平成
27 年度二国間クレジット取得等インフラ整備調査事業
CDM・JI の運用に係る国際的枠組に関する調査
報告書
平成 28 年 3 月
はじめに 2012 年に京都議定書第 1 約束期間は終了したが、我が国は引き続きカンクン合意に基 づき温暖化対策に取組むことが求められている。途上国における温暖化対策の取組みを支 援する上で、京都メカニズムは、今後も重要な位置を占めるとともに、我が国の優れた技 術の国際的な普及の観点においても、CDM(クリーン開発メカニズム)及び JI(共同実 施)を積極的に推進することは極めて重要な政策的課題である。 一方で、我が国は、世界に誇る低炭素技術や製品の普及等を積極的に推進し、世界規模 での地球温暖化対策を進めていくため、CDM を補完し低炭素技術(省エネ技術、新エネ 技術、石炭火力等)の普及等による温室効果ガスの排出削減を適切に評価する新たな仕組 みである「二国間クレジット制度(以下、JCM)」の推進のため、積極的な取り組みを実 施している。 さらに2020 年以降の温暖化対策に関する国際的な枠組に関する交渉も進められ、2015 年の12 月にパリで開催された COP21 において、難航した交渉の末、ついにパリ協定が採 択された。このパリ協定では、6 条において、協力アプローチ(6 条 2 項)、持続可能な発 展メカニズム(6 条 4 項)などの市場メカニズムに関する規定が置かれることになった。 これらのパリ協定の下での市場メカニズムの具体的な内容は、今後の交渉によって決定 されることになっており、現時点では明らかにはなっていないが、既存の京都メカニズム における実績、経験を踏まえた制度構築がなされると予想される。 そのため、国際的なクレジット制度として、先行して設けられたCDM や JI において指 摘されている、様々な課題(透明性、実用性など)を分析することは、今後のパリ協定の 下での市場メカニズムの検討の際にも有益なものになると考えられる。 そこで本調査では、CDM 理事会及び JI 監督委員会における実際の議論内容に関してレ ビューを行いつつ、CDM 理事会及び JI 監督委員会で行われている議論の内容、そして議 論の進め方の在り方について、現状の課題を抽出しつつ、分析・評価を行った。 本報告が、CDM・JI の運用に係る国際的枠組の検討と、これらメカニズムの有効活用 に向け貢献するとともに、JCM における制度運用の参考となれば幸甚である。 2016 年 3 月 (一財)日本エネルギー経済研究所 ii
目次
第 1 章 CDM 事業審議に関する調査・分析、課題の抽出、今後の在り方についての検討 ... 1 1.2015 年度の CDM 運営動向の概観 ... 3 2.プロジェクト ... 5 (1). 集計... 5 (2). 主なプロジェクトの動向 ... 9 3.プログラム CDM ... 14 4.方法論 ... 16 (1). 個別方法論の状況 ... 16 (2). CDM の横断的課題及び進展... 17 5.2015 年の京都クレジット市場動向 ... 20 (1). 低迷する価格と新たな需要 ... 20 (2). 韓国-2020 年までの CER の最大の需要国- ... 20 (3). 緑の気候基金と国際民間航空機関の動向 ... 21 (4). パリ協定の下での京都メカニズム ... 21 6.CDM 理事会の審査体制のあり方、審査手続きの効率化、改善の方向性 ... 22 7. 第 11 回締約国会合(CMP11)における京メカに関連する論点をめぐる議論 ... 24 (1). 京都メカニズムに関連する議題 ... 24 (2). 交渉の経緯・結果概要 ... 24 (3). CDM に関する事項及び JI に関する事項の結果 ... 25 付録2015 年度の CDM 理事会報告 ... 27 第83 回 CDM 理事会報告 ... 27 第84 回 CDM 理事会報告 ... 38 第85 回 CDM 理事会報告 ... 44 第86 回 CDM 理事会報告 ... 53 第87 回 CDM 理事会報告 ... 62 第 88 回 CDM 理事会報告 ... 71 CDMEB サイドイベント ... 78 第 2 章 JI 事業審議に関する調査・分析、課題の抽出、今後の在り方についての検討 ... 81 1. 2015 年度の JI 関連の状況分析と JI 監督委員会の検討動向 ... 83 (1). プロジェクト動向分析 ... 83 (2). 第 11 回京都議定書締約国会合(CMP11)における決定 ... 85 (3). JI の審査体制のあり方、審査手続きの効率化、改善の方向性 ... 85 2.各 JI 監督委員会での主なポイント ... 87 iii付録:2015 年度の JI 監督委員会報告 ... 89 第36 回 JI(共同実施)監督委員会 報告 ... 89 第37 回 JI(共同実施)監督委員会 報告 ... 95 第38 回 JI(共同実施)監督委員会 報告 ...102 JISC サイドイベント ...108 iv
第 1 章 CDM 事業審議に関する調査・分析、
課題の抽出、今後の在り方についての検討
1.2015 年度の CDM 運営動向の概観
京都議定書のもとに設けられた京都メカニズムの一つ、クリーン開発メカニズム(CDM) は、京都議定書締約国会合(CMP)において、その運営方針は決定されるが、実際の運営 はCDM 理事会によってなされている。CDM 理事会では CDM プロジェクトサイクル全 般の規則を決定するとともに、CDM プロジェクトの登録、認証排出削減量(CER)の発行 などを行い、京都議定書のもとでCDM を実施する中心的な役割を担っている。CDM 理 事会は、毎年、複数回の会合が開催されるが、2015 年度においては第 83 回(2015 年 4 月)から第88 回(2016 年 3 月)まで計 5 回開催された。はじめに CDM 理事会における 2015 年度の CDM 運営動向を概観する。 2014 年 12 月の第 10 回京都議定書締約国会合(CMP10)では、CDM 理事会に対して、 幾つかの作業の実施が要請されている。具体的には、登録手続き、検証手続きの簡素化の ために、全ての規模のプロジェクトにおいて同一のDoE が有効化審査、検証手続きを実施 することについて検討すること、自動的に追加性を認めるプロジェクトについて更に手続 きを簡素化すること、PoA(programme of activities)における重大な欠陥(significant deficiency)による影響を考慮しながら、環境十全性を踏まえて PoA の開発促進のために、 PoA の規則についての修正を検討することなどである。 以下、プロジェクト、プログラム CDM、方法論、認定、クレジット市場分析の順に CDM 理事会における議論の要点についてまとめるとともに、CDM 理事会の審査体制のあ り方、審査手続きの効率化、改善の方向性等について課題を抽出し、考えられる改善の方 向性についての検討結果をまとめる。 32.プロジェクト
(1). 集計
本項では、UNEP の CDM Pipeline および UNFCCC のホームページにおいて公開され ているデータに基づいて、CDM プロジェクトの集計を行った結果を概観する1。 (有効化審査) 2015 年に有効化審査のためのパブリックコメントが行われた CDM プロジェクトは 60 件、予想排出削減量は 417 万 tCO2e である。その結果、累計のプロジェクト件数は 12,337 件、予想排出削減量は 163,512 万 tCO2e となった。CDM プロジェクトの件数お よび予想排出削減量は 2011 年以降から減少が続いている。プロジェクト件数も同様に 2015 年には 60 件まで落ち込んだ。ホスト国別にみると、インドは 35 件あり、プロジェ クト件数の58%を占めている。次いで、後発開発途上国(LDC)であるラオスのプロジェク トが5 件提出された。一方、予想排出削減量ではラオスの 118 万 tCO2e が最も大きい。 これは、大規模な排出削減が予想される水力発電のプロジェクトが2 件あるためである。 表 1:有効化審査のためのパブリックコメントが行われたプロジェクト プロジェクト数 (件) 予想排出削減量2 (万 CO2 換算トン) 2003 5 510 2004 64 724 2005 580 10,576 2006 1,099 19,081 2007 1,852 22,060 2008 1,685 17,507 2009 1,291 16,257 2010 1,379 16,469 2011 2,114 27,487 2012 1,900 27,123 2013 202 3,443 2014 106 1,858 2015 60 417 累計 12,337 163,512 (出所)UNEP RISOE より日本エネルギー経済研究所作成 1集計期間は2003 年から 2015 年 12 月 31 日までを対象としている。 2 プロジェクト件数および予想排出削減量は、UNEP の CDM Pipeline に基づいて集計した。 しかし、CDM Pipeline では登録済みのプロジェクトにおいて、有効化審査と登録の際に排出 削減量が異なる場合は、登録時の削減量のみが記載されるデータの制約がある。このため、集 計結果は有効化審査時に記載されている予想削減量とは一致しない可能性がある。 5
