学問分野別学修成果アセスメントから学位プログラム設計へ
‐エキスパート・ジャッジメントによる共通性と多様性の両立‐
深堀聰子(国立教育政策研究所)
[email protected]
京都大学高等教育研究開発推進センター
大学教育研究フォーラム【学術セミナー】
2017年3月19日11:20~12:20@吉田南総合館北棟
構成
• 1. 学位プログラムとは何か
– 1.1 大学の質保証では、何が求められているのか
– 1.2 「学位プログラム化」への政策誘導
– 1.3 学部・学科で策定されてきた教育課程と何が違うのか
• 2. 欧州チューニングによる学位プログラム設計
– 2.1 チューニングが手掛けられた背景
– 2.2 学位プロフィール による大学教育の共通性と多様性の両立
– 2.3 学位プロフィールの実現に向けた学位プログラム設計
– 2.4 学位プログラムの「学修成果」と各科目の「学習成果」
– 2.5 チューニング教育改善サイクル
• 3.
学修成果アセスメントで鍛えるエキスパート・ジャッジメント
– 3.1 学修成果に基づく大学改革の障壁
– 3.2 テスト問題づくりを通した学修成果に関する合意形成
– 3.3 学修成果に関する合意形成から教育課程のイノベーションへ
– 3.4 世界で同時展開する学問分野別学修成果アセスメント
1.1 大学の質保証では、何が求められているのか
1.2 「学位プログラム化」への政策誘導
1.3 学部・学科で策定されてきた教育課程と何が違うのか
• 質保証:高等教育機関が、大学設置基準等の法令に明記された最低基準としての 要件や認証評価等で設定される評価基準に対する適合性の確保に加え、自らが意 図する成果の達成や関係者のニーズの充足といったさまざまな質を確保すること により、高等教育の利害関係者の信頼を確立すること。 • 大学改革支援・学位授与機構『高等教育に関する質保証関係用語集(第4版)』
• 大学のステークホルダーとは誰か
– 学生・大学教員(学術性) – 学生・学生の進路先の雇用主(エンプロイアビリティ) – 学生・一般市民(市民性・リーダーシップ) – グローバル社会(国際通用性)• どのような質を確保すれば「信頼」を獲得することができるのか
– 大学が学生に何を教えたかではなく、学生が大学でどのような知識・能力を身 に付けたか。 • 社会の基幹的人材とみなすに相応しいか(共通性) • 社会の多様な課題に対応できる多様な人材が輩出されているか(多様性)• 学術(学問分野)は社会とのつながり(エンプロイアビリティ・市民
性・リーダーシップ・国際通用性)を基軸に再定義される必要がある。
1.1 大学の質保証では、何が求められているのか
-
ステークホルダーからの「信頼」-• 中央教育審議会『我が国の高等教育の将来像(答申)」(平成17年1月28日)
– 「国際的通用性のある大学教育又は大学院教育の課程の修了に係る知識・能力の証明と しての学位の本質を踏まえつつ、今後は、教育の充実の観点から、学部や大学院といっ た組織に着目した整理を、学士・修士・博士・専門職学位といった学位を与える課程中 心の考え方に再整理する必要がある。」• 中央教育審議会『学士課程教育の構築に向けて(答申) 』(平成20年12月24日)
– 学士課程教育における学位授与、教育課程編成・実施の方針、入学者受入れの方針の明 確化 – 学校教育法施行規則の一部改正(平成28年3月31日) • 「三つのポリシーを一貫性のあるものとして策定し、公表する」ことを義務化 – 中央教育審議会大学分科会大学教育部会『 「卒業認定・学位授与の方針(ディプロマ・ ポリシー),「教育課程編成・実施の方針」(カリキュラム・ポリシー)及び「入学者 受入れの方針」(アドミッション・ポリシー)の策定及び運用に関するガイドライン』 (平成28年3月31日) • 策定単位「学位プログラム」(授与される学位の専攻分野ごとの入学から卒業までの 教育課程)1.2 「学位プログラム化」への政策誘導
‐ 大学教育改革の本丸 ‐
• 学位プログラムとは、学生が学位を取得するために履修しなければならない科目の
組み合わせ(=教育課程/カリキュラム)。
• 教育課程編成原理における本質的な違い
– これまで学部・学科で策定されてきた教育課程では、学部・学科の「教育理
念・教育目標に沿って設定された授業科目」の「履修」を重視。
• 教育理念・教育目標と授業科目の結合は極めて緩やか (疎結合: loosely coupled) • 科目間構造も必ずしも明確に説明されてこなかった (mystified) – 「学問の自由」「大学の自律性」「大学教員の専門的自律性」 • 単位積み上げ型– 学位プログラムでは、学生が学位プログラムを履修した総合的な成果として、
どのような知識・能力(学修成果)を身に付けるかが問題とされ、その目的
に適合的な授業科目が構造的に配置される。
• 教育理念・教育目標と授業科目の結合が強い (密結合:tightly coupled) • 学修成果達成型(十分な根拠に基づいて単位が認定されなければならない) • 教育課程の「逆向き設計」の考え方– Grant Wiggins and Jay McTighe, Understanding by Design, ASCD, 1998.
