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リトアニア国際私法の改正について 新旧立法の比較 (【退職記念号】 圓谷 勝男 教授 佐藤 清勝 教授 エルンスト・ロコバント 教授) 利用統計を見る

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リトアニア国際私法の改正について 新旧立法の比

較 (【退職記念号】 圓谷 勝男 教授 佐藤 清勝 教

授 エルンスト・ロコバント 教授)

著者名(日)

笠原 俊宏

雑誌名

東洋法学

52

2

ページ

211-252

発行年

2009-03-01

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00000679/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

︽研究ノート︾

リトアニア国際私法の改正について

      新旧立法の比較

八七六五四三二一

︵参考条文︶ 緒言 リトアニア国際私法の沿革 新立法の一般的特徴 新旧総則規定の比較 新旧国際人事法規定の比較 新旧国際家族法規定の比較 新旧国際財産法規定の比較 結語    リトアニア共和国民法典中の国際私法規定

笠 原

俊 宏

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緒言  いわゆる﹁国際私法の危機﹂が一先ず回避された後、国際私法の改正ないし法典化が最も顕著に実行された国々 として挙げられるのは、かつてのソビエト連邦構成諸国である。特にそれらの諸国にあっては、ソビエト連邦及び 共産主義の崩壊に伴う構成諸共和国の分離・独立という政治的・経済的変動により、新しい法体系の構築が要請さ れ、国際私法もその一端として立法化が推進されたからである。従って、ソビエト連邦構成諸国における国際私法 の改正ないし法典化は、大陸型国際私法の自立的変革という内在的要因、及び、ソビエト連邦の崩壊による政治 的・経済的変革という外部的要因により、加速的に実現されたと言うことができる。ソビエト連邦から分離・独立 した諸共和国における新たな法体系については、旧体制の当時の法令の継受に関わる問題をも含め、兼ねてより、 その展開が注目されていたところである。諸国におけるその後の立法化は、一つには、ロシア連邦を中核とした独 立国家共同体の形成に参画した諸国、そして、いま一つには、ソビエト連邦からの完全な分離・独立へと向かう諸 国との二つのグループに分裂し、そして、それぞれの指針の下に推進されたことが看取される。そのような分類 上、この小稿において言及されるリトアニア国際私法は後者のグループに属すると見られるものである。それで は、同国国際私法は、激動の時期を経て、如何ように改変されることとなったか︵評お一寄≦鼠①く巨5U一の襯目B 8巴筥Φ§慧8巴窪汐貯讐おo辟ω営ご冨話P始ミ這物魯吻き欝ミ禽賊§ミ§、試ミ蛛−§職隷さミ§巽象ミ砺︵以下、萄渇§とする︶ 88吻ψ曽鐸︶。ここにおいて紹介されるリトアニア共和国の国際私法について言えることは、基本的には、西側諸 国の国際私法の動向を睨みつつ、それとの同質化の方向に向けられた改正の過程にあるということであろう。 一九九四年五月一七日のリトアニア共和国法律第一の四五九号に根拠をおく現行国際私法は、一九六五年以来施行 212

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されてきたソビエト連邦の刻印が付いた国際私法に取って替わるものである。そこで、以下においては、改正前に おける同国国際私法の法源であった一九六五年の民法典及び一九七〇年の婚姻・家族法典、並びに、二〇〇〇年七 月一八日の民法典︵二〇〇一年七月一日施行︶のそれぞれの法典中に置かれた国際私法規定を比較することによ り、同国における国際私法の動向を知るとともに、諸外国における国際私法の動向をも察知する手掛かりとしたい ︵尚、改正前の法令については、甲涛冒く目Φ\評お一評二鼠①く筥拐N⊆Bω鼠且8巴導Φ讐践。p四一9即ぞ簿お魯冨営ロけ壁Φp 彊肉 §一〇箋¢o 。田律 さらに、拙稿﹁外国国際私法立法に関する研究ノート︵七︶ーリトアニア民法典︵一九六五年︶およ び婚姻・家族法典︵一九七〇年︶中の国際私法規定ー﹂大阪国際大学紀要国際研究論叢二一巻一号一〇七頁以下参照︶。 ニ リトア一一ア国際私法の沿革  リトアニア共和国の現行国際私法に言及する前に、これまでの立法の経緯について簡略に触れておきたい。リト アニアが、一九四〇年八月三日、ソビエト社会主義共和国連邦に併合された後、同年二月六日のソビエト社会主 義共和国連邦法規命令は、リトアニアにロシァ社会主義連邦ソビエト共和国の法典を導入した。しかし、その併合 が諸外国によって正式に承認されなかったため、上記法典は施行されることはなく、一九四〇年以前のリトアニア 法が効力を持続し、その結果、国際私法についても、リトアニア法上のそれがそれ以後も再び施行されていた。当 時、リトアニアにおいては、新しい民事立法の成立はなく、いくつかの地域法が存在していた。例えば、最も広い 部分を占めるコヴノ︵因・く8︶政権が支配していた地域においては、ロシアの古い共通民事法が施行されており、 また、スヴァルキ︵望奉匿︶政権が支配していた地域においては、一八二五年のポーランド民法典及び全面的に修 正されたナポレオン法典が施行されており、更に、第一次世界大戦以前のクルラント︵容匿且︶の一部であった 213

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ポランゲン︵評冨縄窪︶地区においては、バルト地方の民法典が施行されていた︵>一Φ釜&Rζ磐震・くΨ碧色①p号ω 日Φヨ魯・轟一窪国一轟けお9貫劇9H︵のΦωΦけNΦω8斡Φ︶﹂3G 。る印冨ロ跨qきδ︵罫窪窪︶あ﹂.参照Q因みに、当時、施行 されていた国際私法規定の仏語訳及び独語訳については、家接鶏○く魯鉾ρωる中︶。  二〇〇一年七月一日に新法が施行される前のリトアニア共和国国際私法の国内立法の法源として知られるのは、 その一つが、前記一九六五年の民法典第六〇三条ないし第六二一条であり、いま一つが、一九七〇年の婚姻・家族 法典第二〇八条ないし第一二七条である。尚、それらの諸規定中、養子縁組に関する同法典第二一三条は、 一九九三年一〇月一二日法律により、養子縁組に関する同法典第一四章全体の改正と同時に改正されたものである ︵評菌日きミ閃a9旨器§呂8巴8国箒己邑困&ω9聾曽g拝園8昌爵口$器p一器ロ俄①歪轟レ8伊¢一県参照︶。  一九六五年民法典中の国際私法規定について指摘されるべきは、次のような点であった。すなわち、第一に、多 くの問題について国籍主義が採られていた点である︵例えば、行為能力について第六一〇条第一項、相続について第 六二一条第一項等︶。第二に、契約法においては当事者自治の原則が支配しており︵第六一六条第一項︶、法選択がな い場合には、各個の契約類型に従った客観的連結が定められていた点である︵同第二項︶。そして、第三に、不法 行為については不法行為地法主義︵第六二〇条第一項︶、物権については物の所在地法主義︵第六一九条第一項︶とい う国際的に確立した規則が採用されていた点である。しかしながら、内国法の適用を志向する国家主義的な規定が 散在していたことも看過すべきではないであろう。例えば、外国法の適用がリトアニア共和国の﹁社会的利益﹂に 反するとして排除された場合に、適用されるべきであるのはリトアニア共和国法であると明言されており︵第 六〇四条︶、又、当事者による外国法の証明が行なわれなかった場合に適用されるのは、やはりリトアニア共和国 法上のそれに相応する類似の法律であった︵第六〇五条第二項︶。しかし、尚、いわゆる狭義の反致が認められてい 214

