Title
光電気化学エッチング処理による酸化チタン半導体電極の
表面加工とガスセンサーへの応用( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
柳, 漢振
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(工学) 甲第230号
Issue Date
2004-03-25
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/1951
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本籍) 学 位 の 種 類 学位授与番号 学位授与目付 専 攻 学位論文題目 柳 漢 振(韓国) 博 士(工学) 甲第 230 号 平成16 年 3 月 25 日 環境エネルギーシステム工学専攻 光電気化学エッチング処理による酸化チタン半導体電極の表面加工とガスセン サーヘの応用
(PhotoelectrochemicalDesigning of Nano-Porous Structure on
Titanium Dioxide Surface andits Application to Gas Sensor) 学位論文審査委員 (主査)教 授 箕 浦 秀 樹 (副査)教 授 野々村 修 一 教 授 大 矢 助教授 杉 浦 隆 豊
論文内容の要旨
酸化チタンは、化学反応に対して非常に安定で、衆境に対する負荷も小さいという特徴をも ち、近年、光触媒、ガスセンサーや色素増感太陽電池材料として大きな注目を集めている材料 である。酸化チタンをそのような機能材料に応用する場合に、反応が実際に起こる表面の比表 面積や結晶配向が重要な因子となり、様々な表面処理が検討されている。半導体電極の表面加 工睦の一つである光電鮒ヒ学エッチング(フォトエッチング)は、水溶液に半導体電極を浸し光 照射することによって光生成された正孔の強い酸化力を利用して半導体自身を溶解すること を利用したエッチング法である。フォトエッチングにより酸化チタン電極に高結晶性かつ大比 表面積を持った表面を形成できることが報告されており、光触媒やガスセンサーなどの機能素 子への応用が期待される。本論文においては、フォトエッチングよる酸化チタン半導体電極表 面へのナノポーラス構造の形成機構の解明とその構造制御、さらには、その応用としてガスセ ンサー特性に及ぼす効果について検討した。以下に主要な結論を述べる。 1)酸化チタン電極を硫酸水溶液中において強いアノード分極下でフォトエッチングする・と、 フォトエッチング反応は、ルチル型構造のc一軸に沿って進行し、それと平行な(100)面に等価 な4枚の面に囲まれた、一辺が数百ナノメートルの正方断面を持つポーラス構造が形成される ことがわかっている。そこでまず、酸化チタン電極のキャリア密度、および、フォトエッチン グ時のエッチング条件(光強度、エッチング時間、エッチング電位)を変化させた時の、この ナノポーラス構造形成に及ぼす効果について検討した0その結果、電極のキャリア密度がエッ チピットサイズを決める主要な因子であり、キャリア密度の高い電極ほどエッチピットサイズ が/J、さくなり、また、エッチピットを構成する壁の厚さが薄くなることがわかった。 2)表面構造とフォトエッチング畳との関連について、電子顕微鏡観察から検討を行った。 フォトエッチングは、ランダムに存在する溶解開始点からエッチピγトの形成が始まり、溶解の進行とともにナノハニカム構造が形成された。さらにフォトエッチング皇を増やした場合に は、ナノハニカム構造の壁部分の溶解も進行し、径数十nm、長さ数〃mの繊維状酸化チタン から構成されるナノロッド構造が形成された。このナノロッドの透過電子顕微鏡観察及び電子 線回折の解析により、1本のナノロッドの長軸時ルチル型構造のc-軸に一致し、その表面は (110)面から成っていることがわかった。 3)多結晶酸化チタン電極を弱いアノード分極下でフォトエッチングすると結晶粒内が選択
的に溶解して、粒界部のみが額状に溶け残り、粒界スケルトンともいうべき構造が形成される
ことが報告されている。粒界スケルトン電極において、溶け残った粒界の厚さに及ぼす、結晶 粒径やキャリア密度の影響について検討した。その結果、粒界の厚さはキャリア密度が高くな ることにより減少することがわかった。この粒界部が板状に溶け残る現象は、粒界部に存在す る電子捕獲準位に起因した2重ショットキー障壁内で光生成された電子一正孔が効率的に再 結合すると考えることにより説明できた。 4)フォトエッチングにより形成された表面は高結晶性と大比表面積という性質を合わせ持っ ているためガスセンサーなどへ応用する場合、その特性の向上が期待される。そこで酸化チタ ン焼結体を用いて水素ガスセンサーを作製し、その感度及び応答速度に及ぼすフォトエッチン グ処理の効異について検討した。フォトエッチング処理により水素ガスに対する感度が増加し、 応答速度が速くなることがわかった。感度の増加は、フォトエッチングによる比表面積の増加 によるものであり、一方、応答速度の改善は、フォトエッチングにより選択的に(100)面が 溶け残り、この面における酸素の吸着速度が速いためであると考えられた。 5)焼結体電極の場合、フォトエッチングにより加工される領域は、試料の厚さ(∼0.5mm) に比べてたいへん薄く、数マイクロメートルである。そのため、ガスセ.ンサーなどの電子機能 素子などに応用する場合には、試料のバルクの影響が大きくなる。そこで、バルクの影響を減 少するため、ペースト法により酸化チタン厚膜電極を作製し、そのフォトエッチングによる表 面処理を検討した。その結果、膜作製時の熱処理を900℃_で行うことたより、数マイクロメー トル程度まで結晶粒成長が起こり、そのような厚膜電極をフォトエッチングすると、焼結体の 場合と同様にナノハニカム構造や、ナノロッド構造を形成できることがわかった。 最後のこれらの結呆をまとめている。論文審査結果の要旨
