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学識者の危険意識
く道路交通一一それは最も危険なシステムなのだ〉
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300 年に 1 困の事故 自動車工学の大家として有名な Z 教授は,自動車がいかに完全な交通機関であるかを強 調して次のようなことを言われたそうだ. I平均的なド ライパーとして毎日往復 1 時間ずつ自動車を運転する人 を考えると,この人が事故で重傷を負う確率は 300年に 1 回しかない j この表現を読者の皆さんはえらく安全と 思うか,それとも,えらく危険と思うかいずれであろう た状態でどこまでも走行できれば,じゅずつながりにな って走ってもどうということはない.三球・照代の漫才 のように,完全にくっついてしまうことすら可能だろ う. 車間距離をおく必要があるのは,前車との相対速度の 変動が,後続車ほど増幅されるためであることはいうま でもない.先頭をゆく車両は,前方のとっさの状況変化 にいつでも対応できなくてならないが,そのときの制動 距離が速度の何乗かに比例して大きくなることを考慮し なくてはならない. 1flIJ動距離の増大が相対速度の変動の 増大に対応できなくなったとき,追突が起きる.自動車 が短い車間距離で列をなしていると,後続車ほど対応能 力がなくなる.すなわち多重衝突である. 道路が高速化されるにつれて,大規模多重衝突が頻発 する傾向にある. 3 年ほど前の東名高速道路日本坂ト γ ネル事故がよい例だが,この教訓はドライバーのマナー にまったく生かされていない.雪の自のように1flIJ動能力 が低下する気象状況では,必ずといってよいほど多重衝 突が起きている. 自動車の危険度は物理の法則によく従っていると思 う.すなわち,自動車の危険度は,その運動エネルギー に比例するのである.高速走行時の事故ほど危険が大き く,大型車両ほど危険が大きい.時速40 キロで走ってい る重量 10 トンの貨物車は,時速 120 キロの小型乗用車と 同じくらい危険だと考えてよい.ところがこのようによ り危険な車両の制御に関して責任を負わされている人間 は,平均値的に言ってより IQ の低い人種であること (交通取締り当事者にとって,かような表現は許きれな いと思うが.)が,いまひとつの問題であると言えよう. 高速道路での多重衝突は,ほとんどの場合,大型車両が からんでいることに注目してほしい. 道路交通というシステムは,自動車というきわめて危 険な機械の制御を人 1 人の人間に完全にまかせきっ ている.こんな危険なシステムは,ほかのどんな工学シ ステムにも見られないのである (8.Q.) カミ. 別のたとえを考えてみよう.小生宝くじにはまったく 興味がないので, 1 等賞金が何千万円なのかわからぬが, もし 10万本に 1 本の割合で 1 等が当たるとして,ある人 が毎月 1 枚ずっくじを買ったとする.するとこの人が i 等に当たるのは,なんと 1 万年に 1 回の割である.それ でもなおかつ宝くじを買う人は絶えないし,現に 1 等に 当たる人が存在するのである. 宝くじに当たる割合と比較すると,自動車とはおそろ しい乗物だということになる.日本国内だけで自動車事 故で死亡する人の数は毎年約9000人にのぼる.事故で重 傷を負う人は死亡者のほぼ 3 倍とし,毎日自動車に乗る 人が 1000万人いるとすれば z 教授の数字は妥当な値で あることがわかる. Z 教授のおちいった錯覚は, 10 のマイナス何乗という ような微小な確率を MTBF( 平均遭遇時間間隔)に直す と, ドえらく楽観的な数字になるということであった. 自動車事故で命を落とす人は,平均すれば毎日 30人近く にものぼる.これは,心身症で有名になった片桐機長の 日航機事故に相当する事故が毎日どこかで起きていると いうことに等しい. それでも自動車は,安全な乗物と言えるだろうか. 相対速度と車問距障制御工学の大家として有名な Y 主任研究員と,ある会合 -e、たまたま隣り合わせた.話の はずみで小生が, I最近のドライパーは他人のお尻にく っつくようにして走る者が多くて怖いですね j と言った ところ, Y さんは「相対速度が小さければ大丈夫なんじ ゃないですかj と,あまり気にしておられない様子であ る. たしかに,相対速度がほとんどゼロで,しかも安定し ¥111111¥11111111¥1111¥11111111¥11111¥11¥11¥1111¥111111¥1111111111111111111¥11¥1111111111¥1111111¥111111111111¥111111¥111111111111¥1111111¥11111¥111111¥111111¥1111111¥111¥111111111111111¥1111111111111111111111111111111111¥1111111111111111111111111111111¥11111111111111111¥11111111 1982 年 6 月号 © 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず. (59)