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たばかりではなく、第三国への転致も認められていたことは、外国法を尊重する立場を採るものとして、国際主義 の立場からは高く評価されるべきものであった︵第六〇七条第一項および第二項参照︶。  一方、一九七〇年婚姻・家族法典中の国際私法規定の中で注目されたのは第二〇九条第一項及び第二一一条第一 項である。前者は、婚姻について、リトアニア共和国国民と外国人の間のものに限らず、外国人の間のものについ ても、それが同国において締結される限り、同国法が適用されるべきことを定めたものである。又、同様に、後者 も、離婚について、それが同国において行なわれる限り、同国法が適用されるべきことを定めていた。そのような 規則が、婚姻や離婚の方式についてのみならず、それらの実質的要件についても適用されるべきであるということ を意味していたのが注目されるべき点である。  次に、リトアニア共和国が締約国となっている国際私法関連の条約としては、次に掲げるものがある。先ず、国 際条約としては、﹁外国公文書の認証の廃止に関するハーグ条約﹂︵一九六一年︶があり、又、国際私法・国際手続 法上の問題に関する二国間条約が、それぞれ、ポーランド︵一九九三年︶、ベラルーシ︵同年︶、ウクライナ︵一九九四 年︶、ロシア︵一九九五年︶、モルドバ︵一九九五年︶等の諸国との間において締結されている。更に、リトアニア共 和国は、一九九六年二月一七日、一九六八年六月七日の﹁外国法の照会に関するヨーロッパ協定﹂を批准してお り、又、﹁国際物品売買契約に関する国際連合条約﹂︵ウィーン条約︶の締約国である︵冨くB①\評く諏①<巨5堕p斜ρ ¢ω鐸参照︶。そして、二〇〇〇年の新立法中には、いくつかのハーグ国際私法条約等が援用されている。  一九九六年、国際私法規定を含む新しいリトアニア共和国民法典草案及び家族法草案が公表されたが、同民法典 草案第一部第二章中の国際私法規定である第九条ないし第二九条の内容は、二〇〇〇年の新立法に見られるよう に、今日的状況により相応しく変更されていた。例えば、公序について言えば、一九六五年法上採られていたその 215

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基準は﹁社会的利益﹂であるが、右草案においては、より具体的に、リトアニア共和国憲法やその他の法律に拠る ものとされている。法人の権利能力についても、一九六五年法が本拠主義に拠り、主たる営業所所在地法への連結 の立場を採っていたのに対して、右草案は設立準拠法主義に拠っている。国際契約については、一九六五年法上の 硬直した連結に代えて、住所、主たる営業所所在地、営業地、経済活動地、不動産所在地等の連結点を駆使し、最 も密接な関連性の推定が行なわれている。更に、消費者保護の特別規定が置かれているところにも、西欧諸国の国 際私法に見られる今日的潮流からの影響が看取されるものであった︵㎏鎚BΦ\評く譲①馨富如鉾ρ器鐸参照︶。  そして、家族法草案第一〇五条ないし第一〇八条が国際私法規定である。それらに共通する問題点として、先 ず、民法典中に定められるべきか否かが論じられ、又、個別問題として、離婚に関する規定が置かれていない点が 挙げられていた︵旨錯BΦ\評≦器①く巨5卑99のω鐸参照︶。しかし、結果的に、家族法草案第一〇五条ないし第 一〇八条の国際私法規定が民法典中に統合されたことは、既に言及したところからも知られるところである。 三 新立法の一般的特徴  先ず、形式面において見られる点について言えば、民法典及び婚姻・家族法典に分かれて存在していた国際私法 規定は、現行民法典第一編﹁総則﹂の第一章﹁民法及びその適用﹂中に、第二節﹁国際私法﹂︵第一条の一〇ない し第一条の六一︶が追加されることにより、同節に統合されるに至った。前述のように、旧ソビエト連邦構成諸国 の立法において、財産法事項及び家族法事項が、それぞれ、民法典と家族法典とに分けて規定されていた点が、そ の形式面の特徴として指摘することができる。そのような形式は、ソビエト連邦の崩壊後にあっても、ロシア連邦 等の独立国家共同体加盟諸国の国際私法立法に継続的に採用されているものである︵それらの諸立法例として、拙稿 216

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﹁ロシア国際私法の改正とその特質について﹂比較法三五号一三九頁以下、拙稿﹁ロシア連邦民法典第三部中の国際私法規 定について﹂東洋法学四六巻一号六九頁以下、拙稿﹁カザフスタンの新しい国際私法﹂東洋法学四六巻二号九七頁以下、拙 稿﹁中央アジア諸国の国際私法立法に関する研究ノート  カザフスタン及びウズベキスタンを中心としてー﹂東洋法学 四五巻一号七七頁以下、拙稿﹁キルギスタン共和国民法典︵一九九八年︶中の国際私法規定﹂東洋法学五一巻一号二一二五頁 以下、拙稿﹁外国国際私法立法に関する研究ノート︵一〇︶ーベラルーシ民法典中の国際私法規定1﹂大阪国際大学紀 要国際研究論叢一四巻四号六五頁以下等参照︶。独立国家共同体加盟諸国以外にも、モンゴルのような旧社会主義国に おいて維持されており︵拙稿﹁モンゴル民法典中の国際私法規定︵二〇〇二年︶﹂東洋法学四八巻一号六九頁以下参照︶、 又、ベトナムのような現社会主義国においても採用されている形式である︵拙稿﹁外国国際私法立法に関する研究 ノート︵八︶ーベトナム民法典中の国際私法規定ー﹂大阪国際大学紀要国際研究論叢一二巻四号六三頁以下、拙稿﹁ベ トナム国際家族法立法に関する研究ノート﹂東洋法学四七巻一号一四一頁以下参照︶。それに対して、リトアニア共和国 は、ソビエト連邦からの分離をもって、国際私法立法の形式についても、過去と訣別したことが看取される。  次に、実質的な面に見られる点について言えば、大まかには、総則、人事、家族、財産に関する諸規定へと分類 され、全体の構成が西欧型国際私法へと変容している。又、それらの諸規定が規律の対象として関心を有する個々 の法律関係についてもまた、同様のことが指摘できる。その詳細については、以下において列記される通りであ る。尚、民法典中の国際私法規定であるため、国際的裁判管轄権や外国裁判の承認・執行等の国際民事訴訟法に関 する問題については全く触れられていない。それらについては、二〇〇二年七月一日施行の民事訴訟法典に規定さ れていると見られる︵寄≦器①く巨⊆ω如鉾ρ¢ミN参照︶。  尚、全体の構成との関連において、特に相続について若干付言しておきたい。それを基本的に財産法上の法律関 217

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係と考えるべきか、それとも、家族法上のそれと考えるべきかは、その財産法的側面と家族法的側面とのいずれを 重視し、又、強調するかにより、諸国の法体系において相違が見られるところである。その点について、リトアニ ア国際私法は、ソビエト連邦時代には当然にその態勢に従い、その他の財産法関係とともに民法典中に規定してい たが、新立法にあっても、その配置から見られる限り、基本的には同様の立場が維持されているように見られる。 しかし、ここにおいては、わが民法典の立場に従い、国際家族法規定の箇所において論及することとした。 四 新旧総則規定の比較  改正前のリトアニア国際私法にあっては、総則規定は専ら民法典中に置かれていたと言って良いであろう。家族 法典中には、僅かに公序及び条約の優先的適用に関する特別規定のみが置かれていたに過ぎない。それに対して、 新立法においては、新たに多くの総則規定が追加されている。以下、それらの諸規定に言及することとしたい。  先ず、外国民事法の適用に関する旧民法典第六〇三条の﹁当事者の約定、リトアニア共和国の国際条約又はリト アニア共和国の法律が定めるときは、外国法が民事的法律関係に適用される。﹂という規定は、新民法典第一条の 一〇第一項にもそのまま規定されている。同条は、更に、準拠外国法の範囲︵第二項︶、送致の意義における原則 としての実質法の指定︵第三項︶、地域的不統一法国法及び人的不統一法国法の指定における間接指定主義︵第四項 及び第五項︶、上記の指定において準国際私法が存在しない場合における直接指定の基準︵第六項︶について定めて いる。そして、その基準は最密接関連性である。  次に、外国法の適用の制限に関する旧民法典第六〇四条の﹁外国法の適用は、それがリトアニア共和国の社会的 利益を侵害することとなるときは排除される。その場合においては、リトアニア共和国法が適用される。﹂という 218