(登録) 2015 年に登録された CDM プロジェクトは 64 件、年平均排出削減量は 975 万 tCO2e である。累計のプロジェクト件数は7,683 件、年平均排出削減量は 99,631 万 tCO2e とな った。2012 年に累計プロジェクト数の 42%を占める 3,236 件のプロジェクトが登録され て以降、プロジェクト件数は減少を続けている。前年と比較すると、2015 年の登録件数は 約 6 割減となった。2015 年に登録されたプロジェクト件数を国別にみると、インドの割 合が最も高い。インドをホスト国とするプロジェクトは38 件登録され、2015 年に登録さ れたプロジェクト件数の59%を占めた。このように、プロジェクト件数ではインドが最も 多いが、年平均排出削減量ではバングラディッシュがインドを上回っている。2015 年にバ ングラディッシュをホスト国とするプロジェクト(パイプラインからのガス漏洩防止)が 1 件登録されたが、このプロジェクトによる年平均排出削減量は 438 万 tCO2e であり、イ ンドの年平均排出削減量の合計である242 万 tCO2e を 1 件のプロジェクトで上回ってい る。これは、現在、インド国内で開発されているプロジェクトの多くが、比較的、小規模 なものに留まっていることを示しているとも言えるだろう。なお、2015 年にはブルキナフ ァソのCDM プロジェクトが初めて登録された。 表 2:登録プロジェクト プロジェクト数 (件) 登録排出削減量 (万 CO2 換算トン) 2003 0 0 2004 1 67 2005 62 2,786 2006 409 7,931 2007 426 8,162 2008 431 5,726 2009 684 9,308 2010 809 10,158 2011 1,107 13,310 2012 3,236 36,404 2013 298 3,760 2014 156 1,045 2015 64 975 累計 7,683 99,631 (出所)UNEPRISOE ホームページより日本エネルギー経済研究所作成 7
(CER 発行)
2015 年の CER 発行件数は 473 件、CER 発行量は 1 億 2,123 万 tCO2e である。累計の CER 発行件数は 8,637 件、CER 発行量は 16 億 4,320 万 tCO2e となった。CER 発行件数 は、2013 年の 2,023 件をピークに減少を続けており、2015 年は前年比で 18%減となった。 一方、CER 発行量は、前年より約 2,000 万 tCO2e 増加している。これは、2015 年 5 月に 通年の発行量の 3 分の 1 を占める約 4,000 万 tCO2e が発行された影響が大きい。背景に は中国でHFC や N2O を削減するプロジェクトによる大規模な CER 発行があったためで ある。そのため、2015 年における国別の CER 発行量では、中国が最も多く、2015 年に 発行されたCER の 43%にあたる 5,297 万 tCO2e を発行している。2 番目の発行量を持つ インドが895 万 tCO2e であることを踏まえると中国の発行量は大きいと言える。ただし、 この傾向は発行件数に目を向けると様相に変化が見られる。2015 年の中国における発行件 数は141 件であり、全発行件数の 30%を占める。一方、インドは 118 件であり、25%を占 める。発行件数では、中国とインドは拮抗しているものの、発行量では大きな違いがある ことがわかる。このことから、中国では1 件当たりの発行量が大きいプロジェクトが、多 いことを示している。 表 3:CER が発行された件数
CER 発行件数 CER 発行量 (万 CO2 換算トン)
2003 0 0 2004 0 0 2005 4 10 2006 126 2,569 2007 313 7,669 2008 472 13,787 2009 522 12,343 2010 618 13,240 2011 1,534 31,952 2012 1,976 33,937 2013 2,023 26,531 2014 576 10,159 2015 473 12,123 累計 8,637 164,320 (出所)UNFCCC および UNEP ホームページより日本エネルギー経済研究所作成 8
(2). 主なプロジェクトの動向 (大規模プロジェクトの登録) 2014 年は、年予想排出削減量が 100 万 tCO2e/年を越えるプロジェクトが見られなかっ たが、2015 年 1 月から 2015 年 12 月までに登録されたプロジェクトにおいて削減量 100 万tCO2e/年以上のプロジェクトは2件あった。2015年に登録されたプロジェクトの中で、 年間の予想排出削減量の大きいもの上位5 つのプロジェクトをまとめた。 表 4:主要な登録されたプロジェクト(2015 年 1 月から 2015 年 12 月) Ref. 登録日 プロジェクト名 種類 方法論 年平均 削減量 (万 tCO2) ホスト国 DOE 10077 2015/3/17
Reducing Gas Leakages within the Titas Gas Distribution Network in Bangladesh 漏洩 防止 AM23 438 バ ン グ ラ デ ィ ッ シ ュ TÜV -Rhein 9124 2015/7/31
Grid connected natural gas based power project in Raigad District, Maharastra, India
燃料
転換 AM29 133
インド Sirim
9856 2015/5/13 130 MW Aras (Gara Chilar) Hydropower Plant
水力
発電 ACM2 62 イラン KFQ 10188 2015/9/8 Itezhi Tezhi Hydro Power 水力
発電 ACM2 59 ザンビア SGS 9360 2015/5/21 Project Asona - CCGT – Takoradi
- Ghana 省エネ ACM7 35 ガーナ BV Cert (出所)UNFCCC および UNEP ホームページより日本エネルギー経済研究所作成 2015 年に登録されたプロジェクトの内、最も年平均削減量が大きいのは LDC に属する バングラディッシュのガスパイプラインの漏洩防止プロジェクトである。このプロジェク トでは、年間438 万 tCO2e が削減される見込みである。次いで、年間で 133 万 tCO2e を 削減するインドの燃料転換プロジェクトが登録されている。しかし、その他のプロジェク トはいずれも100 万 tCO2e 下回るプロジェクトである。この様に、プロジェクトの登録 件数の減少に加え、削減量の小規模化が顕著に見られる。 (プロジェクト登録とCER 発行の棄却) 2015 年には 1 件のプロジェクト登録申請が CDM 理事会により却下された(2013 年は 9
39 件、2014 年は 4 件)。その概要は次のとおりである。 ホスト国:ウズベキスタン 投資国:チェコ共和国 方法論:AM0029 なお、CER 発行については、2015 年 1 件(2014 年 2 件)が棄却された。 (今後のプロジェクトの動向) 今後のプロジェクトの動向をみるために、2015 年 1 月から 2015 年 12 月までに有効化 審査のためパブリックコメントに付された主なプロジェクトを一覧にしたのが表5 である。 表 5:有効化審査のためパブリックコメントに付された主要なプロジェクト (2015 年 1 月から 2015 年 12 月) プロジェクト名 ホスト国 種類 方法論 年平均 削減量 (万 tCO2e) コメント期間
Nam Ou 5 Hydropower Project ラオス 水力
発電 ACM2 52 2015/12/2 Beijing Haidian Beibu Gas-fired
Cogeneration Project 中国 省エネ AM107 43 2015/10/30 Clinker Optimization in cement types