本論文は、光電気化学エッチング(フォトエッチング)法を即、た酸化チタン表面のナ
ノポーラス加工と、そゐ応用としての酸化チタン水素ガスセンサー特性に及ぼす効果にっ いて検討している。その内容についてみると、第1章は、序論で、研究背景と目的につい て述べている。第2章では、電極作成条件、光電気化学エッチング条件を変化させることにより、ナノポーラス構造におけるピット密度やピットサイズを制御できることを由らか
にしている。第3章では、光電気化学エッチング量について検討を行い、エッチング量を 増加させた時、結晶性の高い繊維状酸化チタンから構成される酸化チタンナノロッド構造が形成されることを見いだしている。第4章では、弱いアノード分極下において形成され る、粒界部のみから構成される特徴的な構造である粒界スケルトン構造の形成機構につい て検討し、さらにその電気化学的評価を行っている。溶け残る粒界厚さは電極のキャリア 密度に依存することを見いだし、粒界部に形成される空間電荷層厚さと関連付けて説明し
ている。また、銀イオンを含む溶疲からの銀析出反応サイトの観察などから、粒界都が通
常の結晶粒表面より、電気化学還元反応に対して活性であることが示している。第5章では、 酸化チタン焼結体電極をガスセンサー素子として用い、光電気化学エッチング処理が、ガ スセンサー特性、特に水素ガスに対する感度、応答速度の向上に効呆的であることを見い だしている。第6章では、厚膜酸化チタン電極の光電気化学エッチング処理について検討 し、膜作卿寺の熱処理条件を制御すること、によって、数マイクロメートル程度までの結晶粒成 長が起こり、そのような厚膜電極をフォトエッチングすると、焼結体の場合と同様にナノハニ カム構造や、ナノロッド構造を形成できることをみいだしている。また、厚膜電極を用いて、 水素ガスセンサーを作製し、その光電気化学エッチングによって、ガスセンサー特性向上効果 を報告している。第7車は、全体の総括である。以上の内容の一部は、学術誌に投稿し、掲載 あるいは掲載予定となっている。酸化チタンは、化学的に非常に安定で、環境に対す卓負荷も小さいという特徴をもち、近年、
光触媒、ガスセンサーや色素増感太陽電池材料として大きな注目を集めている材料である。本 研究により、酸化チタン電極に、高結晶性かつ大比表面積を持った表面を形成できることが明らかとなり、また、これをガスセンサー素子に用いたとき、その特性向上に有効であることを
見いだしている。今後、本表面処理法を酸化チタンなどの光機能材料へ適用することによって、 その機能性向上が期待され、学位論文として十分に価値がある。最終試験結果の要旨
最終試験では、学位論文中、主として、第2章、第5章、第6章の内容について報告し た。酸化チタン電極を硫酸水溶液中において強いアノード分極下でフォトエッチングすると、 フォトエッチング反応は、ルチル型構造のc一軸に沿って進行し、それと平行な(100〉面に等価 な4枚の面に囲まれた、一辺が数百ナノメートルの正方断面を持つポーラス構造が形成される ことがわかっている。第2章では、酸化チタン電極のキャリア密度、および、フォトエッチン グ時のエッチング条件(光強度、エッチング時間、エッチング電位)を変化させた時の、この ナノポーラス構造形成に及ぼす効果について検討し、電極のキャリア密度がエッチピットサイ ズを決める主要な因子であり、キャリア密度の高い電極ほどエッチピットサイズが′J、さくなり、 また、エッチピットを構成する壁の厚さが薄くなることを明らかにした。このような、ある一 定の厚さで壁が溶け残る原因として、酸化チタン/電解液界面に形成される空間電荷層の電位 勾配の変化を考えることにより説明した。すなわち、壁の厚さが薄くなると壁全体が空間電荷 属領域となり、表面に形成される電位勾配が減少して、光生成された電子一正孔の再結合確率 が増加して、フォトエッチング反応が抑制されるというモデルである。高いキャリア密度の電 極の場合には、電子顕微鏡観察により求めた壁の厚さとキャリア密度から予想される壁の厚さ(空間電荷層幅の2借)がよく一致したが、低いキャリア密度の電極では、予想より溶け残っ た壁の厚さは薄いことがわかり、このことから、表面ナノポーラス構造部分に形成される空間 電荷層のみでなく、酸化チタンバルクと電解液界面における電位勾配を考慮する必要があるこ とを提案した。第5章では、酸化チタン焼結体を用いて水素ガスセンサーを作製し、その感度 及び応答速度に及ぼすフォトエッチング処理の効呆について検討した。フォトエッチング処理 笹より水素ガスに対する感度が増加し、応答速度が速くなることを報告した。感度の増加は、 フォトエッチングによる比表面積の増加によるものであり、一方、応答速度の改善は、フォト エッチングにより選択的に(100)面が溶け残り、この面における酸素の吸着速度が速いため であると考察した。第6章では、電極バルクの影響を減少させるため、焼結体電極に代えて、 ペースト故により酸化チタン厚膜電極を作製し、そのフォトエッチングによる表面処理を検討 した。その結呆、膜作妙寺の熱処理を900℃で行うことにより、数マイクロメートル程度まで 結晶粒成長が起こり、そのような厚膜電極をフォトエッチングすると、焼結体の場合と同様に ナノハニカム構造や、ナノロッド構造を形成できることを明らかにした。また、厚膜電極を、 水素ガスセンサー素子に応用し、焼結体センサーの場合と同様に、フォトエッチング処理が特 性向上に効果的であることを報告した。 実験結果についての考察も十分になされており、質問に対する回答もほぼ的確であった。 よって、合格とする。】