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拡張現実を用いた地球観測技術の疑似体験型教材の開発

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Academic year: 2021

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鳴門教育大学情報教育ジャーナル No.13 pp.49-53 2016 * 兵庫教育大学 連合大学院 (博士課程) 生活・健康系教育連合講座 49 ** 鳴門教育大学 大学院 (修士課程) 生活・健康系コース (技術・工業・情報)

拡張現実を用いた地球観測技術の疑似体験型教材の開発

馬 文鵬

,矢野慶志郎

**

,伊藤陽介

*** 地球環境問題の深刻化とともに人工衛星に搭載された様々なセンサによる持続的な地球観 測の重要性が高まり,特に合成開口レーダのような電波を利用した地球環境計測が普及して きた。地球観測のみならず様々な用途で電波が利用される現在においては,電波に関する基 礎的・基本的な知識をもつことの必要性は高まっている。本論文では,人工衛星に搭載され たアンテナから放射された電波を地上で計測する活動を通して地球観測技術を体験的に学習 するプログラムについて述べるとともに,疑似体験教材の利用を提案し,拡張現実技術を用 いて開発したタブレット型パソコン用疑似体験教材アプリとその利用例について示した。 [キーワード:地球観測技術,拡張現実,疑似体験,合成開口レーダ,アンテナ]

1. はじめに

近年,地球環境問題の深刻化とともに人工衛星に搭載 された様々なセンサによる持続的な地球観測の重要性は 高まっている。インターネットで提供される地図サービ スやデジタル地球儀ソフトウェアの普及によって全球の 地球観測画像を容易かつ無償で閲覧できるようになって いる[1]。 地球観測に用いられるセンサは,受動型と能動型に大 別される。前者は,太陽光線の地球からの反射光を捉え たり,地球から放射された赤外線等を計測したりするた めに用いられる。後者は,センサに付随するアンテナか ら強力な電波を照射し,地球上で反射された電波を計測 する。この方法は太陽光線を用いないため昼夜を問わず, 雲にも影響されにくい特長をもつ[2]。地球環境に鋭敏と される地域として両極や熱帯雨林地域がある。太陽光線 を使う受動型センサでは,これらの地域を十分に観測で きないため,能動型センサが積極的に利用されるように なった。能動型センサの一つとして合成開口レーダ(SAR: Synthetic Aperture Radar)があり,高分解能な観測画像 が得られるとともに,位相情報や偏波情報を用いた高度 な解析にも利用されている。2014 年には,SAR を搭載し た我が国の人工衛星「陸域観測技術衛星 2 号(ALOS-2)」 [3]やヨーロッパ宇宙機関(ESA: European Space Agency) による地球観測プログラム「コペルニクス計画」によっ て開発された人工衛星 Sentinel-1[4]も打ち上げられ, 電波を利用した地球環境計測の普及期をむかえている。 地球観測のみならず様々な用途で電波が利用される現 在においては,電波に関する基礎的・基本的な知識をも つことの必要性は高まっている。 一方,2008 年に公示された中学校学習指導要領技術・ 家庭科(技術分野)[5]の内容 B エネルギー変換において, 電波に関係するエネルギー変換技術を学習する場合,主 に電波を技術的に利用するラジオ等の機器製作が多い。 人間の感覚として捉えることの難しい電波の挙動を中学 生に視覚的にわかりやすく示す教材・教具を利用した教 育の開発も必要とされている。 本論文では,人工衛星に搭載されたアンテナから放射 された電波を地上で計測する活動を通して地球観測技術 を体験的に学習するプログラムについて述べるとともに, 疑似体験教材の利用を提案し,タブレット型パソコン上 で動作するアプリの開発例を示す。

2. 地球観測技術の体験学習プログラム

2.1 概要 地球観測技術の体験学習プログラムでは,地球観測技 術に関する基礎的・基本的な知識を身につけ,地球観測 に使われている電波の計測実験による体験的な学習を通 して,地球観測技術が生活や社会に果たしている役割を 理解することを目標とする。主な学習内容として地球環 境問題と関連する地球観測技術の役割,受信用アンテナ の製作,計測機器の設置実習と電波識別実験,地球観測 画像の処理実習等を取り入れる。 図 1 に地上で地球観測用電波を計測体験する教材の構 成例を示す。人工衛星に搭載された SAR 用アンテナから 放射された電波を学習者が製作した受信用アンテナと教 育用電波識別装置等を用いて捉える。教育用電波識別装 置は,スペクトラムアナライザに SAR で使われるパルス 研究論文