production at Derba MIDROC cement plant
エチオピア セメント ACM5 42 2015/10/28
Nam Ou 6 Hydropower Project ラオス 水力
発電 ACM2 39 2015/12/2 Energia dos Ventos I, II, III, IV and X
CDM Project (JUN1184), Brazil ブラジル
風力 発電 ACM2 23 2015/9/23 (出所)UNFCCC および UNEP ホームページより日本エネルギー経済研究所作成 2014 年に有効化審査のためパブリックコメントに付されたプロジェクトは、上表からわ かるようにいずれも概ね50 万 tCO2e 以下のプロジェクトである。そのため、将来的に登 録されるプロジェクトは、小規模化が続くと考えられる。また、ホスト国に目を向けると ラオスやエチオピアといった LDC 諸国が上位 5 件の内、3 件を占めている点が注目され る。したがって、今後のCDM プロジェクトは小規模かつ LDC をホスト国とするプロジ ェクトが中心となる可能性がある。 10
(中国およびインドの動向) これまで、CDM における最大のホスト国は中国であった。登録されているプロジェク ト数は3,763 件であり、全体の約半数を占めている。また、CER の発行量で見ても、中国 は9 億 6,025 万 t-CO2e 分のクレジット発行しており、これまでの累計発行量の約 6 割弱 を占めている。このように、累計では中国が大きな割合を占めているが、2013 年以降は、 インドの存在感が高まってきている。インドは、累計でプロジェクト登録件数20.7%、CER 発行量12.8%のシェアを持ち、中国に次ぐ CDM のホスト国である。しかし、表 1 からわ かるように、2013 年以降のプロジェクト件数に焦点を当てると、インドは大きくシェアを 伸ばしている3。インドの登録プロジェクト件数は、2013 年 115 件(39%)、2014 年 69 件(44%)、2015 年 38 件(59%)となっており、件数は減少しているものの、インドを ホスト国とする CDM プロジェクトの割合が増加していることがわかる。一方、中国は 2013 年 61 件(20%)、2014 年 19 件(12%)、2015 年 1 件(2%)と、プロジェクト件数 およびシェア共に減少している。 中国をホスト国とするプロジェクトの登録が減少している背景としては、中国の排出量 取引制度で、CDM 由来のクレジットの利用が制限されていることが原因と考えられる。 中国では、2013 年以降、地方レベルのキャップ&トレード型の試行的な排出量取引制度が 2 省 5 都市で実施されている。この試行的排出量取引制度では、自主的排出削減プロジェ クト制度の下で発行されるChinese Certified Emission Reductions(CCER)と呼ばれる クレジットも目標達成に利用することが認められている。 自主的排出削減プロジェクト制度は 2012 年から開始された中国独自のベースラインク レジット型の排出量取引制度であり、自主的排出削減プロジェクト制度に登録するための 要件として、規制当局の規定に則った新規プロジェクトおよびクレジットを発行していな いCDM プロジェクトなどの条件が設けられている。このように CDM プロジェクトが、 自主的排出削減プロジェクトとして実施される道は開かれているものの、上記の試行的な 排出量取引制度を実施している多くの地方では、CDM 由来によるクレジットの利用を制 限している。そのため、中国国内のキャップ&トレードでクレジットを利用することを想 定したプロジェクトは、CDM の手続きを経ることなく、自主的排出削減プロジェクトに 登録されていると考えられる。 このような動向は、中国をホスト国とするCDM の有効化審査件数の推移からも伺える。 中国の有効化審査件数は、2014 年 6 件、2015 年に至っては 1 件であった一方、2014 年 末までに自主的排出削減プロジェクトに登録された件数が 86 件に上ることからも明らか である。2017 年には全国レベルのキャップ&トレード型の排出量取引制度が導入される予 定であり、今後の中国におけるプロジェクト動向は、全国レベルの排出量取引制度の制度 設計に依存すると考えられる。 3 あくまでプロジェクト件数ベースでみた場合であり、登録年削減量でみた場合は比較的小規 模プロジェクトが多いこともあり、インドの占める割合は高くない。 11
一方で、インドにおいて新規のCDM プロジェクトが登録されている理由は明らかでは ない。一部では、インドの事業者がクレジット価格の低迷により、損失を被っているとの 報道もある中 4、どのような思惑の下、インドで CDM プロジェクトが開発されているか は不明確である。ただし、インドで 2013 年以降登録されているプロジェクトは、1 件を 除き投資国がないユニラテラルプロジェクトであるため、現地の事業者は何らかの需要を 見込み先行投資している可能性がある。 表 6 2013 年以降の中国とインドにおける有効化審査・登録件数動向 有効化審査件数 登録件数 国名/年 2013 2014 2015 2013 2014 2015 中国 43 件(21%) 5 件(5%) 1 件(2%) 61 件(20%) 19 件(12%) 1 件(2%) インド 92 件(46%) 64 件(60%) 35 件(58%) 115 件(39%) 69 件(44%) 38 件(59%) (出所)UNFCCC および UNEP ホームページより日本エネルギー経済研究所作成 (LDC 諸国における CDM プロジェクトの動向) 2013 年以降、LDC をホスト国とする CDM プロジェクトが増加している。表 7 に示さ れているように、LDC をホスト国とするプロジェクト件数は 2012 年までは 59 件、2013 年以降は37 件と減少しているものの、プロジェクト合計に占める LDC プロジェクトの比 率は高まっている。また、プロジェクトの大規模化も顕著である。年平均削減量の合計は 2012 年までは 638 万 t-CO2e、2013 年以降は 1,171 万 t-CO2e であり、1.84 倍になって いる。この年平均削減量の増加は、2013 年に登録されたブータンの水力発電プロジェクト5 と 2015 年のバングラディッシュにおけるガスの漏出削減プロジェクト 6の様な大規模な プロジェクトが実施されていることによる。 このような LDC におけるプロジェクトの増加や大規模化が進んだ背景としては、クレ ジット需要者であるEU 域内排出権取引制度(EU-ETS)の動向が影響している。EU-ETS では、排出権の供給が過剰であり、取引価格が低迷している。そのため、第3 フェーズ(2013 年から2020 年)では、CER を含む外部クレジットの利用が制限されている。ただし、こ の規則ではLDC は対象外とされており、LDC をホスト国とする CDM プロジェクトによ り、発行されたCER は EU-ETS で利用できる。そのため、欧州での CER 需要を見込み、 LDC での CDM 開発が実施されていると考えられる。
4 The TIMES OF INDIA (2014) “Companies holding carbon credits stare at 'real loss'” URL:
http://timesofindia.indiatimes.com/business/india-business/Companies-holding-carbon-cre dits-stare-at-real-loss/articleshow/31803387.cms
5 年平均削減量は、418 万 t-CO2e。プロジェクト名;” Punatsangchhu-I Hydroelectric Project, Bhutan”
6 年平均削減量は、438 万 t-CO2e。プロジェクト名;”Reducing Gas Leakages within the Titas Gas Distribution Network in Bangladesh”
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表 7 LDC 諸国をホスト国とする CDM プロジェクト動向 2012 年まで 2013 年以降 LDC LDC 以外 LDC(%) LDC LDC 以外 LDC 比(%) プロジェクト件数 59 7,107 0.85 % 37 481 7.14 % 年平均削減量(万 t-CO2) 638 93,856 0.68 % 1,174 4,606 20.32 % プロジェクトあたりの年平均 削減量 10.8 13.1 - 31.7 9.6 - ※データは、登録済みのプロジェクトを対象としている。 (出所)UNFCCC および UNEP ホームページより日本エネルギー経済研究所作成 13
