• 検索結果がありません。

知的障害児の数概念の発達 (1) : 多少等判断課題における健常幼児の発達

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "知的障害児の数概念の発達 (1) : 多少等判断課題における健常幼児の発達"

Copied!
13
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)Shiga University. 滋賀大学教育学部紀要 教育科学. 17. No.55, pp. 17 - 29, 2005. 知的障害児の数概念の発達(1) ―多少等判断課題における健常幼児の発達― 赤 松 可容子 * ・ 近 藤 文 里. The Development of Number Concepts in Mentally Retarded Children (1) :. ― The Development of Judgments of Equality and Inequality in Normal Children ― Kayoko AKAMATSU ・ Fumisato KONDO. 1 問題と目的. Piaget は、数の保存概念が真に確立してい. 知的障害児の数の概念の発達に関する研究. ない段階では、数配列を見かけ上変化させる. は、保存概念の形成をもって数概念の成立を認. と、正しい数判断ができなくなることを示した. めた Piaget の発達段階の研究が中心であった。. (Piaget & Szeminska,1941)。多少等判断. 寺田(1967)や金子(1974)の研究によると、. 課題でも、要素の空間的配列に伴う要素間の密. 知的障害児と健常児を比較した場合、単純な対. 度、配列の長さ、配列パターンなど、知覚的条. 応や計数などの発達傾向は、両群に大差はない. 件に影響されやすいことを報告している(伊藤,. が、より複雑で種々の知覚的形態を伴う課題で. 1963;飯島,1965;大内・天野,1976)。し. は、知的障害児の正答率が低下し、2 集合の相. かし、多少等判断を確実に行うためには、不適. 等判断や保存課題では、知的障害児は健常児よ. 切な知覚的手がかりに頼るのでなく、計数また. り MA で 1 年~ 2 年の遅れを示すとしている。. は、一対一対応操作を利用できなければならな. また、寺田(1969)や金子(1974)の先行. い。前田・田所(1986)は、年中児と年長児. 研究をまとめると、分離量の保存概念の促進に. を対象として、多少等判断の実験を行い、計数. は、対応づけや数系列とともに、多少等判断に. 方略と一対一対応操作の利用について検討し. 関する指導を行うことが有効であることがわか. た。その結果、5 歳児は常に知覚的手がかりを. った。. 利用するのではなく、知覚的手がかりが計数や. 一方、多少等判断についての研究は、幼児の. 一対一対応操作よりも有利であるときに限られ. 数概念の発達に関する実験的研究が多く行われ. ていることを明らかにした。しかし、この実験. ている。多少等判断課題では、数の保存課題と. では、指を使って計数をしないことを原則とし. ともに、ものの状態を数の次元において正しく. ている点において、幼児が自発的な方略をとれ. 表象しうるだけでなく、数の相互関係にもとづ. ず、多少等判断に関する幼児のありのままの実. く推理のみによって判断するということを子ど. 態が必ずしもとらえられていないのではないか. もに要求している(鮫島・波多野,1965) 。し. という問題が残された。. たがって、多少等判断が形成されるためには、. また、前田(1988)は、3 ~ 6 歳児の計数. 抽象的思考力が育っていることが必要であると. 能力を調べ、6 以上の数を用いた多少等判断課. いえる。. 題を実施した。前田は、6 以上の数を用いたの は、即時把握(subitizing)による数の抽出が、. *野洲市立祇王小学校. 判断手がかりとして利用される可能性を除去す. NII-Electronic Library Service.

(2) Shiga University. 18. 赤 松 可容子・近 藤 文 里. るためであった。幼児の計数能力を調べる実験. における多少等判断課題を健常幼児に実施し、. では、数配列カードが、一列定間隔配列カード、. その結果から健常幼児が正しい多少等判断を獲. 一列不定間隔配列カード、ランダム配列カード. 得していく過程を分析し、その特徴を明らかに. の 3 種類であった。その結果から、計数でき. することを目的とする。. る者は配列に関係なく計数行動が多いが、計数 2 方 法. できない者はどの配列でも計数行動が少ないと いう関係が一貫して認められた。このことは、. (1)被験者. 計数行動に対する影響要因に関係なく、計数原. 被験者として、滋賀県Y町内の幼稚園児 40. 理の獲得やその適用に発達差や個人差があるこ. 名を対象とした。4 歳後半群(4 歳 6 か月~ 4. とを示唆するものと考えられた。. 歳 11 か月)は 10 名(男児 5 名、女児 5 名). 川久保(1980)も、年中児(4:5 ~ 5:5)と. であり、平均年齢は 4 歳 9 か月であった。5. 年長児(5:6 ~ 6:3)を対象として、数の多少. 歳前半群(5 歳 0 か月~ 5 歳 5 か月)は 10 名. 等判断における、計数と一対一対応の使用を. ( 男児 4 名、女児 6 名 ) であり、平均年齢は 5. 検討している。用いた課題は、要素が一定直線. 歳 4 か月であった。5 歳後半群(5 歳 6 か月~. 配列のほかに、ランダム配列や混合配列など 5. 5 歳 11 か月)は 10 名 ( 男児 5 名、女児 5 名 ). 種類を設定し、被験者の行動観察から用いた方. であり、平均年齢は 5 歳 10 か月であった。6. 略を分類している。その結果、年長児では、課. 歳前半群(6 歳 0 か月~ 6 歳 5 か月)は 10 名. 題によって適用する方略の違いが顕著であり、. ( 男児 5 名、女児 5 名 ) であり、平均年齢は 6. 方略の適用に差があった。一方、年中児ではそ. 歳 3 か月であった。. の差が小さいことが認められた。すなわち、年. (2)実験材料. 長児の方が課題毎に最適な方法を用いようとし. 実験で用いたカードは、19 ㎝× 27 ㎝の白. ているのではないかということが示唆された。. ケント紙カードに、赤い四角、青い四角(一辺. それに対して、年中児では、計数の方略をとっ. 2cm の正方形)の 2 集合を貼付したもの 30 枚. てはいるものの、正答の割合が小さく、計数は. を使用した。同数の場合に用いた刺激数は、5. 必ずしも容易ではないということを明らかにし. 個、6 個、7 個、8 個の対であり、異数は 5 個. ている。そのほかに、年中児では、一対一対応. と 6 個、6 個と 7 個、7 個と8個の対である。. や計数といった方略を適用することなく、正判. 集合数は 5 以上の数を用いた。その理由は、. 断をしていることを指摘している点も注目でき. 集合数が 4 以下であると、知覚的な、計数を. る。川久保によると、要素を分割して、部分の. 含まない、即時把握によって判断すると考えら. 比較によって正判断が可能であることを推察し. れていることによる。. ているが、このような研究は幼児の適用する方. (3)手続き. 略を明らかにすることの重要性を示すものとい. 赤い四角と青い四角を1枚ずつ貼付したカー. える。. ドを提示して色の違いが理解できることを確認. 以上の研究は、多少等判断に関する幼児の実. した。その後、30 問の課題を行わせた。これ. 態を把握し、どのような発達をたどっていくか. ら 30 問は、図 1 に示すように刺激の配列様式. を知るうえで、重要な手がかりとなるものであ. から 3 つのタイプに大別される。まず、タイ. った。しかしながら、上で紹介した研究は、用. プ 1(直線配置条件)は、赤い四角と青い四角. いた課題がそれぞれ異なったものであり、健常. の刺激が各々上下一列に並べられたものであ. 幼児の多少等判断に影響を与えると思われる刺. る。これには、同数同配置条件、同数異配置条. 激配置の多様な事態で総合的に検討してみる必. 件、全体の長さが等しい異数条件、全体の長さ. 要があると思われる。. が異なる異数条件がある。次に、タイプ 2(長. そこで、本研究では、刺激配置においてタイ. 方形配置条件)は、赤い四角と青い四角の刺激. プが異なる 3 つの事態、すなわち、直線配置. が各々カードの左右の面(長方形)に並べられ. 条件、長方形配置条件、そして、混合配置条件. たものである。これには、同数長方形規則配置. NII-Electronic Library Service.