– 西岡加名恵「ウィギンズとマクタイによる『逆向き設計』論の意義と課題」『カリキュラ ム研究』第14号、2005年。
1.3 学部・学科で策定されてきた教育課程と何が違うのか
学修成果と教授・学習の密結合
-1.3 学部・学科で策定されてきた教育課程と何が違うのか
カリキュラム設計の方法
-伝統的な方法
目標(P)承認できる証拠を決
定する‐真正の評価
Determine acceptable evidence- authentic assessment 教育実践(D) 自己点検・評価(C)逆向き設計
求められている結果を明 確にする‐本質的な問いIdentify desired results – essential question (P)
承認できる証拠を決定す る‐真正の評価
Determine acceptable evidence-authentic assessment (C1)
学習経験と指導を計画する
Plan learning experience and instruction.(D)
評価する(C2)
改善・改革(A)
1.3 学部・学科で策定されてきた教育課程と何が違うのか
-
警告
:本来、教育組織は「疎結合」システム
-Weick, Karl, (1976). Educational Organizations as Loosely Coupled Systems.
Administrative Science Quarterly, Vol. 21, No. 1, pp. 1-19.
「3ポリシー策定」は、学修成果を軸に、 大学組織の「密結合」化を求める動き。 しかしながら、「疎結合」の強み(変 化への応答性、リスク分散、自由裁量 等)を放棄するデメリットを勘案しな がら、いかなる密結合化が大学のパ フォーマンスを最も高める(学生や社 会にとって最適)のかを、慎重に吟味 する必要がある(→共通性と多様性の両 立の議論に繋がる)。
1.3 学部・学科で策定されてきた教育課程と何が違うのか
-
警告
:本来、教育組織は「疎結合」システム
-• マックス・ウェーバー「官僚制組織」:法・規則による「合理的支配」 『経済と社会(Wirtschaft und Gesellschaft)』1921年(第2部第11章)
• ロバート・マートンによる官僚制の逆機能(dysfunction)の指摘
Robert K. Merton (1957). Social Theory and Social Structure. Glencoe, IL: Free Press.
• 不断に新たな知を創造し、後世に伝え、有為な人材を育成していく使命を負った 組織である大学の在り方として、「官僚制」は目的合理的・価値合理的と言える のか?
