Title
地盤改良技術のタイへの技術移転( 本文(Fulltext) )
Author(s)
本城, 勇介
Citation
[土木学会論文集 = Proceedings of JSCE] vol.[540] p.[37]-[48]
Issue Date
1996-06-15
Rights
Japan Society of Civil Engineers (公益社団法人土木学会)
Version
出版社版 (publisher version) postprint
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/24261
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
土 木 学 会 論 文 集No. 540/VI-31, 37-48, 1996. 6
地盤 改 良技術 の タイへ の技 術移 転
本 城 勇 介1 1正会員 PhJ 岐 阜 大学 助教 授 工 学部 土木 工 学科 (〒501-11 岐 阜市 柳 戸1-1) 本 研 究 は, タイ の 首都 バ ンコ クが 位 置 す るチ ャオ プ ラヤ 平 野 に お け る軟 弱 地盤 改 良 工法 の経 緯 に付 い て, 技 術 移 転 と い う観 点 か ら, 調 査 ・研 究 を 行 った もので あ る. タ イ で は1970年 頃 か ら, サ ン ドドレー ン工 法 を 中心 とす る圧 密促 進 工法 に 関す る試 験 工事 が, タ イ 内外 の 事 業 主体 に よ り, 数 多 く試 み られ て きた に も か か わ らず, この 工 法 が大 規 模 な公 共 工 事 で採 用 され る こ とは な か った. これ に対 し, 1990年 代初 頭 頃 か ら普 及 し始 め た プ ラス チ ック ドレー ン工法(PVD工 法)は, 多 くの公 共 工事 で 非 常 な勢 い で普 及 しよ う とす る趨 勢 で あ る. この様 な 両工 法 の普 及 の差 異 を, 文 献 調 査, 現 地 調査(関 係 者へ のイ ンタ ビュー)に 基 づ いて解 明 した.Key Words: soil improvement method, technology transfer, Thailand, sand drain method, prefabricated vertical drain, PVD, pile foundation, soft ground
1. は じめ に (1)本 研究 の 目的 著者 は, 1989年5月か ら1993年3月まで 日本政府派遣の 国際協力事業団専 門家 と して, タイのバ ンコク郊外 にあ るア ジア工科 大学院(Asian Institute of Technology, AIT)の 地盤 ・交通 工学科助教授 と して滞 在 し, 地盤工学 の研究 ・教育 に携わ った. 本研究 はこの 派遣期間中に感 じた問題意識をベ ース としてい る. す なわ ち, バ ンコクの位置す るチ ャオ プラヤ平野 は, 大沖積平野であ り, またタイの政 治経済活動 はこの平野 に著 しく集中 して お り, 軟 弱地 盤処理 は最 も重要 な建設 活動 の課題である. それ に もかかわ らず タイでは, サ ン ドドレーン工法や深層混合工 法 とい った, 日本 では非常 に憎般 的な軟弱地盤改 良工法 が, 少な くと も大規模 な公 共工事ではほ とん ど採 用 された例がな い これ は非常 に 不思議であ った. 一方, 近年世界 的に開発 の盛ん な ジオテ キスタイルを 用 いた工法 は, タイ で も非常 な勢 いで普及す る情勢 で, 既に著者の在タイ中か ら, 試 験的 に高速道路 の高盛土 の 補強に用い られていた. またプ ラス チ ック ドレー-ン工法
(以下, Prefablicated Vertical Drainの略 と してPV D工 法と本論文 では記 す)も, 所 々で使 用の可能 性が 検 討 されてい るとい う話を聞 いた. この様な, 伝統的な地 盤改良工法 と, 新 しい工法 との 普及状 況の差が 何 に起 因す るのかを調べ ることは, 地 盤工学技術上 も興 味あ ることで ある し, また今後の途上 国への地 盤改 良技術(こ れはわが 国の誇 りうる建設 技術 の一つ であることに疑 いはない)の 技 術移転の方法 を考 え る上で も, 重要な問題 である と考え られ る. この度, バ ンコクにおけ るサ ン ドドレー ン工法の歴史 と, 最近 のPVD工 法 の普及の様 子を集 中的 に調査す る 機会が 与え られた ので, この調査結果 と, これ に基づ い た若干の考察を まとめ, ここに発表 し, 学会員の情報 と す ると伴 に, 大 方の批判を頂 きたい次第で ある. 以下, 本章で は本研究 に関係す る一般 的な事項 につ い て述べ る. 2章 で は, サ ン ドドレー ン工法の タイ におけ る導入 の歴史を, 実施 された試験工 事を 中心 にまとめた. 3章 では, 1994年3月に約3週間 に亘 り実施 した現地調査 の内容 を中心 に, タイにお ける最近 のPVD工 法の進展 状況を概観す る. 4章 では, これ ら2つ の章の 内容を も とに, タイへ の地盤 改良工法の技術移転 の問題 につ いて 考察す る. (2)技 術移転 と適 正技術 本 研究の 目的の一つ は, 途上 国へ の技 術移転 という立 場か ら, 地 盤改良技術 を考察す る ことであ るか ら, 一般 的な技術 移転 につ いて, 最初 にま とめてお くことは有益 で あろう.