(3) Shiga University. 知的障害児の数概念の発達(1). 19. 条件、異数長方形規則配置条件、同数長方形ラ. 反応の記録は、被験者の判断の正誤、カード. ンダム配置条件、異数長方形ランダム配置条件. 提示から判断までにかかった時間(反応時間)、. がある。さらに、タイプ 3(混合配置条件)は、. 反応の様子を記録した。反応の様子は、視線の. 赤い四角と青い四角の刺激がランダムに混ざっ. 動きや頭や手の動き、つぶやきを観察し、被験. て配置されたものである。これには、同数混合. 者に判断した理由を語らせた。これらにもとづ. 配置条件と異数混合配置条件がある。. き、反応の方略については、8 つに大別した。. 課題提示の順序は、タイプ 1 →タイプ 2 →. さらに、一対一対応と計数の仕方を加えること. タイプ 3 の順で実施した。また、タイプ 1 ~. により 12 分類した。すなわち、1.直観的全. タイプ 3 の各々の課題提示においては、連続. 体比較、2.空間的つまり具合、3 -a.一対. して同一条件課題の提示を行わないようにし. 一対応(指さして)、3 -b.一対一対応(目. た。例えば、 タイプ1での課題提示は、 T 1(A). で追って)、4.分割対応(規則配置を手がか. →T 1(D)→T 1(G)→T 1(J)→T 1(B). りにして部分ごとに比較)、5 -a.計数(声. →T 1(E)…の順で実施した。. に出して、指さして数える)、5 -b.計数(声. NII-Electronic Library Service.

(4) Shiga University. 20. 赤 松 可容子・近 藤 文 里. に出して、目で追って数える) 、5 -c.計数. は、全く計数の方略を適用していなかった。ま. (声に出さないで、指さして数える) 、5 -d.. た、5 歳前半群や 5 歳後半群や 6 歳前半群で. 計数(声に出さないで、目で追って数える) 、. は、一対一対応の方略が出現していた。さらに、. 6.分割加算、7.一対一対応と計数に両方、8.. 6 歳前半群では、直観的全体比較の方略の適用. 特定不能、である。実験は、被験者の所属する. より、声に出さないで、目で追って数える方略. 幼稚園の別室で個別に実施し、 被験者の反応は、. の適用がやや多く出現していることが認められ. ビデオ録画した。. た。 方略に関するこの結果と、正答率の結果(図. 3 結果および考察 (1)同数同配置条件と同数異配置条件の比較. 2)や反応時間の結果を比較検討することによ り、同数同配置条件での全般的傾向をとらえる. 同数同配置条件と同数異配置条件の正答率を. ことにする。まず、この条件は、赤い四角と青. 図 2 に示した。. い四角の配置を知覚的な手がかりとして直観的 全体比較によっても判断が可能である条件であ る。それにもかかわらず、4 歳後半群では、直 観的判断で課題を全体的にとらえることができ ていない。このことは、実験の際、被験者が課 題を提示されたとき、最初に注目した刺激ばか りに注意が停留して、刺激全体に対しての目の 動きが少ない様子を観察したことからもわか る。 次に、同数異配置条件について検討する。ま ず、この条件の正答率について検討する。図 2 から、4 歳後半群と 5 歳前半群は正答率が著し く低いのに対して、5 歳後半群と 6 歳前半群で は、正答率がほぼ 60% まで上昇することが認 められる。 また、同数異配置条件における反応時間の結 果は、4 歳後半群と 5 歳前半群は、4 秒から 5 秒くらいで答えているのに対し、5 歳後半以降 は徐々に反応するまでの時間が増大した。 さらに、同数異配置条件における方略では、. まず、同数同配置条件の正答率について検. 4 歳後半群と 5 歳前半群においては、直観的全. 討してみる。図 2 から、4 歳後半群では、正答. 体比較の方略が圧倒的に多く出現した。また、. 率が 60% にも満たないものの、5 歳前半群、5. 5 歳後半群は、4 歳後半群と 5 歳前半群に比べ. 歳後半群、6 歳前半群は、いずれも正答率が高. ると、直観的全体比較の方略の出現は少なく、. く、5 歳以降は直線配置における同数同配置条. 一対一対応の方略や計数の方略が出現した。さ. 件で正答率が急激に上昇し、100% 近くになる. らに、6 歳前半群では、声に出さないで、目で. ことを示している。. 追って数える方略の適用が多く出現することが. また、 同数同配置条件での反応時間の結果は、 反応時間は年齢にかかわらず、6 秒前後でほぼ 近似していることがわかる。 さらに、同数同配置条件における方略では、. 認められた。 方略に関するこの結果と正答率の結果(図 2) や反応時間の結果から、次のことが明らかであ る。すなわち、同数異配置条件では、4 歳後半. どの年齢群においても直観的に全体を比較す. 群や 5 歳前半群は、直線の長さに着目して直. る方略が圧倒的に多く出現した。4 歳後半群で. 観的判断をしてしまい正判断に結びつかない。. NII-Electronic Library Service.