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規定も、新民法典第一条の一一第一項にそのまま規定されているが、同条は、更に、内外の強行法規の優先的適用 ︵第二項︶、及び、最密接関連性の原則に基づく例外条項︵第三項︶を定めている。リトアニア共和国における外国 法並びに国際条約及び協定の適用に関する旧婚姻・家族法典第二一五条第一項の﹁婚姻及び家族に関する外国法の 適用、又は、同法に基づく身分行為の承認は、適用又は承認がリトアニア共和国の国家制度上の原則に反すること になるときは、行なわれてはならない。﹂という規定は、旧民法典第六〇四条における一般公序規定に対する特別 公序規定であったが、両法典が統合された結果、新民法典中には置かれていない。  更に、外国法の内容の確定に関する旧民法典第六〇五条における﹁適用される外国法規の内容と関連する証明方 法は、全て、訴訟当事者が、各外国における同法の公権的解釈、ぞの適用における実務及び原則と一致して提出し なければならない。﹂︵第一項︶という規定、及び、﹁当事者が本条第一項において定められた義務を果たさないと き、訴訟の解決を取り扱っている裁判所、仲裁裁判所又は他の機関は、リトアニア共和国の類似の法律を適用す る。﹂︵第二項︶という規定に対して、新民法典第一条の一二においては、前者について、職権探知主義が原則とさ れ︵第一項︶、当事者による法選択の場合にのみ、当事者主義が採られている︵第二項︶。そして、補充法としての リトアニア法の適用︵第三項︶は、更に、暫定措置を必要とする場合にも拡大されている︵第四項︶。  又、国際条約及び国際的慣習に関する旧民法典第六〇六条の﹁国際条約により、リトアニア共和国においてリト アニァ共和国民事法によって定められている規則とは別の規則が定められているときは、国際条約の規則が適用さ れるべきものとする。﹂︵第一項︶という規定、及び、﹁国際的慣習は、その適用がリトアニア共和国法、国際条約 又は当事者の約定によって定められている場合、又、当該関係が立法上又は当事者の約定をもって規律されていな いか、又は、不十分にしか規律されていないときも適用されなければならない。﹂︵第二項︶という規定は、新民法 219

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典第一条の二二において、前者はそのまま規定されている。しかし、国際慣習に関する後者の規定は、新立法にお いては削除されている。又、旧婚姻・家族法典第二一五条第二項が定める﹁リトアニア共和国の国際条約により、 婚姻及び家族に関するリトアニア共和国立法に従って行なわれる規則とは別の規則が取り決められているときは、 国際条約の規則が通用されなければならない。﹂という規定は、旧民法典第六〇六条第一項における一般規定に対 する特別規定であったが、両法典が統合された結果、新民法典第一の一三第一項においては一般規定のみが残され ている。準拠法選定規則としてハーグ国際私法条約等が援用されていることについては前述したところである。  そして、反致及び第三国法への送致に関する旧民法典第六〇七条の﹁適用されるべき外国法がリトアニア共和国 法への反致を定めるときは、リトアニア共和国法が適用されるべきものとする。﹂︵第一項︶という規定、及び、﹁適 用されるべき外国法が第三国法への送致を定めるときは、第三国法が適用されるべきものとする。﹂︵第二項︶とい う規定におけるそれらの反致は、新民法典第一条の一四第一項及び第二項において、﹁本法典によって定められた 場合﹂という条件を付して認められている。その他、新立法第四項は反致が制限されるべき場合について、又、同 第五項は国際条約ないし国際慣習に依るべき場合における反致について定めている。 五 新旧国際人事法規定の比較  権利能力及び行為能力に関する旧規定には、リトアニアとの関連において定められた一方的抵触規定が多いのが 特徴であった。それらの諸規定が如何に双方化されているかが、ここにおいて注目される点であるが、尤も、これ は、わが国の﹁法の適用に関する通則法﹂上、後見開始の審判等に関する第五条、及び、失踪宣告に関する第六条 が、わが国における住所又は居所の存在を条件として、わが国裁判所の管轄を肯定し、日本法に依るべきとする立 220

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場にほぼ相応するものであった。尚、自国国民及び法人の権利能力の制限に対する報復規定は廃止され、旧ソビエ ト連邦時代の残津は、その点においても一掃されようとしている。  先ず、外国国民の民事上の権利能力に関する旧民法典第六〇八条の﹁外国国民はリトアニア共和国国民と同一の 民事上の権利能力を有する。この一般規定からの個別の除外は、リトアニア共和国法によって決定されることがで きる。﹂︵第一項︶という規定、及び、﹁リトァニア共和国国民の民事上の権利能力が他のいずれかの国家によって 制限されている場合には、リトアニァ共和国政府は、リトアニァ共和国に在る同国家の国民につき、相応する民事 上の権利能力の制限を定めることができる。﹂︵第二項︶という規定については、新民法典第一条の一五第一項にお いて前者のみが残され、後者が削除されていることは、前述した通りである。又、無国籍者の民事上の権利能力に 関する旧民法典第六〇九条の﹁無国籍者はリトアニア共和国においてリトアニア共和国国民と同一の民事上の権利 能力を有する。この一般規定からの個別の除外は、リトアニア共和国法によって決定されることができる。﹂とい う規定も、新民法典同条第三項において受け継がれている。  一方、外国国民及び無国籍者の民事上の行為能力に関する旧民法典第六一〇条の﹁外国国民の民事上の行為能力 は、その者がその国民である国家の法律に従って決定される。﹂︵第一項︶という規定は、﹁無国籍者の民事上の行 為能力は、その者がその継続的な居所を有する国家の法律に従って決定される。﹂︵第二項︶という規定と統合され て、共に平常の居所地の法に依るべきとされ、又、﹁リトアニア共和国にその継続的な居所を有する外国国民及び 無国籍者は、行為無能力者又は制限的行為能力者であるかにつき、リトアニア共和国の法規定に従って宣告され る。﹂︵第三項︶という規定がそのまま残されたことが、それぞれ、新民法典第一条の一六第一項及び第四項におい て見られている。 221

