数学科の西村です.今回の問題はいかがだったでしょう か.今回は 2011 年度大阪大学の入試問題から出題しまし た.解答の流れはシンプルですが,計算量が多く,苦戦し た人もいるのではないでしょうか.また,式変形において もいろいろ考えられるので,どうすれば良さそうかを判断 する力も必要です.受験に臨む前に,この場でしっかり確 認していってください. では,もう一度問題を確認して,解答といきましょう. 問 実数 q が動くとき,xy 平面上の動点 P(0,sinq) および Q(8cosq,0) を考える.q が ≤ ≤0 2 q p の範囲を動くとき, 平面内で線分 PQ が通過する部分を D とする.D を x 軸 のまわりに 1 回転してできる立体の体積 V を求めよ. 《考え方》 まずは線分 PQ の通過領域 D を求めましょう.“直線” ではなく“線分”の通過領域という所が厄介ですが,2 点 P,Q の動きを見ることで,0 £ x £ 8,0 £ y £ 1 のみ考 えればよくなりますので,解決します.0 £ x £ 8 内で x を固定し,q の変化に対する y の変化を調べましょう. D が求まれば,体積 V の計算方法自体はそう難しくな いので,計算ミスのないように丁寧に計算するのみです. 《解答》 2 点 P,Q の動きを考えることにより,領域 D について, 0 £ x £ 8,0 £ y £ 1 のみ考えればよいことがわかる. i) x = 0 上について, = 2 q p および点 P の動きを考え ることで,0 £ y £ 1 となる. ii) x = 8 上について,q = 0 のときを考えることで, y = 0 となる. iii) 0 < x < 8 の部分について考える. 直線 PQ の方程式は < <0 2 q p において y = - x + y = - x + sin 8 cos sin tan 8 sin -q q q q q である.ここで x を固定し,q の変化に対する y の変化 を調べる. dy d = -x + =- x + 8 cos cos 8cos 8 cos 2 3 2 q q q q q である.ここで,0 < x < 8 であるから,8cos3 q = x を 満たす q が < <0 2 q p にただ 1 つ存在する.これを a とおく. dy d + -y -(0) 2 0 (0) ( )
ª º
q º a º p q • q = a のとき y = - x + = - + x = = -= - > sin 8 cos sin sin8 cos • 8 cos sin 8 cos sin (1 cos ) (1 cos ) ( sin 0) 3 3 2 2 3 2 a a a a a a a (# a) a a a # a であるから,8 cos = x cos = x 8 3 2 3
ª º
-a a より y = 1- x 8 2 3 3 2ª º
である.よって,0 £ y £ 1 と合わせて,y のとり得る 値の範囲は ≤ y ≤ - x 0 1 8 2 3 3 2ª º
である. 以上 i),ii),iii) より,領域 D を表す不等式は ≤ x ≤ ≤ y ≤ - x 0 8 0 1 8 2 3 3 2ª º
である.よって,求める体積 V はª º
V = 1- x dx 8 2 3 3 0 8 p∫
である.ここで,x= t 8 とおくと dx = 8dt , x →→ t 0 8 0 1 ºº (*1) ºº (*2) ºº (*3)であるから
∫
∫
V = - t dt = - t + t - t dt = t - t + t - t = 1 • 8 8 1 3 3 8 9 5 9 7 1 3 128 105 2 3 3 0 1 2 3 4 3 2 0 1 5 3 7 3 3 0 1ª º
ª
º
p p p p である. ■ 《考察》 まずは《解答》に関しての補足です. ∑ (*1) について = 2 q p のときは直線 PQ の方程式をこの形では表せな い(x = 0 となる)ことに注意してください.また今回, y の増減を調べる際に x = 0,8 があると面倒ということ を踏まえて,x = 0,8 上に関しては先に考えておきました. 細かい部分への配慮が必要ですね. ∑ (*2) について 8cos3 a = x を用いて x を消去し,一旦パラメータ表示 の形にしましたが,もちろんはじめから (*2) の一行上の 式に sin = 1-ª º
X =ª º
