Title
慢性閉塞性肺疾患患者の栄養アセスメントに関する研究( 内
容の要旨(Summary) )
Author(s)
森, 厚
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第932号
Issue Date
1994-12-21
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/15341
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氏名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 厚(岐阜県)
博
士(医学)
乙第 932 号 平成 6年12
月
21日学位規則第4条第2項該当
性性閉塞性肺疾患患者の栄兼アセスメントに関する研究
(主査)教授武
藤
泰
敏
(副査)教授 野 間 昭 夫 教授藤
原 久 義 論 文内
容 の 要 旨 慢性閉塞性肺疾患(chronicobstructivepulmonarydisease:COPD)患者では,その経過中に著しい栄養障害が認め られ,換気不全に陥る症例がしばしば経験される。しかし,COPD患者の栄養状態の詳細な評価や,換気不全の進展と栄養障 害の関連性など基本的な問題はいまだ十分に解明されてはいない。 そこで.申紆者はt身体紬軋血液生化学的検査,アミノ酸分析やt経口エネルギー摂取状態を反映する指棲とみなされるapolipoprotein A-Ⅳ(apo A-Ⅳ)を測定することにより.COPD患者の栄養アセスメントを試み,呼吸機能,呼吸筋力
などとの関連性,さらに.患者への附加的栄養素投与(捕食)およびトレーニング(腹式呼吸)が栄養状態の改善におよぽす 鱒果について検討した。 対 よ 対照群(Control群)12例,COPD(肺気腫)群24例,後者はroom air下のPaO2が60Torrを超える14例をⅠ群,ま たPaO2が00Torr以下の10例をⅡ群(慢性呼吸不全)とした。 方 法 Ⅰ)栄兼アセスメント1.身休計測1)体重・身長比(%idealbodyweight:%IBW)2)上腕三頭筋皮下脂肪厚(triceps
Skin fold thickness:TSF)3)上腕囲(arm circumference:AC)および上腕筋囲(arm muscle circumference:A
MC)2.血焚遊離アミノ酸 3.血液生化学的検査1)血清総蛋白(TP),血清アルブミン(Alb),トランスフェリン (Tf),レチノール結合蛋白(RBP),ブレアルプミン(PA)2)血潮旨質,総コレステロール(T-Chol),中性脂肪(TG),H DLコレステロール(HDL-Chol)3)アポリボ蛋白A-Ⅳ 4.%肺活JL(%VC)および1秒率(%FEVl.。)5.呼吸筋 力(PImax)6.血液ガス分析。 Ⅱ)附加的栄養素投与(捕食)およびトレーニング(腹式呼吸)が栄養パラメータ,呼吸機能におよぼす効果 1.COPD群のⅠ群,14例に対して,クリニミール⑳を1日400kcal(400ml),2か月間捕食させ.その前後での各種栄養パ ラメーターを比較検討した。14例中4例は途中で消化器症状が出現し投与中止となり,最終的に評価可能だったのは10例であっ た0また,COPD群のⅡ群,10例に対しても同様なトライアルをしたが,消化器症状出現による投与中止例が8例にのぽり, 今回の検討からは除外した。 2.COPD群24例に対して,diaphragmaticbreathingいわゆる腹式呼吸を4週間施行し,その前後での各種パラメーター を比較検討した。 成 績 Ⅰ)栄養アセスメント:身体計測においてはⅠ%IBWは対照群に比し,Ⅰ乳Ⅱ群いずれも有意に低値を示した(P<0.001)。 筋蛋白tを反映する%AMCはⅠ群,Ⅱ群とも有意に低下していた(P<0.001)。また体脂肪Jtを反映する%TSFもⅠ群,Ⅱ 群とも有意な低値を示した(P<0.001)。内臓蛋白のなかで,TPはⅠ粗Ⅱ群とも対照群と同レベルであった。AlbはⅠ群 (P<0.005),Ⅱ群(P<0.001)ともいずれも正常範囲内ながら有意に低値を示した。また,TfはⅠ群(P<0.05),Ⅱ群では (P<0.001)と,PAはⅠ群(P<0.05),Ⅱ群(P<0.001)と,また,RBPもⅠ群(P<0.05),Ⅱ群(P<0.001)と有意な 低値を示した。血清脂質では,T-CholはⅠ群,Ⅱ群とも有意差は認められなかった。TGは,Ⅰ群,Ⅱ群ともいずれも有意に 低値を示した(P<0.05)。HDL-Cholは,Ⅰ群では対照群と同レベルであったが,Ⅱ群では有意に高値を示した(P<0.001)。 81