技術移転(technology tramsfer)と は,「 技術 格差 が ある主体 間で よ り高 い技 術を有す る主体 か ら, よ り 低 い主体 に技術が 移動 し, そ こで技術が普 及 ・定着す る こと」である1). ところで, 途 上国 に対す る技術移転を 考えた場 合, 先進 国の最新技 術を そのまま移転 しよ うと して も, 途上 国の技術水準 資源, 市場規 模, 社会 ・文 化環境等 の違 いのため, その よ うな技術が受領者 側に とって最 もふさわ しい技術 とな るとは限 らない ここに 適 正技術(appropriate technology)と い う概 念が 登場 す る. 経済協力 開発機 構(0ECD)の 定義 による と, 適 正技術 とは次 に挙 げる項 目の内1つ あ るいはい くつかの項 目に よ り特徴 づけ られ る技術の総称 であ る. (1)対象単位 当 た りの投 資額 力沙 ない, (2)生産物単位 当た りの投 資額 力沙 ない, (3)生産 システムが簡単 で地 元の人達 が制御 できる範 囲内にあ る, (4)現地の社会 ・文化環境 に適応 してい る, (5)天然 資源を節約 した もの, (6)低コス トで 生産 されるか, または高い雇用 の創 出効果が あ る. 以上の諸点は, 本研究 で取 り上 げてい る問題を考察す る ときに有益 な視 点を提 供す る. (3)タ イの経済の発 展状況 と建設 東南ア ジア地域 の近年 の著 しい経済成 長は, 周知 の事 実であ る. 表 一1に1960年 か ら1990年の間の タイ の人 口, GDP, 国民一人 当た りのGNPの 変 化 を示 した2). 1980年代後半か ら10%以上 の成 長率で ある. また, 一・人 当た りのGNPも1990年 には1430米 ドルに達 した. この 様 な大 きな経済成長 は, 建 設部門 に もは っき りと表れ て いる. 表一2(a)には, 建 設部門総生産 の経年変化 を示 し た2). 1980年代 後半 には, 毎年20%の 成長 を記録 した. 一方建設部 門をス トックの面か ら見たのが, 表 一2(b)で ある2). 民 間部 門の資本形 成は もちろん大 きいが, 80年 代最後 には, 政府部 門の資本形成 も大き く成長 してい る・ これ ら経済統計か らも, 近年の タイ社会 の物質 的な急成 長と, 建設業が極あて活発 であ るこ とを伺 うことができ る. (4)チ ャオ プラヤ平野の地 形 ・地 質 東南ア ジアでは, バ ンコク, ジ ャカルタ, マニ ラ, ホ ーチ ミン ・シチーな ど多 くの主要 な者肺 が沖積平 野上 に 発達 してお り, 軟 弱地 盤問題 はこの地 域の地盤工学上 最 も重要 な問題であ る. バ ンコクの位 置す るチ ャオプラヤ平野は, 東西約80km, 南北約200kmの大沖積平 野であ る. この平 野の地質構 造 は複雑で, 第三紀終 わ りか ら第四紀 にいろいろな形で堆 積 した地 層が複雑 に互層 を成 して いる. 一番 上にあ る軟 弱粘 性土 はバ ンコク粘土 と して知 られ る, 完新世(約 1万年前 よ り現在までの期 間)に 堆積 した粘土である3). 表 一1 タ イの経 済 状 況の 推移2) 表 一2(a) タ イ 建 設 部 門 総 生 産 の 推 移2) (単位: 百万 パーツ) (1バ ー ッ=5円) 表 一2(b)タ イ 建設 部 門総 資 本形 成 額2) (1パ ー ツ=5円)
図一1には, この論 文で紹介す るバ ンコク周辺の主な プ ロジェク ト・サイ トで得 られた原位置ベ ー ン試 験によ る非排水せん断強度の深度分布 を示 した バ ンコク粘土 の性質は, 全 般に若干過圧密 であ ることを除 けば特 に日 本 の粘土 と異な るもので はない 典型的な地盤で は, 含 水比が100-120%の粘性土が10メ ー トル近 くも堆積 してお り, 自然含水比はほ とん ど液性 限界 と一致 してい る. 塑 性 指数 は60-70程 度 で, 過 圧密 比は1.2-2.0程 度 であ る。 原位置ベ ー ン試験 によ り得 られた非排水せん 断醸 も 1か ら4tf/m黛と弱 い なお, せん断強度が地 表面に近 い 2m程度の厚さに亘 り上 昇 してい るのは, 乾期に地表面が 乾燥 しその結果サク ションが この付近 に生 じ, 結果的に 過圧密状態 とな っているためであ る. これ は, 風化 皮殻 (weathered crust)と 呼ばれ る. 2. サ ン ドドレー ン工法 (1) は じめ に タイで本格 的なイ ンフラス トラクチ ャーの整備 が始 まったのは1960年代の後半か らだ と考え られ るの. この 頃の代表的な工事 として, 1969年に完成 したバ ンナーバ ンパ コン高速道路の建設を挙 げる ことがで きる. この道 路 は(図 一2), バ ンコク と, パ タヤ に代表 される東部 臨海地帯 を結ぶ重要 な道路 であ る. 図一3(a)にバ ンナーバ ンパ コ ン高速 道路の断面図を示 した5). この地 域はチ ャオプ ラヤ平野 の最 も海に近い地 域 に当た り, 櫨 の非排水せ ん断搬 は深度5mの とこ ろで も0.7tf/が程度 であ るに もかかわ らず, 基礎 地盤は 全 く無処理のまま盛土が建設 された. 路 面を洪水か ら守 るため, 標高2.0か ら2.6mを 確 保す るため に1.0か ら 2.0mの 盛 土高 さが必要であ った. 当時のタイの経済 発 展の状況を考える と, このよ うな無処理 の工法が経 済上 やむを得ない選択だ った と推測 され る. 建 設後 相当程度 の沈下が 生 じ, 補修 も行われた よ うであ るが 建設10年 後 にお ける沈下 量 は, 総 沈下 量が 大 きい ところで は a5m近 くに達 し, この時期に は, 雨期 に しば しば路面 が水没する事 態 とな った. このため1980年 頃か ら調査 が 開始 され, 1983年に, 路 面を標高2.4か らa9mに 嵩上 げ するための大幅な 改修 が行われ た. この とき, 道路 の交 通容量 を増すた め と, 工事 中の交 通を迂 回させ る 目的で, 道路両脇 に, 上下2車 線の側道 も一部建設 された. この様 に, 地盤処理 が全 く行われ ない まま建設 され た ため, バ ンナ ーバ ンパ コン高速道路 は建 設後, 現在 に至 るまで維持 ・補修が繰 り返 されて いる. 今 日で もこの 高 速 道路 を走 る と, そ れぞれ2車 線 つつ の4つ の盛 土 が それ ぞれ 異な る高 さを持 ってい いる ことが歴然 と分か る. 補修の新 しい順に, 高 い標 高にあ るの であ る. しか もこ の道路 は, 近年益 々経済発展 の著 しい東部 臨海工業地帯 (ラムチ ャバ ン港, マ タプ ッ ト港)と, バ ンコクそ して 他 のタイの諸 地域 とを結ぶ, 重要 な幹線道路 である. 図一3(b)と(c)に, それ ぞれ1990年前 後に建設 され た トンブ リーパ ク トー高速 道 路22)と, 現在 建 設 中 の ニ ュー ・チ ョンブ リ高速 道路の断 面謝 を示 した. 前者 はプレキ ャス ト杭を, 後者 はPVD工 法を採用 している. 図 一1 バ ンコク周辺の地盤非排水せん断強度分布 表 一3 バ ンコ クで施 工 され た主 な 試験 盛土 工 事