X 8 cos 8 2 3 1 2 1 3 a a , を代入して, a を消去する流れでもよいです(そんなに計算量は変わら ないと思います). ∑ (*3) について 計算が少々面倒であるため,x= t 8 と置換して計算し ましたが,もちろん置換せずに計算することも可能です (以下).∫
V = - x + x - x dx = x - x + x - x = 1 3 8 3 8 8 9 5• 8 8 9 7• 8 8 1 3• 8 8 128 105 2 3 4 3 2 0 8 5 3 7 3 3 0 8ª º ª º ª º
ª º
ª º
ª º
p p p では,ここからは今回の問題のテーマである通過領域と 体積計算に関して考察していきたいと思います. <通過領域の求め方について> 通過領域の求め方には 3 つの方法があります. ! 順像法 x を固定し,パラメータの変化に対する y の変化を調 べる. @ 逆像法 動かす図形の方程式をパラメータについての方程式 と見て,そのパラメータが実数解として存在する条件を 調べる. # 包絡線の利用 動かす図形がパラメータの値に関係なく接する曲線 を持ち出し,図形を直接動かして考える. 《解答》では,! の手法で領域 D を求めました.この 手法の考え方は以下の通りです.例えば,x = 1 上の点で 線分 PQ の通過する点を考えます. x x = 1 Q 8 P 今回は上図のような感じだとイメージできますが,図はあ くまでイメージなので,実際には直線 PQ の方程式に x = 1 を代入し,q を動かしたときに y がとり得る値の範 囲を考えて求めます.このようなことを他の x の値に対 しても考えていけばよいのですが,もちろんすべての x の値に対して行うことはできませんので,ある x で固定 して,y のとり得る範囲を調べようという感じになります. 次に,@ の手法ですが,これは平面上の点に対して, 通過する点かどうかを考える方法です.例えば,点 (0,0) は通過する点かどうか考えます.これは直線 PQ の方程式 に当てはめることでわかります. = -0 1 + = < < 8(tanq)• 0 sinq - q 0ª
# 0 q p2º
つまり q = 0 のときに通過することがわかります.このよ うに代入したときに q の値が与えられた範囲内に出てくる かどうかで,通過するかどうかを判断することができま す.もちろん平面上のすべての点に対して 1 つずつ調べる ことは不可能なので,点 (X,Y) が通過領域にあるための 条件,すなわち Y = -1 X + 8(tan )q sinq を満たす q が存 在するための条件を考えればよいということになります.(@ の手法での解答) 通過領域 D 内の任意の点を (X,Y) とおく. (0 £ X £ 8,0 £ Y £ 1 だけ考えればよく,X = 0,8 上の 領域を = 0, 2 q p で考えておく部分までは《解答》と同じ) < <0 2 q p のとき直線 PQ の方程式は y = - x + x + y - = 1 8(tan ) sin tan 8 8 sin 0 (*4) -q q q q ºº であるから,(X,Y) の満たすべき条件は Xtanq + 8Y - 8sinq = 0 を満たす q が < <0 2 q p に存在 するための条件として与えられる. ここで,f(q) = Xtanq + 8Y - 8sinq とおく. f( )= X - = X -cos 8 cos 8 cos cos 2 3 2 q q q q q ′ であり,0 < X < 8 より,8cos3 q = X を満たす q が < < 0 2 q p にただ 1 つ存在する.これを a とおくと,増減 表は以下のようになる. f - + f Y + (0) 2 '( ) 0 ( ) (8 ) ( )
ª º
q º a º p q q • よって,求める条件は f ≤ X + Y - ≤ + Y - ≤ = X - + Y ≤ Y ≤ - > Y ≤ - X = X ( ) 0 tan 8 8 sin 0 8 cos •sin cos 8 8 sin 0 ( 8 cos ) sin (cos 1) 0 (1 cos ) ( sin 0) 1 8 ( 8 cos ) 3 3 2 2 3 2 2 3 3 2 3ª º
-a a a a a a a # a a a a # a # a となり,0 £ Y £ 1 より ≤ Y ≤ - X0 1 8 2 3 3 2ª º
となる. , = 0 2 q pのときと合わせると,領域 D は ≤ x ≤ ≤ y ≤ - x 0 8 0 1 8 2 3 3 2ª º