3.プログラム CDM
プログラム CDM(PoA)とは、企業や公的主体が自主的かつ調整して実施する政策・ 措置又は目標設定による活動である7。PoA は CPA(CDM programme activity)と呼ば れる個別に実施される活動の集合体によって構成される。なお、各PoA において CPA の 個数に制限はない。 2015 年 12 月までの PoA の登録状況は 291 件(2016 年 3 月 1 日現在)である。2009 年7 月に最初の PoA が登録されてから徐々に拡大し、2012 年は 194 件もの PoA が登録さ れたが、以降の新規登録数は徐々に縮小している。 図 1:PoA 登録件数の推移 (出所)UNFCCC ホームページより日本エネルギー経済研究所作成 図 2 はホスト国別の PoA 登録件数の割合(2016 年 2 月 3 日現在)を示している。登録 されたホスト国は総計72 カ国に上り、内訳としては中国が 11%と最も多く、以下、南ア フリカ共和国(9%)、インド(7%)と続いている。 7 具体的には、一般家庭における電球を LED 電球に交換プログラムを実施するようなプロジ ェクトなどがあげられる。 2 3 12 194 38 31 11 0 50 100 150 200 250 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 (暦年) (件数) 14
図 2 ホスト国別の PoA 登録件数割合
(出所)UNFCCC 公開データより日本エネルギー経済研究所作成
図 3 はホスト国別の CPA 登録件数の割合(2016 年 2 月 3 日現在)を示している。CPA の件数が最も多いホスト国はブラジルであり、約6 割を占めている。これはブラジルにお いて実施されている、PoA2767「Instituto Sadia de Sustentabilidade 社の 3S プログラ ムを用いた、動物性廃棄物管理システムから発生するメタン回収及び燃焼」の CPA 登録 数(1,050 件)によるものである。ブラジルの他は PoA 件数上位 3 カ国のうちインド、中 国が並んでいる。 図 3 ホスト国別の CPA 件数割合 (出所)UNFCCC 公開データより日本エネルギー経済研究所作成 15
4.方法論
(1). 個別方法論の状況 (新規方法論) 第 83 回CDM理事会から第 88 回CDM理事会に承認された方法論は以下の方法論である。 表 8:EB83 から EB88 までに承認された新規方法論 承認 方法論番号 方法論名 EB87 AM0116 航空機の電動地上走行システム 2015 年度中(2014 年 4 月~2015 年 3 月末)に開催された CDM 理事会において承認され た方法論は、大規模方法論(large scale)が 1 件のみとなっている。その他、2 件の事業 者から提案された新方法論について、理事会での検討の結果、既存の方法論に統合する形 で承認されている。 新規承認方法論の数は、近年、減少傾向にあり、2015 年になっても、この傾向は変わ らない。これは、後述するような市場の低迷と縮小を受けて、新規プロジェクトの開発が 停滞していることを示しているとも考えられる。 図 4:新規承認方法論件数の推移 (出典)各種資料から日本エネルギー経済研究所作成 (方法論のプロジェクトへの適用状況) 登録済みプロジェクトにおける方法論の適用状況をまとめたグラフは以下のとおりであ ようになっている。全体としては、ACM0002 の再生可能エネルギーを導入する方法論が最 20 25 19 9 4 2 0 5 10 15 20 25 30 2010 2011 2012 2013 2014 2015 16も多く使われており、3144 件となっている。次いで登録件数の多い、AMS-Ⅰ.D(1,855 件) は小規模方法論における再生可能エネルギーの導入を図る方法論であり、合計で 4,999 件 のプロジェクトに適用されている。この二つの方法論で、全体の約 65%を占める。この傾 向は、ここ数年、同様で大きな変動は見られない。 2015 年のみで見た場合でも、同様に再生可能エネルギーが登録プロジェクトの太宗を占 めている状況に大きな変化は見られない。2014 年も 2013 年と同様に、小規模方法論の再 生可能エネルギーの導入を図る AMS-Ⅰ.D が最も適用されている方法論となっている。 図 5:登録済みプロジェクトで適用されている方法論(件数) (出典)UNFCCC 公開データを踏まえ作成 図 6:2015 年に登録されたプロジェクトの方法論 (出典)UNFCCC 公開データを踏まえ作成 (2). CDM の横断的課題及び進展 (CDM の簡略化と合理化) 第84 回理事会において、CDM の簡略化と合理化に関するコンセプトノートが検討され ACM2, 3144, 41% AMS-I.D., 1855, 24% ACM1, 192, 3% AMS-I.C., 185, 2% ACM12, 143, 2% AMS-III.D., 108, 1% ACM6, 107, 1% その他, 1962, 26% AMS-I.D., 30, 39% ACM2, 19, 25% AMS-II.E., 4, 5% ACM12, 3, 4% AMS-I.C., 2, 3% AR-AMS7, 2, 3% その他, 16, 21% 17
た。このなかで検討された論点は、1)プロジェクト登録と実施の効率化、2)審査と検 証の要件の簡略化・柔軟化、3)登録・発行の変更等とクレジット発行機関の更新のプロ セスの迅速化・簡略化、4)方法論の明確化・簡略化、5)独立の第三者による審査・検 証機関の認定などの5 点である。全体を通した方針として、環境十全性を損なわない範囲 でCDM の合理化をすることが確認されるとともに、引き続きステークホルダーと議論を 続けていくこととされた。 この論点について、第86 回理事会、第 87 回理事会において、継続して議論が行われ、 簡素化と合理化にあたって以下の方向性が示された。 • 方法論開発、改訂および方法論などの関連する文書の明確化プロセスにおける迅速 化 • 承認レター提出方法についてオプションの提供 • CPA を追加する際の手続きの簡略化 • 登録後の方法論の自主的な更新および変更の容認 • クレジット発行期間開始日変更について柔軟性を高めること • 検証におけるDOE 変更の容認 • PoA の検証スケジュールに無制限での柔軟性を提供 • PoA に対するマテリアリティの適用の拡大 • 方法論の再申請の有効期間の延長 • 理事会による事前承認を必要としないプロジェクト登録後の変更の種類の増加 • バンドル解除の許可及びバンドリングプロジェクト活動の検証スケジュールに柔 軟性を持たせること この CDM の簡略化と合理化の取組は、CDM のプロジェクトの一連の手続きから方法 論のあり方まで包括的な内容となっており、上記の決定以外にも多くの点で検討が続けら れている。CDM をより使いやすいメカニズムにするために、今後は以下をはじめとする 議題について検討が進められる予定である。 • プロジェクト登録の迅速化のあり方 • より柔軟な検証プロセス • 追加性の自動承認のあり方 • より柔軟な方法論の適用 (CDM インフラのあり方) 第84 回理事会においては、CDM の制度基盤(CDM 登録簿、ITL などのインフラ、以 下CDM インフラ)を、今後、他の問題にどのように活用されうるか議論された。これは、 現在CER 需要は低迷している中で、CDM の制度基盤が、他の様々な制度(途上国の国内 政策における利用、成果主義型基金拠出制度への適用等)に利用されることがありうるか 18