本研究で明 らか に したい ことの一つ は, タイで はなぜ 日本 では軟 弱地 盤改良の標準 的な工 法であ るサ ン ド ド レー ン工法 が採用 され る ことな く, 杭基礎 や さらにPV D工 法 に移行 して しまったのか, その経緯 を技術移転 と 言 う観 点か ら考 察す ることにある. このため, 次節 ではタイで1980年代前半 頃まで に実施 された, 主 な軟弱地盤上 の試 験盛 土工事 を紹介 し, この 問題点を整理す る. 特 にこれ らの工事で用 い られたサ ン ドドレー ン工法の効果の評価 は, その後 のタイにお ける この工法の発展に, 多大 な影響 を与えた と思 われ る. さ らに, (3)節 で は, タイにおけ る盛土へ の杭 基礎 の導 入の経緯を述べ る. さ らに次章 では, PVD工 法につい て考察す る. (2)試 験盛 土工事: サ ン ドドレ ーン工法 の適 用 バ ンコクで, 1980年代 の前半 頃まで に実施 された主な 盛土工事 は, 表-3に まとめ られて いる. これ以後, 特 に1990年前後か らは建設工事 の著 しい活発化 に伴 い, こ の ほかに も多 くの試験盛土工事 が実施 されたが 本研 究 のサ ン ドドレー ン工法導入 の経緯 を明 らか にす る とい う 目的のため には, 1980年代前半 までの工事例が重要 であ ると考え られ る. a)A1T敷 地 造成試験盛 土 学術論文 に表れ る試験盛土で, バ ンコクで最初 に実 施 されたのは, ア ジア工科大学院 の郊外 への移転 の とき実 施 された盛土で あろう6)・7). 計器 を多数入れ た3. 5m高 の盛土が建設され, その挙動が観測 された. しか し, こ の盛土では, 地盤改良 は考慮 されていな い b)ナ コ ンサ ワン高速道路 盛 土 これ と同時期 に, バ ンコク と北部及 び東北部 タイを結 ぶ幹線道路の一 部, ナ コン ・サ ワ ン高速道路の建設 に関 し, ノル ウェイ地 盤研究所(NGI)の 技術 者によって, レポー トが書かれた8). この 中で非常 に簡 単に(一一段落 の記述 に過ぎない), 橋の アプローチ部分の沈下を促進 させ るためにサ ン ドドレー ンを使 用 したが 工事期間 中 に沈下を十分 に促進 させ ることは出来 ず, バ ンコク粘土 の低 い透水性 と, 大 きな2次 圧縮 のため, サ ン ドドレー ン工法はあま り効果 的でなか った と記 述 されてい る. こ こで, 「低い透水係数 」や 「二次 圧密 」が, 具体的 に何 を意味するのか は説 明 されていな い この文 献は, この ほか橋のアプローチ部分の盛土 基礎 に杭基礎 を推薦 した. これ以後の文献が ほとん ど必ず この文献 を引用 してい る ことか ら見 て も, この文献 はNGIと い うこの分野 の ビッグネームの権威 もあい まって, その後 の この地域で のサン ドドレー ンの効果 の評価 に関 しある程度の影響を 与え たと考え られ る、 c)ピ ンクラオ橋試 験盛 土 はっき りと した記録 の残 ってい るサ ン ドドレー ン工法 に関する試験工事 が実施 された のは, 1971年 ピンクラオ 橋のアプローチに関す る ものであ る9). この工事 では約 13メ ー トル の層厚 の 非排水 強度2t/m2の 軟 弱粘性土 に, マ ン ドリルを用 い排 除方式で直径0. 35mの サ ン ドドレー ンが, 千鳥配置 で中心 間隔1.3m, 長 さ13mで 施工 され た 載荷 は6mx6mの 木枠 を用いて, この 中に土 を盛 る こ とに よ り実施 され た. 総 トン数 は約5.8t/m2で ある. また, この木枠は全部 で4っ あ り, 2つ はサ ン ドドレー ンの施工 された範囲 に, 他 の2つ はその範 囲外 に施工 さ れ, その差異が観測 された. 過剰間隙水圧の測定結果 を見 る と, サ ン ドドレー ンを 打設 した部分で は, 約1カ 月後 には測定値 は静水圧に戻 図 一2 バ ンコク周 辺図
り, さらにその後 これよ り下が り続 けてい る. 一方, 無 処理地盤では3カ 月 を経 過 して も完全 に水圧 が逸散す る には至 らなか った. 間隙水圧力瀞 水圧 よ り下 が り続 けた 理由は, この地域 での深 部での地下水の過剰揚水 によ り 地表面に近い帯水層 の水 頭 も既に低下 してお り, サ ン ド ドレー ンは軟弱地盤部 とこの帯水 槽の排水距離 を近づ け る結果 にな ったため と解釈 されてい る. この後 の試験工 事でも, 水 頭低下 した下部帯水層 は, バ ンコクで行われ たサ ン ドドレー ンの効果 の解 釈を複雑 に した10). 一方沈下についての測定結果 を見 ると, 処理部 と未処 理部 に有意な差 は見 られず, 単 純に ドレー ンの沈下促 進 効果 を説得 力を持 って立 証す る ものでは無 か った. この様 な結 果 とな った理 由は, 1)載荷範 囲, 強度 ともサ ン ドドレー ンの効果 を発揮 さ せ るのに十分 な もので はなか った. 2)サ ン ドドレー ンは排除方式 で施 工 されて お り, 十分 な品質を持 っていた力凝 わ しい 3)下部の水頭低下 してい る帯水層 の存在が, 解釈を 困 難に して いる. 等が考え られ る. 図一3 高速道路盛土基礎の変遷 (a) バ ンナ ーバ ンパ コ ン高 速道 路(1960年 代後 半 開 通5)) (b) トンブ リーパ ク トー高速 道 路(1990年 代 初 頭 開通22)) (c) ニ ュ ー ・チ ョ ン ブ リ ・ロ ー ド(建 設 中23))
d)ノ ン ・ヌ ・ハ オ盛土(ノースロツフ空港開発会社) バ ンコクの第2国 際空 港の予定地 であ るノ ン ・ヌ ・ハ オ(図 一1)で, アメ リカの ノース ロップ空港 開発 会社 が 空港建設計画作成 の一環 と して行 った大規模 な試験 盛 土工事 である. 200x40m, 100x40mで高 さがa9mの 長 期沈下観測用盛 土2つ, 破壊試験 用盛土(高 さ34mで 破 壊), 100x40mで深度4mま での掘 削の行 われた ピッ ト等, かな り大規模な試験工事 であ った11). 地盤 改良工法は 試験 されなか った. 1972-74年にか けて行 われた この プ ロジェク トも, ノース ロップ社 の撤退 によ り, 中止 され た4). e)ボ ン ・プ ラチ ュー試験 盛土 海軍の施設の建設のため チ ャオプ ラヤ川 の河 口に位置 す るボ ン ・プラチューで1976-77年に実施 された, 大 規 模なサ ン ドドレー ンの効果を試 験す るための試 験盛土工 事であ る12). 幅34m, 長 さ90mの試 験盛 土が, 一段 目1.1m, 二段 目 α9mの2段 階載荷 で建 設 された. 