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半導体メモリの過去40年の歴史と将来展望

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あらまし 本論文では現在の半導体メモリ市場の主流製品であるDRAM,フラッシュメモリと今後の大きな 市場が期待されるFeRAM,MRAM,PRAM,ReRAM 等の新型メモリの過去 40 年の歴史とその将来展望に 関して述べる.DRAM ではメモリセルの構造とメモリセルサイズの縮小が重要であり,その高速性のため,パ ソコンの主記憶等に使われる.マルチメディア情報の記憶媒体として使われるフラッシュメモリは不揮発性特性 と低コスト技術が重要であり,低コスト化のため多値化,積層化が進められている.新型メモリは近い将来は各 メモリ固有の研究開発状況に合わせた製品化が重要だが,将来はDRAM とフラッシュメモリの特性を併せ持つ ユニバーサルメモリの実現が期待される. キーワード 半導体メモリ,DRAM,フラッシュメモリ,積層化

1.

ま え が き

シリコン基板上に記憶素子を縦横方向に規則的に配 列して形成される半導体メモリは,1970年のDRAM

(Dynamic Random Access Memory)の発明以来LSI

(Large Scale Integration)の高集積化,高密度化の

牽引車の役割を果たしてきた.その後DRAMは高速 性能を生かしてパソコンの主記憶等に使われ,1990年 代には全世界で年間1兆円以上の巨大市場を形成した. DRAMの次に不揮発性と低コストを実現できる日本 独自のメモリとしてフラッシュメモリが1980年代に 発明された.フラッシュメモリはその後マルチメディ ア記憶用にディジタルカメラ,携帯電話等に使用され 2000年代には全世界で年間1兆円以上の巨大市場を 形成した.フラッシュメモリの発明後DRAMの高速 性能とフラッシュメモリの不揮発性と低コストを併せ 持つ新型メモリが現在精力的に検討されている.これ らの新型メモリでは強誘電体,強磁性体,相変化物質 等の新たな材料が導入されている.本論文では現在の 主流であるDRAM,フラッシュメモリと今後の大き 湘南工科大学工学部情報工学科,藤沢市

Department of Information Science, Shonan Institute of Technology, 1–1–25 Tsujido-Nishikaigan, Fujisawa-shi, 251–8511 Japan a) E-mail: [email protected] な市場が期待される新型メモリの過去の歴史とその将 来展望に関して述べる.

2. DRAM

の歴史と将来展望

半導体メモリはDRAMの発明以来過去40年近く にわたってLSIの高集積化,高密度化の牽引車の役割 を果たしてきた[1].1970年に米国のインテル社から 1 KビットのDRAMが商品化されて以来,いわゆる ムーアの法則に従い[2],3年の4倍(18か月に2倍) のペースで着実に高集積化が実現されている.その用 途としては当初は主にメインフレーム用メインメモリ として使用されたが,1980年以降PCが主な用途にな るとともにその市場は急激に立ち上がり,1993年には 全世界で年間1兆円以上の市場に成長した[3].現時点 では年間全世界で数兆円の市場があり,1チップ当りの 集積度は1ギガビットに達している.これはDRAM がメモリセル構造が1個のトランジスタと1個のキャ パシタから構成されるため構成素子数が少なく情報を 記憶するメモリセルの大きさであるメモリセルサイズ を小さくできるためである(図1).キロビット級の集 積度の世代では,図1 (a)に示すようにトランジスタ とキャパシタは同一平面上で横に並べてパターン設計 され,キャパシタには面積が大きいが製造が比較的容 易な平面型が用いられてきた.またDRAMではメモ リセルからビット線に読み出される信号量をできるだ

(2)

