社会主義を愛す る L ということである。 その五愛を基本内容として社会公衆道徳教育、社 会常識教育を行い、 心に集団があり、 心に人民があり、 心に他人があり、 心に祖国があるという教育に重点をおいて、道徳的品格と文明行為習慣の 訓練と育成を行うとして、次の十項目をあげている。 ① 祖国を愛する教育 自分が中国人民であることが分かり、国旗、国徽を尊敬し、国の領域を 知り、国歌を歌うことができるようにする。郷土の産物、名所旧跡、名人 物、祖国の壮大な山河、悠久の歴史、絢嫡たる文化と社会主義建設の偉大 な成就。改革、開放されたのちの巨大な変化などを分かりゃすぐ教えるこ と。郷土を愛し、祖国を愛し、社会主義を愛する感情と民族の自尊心と民 族の誇りの感情を養成させる。成人して郷土の建設や振興中華のために、 尽力をつくすという理想をもたせること。 かつて中華民族が帝国主 ま た 、 そ 義の威圧と侮辱にあったことがあることと、中国人民がそれと勇敢に戦つ た歴史を教える。 わが国は世界の発達した国の経済水準に比べてまだ大き

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な距離があり、これからの社会主義現代化の建設において想像できない困 難があることを自覚させる。 わが国は多民族の国で、各民族は相互に尊重し、 一律平等で、祖国の統 一こそ各民族の共同の願いであることを知らせ、﹁祖国の利益は何よりも 崇高﹂であることを知り、国の財産を愛護し、祖国を守り、平和を愛し、 侵略戦争に反対することを教える。 ② 中国共産党を愛する教育 中国共産党は過去において、人民を導いて革命闘争に参加し、新中国を 建設した。現在は人民を導いて社会主義現代化建設へ遁進していることを 児童に知らせる。先人のプロレタリア革命者と優れた共産党員の勇敢奮闘、 刻苦創業、公平無私、堅持真理、全心全意人民に奉仕する等の高尚な品格 を学び、中国共産党を愛する感情を培うこと。 中国共産党は、中国少年先鋒隊の創立者と指導者である。先鋒隊隊員は 党の教育を受け、党の善良な子供になるようにする。 ③ 人民を愛する教育 人民は国家の主人公であり、各民族は協力して自国を建設すべきだとい うことを分からせる。 わが国の人民は勤勉智慧、自由と平和を愛する伝統 的な美徳を知り、人民を愛する感情を養成させる。各方面の労働者を尊重 し、全心全意人民に奉仕する人と、改革開放の中の優秀な人材に学び、人 民に奉仕する意識を養成させる。人民を愛するには、身近なことからはじ める。親孝行、教師を尊敬し、老人を尊び幼児を愛し、友人との友情、障 害者には思いやりをもち、人を助けることを心よく思い、各民族の少年児 童、外国の子供たちとも友好的に交際すること。 日 中 道 徳 教 育 の 比 較 研 究 ④ 集団を愛する教育 自分は集団の一員であることが分かり、集団を愛し、集団に関心を寄せ、 集団意識と集団に奉仕する能力を培うこと。集団の決まりに服従し、規律 を守り、集団から与えられた任務を完成するよう努力し、集団の栄誉を大 切にして、集団の栄光めざすこと。集団の中で団結、謙譲、協力、他人に 関心を寄せ、積極的に集団活動に参加し、集団の小主人公になるようにす る 。 ⑤ 労働愛、刻苦奮闘の教育 労働は光栄、怠けは恥。祖国の建設は各方面の労働が必要であり、幸福 な生活は労働によって作られることを分からせる。労働を愛し、 できるだ けのセルフ・サービスや、家事、公共労働と簡単な生産労働に参加させ、 簡単な労働技能を身につけさせ、労働の習慣を培い、公共財産を大切にし、 勤倹節約すること。また先人の刻苦創業のすぐれた伝統を学び、苦しみに 堪え、労に堪える刻苦奮闘の精神を養成させる。 ⑥ 学習に励み、科学を愛する教育 学習は児童の主な任務であり、国民の義務でもあることを分からせる。 祖国を建設し、祖国を保つには科学的知識が必要であることを知らせる。 自分の学習を社会主義現代化を実現する理想と結びつけ、学習の興味と知 識を求める欲望を啓発すること。勤勉で学聞を希求する刻苦勉励と、真剣 な学習態度と学習習慣を育てること。科学を愛し、科学を信じ、迷信を信 ぜず、頭を働かせることを提唱し、手の動作の能力(技能)を育てること。 ⑦ 文明礼儀、規律を守る教育 他人に思いやりがあり、他人を尊重し、親切で礼儀正しく、礼儀用語を 五

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日 中 道 徳 教 育 の 比 較 研 究 使用でき、乱暴なことや喧嘩をしないこと。家庭、学校、社会などの場所 での基本的な生活習慣と礼儀作法をしつけること、学校の規律と公共道徳 を守ること、個人の清潔を保ち、環境衛生を重んじること。公共施設や文 物古跡を保護し、草花、樹木を愛護し、有益な動物を保護して、 よい文明 礼儀、規律を守り、衛生を重んじるよい習慣を養成する。 ⑧ よい意志、品格の教育 誠実、謙虚、寛大で温厚。思いやりの心、明朗澗達、勇敢、堅固で、気 力があり困難を恐れず、気ままにせず、騎らずあせらず、時間を大切にし、 責任感があり、信用を重んじ、自尊自愛、能率を重視し、品格を重んじ、 創造的精神を養成する。 ⑨ 民主、法律観念の啓蒙教育 集団生活の中では人に対して平等に取り扱い、事ある場合は皆と相談し て、小数は多数に服従し、個人は集団に服従すること。少年隊という組織 で批判と自己批判を学習し、少年隊員の民主的権利を行使し、民主的生活 をすることができるようにする。国家に法律があることを分からせる。規 律を守り、法規を守る観念を樹立し、﹁交通規律﹂、﹁治安管理処罰条規﹂、 ﹁道路交通管理条規﹂など小学生と関係のある規定を学習すること。 ⑩ 唯物論弁証法の啓蒙教育 児童をよく指導し、正確に身近な事物を見分ける能力を養うこと。全面 的・発展的に問題を見る方法を身につけること。 (2) 中国における小学生日常行為規範 一九九一年に﹁小学生日常行為規範﹂を出しているが、 それは二