盛 土施工域 は, 3っ の ゾー ンに分割 され, 無処理部分, それ ぞれ千 鳥状2.5m及 び1.5mピッチでサ ン ド ドレー ンが打設 された ゾー ンよ り 成 っていた. サ ン ドドレー ンは, 排 除方 式で袋 詰 あ した 砂(径5cm)を マ ン ドリルを用 いて17血の深度 まで打設 さ れた この試 験サイ トにおいて も, 地域 的な地下水の過 剰 揚水 のた め, 下 部 の帯水層 で は水 頭が低 下 してお り, 盛土が建 設された軟弱地盤 内の水 頭 もこの影 響に よ り下 部 では低 下 を始め て いた. この様 子 を図一4に 示 した. 工事終了時に計測 された水頭分布 は, 通 常予想 され る静 水圧分布をかな り下 回 り, 下部帯水層 の水 頭低下の影響 を明白に受 けていた. 地表面沈下量 の進行は, 1.5m間隔 でサ ン ド ドレー ンが 打設 され た部分 で第一及び第二段 階載荷で ともに早 く なっているが2.5m間 隔のサ ン ドドレー ン打設 ゾー ンと, 無処理ゾー ンの沈下挙動 には余 り差が見 られ ないばか り か, 第一段階載荷時 にはむ しろ無処理 区間の方 が沈下が 早 く進 んだ さらに間隙 水圧 の測定結果 もサ ン ドドレー ンの効果を明確に示す ものではなか った. 結局, 全般 的 にはサ ン ドドレー ンの沈下促進 効果は, 予期 されたほ ど ではない と判断 され た 玉3). 初期の報告書12)にお いては, サ ン ドドレー ンの効果 が余 り無か った理 由を, 下部帯水層 の水頭低下 に帰 そう と した りしたが, 結局 のと ころは径5c搬の排除方式 で施 工されたサ ン ドドレー ンの不連続等 によ る, 施工上の 問 題による不成 功ではなか ったか と考え られ る4)。 f)ノ ン ・ヌ ・ハ オ試験盛 土(タ イ空港 公団) 1983-84年にバ ンコク新 国際空港の建設 予定 地であ る ノ ン ・ヌ ・ハオで行 われた, せん 孔方 式のサ ン ドドレー ンの性能 を試す ための試験 盛土 工事 であ る1の. 約40m四 方, 高 さ4. 加 の盛 土が 建設 され た. サ ン ド ドレー ンは, ウォータージェッ トを用 いたせん孔方式 で行 われ, 直径 26c組の サ ン ド ドレー ンを, 千 鳥状 に2.0m問 隔 で, 14.5mの深度 まで打設 した. 敷 き砂 は, 0.8m厚で施工 し た. このサイ トの地盤 伏態は, 14-15m付近 まで は軟弱 な粘 性土地盤であ り, その下 に砂分 の多 い層を挟み, 下部 は 硬質粘性 土層であ る. 非 排水 せん断強度 は深度 方向に 図 一4 ボ ン ・プ ラチ ュー試 験 盛土 水 頭 分布12) 図 一5 ノ ン ・ヌ ・ハ オ試 験盛 土 沈下 量 断面 図14)
1-4tf/m2の間に分布 している(図 一1). 盛土は, 2.5m高, 4.2m高 までに二段 階で行われ, 第 一及び第二段階載荷後, いずれ も大 きな沈下が速やかに 発生 している. また間隙水圧の発生 と消散の様子 も載荷 段階 と対応 してい る. この盛 土で発 生 した沈下 は, 著 し く非対 称で あった. その結果を, 図一5に示 した. 東側 では西側 に比べ大き な沈下が発生 してい る. Mohら14)は, これ を次 のように 説明 してい る. このサイ トでは, 他のバ ンコク周辺地域 と同様 に下部の帯水層 は, 過剰な揚水 によ り水 頭が低下 している. 盛土の東側 では, サ ン ドドレー ンが所定の深 度よ りやや深 く打ち込 まれた と考え られ, この結果 この 部分では, ドレー ンが 下部 の低水頭土 層 と直 接っ ながる 結果にな り, 過度 の排水 が粘 性土層 か ら行 われ る結果 と な った. 教訓 と してMohら14)は, 水 頭低下 による付加 的 な沈下を防 ぐためには, サ ン ドドレー ンを深度11m付近 で打 ち止め ることを提案 して いる. いずれ にせよ, この結果 は過去の無処理地盤 で行 われ た試験盛土工事 と比較 され, サ ン ドドレー ンの沈下促進 効果は明 白であ ると広 く認め られ た. (3)杭 基礎を用 いた盛土 バ ンコク周辺 では, 盛 土の基礎 に杭を用 いる ことが多 い15). なぜ この様 にな ったかは定か ではないが, 橋 の アプ ローチ部分 での沈下量 の制御のため杭基礎 を用 いる ことがかな り早 い時期 か ら北 欧系の技術者 によ り推奨 さ れたのは事実であ る8),16). Broms17),18)によれば, 北 欧では盛 上の基礎 に杭 を用 いる ことは非常 に頻繁 に行わ れていると言 うことであ り, この様な影響が大 きか った と推察 され る. 杭 は適 当な大 き さのパイル キ ャップを付 けて使 用す るが, ほとん どの場 合杭頭をつ な ぐよ うなこ とは しない. 先に図一3(b)に示 した トンブ リーパ ク トー高速道路 の 基礎はコ ンク リー ト杭 で設 計 され, 建設 され た. ここで 採用 されたのは22cm角の正方形断面, 12m長の鉄筋 コ ン ク リー ト杭であるが, この様な杭は タイでは現 場で も安 価 に生産 され る. また, 次節で述べ るバ ンコク新 国際空 港の滑走路基礎 も, PVD工 法 と杭基礎が最 後まで有力 な代替案 と して検討 された. ' 杭基礎が タイでなぜ この ように広 く用 い られ るのか著 者 には理解で きない面 もあ るが, 地元 の技術 者の杭に対 す る信頼は相当に高い 杭の施工 の確 実性, 盛土が最大 で も2m程度 とそれほ ど高 くな く水平力 が小 さい こと等技 術 的な点の他 セ メン トはタイ では大 手資本に より大量 に生産 され ているので, この ような生産 者か らの使用 に 対す る圧力 も存在す る らしい 杭 の使用 がサ ン ドドレー ン等他の地盤改良工法 の, 適 用を 阻害 して きた ことは疑 いな く事 実であ る. 3. プラスチ ック ・ドレー ン工法 (1)工 法 の概要 プラスチック ・ドレー ン工 法は, 石油製 品 と して工場 で安価かつ大量に生産で きるため, 近年 ヨー ロンパ や北 米で 急速 に普及 して来て いる工 法であ り,「 般 にPVD
(Prefablicated Vertical Drain)と して, 知 られ てい る. Rixnerら19)に よれ ば, P V Dは1920年 代普及 し始め ていたサ ン ドドレー ン工法の代替 的な工法 と して, ス ゥ エ ーデ ン地盤 工 学研 究所(SGI)の 所長 で あ った Walter Kjellmanが1930年代 に提案 したカー ドボー ドの 核 とこれを包 むペーパ ー フィルター によ りなる, ペー パー ドレー ンよ り始ま った と考 え られ る. この工 法は 1940年代 に ヨー ロ ッパ ではかな り普及 した. 戦後, プラ スチ ックの大幅 な普 及に よ り, 材 料は ほとん どプラス チ ックに置 き換え られ, 現 在では世界 中で50種 類以上 のPVDが 出回 ってい ると言 われて いる. PVDの 長所 は, 経済性, 施工の容易 さ, 粘土地盤へ の撹 乱が比較的 少 ない こと, さらに環境 に与 え る影響力沙 ない こと等が 挙 げ られる. Rimerら19)が 挙げて い る世界の主なPV Dの 生産元は, オ ラ ンダ, フ ランス, アメ リカ, カナダ, 日本 に分布 してい る. 図 一6に 日本で生産 されてい るP VDの 一つ の形状概 念図を示す. 図 一6 PVD概 念 図の 一例 キ ャ ッ ス ル オ ー ド
