在宅生活中のCOPD患者の身体活動量とQOL,身体機能,認知機能に関する調査
5
0
0
全文
(2) 1.はじめに 慢性閉塞性肺疾患(以下 COPD)は労作時の息切れ,咳や痰を主症状とする 肺の炎症性疾患であり,長期の喫煙歴がある中・高年者に多く発症する.慢性 疾患であるため疾患の根治治療ではなく QOL を保つことが重要とされており, 患者教育においてセルフマネジメント能力獲得により入院や救急外来受診の減 少,入院日数減少,健康関連 QOL の改善などの報告がある.これらの効果はよ り長く在宅生活を過ごすために重要となっていると考えられる. COPD 患者は労作時の呼吸困難により身体活動量の低下を引き起こし,ADL や QOL が低下するといわれている.身体活動量の低下は運動耐容低下や筋力低 下を招き,これらはさらに呼吸困難を増強させるという悪循環に陥る.運動療 法による呼吸困難の改善や運動耐容能向上,筋力向上は ADL・QOL の改善効果 が期待されている. リハビリテーション(以下リハビリ)ではセルフマネジメント獲得により, 在宅生活での運動継続や身体活動量の維持が期待される.当院での外来リハビ リを行っている症例は定期的に通院することで運動継続や身体活動量を維持し ている.しかし,外来リハビリを行っていない患者の身体活動量や身体機能は 把握できていない. また,COPD 患者は低酸素血症などの要因で認知機能障害の発生率が高くな り,認知機能障害を合併している COPD 患者ではセルフマネジメント獲得が困 難とされている.本研究では COPD 症例の認知機能,身体活動量,身体機能を 評価し,どのような傾向があるか調査することを目的とした.傾向を把握する ことで,早期のリハビリテーション介入につなげていきたいと考える. 2.方法 当院に外来通院している COPD 症例 21 名(平均年齢 75.0±6.8 歳,男性 18 名,女性 3 名,COPD の病期分類にて軽度から中等度が 95%)を対象とした. 調査フローを図 1 に示す.認知機能は Montreal Cognitive Assessment test 日 本語版(MoCA-J)を使用し,身体活動量は 1 日の平均歩数と活動強度(METs) を評価した.各活動強度は 1.0-1.9METs,2.0-2.9METs,3.0METs 以上の 3 つ に分類した.その他の評価項目として 6 分間歩行試験,等尺性膝伸展筋力,握 力,COPD assessment test(CAT)を評価した.基本情報として,年齢,Body Mass Index(BMI),予測 1 秒量に対する比率(対標準 1 秒量:%FEV1)をカ ルテより調査した.また,認知機能と身体活動量,認知機能と各評価項目との 相関分析を Spearman の順位相関係数を用いて行った..
(3) 3.結果 対象者の特性を表 1 に示す.MoCA-J は平均 22.8 点であり,21 名中 14 名(67%) が 25 点以下であった.MCI 群は 14 名,健常群は 7 名であった.年齢(p<0.01) と認知機能(p<0.01)においては有意差がみられた.また,%FEV1(p=0.96), 平均歩数(p=0.80),活動強度 1.0-1.9METs(p=0.99),2.0-2.9METs(p=0.22), 3.0METs 以上(p=0.86),6 分間歩行距離(p=0.22),膝伸展筋力(p=0.16), CAT(p=0.94)では有意差はみられなかった.MoCA-J と年齢(r=-0.64,p<0.01), 握力(r=0.46,p<0.05)との間には,有意な中等度の相関がみられた.MoCA-J と BMI(r=0.33,p=0.15),平均歩数(r=-0.12,p=0.36),活動強度 1.0-1.9METs (r=-0.03,p=0.89),2.0-2.9METs(r=0.19,p=0.41),3.0METs 以上(r=-0.13, p=0.58),6 分間歩行距離(r=0.36,p=0.11),膝伸展筋力(r=0.29,p=0.20), CAT(r=0.39,p=0.87)との間には,有意な相関はみられなかった. 4.考察 本研究における対象者の特性として,MoCA-J が 25 点以下であった症例が 21 名中 14 名おり,67%が軽度認知症の疑いであった.この結果は先行研究と 比較し,健常高齢者よりも高い割合となった.対象者の病期は軽度から中等度 が 95%であり,CAT が 6.6 点と比較的 QOL が保たれていたことから,症状が 軽度な症例であり,身体活動量が保たれていたと考えられる.また,認知機能 低下はあるが軽度であったこと,身体活動量が比較的保たれていたことから, 認知機能と身体活動量に相関がみられなかったと考えられる. 本研究で対象とした外来通院する COPD 症例は,その 67%が軽度認知症の疑い があった.また,認知機能と身体活動量に相関はみられなかったが,認知機能 が低下しているほど高齢であった. 5.今後の展望 本研究は縦断研究の予定であったが,研究が遅れてしまい,横断研究となっ てしまった.どのような患者が身体活動量を維持できているか,認知機能が保 たれているかを調査するためにも,今後も研究を継続していきたいと考える.. 本研究は, 「公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団」の 2017 年度(後期) 在宅医療研究への助成により遂行された.関係各位の方々に深謝申し上げます..