初等教育学 教育学 教育科学専攻 教育学 教育方法学 教育認知心理学 教育社会学 生涯教育学習 比較教育政策学 高等教育開発論 臨床教育学専攻 臨床教育学 心理臨床学 臨床実践指導学 臨床心理実践学 卒業の要件は、大学に四年以上在学し、百二十四単位以上を修得することとする。 ・各学部所定の期間在学し、学部の教育理念・教育目標に沿って設定した授業科目を履修 して、基準となる単位数を修得し、学士試験に合格することが学位授与の要件である。修 得すべき授業科目には、講義科目のほか、各学部の方針に応じて、演習や実習、フィール ドワークや卒業論文作成等の科目が含まれる。 ・主に全学共通教育を通じてなされた教養教育と、各学部の特性に応じて編成された専門 教育をともに修得しているかどうかが、学士試験に合格する基準となる。 本学部の教育目的に沿って設定された授業科目を履修し、基準となる単位数を修得することが、 学位授与の必要要件である。修得すべき授業科目の中には、講義のみならず、演習、実習、実験、 フィールドワークそして卒業論文作成等が含まれる。 本学部の教育目的で明示されている、心・人間・社会についての専門的識見、広い視野と異質な ものへの理解、多面的・総合的な思考力と批判的判断力、人間らしさを擁護し促進する態度、が 学習成果として実現されているかどうか、さらにはその結果として地球社会の調和ある共存に貢 献できる人材となっているかどうかが、課程修了の具体的な目安となる。 筑波大学学士課程の教育目標及び本学群・学類の人材養成目的に基づき、学修の成果が次の到達目標に 達したと認められる者に、学士(教育学)の学位を授与します。 教育学の基礎としての人間に関する総合的な知と教養を備えている 教育に対する幅広い学識を修得し、体系的な見方・考え方ができる 教職などの専門職に採用される水準の教育専門家的資質・能力を備えている 教育学の理論と実践に関して、大学院に進学できる水準の基礎的研究能力を備えている
1.3 学部・学科で策定されてきた教育課程と何が違うのか
-
単位積み上げ型から学修成果達成型へのシフト-学位授与(卒業認定)の方針
京都大学 全学レベル 京都大学 教育学部 筑波スタンダード※ 学士(教育学) 大学設置基準 第三十二条 ※筑波大学「学位プログラム化を目指す教育宣言」(平成20年)2.1 チューニングが手掛けられた背景 2.2 学位プロフィールによる大学教育の共通性と多様性の両立 2.3 学位プロフィールの実現に向けた学位プログラム設計 2.4 学位プログラムの「学修成果」と各科目の「学習成果」 2.5 チューニング教育改善サイクル
2. 欧州チューニングによる学位プログラム設計
2.1 チューニングが手掛けられた背景
欧州における相互承認と信頼の伝統
-• 欧州統合:欧州大陸を分断した第二次世界大戦への反省
– 1952年 欧州石炭鉄鋼共同体
– 1958年 欧州経済共同体・欧州原子力共同体
– 1967年 3共同体の主要機関統合(欧州共同体)
– 1985年 シェンゲン協定(国境検査の撤廃)
– 1986年 単一欧州議定書(市場統合)
– 1989年 ベルリンの壁崩壊(ドイツ再統一)
– 1993年 欧州連合発足(マーストリヒト条約)
– 1999年 単一通貨(ユーロ)導入
• 欧州評議会(Council of Europe):
民主主義等の普遍的価値を推進
する
ために1949年に設立された国際機関
– 学修の「承認(recognition)」に関する三つの協定(1950s)
• ①中等教育資格、②学修期間、③学位・資格の同等性– 「欧州地域の高等教育に関する資格の承認に関する協定」(リスボン承
認協定、1997年)
• Erasmus Programme(欧州共同体, 1987年~)
欧州市民が欧州圏内で就労 することへの制度的障壁は 概ね撤廃されてきた 学生や教員が大学間を 自由に移動すること: 中世以来の伝統2.1 チューニングが手掛けられた背景
‐ ボローニャ・プロセスへの大学の「貢献」‐
• 高等教育の今日的課題
– 大学進学人口の拡大に伴う大学の多様化が進展する中で、相互信頼・承認の伝統をどの ように守っていくのか。 – 米国の大学に対抗して、欧州の大学が国際競争力(活力)を維持するにはどうすればよ いか(少子化)。 – 新しい能力観の台頭(何を知っているか + 知っていることをどう使うか + どのように市 民社会・世界と関わっていくか)にどう対応するか(現代化:modernization)• ボローニャ宣言:欧州高等教育圏を確立することへの政府レベルの合意(1999年,