(5) Shiga University. 知的障害児の数概念の発達(1). 21. 一方、5 歳後半群と 6 歳前半群では、計数の方. また、全体の長さが等しい異数条件での反応. 略を適用して判断するようになるため、正答率. 時間の結果から、4 歳後半群と 5 歳前半群は 4. が上昇するものと思われる。. 秒を切っていたが、5 歳後半群は 6.6 秒、6 歳. さて、両条件の比較を行うことにする。図 2 から、正答率を同数同配置条件と同数異配置条. 前半群は 7.5 秒かかっており、反応時間が長く かかった。. 件を比較してみると、どの年齢群においても大. さらに、全体の長さが等しい異数条件の方略. きな差があることがわかる。幼児の多少等判断. では、空間的つまり具合の方略が多く出現した。. は、長さという知覚的要因に影響されることが. この空間的つまり具合の方略も直観的全体比較. わかる。なかでも、4 歳後半群と 5 歳前半群は、. と同様に、知覚的要因を手がかりにした判断を. その傾向が大きいことが明らかにわかる。さら. しているといえる。4 歳後半群と 5 歳前半群で. に、4 歳後半群は、直観的全体比較の方略を用. は、直観的全体比較の方略と空間的つまり具合. いて正判断に結びつけるには、 未だ未熟であり、. の方略が大半であり、一対一対応の方略や計数. 2 集合を全体的に把握できていないことが伺わ. の方略は全く出現しなかった。5 歳後半群は、. れる。. 空間的つまり具合の方略のほかに、一対一対応 の方略や計数の方略の適用が出現した。6 歳前. (2)全体の長さが等しい異数条件と全体の長 さが異なる異数条件の比較 全体の長さが等しい異数条件と全体の長さが 異なる異数条件の正答率を図3に示した。. 半群においては、空間的つまり具合の方略より、 声に出さないで、目で追って数える方略の適用 が多く出現した。 方略に関するこの結果と、正答率の結果(図 3)や反応時間を示した結果から、次のことが いえる。すなわち、全体の長さが等しい異数条 件では、T 1(G)やT 1(F)の課題のように、 四角がひとつぬけているという知覚的要因に着 目したり、T 1(H)の課題のように四角のつ まり具合に着目したりして、短時間に反応し正 判断に結びつけることができるといえる。しか し、5 歳後半群や 6 歳前半群においては、知覚 的要因に頼らず、一対一対応や計数の方略を適 用していることがわかる。とくに 6 歳前半群 は計数の方略の適用が多く認められた。 次に、全体の長さが異なる異数条件の正答率 について検討する。図 3 から、この条件にお いては、概してどの群も高い正答率を示すもの の、正答率の推移は、5 歳前半群で一時的に低 下した後は、6 歳前半群にかけて順調に増大し ていくことが認められる。 また、全体の長さが異なる異数条件の反応時 間の結果では、4 歳後半群と 5 歳前半群は、反 応時間が 3 秒を切っており、かなり短いとい. まず、全体の長さが等しい異数条件の正答率 について検討してみる。図3から、概してどの. える。それに対して、5 歳後半群は 6.7 秒、6 歳前半群は 7.1 秒と反応時間が長くなった。. 年齢群も正答率が高いが、5 歳前半までの群に. さらに、全体の長さが異なる異数条件におけ. 比べて、5 歳後半からの群はより正答率が高く. る方略では、4 歳後半群と 5 歳前半群で直観的. なることが認められる。. 全体比較の方略が圧倒的に多く出現していた。. NII-Electronic Library Service.

