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帳簿に基づく所得課税の再考

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帳簿に基づく所得課税の再考

伊 藤  悟

はじめに Ⅰ 商事法と税法における記帳・帳簿保存義務 Ⅱ 弱小納税者の記帳・帳簿保存義務 Ⅲ フランス所得税の簡易課税制度 Ⅳ 事業所得等の所得金額計算のあり方 結語

はじめに

平成 23 年度税制改正では、「経済社会の構造の変化に対応した税 制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律」(平成 23 年法律第 114 号)により、納税環境整備に関する国税通則法の改正 が行われた。この中で、個人の白色申告者等に対する更正等に係る 理由附記に関する改正が行われたが、これについては、記帳・帳簿 保存義務の拡大(平成 26 年 1 月 1 日施行)と併せて実施すること とされた(1)(本稿では、会計帳簿への取引記帳、その保存義務など を法令上の会計帳簿に関する義務を総称して「記帳・帳簿保存義務」 とする)。 これにより、従来、事業所得、不動産所得または山林所得(これ ら所得を合わせて「事業所得等」という)を有する個人事業者につ いては、青色申告に係る税務署長の承認を受けている事業者に関す る帳簿書類の備付け等の義務(所得税法 148 条①)、並びに個人の 白色申告者のうち前々年分あるいは前年分の事業所得、不動産所得 または山林所得の合計額が 300 万円を超える事業者に限り必要とさ れていた記帳と帳簿書類の保存義務(所得税法 231 条の 2)が記帳・

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帳簿保存義務として課されていたが、平成 26 年 1 月 1 日より事業 者全員に対して、その業務につき記帳・帳簿保存義務の拡大が実施 されることとなった。結果として、記帳・帳簿保存義務は、所得税 申告の必要の有無にかかわらず、事業所得、不動産所得または山林 所得を有する納税者すべてに課されることとなる(2) これら事業所得等を得る納税者は、基本的には商法上の「商人」 である。商人は、商法 19 条 2 項が、「商人は、その営業のために使 用する財産について、法務省令で定めるところにより、適時に、正 確な商業帳簿(会計帳簿及び貸借対照表をいう。以下この条におい て同じ。)を作成しなければならない。」と規定することから、また 同条 3 項が「商人は、帳簿閉鎖の時から十年間、その商業帳簿及び その営業に関する重要な資料を保存しなければならない。」と規定 することから、記帳・帳簿保存義務を有する。税法上の個人事業者 は、基本的には、商人であることから、この商事法上の記帳・帳簿 保存義務を有する。 しかし、現行税法は、原則、白色申告事業者につき、この義務を 課してはいない。しかしながら、平成 26 年 1 月 1 日より、すべて の事業者は、所得申告の必要がない場合でも、この義務を負うこと となる。 本稿は、個人事業者に対する記帳・帳簿保存義務の拡大に際し て、帳簿に基づく所得課税について再考するものである。所得課税 は、実際の収入等を基礎として所得金額を計算するものであり、そ の収入等は、帳簿記録に基づくことが基本とされる。これを実額 課税と呼んでいる。戦後日本の所得課税は、実額課税の実現に向け て、青色申告制度を導入し、帳簿によらない推計課税等を排除して きた。このような実額課税の実現は、公平な課税の実現とも考えら れてきた。しかし、帳簿に基づく実額課税は、簿記会計の基礎知識 を納税者に要請する。しかし、簿記会計の基礎知識は義務教育課程 で学習するものではない。この点を配慮すると、すべての納税者に 記帳・帳簿保存義務を強要すべきかは疑問とされる。筆者の主張と

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して、税法は、すべての市民に関係する法であり、一部の専門家の みに関係するものではないことから、また当然、一部専門家の道具 でもなく市民の権利擁護の道具であり、義務教育課程を終了したす べての市民に理解されるものでなければならないと考えている。 本稿での再考は、実額課税を否定するものではない。個人事業者 の所得課税において、所得金額計算を帳簿に基づくことを原則とす るとしても、納税者の便宜、簡易な税制および確実な所得金額計算 など考慮し、別の課税制度、納税者にとって簡易な課税所得金額計 算を法制として受け入れるという選択も可能ではないかを提言する ものである。 本稿は、記帳・帳簿保存義務に関する商事法と税法の諸規定を 概観し(Ⅰ)、税法が採用する簡易な方法での記帳等につき検討し (Ⅱ)、フランス所得税における事業所得等の所得金額計算構造で ある実額課税制度以外の簡易課税制度を簡単に紹介し(Ⅲ)、平成 26 年 1 月から始まるすべての事業者に記帳・帳簿保存義務が課さ れることとなるに際して、事業所得等金額計算、特にこれらのうち 性質の異なる資産所得である不動産所得ついて実額課税以外の課税 計算制度の採用を提言する(Ⅳ)。