29ヵ国の教育大臣が署名)
– 学位システム( 3サイクル)& 学位資格枠組み(QF-EHEA, NQF)– 単位互換累積制度(European Credit Transfer and Accumulation System, ECTS) – 質保証(アクレディテーションの導入)
• 2005年 欧州高等教育質保証協会(European Association for Quality Assurance in Higher Education, ENQA)http://www.enqa.eu/index.php/about-enqa/
• Standards and Guidelines for Quality Assurance in the European Higher Education Area (ESG) http://www.enqa.eu/wp-content/uploads/2015/11/ESG_2015.pdf
• チューニング:欧州高等教育圏内での学問分野の学修成果についての合意形成・
学位プログラムの実質化
学問分野別 学修成果の枠組み 学修成果A~Z 大学β (5年) A, B, C, S, T +他分野の学 修成果 大学α (3年) A, B, D, G 大学γ (2年) A, S 学際領域5年制プログラム 伝統的なアカデミックな3年制プログラム 実践的な職業教育を行う2年制プログラム 各大学は、在籍する学生の進路先や、 所有する教育資源等を勘案して、追 求する学修成果の組み合わせ(学位 プロフィール)を決定する
。
2.2 学位プロフィールによる大学教育の共通性と多様性の両立
‐ 学修成果の枠組みとステークホルダー・ニーズ ‐
学位プログラムの特徴を俯瞰する力
深堀聰子「『学問分野別』学修成果アセスメントの意義と展望」 『文部科学教育通信』No.402, pp.12-15. チューニングにおける 学修成果は、 ・学位プログラムを履 修した総合的な成果と して、学生が獲得する ことが期待されている 知識・能力が有機的に 結合したもの。 ・ステークホルダーと の協議に基づいて定義 される。 ・多様な大学間や教員 間で共有するためには、 ある程度の抽象性が求 められる。60 ECTS 60 ECTS 科目 60 ECTS
学位プロフィールで宣言した学修成果(例:大学α:A, B, D, G)を獲
得させるために適切な科目を配置して、単位を割り当てる。
2.3 学位プロフィール実現に向けた学位プログラム設計
- 各科目の役割を俯瞰する力 ‐
【設計の原理】
各教員が何を教えられるか(教員中
心)ではなく、学生にどのような学
修成果を獲得させたいか(学習者中
心)。
そのためにどのような科目を配置す
るか。
• ゴンサレス, J.・ワーヘナール, R.(深堀聰子・竹中亨共 訳)『欧州教育制度のチューニング‐ボローニャ・プロ セスへの大学の貢献』明石書店、2012年 • 深堀聰子編『アウトカムに基づく大学教育の質保証‐ チューニングとアセスメントにみる世界の動向』東信堂、2.4 学位プログラムの「学修成果」と各科目の「学習成果」
‐ 抽象から具体へ
-学修成果 A B D G 学習成果 a1 a2 b1 b2 b3 d1 d2 d3 g1 g2 g3 g4 科目1(4ECTS) 〇 〇 ○ ○ ○ 科目2(2ECTS) 〇 〇 〇 科目3(2ECTS) ○ ○ ○ …………. チューニングにおける学習成果とは、学生が科目を履修した結果として習得することが期待 されている具体的な知識や能力。 単位認定の根拠として、所定の学習期間内に達成可能であり、測定可能でなければならない。 チューニングでは、学位プログラムを履修した総合的な成果として、学生が獲得すること が期待されている学修成果(抽象的)は、直接測定することは想定されていない。 ただし、新たな動き(CALOHEE, 後述)2.5 チューニング教育改善サイクル
学位プロフールの決 定:学修成果枠組みか ら追求する学修成果を 選択する。 本質的な問い(P) 科目の履修を通して習得 させる学習成果を決定 達成可能・測定可能(C1) 学習経験と指導を 計画する(D) コース・エバリュエーション 科目の履修を通して学 習成果は習得されたか (C2-1) プログラム・レビュー 学位プログラムの履修を 通して学修成果は獲得さ れたか(C2-2) 教育改善(A) 科目内容・科目配置 学位プログラムの設計 学位プロフィールの学修成果 を獲得させるために適切な科 目を配置して、単位を割り当 てる。 エキスパート・ジャッジメント 相互信頼・承認3.1 学修成果に基づく大学改革の障壁
