- 103 - 自己愛的脆弱性傾向の人がもっ対人葛藤における特徴 一自己対象体験の視点からー 人間教育専攻 臨床心理士養成コース 清水由希 1.問題と目的 Kohut(199111994)は,個人が生涯,自己 を支えるために必要な体験である自己対象 体験をあげている。中西(1991)・上地(2004) は原始的な自己対象体験が不十分であった り,変容性内在化がうまくいかないと自己 愛の歪みや脆弱さをもたらし,自分の心理 状態を安定させるためにいつまでも他者を 求め続けることになると述べている。自己 愛的脆弱性について上地・宮下(2005/2009) は「自己愛的欲求の表出にともなう不安や 他者の反応による傷つきを処理し,心理的 不安を保つ力が脆弱であるもの」と定義し た。日本は相互協調的自己観を前提とする ため,他者と関係を乱さないために誇大感 の表出を抑制すべきという葛藤が生じやす い。そのため誇大感の表出欲求は維持され たままであり,それゆえに他者評価に対し て過敏になるという自己愛的過敏性が生じ るため,結果的に対人恐怖心性が引き起こ されるとし,対人恐怖心性の発生モデルを 示した(原田, 2011)。また藤井(2001)は,相 手との心理的な距離をめぐるアンピパレン トな心情や葛藤や不安を取りあげた対人葛 藤を示す概念について
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近づくことJr
離 れることJにまつわる葛藤・不安について 「山アラシ・ジレンマ」という概念を導入 している。上記のことから,筆者は対人恐 怖心性が生じる前に,自己愛的脆弱性を示 す人は対人葛藤を抱えているのではないか 指導教員吉井健治 と考えた。 そこで本研究では,自己対象体験が自己 愛的脆弱性に影響し,対人葛藤をもたらす というプロセスを明らかにすることを目的 とする。 2.方 法 大学生・大学院生の有効回答であった 157名(男性は 78名,女性は 79名)を対象 とし,自己愛的脆弱性短縮版尺度 4因子20 項目(土地・宮下,2009),山アラシ・ジレン マ尺度は近づきたい欲求と離れたい欲求の 条件項目と 2因子 36項目(藤井,2001),自 己対象体験尺度3因子 9項目(山口,2012)か ら構成された質問紙調査を実施した。 3. 結果 自己対象体験尺度は天井効果が示された 1項目を削除し,探索的因子分析を行った。 その結果2つの因子が抽出され,第 1因子 を鏡映・理想化自己対象体験,第 2因子を 双子自己対象体験と命名した。 自己愛的脆弱性短縮版尺度の自己顕示抑 制,自己緩和不全,承認・賞賛過敏性と自 己愛的脆弱'性総得点で男女の得点に有意な 差が見られた。山アラシ・ジレンマ尺度の 「近づきたい一近づきたくないジレンマ」 の自分が傷つくことの回避,相手が傷つく ことの回避,総得点において男女の得点に 有意な差が見られた。山ア¥ラシ・ジレンマ 尺度の「離れたい一離れたくないジレンマj の相手が寂しい思いをすることの回避,総- 104 - 得点において男女の得点に有意な差が見ら れた。 相関分析によって相関が示されたものを もとに仮説を検証するため男女別にパス解 析を行った。その結果,山アラシ・ジレン マの条件項目の男性では, X2= 3.