• 検索結果がありません。

中学生の自尊感情・規範意識と親子関係との関連性

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "中学生の自尊感情・規範意識と親子関係との関連性"

Copied!
10
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

山 文 れ ⋮ 論 ⋮ ん 著 山 一 原 仏 鳴門教育大学学校教育実践センタ一紀要 19 , 25 -34, 2004

中学生の自尊感情・規範意識と親子関係との関連性

The C

o

r

r

e

l

a

t

i

o

n

s

among S

e

l

f

-

e

s

t

e

e

m

Norm B

e

h

a

v

i

o

r

and P

a

r

e

n

t

-

c

h

i

l

d

R

e

l

a

t

i

o

n

s

h

i

p

o

f

J

u

n

i

o

r

High S

c

h

o

o

l

S

t

u

d

e

n

t

s

葛 西 真 記 子 ¥ 永 尾 修 一 口

干772-8502 鳴門市鳴門町高島字中島 748番地 *鳴門教育大学・学校教育学部・教育臨床講座 干770-8570 徳島市万代町 1丁目 1番地 キキ徳島県教育委員会教育改革推進チーム Makiko KASAI * Department of Clinical and Educational Practices, Naruto University of Education 748 Nakajima, Takashima, Naruto-cho, Naruto-shi, 772-8502, Japan Shuichi NAGAO * * Tokushima Prefectural Board of Education, Education Reform Implementation Team

1-1 Bandai-cho, Tokushima-shi, 770-8570, J apan 抄録:本研究は,中学生の自尊感情や規範意識にその保護者の白尊感情や規範意識が関係しているの ではないか,という仮説をたて調査を行った。また,中学生の居住地域や祖父母との生活の有無,兄 弟姉妹の中で第何子であるかということも中学生の自尊感情や規範意識にどのように影響を与えるか についても調べた。 112の中学生親子ペアへの調査の結果,中学生の居住地域や祖父母との生活の有 無や第何子であるかは 彼らの自尊感情や規範意識にあまり関係がないことが明らかとなった。また, 保護者の自尊感情や規範意識は中学生のそれには直接的には関係がないことも明らかとなった。しか し,保護者の親役割が中学生の自尊感情や規範意識に関係していることが示された。 キーワード:親子関係,自尊感情,規範意識,中学生

Abstract : The pu中oseof this study was to investigate the relationships among self-esteem, norm behavior, and parent-child relationships of junior high school students. We hypothesized that parents' self-esteem and norm behavior, the place of living, the lives with their parents, and the birth order had impact on children's self -esteem and norm behavior. The data were collected from112 parent-child pairs. The resu1ts rejected our hypothesis, but showed that the relationships between parents and children had significant impact on children's self-esteem and norm behavior. Keywords : Parent-child relationship, Self-esteem, Norm behavior, adolescent I は じ め に 青少年の起こした凶悪な犯罪の話題が,新聞紙上を賑 わすようになって久しい。どうしてこのような人を人と も思わず,人間の心を失ってしまったのではないかと思 われるような子どもたちゃ規範意識の低い子どもたちが 育ってしまったのであろう。 子どもたちを時には厳しく,時には優しく育てていく 某盤とも言える家庭に目を向けても。尾木 (2000) が. ぷ!丘はもはや'ポ肢の共

H'U

丙の坊ではなくなり

i

p

.

なる r -1

(

u

n

施設│と化したと IIっても過IIではないと述べてお 月().]¥J(三(){)]) り,現代の家庭は,携帯電話の普及,テレビの個人所有 化,孤食の広がりなどにより「ホテル家族化」しつつあ るのかもしれない。 内閣府の青少年白書 (2001)でも,近年の著しい社会 状況の変化の中で 子どもたちの成長・発達に影響を及 ぼす種々の問題状況が発生するとともに,家庭の教育力 が低下していることを指摘している。そして青少年の問 題行動の背景として,その行き過ぎに対して,大人が自 信をもって否定できず,衝突ゃあつれきを回避しようと して.除々な行き過ぎにも

'

1

'

t

二詐(1'0になりー│析│山!とした態 度をとらないことにあると

t

fJ摘しているc 25

(2)

Andersonら(1991)は 自尊感情が低いことと今日の 若者の引き起こしている深刻な問題の問には相関関係が あり,子どもたちの自尊感情を育てることで,そのよう な問題を回避することができるという。また,秦(2000) など多くの研究者は,子どもたちの規範意識の低下を指 摘し,そのような状況を憂えている。蘭 (1992b)は, 子どもの自己概念の形成に影響する要因として,①両親 や友人教師への同一視に基づく取り入れやモデリング, ②役割遂行などの体験やさまざまな経験による自己の気 づき,③他者からの評価や承認による気づき,の3つを 挙げている。関根 (1986)が言うように,大人は心理的 には子どものモデルであり,刺激が違えば,反応が違う のである。大人からのより良い刺激で,子どもたちの自 尊感情を育てることは,重要な課題であろう。 これまでの多くの研究(伊藤, 2001;石川, 1981) では,子どもの自尊感情の高低には,保護者の養育態度 が関連していることが示されてきた。しかし多くの自 己評価的体験の積み重ねを通して形成された自己評価的 な感'情の複合体」である自尊感情が,親子の間で相関関 係があるかどうかに関する研究は,まだ十分とは言えな いようである。 規範意識に関する研究はこれまで数多くなされてきた (久世ら,1988;鈴木,2000;安香,1991)。梅岡 (1998) は,中学生を対象とした研究で,父親と会話をほとんど しない者には規範意識が高い者が少なく,どなって怒ら れる者には規範意識の高い者が多いという結果を得た。 また,家族構成・兄弟の有無・祖父母の有無は規範意識 に有意差はないという。そして 子どもにとって父親が 意義あるモデルとして存在することが 規範意識の形成 において重要な役割を占めていると述べている。鈴木・ 原田 (200Dは,自己中心的な行動をとろうとする者ほ どゆるやかな規範意識を持ち 親子ペアで中学生として 望ましくない行動に対する許容度に関して類似した認知 を持っているとした。しかし 同親子 (30組)の組み合 わせと異親子 (870組)の組み合わせとの聞の距離(ユー クリッド距離)を求め平均値を比較したが,両親子ペア 聞に有意差は認められなかったという。このことは,規 範意識が親子ペアの間で個性的な形で伝達されるわけで はなく,時代背景や世代性の影響を強く受けている可能 性を示唆していると指摘している。 親子関係に関する研究では,小西・野村(1983)が, 親の罰の厳しさ,暖かさの欠如,拒否,父母間の不一致,親 の攻撃行動のモデルなど子どもへの好ましくない親の養 育態度との関連を中学生に調査した結果,反社会的攻撃 性と好ましい親の態度としつけに負の,好ましくないそ れとは正の相関があったと述べている。また,谷井・上 地 (1993)は,中学生・高校生の親を対象とした研究で, 青年期に男子が親との心理的距離を保ちながら自立性を 26 獲得する傾向が強いのに対し,女子は母親との依存性を 高め,安定化した母娘関係を基盤にしながら自立性を獲 得していくという性差が 親役割の側面から示唆された という。さらに,谷井・上地 (1994)は,高校生の学校 適応感と保護者の親役割に関する研究で,保護者の「受 容」・「適応援助」が子どもの適応感に好影響を持つこと, 保護者の「自立促進」が適応感に好影響を与える場合も あるが,親子の情緒的関係を欠いた状況のもとで伝達さ れた場合には負の影響をもたらす可能性があること,保 護者の「干渉」はやや負の影響を与える場合もあるが, 大きな影響は持たないこと,保護者の「分離不安」は親 子の情緒的関係を欠いた状況のもとで伝達された場合に は負の影響をもたらす可能性があることなどを明らかに した。特に母親の「自立促進」と男子の適応感との組み 合わせにおいて相関が高いことから 「自立促進」の働き に親の性差による違いがあるという結果は興味深い。 これまでの研究を踏まえ,本研究の目的は,中学生の 親子間の自尊感情・規範意識・親子関係等の関連を探り, 中学生の段階における子どもたちの自我の発達に果たす 保護者の役割の大きさを検証することとした。また一般 に言われるような居住する地域や祖父母との生活の有無, あるいは中学生が兄弟姉妹の中で第何子であるかなどが 中学生の自尊感情・規範意識・親子関係に影響を与える 可能性についても明らかにすることを目的とした。具体 的には,以下の仮説を検証することを目的とした。仮説 1 居住する地域の違いや祖父母との生活の有無は,中 学生の自尊感情・規範意識・親子関係に違いはない。仮 説2:第1子は,それ以外の子どもに比べ,自尊感情・ 規範意識は高い。また 親子関係も第 I子の方が肯定的 にとらえている。仮説3:中学生の自尊感情・規範意識 に,保護者の自尊感情・規範意識が影響を与えている。