Apo A-IVはⅠ群,Ⅱ群いずれも有意に低値を示した(P<0.001)。PImaxはⅠ群,Ⅱ群ともに有意に低値を示した(P <0.001)。またPImaxと各種栄養パラメーターとの関係をみると,Apo A-Ⅳとの間に有意な相関が認められた(r= 0.674,P<0.001)。血焚アミノ酸分析では,芳香族アミノ酸(AAA)はⅠ,Ⅱ群とも上昇傾向はあるが有意差は認められな かった。一方分枝鎖アミノ酸(BCAA)はI群では有意差はなかったが,Ⅱ群は有意に低値を示した(P<0.001)。これに伴 い,Fischer比(BCAA/AAAモル比)はⅠ群(P<0.05),Ⅱ群(P<0.001)とも有意に低下していた。 Ⅱ)附加的栄養素投与(捕食)あるいはトレーニングが栄養パラメーター,呼吸機能におよぽす効果 1.COPD群10例の捕食としてクリエミール⑳の曳か月間投与前後の比較では,各種栄養パラメーターいずれも有意の変動は 認められなかった。
2.diaphragmatic breathingを4週間施行したところ,PImaxが有意に上昇する(P<0.001)とともに,Apo A-IV
も有意に高値となった(P<0.001)。 考 案
COPD群をPaO260TorrでⅠ群とⅡ群とに分類し検討した結果,各身体計測値はCOPD群は対照群に比較して有意に低 値を示した。特に慢性呼吸不全群ではPaO260Torrを超えるCOPD群より一層低下しており.PaO2が低下している症例
ほどいわゆる-やせ"の傾向が強いことが観察された。また,血液生化学検査ではTG.Alb,raPid turnover proteinなど
の内膳蛋白が対照群に比し有意な低下を示し,いわゆる低蛋白栄養状態が認められた。 COPDにおける栄養障害の原因は明確ではないが,最近注目されている栄養パラメーターであるApo A-Ⅳを用いて検討 した結果,慢性呼吸不全群では経口食事摂取土の低下が強く示唆された。 以上の成績より,COPD患者はmarasmus型(体脂肪,筋蛋白の中等度減少,内臓蛋白の軽度低下するタイプ)の蛋白・ エネルギー栄養障害(protein-energy malnutrition)を呈し,その要因として経口食事摂取土の低下が考えられ,これを改 善する辛が病態の改善に結びつく可能性が示唆された。 また近年,呼吸不全の主要な病因として呼吸筋不全という病態概念が注目されているが,今回の成績では過剰な呼吸運動に よるBCAAの消費の完進と,骨格筋蛋白異化作用の冗進による筋の崩壊が示唆された。さらに,マラソンランナーの長期運 動トレーニングをした結果みられるものと同様にHDL-Chol群がCOPD群で高値を示し,過剰な筋肉運動の結果と考えられ た。COPD患者では,以上のような経過をたどり呼吸筋が疲労し,さらに呼吸筋力(PImax)が低下するものと考えられる。 今回の検討では,COPD群では,PImaxが有意に低値を示しており呼吸筋力の低下が示唆され,さらに,PImaxと各種 栄養パラメーターとの関係をみると,Apo A-Ⅳとの間に有意な相関が認められた。この成績吼経口食事摂取立と呼吸筋 力との間には,多くの要因が介在すると推測されるとはいえ,その関係を立証できたことは注目されてよい。以上の知見より, COPD患者の治療には栄養状態の改善を目的とした栄養治療,それも経口食事摂取量を増加させること,または,呼吸筋力を 増強させるような2つのタイプの治療の必要性が指摘される。 copD群における経口摂取エネルギー圭の低下に着目し,その改善を目的として経口栄養剤(クリニトノβ)を2か月間 投与した。しかし,その前後でのApo A-Ⅳ濃度を始めとする栄養パラメーターは変動せず,捕食の分,日常の経口食事摂 取量がむしろ低下し,捕食の効果は認められなかった。 一方,diaphragmatic breathingを4週間施行したところ呼吸筋力を示すPImaxが著明に上昇するとともに,経口食事 摂取量を示すApo A-Ⅳ濃度の有意な上昇が観察された。つまり.強制的に栄養素を投与することが困難なCOPD患者に 対しては,PImaxで代表される呼吸筋力を上昇させることが,Apo A-Ⅳ,つまり経口食事摂取量を増加させ,栄養状態の 改善につながることが強く示唆され,いままでとは異なる視点での栄養評価とその管理がより重要ではないかと考えている。 論文辛査の結果の要旨 申請者森 厚は,慢性呼吸器疾患患者の栄養アセスメントを行い,その栄養状態の改善には呼吸筋力増強を含めた患者管理 が重要であることを明らかにした。これらの新知見は呼吸器病学の進歩に少なからず寄与するものと認める。 〔主論文公表誌〕 慢性閉塞性肺疾患患者の栄養アセスメントに関する研究 平成6年7月発行 岐阜大医紀42(4)341∼350 82