(a) Cross-sectional view

(b) Equivalent circuit

図 1 DRAMのメモリセルの断面及び等価回路 Fig. 1 Cross-sectional view and equivalent circuit of

DRAM. け大きくするために,微細なメモリセルに十分な蓄積 容量が実現されるように設計された. キロビット級の集積回路の時代には,メモリセルか らビット線に読み出される微小信号ができるだけ大き くなるように,雑音に強い折返し型ビット線方式が新 たに開発された[4].折返し型ビット線方式では,セン スアンプに対してビット線とダミービット線を折り返 す形で同方向にレイアウトするために同相雑音をキャ ンセルできる特徴がある(図2).ただしこの方式では 最小メモリセルサイズはデザインルールをFとすると 8F2 以下に縮小できないという欠点があるがこの世代 では小形のキャパシタを製造する方が難しくあまり問 題とならなかった. 次にメガビットの世代になると,ビット線に読み出 される信号量をできるだけ大きくするため,メモリセ ルのキャパシタ容量をできるだけ大きくすることが重 要になった.そのためには小さなコンデンサの平面面 積部にできるだけ大きなキャパシタ面積を実現できる 三次元キャパシタを用いたメモリセルが新たに開発さ れた(図3).その代表例キャパシタを基板の上側に形 図 2 折返し型ビット線方式 Fig. 2 Folded bit line architecture.

図 3 三次元型キャパシタを用いたメモリセル Fig. 3 3-dimensional memory cell. (a) stacked structure,

(b) trench structure. 成するスタック型方式[5]と,シリコン基板に穴を掘 りその側面をキャパシタに用いるトレンチ型方式[6] である.いずれの方式もその後のプロセス技術の発達 により,その極限に近い形まで最適化が進められた. ギガビット世代になると更なるコスト低減のために メモリセル面積が折返し型ビット線方式の半分の4F2 まで縮小できるオープン型ビット線方式が開発されて いる.オープンビット線方式ではメモリセル面積を縮 小するためにトランジスタとキャパシタを同一平面上 に積層して形成し,センスアンプの両側にビット線と ダミービット線をレイアウトする(図4).このオー プンビット線方式を実現する上で重要なのはメモリセ ルサイズが4F2 に縮小できるいわゆる4F2メモリセ ルの実現である.トランジスタとキャパシタを積層す る際には,トレンチ型キャパシタの上にトランジスタ を形成する方式[7], [8]と逆にトランジスタの上にス

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図 4 オープン型ビット線方式 Fig. 4 Open bit line architecture.

図 5 SGT(Surrounding Gate transistor)メモリセル の構成

Fig. 5 Structure of SGT memory cell.

タック型キャパシタを形成する方式が開発されている. 前者の一例であるSGT型セルの構造を図5に示す. 2010年代にこれらのメモリセルを用いたギガビット 級DRAMが製品化されることが期待される.

3.

フラッシュメモリの歴史と将来展望

前章ではDRAMの発展の推移について述べたが, DRAMの高集積化,高密度化が進むにつれその限界 も明らかになった.すなわちメモリセルサイズを容易 に8F2 以下に小さくできないためにコスト低減に限 りがあることと,電源を切ると記憶データが消えるい わゆる揮発性メモリであるために携帯電話,ディジタ ルカメラ等の携帯機器用記憶媒体(マルチメディア保 存用)としては使いにくいため用途に制限があること である.これらの限界を解決するメモリとして新た に発明されたのが日本独自のメモリであるフラッシュ 図 6 フラッシュメモリの動作原理 Fig. 6 Operating principle of flash memory.