E

方法と対象 1.質問紙の作成 本調査で使用する質問紙を作成するために,2002年2 月中旬 下旬にかけて A県Y・Z中学校2年生98名 とその保護者を対象に予備調査を実施した結果, 79ペア の有効回答(有効回答率80.6%)が得られた。中学生用 質問紙は,

A)

中学生版自尊感情尺度(荒木・牧田, 1997) B)規範意識尺度(千葉市教育センター, 2000) C)親子関係診断尺度(辻岡・山本, 1976, 1978) から成っていた。次に,保護者用質問紙は,次のような 尺度から成っていた。

D)

自尊感情尺度(山本ら, 1982) E)規範意識尺度(千葉市教育センター, 2000) F)親役割診断尺度(谷井・上地, 1993) 鳴門教育大学学校教育実践センタ一紀要

(3)

これらの尺度の項目分析・因子分析を行い,信頼性や 構造的妥当性を検討した。その結果, A)中学生版自尊 感情尺度(荒木・牧田 1997) は,十分な信頼性が確認 で、きなかったので,本調査では保護者用で使用した

D)

自尊感情尺度(山本ら 1982) 10項目を使用すること とした。その他の尺度は 高い信頼性が確認されたので 因子分析で共通性・因子負荷量が低かった項目を除去し た尺度を本調査で使用することとした。 その結果,中学生用質問紙は, 61項目となった。 A) 自尊感情尺度・・・・・ 10項目 B)規範意識尺度・・・・・ 12項目 C)親子関係診断尺度・・・ 33項目 また,保護者用質問紙は 66項目となった。 D)自尊感情尺度・・・・・ 10項目 E)規範意識尺度・・・・・ 16項目 F)親役割診断尺度・・・・ 34項目 回答は5件法で求めた。なお 保護者用質問紙のフェ イスシートには,対象となる中学生が第何子かというこ とや祖父母との生活の有無などについて回答を求めた。 保護者に関しては,家族構成の多様性を配慮して,父母・ 祖父母等,回答する対象についての特定はしなかった。 2. 対 象 2002年 6月上旬 中旬にかけて市街化の進行したA 県X中学校 2年生 80名とその保護者市街化の進行して いなし)A県

y.z

中学校2年生 79名とその保護者を対象 に本調査を実施した。合計 112ペアの有効回答(有効回 答率 70.4%) が得られた。詳細な内訳は表 1の通りであ る。保護者の回答は,そのほとんどが母親からのもので あったので,本研究では,母親の回答のみを有効回答と して以下の分析に用いた。 表 1 本調査の有効回答 合 計 校 一 Z 尚 子 一 X 中 一 Y 一山一幻幻一日 肝 一 幻 お 一 日 54 58 112 合 計 (注)表の数字は親子ペア数 E 結果と考察 1.各尺度の因子分析と信頼性 (1 ) 中学生用質問紙の結果 ④ 白尊感情尺度 本尺度は,先行研究(山本ら, 1982) を基に 1因子と して扱い,固有値1.00以上,因子負荷量 0.35以上の基 準で主因子法による因子分析を行った。その結果, 8項 I jからなる│大1(-(丸:I正本~~.~i1日))が fl l!i 1¥され. ! 1'1咋

'

l

/

f

J

I

I

j七 (u士 二

O

.

7

i1) と命名したυ ¥().lり(三{)()J) ② 規範意識尺度 上記の尺度と同様に因子分析を行った結果,

6

項目と 5項目からなる 2つの因子(累積寄与率 53.49%) が抽 出された。第1因子(寄与率 28.21%)は絶対的規範」 因子 (α=0.84) と命名した。第 2因子 (25.28%) は, 「相対的規範」因子 (α=0.84) と命名した。 ③ 親子関係診断尺度 因子分析の結果, 4つの因子(累積寄与率 40.35%)が 抽出された。第 1因子 (12項目 寄与率 16.06%) は, 「情緒的支持・依存」因子 (α二 0.89) と命名した。第 2因子 (8項目,寄与率 10.57%) は 過 干 渉 ・ 統 制j 因子 (α=0.80) と命名した。第 3因子 (4項目,寄与 率 6.99%) は サ ー ビ ス 過 剰 」 因 子 (α=0.68) と命 名した。第 4因子 (7項目 寄与率 6.76%) は 自 律 ・ 放任」因子 (α=0.68) と命名した。 (2) 保護者用質問紙の結果 ① 自尊感情尺度 因子分析を行った結果 l因子(寄与率 44.55%)が抽 出 さ れ 自 己 否 定 」 因 子 (α=0.86) と命名した。 ② 規範意識尺度 因子分析を行った結果 8項目と 3項目からなる 2つ の因子(累積寄与率 34.26%) が抽出された。第 l因子 (寄与率 22.70%) は 「相対的規範J 因子 (α=0.80) と命名した。第 2因子 (11.56%) は 「絶対的規範」因 子 (α=0.57) と命名した。第 2因子は項目数が少ない こともあり,高い信頼性は認められなかった。 ③ 親役割診断尺度 因子分析した結果 7つの因子(累積寄与率 49.05%)が 抽出された。第 1因子 (8項目,寄与率 11.85%)は, 「過干渉」因子 (α=0.84) と命名した。第 2因 子 (5 項目,寄与率 8.70%) は 自 立 促 進 」 因 子 (α=0.81) と命名した。第 3因 子 (5項目,寄与率 6.72%)は 依 存」因子 (α二 0.74) と命名した。第 4困子 (6項目, 寄与率 6.38%) は 「適応援助」因子 (α=0.68) と命 名した。第 5因子 (3項目,寄与率 6.32%) は 分 離 不安」因子 (α=0.75) と命名した。第 6因子 (4項目, 寄与率 5.10%) は 「後悔」因子 (α=0.66) と命名し た。最後に,第 7因 子 (2項目,寄与率 3.99%) は 生 活把握」因子 (α=0.49) と命名した。第 7因子は項目 数が少ないこともあり,高い信頼性は認められなかった。 2. 性別・居住地域等による比較