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項目 五 からなり、道徳用テキストの最初のぺ

i

ジに掲げられている。規範項目は 次の通りである。 ① 国旗、国徽を尊敬し、国歌を歌うことができ、国旗を掲揚し、国歌 を 奏 す る 時 、 かしこまって起立し脱帽し注目する。少年隊の隊員なら隊の 敬礼をすること。 ② 老人を尊び、幼児を愛護し、学友との友情、人に対して平等に取り 扱うこと。困難がある人と不具の人を援助すること。他人の民族習慣を尊 重 す る こ と 。 ③ 教師を尊敬し、会うと挨拶し、敬語を使い、先生の、姓と名を合わ せ て 呼 ば な い 。 ④ 親孝行、親思い、親のためにできるだけのことをすること。親と先 輩の正しい教えを聞き、外出するときと帰宅時は必ず挨拶すること。 ⑤ 人に礼儀正しく、言葉使いは丁寧で、標準語、敬語を使用すること。 他人の部屋に入る時はノックし、許可されてから入ること。他人の仕事、 勉強など邪魔せず、人をなぐったり、 ののしったりしないこと。 ⑥ 外国人に対しては礼儀正しく、適度に親切で、外国人のまわりにた む ろ し な い 。 ⑦ 誠実で嘘をつかない。誤りをすると改めること。引き受けた事はち ゃんとやること。勝手に他人の物を取らないようにし、借りた物は返すこ と。公共の物をこわしたら賠償し、拾った物は落とし主に返すこと。 ⑧ 食糧を大切にし、学習・生活用品を大切にし、飲食物、着物にえり ごのみせず、金を無駄使いせず、水、電気を節約すること。 ⑨ 身なりは清潔で、 よく風呂に入る。爪は切り、髪をよく洗い、朝晩

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歯 を 磨 き 、 口 を す す ぎ 、 食事前に手を洗い、 み だ みだりに疾を吐かない。 りに果皮や紙くずを捨てないこと。 ⑩ 就業と休息の時間を守る。学校へは遅刻、早退せず。学校をさぼら ず、病気や用事がある時学校に休暇を願い出る。帰宅は放課後に。 ⑪ 授業の前に学習用具を準備しておく。授業に専心し、大きく発言し、 分からない時は聞くこと。発言の前にまず手を上げ、質問に答える時はは っきりした芦で話す。課外活動時は有益な遊びをする。 ⑫ 放課後は真面目に復習し、宿題を出す時間を守る。きれいに書き写 す。試験の答案ははっきりと自立的にやりとげる。試験の時カンニングは し な い こ と 。 ⑬ 積極的に有益な体育活動に参加し、真面目にラジオ体操をやり、目 の愛護、読み書きの姿勢を正しくすること。 ⑭ 組織されている各種の労働に積極的に参加し、当番は真面目で、教 室、校庭は清潔にすること。 ⑮ 自分のことは自分ですること。自分の衣類用品などはきちんと置く こと。部屋の片付け、洗濯、食器洗いなどの家事ができるようにすること。 ⑮ 交通規律を守る、道路横断は横断歩道を歩くこと。自転車に乗る時 規律を守る。道路、鉄道、港で遊んだり走ったりしない。 ⑫ パス、船に乗る持切符を買う。老人、幼児、病人、障害者などには 席をゆずる。公共場所の秩序を守る。出入の時押し合わない。演技を見る 時、勝手に行ったり来たりせず静かにする。演技の終りに拍手しお礼を言 ヤ 円 ノ 。 ⑮ 公共の物を大切にする。草花、樹木、穀物を大切にする。有益な動 日 中 道 徳 教 育 の 比 較 研 究 物を保護する。学校の机、椅子、建物と文物古跡等に落書きしたりよごし て は な ら な い 。 ⑮ 安全に注意、火遊びしない。危険な遊びをしない。 ⑫ よい書物、新聞、テレビを見ること。たばこをすわず、 お酒を飲ま ず、ばくちをせず、封建的迷信的な活動に参加しないこと。悪人、悪事に あうと学校(又は教師﹀に報告して、勇敢に戦う。 (3) 日本の学習指導要領における道徳 日 本 で は 、 一九八九年に新しく﹁学習指導要領 L が改訂された。今日の 道徳教育は、改訂された指導要領によって行われている。現行の道徳の目 的・目標、内容などはどうなっているのか、以下﹃学習指導要領﹄及び ﹃小学校指導書・:道穂編!﹄にそって取り上げてみたい。 小学校学習指導要領の﹁総則﹂で、道穂について次のように取り上げて い る 。 学校における道徳教育は、学校の教育活動全体を通じて行うものとし、 道徳の時間はもとより、各教科及び特別活動においても、 それぞれの特 質に応じて適切な指導を行わなければならない。 道徳教育を進めるに当たっては、教師と児童及び児童相互の人間関係 を深めるとともに、豊かな体験を通して児童の内面に根ざした道徳性の 育成が図られるよう配慮しなければならない。また、家庭や地域社会と の 連 携 を 図 り 、 日常生活における基本的な生活習慣や望ましい人間関係 の育成などにかかわる道徳的実践が促されるよう配慮しなければならな し、 。 五