メモリである[9], [10].これはトランジスタに新たに 浮遊ゲートを設け,そこに電荷を蓄積するかどうかで ディジタルの情報を記憶できる.DRAMで必要不可 欠なコンデンサが不要になり,1個のトランジスタだ けでメモリセルを実現できる.その結果,メモリセル サイズはDRAMの半分の4F2 まで縮小できるため にDRAM以上の高集積化・高密度化に適している. また電源を切っても記憶情報が消えないいわゆる不揮 発性メモリであるため携帯機器用記憶媒体として使用 しやすいという特徴がある.その動作原理を図6に 示す.浮遊ゲートに記憶された電荷(電子)を利用し てディジタル情報を記憶する.つまり浮遊ゲートには 電荷は蓄積されない状態が“1”書込み状態に対応し, 図6に示すようにチャネル部分に電子による反転層が 形成されるためチャネルができドレーンからソースに 電流が流れる.それに対して浮遊ゲートに電荷が蓄積 されている状態が“0”書込みに対応し,チャネル部 に反転層が形成されないためにドレーン電流は流れな い.浮遊ゲートは高品質のシリコン酸化膜で覆われて いるため蓄積された電荷は失われることがなく不揮発 性メモリが実現できる.ただし書込み消去は浮遊ゲー トへの微小なトンネル電流で行うため,書込み速度は 遅くなり,トンネル電流が流れる際にシリコン酸化膜 が劣化することがあるために,書換え回数は制限され るという問題もある.しかしながらフラッシュメモリ にはメモリセルサイズをDRAMの半分の4F2 まで 縮小でき,DRAM以上にコスト低減できるという特 徴がある.その効果を最大限に生かしたのがメモリセ ルを直列接続して構成するNAND型フラッシュメモ リである(図7).ビット用コンタクト面積を直列接続 したメモリセル全体で共有するため,メモリセルサイ ズをトランジスタ1個分に近い値まで縮小できる.そ れに対してアクセス性能は高速だがメモリセル面積が

(4)

図 7 NAND型フラッシュメモリのメモリセルと等価回 路図

Fig. 7 Memory pattern and equivalent circuit of NAND flash memory.

図 8 NOR型フラッシュメモリのメモリセルと等価回路図 Fig. 8 Memory pattern and equivalent circuit of

NOR flash memory.

NAND型と比較して若干大きくなる構成としてメモ リセルを並列接続して構成されるNOR型フラッシュ メモリがある(図8).フラッシュメモリは1990年前 後に商品化が進められたが,当時はまだ1ビット当り のコストが高く,現在のように携帯機器が普及してい なかったためにその市場規模は小さく用途もディジタ ルカメラ等に限定されていた.2000年以降用途がディ ジタルカメラだけでなく携帯電話,USBメモリ,音声 情報記憶等マルチメディア保存用途全般に広がるにつ れその市場が急激に立ち上がり,2006年には全世界 で年間1兆円以上の市場に成長した.2008年現在で はその市場の成長率はDRAMより大きく,1チップ 当りの集積度も10ギガビットを超え[11], [12],近い 将来その市場規模はDRAMを超えると予想されてい る.フラッシュメモリでは近年一個のメモリセルに複 数のディジタル情報を記憶する多値メモリセル技術が 図 9 多値メモリセルでの書込み電圧の許容範囲 Fig. 9 Operational margin of multi-level NAND

flash memory.

図 10 積層型 NAND フラッシュメモリの断面構成図と 等価回路図

Fig. 10 Cross-sectional view and equivalent circuit of stacked type NAND flash memory.

導入されている.通常の2倍の情報を記憶する場合の 事例を図9に示す.図に示すように,従来の2値方式 として書込み電圧の許容範囲が小さくなる問題はある が,見掛け上のメモリセルサイズを4F2 以下に縮小で き,更なるコスト低減を実現できる. NAND型フラッシュメモリでは,将来のメモリセル サイズの更なる縮小に向け,メモリセルを縦方向に積 層する方式が新たに提案されている[13], [14](図10). NAND型フラッシュメモリではメモリセル部分を 直列接続して構成される.通常の1層の場合にはこの 直列接続は同一平面上に実現される.それに対して積 層型では直列接続は縦方向に形成される.NAND型 フラッシュではメモリセルを16個直列接続するので, 積層型では16層積層したときに見掛け上のメモリセ ル方式を縮小でき,1ビット当りの製造コストを低減 することが可能になる.実際の製造プロセスではでき るだけ複数層の製造を一度で行うプロセス技術を採用 して,ビットコスト低減を行っている.例えば図10の

(5)

(Bit Cost Scalable)な積層方式は,将来,ハードディ スク等の低速でビットコスト低減が重要な用途の代替 手段として極めて有効である.