Ⅰ 商事法と税法における記帳・帳簿保存義務

1 商法・会社法における記帳・帳簿保存義務 商事法上の記帳・帳簿保存義務は、まず先にあげた商法 19 条 2 項および 3 項に規定される。また、会社法制定後においては、株式 会社につき会社法 432 条、持分会社につき会社法 615 条に、それぞ れ会計帳簿の作成および保存義務の規定が置かれた。 商法 19 条は、「営業のために使用する財産について」、「適時に、 正確な商業帳簿」を作成しなければならないとし、この商業帳簿と は、「会計帳簿及び貸借対照表をいう」とする。その詳細については、 「法務省令で定める」ところとする。これを受けて、商法施行規則

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は、その第 3 章に「商業帳簿」と題して、第 4 条(通則)、第 5 条(会 計帳簿)、第 6 条(貸借対照表の表示の原則)、第 7 条(貸借対照表 の作成)、および第 8 条(貸借対照表の区分)の各条項を設けている。 商法は、債権者保護の観点から、商人の財産についての会計的記 録(金額変動の記録)を課し、商人の財政状況(財産所有の状況) を示す貸借対照表の作成を求めている。会社法は、同様に会計帳簿 の作成および保存義務を会社に課している。そして、さらに計算書 類等の作成および保存を課している(会社法 435 条)。計算書類等 とは、「貸借対照表、損益計算書その他株式会社の財産及び損益の 状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるもの をいう」とされる(同条 2 項)。ここでの法務省令とは、「会社計算 規則」 をいう。会社法にいう会計帳簿についても、この法務省令が 「会社が作成すべき会計帳簿に付すべき資産、負債及び純資産の価 額その他会計帳簿の作成に関する事項」について定めている(同規 則 4 条)。 したがって、商事法上の個人商人の記帳・帳簿保存義務は、財産 記録と所有財産の貸借対照表での開示といえる。そして、その会計 は、「一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従うもの」とされ る(商法 19 条①)。この一般に公正妥当と認められる会計慣行と は、通常、「企業会計原則」に定められているものと考えられてい る。企業会計原則は、企業会計の実務の中に慣習として発達したも のの中から、一般に公正妥当と認められたところを要約した基準で あり、必ずしも法令によって強制されないでも、すべての企業がそ の会計を処理するに当たって従わなければならない基準である(3) これ自体は、法令ではない。しかし、商法や会社法は、「一般に公 正妥当と認められる会計の慣行」(商法 19 条①)、「一般に公正妥当 と認められる会計の基準その他の会計の慣行」(商法施行規則 4 条 ②)、「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」(会社法 431 条および 614 条)、「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準そ の他の企業会計の慣行」(会社計算規則 3 条)と規定し、この企業

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会計原則を尊重してきている。商法および会社法は、一般に公正妥 当とされる企業会計基準を前提とした計算構造を採用している。た だし、企業会計原則は、現実的には、これと異なる新たな会計基準 (企業会計基準委員会による会計基準、国際会計基準など)が設定 され、形骸化しているといえる。 2 税法における帳簿作成義務 商事法における記帳・帳簿保存義務とは別に、現実の事業者は、 税法、特に所得課税分野の所得税法や法人税法により記帳・帳簿保 存義務を課されている。現行、所得税法および法人税法は、「青色 申告」制度によって、記帳・帳簿保存義務を強化している。すなわ ち、両法は、青色の申告書(確定申告書、修正申告書)を提出する ことを所得税・法人税の納税義務者に認めることで(所得税法 143 条、法人税法 121 条)、いくつかの特典(4)を与えるとともに、記帳・ 帳簿保存義務を課している。これが「青色申告制度」と呼ばれる日 本税法特有の制度である。青色申告は、所管の税務署長に 「申請書 」 を提出することにより、その申請につき承認又は却下の処分がな い限り、その承認があったものとみなすこととされている(所得税 法 147 条、法人税法 125 条)。青色申告制度は、記帳・帳簿保存義 務の推進により正確で公正な所得課税を確保するための日本の戦後 所得課税制度を支えてきた柱である。 法人税の納税義務者である法人は、基本的には、記帳・帳簿保存 義務を課される。すなわち、法人税法 152 条の 2 は、普通法人等の 記帳・帳簿保存義務について規定している。また、法人税の確定申 告書には、「当該事業年度の貸借対照表、損益計算書その他の財務 省令で定める書類を添付しなければならない」と規定され(法人税 法 74 条 3 項)、貸借対照表と損益計算書は、会計帳簿の備え付けと、 取引の記帳、帳簿等の保存がなければ、作成され得ないものである。 また、内国法人に係る各事業年度の法人税の計算基礎となる法人の 所得金額はその事業年度の益金の額からその事業年度の損金の額を