(2)

50 状の電波を識 パソコンの画 状態を容易に 2.2 課題 地球観測技 で,以下の課 (1) 観測時 人工衛星に 刻は予測でき ことは難しい 特長であるた (2) 観測周 地震等によ によって観測 観測実験を失 (3) 天候 受信用アン や風等の気象

3

3.1 設計 地球観測技 象とする人工 の設計要件は <1> 1.2GHz 帯 <2> 必要な指 と。 図 1 地上 材の 人工衛星 受信用ア 識別するため 画面を介して学 に認識させる 技術の体験学習 課題が想定され 時刻 に搭載された きるが,その時 い。特に,SAR ため,深夜に観 周期 よる緊急観測要 測される周期は 失敗しまうと, ンテナ等の教材 象状況によって

3. 受信用ア

技術の体験学習 工衛星をALOS-は,以下のとお 帯の電波を受 指向性をアンテ 合成開口レーダ アンテナ 上で地球観測 の構成 アンテナ パルス状の の機能を付加 学習者に地球 ことを可能と 習プログラム れる。 SAR が電波を 時刻に合わせ R は昼夜観測 観測される場 要求を除くと は,一般に10~ ,再実験まで 材は野外に設 ては,実験でき

アンテナの教

習プログラム -2とした場合 おりである。 受信可能である テナの形状で 教育用電波 識別装置 測用電波を計 の電波 パソコ 加したものであ 球観測用電波の する。 ムを教育実践す を放射し観測す せて授業を実施 測可能であるこ 場合もある。 ,同一地域を ~40日程度と長 でに時間を要す 設置されるため きないことがあ

教材化

ムにおいて,主 合の受信用アン ること。 で達成可能であ 学習者 測体験する教 ン あり, の計測 する上 する時 施する ことが を SAR 長い。 する。 め,雨 ある。 主に対 ンテナ あるこ <3> <4> <5> 上 ンテ 磁界 造と 導波 図を 3.2 受 に, 用い 所定 の糊 SMA 型 半田 する 教 伝搬方向との に受信できる アンテナの開 学習者が容易 上記の要件を満 ナを選定した 界シミュレータ してホーン長 波管(40×80×4 図 2 に示す。 教材化 受信用アンテナ ここではアル る。学習者はア 定の部品にはさ 糊代部分に貼付 型同軸コネク 付けし,同軸 ように導波管 開 口 面 図 3 受信 コネクタの 装着箇所 図 2 鳴 の直交面に位相 ること。 開口面積あたり 易に製作可能で 満たす形状の 1 た。このアンテ タを用いて所要 長(250mm),開 40mm)を設計し ナを教材として ルミニウムを蒸 アンテナの展開 さみ等で切り取 付した両面テー タの芯線に 20 軸コネクタの外 管の中心部に固 信用アンテナ 312 80 受信用アンテ 鳴門教育大学情報 相がそろった電 りの利得が大き であること。 1 つとして角錐 テナを教材化す 要の利得と指向 開口面(縦 208 した。このア て学習者が製作 蒸着した厚紙 開図を厚紙の 取る。折り目 ープを用いて組 0mm 程度のス 外周部分とア 固定する。本ア ナの製作と設 250 40 テナの展開図 4 0 報教育ジャーナル 電波を効率的 きいこと。 錐ホーン型ア するために電 向性をもつ構 ×横 312mm), ンテナの展開 作できるよう を材料として 上に描画し, をつけた部品 組み立てる。 ズメッキ線を ンテナが導通 アンテナはSAR 同軸 コネクタ (SMA 型) カメラ用 三脚 設置例 [mm] 図 2 0 8 ル 的 ア 電 構 開 て 品 を 通 R

(3)

から放射され カメラ用三脚 具にマジック の金具を蝶ね (図 3)。

4. 地

4.1 疑似体験 SAR による 積極的に選択 は回避できる 天候状態に係 る。 野外におけ はあるが,不 は,拡張現実 体験型教材の 4.2 AR 技術に AR技術は, 強調,減衰さ 拡張する[6] 認識し,マー ムで算出する らの結果を用 等の仮想的な る。AR の実現 ビジョンベー に大別される の認識精度が を採用する。 がある。 AR技術を用 1 に示す。こ ラを備えたタ OS: Android 解像度 2048 表 1 AR 項 O AR 用 マー 統合開 れる電波の方 脚を用いる。ホ クテープを貼付 ねじで固定し,