4.

新型メモリの歴史と将来展望

前章に述べたように,フラッシュメモリには高集積 化に適しておりかつ不揮発性であるというDRAMに はない特徴があるが,書込み時の速度が600µs程度 と遅く,書換え回数も約100万回程度に制限される. これはDRAMでは書込み速度は数十nsと速く,書 換え回数の 1015 回以上あり基本的に制限がないこと と比較して応用に制限ができる.そのため現在,高 速性性能が必要とされる用途にはDRAM,高速性能 より低コストや不揮発性が要求される用途にはフラッ シュメモリが使われている.すなわち,DRAMは高 速性能が必要なPCの主記憶等に使われ,NAND型 フラッシュメモリは不揮発性と安いビットコストが必 要な携帯機器等のマルチメディア保存用途等に使わ れている.一方DRAMとフラッシュメモリの機能を 兼ね備えたいわゆるユニバーサルメモリは,現在ま で実現されていない.そこで,両者の長所を併せ持 つ高速・低コスト・不揮発性メモリが新型メモリと して1980年以降盛んに研究されるようになった.そ

の代表例がFeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)[15],MRAM(Magnetic Random Access Memory)[16],PRAM(Phase Change Random Access Memory)[17],ReRAM(Resistive Random Access Memory)[18]である.以下これら新型メモリ の動作原理をフラッシュメモリと比較する形で示す. は じ め にFeRAMの 動 作 原 理 に 関 し て 説 明 す る (図11).チタン酸バリウム(PZT)等の強誘電体は 図に示すようにチタンやジルコニア原子の位置が上側 にあるか下側にあるかによってプラスかマイナスの残 留分極電荷をもつ.その残留分極電荷の状態(プラス のときは“1”書込み状態,マイナスのときは“0”書込 み状態)によりディジタル情報を記憶する.この残留 図 11 FeRAMの動作原理 Fig. 11 Operation principle of FeRAM.

図 12 MRAMの動作原理 Fig. 12 Operating principle of MRAM.

分極の状態は強誘電体では電源を切っても消えること はなく不揮発性が実現される.その情報を読み出す際 には外に外部回路を接続し,電荷量の大小を検知する. 読出しの際に残留分極の方向が反転するが,この分極 反転時間は物理的にナノ秒程度に抑えられることが分 かっており,フラッシュメモリ以上の高速性能が可能 となる.また分極反転の際にチタンやジルコニア原子 の位置が移動するが,その信頼性はフラッシュメモリ のトンネル電流より高く,1012 回以上の書換え回数が 実現できている.次にMRAMの動作原理に関して説 明する(図12).2層の強磁性体の間にトンネル絶縁 膜を構成した磁気的なトンネル接合MTJ(Magnetic Tunneling Junction)を記憶素子として利用する.下 の強磁性体(固定層)のスピンの向きと上の強磁性体 (自由層)のスピンの向きが同じとき(平行状態,“0” 書込み状態)にはMTJの磁気抵抗は小さく,逆のと き(半平行状態,“1”書込み状態)には磁気抵抗は大 きくなる.その差は典型的な例では40%程度に達す る.この磁気抵抗の大小でディジタル情報を記憶する.

(6)