3.2 テスト問題づくりを通した学修成果に関する合意形成
3.3 学修成果に関する合意形成から教育課程のイノベーションへ 3.4 世界で同時展開する学問分野別学修成果アセスメント
3.1 学修成果に基づく大学改革の障壁
大学教育の組織的変容には英知と対話と時間が必要
-• Tim Birtwistle, Courtney Brown, and Robert Wagenaar (2016). “A long way to go…A study on the implementation of the learning-outcomes based approach in the EU and USA,”
Tuning Journal for Higher Education, Vol.3, Issue No.2. pp. 429-463. (doi:
10.18543/the-3(2)-2016pp429-463) (http://www.tuningjournal.org/article/view/1064/1274) – アウトカム重視の大学教育改革は、大学執行部と教職員の間での理念的な議論 にとどまっており、学位プログラムの構造や大学教員・学生の行動に組織的変 容をもたらすには至っていない。 • 日本学術会議「大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準」 ( http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/daigakuhosyo/daigakuhosyo.html ) – 各大学や学協会等で参照基準が活用されている実績はほとんどない(大学評価・学位授与機構 『我が国における大学教育の分野別質保証の在り方に関する調査研究報告書』2016年) • 広田照幸(2016)「第一線大学教員はなぜ改革を拒むのか:分野別参照基準の活用に ついて考える」『大学評価研究』第15号、37‐46頁。
• (1)(外部から強要された)「質保証は役に立たない」
– 「アカデミックな『質』と無関係なアウトプットが追求されている。」 – 外部からの一律・量的で一面的な物差しで測られる「質」ではなく、内部の同僚 間で共有された「質」の判断こそが重要。• (2)「質保証が専門職的自律性を脅かしている」
– 質保証は価値中立で技術的なものではなく、権力や権限の再配分を伴う政治的な 性格をもっている。「学問の自由」を背景にした専門職的自律性―何を教えどう 評価するかについての自由裁量―を擁護したいという動機から、改革に背を向け ていたりする。• (3) 大学教員に自律的改革を阻む組織文化的要因
– ①専門性の過度な細分化:大学教員の中には、自分の狭い専門分野を超えたトー タルな分野像が描けない人や、それが歪んでいる人も少なくない。結果として、 「学生に何を学ばせ、何を身につけさせるべきか」についての議論が深められな い。 – ②一つの部局の中の大学教員の割拠性 – ③多くの分野の大学教員は、学生の教育に関する語彙や理論を不足している。3.1 学修成果に基づく大学改革の障壁
なぜ大学教員は改革を拒むのか
-広田照幸(2016)より チ ュ ー ニ ン グ が 乗 り 越 え よ う と し て き た 障 壁 対 話 を 通 し て エ キ ス パ ー ト ・ ジ ャ ッ ジ メ ン ト を 鍛 え る3.1 学修成果に基づく大学改革の障壁
‐ 鍛えたい大学教員のエキスパート・ジャッジメント ‐
• 大学教育の地平において、自らの学位プログラム、自らが担当す
る授業科目の特徴や役割を理解し、位置づける
俯瞰力。
• 学位プロフィールの定義:ローカルな文脈に即して、学修成果の
枠組みから追求する学修成果を選択し、学位プログラムの特徴
(共通性の中での多様性)を可視化する力
(プロファイリング
力)。
• 学位プログラムの設計:学位プロフィールで宣言した学修成果を
獲得させるために適切な科目を配置する
デザイン力。
• 抽象的なレベルで合意された学修成果を達成可能で測定可能な教
育実践に具体化する
確かな専門性。
• 教育実践を評価して改善に結びつける
省察力。
高 度 な 専 門 性 を も っ た 教 育 支 援 ス タ ッ フ に よ る コ ー デ ィ ネ ー ト がどこから着手すればよいのか?