PVDが 他の工法 と異な る大 きな点 は, PVDが 工業 製 品であり, そのために営 業の方法が 従来 の地盤改良工 法のセールス とは全 く異 な ることで ある. すなわ ち, P VDの セールスではその生産者や代理店 が直接PVDの セール スを行 っている. 彼 らはPVDそ の ものを販売す ることが 目的であ り, 工事 その ものを行 うことは目的で はない この販売方法 は少 なか らず その早 い普及 に影響 を与えている. 著者 のAIT赴 任 中 も, 91年頃か ら特 に ヨー ロッパ系 のPVDの 生産者や その代理店が頻繁 に セールスのため大学を訪れ るよ うにな った. これか ら考 えてもコンサル タ ン トな どにはその設計 にPVDを 取 り 入 れ るよ う相 当な営業努力 が成 された と思 う. また, A ITで は直接 ヨーロ ッパ のPVD生 産者か ら委託研 究を 受 け, PVDの 実物大 での試験 盛土 を実施 した り して い た(Bergadoら20)). 先 にも述べた ように, タイではサ ン ドドレー ン等の伝 統 的な圧密促進 タイ プの地盤 改良工法 は全 くと言 って よ いほど大規模な公共工事 に使 用 された例が なか ったに も 拘わ らず, 1990年代 に突然PVDが 急速な普及 を見よ う と している情勢であ る. 本節 は この間の事情 を著者 が調 査 した範 囲で述べ, その急速 な普 及の理 由を究 明 しよ う とす る もので ある. (2)PVD導 入の経緯 PVD工 法のタイへの導入 につ いては, それが ごく最 近始ま ったばか りであ るため, 学術 的な文献 はほ とん ど 存在 しない ここで は, 1994年3月に行 った, 現地調査 での関係各部署へのイ ンタ ビュー調査 によ って この経 緯 を明 らか に しよ うと試みてい る. イ ンタ ビューを行 った 個人 とその所属は, 論文 の末 尾に記 した. a)ラ ムチ ャバ ン造船 所プ ロジェク ト この工事は, 東部 臨海 工業地帯の 中核 プ ロジェク トの 一つであるラムチ ャバ ン港の建設 に関係す るもので, こ の港 の建設時 に湊深 された軟弱土の土 捨て場 とな ってい た一角 に造船所のた めの土 地を造成す る ことにな り, 約 40ヘ クタール の土地 に2か ら10m堆 積 した, 含水 比が 100%以 上の粘 性土 の圧密 を促進す るためにPVDが 使 用 された ものであ る. 施工 は1990年か ら1992年にか けて 行 われ た. この工事 その もの は, 以 下で述 べ る大規模 な公 共工事 での大幅なPVDの 導入 に直 接関係はな い もの と考え ら れ るが この工事の以前 はタイで大規模 にPVDが 使用 された例 は全 くなか った と思 われ る. その意 味で, 記憶 されて よい工事例 である といえ る. b)高 速道路工事 タイ国の運輸通信省道路局(以 下DOH)は, バ ンコ クを初 めタイ全国の主要道 路に責任を持つ役所 であるが その第7次 道路計画(92-96年)の 中 にバ ンコク外環状 道路(バ ンプ リーバ ンパ イ ン間62km, 2車線 以下外 環状道路 と呼ぷ), お よびニ ュー ・チ ョンブ リ道路(バ ンコクーチ ョンブ リ間83KM, 4車線 以下NCRと 呼 ぶ)の 建設が ある2). これ らの道路位 置は図-2に 示 し た. この二つの路 線は, ほとん どがチ ャオプ ラヤ平野 の 軟弱地盤 ヒを走るため, 軟弱地盤 対策 は最 も重要な設計 ・施 工上の問題点の一つで あるが, ここで大規模なPV Dの 導入が既に決定 してい る. 工事 は現在詳細設計を ほ ぼ終了 し, 工事に と りかか ろ うと して いる状態 である. これ らの工事へ のPVDの 導入 の経緯 について は, N CRの フィージ ビ リテ ィー ・スタデ ィー(FS)の 時点 で, タイ側か ら出された杭を用 いた道路 の基礎 工事の費 用が割高であるこ とを, この工事 に ロー ンを提供す る国 際機 関か ら指摘され, これ に代わ るよ り低廉な工法 と し てPVDが コンサル タ ン トよ り提 案された と言 うことで ある. 先 に述べた ように, タイで は伝統 的に軟弱地 盤上 の盛土を補強す る場 合には杭を用 いてきてい るが, これ がこのNCRの プロジ ェク トの ときは じめて国際機関か らFSの 時点 でコス ト高を指摘 され, 検討 を余儀 な くさ れ たことは興 味深 い コ ンサ ル タ ン トが1991年 夏 頃 に行 った検 討 で は, 2. 7mの 盛土高 さを想定 し, 次の2つ の場 合の コス ト比 較 を行 って いる. 1)幅約50mの 盛土の基礎 地盤 にPVDを13m, 10mの 深 さに, それ ぞれ 四角 形状に1.1, 1.2および1.3mピ ッ チに打設 し, 0.4mの サ ン ドマ ッ トを建設 し, さ らに一 層の ジオテキスタイル あるいは ジオ グ リッ ド補強 を行 っ た場合. 2)同様 の幅 に, 12mあ るいは14mの 長 さの0.22x 0.22m角 のプ レキ ャス ト杭を, 四角形状2m間 隔 に打設 し, この上に応力を分散 させ るための0.6m厚 の ソイル セメ ン ト層をつ くった場合 につ いて, パ イルキ ャプをつ けた場合 と付けない場合. さ らにソイルセ メ ン ト層の代 わ りに, ジオテキスタイルや ジオグ リッ ドを用 いた場合. 前者は後者 よ り当然 沈下量 は大 き くな るが, これ によ る盛 土の増 加量 もコス ト比較では考慮 されてい る. コス ト比較の結果 ではどのケー スを比べ て も, 後者の コス ト が前者のそれの2倍 以上 にな り, 前者 の優 位は動か しが たか った. これを機 にPVDの 採用が決 ま った と言 うこ とである. 詳細設 計の結果提案 されてい るNCRの 典型