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日 中 道 徳 教 育 の 比 較 研 究 以上のことをふまえてつ道徳﹂の項目で、道徳の目標を次のようにうた っ て い る 。 目 標 道飽教育の目標は、教育基本法及び学校教育法に定められた教育の根 本精神に基づき、人間尊重の精神と生命に対する畏敬の念を家庭、学校、 その他社会における具体的な生活の中に生かし、個性豊かな文化の創造 と民主的な社会及び国家の発展に努め、進んで平和的な国際社会に貢献 できる主体性のある日本人を育成するため、 その基盤としての道徳性を 養うこととする。 道徳の時間においては、以上の目標に基づき、各教科及び特別活動に おける道徳教育と密接な関連を図りながら、計画的、発展的な指導によ ってこれを補充、深化、統合し、児童の道徳的心情を豊かにし、道徳的 判断力を高め、道徳的実践意欲と態度の向上を図ることを通して、道徳 的実践力を育成するものとする。 今回の道徳の目標の設定は、先に述べたように三つの時代的状況が背景 になっている。特に道徳教育については、こうした時代的状況の下に、道 徳教育のあり方が一層重視されている。今回の改訂にあたって、道徳教育 で強調された点は六点あって、文部省は﹁小学校指導室田 ll 道徳編

l

﹄ で 、 ﹁道徳の目標 L についてそれぞれ解説を加えているが、 以下文部省の見解 をあげておきたい。 (1) 人間尊重の精神と生命に対する畏敬の念を培う。 ア 人間尊重の精 五四 神人間尊重の精神は、生命の尊重、人格の尊重、人権の確立、 人 間愛などの根底を貫く精神である。 日本国憲法に述べられている ﹁基本的人権の尊重﹂や教育本法で述べられている﹁人格の完成 L さらには、国際連合教育科学文化機関憲章(ユネスコ憲章﹀にいう ﹁人間の尊厳﹂の精神も根本において共通するものである。人間尊 重の精神は、昭和三三年以来、 一貫して道徳教育の目標の中に述べ ら れ て い る 。 民主的社会においては、人格の尊重は、白己の人格のみではなく、 他の人々の人格をも尊重することであり、 また、権利の尊重は、自 他の権利の主張を認めるとともに、権利の尊重を自己に課するとい う 意 味 で 、 互いに義務を果たすことを求めるものである。 しかもこ れらは、相互の人聞を尊重し信頼し合う人間愛の精神によって支え られていなければならない。 このように、児童の内面的な人格の目覚めを普遍的な人間愛の精 神へと高めると同時に、 それを具体的な人間関係の中で、 日々の実 践的態度として伸ばし、 それによって人格の内面的充実を図るとい う趣旨に基づいて、道徳教育の目標では広く﹁人間尊重の精神﹂と いう言葉を使っているのである。 イ 生命に対する畏敬の念 今度の改訂から、﹁人間尊重の精神﹂ と並んで ﹁生命に対する畏 敬の念﹂が新たに加えられたが、 それは、人間尊重の精神をより深 化させようとする趣旨による。 生命に対する畏敬の念は、人間存在そのものあるいは生命そのも

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のの意味を深く問うときに求められる基本的精神であり、生命のか おそ けがえのなさや大切さに気付き、生命あるものを慈しみ、畏れ、敬 ぃ、尊ぶことを意味する。このことによって、自他の生命の尊さや 生きることのすばらしさの自覚を深めることができる。 また、ここでいう生命は、人間のみでなく、すべての生命を含ん でいる。そのことによって、人間の生命が、 あらゆる生命との関係 ゃ、調和の中で存在することを自覚させ、生命あるものすべてに対 する感謝の念や、 それらを通して豊かな心を一層育てることができ る したがって、人間尊重の精神は、生命に対する畏敬の念が目標に 加わることによって、さらに深まりと広がりをもってとらえられる のである。今日問題化している自然環境の悪化や子供の自殺やいじ め、非行などを考えるとき、 より重視されなければな ﹂ の こ と が 、 らないのでおる。 (2) さらに個性豊かな文化の創造に 伝統的な文化を継承し、発展させ、 努める人聞を育成する。 道徳教育の目標には、 また個性豊かな文化の創造に努めることが掲げら れている。新しい文化を生み出すには、古いものを改めていくことも必要 で あ る が 、 まず先人の残した文化的遺産の中に優れたものを見いだし、 れを継承し、発展させることが大切である。 よりよく生きたいという人間の個人的、社会的な願いを実現するために は、まず先人の残した文化的業績とそれを生み出した精神に学び、 そのこ とで自らを向上させていくことが必要である。また、これからの国際社会 日 中 道 徳 教 育 の 比 較 研 究 の中で主体的に行為するためには、深い国際感覚をもち、広い国際的視野 に立ちながらも、自己がよって立つ基盤にしっかりと根を下ろしているこ とが必要である。このためには、我が国の文化と伝統に対する関心や理解 を深め、尊重するとともに、世界と日本とのかかわりについて考え、 日 本 人としての自覚をもって、新しい文化の創造と社会の発展に貢献しうる能 カや態度が養われなければならない。 (3) 民主的な社会及び国家の形成発展に努める人間を育成する。 民主主義の精神は、主権在民、基本的人権の尊重、自由、平等などの実 現によって達成することができる。これらは、法によって規定され保障さ れることによって維持されるだけならば、 一人一人の日常生活の中で真に 主体的なものとして確立されたことにはならない。 そ れ ら は 、 一 人 一 人 の 道徳的自覚によってはじめて達成されるものである。 したがって、道穂教育においては、法律的な規則やきまりそのものを取 り上げるよりも、 それらの基盤となっている人間の道徳的な生き方を問題 にするという点に特に留意する必要がある。 (4) 平和的な国際社会の実現に貢献できる人間を育成する。 教育基本法の前文にも述べられているように、﹁世界の平和と人類の福 祉に貢献﹂することは、 日本国憲法において定められた日本国民の決意で そ あ る 。 平 和 は 、 人間の心の内に確立すべき道徳的課題でもある。 日常生活の中 で社会連帯の自覚に基づき、 あらゆる時と所において自他協同の場を実現 していく努力こそ、民主的で平和的な社会及び国家を実現する根本である。 このような努力や心構えを、広く国家開ないし国際社会に及ぼしていくこ 五 五