(6) Shiga University. 22. 赤 松 可容子・近 藤 文 里. 4 歳後半群では、直観的全体比較の方略を適用. 児で顕著といえる。また、5 歳前半児も、タイ. した数が 24 回(80%) 、空間的つまり具合の. プ 1(直線配置条件)のうち、同数異配置条件. 方略を適用した数が 6 回(20.0%)となり、合. において 5 歳後半児と 6 歳前半児に比べ正答. わせて 30 回すべてが直観的判断によるもので. 率がかなり低い結果になったことに示されるよ. あった。5 歳前半群においても、直観的全体比. うに、5 歳前半児も知覚的要因に影響される傾. 較の方略が圧倒的に多く出現している。それに. 向を残しているといえる。それに対して、5 歳. 対して、5 歳後半群は、直観的全体比較の方略. 後半児と 6 歳前半児になると、直観的判断を. のほかに、一対一対応の方略や計数の方略の適. 抑制し、計数の方略を適用して判断することが. 用が出現することが認められた。また、6 歳前. 示された。すなわち、5 歳後半児では、一対一. 半群においては、直観的全体比較の方略より、. 対応の方略の適用が出現しており、2 集合が並. 声に出さないで、目で追って数える方略の適用. んでいる条件に適した方略を用いることができ. が多く出現することが認められた。. ていることがわかる。. この結果と、正答率の結果(図 3)や反応時. また、同数異配置条件の結果と全体の長さが. 間の結果から、次のことが示される。すなわ. 違う異数条件の結果を比較検討すると、どの年. ち、全体の長さが異なる異数条件において、T. 齢群も、同数異配置条件の正答率が全体の長さ. 1(J)やT 1(K)の課題では、長さという. が違う異数条件の正答率よりかなり低くなっ. 知覚的要因に着目して、直観的に判断しても正. ていることがわかる。特にその差は、4 歳後半. 判断に結びつける場合がある。しかし、 T1 (L). 児と 5 歳前半児が顕著である。このことから、. の課題は、直線の長さが短い方の四角の数が、. 同数か、異数かが直観的判断に及ぼしている影. 長さが長い方の四角の数より多くなっている課. 響は大きいことが明らかになった。. 題であり、長さという知覚的要因にだけに着目 して判断すると、誤る結果となる。5 歳後半群 や 6 歳前半群が、この課題においても正答で きたのは、直観的判断を抑制し、計数の方略を 適用したことによるものである。. (3)同数長方形規則配置条件と異数長方形規 則配置条件の比較 同数長方形規則配置条件と異数長方形規則配 置条件の正答率を図 4 に示した。. さて、既に述べた全体の長さが等しい異数条 件の結果と全体の長さが異なる異数条件の結果 を比較検討する。図 3 では、正答率はどの年 齢群も高く、図 2 で見られたような同数同配 置条件と同数異配置条件を比較した結果のよう な差がないことがわかる。全体の長さが等しい 異数条件と全体の長さが違う異数条件は、どち らも直線の長さに着目したり、四角のつまり具 合に着目したりした知覚的判断によって、高い 正答率を得たものといえる。 刺激が直線配置される事態で明らかになった こと 以上のような結果から、タイプ 1(直線配置 条件)の事態における年齢群毎の特徴をまとめ てみる。直線配置条件において、健常幼児は長 さや空間のつまり具合といった知覚的要因を手 がかりにして、直観的に判断をすることが多い ことが明らかになった。その傾向は、4 歳後半. NII-Electronic Library Service.

(7) Shiga University. 知的障害児の数概念の発達(1). 23. まず、同数長方形規則配置条件の正答率つい. かる。次に、5 歳前半群は、4 歳後半群に比べ. て検討する。同数長方形規則配置条件の正答率. ると、直観的判断が少なくなり、計数方略の適. では、年齢群間で顕著な差があることが明らか. 用に関しては、声に出して、目で追って数える. である。分散分析を行ったところ、年齢群間. は 3.3%(1 回)、声に出さないで、指さして数. に有意差が認められた(F = 2.86、df = 3 /. えるは 3.3%(1 回)、声に出さないで、目で追. 36、p < 0.001) 。. って数えるは 30.0%(9 回)と多くなっていた。. また、同数長方形規則配置条件での反応時間. しかし、正答率は 53.3% と低かった。これは、. は、年齢群間で大きな差はなかった。しかし、. 目で追って数える方略を適用してはいるもの. 4 歳後半群から 5 歳後半群にかけて 4.5 秒から. の、見のがしや二重に数える場合があることが. 7.6 秒と反応時間が除々に長くなるが、6 歳前. 観察されたことと併せて考えると、5 歳前半群. 半群では 5.0 秒と短くなることが示された。. には目で追うことによる計数が必ずしも容易で. さらに、同数長方形規則配置条件における方. はないことによるものと考えられる。また、計. 略について検討する。4 歳後半群では、直観的. 数の方略を適用したにもかかわらず、広がりに. 全体比較と空間的つまり具合の方略が多く出現. 影響されて、判断を誤った被験者がいた。その. したが、計数の方略も出現した。他の年齢群で. 被験者は、「うーん…」と考えこんだ様子にな. も、計数の方略の出現が多くなっていた。5 歳. り、結局正判断にならなかった。このことから、. 前半群と 6 歳前半群は、声に出さないで、目. 5 歳前半群は未だ知覚的要因に影響されやすい. で追って数える方略が最も多かった。5 歳後半. ことがわかる。5 歳後半群は、さらに計数の方. 群は、声に出して、指さして数える方略の出現. 略の適用が多くなった。その中でも、声に出し. が最も多かった。また、規則配置を手がかりに. て、指さして数える方略の適用が 26.7%(8回). して、 要素を列ごとに分割して「2 と 1 と 2」 「3. となった。このような方略を用いたため、反応. と 3」のように部分ごとに比較する、分割対応. 時間は一番長くなったが、正答率は 5 歳前半. の方略の適用が全年齢群で出現していた。この. 群に比べ大きく上がっていた。しかし、5 歳後. 分割対応は、川久保(1980)が研究で推察し. 半群においても、5 歳前半群と同様に「数えた. ている点であったが、本研究においても、実験. けれど、青が大きいから」 「青がちっちゃいから」. の観察から健常幼児が分割対応の方略を適用し. と、広がりに影響されている様子が伺われた。. ていることがわかった。また、規則配置を手が. このことから、5 歳後半群においても、知覚的. かりにして、要素を列ごとに分割してたす( 「3. 影響から脱しきれていないといえる。それに対. と 3 で 6」 「3 と 2 で 5」など)という分割加. して、6 歳前半群は、正答率が 100% であり、. 算の適用も出現していた。. 声に出さないで、目で追って数える方略を適用. 方略に関するこの結果と、正答率の結果(図. しても、正判断ができており、計数の精度が高. 4)や反応時間の結果を総合的にみると、同数. くなっていることが明確である。また、分割対. 長方形規則配置条件では、各年齢の群毎の特徴. 応のほかに、分割加算の方略の適用が 30.0%(9. が示唆された。すなわち、4 歳後半群は、反応. 回)と高いことが認められた。. 時間が短く、提示された課題を十分に見渡して. 次に、異数長方形規則配置条件について検討. いない。その結果、空間的広がりという知覚的. する。異数長方形規則配置条件の正答率は、図. 要因に影響されて、直観的判断する傾向がある. 4 から明らかなように、4 歳後半群から 6 歳前. と考える。このことは、 「だって、青の方が大. 半群にかけて、正答率が増大していくことが認. きい」 、 「赤が大きく見えるから」とつぶやく. められた。. 姿が観察されたことからもいえる。また、4 歳. また、異数長方形規則配置条件での反応時. 後半群では、声に出さないで、指さして数える. 間は、4 歳後半群は 3.8 秒であったが、4 歳後. 方略の適用が 10.0%(3 回) 、声に出さないで、. 半群を除く他の 3 群では、反応時間が 6 秒か. 目で追って数える方略が 16.7%(5 回)の割合. ら 7 秒の間でほぼ同じであることが認められ. で出現したが、正判断が示されにくいことがわ. た。. NII-Electronic Library Service.