的な断面を図一3(c)に示 した. 道路の総延長の内軟弱地盤が基礎 とな る部分は相当程 度 に達すると考え られ るので, PVDの 施 工量は膨大な もの となるはずである. 従来か ら用 い られてきた杭基礎 の代替工法 と してPVD以 外の工法が, 比較の対象 とな らなか った. c)バ ンコク新 国際空港 の建設 現 在のバ ンコ クの 国際空港 で ある ドンムア ン空港 は, 2000年 頃 に満 杯 とな る予測 で, このため タイ政府 は 1991年5月にバ ンコクの東約25kmに あ るノ ン ・ヌ ・ハ オ に第2国 際空港 を建 設す る ことを閣議決定 して いる。 これは, 敷地約3千ヘ クタール に3千か ら4千m滑 走路4本, 4つ の国際夕一 ミナル ビル と1つ の国 内ター ミナル ビル を持つ規 模になる予定であ る2). この特に滑走路部分 の軟弱地 盤改良工法 と して, 当初 杭基礎が考え られていたが, 1992年秋 に地元 コ ンサルタ ン トが ノルウェー地盤 工学研究所(NGI)の 協力の下 にまとめた報告書でPVDが 推薦 され, それ以来PVD が採用 されることが ほぼ決定 した と聞いた. 現在何種類 か のPVDを 使用 した試験 盛土工 事が 実施 され てい る. この工事 も規模が大き く, PVDが 全面的に採用 されれ ば非常 に大規模な ものになる ことは想像 にか た くない d)鉄 道建設プ ロジェク ト タイはその道路の発 達に比較 し, 鉄道 の発 達は極めて 遅れてお り, 鉄道へ の依 存率 も小 さい. しか し最近鉄道 の効用を見直す動 きもある. 1992年よ り, 東部 臨海工業 地帯 と北線や北東線 を短絡す るクロ ン ・シップガオーグ エ ンコイ間85kmの 建 設工 事が着手 され, その中で軟弱 地盤 対策と してPVDが 採用 され, 既 に93年夏 頃か ら工 事で用い られてい る. 著者の入手 した情報 では, 厚 さ 12-14mの 軟弱地盤. ヒに6m高 の盛土を急速 に行 うために PVDが 採用 された と言 うこ とであ るが 施工管理 の不 行 き届 きや, 施工者がPVDの 施 工 に慣れて いない等の 理由で, 一部 に盛土破 壊が発生 して いる らしい PVDが 採用 された経緯 は, は っき り しな いが, 施工 はタイで最大 の施工会社が行 い, 使用 して いるPVDは, オラ ンダ製 である. 4. 考察 本章では, 先の2つ の章で述べ たよ うなサ ン ドドレー ン工法 とPVD工 法 の タイにお け る伸展 の経緯 を基 に, なぜ前者 はほとん ど普及せず, 後者 が著 しい速度で普及 しようと して いるのか を考察す る. (1)タ イ社会の変化 まつタイの経済が著 しい成長を 開始 したのは, 80年代 後半 であ った ことを指摘 してお きたい 表一1に も示 し たように, タイの一人 当た りのGNPが は じめ て1000米 ドルを越えたの は1988年で あ った. このよ うな社会の経 済 的な高度化に伴 い, 高速道路 な どイ ンフラ構造 物 に対 す る社会 の要求 も, 高度 化 した ことは当然で あろう. 例えば 図一3(a)に示 した, 無 処理地盤 の上 に盛土 し 建設 された, バ ンナーバ ンパ コ ン高速道路 のよ うな低価 格低 品質 な工 法は, 採用 できな くな った と考え られ る. (2)杭 基礎 による盛土の建設 このよ うな時代 の要 請に対 し, 高速 道路局が選択 した 工法は, 1990年代初頭 に完成 した トンブ リーパ ク ト高速 道路(図 一3(b))で 採用 された杭基礎 を中心 と した工法 であった. ここで, 杭 工法 が採用 された理 由は, 以下 の よ うな もので はなか ったか と著者 は推測す る. 1)杭は既に橋への アプ ローチ部分 な どで高速 道路の盛 土基礎 と して実績が あった. 杭 とパ イル キ ャップを組み 合わせ た構 造 な ど設計 の方法 もある程度確 立 してい た. (これ は遡れば;先 に2章(3)節 で述べ たよ うな, 北 欧の技術 者達の努力 もあ ったわ けである. ) 2)杭基礎 は東 南ア ジアで は, 盛土基礎 と してかな りの 実績 を持 って る18). この他 セメ ン トは タイ 国内で大手資本 によ り大量生 産 されてお り, その ような材料 を大量 に使 用す る杭工法 は, 歓迎 され たの で はない か とい う意見 を, イ ンタ ビュー中に聞いた. (3)サ ン ドドレー ン工法の 問題 点 一方 この時点で, サ ン ドドレー-ン工法が 採用 されな か った理 由は, この工 法が社会 的に十分に効果を認知 さ れた工法 となって いなか った と言 うことが大 きいが, 先 に2章 で述べた試験工事 例か ら考察 され るサ ン ドドレー ンの低 い効果 に関す る地 盤工学的 な問題 点と して は, 次 のよ うな ものが 挙げ られ る. 1)ノン ・ヌ ・ハオ の例 を除いて は, 排 除方式の施工法 が採用 されたため, ドレー ンの連続性, 地盤の撹乱 によ る井戸抵抗の増加等 の問題 点が あ った4). 2)タイでは道 路盛 土は, 道 路を高架 に して交通を立体 化す るとい う目的のため ではな く, 洪水 時に路面の水没 を避 けるとい う目的の ため盛 土が行われ る. このため盛 土 高さは2. 5m前 後で, それほ ど大 きな荷 重を軟弱地盤 に与え るわ けではない また, バ ンコク粘土 は若干過圧 密 にな ってい る場合が多 い 従 って, 試験工 事で も大 き な過剰間隙水圧が発生 し, これを ドレー ンが効果的に排 水す るほど大きな荷重が掛 け られたか は疑 問であ る. 図 一7にLerouei1ら21)が提 唱 してい る, 盛 土下の鉛直応力
増 分と発生過剰間隙水 圧の関係 をプ ロ ッ トす る ことによ り, 地盤の状態を判断す る図を示 した. 彼 らは, このプ ロ ッ トで勾配が1.0に近い状態, すなわ ち発生す る過剰 間隙水圧増分が 鉛 直荷重増分 とほぽ等 しくな るほ ど地 盤 が降伏 に近付かなければ, サ ン ドドレー ン等の圧密促 進工法 は十分効果 的でない と して いる. プ ロ ッ トされ た ピンクラオ橋 とボ ン ・プ ロチ ュー試験 盛土の過剰 間隙水 圧は, Lerouei1ら21)が指摘 している限界的な勾配(約 1.0)か らはか な り低 い こと力扮 か る. この ように試験 盛 土における荷重度が比較 的低 か った こと も, バ ンコク ではサ ン ドドレー ンが余 り効果 的でない と言 う評価 に な った一 因である と考 え られ る. このほか, 非技術的な理 由 としては次の よ うな ことが 考え られ る. 3)バ ンコク地 域にお ける過剰 揚水 に伴 う下部帯水 層の 水頭低下 の影響が サ ン ドドレー ンの効果の判定 を混乱 させ た面 が ある. また, ドレー ンを深 く打 ちす ぎる と, かえ って盛土荷 重によ り生 じる沈下 量以上の, 過度 の沈 下を引 き起 こす と考え られ た. 4)バ ンコクでは, きれいな砂 は山地 か ら運搬す る必要 があ り, 100km近い輸送 を必要 とす るため, それ ほど低 廉ではない. 