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控除した金額であり(法人税法 22 条①)、この収益の額および損金 の額は「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算 されるものとする」(同条④)とされ、法人税法は、商法や会社法 と同様、一般に公正妥当とされる企業会計基準を前提とした計算構 造を採用している。さらに、法人税確定申告書の記載事項およびこ れに添付すべき書類の記載事項については法人税法施行規則別表に 定める書式によらなければならず(同規則 34 条②)、そのうち別表 四「所得の金額の計算に関する明細書」は、損益計算書に掲げた当 期利益の額または当期欠損の額に加算と減算とをし所得金額または 欠損金額を計算するものである。したがって、法人税法は、法人税 の課税基礎計算を記帳・帳簿保存義務に当然に基づくものとして構 成しており、記帳・帳簿保存義務につき議論する余地はないといえ る。また、商事法と法人税法との間での記帳・帳簿保存義務に関す る不具合も、基本的にはないといえる。 これに対して、所得税法は、先にも記したように、納税義務者で ある居住者個人に記帳・帳簿保存義務を原則として課していない。 事業所得等を有する納税義務者であっても、青色申告者と一定の条 件(所得 300 万円超)を具備した事業所得等を有する者のみが記帳・ 帳簿保存義務を課される。すなわち、所得税法 148 条 1 項が青色申 告者の帳簿書類につき規定し、同法 231 条の 2 が青色申告者以外の 事業所得等を有する者(白色申告者)の帳簿書類の備付け等につき 規定している。現行の所得税法は、後者の規定により、事業所得等 の所得金額合計が 300 万円以下の事業所得等を有する者、また当然 に納税義務がない納税者に対して、記帳・帳簿保存義務を負わせて いない。ただし、平成 26 年 1 月 1 日以後、事業所得等を有するす べての納税者は、記帳・帳簿保存義務を負うこととなる。 この所得税法と法人税法とにおける記帳・帳簿保存義務に関する 規定の差異は、所得税法には法人税法 22 条 4 項に相当する「一般 に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるもの」 とする規定がないことによる。したがって、所得税法は、所得金額

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の計算に関する諸規定を所得税法独自のものとして個別的に設定し ている。たとえば、所得金額を計算する場合に要請される「収入金 額」につき所得税法 36 条に、また 「必要経費」 につき同法 37 条に 通則的規定を設け、同法 38 条以下に個別的特例的計算規定を設け るとともに、同法 68 条において「この節に定めるもののほか、各 種所得の範囲及び各種所得の金額の計算に関し必要な事項は、政令 で定める」との政令委任規定をおき、政令(所得税法施行令)にお いて詳細規定が置かれている。これらは、必ずしも法人税法のよう に「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算され るもの」を前提としていない。これらは、所得税法独自の所得金額 計算規定である。 また、所得税法は、課税所得を 10 区分し納税者の質的担税力を 考慮し、かつこれらを合計することにより量的担税力を把握するこ とから、法人税法が各事業年度所得を分類区分せず「当該事業年度 の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする」と している所得金額計算構造(法人税法 22 条①)と根本的に異なり、 事業所得等以外の所得金額を計算することに、記帳・帳簿保存義務 を納税者に課す必要性もないものと解している。事業所得等以外の 所得では、契約書コピーや領収書等に基づき十分に公正に所得金額 は計算される。

Ⅱ 弱小納税者の記帳・帳簿保存義務

1 白色申告法人の記帳・帳簿保存義務 法人税法は、法人の所得金額が記帳・帳簿保存義務に基づき計算 されるものと制度化している。法人税法 150 条の 2 は、「普通法人、 協同組合等並びに収益事業を行う公益法人等及び人格のない社団等 (青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けているも の及び連結法人を除く。次項において「普通法人等」という。)は、 財務省令で定めるところにより、帳簿を備え付けてこれにその取引

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を財務省令で定める簡易な方法により記録し、かつ、当該帳簿(当 該取引に関して作成し、又は受領した書類及び決算に関して作成し た書類で財務省令で定めるものを含む。次項において同じ。)を保 存しなければならない。」と規定している。これを受けて財務省令 である法人税法施行規則 66 条および 67 条は、その詳細を規定して いる。 これら規定をみると、「簡易な方法」と規定しているが、その内 容は、通常の企業会計のものと理解しうる。しかし、青色申告法人 に関する記帳・帳簿保存義務関係の規定(法人税法施行規則 53 条 以下)は、複式簿記の原則に従った仕訳帳、総勘定元帳、貸借対照 表及び損益計算書の作成を求めている。これとの比較でいえば、白 色法人の記帳・帳簿保存義務は、現金出納帳その他必要な帳簿を備 え、その取引に関する事項を整然とかつ明瞭に記録し、その記録に 基づいて決算を行わなければならないと規定(法人税法施行規則 66 条)されているのみであることから、簡易な方法によるものといえる。 2 個人の白色事業所得者の記帳・帳簿保存義務 所得税法は、白色申告者の記帳・帳簿保存義務を、これらの者の 事業所得等の合計金額が 300 万円を超える場合にのみ、課している (同法 231 条の 2)。その詳細は、財務省令である所得税法施行規 則 102 条以下に規定している。すなわち、この適用を受ける納税者 は、帳簿を備え、事業所得等を生ずべき業務に係るその年の取引で これらの所得に係る総収入金額および必要経費に関する事項を財務 大臣の定める記録の方法(昭和 59 年 3 月 31 日大蔵省告示第 37 号(5) に従い、整然と、かつ、明瞭に記録しなければならない。青色申告 者の記帳・帳簿保存義務に関しても、複式簿記の原則に厳格には従 わない「簡易な記録の方法」が所得税法施行規則 56 条 1 項ただし 書に基づく告示(昭和 42 年 8 月 31 日大蔵省告示 102 号(6))にて 示されている。両告示の別表において、帳簿記録の方法および記載 事項が示されているが、両告示を比較しても、青色申告者の「簡易