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 又、外国国民及び無国籍者の死亡宣告及び失踪宣告に関する旧民法典第六一一条の﹁リトアニア共和国にその継 続的な居所を有した外国国民及び無国籍者は、失踪又は死亡につき、リトアニア共和国の法規定に従って宣告され る。﹂という規定は、それらの者の平常の居所地の法に依るとして双方化されていることが新民法典第一条の一五 第二項及び第四項に見られ、加えて、失踪当時の法が知れないときは、最後に知られた法に依るべきことが、同第 一条の一八において新たに規定されている。  更に、外国法人の民事上の権利能力に関する旧民法典第六一二条の﹁外国法人の民事上の権利能力は、その主た る営業所︵役員、主たる管理機関その他︶がその領域において活動する国家の法律に服する。﹂︵第一項︶という規 定は、新民法典第一条の一九第一項において、設立準拠法主義へと改められており、又、﹁リトアニア共和国法人 の民事上の権利能力が他のいずれかの国家によって制限されている場合には、リトアニア共和国政府は、リトアニ ア共和国にその本拠を有する同国家の法人につき、相応する民事上の権利能力の制限を定めることができる。﹂︵第 二項︶という規定も、新民法典からは排除されている。  しかし、外国法人の支店及び代理人の民事上の権利能力に関する旧民法典第六一三条のおける﹁外国法人の支店 及び代理人の民事上の権利能力は、その主たる営業所︵役員、主たる管理機関その他︶がその領域において活動す る国家の法律に服する。﹂という規定は、新民法典第一条の一九ないし二二に亘って詳細に規定されるに至った が、その内容は、むしろ、リトアニアにおける取引の安全を顧慮したものとなっている。  そして、民事的法律関係の主体としての国家への適用法に関する旧民法典第六一四条における﹁民事的法律関係 の主体としての国家の権利能力は、各国家の法律に服する。﹂という特徴的な規定は、新民法典第一条の二三にお いても、国家の機関及び自治体へ拡大されて規定されている。 222

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六 新旧国際家族法規定の比較  新立法においては、家族法関係の諸規定も民法典中に規定されることとなった。以下においては、それらの諸規 定が、旧婚姻・家族法典中の諸規定と比較される。ここにおいて注目される点もまた、旧規定における一方的規定 が如何に双方化されているかという点である。尚、婚姻関係及び家族関係における外国人及び無国籍者の権利及び 義務に関する旧婚姻・家族法典第二〇八条の﹁外国人は、リトアニア共和国において、婚姻関係及び家族関係上、 リトアニア共和国国民と同一の権利を享受し、又、同一の義務を有する。﹂︵第一項Vという規定、及び、﹁個別の 除外は、リトアニア共和国法によって定められることができる。﹂︵第二項︶という規定、﹁リトアニア共和国に継 続的に居住する無国籍者は、婚姻関係及び家族関係上、リトアニア共和国国民と同一の権利を享受し、又、同一の 義務を有する。﹂︵第三項︶という規定は、新民法典においては、外国国民及び無国籍者の民事法上の権利能力に関 する第一条の一五第一項及び第三項に包摂されている。同様に、旧婚姻・家族法典第二一四条の﹁リトアニア共和 国に継続的な住所を有する無国籍者は、リトアニア共和国国民と同様、婚姻を締結し、又、解消させることがで き、婚姻及び家族に関する立法から生じている権利を享受し、又、本立法に依って定められた義務を有する。﹂と いう規定も、前出新民法典第一条の一五第三項に包摂されていると考えられる。  先ず、婚姻の締結に関する旧立法について言えば、リトアニア共和国国民による外国人との婚姻締結及びリトア ニア共和国における外国人相互による婚姻締結について、旧婚姻・家族法典第二〇九条において、﹁リトアニア共 和国国民による外国人との婚姻締結及び外国人相互による婚姻締結は、リトアニア共和国においてリトアニア共和 国立法に従って行なわれる。﹂︵第一項︶、及び、﹁リトァニァ共和国における外国の大使館及び領事館において締結 223

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される外国人の間の婚姻は、婚姻締結当事者が、婚姻締結の当時、大使又は領事を任命した国家の国籍を有すると き、相互性を条件として、リトアニア共和国において有効であると判断されなければならない。﹂︵第二項︶という 規定のほか、リトアニア共和国国民によるリトアニア共和国領事館における婚姻締結、及び、リトアニア共和国の 領域外において締結された婚姻の承認について、旧婚姻・家族法典第二一〇条において、﹁リトアニア共和国の領 域外におけるリトアニア共和国国民の間の婚姻締結は、リトアニア共和国領事館において行なわれる。﹂︵第一項︶、 ﹁リトアニア共和国の領域外におけるリトアニア共和国国民による相互間の婚姻又は外国人との婚姻が、婚姻締結 地において行なわれている法律が定める婚姻の方式の遵守の下に締結された場合には、それは、本法典第一五条な いし第一七条及び第四五条において示された如何なる障害もそれを妨げないとき、リトアニア共和国において有効 であると認められる。﹂︵第二項︶、﹁リトアニア共和国の領域外において基準となる国家の法律に従って締結されて いる外国人による婚姻は、リトアニア共和国において有効であると認められる。﹂︵第三項︶という諸規定が見られ た。それらの中、婚姻の実質的成立要件については、新民法典第一条の二五第一項及び第三項において、実際上、 婚姻当事者の平常の居所地法主義を採用した双方的抵触規則へと変換されている。婚姻の方式については、締結地 法への単一的連結に止まらず、当事者の平常の居所地法又は本国法への選択的連結をも認めるのが、新民法典第一 条の二六の規定における新しい立場である。  次に、夫婦の身分的効力に関する新民法典第一条の二七、及び、財産的効力に関する同第一条の二八は新規に置 かれた規定である。前者は、夫婦の共通の平常の居所地法、最後の共通の平常の居所地法、最密接関係地法の段階 的連結の規則を採り、後者は、夫婦の共通の平常の居所地法、共通本国法、婚姻締結地法の段階的連結と共に、当 事者自治を認める規則を採っている。 224

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 又、離婚に関する旧立法について言えば、リトアニア共和国におけるリトアニア共和国国民による外国人との離 婚並びに外国人相互による離婚に関する旧婚姻・家族法典第二一一条において、﹁リトアニア共和国国民による外 国人との婚姻並びに外国人相互による婚姻のリトアニア共和国における離婚は、リトアニァ共和国の立法に従って 行なわれる。﹂︵第一項︶、﹁リトアニア共和国の領域外において基準となる国家の立法に従って行なわれるリトアニ ア共和国国民と外国人との間の離婚は、離婚の当時、少なくとも夫婦の一方がリトアニア共和国の領域外において 生活していた場合には、リトアニア共和国において承認される。﹂︵第二項︶、﹁リトアニア共和国の領域外において 基準となる国家の法律に従って行なわれるリトアニア共和国国民による離婚は、夫婦の双方が、離婚の当時、リト アニア共和国の領域外において生活していた場合には、リトアニア共和国において法的に有効であると認められ る。﹂︵第三項︶、﹁リトアニア共和国の領域外において基準となる国家の法律に従って行なわれる外国人の間の離婚 は、リトアニア共和国において有効であると認められる。﹂︵第四項︶、﹁リトアニア共和国の領域外において生活し ているリトアニア共和国国民は、配偶者の国籍にかかわらず、リトアニア共和国の領域外において生活しているそ の者とのその婚姻をリトアニア共和国裁判所によって離婚させる権利を有する。リトアニア共和国の立法に従い、 登録機関における身分行為による離婚が許されている場合には、婚姻はリトアニア共和国領事館において解消され ることができる。﹂︵第五項︶という諸規定が見られたが、それらの中、離婚の準拠法に関する新民法典第一条の 二九第一項及び第二項においては、夫婦の共通の平常の居所地法、最後の共通の平常の居所地法、受理裁判所所在 地法の段階的連結という双方的抵触規則へと改められ、それと共に、離婚保護︵貯くR9<・昌一︶のための規定が同 条第三項に置かれている。又、旧婚姻・家族法典第二二条第六項が定めていた﹁外国において継続的に生活する リトアニア共和国国民による離婚事件は、リトアニア共和国の立法によって定められた規則の下に、リトアニア共 225