地球観測技術

験型教材 る観測時刻を授 択することに る。しかし,電 係る課題(2)及 ける電波観測実 不可避な状況 実(AR: Augmen の利用を提案す による教材開 現実環境に対 させることに 。AR 技術では ーカとカメラ るとともに,カ 用いて,文字や な情報を利用者 現方法は,ロケ ース AR,及びマ る。ここでは, が得られやす このマーカに 用いた擬似体 ここで利用対象 タブレット型パ 4.4.4以上,表 ×1536 ドット R を用いた疑似 項目 OS Win 用 SDK Qua Vuf カ作成 汎用 開発環境 Uni Mon 向に設置する ホーンの底面 付する。三脚 ,上部にアン

術の疑似体

授業時間中に よって,2.2節 電波観測実験 及び(3)につ 実験を実施す となった場合 nted Reality) する。 開発 対して様々な情 よって人間か は,2 次元図形 との相対的な カメラの姿勢 や画像,映像 者が見ている ケーションベ マーカレス型 ,容易にマー すいマーカ型ビ に適する図形と 体験型教材アプ 象とする情報 パソコンとし, 表示画面のサイ ト,背面カメラ 似体験型教材 規格等 ndows 8.1 Ent alcomm foria SDK(5.0 用画像処理ソ ity 3D (5.2.1 noDevelop (C# る必要があるた 面およびコの字 脚の雲台にコの ンテナを取り付

体験型教材

に実施できる場 節で述べた課題 験の失敗や授業 ついては不可避 することが最優 合を想定し,こ 技術を用いた 情報を付加,削 から見た現実世 形からなるマー な位置をリアル 勢を推定する。 像,3 次元 CG, る画面に重畳表 ベース AR,マー ビジョンベー ーカを作成でき ビジョンベース として QR コー プリの開発環境 報端末は,背面 その主な仕様 イズ: 9.7イン ラ解像度: 500 材の開発環境 等 terprise 0.5) フトウェア 1) #) ため, 字型金 の字型 付ける 場合を 題(1) 業日の 避であ 優先で ここで た擬似 削除, 世界を ーカを ルタイ これ 音声 表示す ーカ型 ース AR き一定 ス AR ード等 境を表 面カメ 様は, ンチ, 0 万画 素で 4.3 擬 下部 るこ 紙に 合わ 学習 よう 擬 図 5 いう 示さ とい ボタ 当該 表示 表示 識し ト型 境 である。 疑似体験型教 擬似体験型教材 部に QR コードを とで認識しや カラー印刷し せた形に切り 者が製作した に丁寧に貼り 擬似体験教材ア に示す。認識 文字列を表示 れる。操作ボ う文字列が表 ンをタップす 該ボタンの文字 示」ボタンをタ 示が終了し,元 た状態では, 型パソコン本体 図 5 図 4 教材アプリ 材アプリで用い を配置し,上部 やすくしている した後,受信用 取って用いら た受信用アンテ 付ける。 アプリによって 識状態になると 示するとともに タンは,右側 示された矩形 すると,AR に 字列は「非表示 ップすること 元の「表示」ボ 常に 3 次元空 体との位置関係 マーカの貼 疑似体験型教 いるマーカを図 部に特定の文字 る。このマーカ 用アンテナの上 られる。図5に示 テナの上面に皺 てマーカを認識 と,画面左上隅 に,2 つの操作 側に「表示」,左 形領域である(図 による重畳表示 示」に変更され とによって,A ボタンに戻る。 空間内でマーカ 係を推定し,重 マ け 貼り付け箇所 教材用マーカ 図 3 に示す。 字列を追加す カは,白色用 上面の形状に 示すように, 皺にならない 識した状態を 隅に[True]と 作ボタンが表 左側に「保存」 図6)。「表示」 示が開始され, れる(図 7)。「非 AR による重畳 。マーカを認 カとタブレッ 重畳表示され マーカの貼り付 け箇所 カ す 用 に い を 表 非 畳 認 ッ れ

(4)