らである。たとえば、メキシコでは 2014 年に炭素税が導入されたが、納税の代わりに同 量の CER を提出することもできる制度になっている。この他にも、京都クレジットの市 場動向においても説明するように韓国国内の排出量取引制度においても韓国国内の CDM プロジェクトによって得られる排出削減量を活用することも認められている。このため、 CDM の京都メカニズム以外での利用について検討をしていくことが決められた。 また、CDM のツールの利便性向上という観点では、第 87 回理事会において PDD 自動 作成のための方法論の電子化ツールに関するコンセプトノートについて議論された。この ように、制度的な簡略化・合理化と並行して、CDM インフラの改善について議論が進め られている。 (2020 年以降の CDM のあり方について) 2015 年 12 月にパリ協定が採択されたが、それに前後して CDM 理事会いおいても 2020 年以降のCDM のあり方について議論がなされている。 第84 回理事会においては、最新の炭素市場と政策動向の議論の中で INDC における市 場メカニズムの役割について議論がなされた。第 85 回理事化においては、これについて 理 事 会 の 議 長 ・ 副 議 長 が 共 同 実 施 監 督 委 員 会 (Joint Implementation Supervisory Committee)の議長・副議長と意見交換をした内容について報告があった。このなかで、 2020 年以降の両制度のあり方についてはコンセンサスは得られなかった。なお、これらの 議論はパリ合意の前であったこともあり、踏み込んだ議論はされなかったが、2016 年以降 の理事会においては2020 年以降の CDM のあり方についても議論が活発化していくもの と思われる。 19
5.2015 年の京都クレジット市場動向
(1). 低迷する価格と新たな需要 2012 年末に€1 を下回る価格になってから、以前として€1 を下回ったままであり、2015 年においては大きな値動きは見られなかった。京都議定書の第2 約束期間においては、日 本が排出削減目標を設定しなかったため、日本からの需要が見込まれなくなったことや、 欧州においても、景気低迷などの影響で、大きなCER の需要となっていた EU ETS から の需要が大幅に落ち込んだことなど、需要が供給を大幅に下回る状況が続いていることが、 このような価格低迷の、主要な要因になっている。 このような状況の一方で、僅かではあるが、従前の京都議定書の削減目標達成のための 需要以外の CER の新たな需要も見られるようになってきている。今後は、これらの需要 に供給するための取引が、主要なCER の取引市場となっていく可能性もある。ここでは、 この新しい需要として、どのようなものがあるのか見ていく。 (2). 韓国-2020 年までの CER の最大の需要国- 京都議定書の目標達成に変わる新たな需要として、取引が活発化してきているのが、韓 国からの需要である。韓国は、2013 年に国内の GHG 排出源となっている企業を規制対象 としたCap&Trade 型の排出量取引制度の導入を決定し、2015 年から制度の運営が始まっ ている 8。この制度の中では、規制対象企業に韓国国内で実施されている CDM プロジェ クトに由来するクレジットを、遵守に活用することを認めている。CER そのものの利用を 認めている訳ではなく、韓国企業が CDM 登録簿の中に保有する CER を取消した後に、 韓国政府が、取消された数量に等しいKorean Certified Emission Reduction(KCER)を 発行する。韓国の国内排出量取引制度では、このKCER の利用が認められている。 KCER の取得のためには、CDM 登録簿において自主的取消し手続きを行う必要がある ため、自主的取消しされた数量を確認することで、KCER の発行量が推測できる。CDM 理事会が発表した統計データによれば、2016 年 1 月末までに約 640 万トンの CER が取り 消されている。総量では、約940 万トンの CER が取消されているため、これまでに取消 されたCER の 67%に相当する量が、韓国で取消されたことになる。この取消された CER 全てに対してKCER が発行されたか不明ではあるが、最大でも 640 万トンの KCER が発 行された可能性がある。このことは同時に、韓国が新たな CER の需要となっていること も意味し、UNFCCC 事務局が作成した資料では、2020 年までに約 1900 万トンの需要が8 排出量取引制度には Cap & Trade 型とベースラインクレジット型の二つの制度がありうる。
Cap&Trade 型の排出量取引制度は、規制対象となっている産業分野において認められる排出 量の総枠(Cap)を設定した上で、規制対象企業・施設に排出枠を配分していく制度。この排 出枠は取引が認められ、排出枠の余剰が生じた企業・施設は、他の企業・施設に売却すること ができる。一方で、ベースラインクレジット型の排出量取引制度では、Cap は設定されずに、 個々の排出削減プロジェクトごとにプロジェクトを実施しない場合のベースライン排出量を算 定し、プロジェクト実施後の実際の排出量に対してクレジットを発行する。このクレジットは 取引され、Cap&Trade の規制対象企業・施設の遵守などに活用される。 20
見込まれるとの試算が示されている9。UNFCCC によれば、韓国からの需要が 2020 年ま でに見込まれる最大の需要となっている。韓国国内でのKCER の取引価格も、2016 年 2 月には15,000 ウォン(約 US$12、あるいは約€11)の価格を付けており、上記の欧州の取 引所ICE における取引価格よりも高い価格となっている。 (3). 緑の気候基金と国際民間航空機関の動向 新興国・途上国からのCER の需要が、今後、CER の主要な需要となりつつあるが、現 状では限界もある。これらの国は国別登録簿が整備されておらず、自国以外の CER を取 得することが出来ないためである。そのため、自国内で実施しているCDM プロジェクト に由来する CER 以外は取得できず、現時点では、中国、韓国などが、先進国に変わり、 他の途上国からのクレジットの新たな需要の受け皿とはならないだろう。 このように新興国からのクレジットへの需要の限界がある一方で、その他の予想される 需要として、緑の気候基金(GCF)や、国際的な民間航空部門が CER の潜在的な需要と なっていることが指摘され、CDM 理事会も GCF 事務局や、国際的な民間航空部門への規 制を検討している国際民間航空機関(ICAO)との協議も行われている。しかし、これま でのところ、どれだけの需要が見込まれるのか明らかになっていない。 さらに、2015 年 12 月にパリで開催された COP21 において採択された 2020 年以降の 国際的な温暖化対策の枠組を定めたパリ協定において、市場メカニズムの導入が決定され たものの、京都メカニズムがどのような扱いとなるのか明確にされていない。 (4). パリ協定の下での京都メカニズム 今後、パリ協定の下での市場メカニズムについて、具体的な制度が検討されていくこと になっているが、既に構築されている京都メカニズムを何らかの形で活用する可能性もあ る。CDM 理事会、JI 監督委員会において、これまでに様々な制度運営に関する手続きや 規則を蓄積し、さらに登録簿やInternational Transaction Log などのインフラを構築して きた。これらの京都メカニズムの下で得られた“資産”を全て無視して、改めて別の規則、 手続き、インフラを整備するためには、更なる労力、費用、時間が必要とされるため、効 率的な制度運用の観点から見れば、既存の制度を活用していくことが優先される可能性が 高いためである。 このように何らかの形で、京都メカニズムが存続していく可能性はあるものの、それが どのような形で存続するのか不確実な部分も多い。このような不確実性は市場への参入の 際に大きな障壁となりえる。そのため、パリ協定の下での市場メカニズムが、どのような 制度となるのか、その具体的な内容が明らかになっていくまでは、市場に参入する企業も 限定的なものに留まり、結果として市場の拡大も期待できない状況が、当面は継続するの ではないかと考えられる。
9 “Update on Policies & Markets” Sept 2015, JISC37 での配布資料。
21
6.CDM 理事会の審査体制のあり方、審査手続きの効率化、改善の方向性