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な記録の方法」としてのものより、さらに白色申告者の記帳・帳簿 保存義務は簡易なものとなっているといえる。 ここでは、後の不動産所得に関する記帳・帳簿保存義務の検討の ため、上記白色申告者に係る昭和 59 年大蔵省告示のうち 「二 不 動産所得の部」 のみを引用しておくこととする。 二 不動産所得の部 区分 記録方法 (一) 収入に関する事項 賃貸料、雑収入のようにそれぞれ適宜な項目に 区分して、それぞれその取引の年月日、事由、 相手方及び金額を記載する。ただし、保存して いる契約書、領収書控等によりその内容を確認 できる取引については、その項目ごとに、日々 の合計金額のみを一括記載することができる。 (二) 費用に関する事項 雇人費、減価償却費、貸倒金、地代、借入金利 子及びその他の経費の項目に区分して、それぞ れその取引の年月日、事由、支払先及び金額を 記載する。ただし、次に掲げるところによるこ とができる。 (1)少額な費用については、その項目ごとに、日々 の合計金額のみを一括記載する。 (2)現実に出金した時に記載する。この場合には、 年末における費用の未払額及び前払額を記載す るものとする。 注:昭和59年3月31日大蔵省告示第37号別表より引用 ところで、平成 26 年 1 月 1 日からの事業所得等を有するすべて の納税者に課される記帳・帳簿保存義務については、未だ明確なる 内容は示されていない。しかし、国税庁ホームページやそのパンフ レット(7)などによって、平成 26 年 1 月 1 日からの事業所得等を有 する納税者の記帳・帳簿保存義務につき、国税庁は広報している。 それによると、新たな事業所得等を有する納税者は、簡易な方法に よる記帳・帳簿保存義務を課されることとなり、それは現行の白色 申告者の記帳・帳簿保存義務と同様のものとされるようである。

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Ⅲ フランス所得税の簡易課税制度

1 フランスにおける弱小事業者の課税方式

現行のフランス所得税は、世帯単位課税を基礎とし、課税所得 を①不動産所得(Revenus fonciers)、②商工業所得(Bénéfices industriels et commerciaux)、③役員報酬等所得(Rémunérations)、 ④ 農 業 所 得(Bénéfices de l’exploitation agricole)、 ⑤ 給 与 所 得 (Traitements, salaires, indemnités)、⑥自由業等所得(Bénéfices des professions non commerciales)および⑦資本所得(Revenus de capitaux mobiliers)に区分し計算し(CGI art.1A)(8)、これら

を合計した金額を課税標準としている。日本の事業所得等に相当す るのが、不動産所得、商工業所得、農業所得および自由業等所得で ある。

これら所得の金額に関する算定方法は、基本的には、記帳・帳簿 保存義務に基づく実額課税制度(régime réel d’imposition)によ り行われる。しかし、弱小事業者に対しては、実額課税制度の適 用を排除し、簡易実額課税制度(régime simplifié d’imposition) やマイクロ事業者(micro-entreprises)のためのフォルフェ制度 (régime du forfait)(9)などが設定されている。これら事業者が置 かれるべき課税制度の区分は、事業者の所得に応じて行われてい る。商工業所得では、弱小事業者のための課税制度の適用を受ける 事業者の所得は 2011 年度で一般販売業などで 81,500 ユーロ以下と され(CGI.art.50-0)、実額課税制度の適用を受ける事業者の所得は 2011 年度で一般販売業などで 777,000 ユーロ超とされ(CGI.art.302 septies A, 302 septies A bis)、簡易実額課税制度の適用を受ける所 得は、両者の間の所得とされる(CGI.art.302 septies A bis)。

弱小事業者に対する所得金額の算定は、記帳・帳簿保存義務に基 づく実額課税を基調としながらも、実質的には、見積的、推計的課 税といえるフォルフェ制度によることとされる。事業所得であって も、不動産所得、商工業所得、農業所得、または自由業等所得にお

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ける弱小事業の所得金額算定方法は異なったものとなっている。 2 フランスの弱小不動産所得者課税