(8) Shiga University. 24. 赤 松 可容子・近 藤 文 里. さらに、異数長方形規則配置条件における方. もかかわらず、正答率では大きく異なっている。. 略について検討する。4 歳後半群では、直観的. 図 4 から、4 歳後半群と 5 歳前半群では、同. 全体比較と空間的つまり具合の方略が多く出現. 数長方形規則配置条件の正答率より、異数長方. する一方で、 分割対応や計数の方略も出現した。. 形規則配置条件の正答率が大幅に高くなってい. また、5 歳前半群は、計数の方略の適用が多く、. ることがわかる。同数長方形規則配置条件では、. その中でも、声に出さないで、目で追って数え. 赤い四角と青い四角の広がりが異なるため、広. る方略の適用が最も多かった。5 歳後半群は、. がりという知覚的要因の影響されやすい条件と. 分割対応の方略と声に出して、指さして数える. なり、分散分析を行ったところ、年齢群間に有. 方略と声に出さないで、目で追って数える方略. 意差が認められた(F= 2.86、df = 3 / 36、. の適用が同じ 20.0%(6 回)の出現であった。. p< 0.001)。異数長方形規則配置条件では、. 6 歳前半群は、声に出さないで、目で追って数. 部分的な違いに着目して正判断を示すことが可. える方略よりも、分割対応と分割加算の適用が. 能であり、高い正答率となっていることがわか. 上回った。. る。この二つの条件の結果から、年少の群ほど、. この結果と正答率の結果(図 4)や反応時間 の結果を併せて検討すると、異数長方形規則配. 知覚的要因に影響されやすいことが明らかであ る。. 置条件では次のことがいえる。すなわち、4 歳 後半群では、直観的全体比較と空間的つまり具 合の方略が多く出現したが、正答率が高く、計 数の方略を適用することなく正判断が示されて いる。このことから、この条件では、配置が規. (4)同数長方形ランダム配置条件と異数長方 形ランダム配置条件の比較 同数長方形ランダム配置条件と異数長方形ラ ンダム配置条件の正答率を図 5 に示した。. 則的であることを利用して、異なる部分のみに 注目して、短時間で判断することが可能となっ たことが示唆される。方略の結果をみても、5 歳前半群や 5 歳後半群、6 歳前半群では、分割 対応の方略が多く出現した。また、この条件で は、 配置が規則的であることを手がかりにして、 分割加算の適用も多くなる。分割対応と分割加 算と計数の方略の適用をそれぞれの年齢群で比 較してみると、6 歳前半群は、計数のよりも分 割加算や分割対応を多く適用しており、規則的 は配置を利用して、短時間で正判断できる最適 な方略を用いようとしているのではないかとい うことが示唆される。その傾向が、5 歳後半群 にもみられるが、声に出して、指さして数える 方略も多く出現している点が、他の年齢群と異 なるところである。 さて、同数長方形規則配置条件の結果と異数 長方形規則配置条件の結果を比較検討する。 この二つの条件は、要素が規則的な配置にな っているという点が共通しているところであ る。この規則的配置を利用して、分割対応や分. まず、同数長方形ランダム配置条件について. 割加算の方略を用いて正判断を示すことが可能. 検討する。図 5 から、同数長方形ランダム配. である。しかし、同数長方形規則配置条件と異. 置条件の正答率は、年齢群間で顕著な差があり、. 数長方形規則配置条件との方略の結果は近いに. 年齢増大に伴う正答率の伸びが著しい。4 歳後. NII-Electronic Library Service.