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和国の裁判機関によって審理されることができる。﹂という管轄規定は、新民法典第一条の三〇において、婚姻、 離婚及び生活共同体の無効確認訴訟に関する裁判管轄として規定されている。  更に、養子縁組に関する旧立法について言えば、リトアニア共和国の領域外において生活するリトアニァ共和国 国民たる子の養子縁組に関する旧婚姻・家族法典第一二二条の﹁リトアニア共和国国民であり、かつ、リトアニア 共和国の領域外において生活する子の養子縁組は、リトアニア共和国のいずれかの領事館において行なわれる。養 親がリトアニア共和国国民でないときは、リトアニア共和国国籍を有する子の養子縁組については、リトアニア共 和国教育省の事前の許可が求められなければならない。﹂︵第一項︶、及び、﹁リトァニア共和国国民である子の養子 縁組であって、子がその領域において生活する国家の機関の下において行われるものも、かような養子縁組のリト アニア共和国教育省による事前の許可を条件として、有効であると認められる。﹂︵第二項︶という養子保護を理念 とする諸規定は、新民法典第一条の三三第一項ないし第三項において、縁組保護の立場を基調としつつ、縁組の成 立については養子の平常の居所地法主義、縁組の効果については養親の平常の居所地法主義が採用されている。  尚、新民法典中には、新たに、子の保護を顧慮した子の血統︵準正︶及び親子間の法律関係、並びに、ハーグ条 約を援用した後見及び扶養に関する諸規定が置かれるに至ったが、注目されるのは、同第一条の二四における婚 約、及び、第一条の二九における生活共同体︵内縁︶に関する諸規定であろう。  相続及び遺言への適用法に関する旧民法典第六二一条は、﹁相続関係は、被相続人が死亡当時その国民であった 国家の法律に服する。被相続人が無国籍者である場合には、相続関係はその者の最後の定住所が所在した国家の法 律に服する。﹂︵第一項︶、﹁人の遺言を作成、変更及び撤回する能力並びに遺言の方式及びその変更又は撤回は、そ れらの証書が作成されている国家の法律に服する。﹂︵第二項︶、﹁外国において作成された遺言及び遺言の変更又は 226

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撤回は、本法典第六〇六条第一項において定められている例外をもって、リトアニア共和国政府によって定められ た規定に従い、リトアニア共和国において認証されることができる。﹂︵第三項︶、﹁リトアニア共和国に所在する土 地、建物およびその他の不動産は、いかなる相続の場合においてもリトアニア共和国の法律に服する。﹂︵第四項︶ と定めていた。しかし、新民法典第一条の六〇においては、遺言の作成、変更、撤回の能力について、作成者の平 常の居所地法が原則とされ、作成地法は補充法に止まる。又、第一条の六二においても、相続の準拠法は、被相続 人の本国法から、その者の死亡当時の平常の居所地法へと改正されている。 七 新旧国際財産法規定の比較  先ず、法律行為の方式への適用法については、旧民法典第六一五条は、﹁外国において行なわれた法律行為の方 式へは、その行為地法が適用されるべきものとする。当事者は他の法律行為の方式を合意することもできるが、か ような合意はそれが行なわれた国家の法律に違反してはならない。﹂︵第一項︶、﹁当事者の合意において法律行為の 行為地が表示されていないときは、それはリトアニア共和国法に従って決定される。﹂︵第二項︶、﹁リトアニァ共和 国に所在する不動産に対する権利を対象とする契約の方式は、契約締結地に拘わらず、リトアニア共和国法に服す る。﹂︵第三項︶と定めていた。新民法典第一条の三八においては、不動産に関する法律行為を除いて、原則として 当事者自治に依り、行為地法︵締結地法︶を認めるという立場は後退している。  次に、契約について、旧立法は、当事者の一方が外国の契約当事者である法律行為に因る関係への適用法に関 し、旧民法典第六一六条が、﹁当事者の一方が外国の契約当事者である契約に因る当事者の権利及び義務は、契約 当事者により合意をもって選択された国家の法律に服する。﹂︵第一項︶と定めるとともに、﹁その権利および義務 227

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の決定の際に適用されるべきである法律が、当事者により合意をもって決定されていないときは、次に掲げる者に 相当する契約当事者がその継続的な居所または本拠をその領域に有する国家の法律が適用される。ω売買契約にお いては売り主、吻寄託契約においては受託者、⑥輸送契約においては輸送業者、@保険契約においては保険業者、 ㈲消費貸借契約においては貸し主、⑥贈与契約においては贈与者、ω質権設定契約においては質権設定者、⑥保証 契約においては保証人、働取次契約においては取次業者、⑯運送取扱契約においては運送取扱業者﹂︵第二項︶と 定め、又、﹁︵法選択がない場合の︶客観的な連結が本条第二項から明らかにならないときは、賃貸借契約による当 事者の権利及び義務は、賃貸物が所在する国家の法律、業務執行契約によるそれらは、委任がなされた国家の法 律、請負契約によるそれらは、作業が行なわれる国家の法律に服する。﹂︵第三項︶と定め、更に、補充的に、﹁そ の他のすべての場合においては、契約が締結された国家の法律が適用されるべきものとする。﹂︵第四項︶と定め、 更に、又、﹁競売におけるか、取引所におけるか、又は、公募によって締結されている契約による当事者の権利及 び義務は、競売もしくは公募が行なわれたか、又は、取引所が所在する国家の法律に服する。﹂︵第五項︶と定めて いた。これらの諸規定に見られる立場は、新民法典第一条の三七において基本的に受け継がれているが、同条第五 項には、特徴的給付の推定が及ばない場合に関する規定が置かれている。その他、消費者契約に関する規定とし て、同第一条の三九が置かれた。  又、委任状の方式への適用法及び委任状の有効期間について、発行地法に依るとする旧民法典第六一七条はリト アニア国際私法に特徴的な規定であったが、新民法典第一条の四〇においても、有効期間及び委任者と代理人との 問の権利義務に関する規定が追加された上で規定されている。更に、﹁請求権の時効期問は、法律関係の関係当事 者の権利および義務の確定の際にその法律が通用される国家の法律に服する。﹂と定める旧民法典第六一八条上の 228

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立場は、新民法典第一条の五九においても同様に規定されている。  物権の準拠法に関し、旧立法は専ら所有関係への適用法につき、旧民法典第六一九条が、﹁不動産の所有権及び その保護は、それがその領域に所在する国家の法律に服する。﹂︵第一項︶、﹁国家の登録に服する財産の所有権及び その保護は、それがその領域において登録されている国家の法律に服する。﹂︵第二項︶、﹁他の各財産の所有権及び その保護は、本法典第六一六条の規定に服する。﹂︵第三項︶、﹁不動産及び動産の所有権は、取得時効に関する限 り、取得時効期間の満了の当時、財産がその領域に所在した国家の法律に服する。﹂︵第四項︶と定めていた。新立 法において、異則主義から同則主義への立場の変更とともに、移動中の物に対する物権についても、新民法典第一 条の四八において規定されている。加えて、新立法においては、当事者による動産物権の準拠法の選択を定めてい る同第一条の四九、及び、担保設定の準拠法の選択を定めている同第一条の五一が注目される。  最後に、不法行為による債務関係への適用法についてである。旧民法典第六二〇条においては、原則として、 ﹁不法行為による債務関係における当事者の権利及び義務は、不法行為が行なわれている国家の法律に服する。﹂ ︵第一項︶と定められ、又、﹁不法行為の事実が行なわれているか、又は、損害賠償のための基礎として用いられる その他の構成要件が満たされている地が、不法行為の行為地と見倣される。不法行為の行為地又はその他の構成要 件の存在の確定が不可能であるときは、損害を与える結果が生じている地の法律が適用される。﹂︵第二項︶とし て、副次的に結果発生地法主義が定められていた。それに対して、新民法典第一条の四三以下における諸規定は、 被害者による法選択の導入、共通常居所地法等の密接関係法の優先的適用、法廷地法の適用の合意等、より精緻化 されている。その他、生産物責任、道路交通事故、人格権侵害、不正競争に関する特別規定も新設された。 229