以下では、CDM プロジェクトの登録および CER クレジット発行申請の提出状況につい てまとめる。 登録および発行の申請件数の推移について、2015 年の毎月の推移と 2006 年以降の年間 の推移を下記の図のようにまとめた。この図から、登録件数、発行件数ともに 2012 年を ピークに以降では下落している様子が伺える。ピークとなった 2012 年の登録・発行申請 が急増した要因として、同年 12 月に京都議定書第一約束期間が終了することを受けての 駆け込みが考えられる。その後の 2013 年以降は大きく減少しているが、特に登録申請の 減少が著しく、新規のプロジェクト開発が停滞している現状を反映したものと言えるだろ う。 登録申請と発行申請の割合で見ると、2009 年までは登録申請のほうが発行申請よりも多 かった。そして、2010 年以降は発行申請数の方が多く、2012 年に一時的に登録申請数が 上回ったものの、それ以外については、発行申請が登録申請を上回る傾向が続いている。 図 7 毎月の申請 CDM 登録・CER 発行件数の推移(2015 年) (出所)UNFCCC 発表資料を踏まえてエネ研作成10 10 CDM insights で公表データを踏まえて作成。以下のウェブ参照 https://cdm.unfccc.int/Statistics/Public/CDMinsights/index.html#ptimes 10 11 6 6 7 7 9 4 5 6 18 6 48 27 38 35 42 33 36 35 32 37 35 21 0 10 20 30 40 50 60 20 15 年 01 月 20 15 年 02 月 20 15 年 03 月 20 15 年 04 月 20 15 年 05 月 20 15 年 06 月 20 15 年 07 月 20 15 年 08 月 20 15 年 09 月 20 15 年 10 月 20 15 年 11 月 20 15 年 12 月 登録申請 発行申請 22図 8 年間の申請 CDM 登録・CER 発行件数の推移(2006 年~2015 年) (出所)UNFCCC 発表資料を踏まえてエネ研作成 UNFCCC 事務局が登録申請から登録決定(あるいは却下)までに要する時間の推移を 年毎にまとめたデータ(2016 年 1 月 1 日発表)によれば、直近の過去 12 カ月に登録(あ るいは却下)されたプロジェクトの登録申請から決定までに要する時間の中央値は2.1 カ 月であり、2010 年以降の中央値 2.6 カ月より短縮されている。 ただし、このような登録手続きに要する時間の短縮化は、事務局における事務処理能力 の改善によるものではなく、処理する申請数自体が減少したことが影響していると考えら れる。 2012 年以降、登録・発行申請数の減少傾向は見られているが、このような登録申請数の 減少は登録手数料収入の減少、そしてCDM 理事会の財源縮小に繋がる。このような財源 の縮小は、結果として、担当職員の削減と事務局における事務処理能力の低下につながる 恐れがある。 今後も登録手数料収入の大幅な増加が見込めない中で、どのように必要な財源を確保し、 経験を積んだ職員を維持していくのかが、大きな課題となっていたが、2015 年に、事務局 職員の大幅な人身削減が行われた。これにより、ある程度の期間、組織を維持することが 可能になったものの、大幅に減員された中で、一定水準の能力を維持し続けることが今後 の課題となっていると言えるだろう。 このように事務局体制の維持については一定の目途は付いたもの一方で、4(2)CDM の横断的課題の中で述べたように、理事会においてはCDM プロジェクトの登録手続き、 CER 発行手続きなどの CDM に関連する手続きを簡素化、迅速化するための検討作業が開 始されている11。安易な簡素化はCDM の信頼性を損なう事態を招く可能性もあり、慎重 な議論が必要とされ、検討作業には長い時間を要するものと予想される。 この検討作業の結果、どのような手続きの改正が行われるのか、現時点では予測は出来 ないが、潜在的により簡素、かつ迅速に手続きを進めることを可能なものへと変える可能 11 CDM 理事会における詳細な議論については、附属資料の以下の第 86 回 CDM 理事会報告書、 第87 回 CDM 理事会報告書を参照。 444 572 712 742 817 1044 3270 220 171 95 156 359 503 588 870 1491 2096 1631 540 419 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 登録申請 発行申請 23
性も含んでいる。
7. 第 11 回締約国会合(CMP11)における京メカに関連する論点をめぐる議論
(1). 京都メカニズムに関連する議題 2015 年 12 月にフランスのパリで開催された京都議定書の第 11 回締約国会合(CMP11) において京都メカニズムに関して、幾つかの論点が議論された。交渉された論点は以下の 通りである。 ○CMP における議題 議題4 :クリーン開発メカニズム(CDM)に関する事項 議題5 :共同実施(JI)に関する事項 ○実施に関する補助機関(SBI)における議題 議題5(a) :CDM のモダリティと手続きのレビュー 議題5(b) :JI ガイドラインのレビュー 議題5(c) :JI 排出削減ユニットの継続的発行,移行,獲得の迅速化のためのモダリティ ○科学上及び技術上の助言に関する補助機関(SBSTA) 議題11(a) 京都議定書第 5,7 及び 8 条関係を含む京都議定書の方法論に関する決定 2~ 5/CMP.7 の実施の影響 議題11(b) 第 2 約束期間における QELRC を持たない付属書Ⅰ国のアカウンティング・報 告・レビュー 議題11(c) 京都議定書のドーハ修正におけるセクション G の中の文書の明確化 (2). 交渉の経緯・結果概要 ①CMP における議題 CMP における議題 4、議題 5 については第 1 週後半から協議が開始され、第 2 週前半 に集中的に交渉された。今回のCMP においては、例年とは異なり、各国とも交渉におい て、柔軟な姿勢で協議に臨む場面が目立った。各国の主張は、これまでの CMP の主張と 大きな違いはなく、環境十全性を重視する立場をとる EU や AOSIS と、プロジェクトの 開発促進や既存のCDM の維持を狙う途上国の間の対立は見られ、協議には相応の時間を 費やしたものの、各国とも自国の主張に固執せず、合意が優先される傾向が見られた。こ れは、各国とも、並行して実施されているパリ協定に関する協議を優先し、そのための時 間を確保するために、その他の議題については合意を急いだためである。幾つかの文言に ついて、協議に時間を要したが、文言の修正などを経て、最終的な合意文書にのこされる ことが多かった。 今回のCMP で採択された決定文書において特徴的であったのは、京都議定書の目標達 成以外の CDM の用途を検討することや GCF を念頭においた気候ファイナンスの活用に 24ついて可能性を探ることなどが、CMP 決定文書の中で記述されたことである。低迷する 市場動向、特に京都議定書の目標達成に向けた需要がほぼ払底してしった現状で、今後、 CDM の存続を図るためには、京都議定書の目標達成以外の需要の可能性を探ることにつ いて否定するこをが難しくなってきたと言えるだろう。 JI に関する協議においても、CDM と同様に合意を優先する交渉姿勢が見られた。また、 冒頭でJISC 委員長から、実質的に JISC は活動停止状況であるとの説明がなされ、現状 では、JI も CDM と同様な問題に直面していることが明らかになった。このような状況を 踏まえ、議論の中では、2020 年以降の役割について検討することなどが協議された。これ も、従前からのJI の用途である京都議定書目標達成以外の、新たな JI の役割を探ろうと する動きの一つであると言えるだろう(詳細は第2 章参照)。 ②SBI 及び SBSTA における議題 SBI の下での議題についても、CDM や JI に関するガイダンスと同様に、各国ともパ リ協定の交渉を優先する姿勢が見られた。これらの議題については第1 週に交渉されたが、 今回のSBI において合意が難しく、また決定文書を採択する必要性のない議題、特に SBI 議題5(a)、(b)については、一定の協議を経たうえで、継続協議とすることに早々に各 国とも合意した。また、SBI 議題 5(c)については、6 月にボンで開催された補助機関会 合において合意された内容を踏まえ、協議の時間さえ設けられずに検討作業が終了したと する文書が作成された。 一方で、SBSTA における議題、京都議定書の第 2 約束期間の実施細則に関する協議は 難航した。第1 約束期間とは異なり第 2 約束期間においては規制対象ガスが追加され、約 束期間の7 年となり、さらに目標を持たない附属書 B 国も現れるなど、第 1 約束期間にお て適用されていた実施細則を、そのまま適用するのが難しく、実施細則の全般的な見直し が必要となっていたためである。細則の改正作業にあたっては、個々の細則について各国 の見解が異なり、合意を得るのに長い時間を要した。 最終的には合意が得られたものの、各国の見解が最後まで対立し、パリ協定以外では、 数少ない交渉が難航した議題の一つであった。結果としては、文書が無事に採択され、京 都議定書の第2 約束期間の実施細則が明確されることになった。 (3). CDM に関する事項及び JI に関する事項の結果 ①CDM に関する決定事項 今回のCMP において合意された決定事項は以下の事項である。 PDD を提出せずに、方法論の改訂申請を認めること また、PoA に関連する規則をまとめた文書の作成などの作業が求められるとともに、既 25