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日 中 道 徳 教 育 の 比 較 研 究 と 、 が 、 また国際社会に平和をもたらし、人類の福祉に貢献することになる。 (5) 主体性のある日本人を育成する。 これからの学校教育においては、豊かな道徳性を身に付け、社会の変化 に主体的に対応できるとともに、国際社会において自らの役割と責任を果 たすことのできる日本人の育成が求められている。主体性のある人間とは、 自主的に考え、自律的に判断し、決断したことは積極的にしかも誠実に実 行 し 、 その結果について責任をとることができる人間である。これは人間 としての在り方の根本にかかわるものであるが ﹂こで特に日本人として 示しているのは、 日本人としての自覚をもって新しい文化の創造と民主的 な社会の発展に貢献するとともに、国際的視野に立って世界の平和と人類 の幸福に寄与し、世界の人々から信頼される人間の育成を目指しているか らである。学校における道徳教育においては、社会の変化に主体的に対応 し国際社会に生きる主体性のある日本人を育成することが必要である。 (6) 道徳性を養う。 道 徳 性 と は 、 人間としての本来的な在り方やよりよい生き方を目指して なされる道徳的行為を可能にする人格的特性であり、 人格の基盤をなすも の で あ る 。 それはまた、人間らしいよさと言えよう。 ところで、道徳性は一般的に道穂的心情、道徳的判断力、道徳的実践意 欲と態度などによって構成されていると言われる。 道徳的心情は、道徳的価値を望ましいものとして受け取り、善を行うこ とを喜び、悪を憎む感情のことであり、善を志向する感情でもある。 そ れ は、道徳的行為への動機として強く作用するものであるから、道徳的心情 を養うことは、道徳性を高めるための基礎的要件である。 五 六 道徳的判断力は、 それぞれの場面において善悪を判断する能力であり、 人間として望ましい生き方をしていくために必要な基本的能力である。的 確な道徳的判断力をもつことによって、 それぞれの場面において機に応じ た道徳的行為をすることが可能になる。 道徳的実践意欲と態度は、道徳的心情や道徳的判断力によって価値があ るとされた行動をとろうとする傾向性を意味する。道徳的実践意欲は、道 徳的心情や道徳的判断を基礎とし道徳的価値を実現しようとする意志の働 きであり、道徳的態度は、 それらに裏付けられた具体的な道徳的行為への 身構えということができる。 なお、このほかに、道徳的習慣が考えられるが、これは長い間繰り返し て行われているうちに習慣として身に付けられた望ましい日常的行動の在 り 方 で あ り 、 その最も基本となるものが基本的な生活習慣と呼ばれている。 これがやがて、第二の天性とも言われるものとなる。 これらの道徳性の諸様相は、 それぞれ独立した特性ではなく、相互に深 く関連しながら一つの全体を構成しているものである。 したがって、これ らの諸様相が全体として密接な関連をもつよう指導することが大切である。 そして、道徳的行為が児童自身の内から自発的、自律的に生起するよう道 徳性の育成に努める必要がある。 (4) 日本の道徳教育の内容 (1) 四つの視点 道徳の内容は、児童の道徳性を次の四つの視点からとらえ、 その視点か ら内容項目を分類整理し、内容の全体構成及び相互の関連性と発展性を明

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確にしている。 1 主として自分自身に関すること。 2 主として他の人とのかかわりに関すること。 3 主として自然や崇高なものとのかかわりに関すること。 4 主として集団や社会とのかかわりに関すること。 (2) 内

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廿 ︹ 第

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学年及び第

2

学 年 ︺ 1 主として自分自身に関すること。 (1) 健康や安全に気を付け、物や金銭を大切にし、身の回りを整え、 がままをしないで、規則正しい生活をする。 (2) 自分でやらなければならない勉強や仕事は、 しっかりと行う。 (3) ょいと思うことは進んで行う。 (4) うそをついたりごまかしをしたりしないで、素直に伸び伸びと生活 す る 。 2 主として他の人とのかかわりに関すること。 (1) 気持ちのよいあいさつ、言葉遣い、動物などに心掛けて、明るく接 す る 。 (2) ム身近にいる幼い人や高齢者に温かい心で接し、親切にする。 (3) 友達と仲よくし、助け合う。 (4) 日ごろ世話になっている人々に感謝する。 3 主として自然や崇高なものとのかかわりに関すること。 (1) 身近な自然に親しみ、動植物に優しい心で接する。 (2) 生命を大切にする心をもっ。 日中道徳教育の比較研究 わ (3) 美しいものに触れ、 すがすがしい心をもっ。 4 主として集団や社会とのかかわりに関すること。 (1) みんなが使う物を大切にし、約束やきまりを守る。 (2) 父母、祖父母を敬愛し、進んで家の手伝いをする。 (3) 先生を敬愛し、学校の人々に親しんで、学級の生活を楽しむ。 ︹ 第 学

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年及び第

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学 年 ︺ 1 主として自分自身に関すること。 (1) 自分でできることは自分でやり、節度のある生活をする。 (2) よく考えて行動し、過ちは素直に改める。 (3) 自分でやろうと決めたことは、粘り強くやり遂げるようにする。 (4) 正しいと思うことは、勇気をもって行う。 (5) 正直に、明るい心で元気よく生活する。 2 主として他の人とのかかわりに関すること。 (1) 礼儀の大切さを知り、 だれに対しても真心をもって接する。 (2) 相手のことを思いやり、親切にする。 (3) 友達と互いに理解し、信頼し、助け合う。 (4) 生活を支えている人々や高齢者に、尊敬と感謝の気持ちをもって接 す る 。 3 主として自然や崇高なものとのかかわりに関すること。 (1) 自然のすばらしさや不思議さを知り、自然や動植物を大切にする。 (2) 生命の尊さを知り、生命あるものを大切にする。 (3) 美しいものや気高いものに感動する心をもっ。 4 主として集団や社会とのかかわりに関すること。 五 七

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日中道徳教育の比較研究 (2) (1) 約束や社会のきまりを守り、公徳を大切にする心をもっ。 働くことの大切さを知り、進んで働くようにする。 (3) 父母、祖父母を敬愛し、家族みんなで明るく楽しい家庭をつくるよ う に 努 め る 。 (4) 先生や学校の人々を敬愛し、明るく楽しい学級をつくるように努め る 。 (5) 郷土の文化や生活に親しみ、郷土を大切にする心をもっ。 ) c u ( 我が国の文化や伝統に関心をもち、国を大切にする心をもっ。 ︹ 第