以上のよ うな複合 的な理 由のため, サ ン ドドレー ン工 法は, タイでは普及 したか ったので はないか と考えて い る. (4)PVD工 法の急速 な普及 PVDの 大幅な採用 のき っかけ とな った事 実が, ロー ンを提 供す る国際機 関のニ ュー ・チ ョンブ リ ・ロー ドの フィージビリティー ・スタデ ィーで, 杭基礎 で設計 され た盛土工事 が高価す ぎる と指摘 され たこ とに始ま ってい る というのは興 味深い 経済 ・社会 的な伸展 の結果, よ り高 品質 のイ ンフラ構 造物が求あ られていたの であるが, この ような どき杭基 礎の代替工法 と して, PVD工 法が採用 され たこ との背 景 には, PVDと い う材料 の, サ ン ドドレー ン等他 の地 盤改良工法で用い られ る砂等 の天 然の材料 とは, か な り 異な った点があ った と著者 は考えて いる. 先に3章 で も述べた ように, PVDは 工業製 品であ り, この製品をセールスす るの は, その生 産者(石 油化学関 連)も しくはその代理 店であ る. 世界 的な ジオテキ スタ イル の普及 に も類 似 した背 景が あ ると思 うの であるが これ らのセール ス主体 は, 製品を販売す る ことを当然の ことなが らその第一 目標 と してお り, 建設 プ ロジェク ト を入札 ・落札す ることが第 一義的な 目的ではない. 従来 の地盤改良工法 は, 事業 主体, 設計者 または施 工業者が, 建設プ ロジェク トを効率 的に行 うため の手段 として考え, メ リッ トが あれば採用す る とい う方式で あったの と比べ ると, か な り異な る. 特 に剛 係 のPVD生 産者 は, 東 南ア ジアを将来性のあ るマーケ ッ トと考え, 相 当程度 の 営業努力が既に行 われて いた ことは, このPVDの 早 い 普及 に大 き く寄与 した ことに, 疑 いの余地 はない すなわ ち, タイでのPVDの 急速な普及 の理 由 として, 上記2点 を要約す ると, 1)インフラ構造物 の高品質化 と, これ に合 う最 も低廉 で効果的な工法 として, PVD工 法 が選ばれた. この と き国際機 関の行 ったFSが 一つ の きっか けとな った。 2)PVDに 関す る非常 に積極 的なセールス活動が, 主 図-7 盛土工事における鉛直増分応力 と過剰間隙水圧の関係 ピ ン ク ラ オ ポ ン ・プ ラ チ ュ ー ノ ン ・ヌ ・パ オ
に欧州の製造者や その代理店 によ り行われ ていた. この他の副次的な理 由と して, 3)PVDは, 石 油産 業の副産物で あ り, 生産 設備 もそ れほ ど大がか りな ものではないので, 国内生産 が容易 に 可能にな る. すなわち輸入 品とはな らない 4)工業製品であ り, 杭 の施 工に親 しん できたタイの事 業主体, 設計者, 施工者 にと っては, 違和感 の少 ない工 法である. (これ は, イ ンタ ビューの とき聞いた意見で ある. ) しか し, PVD工 法 の採用 に関 しては問題 点 も多 い 技術的な問題 点と して は, 施工者 が圧密の進行 に伴い盛 土高 さを管理す るとい った, 圧密促進 工法 にほとん ど経 験がないため, 特に導入段階で適切 な施 工管理が行われ るかは, 十分 に注意す る必要が ある と思 われ る. 事実 ク ロ ン ・シップガオの鉄 道盛土の建設工事 では, 施工者の 管理能力の不足によ り, 盛土を急速 に施 工 しす ぎて, 一 部崩壊を生 じて しまった とい う話 も聞いた. また, PVDに つ いて本格的な試験 盛 上工事はタイで はまだ実施 された例 はな く, (AITで 小規模 な盛土試 験は行われてい る20)), バ ンコク粘土 を対象 としたこ のよ うな試験工事 を行 い, PVD工 法の効果 を周知 させ てお く必要 があ ると思われ る. 5. むす び 本研究では, タイ にお けるサ ン ドドレー ン工法 とプラ スチック ドレーン工法(PVD工 法)の 導入の経過を調 査 し, その差異を明 らか にす るこ とによ り, 途上国への 地盤改 良技術 の技術移転 問題 を考えた. 両工法は ともに軟弱粘 性土地盤 の圧密 を促 進す ること を狙 った工法 であ り, 地盤 工学 的な原理 に違 いはない またバ ンコク粘土が圧 密促進工法 に特 に適 さない粘 性土 であるという事実 はない ところで前者の導 入過程では, 試験工事 な どでい くつ かの技術的な不手際(排 除方式 の施工, 低 い載荷重度 等)が あ り, その効果を 明確 な形 で示す ことが 出来な か ったことが 普及 しなか った一つ の原因 と考え られ る. また, 導入の タイ ミングが, タイの経済 発展の状況 に マ ッチ した ものでなか った. タイの社会 ・経済 の伸展 に 伴い, 高品質のイ ンフラ構造 物が要求 され る時代 とな っ たが サン ドドレー ン工 法は結局 タイ では普及せず に終 わ ると考え られ る. 一方PVD工 法 は, タイで社会 的なニ ーズが生 じた と き, ち ょうど世界 的なマーケ ッテ ィ ング活動 がPVDの 製造者やその代理店 によ り盛 ん に行われ てい る時期 に当 た り, その夕一ゲ ー ッ トの一つ とな った と考え られ る. しか し, PVD工 法 につ いては, 次 の2点 を今 後の 問 題点 と して指摘 して おきたい. 1)タイの建設工 事では圧密促進 工法 はそれ ほ どポ ピュ ラーな工法 ではな く, 施 工業者 な ども経験力沙 ない工法 なので, 今後施 工管理 法等 につ いて注意深 い導入 が成 さ れない と, その効果 を十分 に発揮す ることが 出来 ない と 思われ る. 2)バ ンコクの盛 土工事 では, 盛 土高さは それ ほど高 く はない(2.5m前 後). さらに, バ ンコク粘土 は若干過 圧密状態 にある場 合が多 い. この 載荷荷 重度では, 圧密 促進工法が十分効果 的に働 くほ ど高 い荷 重度を与え, 過 剰 間隙水圧を発揮 させて いる力凝 わ しい プ レローデ ィ ング工法の併用等 も検 討 され る必要 があ る. 地盤改良工法の技術移転 において も, その社会の経=済 発展の状況に合わせた タイ ミングの良 い移転 は, 成功の たあの不可欠の条件であ る. サ ン ドドレー ン工法の導入 は, その意味で若 干時機 尚早 であ った と思 われ る. しか し, 同時にサ ン ドドレー ン工法 の導入で は, 排 除方 式の 採用, 載 荷 重が 低か った等, 技 術 的に稚拙 な点 もあ り, これがサ ン ドドレー ンはバ ンコク粘土 に は効果力沙 ない とい う間違 った印象 を, 地元技術 者に与えて しま ったの も事実であると思 われ る. この よ うな点は技術移転 に当 た っての土木 技術 者の責任で あ り, PVD工 法 の導 入で, この轍を踏 まないよ うに しなければな らない. 謝辞:本 研究 は, (財)前 田記念工学振 興財団の研究 助成 を受けて実施 され た研究,「 土木工 学技術の途上 国 へ の技術移転に関す る問題 点 と対策」 であ ることをお断 りし, 研 究助成 に対 し深謝の意 を表す次第で ある. また, 本文中で も述べ た通 り, 本論文 で述 べた多 くの ことは, 1994年3月 に実施 した現地研究調査 によ って得 られた情報に基づいて いる. ここに調査 に御 協力頂いた 方 々の名 前を挙 げ, 深謝 の意を表 したい