(9) Shiga University. 知的障害児の数概念の発達(1). 25. 半群では正答率は 3.3% とかなり低いが、6 歳. 時間は長くなるけれど、正答率は高くなってい. 前半群では 90% 近くの正答率を得た。この条. る。6 歳前半群では、声に出さないで、目で追. 件において、分散分析の結果、年齢群間に有意. って数える方略の適用が多いが、正答率は高く、. 差が認められた(F = 2.86、df = 3 / 36、p. 計数の精度が高いと言える。. < 0.001) 。. 次に、異数長方形ランダム配置条件について. また、同数長方形ランダム配置条件の反応時. 検討する。この条件の正答率は、図 5 から、4. 間の結果では、4 歳後半群から 5 歳後半群まで. 歳後半群と 5 歳前半群は正答率がほぼ近似し. は、4.5 秒から 11.3 秒と増大していくものの、. ているが、5 歳後半群で急激に伸び、6 歳前半. 6 歳前半群になると 8.9 秒とむしろ短縮する傾. 群では、むしろ正答率が低下していることが認. 向にあることが認められた。. められた。. さらに、同数長方形規則配置条件における方. また、異数長方形ランダム配置条件の反応時. 略について検討する。4 歳後半群では、直観的. 間の結果は 4 歳後半群から 5 歳後半群にかけ. 全体比較と空間的つまり具合の方略の適用が圧. て 4.1 秒から 10.4 秒に増大するものの、5 歳. 倒的に多かった。5 歳前半群と 5 歳後半群と 6. 後半群以降では、差がほとんどなかった。. 歳前半群では、計数の方略の適用が多く出現し. さらに、異数長方形ランダム配置条件におけ. た。5 歳前半群は、声に出さないで、指さして. る方略について検討する。4 歳後半群では、空. 数える)方略の出現が 16.7%、 声に出さないで、. 間のつまり具合の方略の適用が圧倒的に多かっ. 目で追って数える方略の出現が 43.3% であり、. た。5 歳前半群と 5 歳後半群と 6 歳前半群では、. 計数の方略の中でも、声に出さない方略を適用. 計数の方略の適用が多く出現した。5 歳前半群. していることが認められた。5 歳後半群では、. は、声に出さないで、指さして数える方略の出. 声に出して、指さして数える方略が 36.7%、声. 現が 10.0%、声に出さないで、目で追って数え. に出さないで、目で追って数える方略が 40.0%. る方略の出現が 46.7% となっており、計数の. とほぼ近い割合で出現した。6 歳前半群では、. 方略の中でも、声に出さない方略を適用してい. 声に出さないで、目で追って数える方略の適用. た。5 歳後半群では、声に出して、指さして数. が 63.3% と、最も多かった。. える方略が 36.7%、声に出さないで、目で追っ. 方略に関するこの結果と正答率の結果(図 5). て数える方略が 40.0% とほぼ近い割合で出現. や反応時間の結果から、同数長方形ランダム配. した。6 歳前半群では、声に出さないで、目で. 置条件での各群の特徴について述べる。この条. 追って数える方略の適用が 63.3% と、最も多. 件は、これまでの条件のような長さや広がり. かった。これらは、同数長方形ランダム配置条. や配置の規則性などの知覚的手がかりがないの. 件の結果と近い結果といえる。. で、方略としては計数を適用することが迫られ. 方略の関するこの結果と正答率の結果(図 5). る条件であると考えられる。そのため、計数に. や反応時間の結果から、異数長方形ランダム配. 関する年齢群間の違いが認められたものと思わ. 置条件における各群の特徴について述べる。こ. れる。まず、4 歳後半群は、計数の方略を適用. の条件は同数長方形ランダム配置条件と同様. しようとせず、知覚的な手がかりがないにもか. に、長さや広がりや配置の規則性などの知覚的. かわらず自分の着目した部分から知覚的要因を. 手がかりがないので、方略としては計数を適用. 見出して判断し、正判断に結びつかない結果と. することが迫られる条件であるといえる。. なっている。このことから、4 歳後半群にとっ. そこで、同数長方形ランダム配置条件の結果. て、この条件での計数は容易ではないことが伺. と異数長方形ランダム配置条件を比較する。反. える。5 歳前半群は、計数(声に出さない)の. 応時間の結果も方略の結果も同数長方形ランダ. 方略を適用するも、精度が低いといえる。5 歳. ム配置条件の結果と酷似していることがわか. 後半群は、5 歳前半群に比べ、計数の方略の中. る。ただし、異数長方形ランダム配置条件で. でも、声に出して指さして数えるという具体的. は、5 歳前半群は、空間的つまり具合の方略の. な動作を伴った方略を多く適用しており、反応. 適用が多くなっていることが異なるところとい. NII-Electronic Library Service.

(10) Shiga University. 26. 赤 松 可容子・近 藤 文 里. える。. している割合が多い。この点での違いが、5 歳. さらに、正答率について、同数長方形ランダ. 前半児に比べて 5 歳後半児の計数の精度を上. ム配置条件の結果と異数長方形ランダム配置条. げていると考えられる。さらに、6 歳前半児に. 件の結果を比較して検討する。図 5 から、4 歳. なると、声に出さないで、目で追って数える方. 後半群と 5 歳前半群の正答率に大きな差があ. 略を適用する割合が多い。具体的な動作を伴わ. ることがわかる。このことを、4 歳後半群と 5. なくても 5 歳後半群に比べて見のがしや二重. 歳前半群が直観的全体比較や空間的つまり具合. に数えるというミスが少なく、計数の精度が高. の方略を多く適用していることと関連させて考. いといえる。. えると、この条件においても同数であるか、異. ランダム配置条件は、刺激がバラバラに配置. 数であるかが直観的判断に与えている影響は大. されており、知覚的手がかりが正判断に結びつ. きいことがわかる。. かない条件なので、ますます計数の方略を適用 する必要性がある条件といえる。この条件では. 刺激が長方形配置される事態で明らかになっ たこと. 計数行動がとれるかどうかが試されることと なり、この条件においては計数が容易でない 4. 以上のような結果から、タイプ2(長方形配. 歳後半児は、直観的判断に依存してしまうので. 置条件)の事態における年齢群毎の特徴をまと. はないかと考えられる。その傾向は 5 歳前半. めてみる。. 児にも残っているといえる。また、計数行動に. まず、規則配置条件では、4 歳後半児は広が. ついては、5 歳前半児、5 歳後半児、6 歳前半. りや空間的つまり具合という知覚的要因に大き. 児はそれぞれ、規則配置条件での特徴と同様の. く影響されて、正しい多少等判断に結びつかな. ことがいえる。. い。また、5 歳前半児でも、計数の方略を適用. また、タイプ 2(長方形配置条件)を同数配. したのにもかかわらず、知覚に惑わされ、誤っ. 置条件(同数長方形規則配置条件と同数長方形. てしまう姿が観察され、知覚的要因から脱却す. ランダム配置条件)と異数配置条件(異数長方. ることが容易でないことがわかる。 この傾向は、. 形規則配置条件と異数長方形ランダム配置条. 5 歳後半児にも残る。しかし、5 歳後半児では、. 件)とに分けて比較してみると、より年少の群. 規則配置条件においては、配置が規則的である. ほど同数配置条件の正答率の結果が異数配置条. という知覚的な手がかりを利用した分割対応や. 件の正答率の結果より低くなっていることがわ. 分割加算の方略が出現し、正判断に結びついて. かる。この結果から、タイプ 2(長方形配置条. いることも明らかになった。一方、6 歳前半児. 件)においても、同数であるか,異数であるか. では、計数が容易であるにもかかわらず、分割. が直観的判断に与えている影響が大きいという. 対応や分割加算の方略を用いる割合が多く、規. ことが明らかになった。. 則的な配置を利用して、短時間で正判断に結び つく最適な方略を用いようとしていることが示 唆される。 また、正判断に結びつくには、計数の精度も 密接に関連している。5 歳前半児は、きちんと 正確に一つひとつの刺激を重なりなく、また漏. (5)同数混合配置条件と異数混合配置条件の 比較 同数混合配置条件と異数混合配置条件の正答 率を図 6 に示した。 まず、同数混合配置条件について検討する。. れなく数えていくことが容易でないのに、声に. 図 6 から、同数混合配置条件では、正答率に. 出さないで、目で追って数えるという方略を適. 年齢群間で顕著な差があることが明らかであ. 用する割合が多い。そのため、結果としてミス. る。分散分析を行ったところ、年齢群間に有意. が起こり正判断に結びつかないことになってい. 差が認められた(F = 2.86、df = 3 / 36、p. る。それに対して、5 歳後半児は、5 歳前半児. < 0.001)。. とは対照的で、声に出して具体的に刺激一つひ. また、同数混合配置条件での反応時間は、4. とつを指さしていって数えるという方略を適用. 歳後半群から 5 歳前半群にかけて 5.0 秒から. NII-Electronic Library Service.

