Title
統計的逆問題(フィードバックシステムにおける同定)に
関する研究( はしがき )
Author(s)
岸田, 邦治
Report No.
平成8年度-平成10年度年度科学研究費補助金 (基盤研究
(C)(2) 課題番号08680329) 研究成果報告書
Issue Date
1998
Type
研究報告書
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/340
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。はしがき
本報告書は「統計的逆問題(フィードバックシステムにおける同定)に関する研究」な る研究課題に対して平成8,9,10年度の科学研究補助金(基盤研究(C)(2):課題番 号08680329)を受け進められた研究の成果をまとめたものである。 フィードバックシステムに関する初期の主な研究は1972年に出版された赤池・中川 著の「ダイナミックシステムの統計的解析と制御」にまとめられている。1980年弓削こ はAndersonらの制御的研究もあるが、フィードバックシステムに関する研究が実用性を 持ったのは、上記の本にある自己回帰モデルを用いたソフトウェアとしてのTISACの 登場による。ところで、OECDのNEAが主催した原子炉雑音国際会議にてフィードバ ックシステムの開ループ伝達関数を同定するベンチマークテストが出題された。しかし、 このベンチマークテストの同定結果は自己回帰モデルを用いられたが、満足のいく一致が 見られず、この不一致の原因を調べることが残された問題となっている。そこで、フィー ドバックシステムにおける統計的逆問題の観点から、本研究は自己回帰モデル手法と相補 性をもつ新たな統計的解析手法の確立をめざすものである。 ガウス定常過程で記述されるフィードバックシステムにて、開ループ伝達関数の同定問 題を解くことはそのイノベーションモデルに付随するRiccati方程式が適切な安定特解を 持つ時の条件を求めることであった。ところが、その十分条件の一つである最小位相性を 持つフィードバックシステムから数値的に同定された伝達関数はフィードバック構造のた め高次の次数を持ち、極と零点の打ち消しが発生していた。そこで、適切な手法による低 次元化を実行すれば開ループ伝達関数は正しく同定されるはずである。このようにして、 入出力数が等しい正方のフィードバックシステムにおける統計的逆問題の決定版が完成 し、それを原子力学会欧文誌に掲載した[研究発表(1)-1]。さらに、開ループ伝達関数が 本来同定されるべき最小位相の条件下にあるフィードバックシステムを自己回帰モデルで 同定した場合、フィードバックモデルと同定自己回帰モデルとのモデル構造の違いから、 同定された開ループ伝達関数にはモデル次数依存したバイアスが残っていることを明らか にし、第11回システム同定に関する国際自動制御連盟学術会議(SYSID-97)にて発表した [研究発表(1)_2]。 入出力数が等しい正方フィードバックシステムにおける同定問題ではシステムと時系列 データから構築できるイノベーションモデルとの対応付けは容易であったが、実際の問題 への適用を考えると実機プラントの多様性から入出力数が異なる非正方フィードバックシ ステムにおける伝達関数同定を考える必要がある。そこで、等価イノベーションモデルに 付随したRiccati方程式にて一般逆行列を用いた拡張を試み、そのインノベーションモデ ルは擬正方となることを原子力学会誌に指摘した[研究発表(1)-3]。 初年度の研究にて時系列モデルの低次元化手法を、次年度では入出力数が異なる非正方 のフィードバックシステムにおける同定問題を考察した。ところが、上述しように入出力 数が等しい正方フィードバックシステムの同定問題ではシステムと時系列データから構築 されたイノベーションモデルは互いに正方モデルであるためその対応付け容易であった が、入出力数が異なる非正方フィードバックシステムにおけるイノベーションモデルは擬 -1-正方であるため同定問題は容易でない。そこで、最終年度では3重のフィードバック構造 を持つシステムに考察の対象を絞って議論を深め、非正方フィードバックシステムの擬正 方イノベーションモデルが持つ数理を考察し、開ループ伝達関数が誤同定される要因を解 明した。つまり、3重フィードバック構造を持つシステムを観測する時、3出力変数の組 み合わせから対象のシステムをスカラ、ベクトル版モデルとして同定する場合と、出力の 一部が観測されない縮約版モデルとして対象のシステムを同定する場合の3種類の(擬) 正方イノベーションモデルにおける同定問題について考察した。さらに、非正方システム では伝達関数が可同定となるための「一般化最小位相性」条件が必要であることを一般逆 行列を用いて解析的に示し、それらをスカラ、ベクトル版における同定問題として確率シ ステムシンポジウムに発表した[研究発表(1ト4]。縮約モデル版における同定問題として 非正方システムを同定した時に得られる擬正方イノベーションモデルの数理を考察し、そ れらを情報理論とその応用学会にて報告した[研究発表(1)-5]。 以上の研究から、定常なフィードバックシステムにおける開ループ伝達関数の同定問題 に関する道筋をつけられたので、本報告書が脳波とか原子炉ゆらぎにおける診断工学への 一里塚となることを希望している。 平成11年3月 岸田邦治 研究組織 研究代表者 岸 田 邦 治 (岐阜大学工学部教授) 研究経費 平成8年度 平成9年度 平成10年度 計 900千円 600千円 600千円 2,100千円 研究発表 (1)学会誌(国際会議発表を含む)等 1.KuniharuKishida,NumericalStudyonIdentificationofTransferFunctionsinaFeedback System,JournalofNuclearScienceandTechnology,Vol・34,No・12,pP・1115-1120,1997・ 2.KuniharuKishida,Identi且cationofTransferFunctioninaFeedbackSystemandAutoregressive Analysis,ProceedingsofthellthIFACSymposiumonSystemIdentification(SYSID-97), vol.3,pP.1437-1442,1997.(IFACSystemIdenti丘cation,1381-1386,1997) 3・KuniharuKishida,IdentificationofTransferFunctionsinNon-SquareFeedbackSystemsl 完t=J±;呈=Jヒ亡;itjii,JournalofNuclearScienceandTechnology,Vol・35,No・6,pp・462-464, 1998. 4.KuniharuKishida,ModelingofFeedbackSystemandIdentificationofTheirTransftrFunctions AbstractsinProcedingsofthe30thISCIEInternationalSymposiumonStochasticSystems - 2