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学年及び第

S

学 年 ︺ 1 主として自分自身に関すること。 (1) 生活を振り返り、節度を守り節制に心掛ける。 (2) より高い目標を立て、希望と勇気をもってくじけないで努力する。 (3) 自由を大切にし、規律ある行動をする。 (4) 誠実に、明るい心で楽しく生活する。 (5) 進んで新しいものを求め、 工夫して生活をよりよくするようにする。 (6) 自分の特徴を知って、悪い所を改め良い所を伸ばすようにする。 2 主として他の人とのかかわりに関すること。 (1) 時と場をわきまわえて、礼儀正しく真心をもって接する。 (2) だれに対しても思いやりの心をもち、相手の立場に立って親切にす る 。 (3) 互いに信頼し、学び合って友情を深め、男女仲よく協力し助け合う。 (4) 謙虚な心をもち、広い心で自分と異なる意見や立場を大切にする。 (5) 日々の生活が人々の支え合いや助け合いで成り立っていることに感 五八 謝 し 、 それにこたえるようにする。 3 主として自然や崇高なものとのかかわりに関すること。 (1) 自然の偉大さを知り、自然環境を大切にする。 (2) 生命がかけがえのないものであることを知り、自他の生命を尊重す る 。 (3) 美しいものに感動する心や人間の力を超えたものに対する畏敬の念 を も っ 。 4 主として集団や社会とのかかわりに関すること。 (1) 身近な集団に進んで参加し、自分の役割を自覚し、協力して主体的 に責任を果たす。 (2) 公徳心をもって法やきまりを守り、自他の権利を大切にし進んで義 務を果たすようにする。 (3) だれに対しても差別をすることや偏見をもつことなく公正、公平に し、正義の実現に努める。 (4) 働くことの意義を理解するとともに、社会に奉仕する喜びを知って 公共のために役立つように努める。 (5) 父母、祖父母を敬愛し、家族の幸せを求めて、進んで役に立つよう に す る 。 (6) みんなで協力し合いよりよい校 先生や学校の人々への敬愛を深め、 風をつくるように努める。 (7) 郷土や我が国の文化と伝統を大切にし、先人の努力を知り、郷土や 国を愛する心をもっ。 (8) 外国の人々や文化を大切にする心をもち、 日本人としての自覚をも

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って世界の人々と親善に努める。 、日中道徳教育の基本的な理念の比較 道徳教育の理念は、根本においてはそれぞれの国のあり方に規定される といえるだろう。民主主義・自由主義・資本主義経済圏である日本と、社 会主義・共産主義経済圏である中国とでは、 そのよって立つ主義・思想・ イデオロギーが、道徳及び道徳教育の目的・内容を規定している。これま で述べてきたように、中国においては、 まず第一に社会主義国家現代化建 設に重点がおかれている。社会主義国家(祖国)を愛する道徳教育と、逆 にそういう国家に威圧を加える帝国主義への勇敢な抵抗と挑戦ということ を歴史的にも、現実的にも教育することを重視する。 そのためには、国内 の各民族の団結と祖国の利益を愛護することを教え、革命闘争に参加し人 民を導いて新中国を建設した共産党を愛する感情・精神を場うことに主眼 がおかれている。合わせて、唯物論弁証法の啓蒙教育を通して、 マ ル ク ス 主義・社会主義のイデオロギーの形成に力をそそいでいる。 いわば、政治 思想教育に重点がおかれている。小学校道徳教育要綱の十項目中、 一 項 目 、 二項目、十項目がそれである。 日本の状況とくらべて特色あるものに、 五項目の労働愛の教育、 四項目 の集団を愛する教育などがある。両者は、もちろん日本の教育においても 重視されている。たとえば、勤労体験学習や学級・学校の生徒集団におけ る民主的集団・集団的適応力の育成は重視されている。 しかし、中国の道 徳教育でいわゆる集団を愛する教育は、 その内容において異なっている点 が あ る 。 つまりこの集団主義は、民主的集団か共産主義的集団かの根本的 日 中 道 徳 教 育 の 比 較 研 究 な相違にもと手ついているからである。 労働愛の教育についても、 日本での事情とは異なっている。 日本の場合 は、勤労ということばを使用しているが、文部省の見解などをみてみると、 勤労を通しての精神錬磨といった精神主義的な色彩が強いのに対して、中 国 の そ れ は 、 むしろ本物の労働、 つまり労働技能、労働習慣、労働の必要 性の教育である。 他の項目については多少微妙な違いはあっても、 日中間わずどの国でも 必要とされる道徳的内容である。 日本と比較して中国の場合は、社会主義 現代化建設という国内の課題に注目している傾向が強く、最近では市場経 済下の社会主義国家建設へとかわってきている。 そのことは、内外の国際 情勢と中国の経済復興の課題が内容を規定しているのかも知れない。 他 方 、 日本の道徳教育の今日的状況をみてみると、前述したように﹁情 報化﹂﹁国際化﹂﹁価値観の多様化﹂﹁ハイテク化﹂ の状況にあって、 そ れ らの状況にどう対処したらいいのかという教育改革の大前提のもとに、道 徳教育も打ち出されているということである。国際化の時代に、平和的な 国際社会の実現に貢献できる人間の育成は重要なテ l マになっている。 そ こでは、国際的理解、国際的視野、国際感覚、 いわゆる国際的人間が指向 さ れ て い る 。 さらに﹁価値観の多様化﹂は、国民にとってさまざまな生き方を生み出 している。中国のように一つのイデオロギーではなく、多くの思想・価値 観が選択できる日本においては、道徳教育で問題なのは、個々の人間の ﹁生き方﹂についてである。 思 想 の 自 由 、 信教の自由の国日本社会では、 道徳教育も国家のためとか民主的自由主義国家建設のためというよりも、 五 九