(

1

)

中学生の性別による比較 中学生の性別で, 自尊感情・規範意識・親子関係・親 役割・私生活主義に有意差がみられるか検討するため, 中学生を性別で

2

群に分け t検定を実施した(表

2

)

。 中学生に関しては,規範意識の「相対的規範」閃子と

m

f

l

Y

"

j

f

系の

I

'

I

N

緒 的 主

J

年・依 {(j

I

I(

が 10%水準でl'j ~白:

f

t

(

l

i

(,)があった。','fることが守{まれる比較的手震やかな士世範 27

(4)

た,親役割の「生活把握J因子は1%水準で有意差があっ た 。 具 体 的 に は 絶 対 的 規 範J因子は,女子生徒の保護 者の平均値が男子生徒の保護者より低く,厳格な規範に 対して女子生徒の保護者の意識が低いという結果となっ た。「依存J因子は男子生徒の保護者の平均値が女子生 徒の保護者より高く 保護者は娘より息子に依存的であ るという結果となった。「生活把握」因子は,女子生徒の 保護者の平均値が男子生徒の保護者より高く, 日ごろか ら息子より娘とコミュニケーションがとれており,生活 も把握できているという結果となった。 一般的には女の子なのだから」と男子生徒より女子 生徒に対するしつけが厳しくなる傾向にあると思われる が,今回の調査では,保護者自身の規範意識は,女子生 徒の保護者の方が低い傾向にあった。 また,男子生徒の保護者は,子どもに依存しがちで, 女子生徒の保護者は 子どもの生活を把握しているとい う結果は,今回の調査の保護者が母親のみということに 関連していると思われる。谷井・上地(1993)は,青年 期の男子が親との心理的距離を保ちながら自立性を獲得 する傾向が強いのに対し,女子は母親との依存性を強め, 安定化した母娘関係を基盤にしながら自立性を獲得して いくと述べているが,男子生徒の保護者は,自立してい こうとする子どもに対し 寂しさや見捨てられてしまう ような感情を抱いて依存してしまうのかもしれない。そ して,女子生徒の保護者は,向性の親子であるがゆえに 子どもが保護者に依存し 子どもの生活を把握できる人 間関係につながったのではないだろうか。 (2) 居住する地域による比較 中学生の居住する地域で, 自尊感情・規範意識・親子 関係・親役割・私生活主義に有意差がみられるか検討す るため,中学生を居住する地域で 2群に分け

t

検定を実 施した(表3)。 中学生に関しては,規範意識の「相対的規範」因子と 親子関係の「過干渉・統制J 因子が10%水準で有意傾向 があった。具体的には相対的規範」因子は,市街化の 進行した地域の平均値が市街化の進行していない地域よ り低く,守ることが望まれる比較的緩やかな規範に対し て,市街化の進行した地域の方がその意識が低い傾向を 示すという結果となった。「過干渉・統制」因子は,市街 化の進行した地域の平均値が市街化の進行していない地 域より高く,市街化の進行した地域の子どもは,保護者 から過干渉気味に関わられ 生活を統制されていると感 じる傾向が強いという結果となった。しかし, これらの 2つの因子は有意傾向を示すに止まり 中学生内では居 住する地域による明確な有意差はあまりないと判断して よいものと思われる。 内山ら (1996)が,都市部に犯罪や不良行為を誘発し やすい環境が準備されていると述べているが,現状は, に対する意識は,女子生徒の方が低い傾向を示すという 結果となった。「情緒的支持・依存」因子は,女子生徒の 平均値が男子生徒より高く,中学2年生の段階では,男 子生徒より女子生徒の方が 保護者(母親)から情緒的 に支持されたり,依存的に関わられたりしていると子ど もは感じているようである。しかし,これらの2つの因 子は有意傾向を示すに止まり 中学生内では性別による 有意差はあまりないと判断してよいものと思われる。 中学生の規範意識について梅岡 (1998)は,中学2年 生女子の規範意識が男子より高いという結果を,原田・ 鈴 木 (2000)は,男子中学生より女子中学生の方が規範 を守らないことに対する許容度が低いという結果を得て いる。しかし,今回の調査では,女子生徒の規範意識が 高いという結果は得られなかった。 中学生の性別による

t

検定の結果 表2 n.s. n.s. n.s. n.s. n.s. n.s. n.s.

*

n.s. n.s. n.s. n.s. n.s.

*

す す 0.354 一0.463 -1.029 -0.280 0.442 一0.478 1.815 -1.962 0.603 1.603 1.350 0.508 0.123 2.011 2.351 0.131 t 値 0.937 0.832 0.790 1.046 0.859 0.980 0.857 0.994 0.976 0.861 0.894 0.826 0.880 0.867 0.998 0.872 0.839 0.927 0.355 1.169 0.867 0.995 0.979 0.862 0β88 1.035 0.831 0.916 0.913 0.872 0.915 0.897 0.812 0.775

SD

平均値 0.045 -0.041 0.012 -0.010 0.169 0.152 -0.186 0.172 0.056 -0.052 0.140 -0.130 -0.041 0.038 -0.096 0.086 0.119 0.109 0.176 0.161 -0.026 0.024 0.041 -0.038 0.208 -0.193 0.012 0.011 0.032 0.029 -0.043 0.040 -0.226 0.210 2 7 2 8 2 8 0 4 0 4 0 4 0 4 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 F D 3 9 3 8 3 8 2 6 2 6 2 6 2 6 2 6 2 6 2 6 FHURU に U に U F h U R U に U R U R U R U R U R U R U に UFIOFhUFHUFHUFOFhu N 群 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 4 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 情緒的支持・依存 サービス過剰 過干渉・統制 因子名 相対的規範 相対的規範 絶対的規範 絶対的規範 〔保護者用〕 自己否定 自律・放任 分 離 不 安 〔中学生〕 自尊感情 自立促進 適応援助 過干渉 後 悔 依存

*

*

2.853 生活把握 l群:男子, 2群:女子, nふ:not significant, す:p

<

0,1.