である.(以下,解答と同様) ■ 1 点補足です.(*4) について,《解答》と同様に,この 形の直線 PQ の方程式は = 0, 2 q p では定義できないので 注意してください.また,PQ の方程式としてxsinq+ y8 cosq-8 sin cosq q=0ºº 1 x + y = 8 cosq sinq 1ºº 2 などの形で考えることもできると思います. ①の場合は, = 0, 2 q p でも定義できるというメリット はありますが,左辺を微分したときに
xcosq - 8ysinq - 8cos2q
となり,増減を考えるのが厳しくなります.よって,この 形を選択するのは上手くありません. ②の場合は, < <0 2 q p で定義され(つまり = 0, 2 q p については別に考える),次のように解答に至ることがで きます. (別解) 通過領域 D 内の任意の点を (X,Y) とおく. (0 £ X £ 8,0 £ Y £ 1 だけ考えればよく,X = 0,8 上の 領域を = 0, 2 q p で考えておく部分までは《解答》と同じ) (X,Y) の満たすべき条件は, X + Y = 8 cosq sinq 1 を満た す q が < <0 2 q p に存在するための条件として与えられ る. g( )= X + Y < < 8 cos sin 0 2 q q q
ª
q pº
とおくと g = X -Y = X - Y '( )8(cos ) sin (sin ) cos sin 8 cos 8 sin cos -2 -2 3 3 2 2 q q q q q q q q q
である.ここで X > 0,Y > 0 より,Xsin3 q - 8Ycos3 q = 0
を満たす q は < <0 2
q p においてただ 1 つ存在し,これ を a とおくと,増減表は以下のようになる.
なりますので,この場では割愛します. 今回の場合であれば,(@ の手法での解答)における f(q) に対して f = f = x = y = ( ) 0 '( ) 0 8 cos sin 3 3 -q q q q と得られます. しかし,解答にこの部分を書くことは控えた方が良いと 思います.解答を書く際には,包絡線の方程式をいきなり 持ち出して,その後にちゃんと直線 PQ と接することを確 認するという流れで書けば良いです. (# の手法での解答) x = y = 8 cos sin 3 3 q q が表す曲線を C とする. dx d = -dy d =
24 sin cos2 3 sin2 cos
q q q, q q q より, 0 2 q≠ , p のとき dy dx=- = -3 sin cos 24 sin cos 1 8tan 2 2 q q q q q であるから,q = t に対応する点における接線の方程式は y = - t x - t + t y = - t x + t t + t y = - t x + t 1
8(tan )( 8 cos ) sin 1
8(tan ) sin cos sin 1 8(tan ) sin 3 3 2 2 -となる.これは q = t のときの直線 PQ の方程式なので, 直線 PQ は曲線 C に接しながら動くことがわかる. よって, = 0, 2 q p のときも考慮すると,領域 D は下図 の色つき部分である(境界含む). x Q 8 P y O 1 曲線 C ■ 1 点補足です.直線を動かす際には,包絡線の凸の向き が大切になります.包絡線が放物線になる場合などを考え g - + g + + (0) 2 '( ) 0 ( ) ( ) ( )
ª º
q º a º p q q • • よって,求める条件は g ≤ X + Y ≤ Y + Y ≤ Y ≤ ( ) 1 8 cos sin 1 1 8 cos • 8 cos sin sin 1 sin 3 3 3 -a a a a a a a a である.また,Y = sin3 a のときを考えると X - = X = = -= - Xsin 8 sin cos 0 8 cos sin 0 sin 1 cos 1 8 3 3 3 3 3 2 2 3 1 2
ª º
-a a a a ( a π ) \ a a であるから, Y ≤ 1- X 8 2 3 3 2ª º
である. (以下,解答と同様) ■ 最後に,# の手法についてです.まず結果から言うと, 今回の線分 PQ は q の値に関係なく,領域 D の境界線の 方程式 y = 1- x 8 2 3 3 2ª º