52 るアニメーシ して 3 次元表 在表示中の画 ルとしてタブ カを途中で認 [False]と表 図 8 に疑似 実物と AR の は実物であり 放射された電 4.4 疑似体験 疑似体験型 <1> 製作した <2> タブレッ 験教材ア <3> 背面カメ 撮影し, <4> タブレッ ンをタッ れてくる 図 6 擬似 状 図 7 擬 ションや図形 表示する。「保 画面のスナップ ブレット型パ 認識できなく 表示され,操作 似体験型教材ア の関係について り,操作ボタ 電波のアニメー 験型教材を用い 型教材を用いた た受信用アンテ ット型パソコ アプリを起動す メラでマーカ 擬似体験教材 ット型パソコ ップし,人工衛 る様子を示す 似体験教材ア 態 擬似体験教材 を画面に表示 保存」ボタンを プショットを ソコン内に記 くなったときは 作ボタンは表示 アプリによる て示す。マーカ ン,人工衛星 ーションは, いた学習 た学習活動の流 テナにマーカ ンにインスト する。 を貼り付けた 材アプリにマー ンの画面上に 衛星やパルス アニメーショ アプリがマー アプリによる 示された実物に をタップすると をとり,画像フ 記憶する。なお は,画面左上 示されなくな る表示画面にお カと受信用アン 星及びアンテナ AR である。 流れを以下に カを貼り付ける ールされた擬 た受信用アンテ ーカを認識させ にある「表示」 ス状の電波が放 ンを重畳表示 カを認識した る重畳表示例 に同期 と,現 ファイ ,マー 上隅に る。 おける ンテナ ナから に示す。 る。 擬似体 テナを せる。 ボタ 放射さ 示させ <5> <6> 本 ラム 案し する 畳表 今 定し を横 ら放 ショ 体験 た擬 に, 本 助成 [1] [2] た 例 ア さ マー る。 タブレット型 と変化させ, よく見えるよ 「保存」ボタ のスナップシ する。 本論文では,地 とその課題に た。AR 技術を アプリの開発 表示内容を示し 今後,擬似体験 た位置に重畳 横切るように移 放射されるパル ンに改良する 験的に学習する 擬似体験教材を 改善点を模索 本研究の一部は 成による。 Google Ear /ja/earth/ 日本リモート アンテナから放射 される電波(AR) ーカ(実物) 図 鳴 型パソコンの位 重畳表示され ようにする。 タンをタップし ショットをとり

5. まと

地球観測技術を について述べ, を用いたタブレ 発例について述 した。 験教材アプリに 畳表示するので 移動しつつ,そ ルス状の電波を る必要がある。 るプログラムの を利用し,その 索しなければな

謝辞

は科学研究費(

参考文

rth, https: (最終アクセス トセンシング学 受信用ア 射 8 実物と AR 鳴門教育大学情報 位置や撮影角度 れているアニ し,よく見え り,ワークシー

とめ

を体験的に学習 疑似体験教材 レット型パソ 述べ,具体的な に関しては,人 ではなく,受信 それに同期して をイメージで さらに,地球 の実施に合わせ の有用性を評価 ならない。

(基盤研究(C)

文献

//www.google ス日: 2016 年 学会編(2011) アンテナ(実物) R の表示内容 人工衛星(AR 報教育ジャーナル 度をゆっくり メーションが る状態の画面 ート等に追加 習するプログ 材の利用を提 コン上で動作 なマーカや重 人工衛星を固 信用アンテナ てアンテナか きるアニメー 球観測技術を せて,開発し 価するととも 26381213)の e.co.jp/intl 年 3 月 6 日). ) 基礎からわ 操作ボタン ( A R ) R) ル が 面 加 グ 提 作 重 固 ナ か ー を し も の l わ

(5)

かるリモートセンシング,理工図書,pp.255-299. [3] ALOS-2・ALOS,ALOS 解析研究プロジェクト,宇宙航

空研究開発機構,地球観測研究センター, http://www.eorc.jaxa.jp/ALOS/index_j.htm (最終 アクセス日: 2016 年 3 月 6 日).

[4] Seninel-1, European Space Agency,

http://www.esa.int/Our_Activities/Observing_t

he_Earth/Copernicus/Sentinel-1 (最終アクセス 日: 2016 年 3 月 6 日).

[5] 文部科学省(2008) 中学校学習指導要領解説 技 術・家庭編,教育図書.

[6] R. T. Azuma(1997) A Survey of Augmented Reality, Presence: Teleoperators and Virtual Environments, 6, 4, pp.355-385.

参照

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