3.2 テスト問題づくりを通した学修成果に関する合意形成 ‐
OECD-AHELOから何を学んだか(土木工学分野)-大学教育の学修成果を同定し、その達成度を国際通用性のある方法で測定することは可能か どうかを検証する取組(2008‐2012)(17カ国248大学の学生22,977が参加)• 抽象的な学修成果は、具体的な学習成果に紐づけて論じてみなければ、真の共
通理解が図れているのか判断することができない。
• テスト問題作り(採点・修正)は、
抽象的な学修成果を具体的な学習成果に落
とし込み、その妥当性に関する対話を重ねるこることで、学修成果に関する共
通理解を形成する
ための有益な演習。
• 分野全体を覆い尽くして標準化することを目的としているのではない。
– 特定の文脈における共通理解は、他の文脈にも転移する。 – 具体的な教育内容の要不要・取捨選択を目的としているのでもない。 3/19/2017 Satoko Fukahori 223.2 テスト問題づくりを通した学修成果に関する合意形成
-国立教育政策研究所 「チューニングに基づく大学教育のグローバル質保証‐テスト問題バンクの取組」-(機械工学分野) http://www.nier.go.jp/tuning/centre.html 【メンバー:H26~28 のべ 21 機関 48 人】 国立教育政策研究所 典型的なテスト問題と採点基準の作成 (H28 年 3 月:記述式 10、多肢選択式 64) テスト問題の妥当性検証・修正 大規模実施と参加大学へのフィードバッ ク(教育改善に資する情報) テスト問題の翻訳 著作権の処理 HP 開設 科目・プログラム開発 国際連携 連携 リーダー 地域拠点 A 地域拠点 B 地域拠点 C テスト問題作成 WS 採点 WS 提 案 提 案 提 案工学ジェネリックスキル(Engineering Generic Skills)
EGS1 個人として、又はチームの一員として、効果的に役割を果たす能力。
EGS2 工学関係者や一般社会と効果的にコミュニケーションを図るために、多様な方法を駆使する能力。 EGS3 生涯にわたり、自主的に学習することの必要性を認識して取り組む能力。
EGS4 工学の学際性に関する理解。
工学基礎・工学専門(Basic and Engineering Sciences)
BES1 専攻する工学分野の基礎となる科学や数学の原理に関する知識と理解。 BES2 専攻する工学分野の重要事項や概念に関する系統的理解。 BES3 専攻する工学分野に関する包括的理解(最先端の事柄を含む)。 工学分析(Engineering Analysis) EA1 既存の方法を用いて工学課題を見極め、解決法を考案、解決する能力。 EA2 工学の成果、過程、方法を分析したりするために、知識と理解を応用する能力。 EA3 適切な分析方法やモデルを選択・適用する能力。 EA4 文献を検索し、データベース等の多様な資料を活用する能力。 EA5 適切な実験をデザインして実施し、データを解釈して、結論を導く能力。 EA6 機械工学に係る以下について分析する能力(物質・エネルギー収支とシステムの効率性、水圧・空気式システム、機械の要素) 工学デザイン(Engineering Design) ED1 特定の定義された要求に応えるデザインを開発して実行するために、知識と理解を応用する能力。 ED2 デザインの方法を理解し、活用する能力。 ED3 デザインのためのコンピュータ・プログラムを用いて、機械や機械システムの要素をデザインする能力。 工学実践(Engineering Practice) EP1 適切な装置・道具・方法を選択・使用する能力。 EP2 工学課題を解決するために、理論と実践を統合する能力。 EP3 適用できる技法・方法とその限界を理解する能力。 EP4 工学実践の非技術的な意味合いに関する理解。技術者倫理・工学実践の責任と規範に従う能力。 EP5 ワークショップや実験を行う能力。 EP6 健康・安全・法律の問題、工学実践が伴う責任、工学による解決策がグローバル・経済的・社会的・環境的文脈に及ぼすインパクトに関する理解。 EP7 リスク・変動マネジメントを初めとするプロジェクト・マネジメントやビジネス慣行に関する理解、及びその制約についての認識。 EP8 制御・生産システムを選択して活用する能力。 数学には微分・積分、線形代数、数値解析法を含む。 高度なプログラミング 固体力学・流体力学 材料科学・材料力学 熱学:熱力学・熱伝導 機械の操作:ポンプ、換気装置、タービン、エンジン 3.2 テスト問題づくりを通した学修成果に関する合意形成 -
機械工学分野の学修成果の一覧
-問題例:http://www.nier.go.jp/tuning/pdf/20150514Scoring_Guide_(Wind_Power_Generation)_jp.pdf3.2 テスト問題づくりを通した学修成果に関する合意形成 – 抽象から具体へ
-
「技術者のように考える力」を問う(サンプル問題)-風力発電は、風車を使用して風の持つ運動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電方式であり、小規模 発電設備としては発電費用が低いことに加えて、単位発電量当たりのCO2排出量が少ないことから、近年地球温 暖化対策の一方法として注目されている。図1.は、1997年から2014年までの世界の風力発電量の推移を示してい る。この図によれば、この17年間に風力発電量は毎年10%以上の増加率を示し、合計で50倍以上に増加したこと が分かる。風力発電の総合的な費用対効果を向上させるためには、設置条件、構造・機構、事故対策などの 様々な観点から風車を改良することが有効である。 以下に示す風力発電用の「風車」に注目した問題について、機械工学の観点から考察して回答せよ。 図1 世界の風力発電量の推移出所:The Global Wind Energy Council , Global Wind Statistics 2014.