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八 結語  新立法においては、旧立法が規律の対象とした法律関係について定めている諸規定のほか、知的所有権にも及ぶ 数多くの新しい規定が追加されている。それらの諸規定の殆んどは西欧型国際私法に見られる通説的な立場を踏襲 するものであり、それによっても、新しいリトアニア国際私法が目指した西欧化という目標が達成されていること が確認されている。今日における西欧型国際私法が機軸としているのは、密接関連性の原則及び弱者保護の理念で あるが、それらは新しいリトアニア国際私法についても例外ではない。最密接関連法への特別連結とか、例外条項 の援用もそれに包摂されるものである。しかし、それらに止まらず、新しいリトアニア国際私法立法の特徴とし て、次に挙げるようないくつかの点を指摘することができるであろう。先ず、広汎に亘る当事者自治の導入であ る。不法行為のみならず、とくに物権の準拠法については、学説上の隆盛にも拘らず、それを実現することができ なかったドイツとは対照的である︵拙稿﹁ドイツ国際私法における契約外債務および物権の準拠法  一九九九年五月 二一日法の概要1﹂東洋法学四三巻二号一八七頁以下参照︶。次に、ハーグ国際私法条約を中心とした数々の国際条 約の援用である。国際私法の統一のための立法技術上、諸国国際私法が端的にいずれかの国際私法条約に依拠する ことを明示することは、一つの有効な方法であると考えられる。そして、新たな婚姻形態とも呼ぶべき登録パート ナーシップ制度等への迅速な対応も見られる。然して、この新立法は単に脱ソ入欧に終始したものではなく、今後 の国際私法のあり方について、極めて示唆的な部分も有していると評すべきであろう。以下は、二〇〇〇年七月 一八日施行のリトアニア共和国民法典中の国際私法規定の試訳である。訳出に当たっては、賠隔嚢88”の80 。独に 掲載された独語訳に拠った。 230

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︵参考条文︶リトアニア共和国民法典中の国際私法規定

リトアニア共和国民法典︵二〇〇〇年七旦八日法律、二〇〇一年七月百施行︶

第一編 総則 東洋法学第52巻第2号(2009年3月) 第一章 民法及びその適用 第二節 国際私法 第一款 総則 第一条の一〇 外国法の適用 一 外国法は、リトアニア共和国の国際条約、当事者の合意、又は、リトアニア共和国の法律が定める限り、民事  法関係に適用される。 二 準拠外国法への送致は、同法に従い、法律問題の実際の状態に適用されるべきである全ての法規を含む。 三 本法典が例外を定めていない限り、準拠外国法への送致はその国家の国際私法への送致ではなく、当該国家の  国内的実質法への送致を意味する。 四 本法典の法規に従って適用される法が帰属する外国のいくつかの国家領域において、異なる法制度が存在する  ときは、準拠外国法への送致は、外国法上の基準に従って探知される当該国家領域の法制度への送致を意味す 231

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 る。 五 本法典の法規に従って適用される法が帰属する外国において、異なる人的部類に適用される多数の法体系が存  在するときは、同国法上の基準に従って定められた法制度が適用される。 六 本条第四項及び第五項に従った準拠外国法が基準を定めていなかったときは、法律問題が最も密接な関連性を  呈示する法体系上の法が適用される。 第一条の︻一 外国法の適用の際の制限 一 外国法規の指定は、それがリトアニアの憲法又は他の法律に定められた公の秩序に反することになるときは排  除される。その場合には、リトアニア共和国の民事法が適用される。 二 法律問題が最も密接な関連性を呈示するリトアニア共和国又は他の国家の強行法規は、契約当事者が合意に  よって別の外国法を選択したか否かに拘わらず適用されるものとする。その問題の解決の際に、裁判所は、法規  の性格、目的及び適用又は不適用の法的効果をも考慮しなければならない。 三 法律問題の全ての状態を考慮して、準拠法が法律問題又は法律問題の一部との如何なる関連性も呈示せず、か  つ、他のいずれかの国家の法が最も密接な関連性を呈示するとき、本法典に従い、準拠外国法は排除される。準  拠法が契約当事者の合意によって選択されたとき、本規則は適用されない。 第一条の=一外国法の内容の確定 一 国際条約又はリトアニア共和国の法律によって定められた場合には、裁判所は職権をもって外国法を適用し、  それを解釈し、かつ、その内容を確定する。 二 外国法の適用が契約当事者の合意によって定められているとき、訴訟当事者は、それぞれの国家における公権 232

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 的解釈、その適用の実際及び学説と一致した外国法上の準拠法規の内容とともに存在する全ての証拠方法を提出  しなければならない。訴訟当事者の依頼に従い、裁判所は準拠外国法に関する情報の入手の際に援助することが  できる。 三 裁判所又は訴訟当事者が本条に従った第一項及び第二項の義務を履行しないとき、リトアニア法が適用され  る。 四 例外的場合には、いずれかの者の権利及び義務又はその財産の保障のための暫定的措置の開始が必要となる限  り、裁判所は、訴訟の準拠法及びその内容が確定されない限り、リトアニア共和国の法の適用により、緊急の問  題を解決することができる。 第一条の一一一一国際条約 一 リトァニア共和国の国際条約により、リトアニア共和国の民法典及び他の法律によって定められている規則と  は別の規則が規定されているときは、国際条約上の規則が適用されるものとする。 一一リトァニア共和国の国際条約は民事法関係へ直接適用される。国際条約が、適用につき、リトアニァ共和国の  国内的法律行為の必要性を定めた場合は例外とする。 三 国際条約の規則は、その国際的性質、並びに、保障すべき適用及び解釈の必要性、統一性の考慮の下に、適用  され、又、解釈されるものとする。 第一条の一四 反致及び第三国法への送致︵襯薯包 一 準拠外国法がリトアニア共和国法への反致を定めるときは、本法典によって定められた場合に、リトアニア共  和国法が適用される。 233

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二 準拠外国法が第三国法への送致を定めるときは、本法典によって定められた場合に、第三国法が適用される。 一一一準拠外国法が、人の民事法上の身分の決定の際に、リトアニア共和国法への再送致を定めるときは、リトアニ  ア共和国法が適用される。 四 本条第一項、第二項及び第三項は、契約当事者が準拠法を選択したとき、並びに、法律行為の方式及び法定債  務関係への準拠法の決定の際にもまた適用されない。 五 それらの諸項の規則に従った国際条約︵慣習︶の適用の際には、反致及び第三国法への送致の問題は、国際条  約︵慣習︶の規定に従って解決されるものとする。 第二款 自然人の民事法上の属人法の準拠法 第一条の一五 外国国民及び無国籍者の民事法上の権利能力 一 外国国民は、リトアニア共和国において、リトアニア共和国国民と同様の民事法上の権利能力を有する。個別  の例外はリトアニア共和国の法律によって決定されるものとする。 二 外国国民は、行方不明又は死亡につき、その者がその平常の居所︵法典第二条の一二︶を有する国家の法に  従って宣告される。 三 無国籍者は、リトアニア共和国において、リトアニア共和国国民と同様の民事法上の権利能力を有する。個別  の例外はリトアニア共和国の法律によって決定されるものとする。 四 無国籍者は、行方不明又は死亡につき、その者がその平常の居所を有する国家の法に従って宣告される。 第一条の一六 外国国民及び無国籍者の民事法上の行為能力 234