に接しています.このようにパ ラメータを含む図形が,そのパラメータの変化に対して, ある図形に接しながら動くとき,そのある図形のことを包 絡線と言います.この包絡線を利用すると下図のように線 分 PQ の通過領域 D を図だけで判断することができます. x Q 8 P y O 1 曲線 C さて,ここで肝心なのはこの包絡線をどうやって求める かですね.一般に,パラメータ t を含む図形の方程式を, t のみを変数とみて f(t) = 0 とした場合,包絡線は f t = f t = ( ) 0 '( ) 0 によって与えられます.この証明は,大学レベルの内容にればわかりやすいと思います.上に凸か,下に凸かによっ て通過する部分が曲線の上か下かが変わりますね.2 次関 数であれば大丈夫なのですが,未知の関数の場合において は,その凸性を 2 階微分して調べる必要があります. <体積計算について> 《解答》では領域 D の境界線の方程式として,a を消去 することで,y を x の式で y = 1- x 8 2 3 3 2
ª º
という風に 表しました.しかし,もちろん a(パラメータ)を消去す るのが困難なケースもありますので,その場合はパラメー タを用いて体積の計算をすることになります.今回の場 合,領域 D の境界線は(《解答》の流れより) x = y = ≤ ≤ 8 cos sin 0 2 3 3ª
º
a a a p という形で表すことができますので,体積 V は V = y dx = - d = dsin •( 24 sin cos
24 sin cos 2 0 8 6 2 0 2 7 2 0 2 p p a a a) a p a a a p p
∫
∫
∫
を計算することによって求めることもできます.計算の続 きは以下の通りです. V = d = - d = - -+ - d = - - + -= 24 sin cos24 sin (1 cos ) cos
24 (cos ) '(cos 3cos 3cos cos ) 24 1 3cos 3 5cos 3 7cos 1 9cos 128 105 7 2 0 2 2 3 2 0 2 0 2 2 4 6 8 3 5 7 9 0 2 p a a a p a a a a p a a a a a a p a a a a p p p p p
∫
∫
∫
ここでは置換をせずに処理しましたが,cosa = t とし て置換積分で計算しても構いません.また,sin7 acos2 a = sin7 a - sin9 a と変形できることに 注目して求めることもできます.この変形をした際の積分 は,漸化式を作る方法で解くのがよいでしょう.解答は以 下の通りです. (別解) I =n sin d n 0 2 a a p
∫
とおくと I = d = -- n + - d = n + - d = n + I - I I = n + n + I sin sin sin cos( 1) sin cos ( cos )
( 1) (sin sin ) ( 1)( ) 1 2 n+ n+ n+ n n n+ n n+ n+ n 2 1 0 2 1 0 2 0 2 2 0 2 2 2 a a a a( a) a a a a a a a \ p p p p
∫
∫
∫
である.よって I = I = I = I = d = I = I = 6 7 6 7• 4 5 6 7• 4 5• 2 3 16 35 sin 16 35 8 9 8 9• 16 35 7 5 3 1 0 2 9 7 a a p∫
であるから,求める体積 V は V = I - I = 24 ( ) 128 105 7 9 p p である. ■ いずれにしても,この積分計算はまあまあ大変なので, 今回は《解答》のように計算した方が良いと思います. <参考> 最後に,本問に登場した曲線についてですが x + y = 8 1 2 3 23ª º
と変形できることから「あっ,あれっぽい」と思った人は いるでしょうか ? これは入試でもたびたびとりあげられる“アステロイ ド”と呼ばれる曲線を少し変形したものです.一般に,“ア ステロイド”の方程式は x + y = a23 (a >0) 2 3 2 3 と表されます.a = 1 として,x 軸方向に 8 倍拡大したも のが今回の曲線です. ■《おわりに》 センター試験まで残り 1 ヶ月となりました.難関国公立 大学を目指す上ではあくまで通過点に過ぎませんが,侮る と足元をすくわれますので,万全の態勢で臨んでくださ い.来春を笑顔で迎えられるように,あと少しです,頑張っ てください. (西村)