*

:

pく0.05,

*

*

:

p

<

0.01 保護者に関しては,規範意識の「絶対的規範J 因子と 親役割の「依存」因子が5 %水準で有意差があった。ま 鳴門教育大学学校教育実践センタ一紀要 28

(5)

中学生に関しては 全因子に関して有意差を認めるこ とができなかった。このことは 祖父母との生活の有無 が,中学生の白尊感情・規範意識・親子関係等に与える 影響があまりないことを意味していると判断できる。 保護者に関しては,親役割の「分離不安」因子が5 % 水準で有意差があった。具体的には,祖父母(すなわち 保道庁にとっては父/:)二ちしくは義父/:):)と 'UI~- してい る保護汗の、|リ~JY( tJ\ そうでない保護庁より低く .m 父/:) 際に,自宅を離れて自立した生活をしなければならない 可能性が高く,保護者にもそのような意識が働いている のではないだろうか。

(

3

)

祖父母との生活の有無による比較 中学生の祖父母との生活の有無で 自尊感情・規範意 識・親子関係・親役割・私生活主義に有意差がみられる か検討するため,中学生を祖父母との生活の有無で2群 に分けt検定を実施した(表

4

)

。 29 n.s. n.s. n.s. n.s. n.s. n.s. n.s. n.s. n.s. n.s. n.s. n.s. n.s. n.s. n.s. n.s

*

祖父母との生活の有無による

t

検定の結果 0.140 0.720 一0.115 0.085 0.473 -0.192 0.188 0.987 0.092 -0.018 0.592 2.131 0.841 -1.102 0.148 一0.731 0.781 t 値 p

<

0.01 0.884 0.874 0.885 0.986 0.998 0.867 0.984 0.901 0.794 1.038 0.845 0.893 0.858 0.887 0.945 0.929 0.956 0.818 1.019 0.740 0.828 1.036 0.835 1.005 0.807 0.998 0.899 0.852 0.881 0.866 0.865 0.948 0.927 0.688

SD

1群:ある, 2群:ない・あるが短い, nふ:not significant,

*

:

pく0.05,

*

*

ー0.016 0.018 0.015 0.017 -0.011 0.012 0.062 -0.067 -0.010 0.011 0.083 -0.089 -0.007 0.007 0.173 0.186 ← 0.040 0.043 0.064 -0.069 一0.087 0.099 0.012 -0.014 0.008 -0.009 0.070 0.075 0.002 0.002 0.049 0.052 0.060 0.065 平均値 8 1 8 2 8 2 4 0 4 0 4 0 4 0 に U に U R U F D F O R U F 1 0 に U R U に U R U F D 只 U R U 938qu8 円 J 6 2 6 2 6 2 6 2 6 2 6 2 6 2 R U R U R U に d に U に U R U R U F ι ひ に U F D F h u -O に d に U F h U ﹁ ORutuRU N 群 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 情緒的支持・依存 サービス過剰 過干渉・統制 因子名 相対的規範 絶対的規範 絶対的規範 相対的規範 〔保護者用〕 自己否定 自律・放任 生活把握 自立促進 分離不安 〔中学生〕 自尊感情 適応援助 表4 過干渉 後 悔 依 存 るほどの違いはなく,深谷ら (1998)が言うように中学 生の意識は標準化しているのかもしれない。 保護者に関しては親役割の「過干渉」因子が10%水 準で有意傾向があった。また 親役割の「自立促進」因 子が1 %水準で有意差があった。具体的には過干渉j因 子は,市街化の進行した地域の平均値が市街化の進行し ていない地域より高く 市街化の進行した地域の保護者 の方が過干渉気味に子どもに関わっている傾向が強いと いう結果になった。「自立促進j因子は,市街化の進行し ていない地域の平均値が市街化の進行した地域より高く, 市街化の進行していない地域の保護者の方が,子どもの 円立を促進する子育ての姿勢が強いという結果となった。 二のような結果のI17民として考えられることは.

r

t

i

街化 ωj

1

t

f

J--していない地域で、は日i校半業後のj生

γ

?

や就職の 市街化の進行していない地域,

*

*

:

pく0.01 市街化の進行していない地域においても大規模量販店や コンビニエンスストアが進出するなど,明確に区分でき n.s. n.s. n.s. n.s. n.s. n.s. n.s. n.s. n.s. n.s. n.s. n.s. n.s.

*

*

? ? す 居住する地域で分けた2群の t検定の結果 0.575 -1.074 一0.943 1.253 -2.733 0.713 0.523 一0.368 -0.385 一0.308 0.426 1.582 -1.965 1.717 一0.036 1.726 一0.017 t値 0.831 1.027 0.887 0.892 0.568 1.105 0.858 0.979 0.901 0.880 0.776 1.012 0.815 0.928 0.818 0.955 0.899 0.910 0.637 0.964 0.819 0.922 0.887 0.975 0.890 0.951 0.893 0.988 0.982 0.827 0.853 0.884 0.888 0.861

SD

一0.028 0.026 -0.083 0.076 0.111 -0.101 0.159 0.148 -0.243 0.226 0.065 -0.060 0.046 -0.042 -0.038 0.035 -0.052 0.048 0.030 0.028 0.139 -0.127 0.002 0.001 -0.179 0.167 -0.101 0.097 0.156 -0.150 -0.033 0.032 0.003 0.003 平均値 I 群:市街化の進行した地域:2群 nふ:not significant, t pく0,1. 4 8 3 8 3 8 2 6 2 6 2 6 2 6 2 6 2 6 2 6 F D F D ﹁ D ﹁ DFb ﹁ D F b -b F b -b F H U F H U F U F O F D F D F U F D F h U F b 2 7 3 7 3 7 1 3 1 3 1 3 1 3 5 5 5 5 F U 5 5 5 p b 5 5 5 5 5 N 群 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 情緒的支持・依存 サービス過剰 ¥l!.I ~J (三()()1) 過干渉・統制 因子名 相対的規範 絶対的規範 絶対的規範 相対的規範 〔保護者用〕 自己否定 自律・放任 分離不安 生活把握 自立促進 〔中学生〕 自尊感情 適応援助 表3 過干渉 依 存 後 悔

(6)

と生活している保護者の方が,将来子どもが自立してい くことに対する分離不安が低いという結果となった。 (4) 中学生の第何子かによる比較 中学生が第何子かによって 自尊感情・規範意識・親 子関係・親役割・私生活主義に有意差がみられるか検討 するため,中学生を第何子かによって2群に分け

t

検定 を実施した(表5)。 S S F S S S S 1 ・ n n . n n n n 果 一 8 1 7 2 3 2 結 一 直 一 3 2 1 4 2 7 2 ) -i l 一 4 7 0 4 5 5 汀 u -+ L 一 ハ U t i -ハ U t i n u n u 定 一 一 検 一 } 一 9 9 6 5 3 8 0 6 6 7 4 2 3 4

t-E

一 9 0 3 4 2 2 5 4 4 8 2 2 4 1

1

-s

一 6 0 5 1 9 9 9 9 0 7 9 8 9 8 る -: 一 0 1 0 1 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 よ 一