A. S. Ba lasubramaniam, D. T. Bergado, N. Phien-wej, 工 旺Sear(以 上A I T), Yongyuth工, Teerachart R.
(以 上 タ イ 高 速 道 路 局), Noppom P. (EGAT) Thanu H. (王 立 潅 溜 局)Warakom M. (カ セ サ ー ト大 学)Sura-chat S. (チ ュ ラ ロ ン コ ン 大 学), KPetche (キ ン
グ モ ン ク ッ ト大 学)V. Charumas (General Engineering Public Co. Ltd. ) 久 保 寛 治(J ICA専 門 家), 臼 井 安 雄
(タイ・テノックス), 坂 内 憲 之(タ イ日本 コンクリート), S. F. Chan (Pilecon Engineering BHD) , E. H. C. Chan (Nylex
(Malays ia)Berhad), S. K. T. Law (L&M Geotechnic SDN. BHD), ZC moh C. T. Chin (以 上Moh and Associ-ates Inc. ) 参 考文 献 1)海 外経 済 協 力 基 金 開 発 援 助 研 究 会: 経 済 協 力 用 語 辞 典, p. 247, 1993. 2)水 谷 四郎 編 集: 1992か ら1993年 版 タ イ 国 経 済概 況, バ ンコ ク 日本 人 商 工 会 議 所, pp. 78-87, pp. 273-278, 1993.
3)ESCAP (Economic and Social Commission for Asia and Pacific): Geological Information for Planning in Bangkok, Thailand, in Atlas of Urban Geology',
Vol. 1, pp. 24-60, United Nations ESCAP, 1988. 4)Moh, Z. C.: Geotechnical engineering in Southeast
Asia, past, present and future, Geotechnicai neering, Vol. 19, pp. 1-72, 1987.
5)Parnploy, U.: Deformation analysis and settlement prediction of Bangna-Bangpakong highway (section 1), ALT M. Eng. thesis, 1985.
6)Kangsasitiam, M.: A comparison between oedometer and stress path methods for settlement analysis under undrained loading conditions, AIT M. Eng.
thesis, 1970.
7)Moh, Z. C., Brand, E. M. and Nelson, J. D.: Pore pressure under a embankment on soft fissured clay, Proc. Conf. on Performance of Earth and Earth-sup ported structures, Purdue Univ., W. Lafayett, Vol. 1, pp. 243-272, 1972.
8)Eide, 0.: Geotechnical problems with soft Bangkok clay on the Nakhon Sawan highway project, NGI publication No. 78, 1968.
9)Ciridon, L A.: Performance of sand drain at the Chang bridge, ALT M. Eng. thesis, 1972.
10)本 城 勇 介: 東 南 ア ジア 地 域 に お け る 地 下 水 の 過 剰 揚 水 に よ る地 盤 沈下 の現 状 と対 策, (財)産 業 地 質 科 学 : 研 究 所 研 究 年 報 第5昇. nn. 177-1臼7. 1994. 11)Boonsinsuk, P.: Stability analysis of a test
embankment on Nong Ngoo Hao clay, ALT M. Eng. thesis, 1974.
12)Mallawaaratchy, G. U.: Performance of sand drains in soft clays, ALT M. Eng. thesis, 1978. 13)Balasubramaniam, A. S. B. and Bergado, D. T.
Geotechnical problems related to construction activities in soft Bangkok clay, ISSMFE-NUS-AIT Seminar on soil improvement and construction
technique in soft ground, Singapore, pp. 174-185, 1984.
14)Moh, Z. C. and Woo, S. M.: Preconsolidation of soft Bangkok clay by non-displacement sand drains and surcharge, Proc. 9th SEA Geotechnical
Conference, Vol. 2, pp. 8/171-184, Bangkok, 1987. 15)Balasubramaniam, A. S., Y. Honjo, L. K. Hong, N.
Phien-wej and D. T. Bergado: Ground ment techniques in Bangkok subsoils, Proc. neering for coastal development, Kouzai Club, pp. 65-104, Bangkok, 1989.
16)Holmberg, S.: Bridge approaches on soft clay supported by embankment piles, Geotechnical Engineering, Vol. 10, pp. 77-89, 1978.
17)Broms, B. B.: Problems and solutions to tions in soft clay, Proc. 6th Asian Regional Conference SMFE, Singapore, Vol. 2, pp. 3-38, 1979. 18)Broms, B. B.: Soil improvement methods in South
east Asia for soft clay, Guest lecture, Proc. of 8th ARC SMFE, Kyoto, 1987.
19)Rixner, J. J., S. R. Kraemer and A. D. Smith: Prefabricated Vertical Drains, Vol. 1,
ing Guidelines, U. S. Department of tion, Report No. FHWA/RD-86/168, 1986. 20)Bergado, D. T., J. C. Chai, M. C. Alfaro and A. S.
Balasubramaniam: Improvement Techniques of Soft Ground in Subsiding and Lowland Environment,
Asian Institute of Technology, 1992. 21)Lerouei 1, S., Magnan, J. P. and Tavenas, F.
fitanknaents on Soft Clay, Ellis Horwood Limited, 1990.
22)Balasubramaniam, A. S., D. T. Bergado, N. Logana than, T. H. Sear, N. Phien-wej and Y. Honjo: Geo technical consideration in infrastructure pects of coastal development in Thailand, 1993.
(1995. 5. 15受 付)
TRANSFER OF GROUND IMPROVEMENT TECHNOLOGY TO THAILAND Yusuke HONJO
A study is made to investigate on the development of soft ground improvement technologies in Chao Phraya Plain where Bangkok is located. In Thailand, quite number of test constructions on sand drain method have been carried out by many domestic and foreign agencies, since early
1970th; however, this method has never been applied to any large scale government projects. On the other hand, prefabricated vertical drain(PVD) method, only started to be introduced to this country in early 1990th, is now quickly popularized, and adopted in the large scale government projects such as the highway constructions and the new international airport land reclamation work. This study focuses on finding out the reasons why the considerable differences have been made in the development of these two ground improvement technologies from the stand point of technology transfer based on interviews to the concerned personnel and literature review.