(4) 図1. 調査フロー.
(5) 表 1 対象者の特性(n=21) 合計(n=21). MCI 群(n=14). 健常群(n=7). 性別 男/女. 18 / 3. 12 / 2. 6/1. 年齢(歳). 75.0 ± 6.8. 77.7±5.7. 69.7±5.7. p<0.01. BMI(kg/m²). 23.2 ± 3.5. 22.6±3.4. 24.2±3.6. n.s.. 病歴(ヶ月). 55.2±67.9. 54.8±58.0. 56.1±90.0. n.s.. %FEV1(%). 75.9±9.9. 76.0±8.5. 75.7±13.1. n.s.. GOLD 分類 Ⅰ/Ⅱ/Ⅲ/Ⅳ. 8/12/1/0. 5/9/0/0. 3/3/1/0. MoCA⁻J(点). 22.8±3.5. 21.1±3.0. 26.3±0.5. p<0.01. 教育年数(年). 11.4±2.3. 11.1±2.7. 11.9±1.5. n.s.. 歩数(歩). 6508.7±7048.8. 7352.0±8344.7. 4822.0±3124.9. n.s.. 1.0-1.9METs 時間(分). 504.5±130.0. 504.7±125.2. 504.2±149.4. n.s.. 2.0-2.9METs 時間(分). 122.4±45.0. 113.6±44.5. 139.9±43.9. n.s.. 3.0METs 以上時間(分). 77.0±90.4. 85.4±108.9. 60.3±33.0. n.s.. 6MD(m). 455.5 ± 70.0. 442.0±68.6. 482.4±69.7. n.s.. 等尺性膝伸展筋力(kgf/kg). 0.53 ± 0.12. 0.50±0.09. 0.58±0.14. n.s.. 握力(kg). 33.6 ± 8.8. 31.1±7.5. 38.5±9.5. n.s.. CAT(点). 6.6 ± 4.6. 6.5±3.9. 6.7±6.2. n.s..
(6)
図
関連したドキュメント
ときには幾分活性の低下を逞延させ得る点から 酵素活性の落下と菌体成分の細胞外への流出と
成績 在宅高齢者の生活満足度の特徴を検討した結果,身体的健康に関する満足度において顕著
CKD 患者のエネルギー必要量は 常人と同程度でよく,年齢,性別,身体活動度により概ね 25~35kcal kg 体重
を占めている。そのうち 75 歳以上の後期高齢者は 1,872 万人(14.9%)、80 歳以上は 1,125 万
Mindfulness-based stress reduction in patients with interstitial lung diseases: A pilot, single-centre observational study on safety and efficacy. 糖尿病 こころのケア,
が作成したものである。ICDが病気や外傷を詳しく分類するものであるのに対し、ICFはそうした病 気等 の 状 態 に あ る人 の精 神機 能や 運動 機能 、歩 行や 家事 等の
事前調査を行う者の要件の新設 ■
脳卒中や心疾患、外傷等の急性期や慢性疾患の急性増悪期等で、積極的な