に述べたように、京都議定書の目標達成以外のCDM の利用方法について検討すること、 そして GCF からの資金確保の可能性を探ることなどが招請された。その他、一般家庭を 対象としたプロジェクトのモニタリングにおけるデータギャップへの対応手続き、測定結 果の較正方法について地域毎の要件、セクターあるいは国で収集したデータの活用を検討 すること、標準化方法論の策定、登録申請手続きの電子化の促進などが求められている。 ②JI に関する決定事項 今回のCMP において合意された決定事項はないが、JI ガイドラインのレビューによっ て修正されたガイドラインを実施に移すために求められる作業を検討すること、利害関係 者からの懸念が表明された場合の対応、登録後の変更に対する有効化審査など幾つかの論 点について検討作業を行うことをJISC に要請することを合意した。また、他の市場メカ ニズムとの連携を検討することがJISC に要請された(詳細は第 2 章参照)。 ③5,7,8 に関する決定事項 京都議定書第2 約束期間におけるアカウンティング、レポーティングに関する細則が決 定された。この中には、第2 約束期間に排出削減目標を設定していない附属書 B 国のレポ ーティングに関する規定も含まれている。例えば森林吸収源に関する情報や国別登録簿に 関する情報などについて、第2 約束期間に排出削減目標を持たない場合でも報告が行われ ることになる。 26
付録 2015 年度の CDM 理事会報告
第
83 回 CDM 理事会報告
第83 回 CDM 理事会(EB83)が 2015 年 4 月 13 日から 4 月 16 日にドイツのボンで開 催された。 1.統治と管理 1.1 戦略的計画と方向性 理事会は、ニューヨークで開催された国連気候サミットとClimate Change Weekにお ける利害関係者および政策担当者と理事会メンバーとの相互作用に関する報告を留意 した。 理事会は、クレジットのオンラインプラットフォームにおける自主的取消しに関する 更新について留意した。この中で、第85回理事会にてプロトタイプの実施を計画して いること、2015年9月までに正式な立ち上げを目標とすることが報告された。また、事 務局に対して、COP21への政府高官の参加に際してカーボンフットプリント相殺に向 けた自主的取消しプラットフォームの使用を政府高官に要請する機会を探るよう奨励 した。 1.2 パフォーマンス管理 理事会は、2015年の作業計画における変更事項に留意しつつ、計画の更新を確認した。 理事会は、新たな領域でのCDM利用ポテンシャル促進ならびにCDMの地域分布の改善 に向け、「ナイロビフレームワークパートナーシップの2015年作業計画」に留意した。 理事会はまた、将来の作業計画と報告について、CDMの地域分布の促進のためのフレ ームワークの目的に限定して関連付けるべきであると要請した。ナイロビフレームワ ークパートナーシップ活動の結果と成果の報告において、これらの完成した活動概要 を含めるべきである。 1.3 理事会の業務を補助するための組織・機関 理事会メンバーと代理メンバーの個々の温室効果ガスの相殺について可能なオプショ ンについて検討し、継続して審議していくことに同意した。 1.4 パネルとワーキンググループの施行 下記3.1基準/ツールにおいて示した新規植林/再植林(A/R)CDMの様式と手続きの植 生回復プロジェクトの適用可能性について評価したコンセプトノートと、新規植林/再 植林(A/R)CDMプロジェクトにおける土地適格性の証明に関する費用対効果的な新 たなアプローチに関するコンセプトノートの審議結果を踏まえて、A/Rワーキンググル ープとの会合の開催に同意した。理事会はA/Rワーキンググループの議長および副議長 に対して会合日程の調整を要請した。 27
(a) CDM信認パネル 第71回CDM信認パネルの報告書に留意した。報告書は認定申込み状況や認定評価およ び他の認定に関係する問題に係る開発を含めた、パネルの作業結果に関係する情報を まとめている。CDM信認パネルの会合は34個の認定ケースを考慮しており、うち21個 はCDM認定基準に従い理事会による検討のため提出されたものである。 CDM信認パネル議長は、2つのパネルの勧告を発表した。1つはCDM信認パネルの作 業部会の組織に関連するもので、もう1つは認定の専門家認定名簿(Accreditation roster of experts)における専門家の評価頻度の減少に関するものである。
International Organization for Standarnization(国際標準化機構、ISO)の作業におい て、理事会の利益に関連する可能性のある分野について検討し、その結果の報告をCDM 信認パネルに対して要請した。 (b) 方法論パネル 第66回方法論パネルの報告書に留意した。報告書は方法論の提出や理事会に対する勧 告を含めた、パネルの作業結果に関係する情報をまとめている。 (c) 小規模ワーキンググループ 第47回小規模ワーキンググループの報告書に留意した。報告書は方法論の提出や理事 会に対する勧告を含めた、ワーキンググループの作業結果に関係する情報をまとめて いる。 2.個別案件 2.1 認定
CDM信認パネルからの勧告を検討し、E-0067 「China Certification Center, Inc. (CCCI)」における部門領域1-15を認定することで同意した。
以下の企業において正常に完了した、CDM信認パネルによる定例のオンサイト監視評 価の結果を了承した。
(a) E-0009「Bureau Veritas Certification Holding SAS (BVCH), central office (Neuilly-sur-Seine, France)」
(b) E-0022「TÜV NORD CERT GmbH (TÜV NORD), central office (Essen, Germany)」
(c) E-0031「Perry Johnson Registrars Carbon Emissions Services (PJRCES), central office (Troy, Michigan, United States of America)」
(d) E-0050「Hong Kong Quality Assurance Agency (HKQAA), central office (Hong Kong, People's Republic of China)」
(e) E-0061「Shenzhen CTI International Certification Co. Ltd (CTI), central office (Shenzhen, People's Republic of China).」
E-0031「RINA Services S.p.A. (RINA)」についての定例のオンサイト監視評価の結果 に関するCDM信認パネルによる勧告を検討し、部門領域6-8の認定を一時停止すること で同意した。理事会は「CDM認定基準(バージョン 06.0)」の57パラグラフに含ま れる要件(認定される分野について、最低でも1名の技術的な専門家が有効化審査/検証 作業に参加すること及び最低でも1名の技術的な専門家が技術専門家チームに参加す ること)について、RINAが満たさなかったことを確認し、一時停止を解除するための 条件(セクトラルスコープ6-8に関するについて専門家を準備すること、不足している 専門家についての対応策を2015年7月16日までに、その証拠を提出すること)について 合意した。 以下のDOEにおいてCDM信認パネルによる業務監査が問題なく完了したことを了承 した。
(a) E-0013 「TÜV Rheinland (China) Ltd. (TÜV Rheinland)」
(b) E-0021 「Spanish Association for Standardisation and Certification (AENOR)」
(c) E-0023 「Lloyd’s Register Quality Assurance Ltd. (LRQA)」
(d) E-0024 「Colombian Institute for Technical Standards and Certification (ICONTEC)」
(e) E-0037 「RINA Services S.p.A. (RINA)」
(f) E-0038 「SIRIM QAS INTERNATIONAL SDN.BHD (SIRIM)」 (g) E-0042 「Germanischer Lloyd Certification GmbH (GLC)」