強磁性体のスピンの向きは電源を切っても消失するこ とはなく不揮発性が実現される.MTJへの書込みは 上の強磁性体膜のスピンの向きを反転することによっ て行う(図12).スピンの向きを反転させるためには 通常上の強磁性体の上に電流を流す.電流を流す方向 により電流の誘起する磁界の方向が変わりそれに対応 する形で上の磁性体のスピンの向きが反転して書込み が行われる.この磁界によってスピンの向きを変えて 書込みを行う方式を磁界書込み方式と呼んでいる. このほかにも新型メモリの候補としてPRAMと ReRAMがある.PRAMでは,GST(Ge2Sb2Te5) 等のカルコゲナイト物質のアモルファス状態と結晶状 態の相変化に伴い抵抗値が高抵抗値から低抵抗値に 変化することを記憶素子として利用する.抵抗の低い セット領域では結晶状態になるのに対し,抵抗の高い リセット状態ではアモルファス状態となる.結晶状態 からアモルファス状態にするためには素子に高電圧を 印加し,大きな電流を流すことにより発生する発熱を 利用して行う.アモルファス状態と結晶状態は電源を 切っても維持されるために不揮発性を実現できる.書 換え回数に関しては現時点でFeRAMの1012 回以上 が実現されている.リセット時に必要となる大きな電 流値を低消費電力化のためにいかに削減するかという のが今後の課題である.一方ReRAMでは,金属酸化 膜の電気抵抗の変化を記憶情報として利用している. 一例としてPCMO(Pr0.7Ca0.3MnO3)等の強層間磁 性材料の量子力学的な電界誘起巨大抵抗変化を使用す るものがある.すなわち電圧パルスを外部から印加す ることで,PCMO等は高抵抗の絶縁体状態(“0”書 込みに対応)と低抵抗の金属状態(“1”書込みに対応) の状態を遷移する.この2状態は電源を切っても保持 できるので,不揮発性が実現できる.状態変化に伴う 抵抗値の変化は100倍以上と他の新規メモリよりも大 きいのが特徴であり,この特性を生かした後述する多 値メモリ等の応用が期待されている.このような優れ た性能をもっているがその動作原理に関してはまだ十 分に解明されていないのが現状である.以上紹介した 新型メモリの動作原理,メモリ材料,電気的な特性を 表1に示す. いずれの新型メモリもフラッシュメモリと比較して 高速で書換え回数も多いが,メモリセルサイズが大 きく低コスト化できないためフラッシュメモリほど大 きな市場を形成していないのが現状である.FeRAM はこれらの中では最も研究開発が進んでおり1990年 表 1 新型メモリの特性比較

Table 1 Comparison of new type non-volatile memory.

図 13 新型メモリの研究・開発製品化プロセス Fig. 13 Development of new type memory.

代末から小容量の用途で製品化が進められている. MRAMはFeRAMに次いで研究開発が進んでおり, 2000年代に中規模の用途で製品化が始まった.PRAM はMRAMの次に研究開発が進んでおり近日中に製品 化が始まると予想させる.ReRAMは新型メモリの中 で最も研究開発の歴史が浅くまだ研究開発の時期にあ る.一方,表1に示すように新型メモリによってメモ リセルサイズに差があるが,これは各新型メモリの低 コスト化の目安を示すというよりもむしろその研究開 発の時間の長さを示す.いずれの新型メモリもメモリ セルサイズを少なくとも4F2 までは縮小でき,研究開 発の期間が長い新型メモリほどメモリセルサイズが大 きくなる傾向にある.その理由は以下に示す新型メモ リの研究・開発・製品化のプロセス(図13)を見ると 分かりやすい.はじめの提案,基本動作確認の時期に は,動作検証が最大の目標になり,メモリセルサイズ は安定動作が期待できる大きな値を使い,細かな動作 原理等には配慮する必要はない.次の潜在能力の探究 の時期には,現状の製造プロセス等は考慮せず原理的

(7)

図 14 新型メモリの研究・開発・製品化の推移 Fig. 14 Process of development of new memory.