不動産所得は、建物または土地の賃貸からの所得で、商工業所得、 農業所得および自由業等所得に該当しないものである(CGI.art.14)。 不動産所得の金額は、総収入金額(le montant de revenu brut)と 必要経費(le total des charges)との差額である(CGI.art.28)。総 収入金額と必要経費に関する詳細は、租税一般法典に規定されてい る。そして、弱小不動産所得者は、年 15,000 ユーロ以下の不動産 に係る総収入金額である者とされ、その課税所得金額は、総収入金 額から同金額の 30%に相当する控除額を差し引いた金額とされる (CGI.art.32)。30%を超える必要経費が出る場合には、当然に、こ れら弱小不動産所得者は、通常の実額課税制度を選択することもで きる。 この弱小不動産所得者の課税方法は、商工業所得、農業所得およ び自由業等所得における制度とも異なるものとなっており、「マイ クロ不動産課税方法 régime micro-foncier」と呼ばれている(10) マイクロ不動産課税方法は、総収入金額に対する必要経費額の計 算を総収入金額の 30%とするという概算課税、経費見積課税、推 計課税である。本来、不動産所得にかかる必要経費は、建物火災等 保険にかかる保険料、固定資産税等の租税公課、その他諸経費など に分けられ集計されるものであるが、これら細目につき記帳も集計 もせず、フランス所得税は、マイクロ不動産所得者につき 30%控 除での必要経費計算を認めている。課税の基礎となる総収入金額は、 帳簿などでの記録が必要とされるが、このマイクロ不動産課税方法 は、帳簿記録に基づく実額課税の適用が厳しいものとなる弱小事業 者には有益なものとされ、フランス所得税はこれを継続してきてい る。

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Ⅳ 事業所得等の所得金額計算のあり方

1 記帳・帳簿保存義務の重要性 所得税において「所得」とは何かという大問題がある。しかし、 基本的には、企業会計における利益と同様、収入と支出を基礎とし て所得も計算されるべきものと考える。すなわち、企業会計原則の 損益計算書原則一Aは、「すべての費用及び収益は、その支出及び 収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるよ うに処理しなければならない。ただし、未実現収益は、原則として、 当期の損益計算に計上してはならない」、続けて「前払費用及び前 受収益は、これを当期の損益計算から除去し、未払費用及び未収 収益は、当期の損益計算に計上しなければならない」と定めている。 簿記や会計技術は、これら収支取引を、その取引毎に帳簿を備え記 録し、それを会計期間や課税期間ごとに、利益や所得として把握し、 また財産変動についても開示することを可能とする。企業会計の一 般原則の一に掲げられている真実性の原則は、「企業会計は、企業 の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでな ければならない。」と定め、これをまず最初に表明した。なお、こ こでの 「真実性」 は、帳簿記録に際して慣習や人為的判断が入るこ とから、絶対的な真実性ではなく相対的真実性であるとされる。 所得課税において記帳・帳簿保存義務は、重要である。これは誰 もが認めるものであり、所得課税原則として、簿記会計技術を前提 とすることを主たる内容とする「簿記会計原理等の尊重」が認めら れるべきである。 ただし、商法や会社法の記帳・帳簿保存義務と税法のそれとは、 同じである必要はないと考える。両者の法目的は、前者が債権者、 株主、消費者等のステークホルダーの保護を目的とし、後者が税の 課税公平等を目的とすることから、両者の法目的が異なる。すでに 述べたように、法人企業にとっての商法と税法との違いは、記帳・ 帳簿保存義務に関する限りにおいて、ほとんどないといえる。しか

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し、個人企業、個人事業者にとって、特に税法が記帳・帳簿保存義 務を課さない白色申告者にとって、記帳・帳簿保存義務は、これら 法令間においての温度差を感じることとなる。本来、国内法は体系 的に矛盾なく規定されるべきである。この観点からみると、税法が 白色申告者に記帳・帳簿保存義務を課していないことは問題とされ るべきである。 しかしながら、商人の記帳・帳簿保存義務には、罰則による強化 もないことから、商法は、事実上、商人の記帳・帳簿保存義務に関 して、放置しているといえる。これに対して、税法は、記帳・帳簿 保存義務の展開として青色申告制度を採用し、記帳・帳簿保存義務 に違反があれば、青色申告の承認を取り消し、その特典を取り消し、 白色申告者として課税されることの不利益を納税者・事業者に強い ている。したがって、所得税法は、商法より、記帳・帳簿保存義務 に関しては積極的に展開してきたと解する。 2 不動産所得以外の事業所得等の計算 事業所得、不動産所得および山林所得は、事業所得等と呼称され、 まとめられる。しかし、これら所得間には微妙な差異があり、所得 分類される。所得税における所得分類は、確固たる基準があり、税 法に規定されているものではない。基準があれば、各国の所得税法 令における所得分類は同じになるべきである。しかし、全く同じ分 類は見られない。ただし、資産所得、勤労所得、資産・勤労協働所 得という所得の性質による分類が理論的になされているが、この分 類は、ほぼ世界共通の理解となっているといえる。この分類基準か らみると、不動産所得は資産所得であり、事業所得と山林所得は資 産・勤労協働所得となる。 特に、資産・勤労協働所得である事業所得は、その収入も経費の 内訳も、事業内容により異なり、複雑である。所得税法 27 条は、「 事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業 その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲

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渡所得に該当するものを除く。)をいう。」 とし、同法施行令 63 条は、 政令で定める事業として、「次に掲げる事業(不動産の貸付業又は 船舶若しくは航空機の貸付業に該当するものを除く。)とする」とし、 ①農業、②林業および狩猟業、③漁業および水産養殖業、④鉱業(土 石採取業を含む。)、⑤建設業、⑥製造業、⑦卸売業および小売業(飲 食店業および料理店業を含む。)、⑧金融業及び保険業、⑨不動産業、 ⑩運輸通信業(倉庫業を含む。)、⑪医療保健業、著述業その他のサー ビス業、並びに⑫これらに掲げるもののほか、対価を得て継続的に 行なう事業を列挙している。日本の事業所得は、多様な事業を包含 している。これら事業における所得計算の基礎である総収入金額お よび必要経費は、項目名称も多様なものとなり、同一基準での会計 処理をすることが適正であるかも疑問を提起される。 企業会計を前提とする所得計算が所得の計算原則であるが、一般 的な物品販売業である商業と物品の加工や製造をする工業の間にお いても、商業簿記に基づく企業会計と工業簿記に基づく企業会計と いう企業会計上の違いもあり、その所得計算構造は異なるものとな ると考える。事業所得金額の計算実務では、白色申告者では「収支 内訳書」が一般用と農業所得用とに分かれ、青色申告者でも「所得 税青色申告決算書」が同様に区分され、またこれらとは別に医師お よび歯科医師用の付表が国税庁により用意されている。 事業所得および山林所得は、複式簿記の原則に基づく企業会計を 基礎とする所得金額計算を採用することが納税者に要請される。こ れは、商法が記帳・帳簿保存義務を定めていることばかりでなく、 事業所得課税の対象となる事業が有する複雑多様な取引を基礎とす ることから、課税公平や事業所得金額の基礎を公正に担保するもの として要請される。ただし、日本の義務教育課程において企業会計、 複式簿記の技術を学習することがなく、税法が記帳・帳簿保存義務 を課すことに若干の疑問を提示しておくこととする。

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3 不動産所得の計算 これに対して、資産所得である不動産所得に係る総収入金額も必 要経費も、その収入・収益の実現形態、費用の発生形態が単純であ り、これらに関する簡易な記録によって把握することができると考 える。それゆえ、結論から言えば、不動産所得金額の計算は、厳格 な複式簿記原則に従う必要がないと考える。 商法 502 条は、1 号に「賃貸する意思をもってする動産若しくは 不動産の有償取得若しくは賃借又はその取得し若しくは賃借したも のの賃貸を目的とする行為」と規定し、不動産賃貸を営業的商行為 の代表とする。不動産所得の根幹である 「不動産賃貸」 による所得 は、営業的商行為からの所得とみることもできる。しかし、資産所 得の本質は、資産からの所得であり、勤労を伴うものと理解されて いない。この点から、一見、同じような部屋の賃貸であっても、税 実務において、下宿等のように食事を供する場合の所得は事業所得 または雑所得とされ、アパート、貸間等のように食事を供さない場 合の所得は不動産所得とされる(11)。しかし、食事の提供をしない 素泊まりホテルを業とする場合、この所得は事業所得となる。これ ら事業所得とされる不動産賃貸からの所得は、勤労を伴うものと理 解され、不動産賃貸からの所得ではあるが、不動産所得とは分類さ れない。この分類基準は、フランスにおいてもほぼ同様に適用され ている。 しかし、不動産所得の金額計算は、実務では、白色申告者が「収 支内訳書(不動産所得用)」、青色申告者が「所得税青色申告決算書(不 動産所得用)」を利用し、計算し申告する。収支内訳書の経費欄に「給 料賃金」⑥があり、そして、所得税青色申告決算書の必要経費欄に も「給料賃金」⑪がある。これら書類が国税庁の提供のものである ことから、国税庁は、不動産所得の経費または必要経費の一つとし て「給料賃金」を想定している。このような書類の構成が不動産所 得の本質を変質させる。これにより、事業所得と不動産所得とに相 違がなくなる。また、日本では、事業規模の不動産賃貸業、すなわ

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ち事業所得を生ずることとなる不動産業にあたるものとして、実務 解釈は「5棟10室」基準を提示し(12)、この規模の不動産賃貸は、 不動産所得として区分しなくともよいものとなる。このような事業 所得と不動産所得との混同は、本来的所得課税システムから疑問が 提示される。資産所得である不動産所得と資産・勤労協働所得であ る事業所得とは、課税システムとして、明確に分類されるべきであ る。それが、所得税における質的担税力からの公平課税となる。 不動産所得を得るのに給与賃金の支払が必要な場合は、いくつか 想定される。たとえば、アパート 1 棟所有し、その清掃や管理等を 従業員を雇い 「管理人」 または「コンシェルジュ」として配置する とき、この者への給与等が発生する。このような不動産賃貸は、ホ テル業とも類似し、単なる資産からの所得としての不動産所得では なく、資産・勤労協働所得としての事業所得として、所得課税にお いて分類され理解されるべきものである。 不動産所得は、勤労を伴わない不動産の賃貸からの所得であると 純粋化すべきである。それゆえ、資産所得としての不動産所得は、 基本的には、労なくして収得する所得であると推量されるがゆえに、 これへの重課が社会的に許される傾向が認められる。 4 弱小不動産所得者の記帳・帳簿保存義務 不動産所得の構成は、単純である。日本の所得税法26条2項は、「不 動産所得の金額は、その年中の不動産所得に係る総収入金額から必 要経費を控除した金額とする」と規定している。総所得金額の内訳 は、不動産所得用の収支内訳書によると、①賃貸料、②礼金(返金 の必要がないものに限る)、③権利金、④更新料、⑤名義書換料な どである。また、必要経費は、同内訳書によると、①給料賃金、② 減価償却費、③貸倒金、④地代家賃、⑤借入金利子、⑥租税公課、 ⑦損害保険料、⑧修繕費、⑨雑費などである。 これら項目を取引の発生ごとに、帳簿に記録し、その帳簿を保存 する義務は、不動産賃貸をなす者に一般的に課されるものと理解で