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日中道徳教育の比較研究 ひとりひとりの人間の生き方に重点、がおかれている。 し た が っ て 、 当 一 妹 山 の ことながら﹁人権の確立﹂ということが重要視される。道徳教育の理念で も述べたように﹁人間尊重の精神﹂﹁生命に対する畏敬の念 L ﹁民主主義の 精神(主権在民、基本的人権の尊重、自由、平等)﹂﹁主体性のある日本人 の育成 L 等は、民主的国家・社会に生きる主体的人間の形成をめざしたも の で あ る 。 こうした点は、中国の道徳教育との力点の相違である。米中間でことあ るごとに米国の大統領が、中国にもち出す注文は﹁人権問題しである。 のことは、中国における基本的人権が充分に保障されていないことを物語 っ て い る 。 そうした民主主義的な人権の教育は、現代中国においては啓蒙 的段階にとどまっている。 このようにみてくると、逆に日本の道徳教育では、国家(祖国)を愛す る教育はないのかと問われそうだ。ないわけではないが、中国のように、 そのことを道徳教育の前面に打ち出すにはいささか抵抗があり、学習指導 要領の改訂のたびに議論となるところである。何人も、国を思う気持はも っ て い る 。 しかし、過去の日本の歴史が物語るように、極端な軍国主義・ 国家主義が内外に被害を与えたように、歴史的事実に対する国民の警戒心 が、今日になっても充分いやされているとは思えない。教科・道穂教育に 愛国心を導入することに、今日なお抵抗が強い状況にある。 その象徴的例 は、﹁日の丸・君が代﹂の取り扱いをめぐる論争であり、抵抗である。 回、日中道徳内容の比較 日本の道徳教育の内容は、前述したように、 四つの視点を中心に、 詳L,. 寸ー ( 表

1

)

日中道徳教育の内容比較 六 O 東京都版 4 年生の道徳教材 そ 1 . 花さき山 2 . クジラのなみだ 3 . なしの実 4 . らくがき 5 . アリジゴクが生き返ったら 6 . お見まい 7 . 通行止め 8 . 徳べえざくら 9 . 貝がら

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金色の魚 H . 夕飯のしたく

u .

フィンガーボール 日.昭和のかわら H . あき子の絵地図 日.声にならないあいさつ 日.わたしののれん

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絵はがきと切手 国.すもうの先生 四.つるの飛ぶ日 加.カメの横断 乱.山がくけいび隊 2 . ふり上げた定規

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よわむし太郎 M . ししゅうのあるセーター お.親子せいそう お.雨のパス停留所で 幻.朝のマラソン 沼.チューリップの球根

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写真の道ひとすじに 却.わすれであった本 担.雪かき 湖北省 4 年生﹁思想品徳﹂内容 1 . 花国山でおこした帝国主義の 罪悪 2 . 漢口速国治外法権の闘争 3 . 人々の心に残る烈土季玉安 4 . 人民の子弟兵が人民に奉仕す る 5 . 集団の栄誉一を大切にする 6 . 自らの才能を開発する 7 . 成長の要は教師の指導にある 8 . 困った人を助ける 9 . 責任感をもつこと

m .

時間を大切に 日.自分の過ちを認める勇気のあ る 子

u .

他人の意見を謙虚にきく 日.仲間の過ちに正しく対応する

u .

節約のこのましい習慣 日.すぐれた共産党李大将 日.真心をもって人民に奉仕する 雷峰 ロ.共に豊かな生活をめざして頑 張るリーダー M . 各民族人民が仲良くつきあう こ と

u .

民族の習慣を尊重する 却.新旧社会の天地の相違 2 . 常に他人のために考える程新

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泣.ぬれた紙ぶくろ お.人間愛の金メダル M . あと泊分おくれたら お.先生の歌を作った お.小説を書きたい 幻.鼻取地ぞう 招.養老畑 拘.粕谷を愛した徳富麗花 安

m .

身障者を助けいたわる ぉ.困難を乗り越え学習する M . 労働は光栄怠惰は恥じ ぉ.信用 部.名所旧跡を大切にする 幻.公共施設を大切にする 却.公益労働に積極的に参加する 年から六学年まで、発達に即して内容が構成されている。中国の場合は、 前述した﹁小学校徳育綱要﹂寸小学生日常行為規範﹂ を中心に内容が編成 されている。ちなみに、両国の四年生の教材についてみてみると、表 1 の 通 り で あ る 。 そこですぐ気づくことは、基本的理念の比較と同様に、内容的にもそれ らの理念に従って構成されているということである。 日本の四つの視点は、 自分のことや身のまわりのこと、自分と友人、集団、社会、自然等との関 係 に 力 点 、 が お か れ て い る 。 それに対して、中国の場合は、政治思想・イデ オロギ 1 、社会主義のために戦う人民の意識・態度の育成といった色彩が b H 崎 、 。 ユ 凶 よ し V 小学生日常行為規範の内容は、 日本と同様生活指導的な内容になってい る。しかし、道徳のテキストをみるかぎりでは、内容と規範との聞にはひ らきがある。実際に、中国滞在一年間を通じてみているかぎり、テキスト の内容が子どもの生活現実に浸透しているとは思えなかった。テキストの 内容が、道徳的自己形成にどれほど現実のものとして役立っているのか、 ということを二、三の父母に聞いてみた。 またある新聞記者にも問うてみ 日 中 道 徳 教 育 の 比 較 研 究 た。答えはこうである。 思想教育や政治学習はむつかしい。 「 主'-弓」 生 子どもからテキストの内容についていろいろ質問される、が、 その内容の高 さ、難しさは子どもには理解困難ではないかと思うにとの返答であった。 日本の小学四年生の成長発達・理解度からおして考えてみても、やはり困 難な内容だといってよいだろう。子どもたちの日常生活に接し、 そこで見 るかぎりにおいては、充分理解しているとはいえない。テキストの内容に ついて筆者の質問に、頭をかしげる子どもたちがいたことも事実である。 父母の意見は、政治、思想教育も大切だが、もっと日常生活での道徳・生 活指導的なことをしっかり身につけさせてほしいとのことであった。 他方日本では、生活指導を通じ、 また道徳の時間でも、 日常生活の行動 規範について理解させ、 それが自分の生活に役立つようにと指導しても、 子どもの実生活において、 それらがどれほど浸透しているかは疑問視され て い る 。 非 行 、 いじめ等の問題が増加している現実が、道徳教育のあり方 をきびしく問うている一面もある。中国でも、実生活での子どもの行動は、 規範通りにはいかず、多くの教師、 父母の悩みのたねになっている。 そ の ことは、何も、中国や日本に限ったことではない。 玉、現代田中の道徳教育の問題点と課題 日中国際学術シンポジウム ( テ l マ﹁現代教育の課題﹂) の 時 に 、 湖 北 省の教育新聞記者のひとりが、筆者に対して﹁日本の子どもと中国の子ど も と 比 較 し て 、 よい点悪い点を指摘して下さい﹂と質問された。この質問 は、両国の道徳教育を考えていく場合にも参考になると思う。答えを整理 してみると、次のことがいえるのではないかと思う。 ム ノ、