(11) Shiga University. 知的障害児の数概念の発達(1). 27. 5 歳前半群では、計数の方略をとらない傾向に なり、直観的全体比較や空間的つまり具合の方 略の適用が多く出現しているという結果になっ ていることが示唆される。5 歳後半群は、声に 出して、指さして数える方略を適用しているう えに、2 回も 3 回も数え直す姿が観察された。 この条件は、赤い四角と青い四角が混ざってい る状態なので、見のがしや二重に数えることが ないよう段取りをつけて計数を行うことが必要 であるため、5 歳後半群は何度も数えなおして、 正判断に結びつけようとしていることが考えら れる。そのため、反応時間は他の年齢群に比べ て長くかかってはいるが、5 歳前半群よりも正 判断に結びついている割合が高くなっていると いえる。6 歳前半群は、5 歳後半群よりも、計 数の精度が高く、この条件においても、声に出 さないで、目で追って数える方略を多く適用し、 正判断に結びついている。 次に、異数混合配置条件について検討する。 8.3 秒と除々に増大し、5 歳後半群にかけては. この条件の正答率は、図 6 から明らかなように、. 15.0 秒と大きく増大するが、6 歳前半群では. 4 歳後半群から 6 歳前半群にかけて正答率が増. 9.5 秒と大きく短縮することが認められた。. 大していくことが認められる。. さらに、同数混合配置条件における方略につ. また、異数混合配置条件での反応時間の結果. いて検討する。4 歳後半群では、直観的全体比. は、4 歳後半群から 5 歳後半群まで 4.2 秒から. 較と空間的つまり具合の方略の出現が圧倒的に. 11.7 秒と除々に増大するものの、6 歳前半群. 多かった。5 歳前半群では、空間的つまり具合. では 5 歳後半群と差がほとんどなかった。. の方略と声に出さないで、目で追って数える方. さらに、異数混合配置条件における方略につ. 略がほぼ同じ割合で出現した。5 歳後半群では、. いて検討する。この条件においても 4 歳後半. 声に出して、指さして数える方略が 36.7%(11. 群では、直観的全体比較と空間的つまり具合の. 回) 、声に出さないで、目で追って数える方略. 方略の出現が圧倒的に多かった。一方、5 歳前. が 53.3%(16 回)の割合で出現した。6 歳前. 半群では、空間的つまり具合の方略の適用も出. 半群は、ほとんどが計数の方略を適用してお. 現したが、声に出さないで、指さして数える方. り、声に出さないで、目で追って数える方略が. 略は 23.3%(7 回)、声に出さないで、目で追. 63.3%(19 回)の割合で出現した。. って数える方略は 40.0%(12 回)の割合で出. 方略に関するこの結果と正答率の結果(図. 現した。また、5 歳後半群では、声に出して、. 6)や反応時間の結果を併せて検討する。同数. 指さして数える方略が 40.0%(12 回)、声に出. 混合配置条件では、次のことがいえる。すなわ. さないで、目で追って数える方略が 50.0%(15. ち、この条件は、先に検討している長方形ラン. 回)の割合で出現した。さらに、6 歳前半群では、. ダム配置条件と同様、正判断に結びつく知覚的. ほとんどが計数の方略を適用しており、声に出. な手がかりがないので、計数の方略を適用する. さないで、目で追って数える方略が 70.0%(21. 必要性がある条件といえる。また、赤い四角と. 回)の割合で出現した。. 青い四角が混ざっている状態なので、長方形ラ. 方略に関するこの結果と正答率の結果(図. ンダム配置条件以上に、計数行動に困難さが出. 6)や反応時間の結果を併せて、異数混合配置. てくると考えられる。そのため、4 歳後半群や. 条件における各群の特徴について述べる。この. NII-Electronic Library Service.