(h) E-0046 「China Classification Society Certification Company (CCSC)」 (i) E-0052 「Carbon Check (India) Private Ltd. (Carbon Check)」
(j) E-0062 「EPIC Sustainability Services Pvt. Ltd. (EPIC)」 (k) E-0066 「Earthood Services Private Limited (Earthood)」
E-0057 「Instituto Brasileiro de Opinião Pública e Estatística Ltda. (IBOPE)」より より届け出のあった、2015年2月26日付での全ての認定資格の自主的取り下げを承認し た。 理事会は、「CDM認定基準改正の実施に向けた経過措置規定」のパラグラフ6(C)の規 定に従ってDORにより提出されたCDM認定基準(バージョン06.0)の遵守に関する宣 言の提出状況について留意した。 2.2 プログラム活動(PoA) 2015年4月16日までに280件のPoAが登録(CPAは全1,854件)。 2015年4月16日までにPoAに係るCERが2,474,663トン発行された。 2.3 登録 29
2015年4月16日までに7,627件のCDMプロジェクトが登録された。 2.4 発行 2015年4月16日までに15億5120万6661トンのCERが発行された。 3.規制事項 3.1 基準/ツール CDMプロジェクトおよびPoA基準 理事会は、方法論における優良事例の自主的な記載に関するするコンセプトノートを 検討し、方法論パネルおよび小規模ワーキンググループに対して、コンセプトノート において示された優先的に優良事例の自主的な記載が求められる方法論について勧告 を行うよう要請した。また、方法論パネルおよび小規模ワーキンググループに対して、 同様の方法論の間で優良事例の自主的な記載について検討する際には、相乗効果を考 慮するよう要請した。優先的に作業が実施されるのは以下の方法論である。 (a) 「ACM0001:埋立処分場ガスのフレア処理または利用」 (b) 「ACM0012:廃エネルギー回収プロジェクトによるGHG排出削減のための統 合方法論」 (c) 「AMS-Ⅲ.D:家畜糞尿管理システムにおけるメタン回収」 (d) 「AMS-Ⅲ.H:排水処理でのメタン回収」 理事会は、新規植林/再植林(A/R)の様式と手続きについて、京都議定書第10回締約 国会合(CMP10)において決定された植生回復プロジェクトへの適用可能性について 評価したコンセプトノートを検討した。理事会は、第86回CDM理事会にて検討するた め、(A/R)のワーキンググループに対して、この議題における勧告を準備するよう要 請した。また、理事会は、A/Rワーキンググループの検討作業は、CMPの決定で提示 された委任の範囲に限定すべきであるとの意向を示した。 理事会は、A/RCDMプロジェクト活動における新しい費用効果の高い土地適格性を判 断するためのアプローチに関するコンセプトノートついて、CMP10に示された要請を 踏まえて検討した。理事会は、第85回CDM理事会にて検討するため、A/Rワーキング グループに対して、この議題における勧告を準備するよう要請した。理事会は、この 議題に関して公共の意見を求めるために公開すること同意し、A/Rワーキンググループ に対しては得られた意見を考慮することを求めた。 CMP9の意思決定に含まれるCMPによる要請に基づき、理事会は、CDMプロジェクト 活動あるいはPoA下にあるCPAにおいて、クレジット期間終了後、同じ地理位置にお ける新たな活動を行うことに関するコンセプトノートを検討した。理事会は、Annex 1 に含まれるこのようなケースに対応する、基準やプロセスを明確にすることに同意し た。 また、これらの同意された基準やプロセスを、関連する文書「CDMプロジェク ト基準」「CDM有効化審査および検証の基準」「CDMプロジェクトサイクル手続き」 30
などの将来の改訂の際に、適切であれば、反映させることを事務局に要請することで 同意した。さらに、これらの同意された基準あるいは、新たに明らかになった基準の クレジット期間が終了していないプロジェクト活動やPoA下のCPAに対して将来的に 適用を拡大する可能性について分析するよう、事務局に対して要請した。また、理事 会は将来の会合において、同意されたプロセスに従う必要のない、特定のケースに基 づいた追加的な基準の策定を検討することに同意した。 コンセプトノートでは、プロジェクト期間終了後に同じ場所で、新たにCDMプロジェ クト活動あるいはPoA下におけるCPAを実施する場合、以下の点を説明することが求 められる。 ( a) 新しいプロジェクト活動/CPAは、(クレジット期間の終了した)既存のプロジ ェクトの継続あるいは一部修正を行ったものではないこと。 (b) 既存のプロジェクトの排出削減量に影響を及ぼすものではないこと。 (c ) 最低でも次の項目に関する情報を提供すること。 i. 対策:提案されたプロジェクト活動/CPAにおいて利用されている排出削減対策 (燃料/原材料の転換、技術の転換、メタン破壊と破壊)が、既存のプロジェク トと同じものであるか否か。 ii. 技術:提案されたプロジェクト活動/CPAにおいて利用されている排出削減技術 は、既存のプロジェクトと同じものであるのか否か。以下の基準を満たす場合 は、同じ技術を利用していると見做される。 iii. 同様の種類の設備と変換過程を利用し、同様の結果が提供されるのか否か。 iv. 同様の過程をへる行動が実施され、それにより同様の種類の効果がもたらされ るのか否か(二つのプロジェクトが、燃料転換のように同様な管理方法を採用 する場合等) v. 資産:提案されたプロジェクト活動/CPAが、既存のプロジェクトと同じ資産を 利用しているのか否か。 vi. アウトプット:提案されたプロジェクト活動/CPAが、既存のプロジェクトと、 同じアウトプットになっているのか否か。例えば、廃熱回収プロジェクト(廃 熱を利用して発電するもの)において、熱源を既存のプロジェクトと同じ熱源 としている場合。 vii. 資源:提案されたプロジェクト活動/CPAが利用する資源が既存のプロジェクト が利用する資源と同じものであるのか否か。例えば、化石燃料、副生成物、バ イオマス、太陽光、風力、地熱等。 viii. その他のベースラインの設定、追加性の判断、リーケージ排出量の検討に関連 する情報。 31
第71回CDM信認パネル会合報告書で示されたCDM信認パネルからの勧告(DOEに対 して実施するオンサイトの監視評価などによって能力が認められた職員に対しては、 CDM認定基準において求められている最初の有効化審査/検証における実地での能力 評価を免除すること)に基づき、理事会は、次回の「CDM認定基準」改訂時に原則と してこの勧告を取り入れることに同意した。理事会は、事務局およびCDM信認パネル に対して、第85回理事会での検討に向けた、この勧告の分析および、その他の「CDM 認定基準」の改善の可能性を盛り込んだ共同のコンセプトノートを準備するよう要請 した。 大規模方法論基準 [新規方法論] ・ 以下の新たな統合方法論を採用した。 ACM0025「新設天然ガス発電プラントの建設」。この統合方法論は、AM0029「グリ ッド接続する天然ガス発電プラントのための方法論」とAM0087「電力グリッドまたは 単一消費者に電力を供給するコジェネレーションシステムの導入」の改訂版に基づい ており、燃料に天然ガスを用い、電力グリッドまたは特定のベースラインの発電技術 からの電力を代替する新たな発電プラント施設におけるプロジェクト活動に適用が可 能である。この統合方法論は、 (a) 代替的なベースラインの明確化によるベースラインシナリオの調整 (b) リーケージ排出量の計算を簡素化 (c) ベースライン排出量の算定方法を合理化 この新たな統合方法論の採用に伴いAM0029「グリッド接続する天然ガス発電プラント のための方法論」とAM0087「電力グリッドまたは単一消費者に電力を供給するコジェ ネレーションシステムの導入」を取消すことに同意。 [改訂方法論] 方法論パネルからの勧告に応じて、CDM理事会は以下の方法論について次のような対 応を指示した。 AM0086「安全な飲料水供給のためのエネルギー利用ゼロの洗浄機の導入」:方法論の 対象範囲を拡大する改正を行うよう要請。 AM0107「新規の天然ガス利用のコジェネレーション施設」:液化燃料の輸送ルート(ト ラックを利用)におけるプロジェクト排出量を承認済み方法論(AM0110「液体燃料の 交通におけるモーダルシフト」)におけるサンプリングによって得られる消費量を利 32