2

一 0 1 0 2 9 6 4 4 3 3 5 3 0 0 こ -布 山 一 5 4 4 1 6 3 0 0 4 1 5 4 5 4 い一均一 β β

β β

β β β β M n 叶 -F 晶 一 ハ U ハ υ ハ U ハ U ハ U ハ U ハ υ ハ ununU 以 一 E 一 一 一 付 一 N 一

Z22222

必 閃 と 一 群 一 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 子 一 一 一 一 存 第 一 一 依 司 i 一 宅 一 範 範 持 酬 湖

E

E -寸 一 ︺ 情 規 規 支 叶 ス 任 表 一 因 一 一 性 感 的 的 的 渉 ビ 寸 ヰ 尊 対 対 緒 干 一 律 何 白 絶 相 情 過 サ 白 〔保護者用〕 自己否定 1 50 -0.082 0.862 -0.833 n.s. 2 62 0.066 0.990 相対的規範 1 50 -0.006 0.886 -0.069 n.s. 2 61 0.005 0.899 絶対的規範 1 50 -0.115 1.132 -1.230 n.s. 2 61 0.094 0β28 過干渉 1 50 0.185 0.868 1.945 t 2 58 -0.160 0.962 自立促進 1 50 -0.199 0.912 -2.129

*

2 58 0.172 0.893 依 存 1 50 0.080 0β34 0.855 n.s. 2 58 -0.069 1.086 適応援助 1 50 0.056 0.867 0.620 n.s. 2 58 -0.048 0.882 分離不安 1 50 0.096 0.905 1.042 n.s. 2 58 -0.083 0.873 後:悔 1 50 -0.025 0.920 -0.271 n.s. 2 58 0.022 0.894 生活把握 1 50 0.001 0.844 258 -0.001 0.805 1群:第1子, 2群:それ以外, n.s. : not significant, t p

<

0,1.

*

:

pく0.05 0.007 n.s. 中学生に関しては 規範意識の「相対的規範J 因子が 10%水 準 で 有 意 傾 向 が あ っ た 。 具 体 的 に は 相 対 的 規 範」因子は,第 1子の平均値がそれ以外の中学生より高 く,守ることが望まれる比較的緩やかな規範に対して, 第 1子以外の中学生の方がその意識が低い傾向を示すと いう結果となった。しかし この因子は有意傾向を示す に止まり,中学生内では第何子かによる明確な有意差は あまりないと判断してよいものと思われる。 保護者に関しては,親役割の「過干渉」因子が10%水 30 準で有意傾向があった。また 親役割の「自立促進」因 子が5 %水準で有意差があった。具体的には過干渉」因 子は,第 1子の保護者の平均値がそれ以外の保護者より 高く,第 1子の保護者が過干渉気味に子育てに関わる傾 向が強いという結果となった。「自立促進」因子は,第l 子の保護者の平均値がそれ以外の保護者より低く,第 1 子以外の保護者の方が子どもの自立を促進する子育ての 姿勢が強いという結果となった。 このように保護者の親役割の認識では,第1子に対し ては,はじめての子どもでもあるため過干渉気味に関わ り,第2子以降は,将来親元から離れていくことが前提 条件のように考えられていることからも自立促進的に関 わってきたのであろう。しかし それ以外の因子には有 意差もなく,今回の調査対象の保護者は思った以上にバ ランスよく子育てに携わっているのかもしれない。そし て,このことが中学生の結果にもつながったと言えるの ではないだろうか。 3.中学生の自尊感情・規範意識に与える影響

(

1

)

中学生の自尊感情・規範意識の重回帰分析 中学生の自尊感情・規範意識に 保護者の自尊感情・ 規範意識が有意に寄与しているかを検証するために,中 学生の「自尊感情」因子・「絶対的規範」因子・「相対的 規範j因子を基準変数(従属変数)とし,その他の下位 尺度と「第何子」・「祖父母との生活の有無」を説明変数(独 立変数)としてステップワイズ法による重回帰分析を 行った。 ① 中学生の自尊感情 「自尊感情」因子については R=0.38,R2=0.13(F = 4.48, p

<

0.01)で有意に寄与していた。具体的には, 保護者の「後悔」因子(-0.22, p

<

0.05)・「生活把握J 因子 (0.21, P

<

0.05)・「自立促進」因子 (0.22, P

<

0.05) の 3つの因子が有意に寄与していた。 上記の結果から,保護者が後悔するような子育てをし たと感じている場合 その思いが子どもに伝わり子ども の自尊感情を低くするのではないかと考えられる。また, 子どもとの関わりが多く 子どもと十分にコミュニケー ションがとれていると考えられる保護者の生活把握や, 子どもの自立を促す保護者の自立促進的な関わりは,保 護者から子どもが信頼されているという思いを強め,結 果的に子どもの自尊感情を高めていると考えられる。し かし,保護者の自尊感情が,子どもの自尊感情に有意に 寄 与 し て い る と い う 結 果 は 得 ら れ な か っ た 。 佐 藤 ら (2000) も,自己価値意識が十分に育っていない中学 2 年生は,身近な大人への反発や反抗という自我の芽生え が自尊感情を高めると述べているが 中学2年生の段階 では,子どもの自尊感情を高めるモデルとして,直接的 に保護者はその役割を果たしていないのかもしれない。 鳴門教育大学学校教育実践センタ一紀要

(7)

② 中学生の規範意識 a.絶対的規範 中学生の「絶対的規範J 因子については, R二 0.48, R2二 0.23 (F = 9.27, p

<

0.001)で有意に寄与してい た。具体的には,中学生の「サービス過剰」因子(-0.32, p

<

0.01), 保 護 者 の 「 自 立 促 進 」 因 子 (0.27,p

<

0.01)・「自己否定」因子 (0.26,p

<

0.01)の 3つの因 子が有意に寄与していた。 上記の結果から,子どもが保護者から過剰なサービス を受けていると感じていると,当然守るべき規範にも甘 えが生じ,より厳格な規範と言える絶対的規範意識が低 くなるのではないかと考えられる。そして,保護者の自 立促進的な関わりは,子どもが自らの行動に責任を持ち, 自らに厳しくなり,子どもの絶対的規範に対する意識を 高くするのではないかと考えられる。また,保護者の自 尊感情が低い場合は 保護者が自分をダメであると否定 的にとらえ,その代償として「せめて子どもだけは」と 厳しく指導するようになり,結果的に子どもの絶対的規 範に対する意識を高めているのではないかと考えられる。 しかし,保護者のより厳格な規範と言える絶対的規範意 識が,子どものより厳格な規範と言える絶対的規範意識 に有意に寄与しているという結果は得られなかった。こ の結果は,鈴木・原田 (2001)が述べているように,規 範意識が特定の中学生と保護者の親子ペアの間で個性的 に伝達されるわけではなく,時代背景や世代性の影響を 受けているという可能性を示唆しているのかもしれない。 b. 相対的規範 中学生の「相対的規範J 因子については,