(12) Shiga University. 28. 赤 松 可容子・近 藤 文 里. 条件は、同数混合配置条件と同様に、正判断に. 以上のような年齢群毎の特徴は、タイプ 2(長. 結びつく知覚的な手がかりがないので、計数の. 方形配置条件)における結果と同様のことが明. 方略を適用する必要性がある条件といえる。ま. らかになっている。さらに、このタイプ 3(混. た、赤い四角と青い四角が混ざっている状態な. 合配置条件)の事態は、2 種類の刺激が混ざり. ので、同数混合配置条件と同じく計数行動に困. 合っており、タイプ 2(長方形配置条件)の事. 難さが出てくると考えられる。この条件の方略. 態と比較すると、より計数の精度が問われる条. の結果が、同数混合配置条件の方略の結果に近. 件となっており、各年齢群間の正答率の差異に. 似していることからも、この条件においての各. 反映されているといえる。. 年齢群の特徴は、同数混合配置条件での特徴と 同様であるといえる。 また、正答率について、同数混合配置条件の. また、タイプ 3(混合配置条件)において も、同数混合配置条件の正答率の結果と異数混 合配置条件の正答率の結果を比較してみると、. 結果と異数混合配置条件の結果を比較してみ. 4 歳後半児と 5 歳前半児の正答率に顕著な差が. る。図 6 から、全年齢群において異数混合配. あることがわかる。この結果を 4 歳後半児と 5. 置条件のほうが同数混合配置条件より高くなっ. 歳前半児が直観的全体比較や空間のつまり具合. ていることがわかる。とくに、4 歳後半群と 5. の方略を多く適用していることと関連させて考. 歳前半群では、大幅に高くなっている。. えると、この条件においても同数であるか,異 数であるかが直観的判断に及ぼす影響は大きい. 刺激が混合配置される事態で明らかになった. ことが明らかである。. こと 以上のような結果から、タイプ 3(混合配置 条件)の事態における年齢群毎の特徴をまとめ. さて、以上の考察から本研究の目的に照らし て、次のことが明らかになった。. てみる。混合配置条件は、同数であっても異数. 4 歳後半児では、知覚的要因を手がかりにし. であっても、計数の方略を適用する必要性があ. て、直観的判断をしようとするが、注目した一. る条件といえる。4 歳後半児は、正判断に結び. 部分からの手がかりで判断してしまっている。. つく知覚的手がかりがないのにもかかわらず、. すなわち、一対一対応も行わないし、計数行動. 直観的判断を適用していることから、4 歳後半. による判断も少ないといえる。. 児にとって、混合配置での計数行動は容易では. 5 歳前半児では、長さや広がり、空間のつま. ないことがわかる。また、5 歳前半児では、2. り具合などの知覚的要因に影響されやすい。計. 種類の刺激が混ざり合っている条件において、. 数行動をとったとしても、知覚的要因から脱却. きちんと正確に一つひとつの刺激を重なりな. できず、正判断に至らない。しかも、計数行動. く、しかも漏れなく数えていくことが容易でな. は見のがしや二重に数えるなどのミスが起こり. いのに、声に出さないで、目で追って数えると. やすい。. いう方略を適用する割合が多い。そのため、結. 5 歳後半児では、計数は、時間を要するが、. 果としてミスが起こり正判断に結びつかないこ. 声に出して数唱するようになる。その際、刺激. とになる。それに対して、5 歳後半児は、5 歳. を一つひとつ指さして数えるという具体的な動. 前半児とは対照的で、声に出して具体的に刺激. 作を通した方略をとるようになる。結果として. 一つひとつを指さしていって数えるという方略. 見のがしや二重に数えるなどのミスが少なくな. を適用している割合が多い。 この点での違いが、. くなり、計数の精度が増してくる。ただし、知. 5 歳前半児に比べ計数の精度を上げていると考. 覚的要因から、完全に脱却できているわけでは. えられる。さらに、6 歳前半児では、声に出さ. ない。条件に最適な方略を用いようとするプラ. ないで、目で追って数える方略を適用する割合. ンができてくる。. が多い。具体的な動作を伴わなくても 5 歳後. 6 歳前半児では、知覚的要因に影響されず、. 半児に比べて見逃しや二重に数えるミスが少な. 数に着目して多少等判断を行う。計数の精度が. く、計数の精度が高いことが明らかである。. 高くなる。が、その場合、数唱を声に出さないで、. NII-Electronic Library Service.

(13) Shiga University. 知的障害児の数概念の発達(1). 29. 目で追って数えて、正判断に至る。また、6 歳 前半児では、条件に最適な方略を用いようとす るプランとプランを遂行する能力が備わってく るといえる。 引 用 文 献 飯島婦佐子 1965 幼児の数概念に関する実験的研究 - 5 才児について- 教育心理学研究 第 13 巻 第 4 号 28 - 41 伊藤恭子 1963 幼児の数概念の研究-集合の相等判 断と保存- 教育心理学研究 第 11 巻 第 3 号 29 - 39 大内正子・天野るつ子 1976 3 歳児における数の多 少等判断 教育心理学研究 第 24 巻 第 2 号 1 -9 金子健 1974 精神薄弱児の保存概念に関する研究 精 神薄弱児研究 48 - 55 川久保あつ子 1980 幼児における数の多少等判断の 研究 京都大学教育学部紀要 ⅩⅩⅤⅠ 233 - 244 鮫島ゆかり・波多野誼余夫 1965 量化操作としての 計数の獲得 教育心理学研究 第 13 巻 234 - 246 寺田晃 1967 精神薄弱児における数概念の発達にか んする研究-同一 MA の正常児との比較- 教育 心理学研究 第 15 巻 P11 ~ 20 寺田晃 1969 精神薄弱児のおける数概念の発達に関 する研究:Ⅱ-教示効果を中心として- 教育心 理学研究 第 17 巻 第 2 号 38 - 52 寺田晃 1982 数概念の形成と指導 宮本茂雄(編著) 概念形成 学苑社 171 - 198 前田健一・田所里佳 1986 幼児の多少等判断におけ る計数方略の一対一対応操作の検討愛媛大学教育 実践研究指導センター紀要 第 4 号 55 - 70 前田健一 1988 幼児の計数能力と多少等判断 愛媛 大学教育学部紀要 第Ⅰ部教育科学 第 34 巻 133 - 145 Piaget & Szeminska 1941 (遠山啓・銀林浩・滝 沢武久訳 数の発達心理学 国土社 1961). NII-Electronic Library Service.

(14)

参照

関連したドキュメント

この数字は 2021 年末と比較すると約 40%の減少となっています。しかしひと月当たりの攻撃 件数を見てみると、 2022 年 1 月は 149 件であったのが 2022 年 3

・Squamous cell carcinoma 8070 とその亜型/変異型 注3: 以下のような状況にて腫瘤の組織型が異なると

図 21 のように 3 種類の立体異性体が存在する。まずジアステレオマー(幾何異 性体)である cis 体と trans 体があるが、上下の cis

いてもらう権利﹂に関するものである︒また︑多数意見は本件の争点を歪曲した︒というのは︑第一に︑多数意見は

その太陽黒点の数が 2008 年〜 2009 年にかけて観察されな

夜真っ暗な中、電気をつけて夜遅くまで かけて片付けた。その時思ったのが、全 体的にボランティアの数がこの震災の規

都調査において、稲わら等のバイオ燃焼については、検出された元素数が少なか

環境管理棟の測定結果でも、全ベータとス トロンチウムの結果が大きく逆転している ことを確認。全ベータの数え落としの調査