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日中道徳教育の比較研究 日本の子どもの特徴は、①自由に主体的に物事を考え行動する。②多種 多様の情報をもっていること。③行動・活動・選択がマニュアル化されて いること。④マルチメディアを活用すること。⑤価値の多様化。⑥リアリ テ ィ l の欠如。⑦多様な趣味。⑧スポーツ愛好。⑨クラブ活動熱心。⑩社 会的行動の拡大。⑪文化型活動盛ん。⑫清潔である。⑬さめた感覚。 中国の子どもたちは充分観察したわけではないが、①学校での学習態度 良好。③自己主張する。③学習は熱心。④よく働き手伝う。⑤リアリティ がある。⑥実利主義。⑦教師の言うことをよく聞く。⑧元気がある。⑧好 奇心や意欲がある。⑨情報不足である。⑩清潔感の欠如。⑪学習以外の文 化 的 、 スポーツ的諸活動が少ない。⑫行動半径が狭い。 日本の子どもは要するにマルチ型人問。多量な情報、 マルチメ J ア イ ア の 中でたくみに泳ぐ子どもたちである。これは、情報化社会の産物である。 マニアル社会で行動し、勉強以外に趣味やスポーツ、 レクリェーション活 動を行い、交通機関を利用してひとりで行動半径を広げる。 しかしその反面情報飽食で消化不良をきたし、テレピ、 ファミコン漬け によるリアリティーの欠如。価値の多様化にふりまわされ、 さめた目でも のを見、三無主義(無気力、無感動、無責任﹀、三ず主義(遊ばず、学ば ず、働かず﹀に陥り、主体性を喪失しつつある。 他方中国の子どもは、多少日本の子どもの反対の面をもっているようだ。 情 報 化 社 会 、 マルチメディアの未発達、交通機関の不足、勉強外の文化的、 スポーツ的活動の機会にあまり恵まれておらず、 その点目本の子どもたち よ り も 、 その利点をもちあわせていない。必然的にその欠点もない。中国 の子どもたちのよい点は、意欲が高いということである。物質的に恵まれ ム ノ 、 ていなくても、気力やバイタリティーに富んでいる。よく働き手伝うとい う点もよいところである。 学校生活において、 日本の子どもたちのよいところは、何事も自由に発 言できること、学級会活動や児童会活動を通じて、民主的な学級・児童会 活動ができるという点だろう。中国でもないわけではないが、 かつての日 本の教育のように、管理指導強化的色彩が強い。ある父母が、中国の子ど もは上からの指示待ち人間であると言っていた。主体的・自主的な判断力 と自由に物事を考え行動する人聞の育成は大事な課題だといえるだろう。 逆に日本の子どもたちにとっては、情報化社会に生きる意欲とパイタリテ ィ l の育成が重要課題だといっていいだろう。 子どもの学習塾通い、 おけいこごとについては、 あまり大差はない。最 近の中国では、進学熱が高まり、受験競争は激化してきでいる。特にひと りつ子ということもあって、 その子にかける親の期待も大きい。 その意味 で、日本的になってきているのが現状である。以上おおざっぱにあげたこ とがらは、道徳教育の現実的課題にもなりうるだろう。 ところで、現代中国の子どもの問題は何人ですか、 という聞に﹁ひとり っ子問題です﹂と即座に返事がかえってきた。現代の小学生は、農村以外 はすべてひとりっ子である。教育上、家庭のしつけの上でひとりっ子は、 さまざまな議論をよんでいる。 ひ と り っ 子 は 、 はじめのころはっ小太陽﹂とよばれていたが、現在では ﹁小皇帝﹂とよばれるようになった。 つ ま り 子 ど も は 、 家族の中心人物、 独り天下、唯我独尊、勝手な振舞いのできる小皇帝だというのである。 し っけにおいて問題なのは、①集団的適応の問題⑧あまえによる独立心の欠

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如③父母の溺愛と過保護の問題④親の過剰期待が引き起こす問題⑤わがま まの問題等である。 そ の こ と は 、 ひとりっ子の増加傾向にある日本でも問 題になったところである。この現実的な問題は、今後の家庭のしつけや道 徳教育にとって解決しなければならない課題である。 筆者らは、現代中国の道徳教育の問題点について、現地の方々に意見を 求 め た 。 その結果集約すると次の四点であった。 第一点は、道徳教育は政治理論的な教育に偏重している。内容は抽象的 -概念的で子どもの実生活に根ざしていない。 ﹁人民公社はす た と え ば 、 ばらしい﹂という唱歌を歌って成長した人は多いが、二

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年余たっても人 民 公 社 は 、 中国百年来の遅れる改めることはできなかった。 ﹁文化大革命 はすばらしい﹂という唱歌は十年歌いつづけたが、十年間の動乱はむしろ マイナスにはたらいた。 という歌を四