R

ニ 0.35,

R

2 0.12

(F

= 6.37, p

<

0.01)で有意に寄与してい た。具体的には.中学生の「情緒的支持・依存j因子 (0.23, • p

<

0.05)が有意に寄与していた。 上記の結果から,子どもが保護者から情緒的に支持さ れていると,あるいは頼られていると感じていると,比 較的情緒が安定していると考えられ 厳格な規範でなく ても保護者が守ることを望むであろう相対的規範を精神 的にゆとりを持って守ることができるのではないかと考 えられる。しかし,保護者の守ることが望まれる規範と 言える相対的規範意識が 子どもの守ることが望まれる 規範と言える相対的規範意識に有意に寄与しているとい う結果は得られなかった。その理由として,絶対的規範 と同様に,規範意識が特定の中学生と保護者の親子ペア の間で個性的に伝達されるわけではなく,時代背景や世 代性の影響を受けているのかもしれない。 (2) 中学生・保護者間の相関関係 重回帰分析の結果からは,保護者の自尊感情・規範意 識が,直接的に中学生の円尊感情・規範意識に影響を与 えていることが

'

k

r

i

A

で、さなかった

ω

で. ql',/ 'j:. の 1'1 呼!'J~

'

I

/

f

.

m 範立 ri哉以外で‘ III',/ 'j: と{~~I進行のtlljの関係を検什 メ().Iり(己 ()()I! するため,各下位尺度に関してPearsonの相関係数を算出 した(表6)。 表6 中学生・保護者間の相関 (Pearsonの相関係数) (中学生) 情緒的支持 過 干 渉 サービス (保護者) 依 存 統 制 過 粛l 自律・放任 自 己 否 定 -0.097 -0.032 -0.039 0.038 相対的規範 0.068 -0.008 0.009 -0.158 絶対的規範 0.131 0.048 0.043 0.134 過 干 渉 -0.171

t

0.323** -0.074 -0.067 自 立 促 進 -0.109 -0.132 -0.029 -0.023 依 存 -0.014 0.059 0.039 0.051 I 適 応 援 助 0.216* -0.006 0.241 * -0.012 分 離 不 安 0.126 -0.179

t

0.139 0.036 後 '悔 -0.233* ー0.046 0.039 0.011 生 活 把 握 0.265** -0.036 0.017 0.072 す pく01,.

*

:

p

<

0.05,

*

*

:

pく0.01 中学生の親子関係の「情緒的支持・依存」因子は,保 護者の親役割の「適応援助J因子(正 p

<

0.05)・「後 悔」因子(負, p

<

0.05)・「生活把握」因子(正.

P<

0.01)と有意な相関関係があった。さらに,中学生の親 子関係の「過干渉・統制」因子は保護者の親役割の「過 干渉」因子(正, P

<

0.01)と,中学生の親子関係の 「サービス過剰」因子は保護者の親役割の「適応援助」因 子(正, p

<

0.05)と有意な相関関係があった。 また,中学生の親子関係の「情緒的支持・依存J 因子 と保護者の親役割の「過干渉」因子 中学生の親子関係 の「過干渉・統制」因子と保護者の親役割の「分離不安」 因子が 10%水準で負の有意傾向があった。 以上の結果から,子どもが保護者から情緒的に支持さ れている,あるいは頼られていると感じていることは, 保護者が適応するのに適切な援助を子どもに与えている と感じていること,保護者が子育てに後悔していないこ と保護者が子どもとコミュニケーションが十分にとれ 子どもの生活を把握していることと関連があると思われ る。これらの保護者の認識は いずれも子育てに自信を 持っている表れとも考えられ そのような自信が保護者 の養育態度にゆとりを生み,子どもが保護者に対して, 情緒的に支持されている あるいは頼られているという 肯定的な評価をくだしたのではないかと思われる。 そして,子どもが保護者から干渉され統制されている と感じていることは,過干渉気味の保護者の養育態度と 関連していると思われる。保護者は質問紙に答える中で, 個々の項目がどの因子に属しているかなどは把握してい ないが,保護者の過干渉気味の養育態度は,その通りに 子どもに伝わっており過干渉」のような避けるべきと lリバlる長打態度は、 よ() 111[法的に i七どもlご;巧智を皮ぼ すことをノJ~ 1l交しているように忠われるり 31

(8)

次に,子どもが保護者から過剰なサービスを受けてい ると感じていることは 保護者が子どもに適応できるよ う援助を与えていると感じていることと関連があると思 われるが,中学生の親子関係の「情緒的支持・依存」因 子と保護者の親役割の「適応援助」因子との相関関係と 比較すると保護者の適応援助は,適度であれば情緒的 に支持されていると感じるが 行き過ぎると過剰なサー ビスと感じることを示唆しているように思われる。 これらのことから 子どもたちは中学生の段階におい ても,時代背景や世代性に影響を受けながらも, 日常生 活の中で直接的に あるいは間接的に保護者からも影響 を受けながら成長していることが十分検証できたのでは ないかと考えられる。 町 全 体 的 考 察 本研究は, A県下のX・Y・Z中学校2年生約160人 とその保護者を対象としたもので,過度に一般化,普遍 化することができないことは言うまでもない。その前提 の下に,以下,仮説を考察していきたい。まず,仮説 1: 居住する地域の違いや祖父母との生活の有無は,中学生 の自尊感情・規範意識・親子関係に違いはないについて であるが,本研究の結果から,居住する地域が違っても, 中学生の自尊感情・規範意識・親子関係に実質的に大き い違いはないと思われ 仮説は支持されたと判断しでも よいと思われる。深谷ら (1998) が指摘するように,子 どもたちは外から受ける行動の地域差に比べ,情報化社 会の進展の結果,意識の画一化が進み標準化されてきて いるのかもしれない。また このことは子どもだけに限 らず,保護者に関しても言えることなのかもしれない。 また,祖父母との生活の有無は,中学生の自尊感情・ 規範意識・親子関係に影響を与えていないと思われ,仮 説は支持されたと判断してよいであろう。これまでは祖 父母と同居している方がしつけなどの指導が十分され, 年老いてやがて死んでいく祖父母の姿からも子どもたち は多くのことを学び 人間的成長の糧になると思われて きた。実際に,そのような肯定的側面があることも否定 できない。また,昨今は夫婦共働きが当然の時代であり, 離婚も急増する中 特に子どもの幼少期において祖父母 の存在が子育てにとって本当に助けになっていることも また事実である。 それにも関わらず,今回の調査では同居の有無による 有意差がほとんど認められなかった。このことは,祖父 母との同居が,プラスに作用する場合もあれば,プラス に作用していない場合もあり 結果的に相殺されてし まった可能性を示唆しているかもしれない。経済的にも 時間的にも余裕がある祖父母が増え 世代間の境界を越 え,必要以上に孫の生活に対して介入や干渉する傾向を 32 強めているのかもしれない。 小川 (1994) も,孫は祖父母の干渉を嫌う傾向が強い と述べているように 当然このような状況にあれば,子 どもたちによくない影響を与える可能性がある。祖父母 と同居しでも,同居しなくても,メリット・デメリット はあるものであるが関戸 (2001)の言うように,子ど もたちの成長過程において重要なことは,単なる祖父母 との同居経験ではなく,祖父母が好きと思えるような交 流体験なのかもしれない。今回の調査では,単なる祖父 母との同居経験の有無だけを質問しており,祖父母との 交流体験などを加味した調査はできていない。今後はこ のような祖父母との関係にも焦点をあててさらに研究を 進める必要性を感じる。 次に,仮説2:第1子は,それ以外の子どもに比べ, 自尊感情・規範意識は高く 親子関係も第1子の方が肯 定的にとらえているについてであるが 本研究の結果か ら,第1子かどうかによって,中学生の自尊感情・規範 意識・親子関係に実質的に大きな違いはないと思われ, 仮説は棄却された。寺田 (2001)によると長子は末子に 比べ「母親及び父親の支え」が有意に高いと指摘してい る。そこで,このような子育ての姿勢が影響して,仮説 2のような状況に至っているのではないかと考えた。 Rosenberg (1965) もセルフ・エスティームは出生順位 と関係があり,一人っ子,特に男性のセルフ・エスティー ムが高いと述べている。しかし,今回の調査では,保護 者の親役割の一部に違いがあるものの,結果的には第1 子であろうとなかろうと大差はなかった。 最近の保護者は,少子化が進行したために,第