http://www.gwec.net/wp-content/uploads/2015/02/3_global_cumulative_installed_wind_capacity_1997-2014.jpg • 問1. 風力発電用風車の「設置条件」について考察せよ。図2.は、風力発電用風車の設置例を示している。この設置場所が風力 発電に適していると考えられる要因を2つ挙げ、それぞれの理由を説明せよ。 – 測定しようとしている学修成果 • BES2:専攻する工学分野の重要事項や概念に関する系統的理解 • EA2:工学の成果,過程,方法を分析したりするために、知識と理解を応用する能力 • EA6:機械工学に係る物質・エネルギー収支とシステムの効率について分析する能力 図2:発電用風車の設置例 提供:幌延町(オトンルイ風力発電所)
3.2 テスト問題づくりを通した学修成果に関する合意形成
‐ テスト問題バンクの取組の手順
-2016年6-7月
【日本】 各大学の比較、多肢選択式問題の得点と記述式問題の関連、ある大学と全体平均との比 較を明らかに 各大学の特徴が浮き彫りになる(ベンチマーク) 多肢選択式問題の合計得点と記述式問題の合計得点の相関係数は r = .17 (p<.01) 有意ではあるが弱い正の相関 多肢選択式ができれば記述式もできる、ということにはならならない 大学2のように多肢選択式問題では低くても記述式問題で高くなる大学も 学部時代の教育経験によって各大学の学生の特徴が明らかに 例えば大学2の学生は、他大学の学生に比べ、研究室に所属するまで「実験・演 習」、研究室に所属 している際に「課題の成果を発表・報告する機会」「チームで1つの 課題に取り組む機会」に熱心に取り組んできたと回答する傾向に 【日本とインドネシア】 多肢選択式問題・記述式問題の合計点に顕著な違いはみられなかった。 個別の問題に注目すると、国別差異が顕著な項目も(履修範囲・配列)
3.2 テスト問題づくりを通した学修成果に関する合意形成
-
教育改善に資するフィードバック-(データは投影いたします)
学位プログラムの強み・弱みの可視化
既存の枠組みの中での工夫
-どのような教育を行えば/教育環境を整えれば、 学生は「求められる結果(学修成果)」を達成できる のか。既存の枠組みを変更する工夫
-
どのような科目・モジュールを設計すれば、学生は 「求められる結果(学修成果)」を達成できるのか。3.3 学修成果に関する合意形成から教育課程のイノベーションへ
教 育 支 援 ス タ ッ フ に よ る コ ー デ ィ ネ ー ト が 必 要逆
向
き
設
計
3.4 世界で同時展開する学問分野別学修成果アセスメント
•
CALOHEE
(Measuring and Comparing Achievement of Learning Outcomes in
Higher Education in Europe, EU Erasmus Plus)(2016-)
事務局:国際チューニング・アカデミー
分野:歴史学、教育学、物理学、土木工学、看護学
コンソーシアム:75大学(5分野×15大学), ESU, ERASHE, ECA
運営委員会:EUA, ENCA, ENAEE等
技術支援:ETS
• MCL
(Measuring College Learning)(2013-)(Bill and Melinda Gates Foundation)
事務局: Social Science Research Council