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一 外国国民又は無国籍者の民事法上の行為能力は、その者がその平常の居所を有する国家の法に従って決定され  る。 二 その者が如何なる平常の居所地も有しないか、又は、それが確定されるのが困難であるときは、行為能力は、  その者が当該法律行為を行った領域が帰属する国家の法に従って確定される。 三 人が多数の国家に居住するときは、人が最も密接な関連性を呈示する国家の法が適用される。 四 リトァニア共和国に平常の居所を有する外国国民及び無国籍者は、行為能力又は制限的行為能力につき、リト  アニア共和国の法律上の法規に従って宣告される。 五 行為能力は、行為能力が平常の居所地の変更前に取得されたときは、平常の居所地の変更によって影響されな  いQ 第一条の一七 行為無能力の援用の禁止 一 自然人は、その者が法律行為の締結地によれば行為能力者であったときは、平常の居所地の法に従って自分の  行為無能力を援用してはならない。但し、その者が平常の居所地を有した国家の法に従ったその者の行為無能力  を他方契約当事者が知ったか、又は、知らなければならなかった場合は認められる。 一一本条第一項の規定は、家族法及び相続法、並びに、物権にも適用されない。 第一条の一八 外国国民及び無国籍者の死亡宣告及び失踪宣告  外国国民及び無国籍者は、行方不明又は死亡につき、それらの者が最後に知られた平常の居所地を有した国家の 法に従い、宣告されるものとする。 235

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第三款法人及びその他の団体の準拠法 第一条の一九 外国法人及びその他の団体の民事法上の権利能カ 一 外国法人及びその他の団体の民事法上の権利能力は、その法人又は団体が設立されている国家の法に従って決  定されるものとする。 二 法人及び団体の設立定款の侵害の際には、民事法上の権利能力は、実際の活動地の法に従って決定される。 三 法人又はその他の団体の設立地に拘わらず、営業所又は営業若しくは他の主たる活動地がリトアニア共和国に  所在する限り、子会社の民事法上の権利能力はリトアニア共和国法に従って規律される。 四 法人又は他の団体の合併、併合又は本拠移転は、一方がリトアニア共和国、かつ、他方が外国に所在するとき  は、行為が双方の国家の法に従って実行されている限り、リトアニア共和国におけるその組織の民事法上の権利  能力に影響を及ぼさない。 第一条の二〇 準拠法によって規律される問題 一 本法典第一条の一九に従った準拠法は、次に掲げる事項を規律する。  n (5)(4)(3)(2)( 法人又は他の団体の法形式及び定款 法人又は他の団体の設立、改組及び解散 法人又は他の団体の名称 法人又は他の団体の機関の制度及びその内部的権限 法人又は他の団体の民事法上の行為 236

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 ㈲ 法人又は他の団体の代表  ω 法律又は設立定款の違反の法的効果 ニ リトアニア共和国において登録された法人又は他の団体の名称は、リトアニア共和国法に従って保護される。 第一条の二一 外国法人の代理店及び支店並びにその他の団体の準拠法 一 外国法人又は他の団体のリトアニア共和国において登録された代理店及び支店には、リトアニア共和国法が適  用される。 二 代理店又は支店の名の下に活動している者は、リトアニア共和国における所在地を指定しなければならない。 三 代理店又は支店の名の下に活動している者の権利及び義務は、リトアニア共和国法に従って決定されるものと  する。 第一条の一三 法人及び他の機関の代理人並びにその民事法上の責任の準拠法 一 外国法に従って設立された法人又は他の機関がリトアニア共和国において活動している限り、法人又は他の名  の下に、かつ、そのために活動している者の民事法上の責任は、リトアニア共和国法に従って決定されるものと  する。 二 機関又は代理人によって締結された法律行為であって、それが権限︵権能︶を喩越した際のものは、権限の制  限が契約当事者の平常の居所地又は営業所の法によって定められていない限り、法人又は他の機関の要求に従っ  て無効と宣告されてはならない。但し、他方契約当事者が他の契約当事者との関係の考慮の際に、制限の存在を  知ったか、又は、知らなければならなかった場合は例外とする。 第一条の二三 民事法関係の主体としての国家及びその機関、自治体及びその機関の準拠法 237

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民事法関係の主体としての国家及びその機関、自治体及びその機関へは、当該国家の法が適用される。 第四款 家族法関係の準拠法 第一条の二四 婚姻締結の合意の準拠法 一 婚姻締結の合意の準拠法は、契約当事者の平常の居所地法が決定する。 二 婚姻締結の合意の契約当事者が異なる国家に平常の居所地を有するとき、その合意の法的効果は、訴訟と最も  密接な関係を有する法の考慮の下に、合意の締結地、契約当事者の一方の平常の居所地、又は、契約当事者の一  方の国籍の法に従って決定されるものとする。 第一条の二五 婚姻締結の要件の準拠法 一 夫婦の行為能力及び他の婚姻締結の要件はリトアニア共和国法に服する。 一一夫婦の一方がリトアニア共和国に平常の居所を有するか、又は、婚姻締結の当時、リトアニア国民であると  き、婚姻は民事登録官庁において登録されるものとする。 一一一リトアニア共和国に平常の居所を有しない外国国民及び無国籍者の夫婦の行為能力及び他の婚姻締結の要件  は、その婚姻の承認が夫婦の平常の居所地国において目的とされるとき、夫婦双方の平常の居所地法に従って決  定されることができる。 四 外国法に従って合法的に挙行された婚姻は、リトアニア共和国において承認されるものとする。但し、双方の  平常の居所地がリトアニア共和国に所在する夫婦が、リトアニア共和国の法律に従ったその婚姻締結の無効に関  し、回避するために婚姻を行った場合は例外とする。 238

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第一条の二六 婚姻締結の手続の準拠法  婚姻締結の手続は婚姻締結地法に従って決定される。婚姻締結の手続が婚姻締結の当時の夫婦の平常の居所地又 は夫婦の国籍の法的要求と合致するときも、婚姻は有効と宣告される。 第︻条の二七 夫婦の身分的関係の準拠法 一 夫婦の身分的関係へは、夫婦の平常の居所地法が適用されるものとする。 二 夫婦の平常の居所地が異なる国家に所在するとき、夫婦の身分的関係へは、最後の共通の平常の居所地法が適  用されるものとする。夫婦の共通の平常の居所地法がないときは、夫婦の身分的関係と最も密接な関係を呈示す  る国家の法が適用されるものとする。夫婦の身分的関係と最も密接な関係を呈示する国家の法の確定が不可能で  あるときは、婚姻締結地法が適用されるものとする。 第一条の二八 夫婦の財産法制度の準拠法 一 婚姻財産の法制度は、夫婦の平常の居所地の国家の法に服する。夫婦の平常の居所地が異なる国家に所在する  ときは、夫婦の双方の国籍の法が適用されるものとする。夫婦が異なる国家の国民であり、かつ、共通の平常の  居所地を有しない限り、婚姻が締結された国家の法が適用される。 二 夫婦財産の契約的法制度は、合意によって選択された国家の法に服する。その場合に、夫婦は、それらの者が  目指す将来の平常の居所地が所在する国家の法、又は、婚姻が行われた国家の法、又は、夫婦の一方が有する国  籍が帰属する国家の法を選択することができる。準拠法についての夫婦の合意は、選択された法又は締結地法と  合致するとき、有効とする。 一二 合意によって選択された準拠法は、第三者がその合意の事実を知ったか、又は、知らなければならなかったと 239