に実現できる最小セルサイズに関して議論され,それ に伴いスケーリング・微細化の阻害要因を抽出するた めに詳細な動作原理を解明する必要がある.次の製品 化着手時期には現状の製造プロセス,製造マージン, 歩留り等を考慮した詳細なプロセス・デバイス・回路 設計が行われる.それに伴い各種マージンの確保のた め,メモリセルサイズは潜在能力探求の時期よりも大 きくなることが多い.そして製品化着手直後でその値 は最大に近くなる.その後製品化が進むとコスト削減 のために歩留りを確保しつつメモリセルサイズを縮小 していく2値化ピーク時期に入る.この時期にはメモ リセルサイズはトランジスタと記憶素子が積層された クロスポイント型の極限値である4F2 まで縮小され る.その後更にビットコストの削減のためにクロスポ イント型以上のビットコスト削減技術が導入される. すなわち積層化,多値化技術導入によりビットコスト で考えたメモリセルサイズは4F2 より大幅に縮小さ れる. 以上の経緯を時系列的に示したのが図14である.こ こで横軸は新規メモリセル発明を原点とした年,縦軸は デザインルールFを用いた規格化したメモリセルサイ ズを示す.新型メモリの中での研究・開発はFeRAM,

MRAM,PRAM,ReRAMの順番に進んでおり,そ

の進捗状況の差がそのまま表1のメモリセルサイズの

大小に反映している.つまりFeRAMやMRAMの現

時点でのセルサイズがPRAMやReRAMより大きい

のはPRAMやReRAMがFeRAMやMRAMより

微細化に優れているというよりは,むしろPRAM等

の研究開発がFeRAM等と比較して研究開発が遅れて

始まったためである.

図 15 新型メモリの近未来の展望 Fig. 15 Near future target and market of new

non-volatile memory. 以上の議論をもとに各種新型メモリの今後の現実 的な方向付けについて考察する(図15).FeRAMと MRAMは当面は最先端の微細化技術を使用しなくて も製品化が可能なICタグ,RFIDタグ等に代表され るシステムLSI混載用メモリに展開するのが妥当で ある.システムLSI混載メモリでは大容量よりも高速 性能,低消費電力特性,システムLSIのCMOSプロ セスとの整合性等が強く要求され,現状のFeRAMと MRAMは十分その要求を満足するレベルに達してい

る.FeRAMとMRAMはまずシステムLSI混載用メ モリである程度の規模の市場を確保し,次のステップ として更に大容量・微細化が必要なメインメモリの分 野に進出することが望ましい.メインメモリとしては 現在主にDRAMがパソコン用,モバイル機器のプロ グラム収納用には主にNOR型フラッシュメモリが使 用されている.FeRAMとMRAMは大容量化・微細 化技術が進展すればその高速・低消費電力・不揮発性 特性を生かして十分これらの既存メインメモリ素子を 置き換えることができると考えられる. 一方PRAMとReRAMは研究・開発の歴史が浅い ため,当面の応用のターゲットは大容量・微細化が必要 なメインメモリ分野が適している.その次のステップ としては,更なるビットコストの低減が必要なマルチ メディアデータ等の保存用の固体ストレージメモリに 進出できる.この分野は現時点ではNAND型フラッ シュメモリが大部分の市場を占有しているが,PRAM やReRAMはフラッシュメモリにない高速特性をもっ ているため,フラッシュメモリ並みの大容量化と低コ

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図 16 新型メモリの将来の展望

Fig. 16 Future target and market of new non-volatile memory. スト化が実現できれば十分フラッシュメモリを置き換 える可能性がある.更に大容量化が進めばフラッシュ メモリのみならずハードディスクを置き換える可能性 もある. 以上新型メモリに現状を踏まえた近未来の展望につ いて述べたが,近未来以降には新型メモリの本来の特 性を生かしたユニバーサルメモリへのアプローチが期 待される.その将来展望を図16に示す.いずれの新 型メモリも将来は高速・低コスト・不揮発性の特徴を 併せ持つ可能性がある.このメモリが実現できれば最 終的にはメインメモリ,固体ストレージメモリ,ハー ドディスクをすべて置き換える可能性がある.これを 実現するためにはメモリセルは1個のトランジスタで 4F2 のセルサイズを実現する必要がある.現時点でも1