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年余歌 ﹁社会主義はすばらしい L われてきたが、世界の三分のこの社会主義国がいろんな原因で崩壊した。 これらの問題を道穂教育の中できちんと教えなければ、青少年は思想混乱 をおこしやすいし、政治教育への信用を失ってしまう。 第二点は、中国共産党を愛する教育といっているが、共産党一部幹部の 腐敗は問題になっている。中央政府も、 その事実を認めていると同時に、 処分にのりだしている。たとえば、警察官の金稼ぎといわれる﹁乱集票﹂ による違法な金の取り立ては、警察官としてあるまじき行為である。筆者 は旅行中に何度か出くわせた。大学等での政治学習の時にも、党幹部の腐 敗について論議したほどである。 毛沢東時代は ﹁今の幹部は腐敗だらけ、 よかった L と嘆きの声もきかれた。こういう状況で、共産党を愛する教育 がはたして可能なのか、 子どもたちに不信感を与えるのみである。 日 中 道 徳 教 育 の 比 較 研 究 第三点は、道徳教育の方法は古く創意工夫に之しい上、実際に即する指 導が足りない。責めるのは指導より多く、管理は教育より多い。教師は上 からの命令で動き、上意下達の道具にすぎず、強制的な管理主義は子ども の創意工夫をおさえつけてしまう。中国の子どものよい点として、真面目 に学習し、教師のいいつけをよく聞くとほめたつもりが、ある新聞記者は、 子どもたちは学校時代は教師からきびしくされているのでとてもおとなし 、 、 、 込 、 U , 刀 おさえられたものが一気に解放されると非 いざ学校を卒業すると、 行に走るとのこと、これが問題だといわれた。彼いわく﹁学校時代は道徳 的模範生だが、社会に出ると非行青年になる﹂と。学校の授業をのぞくと、 必ず教師のすぐ前にすわらされて授業を受けている生徒がいた。どうして だ と 聞 く と 、 あばれん坊が授業の邪魔をするので教師のすぐ前に釘付けに しておくのだということであった。 第四点は、道徳教育は形式に流されている。思想道徳科目は小学校から 大学まで必修科目であり、テストが行われる。学校では教師と児童・生徒 はテストに対処するために、教えたり教わったりしているという点である。 以上の点が問題点として出された意見である。筆者は、 それらの問題点 に加えて、社会的な問題も指適しておきたい。 まず一点は、大人の道徳的態度である。平気でたんをはき、交通ル

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ル を無視し、公共パスの乗車時は争って乗り、物を買う時や手続き等には秩 序よくならばない。ゴミも平気で捨てる。不衛生である。しかも偽物の横 行である。こういう大人を見ている子どもの心に、道徳心が育つのは困難 で あ る 。 二点は、労働態度、労働を賛美するわりには、大人の労働の姿はおおよ ー 」 ノ、

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日中道徳教育の比較研究 そ勤労的ではない。 それは日本と比較してだが、労働意欲の教育の困難さ もそこにあるのではないか。 一二点は、急激な市場経済下において、拝金主義が横行し、 そのことが道 徳教育を後退させる恐れが多分にあるということである。 四 古 川 は 、 あまりにも教育と経済とを直結させずぎる。経済優先の教育よ りも、もっと人間形成の教育に力を入るべきだろう。たしかに全面発達の 思想はあるがこれを絵に画いた餅にしないためにも、全人格的・道徳的教 育は必要だろう。 五点は、国家の教育経費の削減と教員の副業の許可は、道徳教育はおろ か教育現場に学校経営をめぐって、 いろいろな問題が派生しそうである。 それは始まったばかりで、 まだなんとも一言えないが、少なくとも教育現場 は混乱のきざしがあるということである。 以上、中国の道徳教育をめぐる問題点を指摘したが、 日本の場合はどう か 現実的な問題は、深刻化する児童生徒の自殺やいじめ、 そしてさまざま な非行・問題行動に対し、道徳教育はどう対処していけばよいのか、大問 題、が立ちはだかっているといえる。 し か も 、 それらをかこいこむように、 社会の病理的な現象は、 それらに一層拍車をかけている。価値の多様化は、 人間の在り方・生き方の自覚にブレーキをかけている一面もある。情報化 社会、高度技術社会がもたらす新たな病理は、これもまた日本の子どもた ちの前に立ちはだかっている。国際化の中での国際性豊かな人間の形成と と も に 、 日本人としての真の自覚と個性化は、 日本の教育のかかえる大間 題でもある。今は中国においても、国際化の波は押し寄せてきている。改 六 四 革開放以降の文明衝突・衝撃は始まったばかりである。こうくした状況下 での道徳教育をめぐって、両国は今新たな課題の解決に本気で取り組む時 期にきているといえるだろう。 おわりに 今年九月(一九九四年)、 中国中央教育委員会は 学校の道徳教育改革 に関する若干の意見書を出した。内容は十分に検討していない、が、主に愛 国主義の教育の強化がうち出されている。 その点については、今後検討し てみたいと思う。以上、 日中の道徳教育の主な比較をしてみたが舌たらず であった。今後、 一層くわしく検討していきたい。なお、この論文は華中 理工大学の王秋華氏との共同研究であるが、 日文の執筆に関して、文責は 比嘉にある。 引用及び参考文献 武 漢 市 人 民 政 府 教 育 替 導 室 編 ﹃ 教 育 法 規 と 督 導 評 価 1 1 普 通 中 小 学 校 徳 育 │ │ ﹄ 市 教 学 研 究 室 武漢湖北省武漢市小学課本可思想品徳 L 湖北教育出版社一九九三年思相品徳 小 学 一 年 J 六年まで第一学期・第二学期用 宋殿寛主編﹃社会主義好(小学生読本)﹄中国少年児童出版社一九九二年 張素主主編 τ 振興中華(小学生読本)﹄紅旗出版社一九九三年 文部省司小学校学習指導要領﹄大蔵省印刷局発行平成元年 文部省司小学校指導書││i道徳編│14大蔵省印刷局発行平成元年 岩本俊郎・他編守史料・道徳教育の研究﹄北樹出版一九九四年

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鍬をもって登校する子どもたち(湖北省農村) 国旗揚揚式〈湖北省,幼稚園〉

日中道徳教育の比較研究

六 五

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日ヰ遥徒勢育 F J 此彰研笑 パパがんばってグくつはかせ競争。中国でも 親は教育熱心である。(湖北省幼稚闘〉 六 六 小学校授業風景(湖北省農村〉 小学校日常行為規範に,外国人のまわりにたむろしない とあるが。(湖北省農村〕

参照

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