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 き、第三者に対して適用されるものとする。 四 不動産に対する物権に関する訴訟の解決の際に夫婦の合意によって選択された準拠法は、不動産に関する請求  が、それが所在している領域が帰属する国家の法、及び、それが公権によって登録された国家の法に従って禁止  されているとき、適用される。 五 婚姻財産の法制度に関する合意の変更の際には、夫婦の平常の居所地法が適用されるものとする。婚姻財産の  法制度の変更の際に、夫婦が異なる国家に定住しているとき、夫婦の最後の平常の居所地法が適用されるものと  する。但し、それがないときは、夫婦の財産的法律関係を決定した法が適用されるものとする。 第一条の二九 生活共同体及び離婚の準拠法 一 生活共同体及び離婚には、平常の居所地法が適用されるものとする。 二 夫婦が共通の平常の居所地を有しない限り、最後の平常の居所地法が適用されるものとし、他の場合には、訴  訟と関係した裁判所の法が適用されるものとする。 三 夫婦双方の国籍の法が離婚を禁止するか、又は、婚姻の特別要件の充足を要求する限り、夫婦がリトアニア国  籍又はリトアニア共和国における平常の居所地を有するとき、婚姻はリトアニア共和国の法律に従って解消され  るものとする。 第一条の三〇 婚姻、離婚及び生活共同体の無効宣告の訴訟の裁判権  婚姻、離婚及び生活共同体の無効宣告の訴訟の裁判権は、リトアニア共和国民法典によって定められた場合にお いてリトアニア共和国の裁判所に服する。 第一条の=二 子の血統︵準正︶の準拠法 240

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一 子の血統︵認知、父子関係又は母子関係の確定又は争訟︶は、子にとって最も有利な法の考慮の下に、出生子  が取得した国籍が帰属する国家の法、又は、出生子がその平常の居所を有する国家であって、出生子の父母の一  方がその平常の居所を有する国家の法、又は、出生子の父母の一方が有する国籍が帰属する国家の法に服する。 二 子の準正の決定の際に、法的効果は平常の居所地法に従って実行される。 三 子の準正については、子又は子の父母の一方の平常の居所地がリトアニア共和国に所在するとき、リトアニア  共和国裁判所又は他のリトアニア国家機関が裁判する。 四 父子関係︵母子関係︶の認知の際における子の父母の行為能力は、子の父母の平常の居所地が所在する国家の  法に従って規律される。父子関係︵母子関係︶の認知の方式には、その認知の地又は子の平常の居所地が所在す  る国家の法が適用される。 五 本条の諸規定は、非婚の父母の出生子の血統の確定の際に適用される。 第一条の一二二 子と父母との間の関係の準拠法 一 子と父母との間の身分的及び財産的法律関係には、子がその平常の居所地を有する国家の法が適用される。 二 子の父母が、子が平常の居所地を有する国家に平常の居所地を有せず、かつ、子が父母双方と同一国家の国籍  を有するとき、その国籍の国家の法が適用される。 第一条の三三 子の養子の準拠法 一 子の養子縁組へは、子の平常の居所地の国家の法が適用される。 二 子の養子縁組が、養子にされた子の平常の居所地法、養親の平常の居所地法又は養親の国籍の法に従えば認め  られないと見られるとき、養子縁組は、子の利益がそれらの法秩序よって侵害されない限り、当該法秩序に従っ 241

(33)

 て実行されるものとする。養子縁組がそれぞれの国家において認められるか否か判明しないとき、養子縁組は禁  止される。 一一一養子、養親及びその親族の間の関係には、養親の平常の居所地法が適用される。 四 養子縁組に関する訴訟には、子及び養親の平常の居所地がリトアニア共和国に所在するとき、リトアニア裁判  所の裁判権が適用される。 第一条の一一一四 後見、保佐及び未成年者の保護の準拠法  後見、保佐及び未成年者の保護へは、一九六一年一〇月五日の未成年者の保護に関する官庁の管轄権及び準拠法 に関するハーグ条約に従った法が適用される。 第一条の一一一五 成年の家族構成員の後見及び保佐の準拠法 一 成年の家族構成員の後見及び保佐へは、その者の平常の居所地の国家の法が適用される。 二 成年の家族構成員の後見及び保佐に関する訴訟へは、平常の居所地又は財産所在地がリトアニア共和国に所在  するとき、リトアニァ裁判所の裁判権が適用される。 第一条の三六 家族構成員の扶養義務の準拠法  一九七三年一〇月二日の扶養義務の裁判の承認及び執行に関するハーグ条約を家族構成員の扶養義務の準拠法と する。 第五款契約的債務関係の準拠法 第一条の一一一七 契約的債務関係の準拠法 242

(34)

  契約的債務関係には、契約当事者の合意によって選択された法が適用される。契約当事者のその合意は、締結  された契約の成立に従って確定されるか、又は、訴訟の事実的情況に従って決定されるものとする。契約当事者  は、特別の合意により、契約の全体、又は、契約の具体的な一構成部分、又は、契約の具体的ないくつかの構成 部分へ適用される国家の法を選択することができる。 二 契約当事者は、常に、特別の合意により、契約債務関係について選択された準拠法を他の法に替える権限を有 する。準拠法の変更は遡及的効力を含むが、第三者が異議を申し立てることになってはならず、かつ、如何なる 契約の無効原因も創出してはならない。 =一契約当事者が契約の準拠外国法を選択したという事情は、契約当事者の合意に替えられるべきでないか、又 は、契約当事者が放棄することができないリトアニア共和国又は他の諸国の強行法規の不適用のための理由とは  ならない。 四 契約当事者が準拠法を選択しなかったときは、契約債務関係が最も密接な関係を示す国家の法が適用されなけ  ればならない。その場合には、次に掲げる領域に所在する国家が契約債務関係と最も密接に関係しているものと 推定される。 ω 契約を通じて特徴的な給付の履行を義務付けられた契約当事者の平常の居所又は主たる管理の場所。義務   が、契約当事者の経済活動地が所在する国家の法と最も密接に関係しているときは、経済活動地の法が適用さ   れなければならない。 働 契約の対象が不動産に対する権利又は不動産の用益権を表示したときは、不動産の所在地。  ⑥ 運送契約の範囲内において、運送人の主たる経済活動地が所在するか、又は、貨物が荷積みされているか、 243

(35)

  又は、荷送人の主たる本拠若しくは荷送地が所在する国家であるときは、運送人の主たる経済活動地。 五 本条第四項は、法律問題の事情から、契約が他の国家の法と最も密接な関係を有することが明らかであるため  に、契約当事者の特徴的な給付が履行地に従って確定することができず、かつ、同項に従って定められた推定が  適用されるべきでないときは、適用されてはならない。 六 保険契約については、保険業者の平常の居所地又は経済活動地が所在する領域が帰属する国家の法が適用され  る。不動産に関する保険の場合には、当該不動産が所在している領域が帰属する国家の法が適用されなければな  らない。 七 仲裁の合意については、主たる契約の法が適用される。無効の場合には、仲裁の合意の締結地の法が適用され  る。締結地を決定することができないときは、仲裁裁判所の場所の法が適用される。 八 市場においてか、又は、競売で締結された契約については、市場又は競売の場所の国家の法が適用されなけれ  ばならない。 第一条の一一一八 法律行為の方式の準拠法 一 法律行為の方式については、本法典第一条の三七第一項による法が適用されなければならない。 二 契約当事者が準拠法を選択しなかったときは、法律行為の方式は締結地法に服する。異なる国家に定住する契  約当事者によって締結された契約は、法律行為の方式がその時の国家における法律行為の方式と法的要件が一致  するとき、有効とする。 一一一不動産に関する法律行為又は不動産に対する権利の方式は、当該不動産が所在している地の国家の法的要件に  服する。 244

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