1

子か どうかによってそれほど差別的に子育てに携わっておら ず,案外バランスよく子どもたち一人ひとりに関わって いるのかもしれない。古い家族制度の下では,家督は代々 長男が受け継いで行くことが当然であった。それゆえに, 長男以外の子どもたちの扱いは軽かったと思われる。し かし,少なくとも今回の調査では,多くの保護者が,第 何子かということに関係なく 平等に子育てに関わって きたようであった。 最後に,仮説3:中学生の自尊感情・規範意識に,保 護者の自尊感情・規範意識が影響を与えているであるが, 本研究の結果から,中学生の自尊感情・規範意識に,保 護者の自尊感情・規範意識が影響を与えているというこ とは検証できなかった。このことから,仮説は棄却され たと考える。本研究は その対象や方法に関して結果の 解釈には留意する点が多くあるが,今回の結果から言え ることは,まず,規範意識に関しては,鈴木・原田 (2001) の結果と合致しており,規範意識が親子問で個性的な形 で伝達されるわけではないことを示唆しているというこ とである。次に, Andersonら(1991)は,子どもたちに 健康な自尊感情のモデルを示すことは,子どもたちの健 鳴門教育大学学校教育実践センタ一紀要

(9)

全な自尊感情を育てるためにきわめて重大なことと述べ ているが,規範意識と同様に,自尊感情に関しても,今 回の調査から判断すると 親子間で個性的な形で伝達さ れるわけではないのかもしれない。すなわち,自尊感情 や規範意識の高い保護者の子どもが,必ずしも自尊感情 や規範意識が高いとは限らず,逆に,自尊感情や規範意 識が低い保護者の子どもが,必ずしも自尊感情や規範意 識が低いとも限らないと言えそうである。 それでは, どうして今回の調査結果のように,自尊感 情や規範意識が親子間で個性的な形で伝達されなかった のであろうか。平井 (1994) が言うように,子どもが児 童期を終え青年期に入ると 心理的に両親に依存してい た状態から脱却し 独立した存在として自己主張を始め, 心理的離乳の時期を迎える。そのような青年期を迎えた 子どもたちには,保護者の姿が反面教師になる場合も考 えられる。また,この時期に最も大切なことは,親子の 情緒的な交流なのかもしれない。情緒的な交流を欠いた 状態では,本来は好影響を及ぼすと思われることも素直 に受け入れられず 悪影響を及ぼすこともあり得るので はないだろうか。実際 子どもの自尊感情に最も影響を 与えていると思われるのは 保護者が後悔するような子 育てをした場合で そのような場合には子どもの自尊感 情は低くなるようである。確かに保護者が自分の子ども の子育てを失敗したと後悔しているようでは,情緒的な 交流ができているとは言い難く 子どもの自尊感情が高 まるとは思えない。 ところで,今回の調査では,仮説3は棄却されたもの, 親子関係を考える上で 他に明らかとなったものがあっ た。表6からわかるように,保護者が過干渉気味である と認識していれば 子どもはその通りに受け取っており, 保護者が子どもの適応援助をしたつもりでも,情緒的に 支持されていると感じている子どももいれば,度が過ぎ れば過剰すぎるサービスと受け取る子どももいる。子ど もたちには,当然,時代背景や世代性,そして友人や教 師など保護者以外の身近な存在も影響すると考えられる。 しかし, これらの結果は,保護者の姿勢が,中学生段階 においてもなお子どもたちに影響を与えていることを証 明しているように思われる。 このように,中学生段階においてもなお子どもたちに 影響を与える保護者のなすべきことは何であろうか。山 下 (1999) は,依存と自立を繰り返すことによって,人 間は円環的・螺旋的に成長していくと述べているように, 子どもたちが保護者に救いや安らぎを求めてきたときに は子どもたちをしっかり受けとめてやり,力を蓄えれば 引きとめようとせずに送り出してやればよいのではない だろうか。 本研究の11的は.jI

γ

l

ソj:とそ

ωf

県議(1-に質問紙調

f

f

を 定胞し. Idd

X

-

の間の 1'1芋感情 ¥0.19(三()()l) 関連を探り,中学生段階における子どもたちの自我の発 達に果たす保護者の役割の大きさを検証することであっ た。この調査の結果 新たな課題として以下の点が考え られる。 (1) 本研究は, A県 X ・Y ・Z中学校という限られた地 域の学校を対象としており 十分とは言えない。今後, 大都市や山間僻地などの多様な環境の生徒を対象とし た調査を実施し,総合的に検討する必要があると思わ れる。

(

2

)

本研究で使用した規範意識を測定する尺度は,規範 に対する許容度を測定するものであり,本来の規範意 識より高い規範意識を示す可能性がある。そこで,よ り広範な規範意識を測定できる信頼性の高い質問紙を 作成する必要があると思われる。 (3) 保護者の回答の大半が母親からのものであったため に,本研究では、保護者を母親のみに限定しての分析 結果であった。今後は 母親以外の養育者との関係, 母親との比較などもする必要があると思われる。 中学生の自尊感情・規範意識を中心に親子関係に関す る研究を進める中で 現代の子どもたちを巡る問題の大 きさ,難しさを改めて認識した。子どもの世界は大入社 会の縮図であろうが,当然問題となるような行動をして しまう子どもたちにも責任があることは言うまでもない。 しかし,現在の子どもたちを巡る危機的な状況に,個人 で対処するにはもはや限界を超えているのかもしれない。 そこで,これから重要になってくるのは,子どもの周り の大人である保護者と教師の連携ではないだろうか。こ れまでも学校現場では保護者と教師の連携の重要性が指 摘されていたが,子どもを叱ることひとつにしても,教 師の意図と子どもから話を聞いた保護者の受け取り方は, 必ずしも一致していない場合がよくあった。今後はス ケール・カウンセラー制度なども活用して. これまで以 上に保護者と教師が協力し,集団で子どもたちに関わっ ていく体制作りを急ぐ必要があるのではないだろうか。 日│用文献】 1 ) 安 香 宏 1991 小 学 生 の 規 範 意 識 に つ い て 青 少年問題 38 7 pp16 -24 2) Anderson,E., Redman,G., & Rogers,C 1991 荒 木 紀 幸(監訳) 1999 親から子へ 幸せの贈りもの 一自尊感情を伸ばす5つの原則 玉川大学出版部 3) 荒木紀幸・牧田明典 1997 中学生用学校内不安検 査の標準化に関する基礎研究一学校内不安検査の指 標と自尊感情及び成績の関連について一 実技教育 研究 兵庫教育大学学校教育学部附属実技教育指導 センター 11 pp129-1:jfi 1)r話j千件 1992 セルフ・エスティーームの変ねと教育 33

