− 343 − 均衡の保ち方 教科・領域専攻 芸術系コース(美術) 坂 元 皐 陽 作品の要旨 1.研究動機 筆者は中学生の時にアンダーグラウンドの音 楽に魅力を感じ,その頃から今までも頻繁に小 さなライブハウスに足を運んでいる。そこでは, 昼間は真面目に働いている人たちが一変して思 うがままその時間を楽しんで、いる。楽しみ方も 人それぞれ違う。私たちは日常の生活の中で, 心身が緊張を強し、られる状態とそうでない状態 との均衡を保つために自身を無意識にコントロ ーノレしている。 この状態は陶芸制作の造形においても同様な 均衡として感じることがあった。紐作りや韓櫨 成形では,粘土がその形状を保てなくなる寸前 の地点に向かつて粘土を積んだり挽いたりする。 その為には土の厚さ,水分量,制作のタイミン グ等が非常に重要である。今回の制作ではそれ らの技法を試しながら,また技術が未成熟な場 合でも成形の均衡が保てる様,技術技法を組み 合わせることも念頭に,題目の表現を試みた。 ll.大学院での制作について 今回の制作に至るまで,大学院入学後は聴櫨 と紐作りを用いた器制作に取り組んできた。湯 呑や茶碗など大小様々な器を500個強挽いて技 術の向上を図った。 離櫨成形では内側と外側から指で粘土を挟み, 力加減を調節しながらゆっくりと挽き伸ばして し、く。この工程で形が歪んだり,へたったりし 指導教員 栗 原 慶 ないように注意しながら,粘土を均等に薄く挽 きあげていかなければならない。 紐作りでは器の底面となる土台を作り,そこ に紐状の粘土を積み上げて成形を行ってし、く。 この技法では粘土が積層に配置されるので,職 櫨成形とは造形の性質が異なる。しかし積み上 げていくと下部には大きな力が掛かり潰れてし まうので,紐作りの技法でも韓曜と同様に薄さ や乾燥具合を見極めなければならない。どちら の技法も,限界を超えてしまうと粘土は生気を 失い崩壊してしまう。湯呑や茶碗・皿など,大 きさや種類は様々であり,形体によって一つ一 つ均衡を保っていられる限界点は異なってくる。 このような性質を成形の度に手探りで, 自分 の体に経験として染み込ませていった。日常生 活で心身を休ませなければならないタイミング を今まで、培ってきた経験で推測し, うまく休憩 を入れながら生活しているように,轄櫨や紐作 りを用いた造形の反覆作業により,作品の完成 度も同様の成長をしているよう感じた。修了制 作に取り掛かるためにこの500個という数は, 筆 者が技術と経験を積むために必要な個数であっ たと考えている。 器をある程度まで乾かすと高台を作ったり余 計な粘土削ぎ落としたりする「削り」の作業に 差し掛かる。韓櫨の回転を活かして内側の形と 調和するような輪郭線を削り出すことで器全体
− 344 − の均衡を保つよう調整する。商JIりの技術も聴櫨 や紐作りと同様,回数を重ねて土の厚さや乾き 具合のタイミングを掴んでいった。 聴櫨成形の基本となる器作りを通して学んだ ことは多かった。実際に陶芸家の制作を見学し ながら数をこなすことで感覚を養ってきた。技 術もまだまだ未成熟だが,ある程度の水準まで 到達した。