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きる。しかし、事業所得を生ずる事業の多くは、まさに 「生業」 で あり、事業者・納税者にとって、それは生活維持に欠かせない事 業活動(収入獲得活動)であるのに対して、多くの不動産賃貸がそ の者の生業であるかは疑問である。中には、生業の傍ら、投資、副 収入を得るために、不動産賃貸をしている場合も十分に考えられる。 特に、不動産所得のみでは生活を維持できない程度の所得しか得ら れない弱小不動産所得者は、多いものと推量する。 これらの者に対する記帳・帳簿保存義務は、簡易な方法によるこ とが望ましいと考える。ここでの「簡易な方法」は、現行の青色・ 白色申告者に対する記帳・帳簿保存義務において規定される簡易記 録方法よりも更に簡易な方法とすべきである。極端にいえば、総 収入金額は、不動産賃貸借契約書に記載されている月額金額や礼金 などを基礎とし、未収額または前受額がある場合の調整を年末にし、 契約ごとの合計を帳簿に記録し、すべての契約の総額を計算し、こ れに雑収入を加算した金額とする。また、必要経費は、領収書など の基礎資料に基づき、年末において各項目ごとに一括して合計額を 記録し、計算する。記帳は、複式簿記の原則からすると、収支取引 時の日付、金額、相手勘定を記録しなければならない。しかし、不 動産賃貸を生業としない弱小不動産所得者には、取引日ごとの記録 を課すことは厳しいものとなるのではなかろうか。 更に言えば、総収入金額は契約書などで計算することができるこ とから、必要経費につきフランスのマイクロ不動産課税方法のよう に、一定金額以下(たとえば、年間 100 万円未満)の弱小不動産所 得者は必要経費の計算を概算控除額で処理できることを立法化して も良いのではなかろうか。彼らにとっての必要経費は、仲介業者へ の手数料、減価償却費、損害保険料が中心であり、これらについて の統計的平均負担額を元に概算経費控除額は求めることができるで あろう。不動産賃貸を生業としない弱小不動産所得者は、記帳・帳 簿保存義務を大胆に減免され、課税期間終了の年末(12 月 31 日) に一括した総収入金額と必要経費とを帳簿に記録することのみを課

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し、契約書や領収書などの基礎資料の保管を義務などの基礎的な記 帳・帳簿保存義務を負うものとすべきである。

結語

今後、平成 26 年 1 月 1 日から始まる個人事業所得者への記帳・ 帳簿保存義務の拡大は、論議の対象となるであろう。 商法や会社法における記帳・帳簿保存義務は、基本的には、制裁 のない義務である。これに対して、税法における記帳・帳簿保存義 務は、青色申告承認取消、これにより波及する納税者の不利益(青 色申告特別控除の否認、青色事業専従者給与の否認、各種引当金・ 準備金の引当否認、純損失の繰越・繰戻の否認などによる税負担) を伴うものである。 従来、所得税法における記帳・帳簿保存義務は、明確に、一般に 公正妥当な会計慣行と認められてきた「企業会計原則」を前提とし ているとは明示されてはいない。それゆえ、商法、会社法、法人税 法が企業会計原則を尊重し複式簿記の原則に基づく簿記会計技術を 基礎に記帳・帳簿保存義務を設定しているのに対して、所得税法は、 独自の所得計算構造を規定し、白色申告者につき原則として記帳・ 帳簿保存義務を課してこなかった。所得税法は、船団方式で記帳・ 帳簿保存義務の拡充ではなく、青色申告制度に基づきトップラン ナー方式で記帳・帳簿保存義務を拡大するものと意図してきた。そ れをここにきて変更することは、事業所得者にとって重大な影響を もたらすものであり、拡大施行までの間に、特に弱小事業者に対す る対応が検討されなければならない。 弱小事業者への対応としては、先に述べた不動産所得者には、資 産所得という特性を考慮し、年末一括記録と基礎資料の保管のみ を義務化し、日々の記帳義務を求めない、また必要経費につき特 別控除方式の選択もできるようにするという特例的立法を提言し た。このほかに、一般的には、簿記会計のエキスパートである税