トランジスタ型のFeRAM,MRAM,PRAM [20]∼

[23]は研究開発されているため,これを用いることに よってユニバーサルメモリ実現への可能性が広がる. このアプローチの一つに1トランジスタ型のFeRAM を平面状にNAND接続するFe-NANDが提案され た[24], [25].これはフラッシュメモリと同じ4F2 型小 形の1トランジスタ型のFeRAMをも用いる方式で, 平面型のNAND型フラッシュメモリと同程度の低ビッ トコストとNAND型フラッシュメモリ以上の高速性 能と書換え回数が実現できる. 一方別の方式として1トランジスタ型のFeRAM を縦方向に積層したNAND構造FeRAMが提案さ れた[26], [27].これにより積層型のNAND型フラッ シュメモリと同程度の低ビットコストとNAND型フ ラッシュメモリ以上の高速性能と書換え回数が実現で 図 17 積層した NAND 構造 FeRAM の断面構成図と等 価回路図

Fig. 17 Cross-sectional view and equivalent circuit of stacked type NAND FeRAM.

きる(図17). FeRAMの代わりにMRAMを用いた方式も同様に 提案されている[28].MRAMとしては従来のメモリ セル構造とは異なり4F2 のメモリセルサイズで実現 できるスピントランジスタを用いている.PRAMも FeRAMやMRAMと同様に積層化される可能性があ り,今後新型メモリを積層化する検討が更に進むこと が予想される.

5.

む す び

現在の半導体メモリ市場の主流製品であるDRAM, フラッシュメモリと今後の大きな市場が期待される

FeRAM,MRAM,PRAM,ReRAM等の新型メモ

リの過去40年の歴史とその将来展望に関して述べた. DRAMではメモリセルの構造変遷及びセルサイズの 縮小について述べた.DRAMはその高速性のため, パソコンの主記憶等に使われる.マルチメディア情報 の記憶媒体として使われるフラッシュメモリは不揮発 性特性と低コスト技術が重要である.4F2 以下への メモリセルサイズの縮小による低コスト化のため,多 値化,積層化が進められている.FeRAM,MRAM, PRAM,ReRAM等の新型メモリは,近い将来は,各 メモリ固有の研究開発状況に合わせた製品化が重要だ が,将来はDRAMとフラッシュメモリの特性を併せ 持つユニバーサルメモリの実現が期待される. 謝 辞 積 層 型 NAND 構 造 FeRAM,MRAM,

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(10)

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[26] 菅野孝一,渡辺重佳,“積層方式 NAND 構造 1 トラン ジスタ型 FeRAM の読出し方式の検討,”信学論(C), vol.J91-C, no.11, pp.668–669, Nov. 2008.

[27] 渡辺重佳,菅野孝一,玉井翔人,“先端不揮発性メモリ の BiCS 型積層化に関する検討——BiCS 型 FeRAM, MRAMの基礎検討,”信学技報,SDM2008-145, 2008. [28] 玉井翔人,渡辺重佳,“スピントランジスタを用いた積

層型 NAND MRAM の読出し法の検討,”信学論(C), vol.J91-C, no.11, pp.666–667, Nov. 2008.

(平成 20 年 11 月 26 日受付) 渡辺 重佳 (正員) 昭 52 慶大・工・計測卒.昭 54 東工大 大学院修士課程応用物理学専攻了.同年 (株)東芝半導体技術研究所勤務.以来, 不揮発性メモリ及び DRAM の回路設計, 微細 CMOS/BiCMOS/SOI/三次元トラ ンジスタのデバイス・回路設計,システム LSIの高速低消費電力回路・アーキテクチャ等の研究に従事. 平 17 より湘南工科大学工学部情報工学科教授.工博.

図 1 DRAM のメモリセルの断面及び等価回路 Fig. 1 Cross-sectional view and equivalent circuit of
図 5 SGT(Surrounding Gate transistor)メモリセル の構成
Fig. 10 Cross-sectional view and equivalent circuit of stacked type NAND flash memory.
図 12 MRAM の動作原理 Fig. 12 Operating principle of MRAM.
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