(10)

指導 遠藤辰雄・井上祥治・蘭千尋(編) セルフ・ エスティームの心理学-自己価値の探求 ナカニ シヤ出版

p

p

2

0

0

-226

5

)

千 葉 市 教 育 セ ン タ ー

2000

子 ど も の 規 範 意 識 に 関 す る 研 究 -

r

個人規範」と「学級の集団規範Jの 数 値 化 を 通 し て

-6

)

深谷昌志他

1998

モノグラフ・中学生の世界 都 市の中学生・山村の中学生一地域差や学校差を考え る一 ベネッセ研究所

7

)

原田唯司・鈴木勝則

2000

中学校における生徒・ 保護者・教師の規範意識の比較検討 静岡大学教育 学部研究報告(人文・社会科学篇)

5

0

p

p

2

6

7

-283

8

)

秦 政 春

2000

子どもたちの規範意識と非行・問 題行動 大阪大学大学院人間科学研究科紀要

2

6

p

p

1

2

5

-153

9

)

平 井 誠 也

1994

子 ど も の 発 達 段 階 と 親 子 関 係 児童心理

48 1

8

p

p

1

0

-15

1

0

)

石 川 嘉 津 子

1

9

8

1

Self-esteemと 両 親 像 日本心 理学会第

45

回大会発表論文集

p

5

7

3

1

1

)

伊 藤 裕 子

2001

青 年 期 女 子 の 性 同 一 性 の 発 達 一 自尊感情,身体満足度の関連から- 教育心理学研 究

49 4 p

p

45

8

-468

1

2

)

小西勝一郎・野村和子

1983

中学生の攻撃性と親 子関係に関する研究 大阪市立大学生活科学部紀要

3

1

p

p

2

9

3

-299

1

3

)

久 世 敏 雄 他

1

9

8

8

現 代 青 年 の 規 範 意 識 と 私 生 活 主 義 に つ い て 名 古 屋 大 学 教 育 学 部 紀 要

35

p

p

2

1

-2

8

1

4

)

内閣府

2001

青 少 年 白 書 財 務 省 印 刷 局

1

5

)

小 川 隆 章

1994

孫 と 祖 父 母 に 関 す る 研 究 青 少 年問題

4

1

2 p

p

3

0

-35

1

6

)

尾 木 直 樹

2000

子 ど も の 危 機 を ど う 見 る か 岩 波書庖

1

7

)

Rosenberg, M.

1

9

6

5

Society and the adolescent self -image. Princeton: Princeton University Press.

1

8

)

佐藤逸子・杉原一昭・藤生英行

2000

女子中学生 の自尊感情と自己評価意識についての短期縦断的研 究 カウンセリング研究

3

3 1 p

p

5

7

-68

1

9

)

関 戸 啓 子

2001

祖 父 母 と の 人 間 関 係 が 大 学 生 の 自己受容と対人態度に及ぼす影響 川崎医療福祉学 会誌

1

1

1 p

p

49

-5

5

2

0

)

関根正明

1

9

8

6

中学生をどう叱るか 学陽書房

2

1)鈴木勝則・原田唯司

2001

中学校における生徒・ 保護者・教師の規範意識の比較検討 (2) 静岡大学 教育学部研究報告(人文・社会科学篇)

5

1

p

p

2

2

1

-232

2

2

)

鈴 木 和 雄

2000

小 学 校 低 学 年 か ら 規 範 意 識 を 育 てる 月刊生徒指導

30 3 p

p

3

2

-3

5

34

2

3

)

谷井淳一・上地安昭

1993

中・高校生の親の自己 評定による親役割診断尺度作成の試み カウンセリ ング研究

2

6

2 ppl13-122

24) 谷井淳一・上地安昭

1994

高校生の学校適応感と 彼らの親の自己評定に基づく親役割行動の関係 教 育心理学研究

42 2 pp185-192

2

5

)

寺 田 智 礼

2001

中 学 生 の 心 の 拠 り 所 と 問 題 行 動 兆候に関する研究-中学生版心理的支え尺度と問題 行 動 兆 候 尺 度 を 通 し て 鳴 門 教 育 大 学 生 徒 指 導 コース修士論文 26)辻岡美延・山本吉慶

1

9

7

6

親子関係診断尺度E

1

C A の作成一因子的真実性の原理による項目分析-関西大学社会学部紀要

7 2 p

p

1

-14

2

7

)

辻岡美延・山本吉慶

1978

親子関係の類型-親子 関 係 診 断 尺 度EICA- 教 育 心 理 学 研 究

2

6

2 p

p

8

4-

9

3

28)内山絢子・井口由美子・及川里子

1

9

9

6

中学生の 生活体験と問題行動:都市規模別分析 科学警察研 究所報告防犯少年編

3

7

1 p

p

6

0

-68

2

9

)

梅 岡 洋 志

1

9

9

8

中 学 生 の 規 範 意 識 と 父 子 関 係 一 ある中学校を対象とした質問紙調査法を通して-鳴門教育大学生徒指導コース修士論文

3

0

)

山本員理子・松井 豊・山成由紀子

1982

認知さ れ た 自 己 の 諸 側 面 の 構 造 教 育 心 理 学 研 究

30

2 p

p

6

4

-68

3

1)山下一夫

1999

生徒指導の知と心 日本評論社 鳴門教育大学学校教育実践センタ一紀要

参照

関連したドキュメント

このように、このWの姿を捉えることを通して、「子どもが生き、自ら願いを形成し実現しよう

自由報告(4) 発達障害児の母親の生活困難に関する考察 ―1 年間の調査に基づいて―

 英語の関学の伝統を継承するのが「子どもと英 語」です。初等教育における英語教育に対応でき

   遠くに住んでいる、家に入られることに抵抗感があるなどの 療養中の子どもへの直接支援の難しさを、 IT という手段を使えば

子どもたちが自由に遊ぶことのでき るエリア。UNOICHIを通して、大人 だけでなく子どもにも宇野港の魅力

就学前の子どもの保護者 小学校 1 年生から 6 年生までの子どもの保護者 世帯主と子のみで構成されている世帯の 18 歳以下のお子さんの保護者 12 歳~18 歳の区民 25

● 生徒のキリスト教に関する理解の向上を目的とした活動を今年度も引き続き

● 生徒のキリスト教に関する理解の向上を目的とした活動を今年度も引き続き