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理士などの会計関与につき、外注費などとする必要経費に算入す るほか、特別所得控除の新設を認めるなどの措置を立法し、事 業者の記帳・帳簿保存義務を補佐する措置が望ましい。フラン スでも商工業者や農業者向けの税務公認経営管理センター(les centres de gestion agréés:CGA ) (CGI, art.1649 quater C)と自 由業者向けの税務公認団体(les associations agréées :AA)(CGI, art. 1649 quater F)があり、これらは、実定税法上の組織として、 事業者である納税者の経理等に関与している。また、これらと契約 する事業者にとっても税法上の特典があり、この制度が展開されて きた。日本の税理士制度は、税理士法以外の実定税法令において、 十分に担保されていないと評する(13) 所得税、法人税、消費税の課税・納税において、記帳・帳簿保存 義務は、課税庁にも納税義務者にも重要であり、事業所得課税の公 平を期する基礎である。しかし、弱小事業者が複式簿記の原則に基 づき記帳・帳簿保存義務を実行することは、義務教育課程での簿記 会計技術の学習もないことから、厳しく難しいものと考える。税理 士制度が記帳・帳簿保存義務の拡大に際して十分に機能するように 事業所得者への優遇措置の立法、弱小事業者への記帳・帳簿保存義 務の更なる緩和が要請される。

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注 1 財務省『平成 23 年税制改正』(財務省パンフレット、平成 24 年 3 月)3 頁掲 載の納税環境整備に関する項目のうち「処分の理由附記等」に関する記述参照 (同省ホームページ内 > 税制 > 出版 物等 > パンフレット >「平成23年度 税制改正」:http://www.mof.go.jp)。 2 国税庁タックスアンサー(国税庁ホームページ http://www.nta.go.jp 内、ホー ム > 税について調べる > タックスアンサー > 所得税 > 事業主と税金)掲載 「No.2080 白色申告者の記帳・記録保存制度」記事の「1 白色申告者の記帳・ 記録保存制度の概要」の(注)を参照。 3 経済安定本部企業会計制度対策調査会中間報告(昭和 24 年 7 月 9 日)「企業会 計原則の設定について」より。 4 青色申告者に与えられている特典は、多くある。所得税法では、青色申告特別 控除、青色事業 専従者給与、貸倒引当金、純損失の繰越・繰戻がある(国税 庁タックスアンサー No2070「青色申 告制度」参照)。法人税法では、更正の 理由附記(同法 130 条②)、推計による更正または決定除外(同法 131 条)がある。 5 財務省ホームページ(前掲)内 > 書簡の法令・告示・通達等 > 告示(昭和 50 年~) に掲載、参照。 6 同上、告示(昭和 40 年~)に掲載、参照。 7 国税庁ホームページ(前掲)内 > 申告・納税手続 > 所得税(確定申告書等作 成コーナー)> 個人で事業を行っている方の帳簿の記載・記録の保存について、 参照。パンフとしては、国税庁が平成 24 年 5 月に配布した「平成 26 年 1 月 1 日から記帳・帳簿等の保存制度の対象者が拡大されます」がある(上記ページ にリンクされている)。

8 フランス租税一般法典(Code général des impôts、省略して CGI) 第1A 条 を意味する。同法典の条文引用・参照は、フランス政府の法令検索サイト 「Legifrance : http://www.legifrance.gouv.fr」掲載のものである。 9 フォルフェによる所得課税システムについては、拙稿「フランスにおけるフォ ルフェ制度-所 得課税を中心に-」法学研究年報 12 号(日本大学大学院法 学研究科、1982 年)1 - 44 頁参照。なお、現行のフランス課税制度てのフォ ルフェ制度の適用は、農業所得のみであり(CGI.art.64)、他の商工業所得等で はマイクロ事業者の課税制度として規定されている。

10 Voir, Christian de Lauzainghein et Marie-Hélène Stauble-de Lauzainghein,Mementos dalloz Droit fiscal, 14éd,Dalloz,2009,p158.

11 所得税法基本通達 26-4 参照。 12 同上 26-9 参照。 13 税理士は、関与先からの報酬で業をなしている。しかし、税務申告の代理業 務など税理士業務は、国行政の補佐であるともいえる。隣国韓国では、税理士 に相当する税務士が電子申告を仲介すると、韓国政府からのインセンティブ (報奨金)が支払われていると聞く、日本政府も、電子申告を代理する税理士 に一定の報奨金を支払うべきではないか。

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【追記、梶浦先生追悼】 木曜日の夜、彼が6時限(18時から19時半まで)の大学院講 義を終え、私が7時限の講義へと向かう時に、節電で真っ暗になっ た廊下ですれ違い、「お疲れさま」と互いに声をかけあった日々が 懐かしい。彼への最後の言葉も「ありがとう、お疲れさま」であっ た。彼が商法、私が税法、専攻は異なるが、研究対象は同じともいえ、 これからの彼がすばらしい研究成果を世に問い、多くの弟子を育て るものと期待していた。残念である。彼の一番弟子が私の預かると ころとなり、彼も梶浦先生の教えを受け今後税理士として活躍する であろう。梶浦先生の代役を十分に果たせたかは疑問である。しか し、梶浦先生の教育・研究成果はゼミ生や院生等に引き継がれたも のと確信している。 合掌

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